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JIN-仁- 完结编, JIN-仁- 完结编 #05

( 咲 ) え ッ …  え ッ !?

≪( 三吉 ) 坂本 様   後ろ !

先生 !

先生 !

〈( 仁 ) 何 が …  起こって る んだ 〉

先生 ッ   先生 !

〈 ここ   どこ だ ?〉

〈 結婚 式 ?〉

( 文 左 衛 門 ) お初 に こんな 日 が 来る た あ

〈 あれ は 成長 した   お初 ちゃん な の か ?〉

〈 南 …  方 ?〉

〈 じゃあ   あの 男 は   俺 の 先祖 ?〉

〈 何 だ ?〉

〈 ここ は 現代 ?〉

〈 俺 の   生まれた 家 〉

行って きま ~ す

〈 あれ は   俺 …〉

〈 じゃ ない 〉

あ ッ   体操 着

〈 どういう こと な んだ 〉

〈 お初 ちゃん が 成長 する と 俺 じゃ ない 俺 が 生まれる ?〉

お 返事 ください まし   先生 !

お初 ちゃん !

戻った 先生

お初 ちゃん が !

DIC …  何で !?

何で !  何で ッ

戻って こい   お初 ちゃん !

お初 ちゃん   戻って こい !

( 女将 ) お初 …

( 文 左 衛 門 ) これ が お初 の 運命 だった のだ

申し訳 あり ませ ん

お初 ちゃん が 大きく なる と 先生 の ご 先祖 の 方 に 嫁ぐ

すると   先生 の ご 先祖 は

本来   出会う はずの ご 先祖 と 出会わ なく なり

先生 は   今 の 先生 と して は

お 生まれ に なら ない と いう こと で ございます か ?

消えて しまった 間 に そういう 映像 を 見た んです

あの … 「 えいぞう 」 と は ?

絵巻 みたいな もの です

私 は   お初 ちゃん の 命 と 引き換え に 生まれて くる

人間 な んじゃ ない でしょう か

だから   あんな   あり え ない ような DIC が 起こって

お初 ちゃん は   助から なく なって

その 代わり に   私 が 戻って こ れて …

では   これ が

お初 ちゃん の 運命 であった と いう こと で ございましょう

でも   私 が 来 なければ

もう 少し 長く   生き られたり …

運命 であれば イカヒコーキ を 追いかけ ず と も

蝶 を 追いかけて   同じ とき に 同じ 怪我 を した の や も しれ ませ ぬ

先生 の せい で は …

前 から 感じて いた こと です けど

私 は 本当 は   誰一人 助けて い ない の かも しれ ませ ん

先生 が 助けた 方々 は

先生 が   いら した から 病気 に なった

逆に   死ぬ 運命 である 方 は

助けて も   程なく 命 を 落とさ れる と いう カラ クリ の こと で ございます か

私 は   何 か を 変える こと なんて でき ない し

そんな こと   望ま れて も い ない

神 は   それ を 改めて 知ら しめた んじゃ ない でしょう か

一 番   分かり やすい 形 で

龍 馬 さん が   襲わ れた んです か ?

( 勝 ) 京 の 寺田 屋 で 謀 反 を 企てた かどで

捕らえ られ そうに なった って 噂 だ

あの … 龍 馬 さん は   無事な んです か ?

逃げのびた らしい よ

先生

こっか ら 先 龍 馬 と   かかわる とき に ゃあ

十分   用心 して くん な

先生   ありゃ   例の アレ かい ?

そう です

ペニシリン を 粉末 化 しよう と して る んです

どれ   ちょいと

( 橘 ) あの …

咲 と   川越 に 行か れた そうで

あ ッ ≪( 橘 ) 先生 は   その …

咲 の こと を   いかが お 考え な ので ございましょう か

私 に   できる こと は

咲 さん を 一人前 の 医者 に する こと だけ です

咲 さん も それ を 望んで いる と 思い ます

本当に   そう でしょう か ?

