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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第七章 幕間狂言 (2)

第 七 章 幕 間 狂言 (2)

イゼルローン の 勝利 は たんに ヤン の 個人 プレイ が 成功 した に すぎ ず 、 それ に ふさわしい 実力 を 同盟 軍 が そなえて いた わけで は ない 。 軍隊 は 疲れはて 、 それ を ささえる 国力 も 下降 線 を たどって いる の が 実 状 だ 。

ところが 、 ヤン 自身 が 承知 して いる その 事実 を 、 政 ・ 軍 の 首脳 部 は どうやら わきまえて いない ような のである 。 軍事 的 勝利 は 麻薬 に 似て いる 。 イゼルローン 占領 と いう 甘美な 麻薬 は 、 人々 の 心 に ひそむ 好 戦 的 幻覚 を いっきょに 花 開か せて しまった ようであった 。 冷静である べき 言論 機関 まで が 、 異口同音 に 「 帝国 領土 内 へ の 侵攻 」 を 呼 号して いる 。 政府 の 情報 操作 も 巧みな ので は あろう が ……。

イゼルローン 攻略 の 代償 が すくな すぎた のだろう か 、 と ヤン は 思う 。 これ が 数 万 に のぼる 流血 の 結果 であれば 、 人々 は 、

「 もう たくさんだ 」

と 言った であろう 。 吾々 は 勝った 、 だが 疲れはてた 、 ひと休み して 過去 を ふりかえり 、 未来 に 想い を はせて み ようで は ない か 、 戦い に 値する なにもの が 存在 する の か ―― と 。

しかし 、 そう は なら なかった 。 勝利 と は かくも 容易な のだ 、 勝利 の 果実 と はかくの ごとく 美味な もの だ 、 と 人々 は 考えて しまった 。 皮肉な こと に 、 彼ら を そう 思わ せた の は ヤン その 人 な のだ 。 若い 提督 に とって は 不本意 きわまる 事態 であり 、 この ところ 酒量 が ふえる いっぽう だった 。

遠征 軍 の 陣容 は 、 公式 発表 こそ まだ なされて いない が 、 すでに 決定 して いる 。 総 司令 官 に は 、 同盟 軍 宇宙 艦隊 司令 長官 ラザール ・ ロボス 元帥 自身 が 就任 する 。 彼 は シトレ 統合 作戦 本 部長 に つぐ 、 制服 軍人 の ナンバー 2 で 、 シトレ と は 四 半 世紀 以上 に わたる 競争 関係 に ある 。

副 司令 官 は おか れ ず 、 総 参謀 長 の 座 を しめる の は ドワイト ・ グリーンヒル 大将 、 フレデリカ の 父親 である 。 彼 の 下 に 、 作戦 主任 参謀 コーネフ 中将 、 情報 主任 参謀 ビロライネン 少将 、 後方 主任 参謀 に キャゼルヌ 少将 が 配置 さ れる 。 事務 処理 の 才 腕 を 評価 さ れた アレックス ・ キャゼルヌ は ひさびさの 前線 勤務 だった 。

作戦 主任 参謀 の 下 に 、 作戦 参謀 五 名 が おか れる 。 その なか の ひと り 、 アンドリュー ・ フォーク 准将 は 六 年 前 に 士官 学校 を 首席 で 卒業 した 秀才 で 、 今回 の 遠征 計画 を そもそも 立案 した の が この 青年 士官 だった 。

情報 参謀 と 後方 参謀 は それぞれ 三 名 。

以上 の 一六 名 に 高級 副 官 や 通信 ・ 警備 その他 の 要員 が くわわって 総 司令 部 を 構成 する 。

実戦 部隊 と して は 、 まず 八 個 宇宙 艦隊 が 動員 さ れる こと に なって いた 。

第 三 艦隊 、 司令 官 ルフェーブル 中将 。

第 五 艦隊 、 司令 官 ビュコック 中将 。

第 七 艦隊 、 司令 官 ホーウッド 中将 。

第 八 艦隊 、 司令 官 アップルトン 中将 。

第 九 艦隊 、 司令 官 アル ・ サレム 中将 。

第 一〇 艦隊 、 司令 官 ウランフ 中将 。

第 一二 艦隊 、 司令 官 ボロディン 中将 。

第 一三 艦隊 、 司令 官 ヤン 中将 。

アスターテ 会戦 で 打撃 を うけた 第 四 ・ 第 六 に くわえ 、 今回 あらたに 第 二 艦隊 の 残存 戦力 も ヤン の 第 一三 艦隊 に 再編 さ れた から 、 同盟 軍 宇宙 艦隊 を 編成 する 一〇 個 艦隊 の うち 本国 に 残る の は 第 一 、 第 一一 の 両 艦隊 のみ である 。

これ に 陸 戦 部隊 と 総称 さ れる 装甲 機動 歩兵 、 大気 圏 内 空中 戦 隊 、 水 陸 両用 戦 隊 、 水上 部隊 、 レインジャー 部隊 、 そのほか 各種の 独立 部隊 が くわわる 。 さらに 国 内 治安 部隊 の なか から 重 武装 要員 が 参加 する こと に なって いた 。

非 戦闘 要員 と して は 、 技術 、 工兵 、 補給 、 通信 、 管制 、 整備 、 電子 情報 、 医療 、 生活 など の 各 分野 で 最大 限 の 人 的 動員 が なされる 。

