この 素晴らしい 世界 に 祝福 を! あぁ 、駄女 神さま (23)
…… こうして 、 何 が 目的 で この 地 に やって 来た の かも 明かす 事 無く 、 魔 王 の 幹部 は こんな 所 で 浄化 さ れた 。
7.
勝利 に 沸く 冒険 者 達 の 声 を 聞き ながら 、 傷 だらけ の ダクネス は 、 片 膝 を つき 、 デュラハン の 体 が 消えた 場所 の 前 で 、 祈り を 捧げる ポーズ で 目 を 閉じて いる 。
そんな ダクネス に 、 めぐみ ん が 恐る恐る 声 を かけた 。
「…… ダクネス 、 何 を して る のです か ? ダクネス は 、 目 を 閉じた まま 、 独白 でも する 様 に 答えた 。
「…… 祈り を 、 捧げて いる 。 デュラハン は 不条理な 処刑 で 首 を 落とさ れた 騎士 が 、 恨み で アンデッド 化 する モンスター だ 。 こいつ とて 、 モンスター に なり たくて なった 訳 で は ない だろう 。 自分 で 斬り つけて おいて 何 だ が 、 祈り ぐらい は な ……」
そう です か …… と 呟く めぐみ んに 、 なおも ダクネス は 続ける 。
「…… 腕相撲 勝負 を して 私 に 負けた 腹いせ に 、 私 の 事 を 鎧 の 中 は ガチムチ の 筋肉 な んだ ぜ と 、 バカな 大 噓 を 流して くれた セドル ……。 おい ダクネス 、 暑い から 団 扇 代わり に その 大 剣 で 扇 い で くれ ! なんなら 当てて も いい けど 。 当たる ん なら な ! …… と 、 バカ 笑い して 私 を からかった ヘインズ 。 そして ……。
一 日 だけ パーティー に 入れて 貰った 時 に 、 何で あんた は モンスター の 群れ に 突っ込んで 行く んだ と 泣き叫んで いた ガリル 。 …… 皆 、 あの デュラハン に 斬ら れた 連中 だ 。 今 思えば 、 ろく で も ない 連中 ながら も 、 私 は 彼ら を 嫌って は い なかった らしい …………」
その ダクネス の 言葉 に 、
「 え 、 えっと ……、 そ 、 そう です か 。 それ じゃ 、 続き は 後 で 聞いて あげます から 、 とりあえず 、 ギルド に 戻りましょう か 」 慌てて 話題 を 切り上げよう と する 、 めぐみ ん の 言葉 を 聞いて か 聞か ず か 。 ダクネス は 目 を 閉じた まま 、 優し げ な 声 で 呟いた 。
「…… あいつ ら に 、 もう 一 度 会える なら ……。 一 度 くらい 、 一緒に 酒 でも 飲み たかった な …………」
「「「 お …… おう ……」」」
目 を 閉じて いる ダクネス の 後ろ から 、 戸惑った 様 な 声 が かけ られた 。
ビクリ と 震える ダクネス の 背後 で 照れて いる 三 人 の 男 達 。
それ は 確かに 、 先ほど ベルディア に 斬ら れた 筈 の 三 人 だった 。
やがて 一 人 の 男 が 申し訳無 さ そうに ……。
「 そ 、 その ……。 わ 、 悪かった な 色々 と 。 お前 さん が 俺 達 に 、 そんな 風 に ……」
「 あ ……、 ああ 。 悪かった よ 、 腕相撲 に 負けた ぐらい で 変な 噂 立て ち まって ……。 こ 、 今度 奢 る から よ ……」
「 剣 が 当たら ない 事 、 実は 気 に して た の か ? その 、 わ 、 悪かった な ……」
次々 と かけられる 三 人 の 言葉 に 、 祈り を 捧げる ポーズ で 目 を 閉じて いた ダクネス は 小さく 震え 出し 、 頰 が みるみる 赤く なる 。 そこ に 弾んだ 声 で 、 空気 を 読ま ず に アクア が 言った 。
「 ダクネス 、 任せて 頂 戴 ! 私 ぐらい に なれば 、 あんな 死に たて ホヤホヤ の 死体 なんて ちょ ちょいと 蘇生 よ ! 良かった ね 、 これ で 一緒に お 酒 が 飲める じゃ ない ! アクア に は 、 悪気 は 無かった のだろう 。
だが ダクネス は その 言葉 に 、 背後 に 男 達 が いる と も 知ら ず に 続けた 自分 の 独白 を 思い出し 、 涙 目 に なった 赤い 顔 を 両手 で 覆って 座り込んだ 。