身元 も 分かり ませ ん し

こんな 幽霊 みたいな 男 と 一緒に なろう なんて 人   いま せ ん よ

〈 俺 が 聞いた 話 は 〉

〈 あの 「 寺田 屋 事件 」 て やつ だ と 思う 〉

〈 俺 と いう 異物 を 抱え込み ながら も 〉

〈 歴史 は   おそらく 〉

〈 史実 どおり に 進んで いって いる んだろう 〉

〈 龍 馬 さん の 暗殺 に 向けて 〉

《( 龍 馬 ) 南方 仁 が おれば 坂本 龍 馬 は 死な ん !》

《 助け ます よ   俺 が 》

《 この 手 で 》

〈 そんな こと は でき ない んじゃ ない だろう か 〉

〈 もし 俺 が   襲わ れた 龍 馬 さん を 助け られた と して も 〉

〈 それ は   やはり つかの間 の 延命 で 〉

〈 すべて は   無 に 帰して いく ので は ない だろう か 〉

〈 歴史 の 修正 力 と でも いう もの に よって 〉

〈 だ と したら   俺 は 〉

〈 何の ため に ここ に 送ら れて きた のだろう 〉

田 之助 さん

( 田 之助 ) 先生   ちょっくら 診て ほしい やつ が いる んだ よ

( 田 之助 ) 兄さん 先生 に 来て もらった よ

私 の 兄 弟子 で ね   吉 十郎 って 役者 さ

吉 十郎 と は

あの   坂東 吉 十郎 様 で ?

≪( 田 之助 ) ああ   裸 一貫 から

名 題 まで 上りつめた 天才 役者 さ

先生   早く 診て やって くん な

失礼 し ます

鉛 縁 が 見 られ ます

鉛 中毒 です ね

鉛 ?  何 だって   兄さん は 鉛 なんか

舞台 で 使う   お しろい か 何 か に 入って る んじゃ ない でしょう か

お しろ いって   塗る だけ で 中毒 に なる ような もの な の かい ?

お しろい を 落とす とき は どうして ます か ?

( 吉 十郎 ) あ ~ ッ !  う ~ ッ

咲 さ ん   モルヒネ ! はい

これ かも しれ ませ ん ね

落とす とき   湯気 と 一緒に 知らず知らず の うち に

大量の お しろい を   吸い込んで しまう んじゃ ない でしょう か

先生

モルヒネ は   あんまり 効か ぬ よう で 自然に   おさまる の を 待ち ました が

そう です か

兄さん の 息子 の 与吉 だ よ →

ここ で   下働き を さ せて んだ

で   先生   兄さん は 治る の かい ?

鉛 を 体 の 外 に 出す 薬 が ない んです

残念です が   手足 を 切って 延命 を 図る こと しか …

じゃあ   せめて   もう 一 度 舞台 に 立た せる こと は 無理かい ?

舞台 です か ?

来月 の 芝居 に 出 れりゃ →

兄さん は 当たり役 の 朝比奈 を やれる の さ

もう 一 度   朝比奈 やり たい って の が 兄さん の 最後 の 望み な んだ から さ

お 気持ち は 分かり ます が   無理です

手 も 足 も 神経 が 麻痺 して る んです よ

でも   やって み なきゃ 分から ねえ だろう

養生 して も   ひと 月 や そこら で

動き 回れる ように する なんて 絶対 に 無理です

無理 無理 って それ でも 医者 な の かい !

無理 無理   言う だけ なら 誰 だって で きら あ

無理 ひと つ   通せ ねえ で 何 が   医者 先生 様 だ

そんだったら   やめ ち まえ !

先生 に とて   できる こと と …

そう です よ ね

先生 !?

吉 十郎 さん を 仁 友 堂 に 運んで も いい です か ?