総 動員 数 三〇二二万七四〇〇 名 。 これ は 自由 惑星 同盟 全軍 の 六 割 が 一 時 に 動員 さ れる こと を 意味 した 。 そして それ は 同盟 の 総 人口 一三〇億 の 〇・二三 パーセント で も ある 。

歴戦 の 提督 たち も 、 前例 の ない 巨大な 作戦 計画 を 前 に して 無心で は い られ ず 、 でて も いない 額 の 汗 を ぬぐったり 、 用意 さ れた 冷水 を たてつづけ に あおったり 、 隣席 の 同僚 と 私 語 したり する 姿 が 目だつ 。 午前 九 時 四五 分 、 統合 作戦 本 部長 シトレ 元帥 が 首席 副 官 マリネスク 少将 を ともなって 入室 する と 、 すぐに 会議 は 開始 さ れた 。

「 今回 の 帝国 領 へ の 遠征 計画 は すでに 最高 評議 会 に よって 決定 さ れた こと だ が ……」

口 を 開いた シトレ 元帥 の 表情 に も 声 に も 高揚 感 は ない 。 彼 が 今回 の 出兵 に 反対である こと を 列席 の 諸 将 は 知っていた 。

「 遠征 軍 の 具体 的な 行動 計画 案 は まだ 樹立 されて いない 。 本日 の 会議 は それ を 決定 する ため の もの だ 。 同盟 軍 が 自由 の 国 の 、 自由 の 軍隊 である こと は 、 いまさら 言う まで も ない 。 その 精神 に もとづいて 活発な 提案 と 討論 を おこなって くれる よう 希望 する 」

積極 性 を 欠く 発言 に 本 部長 の 苦悩 を みてとった 者 も いた かも しれ ず 、 教育 者 じみ た 語調 に かるい 反発 を 感じた 者 も いた かも しれ ない 。 本 部長 が 口 を 閉じる と 、 しばらく 、 声 が なかった 。 それぞれ の 思い に 浸って いる ようだ 。

ヤン は 前日 、 キャゼルヌ から 聞いた こと を 脳裏 で 反芻 して いた 。

「 なにしろ 近々 統一 選挙 が ある 。 ここ しばらく 、 対 内 的に 不祥事 が つづいた から な 。 勝つ ため に は 外界 に 市民 の 注意 を そらす 必要 が ある 。 それ で 今度 の 遠征 と いう わけ さ 」

統治 者 が 失政 を ごまかす ため の 常 套 手段 だ 、 と ヤン は 思う 。 国 父 ハイネセン が 知ったら 、 さぞ 嘆く こと だろう 。 彼 の 希望 は 、 高 さ 五〇 メートル の 白 亜 の 像 を 建てて もらう こと など で は なく 、 権力 者 の 恣意 に よって 市民 の 権利 と 自由 が 侵さ れる ような 危険 の ない 社会 体制 が きずきあげられる こと に あった はずだ 。 人間 が 老い を 約束 されて いる ように 、 国家 は 堕落 と 頽廃 を 約束 されて いる の かも しれ ない 。 だが 、 それにしても 、 選挙 に 勝って 今後 四 年間 の 政権 を 維持 する ため 、 三〇〇〇万 人 の 将兵 を 戦場 へ 送りこむ と いう 発想 は 、 ヤン の 理解 を こえる 。 三〇〇〇万 の 人間 、 三〇〇〇万 の 人生 、 三〇〇〇万 の 運命 、 三〇〇〇万 の 可能 性 、 三〇〇〇万 の 喜怒哀楽 ―― それ ら を 死 地 へ 送りこみ 、 犠牲 の 列 に くわえる こと に よって 、 安全な 場所 に いる 連中 は 利益 を 独占 する のだ 。

戦争 を する 者 と さ せる 者 と の 、 この 不合理 きわまる 相関 関係 は 、 文明 発生 以来 、 時代 を へて も いささか も 改善 されて いない 。 むしろ 古代 の 覇王 の ほう が 、 陣頭 に 立って みずから の 身 を 危険に さらした だけ まし かも しれ ず 、 戦争 を さ せる 者 の 倫理 性 は 下落 する いっぽう と も 言える のである ……。

「 今回 の 遠征 は 、 わが 同盟 開闢 以来 の 壮挙 である と 信じます 。 幕僚 と して それ に 参加 さ せて いただける と は 、 武人 の 名誉 、 これ に すぎ たる は ありません 」 それ が 最初の 発言 だった 。

抑揚 に 乏しい 、 原稿 を 棒読み する ような 声 の 主 は 、 アンドリュー ・ フォーク 准将 である 。 二六 歳 と いう 若 さ だ が 、 年齢 より 老けて みえ 、 ヤン の ほう が 年少の ように 思えた 。 血色 の 悪い 顔 は 肉づき が 薄 すぎた が 、 眉 目 そのもの は 悪く ない 。 ただ 、 対象 を すくいあげる ような 上目づかい と 、 ゆがんだ ような 口 もと が 、 彼 にたいする 印象 を やや 暗い もの に して いた 。 もっとも 、 優等 生 と いう 表現 に 無縁だった ヤン など が 秀才 を 見る と 、 偏見 の レンズ が かかって いる かも しれ ない のだ が 。