「 良かった じゃ ない か 、 みんな と また 会えて 。 ほら 、 飲み に 行って こい よ 」
俺 が ほがらかに ダクネス に 声 を かける と 、 ダクネス が 両手 で 顔 を 覆った まま 呟いた 。
「…… 死にたい ……」 俺 は そんな ダクネス に 。 「 お前 、 常日頃 から 責め られ た がって いた だ ろ 。 遠慮 する な よ 、 三 日間 ぐらい この 話 を 続けて やる から 」
「 こ 、 こ 、 この 責 め は 、 私 の 望む タイプ の 羞恥 責 め と は 違う から ……っ! ダクネス が 、 肩 を 震わせ 呟いた 。
エピローグ
ベルディア 討伐 の 翌日 の 事 。
俺 は 今後 の 事 を 考え ながら 、 一 人 、 ギルド へ と 歩いて いた 。
俺 に 課せ られた の は 魔 王 討伐 だ 。
だが そう なる と 、 ベルディア みたいな 強敵 を 、 これ から も 相手 に しなければ なら なく なる 。 魔 王 討伐 を 成し遂げ 、 願い を 一 つ 、 叶えて 貰う か 。
それとも 討伐 は 諦めて 、 この 世界 に 安住 の 地 を 見つける か 。
…… 答え は もちろん 決まって いる 。
最 弱 職 に 就いて いる 俺 が 、 これ から 先 も 、 あんなに 都合 良く 勝てる 訳 が ない 。
これ から は 、 危ない 事 は せ ず に のんびり 暮らそう 。
日本 の 知識 を 生かして 商売 を する のだ 。
安全な 仕事 を し つつ 、 たまに は 刺激 を 求め 、 簡単な クエスト を こなしたり して 。
そんな 今後 の 人生 設計 を 考え ながら 、 俺 は 冒険 者 ギルド の 入り口 に 手 を かけた 。
ドア を 開ける と むせ返る ような 臭い が 鼻 を 突く 。
人 の 熱気 と 酒 の 臭い が 、 俺 が 開けた 入り口 から 外 に 向かって 流れ出して くる 。
魔 王 の 幹部 を 討ち取った 記念 に 、 冒険 者 達 が 昼間 から 宴会 を 開いて いる らしい 。
「 あっ! ちょっと カズマ 、 遅かった じゃ ない の ! もう 既に 、 皆 出来上がって る わ よ ! ギルド に 足 を 踏み入れた 俺 に 、 アクア が 上機嫌で 笑い かけて きた 。
「 ねえ カズマ 、 お 金 受け取って 来 なさい よ ! もう 、 ギルド 内 の 冒険 者 達 の 殆ど は 、 魔 王 の 幹部 討伐 の 報奨 金 貰った わ よ 。 もちろん 私 も ! でも 見て の 通り 、 もう 結構 飲んじゃった んだ けど ね ! 何 が 嬉しい の か 、 報酬 の 入った 袋 を 開けて 俺 に 見せて 、 た は ー 、 と 頭 を ぽり ぽり と かき ながら 、 アクア が 実に 楽し そうに ケラケラ と 笑う 。
こ 、 こいつ も 出来上がって いやがる 。
この 世界 で の 飲酒 に 対する 年齢 制限 は どう なって いる のだろう 。
見れば 、 ギルド 内 の 冒険 者 達 も 、 殆ど が 歩く 事 も 出来 そうに ない 程 に 、 ぐ で ん ぐ で んだ 。
酔っ払い 達 は 放っておき 、 俺 は カウンター へ と 向かう 。
そこ に は 既に 、 ダクネス とめぐ みん の 姿 が あった 。
「 来た か カズマ 。 ほら 、 お前 も 報酬 を 受け取って こい 」
「 待って ました よ カズマ 。 聞いて ください 、 ダクネス が 、 私 に は お 酒 は 早い と 、 ど ケチ な 事 を ……」
「 いや 待て 、 ケチ と は 何 だ 、 そう で は なく ……! 二 人 が ワイワイ やって いる ので 、 俺 は 受付 の お 姉さん の 前 に 立つ 。
…… と 、 見慣れた 受付 の お 姉さん が 、 俺 を 見て なぜ か 微妙な 表情 を 浮かべた 。
「 ああ 、 その ……。 サトウカズマ さん 、 です ね ? お 待ち して おり ました 」
……?
受付 の お 姉さん の 態度 に 、 違和感 を 覚える 。
「 あの ……。 まずは そちら の お 二 方 に 報酬 です 」
お 姉さん は 、 言って 小さな 袋 を ダクネス と めぐみ ん に 手渡した 。
あれ 、 俺 の は ?