壊 疽部 分 が 感染 症 を 起こして る ので

ペニシリン を 点滴 して い ます

同時に   食事 療法 も 始め ます

しらす 干し   ゆず や   しょうが あと   ビタミン C や ミネラル

カルシウム を 多く 含んだ もの を とら せる ように して ください

咲 さ ん   お 願い し ます は い

先生 方 に は   塩化 カルシウム の 製造 を 手伝って いただき ます

( 佐分利 ) 塩化 カルシウム ? はい

塩化 カルシウム で   鉛 中毒 に よる カルシウム 不足 を 補える と 思う んです

塩化 カルシウム は  「 いし ばい 」 から つくる こと が できる ので

腹壁 の 硬直 が   おさまって き ました

やっぱり   塩化 カルシウム は 有効な ようです ね

お 父 っつ ぁん お 薬   効く みたいで   よかった わ ね

与吉 ちゃん ?

佐分利 先生   あと   お 願い し ます 何 か あったら 呼んで ください

( 佐分利 ) はい

先生   いつも に も 増して 張り切って はり まん なあ

ええ

〈 鉛 中毒 の 治療 に は 〉

〈 通常   キレート 剤 が 使用 さ れる 〉

〈 だが   この 時代 に キレート 剤 を つくりだす の は 不可能だ 〉

〈 と なれば 生薬 を 調べて みる しか ない 〉

≪( 福田 ) あらゆる 中毒 に 効く …→

植物 の 中毒 に   よい と さ れる …→

毒 に よる 発熱 の 解熱 作用 が ある と さ れる →

ご 注文 どおり 解毒 作用 の ある 生薬 を 集め ました

じゃあ 鉛 を 排出 する 効果 が ある か どう か

片っ端から 調べて み ましょう

あの   ちなみに どう やって   お 調べ に ?

ネズミ で 薬 を 試す ので ございます か ?

かわいそうです が   医術 の ため です

まず ネズミ の 蒸し 風呂 を つくり ます

お しろい が   蒸気 に 混ざり こむ よう 細工 した 蒸し 風呂 を つくり

そこ に   ネズミ を 入れ ます

これ を 繰り返す こと で

まず   鉛 中毒 の 症状 を 見せる ネズミ を つくりだし

その あと   その ネズミ に 生薬 を 練りこんだ エサ を 与え

その 薬 に   効き目 が ある か どう か 判断 する んです

しかし   何とも 残酷です なあ

本当に

ごめん な

感染 症 は よく なって きて る みたいで ん なあ

傷 も 乾いて き ました ね

( 吉 十郎 ) と まって くれ

一 番   と まって くん さる なら …

これ は お 芝居 の セリフ で ございます か ?

≪( 佐分利 ) 先生   この 分 やったら 舞台   立てる ん と ちゃ い ます ?

先生 !

あまりに 経過 が いい ので びっくり して

よかった わ ね   与吉 ちゃん

お 父 っつ ぁん の 芝居 見 られる かも よ

与吉 ちゃん と 吉 十郎 さん は

けんか でも して いる のでしょう か

≪( 佐分利 ) 舞台 に 立つ の は 反対 なんか も …

そんな こと せ ん と   養生 して

少し でも 長生き して ほしい ん と ちゃ い ます か ?→

吉 十郎 さん   起こし ます よ

吉 十郎 さん は 順調な ので ございます か

では 私 達 も   頑張ら ねば なり ませ ん な

はい

与吉 ちゃん   何 して る の ?

( 与吉 ) ずれて たから

ずれて おり ました か

油   お 持ち いたし ました

ちゃんと 眠ら れて いらっしゃい ます か ?

川越 から 戻ら れて

ろくに お 休み さ れて い ない ので は ?

そう だ   そうだ   ほら   おい

そっち の 檻 の ネズミ   どう です か ?

はい   ただいま

先生   ちょっと 来て ください

お 願い し ます ≪( 福田 ) はい

食事 療法 と 塩化 カルシウム が 思いのほか   効いた みたいで

《 DIC …  何で !》

先生

そう です ね   このまま いけば …

え ~ い

あ ~ ッ !

動ける …

先生

何 か   ご 心配な こと でも …

とても よい 経過 だ と 思わ れる のです が

信じ られ ない ほど   いい です

何 か おかしい んじゃ ない か って ぐらい

え ッ ?

福田 先生   残り の ネズミ は ?

改善 は   さ れて おり ませ ん でした

他 に 生薬 は   ない んです か ?