フォーク が 延々と 軍部 の 壮挙 ―― つまるところ 自分 自身 が 立案 した 作戦 ―― を 美辞麗句 で 自賛 した あと 、 つづいて 発言 した の は 、 第 一〇 艦隊 司令 官 の ウランフ 中将 だった 。

ウランフ は 古代 地球 世界 の なかば を 征服 した と 言わ れる 騎馬 民族 の 末 裔 で 、 筋骨 たくましい 壮年 の 男 である 。 色 は 浅黒く 、 両眼 は するどく 輝いて いる 。 同盟 軍 の 諸 提督 の なか でも 、 勇 将 と して 市民 の 人気 が 高い 。

「 吾々 は 軍人 である 以上 、 赴け と 命令 が あれば 、 どこ へ でも 赴く 。 まして 、 暴 虐 な ゴールデンバウム 王朝 の 本拠 地 を つく 、 と いう のであれば 、 喜んで 出征 しよう 。 だが 、 いう まで も なく 、 雄 図 と 無謀 は イコールで は ない 。 周到な 準備 が 欠かせ ない が 、 まず 、 この 遠征 の 戦略 上 の 目的 が 奈辺 に ある か を うかがいたい と 思う 」 帝国 領 内 に 侵入 し 、 敵 と 一 戦 を まじえて それ で 可 と する の か 。 帝国 領 の 一部 を 武力 占拠 する と して も 一時的に か 恒久 的に か 。 もし 恒久 的である なら 占拠 地 を 要塞 化 する の か 否 か 。 それとも 帝国 軍 に 壊滅 的 打撃 を あたえ 、 皇帝 に 和平 を 誓わ せる まで は 帰還 し ない の か 。 そもそも 作戦 じたい が 短期 的な もの か 長期 的な もの か ……。

「 迂遠 ながら お 訊 きしたい もの だ 」 ウランフ が 着席 する と 、 返答 を うながす ように シトレ と ロボス の 両 元帥 が ひとしく フォーク 准将 に 視線 を むけた 。

「 大軍 を もって 帝国 領土 の 奥深く 進攻 する 。 それ だけ で 帝国 人 ども の 心 胆 を 寒 から しめる こと が できましょう 」 それ が フォーク 准将 の 回答 だった 。

「 では 戦わ ず して 退く わけ か 」

「 それ は 高度の 柔軟 性 を 維持 し つつ 、 臨機応変 に 対処 する こと に なろう か と 思います 」 ウランフ は 眉 を しかめて 不満の 意 を 表した 。

「 もう すこし 具体 的に 言って もらえ ん か な 。 あまりに 抽象 的 すぎる 」

「 要するに 、 行き当たり ばったり と いう こと で は ない の か な 」

皮肉 の スパイス を きかせた 声 が 、 フォーク の 唇 の ゆがみ を 大きく した 。 第 五 艦隊 司令 官 ビュコック 中将 が 声 の 主だった 。 シトレ 元帥 、 ロボス 元帥 、 グリーンヒル 大将 ら が 数 目 を おく 同盟 軍 の 宿 将 である 。 士官 学校 の 卒業 生 で は なく 、 兵士 から の 〝 叩き上げ 〟 である ため 、 彼ら より 階級 こそ 下 であって も 、 年齢 と 経験 は うわまわる 。 用 兵 家 と して 熟練 の 境地 に ある と 評されて いた 。 さすが に 遠慮 も あり 、 正規の 発言 で は ない こと も あって 、 フォーク は 丁重に 無視 する 態度 を とる こと に した ようだ 。

「 ほか に なに か ……」

そう こと さらに 言った 。

ためらった すえ 、 ヤン は 発言 を もとめた 。

「 帝国 領 内 に 侵攻 する 時機 を 、 現 時点 に さだめた 理由 を お 訊 きしたい 」 まさか 選挙 の ため と は 言う まい 。 どう 答える か と 思って いる と 、

「 戦い に は 機 と いう もの が あります 」 ヤン に むかって 、 フォーク 准将 は とくとく と 説明 を はじめた 。

「 それ を のがして は 、 けっきょく 、 運命 そのもの に 逆らう こと に なります 。 あの とき 決行 して おれば 、 と 後日 に なって 悔いて も 、 時 すでに 遅し と いう こと に なりましょう 」 「 つまり 、 現在 こそ が 帝国 にたいして 攻勢 に でる 機会 だ と 貴 官 は 言いたい の か 」 確認 する の も ばかばかしい 気 が した が 、 ヤン は そう 訊 ねた 。

「 大 攻勢 です 」

フォーク は 訂正 した 。 過剰な 形容 句 が 好きな 男 だ な 、 と ヤン は 思った 。

「 イゼルローン 失 陥 に よって 帝国 軍 は 狼狽 して なす ところ を 知ら ない でしょう 。

第 七 章 幕 間 狂言 (2) だい|なな|しょう|まく|あいだ|きょうげん

イゼルローン の 勝利 は たんに ヤン の 個人 プレイ が 成功 した に すぎ ず 、 それ に ふさわしい 実力 を 同盟 軍 が そなえて いた わけで は ない 。 ||しょうり|||||こじん|||せいこう||||||||じつりょく||どうめい|ぐん|||||| 軍隊 は 疲れはて 、 それ を ささえる 国力 も 下降 線 を たどって いる の が 実 状 だ 。 ぐんたい||つかれはて||||こくりょく||かこう|せん||||||み|じょう|