疑問 に 思って いる 俺 に 、 お 姉さん が 。
「…… あの ……。 です ね 。 実は 、 カズマ さん の パーティー に は 特別 報酬 が 出て います 」 ……!? 「 え 、 何で 俺 達 だけ が ? 俺 の 疑問 の 言葉 に 、 だれ か の 声 が 答えて くれた 。
「 おいおい MVP ! お前 ら が い なきゃ 、 デュラハン なんて 倒せ なかった んだ から な ! その 声 に 、 そう だ そうだ と 騒ぎ 出す 酔っ払い 達 。
こ 、 こい つら ……。
この 世界 に 来て 苦労 続き だった 事 で 、 不覚に も その 優し さ に ジン と きて しまった 。
俺 が 四 人 を 代表 して 、 特別 報酬 を 受け取る 事 に 。
受付 の お 姉さん が 、 コホン と 一 つ 咳払い し 、 そして ……。
「 えー 。 サトウカズマ さん の パーティー に は 、 魔 王 軍 幹部 ベルディア を 見事 討ち取った 功績 を 称えて ……。 ここ に 、 金三 億 エリス を 与えます 」 「「「「 さっ!?」」」」 俺 達 は 、 思わず 絶句 した 。 それ を 聞いた 冒険 者 達 も 、 シンと 静まり返る 。
そして ……。
「 おいおい 、 三億って なんだ 、 奢 れよ カズマー ! 「 う ひ ょ ー ! カズマ 様 、 奢って 奢って ー ! 冒険 者 達 の 奢 れ コール 。
あっ、 そう だ ! 「 おい ダクネス 、 めぐみ ん ! お前 ら に 一 つ 言って おく 事 が ある ! 俺 は 今後 、 冒険 の 回数 が 減る と 思う ! 大金 が 手 に 入った 以上 、 のんびり と 安全に 暮らして 行きたい から な ! 「 おい 待てっ! 強敵 と 戦え なく なる の は とても 困る ぞっ!? と いう か 、 魔 王 退治 の 話 は どう なった のだ !?」 「 私 も 困ります よ 、 私 は カズマ に 付いて行き 、 魔 王 を 倒して 最強の 魔法使い の 称号 を 得る のです ! 騒ぐ 二 人 の 言葉 を 搔 き 消して 、 どんどん 盛り上がって いく ギルド 内 。
そんな 中 、 申し訳無 さ そうな 表情 を 浮かべる 受付 の お 姉さん が 、 俺 に 一 枚 の 紙 を 手渡した 。
それ は 、 ゼロ が 沢山 並んだ 紙 。
この 世界 の 小切手 ?
と 、 酔っ払った アクア が 上機嫌で 俺 の 隣 に やって 来て 、 俺 の 手元 の 紙 を 横 から 覗き込む 。
「 ええ と 、 です ね 。 今回 、 カズマ さん 一行 の ……、 その 、 アクア さん の 召喚 した 大量の 水 に より 、 街 の 入り口 付近 の 家々 が 一部 流さ れ 、 損壊 し 、 洪水 被害 が 出て おり まして ……。 …… まあ 、 魔 王 軍 幹部 を 倒した 功績 も ある し 、 全額 弁償 と は 言わ ない から 、 一部 だけ でも 払って くれ …… と ……」
受付 の お 姉さん は そう 告げる と 、 そっと 目 を 逸ら して そそくさ と 奥 に 引っ込んで 行く 。
俺 の 手元 の 紙 を 見て 、 まず め ぐみん が 逃げ出した 。
次いで 、 逃げ出そう と する アクア の 襟首 を 素早く 摑 む 。
俺 達 の 雰囲気 で 請求 の 額 を 察した 冒険 者 達 が 、 そっと 目 を 逸ら した 。
請求 を 見て いた ダクネス が 、 俺 の 肩 に ポン と 手 を 置き ……。
「 報酬 三億 。 …… そして 、 弁償 金額 が 三億四千万 か 。 …… カズマ 。 明日 は 、 金 に なる 強敵 相手 の クエスト に 行こう 」
ダクネス は そんな 事 を 言い ながら 、 心底 嬉し そうに 良い 笑顔 で 笑 いやがった 。
…… どう しよう も ない 仲間 と 共に 、 この 理不尽な 世界 で 一生 暮らす ?
………… 俺 は そっと 目 を 閉じる と 、 深く 、 魔 王 討伐 を 決意 した 。
この ろく で も ない 世界 から 、 脱出 する ため に !
〈 了 〉