ところが 、 ヤン 自身 が 承知 して いる その 事実 を 、 政 ・ 軍 の 首脳 部 は どうやら わきまえて いない ような のである 。 ||じしん||しょうち||||じじつ||まつりごと|ぐん||しゅのう|ぶ|||||| 軍事 的 勝利 は 麻薬 に 似て いる 。 ぐんじ|てき|しょうり||まやく||にて| イゼルローン 占領 と いう 甘美な 麻薬 は 、 人々 の 心 に ひそむ 好 戦 的 幻覚 を いっきょに 花 開か せて しまった ようであった 。 |せんりょう|||かんびな|まやく||ひとびと||こころ|||よしみ|いくさ|てき|げんかく|||か|あか||| 冷静である べき 言論 機関 まで が 、 異口同音 に 「 帝国 領土 内 へ の 侵攻 」 を 呼 号して いる 。 れいせいである||げんろん|きかん|||いくどうおん||ていこく|りょうど|うち|||しんこう||よ|ごうして| 政府 の 情報 操作 も 巧みな ので は あろう が ……。 せいふ||じょうほう|そうさ||たくみな||||

イゼルローン 攻略 の 代償 が すくな すぎた のだろう か 、 と ヤン は 思う 。 |こうりゃく||だいしょう|||||||||おもう これ が 数 万 に のぼる 流血 の 結果 であれば 、 人々 は 、 ||すう|よろず|||りゅうけつ||けっか||ひとびと|

「 もう たくさんだ 」

と 言った であろう 。 |いった| 吾々 は 勝った 、 だが 疲れはてた 、 ひと休み して 過去 を ふりかえり 、 未来 に 想い を はせて み ようで は ない か 、 戦い に 値する なにもの が 存在 する の か ―― と 。 われ々||かった||つかれはてた|ひとやすみ||かこ|||みらい||おもい||||||||たたかい||あたいする|なにも の||そんざい||||

しかし 、 そう は なら なかった 。 勝利 と は かくも 容易な のだ 、 勝利 の 果実 と はかくの ごとく 美味な もの だ 、 と 人々 は 考えて しまった 。 しょうり||||よういな||しょうり||かじつ||||びみな||||ひとびと||かんがえて| 皮肉な こと に 、 彼ら を そう 思わ せた の は ヤン その 人 な のだ 。 ひにくな|||かれら|||おもわ||||||じん|| 若い 提督 に とって は 不本意 きわまる 事態 であり 、 この ところ 酒量 が ふえる いっぽう だった 。 わかい|ていとく||||ふほんい||じたい||||しゅりょう||||

遠征 軍 の 陣容 は 、 公式 発表 こそ まだ なされて いない が 、 すでに 決定 して いる 。 えんせい|ぐん||じんよう||こうしき|はっぴょう|||||||けってい|| 総 司令 官 に は 、 同盟 軍 宇宙 艦隊 司令 長官 ラザール ・ ロボス 元帥 自身 が 就任 する 。 そう|しれい|かん|||どうめい|ぐん|うちゅう|かんたい|しれい|ちょうかん|||げんすい|じしん||しゅうにん| 彼 は シトレ 統合 作戦 本 部長 に つぐ 、 制服 軍人 の ナンバー 2 で 、 シトレ と は 四 半 世紀 以上 に わたる 競争 関係 に ある 。 かれ|||とうごう|さくせん|ほん|ぶちょう|||せいふく|ぐんじん||なんばー|||||よっ|はん|せいき|いじょう|||きょうそう|かんけい||

副 司令 官 は おか れ ず 、 総 参謀 長 の 座 を しめる の は ドワイト ・ グリーンヒル 大将 、 フレデリカ の 父親 である 。 ふく|しれい|かん|||||そう|さんぼう|ちょう||ざ|||||||たいしょう|||ちちおや| 彼 の 下 に 、 作戦 主任 参謀 コーネフ 中将 、 情報 主任 参謀 ビロライネン 少将 、 後方 主任 参謀 に キャゼルヌ 少将 が 配置 さ れる 。 かれ||した||さくせん|しゅにん|さんぼう||ちゅうじょう|じょうほう|しゅにん|さんぼう||しょうしょう|こうほう|しゅにん|さんぼう|||しょうしょう||はいち|| 事務 処理 の 才 腕 を 評価 さ れた アレックス ・ キャゼルヌ は ひさびさの 前線 勤務 だった 。 じむ|しょり||さい|うで||ひょうか|||||||ぜんせん|きんむ|

作戦 主任 参謀 の 下 に 、 作戦 参謀 五 名 が おか れる 。 さくせん|しゅにん|さんぼう||した||さくせん|さんぼう|いつ|な||| その なか の ひと り 、 アンドリュー ・ フォーク 准将 は 六 年 前 に 士官 学校 を 首席 で 卒業 した 秀才 で 、 今回 の 遠征 計画 を そもそも 立案 した の が この 青年 士官 だった 。 ||||||ふぉーく|じゅんしょう||むっ|とし|ぜん||しかん|がっこう||しゅせき||そつぎょう||しゅうさい||こんかい||えんせい|けいかく|||りつあん|||||せいねん|しかん|

情報 参謀 と 後方 参謀 は それぞれ 三 名 。 じょうほう|さんぼう||こうほう|さんぼう|||みっ|な

以上 の 一六 名 に 高級 副 官 や 通信 ・ 警備 その他 の 要員 が くわわって 総 司令 部 を 構成 する 。 いじょう||いちろく|な||こうきゅう|ふく|かん||つうしん|けいび|そのほか||よういん|||そう|しれい|ぶ||こうせい|

実戦 部隊 と して は 、 まず 八 個 宇宙 艦隊 が 動員 さ れる こと に なって いた 。 じっせん|ぶたい|||||やっ|こ|うちゅう|かんたい||どういん||||||

第 三 艦隊 、 司令 官 ルフェーブル 中将 。 だい|みっ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

第 五 艦隊 、 司令 官 ビュコック 中将 。 だい|いつ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

第 七 艦隊 、 司令 官 ホーウッド 中将 。 だい|なな|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

第 八 艦隊 、 司令 官 アップルトン 中将 。 だい|やっ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

第 九 艦隊 、 司令 官 アル ・ サレム 中将 。 だい|ここの|かんたい|しれい|かん|||ちゅうじょう

第 一〇 艦隊 、 司令 官 ウランフ 中将 。 だい|ひと|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

第 一二 艦隊 、 司令 官 ボロディン 中将 。 だい|いちに|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

第 一三 艦隊 、 司令 官 ヤン 中将 。 だい|かずみ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう

アスターテ 会戦 で 打撃 を うけた 第 四 ・ 第 六 に くわえ 、 今回 あらたに 第 二 艦隊 の 残存 戦力 も ヤン の 第 一三 艦隊 に 再編 さ れた から 、 同盟 軍 宇宙 艦隊 を 編成 する 一〇 個 艦隊 の うち 本国 に 残る の は 第 一 、 第 一一 の 両 艦隊 のみ である 。 |かいせん||だげき|||だい|よっ|だい|むっ|||こんかい||だい|ふた|かんたい||ざんそん|せんりょく||||だい|かずみ|かんたい||さいへん||||どうめい|ぐん|うちゅう|かんたい||へんせい||ひと|こ|かんたい|||ほんごく||のこる|||だい|ひと|だい|いちいち||りょう|かんたい||

これ に 陸 戦 部隊 と 総称 さ れる 装甲 機動 歩兵 、 大気 圏 内 空中 戦 隊 、 水 陸 両用 戦 隊 、 水上 部隊 、 レインジャー 部隊 、 そのほか 各種の 独立 部隊 が くわわる 。 ||りく|いくさ|ぶたい||そうしょう|||そうこう|きどう|ほへい|たいき|けん|うち|くうちゅう|いくさ|たい|すい|りく|りょうよう|いくさ|たい|すいじょう|ぶたい||ぶたい||かくしゅの|どくりつ|ぶたい|| さらに 国 内 治安 部隊 の なか から 重 武装 要員 が 参加 する こと に なって いた 。 |くに|うち|ちあん|ぶたい||||おも|ぶそう|よういん||さんか|||||

非 戦闘 要員 と して は 、 技術 、 工兵 、 補給 、 通信 、 管制 、 整備 、 電子 情報 、 医療 、 生活 など の 各 分野 で 最大 限 の 人 的 動員 が なされる 。 ひ|せんとう|よういん||||ぎじゅつ|こうへい|ほきゅう|つうしん|かんせい|せいび|でんし|じょうほう|いりょう|せいかつ|||かく|ぶんや||さいだい|げん||じん|てき|どういん||

総 動員 数 三〇二二万七四〇〇 名 。 そう|どういん|すう|みっ|ににまんしちし|な これ は 自由 惑星 同盟 全軍 の 六 割 が 一 時 に 動員 さ れる こと を 意味 した 。 ||じゆう|わくせい|どうめい|ぜんぐん||むっ|わり||ひと|じ||どういん|||||いみ| そして それ は 同盟 の 総 人口 一三〇億 の 〇・二三 パーセント で も ある 。 |||どうめい||そう|じんこう|かずみ|おく||ふみ|ぱーせんと|||

歴戦 の 提督 たち も 、 前例 の ない 巨大な 作戦 計画 を 前 に して 無心で は い られ ず 、 でて も いない 額 の 汗 を ぬぐったり 、 用意 さ れた 冷水 を たてつづけ に あおったり 、 隣席 の 同僚 と 私 語 したり する 姿 が 目だつ 。 れきせん||ていとく|||ぜんれい|||きょだいな|さくせん|けいかく||ぜん|||むしんで||||||||がく||あせ|||ようい|||れいすい|||||りんせき||どうりょう||わたくし|ご|||すがた||めだつ 午前 九 時 四五 分 、 統合 作戦 本 部長 シトレ 元帥 が 首席 副 官 マリネスク 少将 を ともなって 入室 する と 、 すぐに 会議 は 開始 さ れた 。 ごぜん|ここの|じ|しご|ぶん|とうごう|さくせん|ほん|ぶちょう||げんすい||しゅせき|ふく|かん||しょうしょう|||にゅうしつ||||かいぎ||かいし||

「 今回 の 帝国 領 へ の 遠征 計画 は すでに 最高 評議 会 に よって 決定 さ れた こと だ が ……」 こんかい||ていこく|りょう|||えんせい|けいかく|||さいこう|ひょうぎ|かい|||けってい|||||

口 を 開いた シトレ 元帥 の 表情 に も 声 に も 高揚 感 は ない 。 くち||あいた||げんすい||ひょうじょう|||こえ|||こうよう|かん|| 彼 が 今回 の 出兵 に 反対である こと を 列席 の 諸 将 は 知っていた 。 かれ||こんかい||しゅっぺい||はんたいである|||れっせき||しょ|すすむ||しっていた

「 遠征 軍 の 具体 的な 行動 計画 案 は まだ 樹立 されて いない 。 えんせい|ぐん||ぐたい|てきな|こうどう|けいかく|あん|||じゅりつ|| 本日 の 会議 は それ を 決定 する ため の もの だ 。 ほんじつ||かいぎ||||けってい||||| 同盟 軍 が 自由 の 国 の 、 自由 の 軍隊 である こと は 、 いまさら 言う まで も ない 。 どうめい|ぐん||じゆう||くに||じゆう||ぐんたい|||||いう||| その 精神 に もとづいて 活発な 提案 と 討論 を おこなって くれる よう 希望 する 」 |せいしん|||かっぱつな|ていあん||とうろん|||||きぼう|

積極 性 を 欠く 発言 に 本 部長 の 苦悩 を みてとった 者 も いた かも しれ ず 、 教育 者 じみ た 語調 に かるい 反発 を 感じた 者 も いた かも しれ ない 。 せっきょく|せい||かく|はつげん||ほん|ぶちょう||くのう|||もの||||||きょういく|もの|||ごちょう|||はんぱつ||かんじた|もの||||| 本 部長 が 口 を 閉じる と 、 しばらく 、 声 が なかった 。 ほん|ぶちょう||くち||とじる|||こえ|| それぞれ の 思い に 浸って いる ようだ 。 ||おもい||ひたって||

ヤン は 前日 、 キャゼルヌ から 聞いた こと を 脳裏 で 反芻 して いた 。 ||ぜんじつ|||きいた|||のうり||はんすう||

「 なにしろ 近々 統一 選挙 が ある 。 |ちかぢか|とういつ|せんきょ|| ここ しばらく 、 対 内 的に 不祥事 が つづいた から な 。 ||たい|うち|てきに|ふしょうじ|||| 勝つ ため に は 外界 に 市民 の 注意 を そらす 必要 が ある 。 かつ||||がいかい||しみん||ちゅうい|||ひつよう|| それ で 今度 の 遠征 と いう わけ さ 」 ||こんど||えんせい||||

統治 者 が 失政 を ごまかす ため の 常 套 手段 だ 、 と ヤン は 思う 。 とうち|もの||しっせい|||||とわ|とう|しゅだん|||||おもう 国 父 ハイネセン が 知ったら 、 さぞ 嘆く こと だろう 。 くに|ちち|||しったら||なげく|| 彼 の 希望 は 、 高 さ 五〇 メートル の 白 亜 の 像 を 建てて もらう こと など で は なく 、 権力 者 の 恣意 に よって 市民 の 権利 と 自由 が 侵さ れる ような 危険 の ない 社会 体制 が きずきあげられる こと に あった はずだ 。 かれ||きぼう||たか||いつ|めーとる||しろ|あ||ぞう||たてて|||||||けんりょく|もの||しい|||しみん||けんり||じゆう||おかさ|||きけん|||しゃかい|たいせい|||||| 人間 が 老い を 約束 されて いる ように 、 国家 は 堕落 と 頽廃 を 約束 されて いる の かも しれ ない 。 にんげん||おい||やくそく|||よう に|こっか||だらく||たいはい||やくそく|||||| だが 、 それにしても 、 選挙 に 勝って 今後 四 年間 の 政権 を 維持 する ため 、 三〇〇〇万 人 の 将兵 を 戦場 へ 送りこむ と いう 発想 は 、 ヤン の 理解 を こえる 。 ||せんきょ||かって|こんご|よっ|ねんかん||せいけん||いじ|||みっ|よろず|じん||しょうへい||せんじょう||おくりこむ|||はっそう||||りかい|| 三〇〇〇万 の 人間 、 三〇〇〇万 の 人生 、 三〇〇〇万 の 運命 、 三〇〇〇万 の 可能 性 、 三〇〇〇万 の 喜怒哀楽 ―― それ ら を 死 地 へ 送りこみ 、 犠牲 の 列 に くわえる こと に よって 、 安全な 場所 に いる 連中 は 利益 を 独占 する のだ 。 みっ|よろず||にんげん|みっ|よろず||じんせい|みっ|よろず||うんめい|みっ|よろず||かのう|せい|みっ|よろず||きどあいらく||||し|ち||おくりこみ|ぎせい||れつ||||||あんぜんな|ばしょ|||れんちゅう||りえき||どくせん||

戦争 を する 者 と さ せる 者 と の 、 この 不合理 きわまる 相関 関係 は 、 文明 発生 以来 、 時代 を へて も いささか も 改善 されて いない 。 せんそう|||もの||||もの||||ふごうり||そうかん|かんけい||ぶんめい|はっせい|いらい|じだい||||||かいぜん|| むしろ 古代 の 覇王 の ほう が 、 陣頭 に 立って みずから の 身 を 危険に さらした だけ まし かも しれ ず 、 戦争 を さ せる 者 の 倫理 性 は 下落 する いっぽう と も 言える のである ……。 |こだい||はおう||||じんとう||たって|||み||きけんに|||||||せんそう||||もの||りんり|せい||げらく|||||いえる|

「 今回 の 遠征 は 、 わが 同盟 開闢 以来 の 壮挙 である と 信じます 。 こんかい||えんせい|||どうめい|かいびゃく|いらい||そうきょ|||しんじます 幕僚 と して それ に 参加 さ せて いただける と は 、 武人 の 名誉 、 これ に すぎ たる は ありません 」 ばくりょう|||||さんか||||||たけと||めいよ|||||| それ が 最初の 発言 だった 。 ||さいしょの|はつげん|

抑揚 に 乏しい 、 原稿 を 棒読み する ような 声 の 主 は 、 アンドリュー ・ フォーク 准将 である 。 よくよう||とぼしい|げんこう||ぼうよみ|||こえ||おも|||ふぉーく|じゅんしょう| 二六 歳 と いう 若 さ だ が 、 年齢 より 老けて みえ 、 ヤン の ほう が 年少の ように 思えた 。 にろく|さい|||わか||||ねんれい||ふけて||||||ねんしょうの|よう に|おもえた 血色 の 悪い 顔 は 肉づき が 薄 すぎた が 、 眉 目 そのもの は 悪く ない 。 けっしょく||わるい|かお||にくづき||うす|||まゆ|め|その もの||わるく| ただ 、 対象 を すくいあげる ような 上目づかい と 、 ゆがんだ ような 口 もと が 、 彼 にたいする 印象 を やや 暗い もの に して いた 。 |たいしょう||||うわめづかい||||くち|||かれ||いんしょう|||くらい|||| もっとも 、 優等 生 と いう 表現 に 無縁だった ヤン など が 秀才 を 見る と 、 偏見 の レンズ が かかって いる かも しれ ない のだ が 。 |ゆうとう|せい|||ひょうげん||むえんだった||||しゅうさい||みる||へんけん||れんず||||||||

フォーク が 延々と 軍部 の 壮挙 ―― つまるところ 自分 自身 が 立案 した 作戦 ―― を 美辞麗句 で 自賛 した あと 、 つづいて 発言 した の は 、 第 一〇 艦隊 司令 官 の ウランフ 中将 だった 。 ふぉーく||えんえんと|ぐんぶ||そうきょ||じぶん|じしん||りつあん||さくせん||びじれいく||じさん||||はつげん||||だい|ひと|かんたい|しれい|かん|||ちゅうじょう|

ウランフ は 古代 地球 世界 の なかば を 征服 した と 言わ れる 騎馬 民族 の 末 裔 で 、 筋骨 たくましい 壮年 の 男 である 。 ||こだい|ちきゅう|せかい||||せいふく|||いわ||きば|みんぞく||すえ|えい||きんこつ||そうねん||おとこ| 色 は 浅黒く 、 両眼 は するどく 輝いて いる 。 いろ||あさぐろく|りょうがん|||かがやいて| 同盟 軍 の 諸 提督 の なか でも 、 勇 将 と して 市民 の 人気 が 高い 。 どうめい|ぐん||しょ|ていとく||||いさみ|すすむ|||しみん||にんき||たかい

「 吾々 は 軍人 である 以上 、 赴け と 命令 が あれば 、 どこ へ でも 赴く 。 われ々||ぐんじん||いじょう|おもむけ||めいれい||||||おもむく まして 、 暴 虐 な ゴールデンバウム 王朝 の 本拠 地 を つく 、 と いう のであれば 、 喜んで 出征 しよう 。 |あば|ぎゃく|||おうちょう||ほんきょ|ち||||||よろこんで|しゅっせい| だが 、 いう まで も なく 、 雄 図 と 無謀 は イコールで は ない 。 |||||おす|ず||むぼう||いこーるで|| 周到な 準備 が 欠かせ ない が 、 まず 、 この 遠征 の 戦略 上 の 目的 が 奈辺 に ある か を うかがいたい と 思う 」 しゅうとうな|じゅんび||かかせ|||||えんせい||せんりゃく|うえ||もくてき||なへん|||||||おもう 帝国 領 内 に 侵入 し 、 敵 と 一 戦 を まじえて それ で 可 と する の か 。 ていこく|りょう|うち||しんにゅう||てき||ひと|いくさ|||||か|||| 帝国 領 の 一部 を 武力 占拠 する と して も 一時的に か 恒久 的に か 。 ていこく|りょう||いちぶ||ぶりょく|せんきょ|||||いちじてきに||こうきゅう|てきに| もし 恒久 的である なら 占拠 地 を 要塞 化 する の か 否 か 。 |こうきゅう|てきである||せんきょ|ち||ようさい|か||||いな| それとも 帝国 軍 に 壊滅 的 打撃 を あたえ 、 皇帝 に 和平 を 誓わ せる まで は 帰還 し ない の か 。 |ていこく|ぐん||かいめつ|てき|だげき|||こうてい||わへい||ちかわ||||きかん|||| そもそも 作戦 じたい が 短期 的な もの か 長期 的な もの か ……。 |さくせん|||たんき|てきな|||ちょうき|てきな||

「 迂遠 ながら お 訊 きしたい もの だ 」 うえん|||じん||| ウランフ が 着席 する と 、 返答 を うながす ように シトレ と ロボス の 両 元帥 が ひとしく フォーク 准将 に 視線 を むけた 。 ||ちゃくせき|||へんとう|||よう に|||||りょう|げんすい|||ふぉーく|じゅんしょう||しせん||

「 大軍 を もって 帝国 領土 の 奥深く 進攻 する 。 たいぐん|||ていこく|りょうど||おくふかく|しんこう| それ だけ で 帝国 人 ども の 心 胆 を 寒 から しめる こと が できましょう 」 |||ていこく|じん|||こころ|たん||さむ||||| それ が フォーク 准将 の 回答 だった 。 ||ふぉーく|じゅんしょう||かいとう|

「 では 戦わ ず して 退く わけ か 」 |たたかわ|||しりぞく||

「 それ は 高度の 柔軟 性 を 維持 し つつ 、 臨機応変 に 対処 する こと に なろう か と 思います 」 ||こうどの|じゅうなん|せい||いじ|||りんきおうへん||たいしょ|||||||おもいます ウランフ は 眉 を しかめて 不満の 意 を 表した 。 ||まゆ|||ふまんの|い||あらわした

「 もう すこし 具体 的に 言って もらえ ん か な 。 ||ぐたい|てきに|いって|||| あまりに 抽象 的 すぎる 」 |ちゅうしょう|てき|

「 要するに 、 行き当たり ばったり と いう こと で は ない の か な 」 ようするに|ゆきあたり||||||||||

皮肉 の スパイス を きかせた 声 が 、 フォーク の 唇 の ゆがみ を 大きく した 。 ひにく||すぱいす|||こえ||ふぉーく||くちびる||||おおきく| 第 五 艦隊 司令 官 ビュコック 中将 が 声 の 主だった 。 だい|いつ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう||こえ||おもだった シトレ 元帥 、 ロボス 元帥 、 グリーンヒル 大将 ら が 数 目 を おく 同盟 軍 の 宿 将 である 。 |げんすい||げんすい||たいしょう|||すう|め|||どうめい|ぐん||やど|すすむ| 士官 学校 の 卒業 生 で は なく 、 兵士 から の 〝 叩き上げ 〟 である ため 、 彼ら より 階級 こそ 下 であって も 、 年齢 と 経験 は うわまわる 。 しかん|がっこう||そつぎょう|せい||||へいし|||たたきあげ|||かれら||かいきゅう||した|||ねんれい||けいけん|| 用 兵 家 と して 熟練 の 境地 に ある と 評されて いた 。 よう|つわもの|いえ|||じゅくれん||きょうち||||ひょうされて| さすが に 遠慮 も あり 、 正規の 発言 で は ない こと も あって 、 フォーク は 丁重に 無視 する 態度 を とる こと に した ようだ 。 ||えんりょ|||せいきの|はつげん|||||||ふぉーく||ていちょうに|むし||たいど||||||

「 ほか に なに か ……」

そう こと さらに 言った 。 |||いった

ためらった すえ 、 ヤン は 発言 を もとめた 。 ||||はつげん||

「 帝国 領 内 に 侵攻 する 時機 を 、 現 時点 に さだめた 理由 を お 訊 きしたい 」 ていこく|りょう|うち||しんこう||じき||げん|じてん|||りゆう|||じん| まさか 選挙 の ため と は 言う まい 。 |せんきょ|||||いう| どう 答える か と 思って いる と 、 |こたえる|||おもって||

「 戦い に は 機 と いう もの が あります 」 たたかい|||き||||| ヤン に むかって 、 フォーク 准将 は とくとく と 説明 を はじめた 。 |||ふぉーく|じゅんしょう||||せつめい||

「 それ を のがして は 、 けっきょく 、 運命 そのもの に 逆らう こと に なります 。 |||||うんめい|その もの||さからう||| あの とき 決行 して おれば 、 と 後日 に なって 悔いて も 、 時 すでに 遅し と いう こと に なりましょう 」 ||けっこう||||ごじつ|||くいて||じ||おそし||||| 「 つまり 、 現在 こそ が 帝国 にたいして 攻勢 に でる 機会 だ と 貴 官 は 言いたい の か 」 |げんざい|||ていこく||こうせい|||きかい|||とうと|かん||いいたい|| 確認 する の も ばかばかしい 気 が した が 、 ヤン は そう 訊 ねた 。 かくにん|||||き|||||||じん|

「 大 攻勢 です 」 だい|こうせい|

フォーク は 訂正 した 。 ふぉーく||ていせい| 過剰な 形容 句 が 好きな 男 だ な 、 と ヤン は 思った 。 かじょうな|けいよう|く||すきな|おとこ||||||おもった

「 イゼルローン 失 陥 に よって 帝国 軍 は 狼狽 して なす ところ を 知ら ない でしょう 。 |うしな|おちい|||ていこく|ぐん||ろうばい|||||しら||