私 の 知る かぎり 効く と 思わ れる もの は

本当に   もう ない んです か ?

何 千 種類 も 薬 が あって   効く もの が ひと つ も ない んです か ?

先生 !?

すいません   興奮 して

あれ   何で だ ?

少し   のめりこみ すぎて は おら れ ませ ぬ か ?

負け たく ない んです

歴史 の 修正 力 に

修正 力

これ まで 何度 も   治した と 思ったら

足 もと を すくわ れて の 繰り返し でした から

今回 は   完璧に 治し たい んです

ここ で 負けたら

私 は   認める しか なくなる んです

自分 に できる こと は

ほんの 少し の 延命 だけ で

結局 は   何も 変える こと は でき ない んだ って

延命 だけ で は   いけない のです か ?

すべて の 医術 は   しょせん

延命 に しか すぎ ぬ ので は ございませ ぬ か ?

未来 が   いかに 進んだ 世 か は 存じ ませ ぬ が

人 は   やはり 死ぬ ので ございましょう ?

それ は …

勝つ の 負ける の   おっしゃい ます が

吉 十郎 さん を 鉛 中毒 から   完璧に 救え

70 まで   生き延び させた と して も

先生 が   ここ に 来 なければ

そもそも   そういう 運命 であった と いう 考え から する と

それ とて   勝った と いう こと に は なら ぬ ので は ございませ ぬ か ?

じゃあ

私 は   何の ため に ここ に 送ら れて きた んでしょう か

( 物音 )

( 吉 十郎 ) どこ やった   与吉 !

何 やって は る んで っか   やめ な は れ

何 が あった んです か ?

こいつ が 俺 の ホン を 捨て や がった んだ よ

ホン ? 歌舞伎 の ホン だ よ

今度 やる 曽我 対面 だけ が   ねえ んだ よ !

《 与吉 ちゃん   何 して る の ?》

やった ん か ?  お前

芝居 なんか せ ん と 長生き して ほしい から か ?

( 吉 十郎 ) そんな ん じゃ ねえ んだ よ   先生

こいつ は なあ   俺 の こと が 嫌いで 嫌いで   しかた が ねえ んだ よ

俺 が 舞台 に 立つ の を 邪魔 し たい だけ な んだ よ

そう だ よ なあ

何とか 言え   この 野郎 ! 吉 十郎 さん !

治療   やめ ます よ

事情 は 知ら ん けど 子供 を 殴ら せる ため に

あんた を 治して る ん と ちゃ う

吉 十郎 さん も   佐分利 先生 も

ちょっと 待って ください

与吉

荷物   まとめろ

待って ください   吉 十郎 さん

行く こと ない   ここ に おり !

今度 は ここ の 厄介 者 に なる つもり か ?

とりあえず 行って 様子 を 見て き ます

投薬 やめたら どう なる か 分かり ませ ん し

では   支度 を いたし ます

≪( 吉 十郎 ) 逢って くん さる か →

いかにも ~→

そい つ あ   近頃   か っち け ねえ

さらば 二 人 を   呼び出す べ え か ~

よく   あんなに 動け ます ね

あ ッ …

大丈夫です か ?  吉 十郎 さん

で え じょうぶだ

これ …

≪( 役者 ) やっぱり 無理な んじゃ ねえ か ?

ありゃ   駄目だ よ 大丈夫な の か ?

で え じょうぶだ よ !

俺 は   でき んだ よ

ああ ッ 吉 十郎 さん

ここ で 無理 したら ≪( 佐分利 ) ちょっと   す ん ま へん

ちょっと   す ん ま へん

て め え   やぶ医者

ああ ~  もう 大丈夫   大丈夫

私 が 痛み止め   打ち 忘れた ん や

ちょ ちょ ちょっと   治せ ます さかい 心配 せ ん と いて ください

≪( 役者 達 ) 医者 が   そう 言う なら よ 本番 は   しっかり 頼んだ ぞ

( 佐分利 ) す ん ま へんな

≪( 役者 ) しっかり して くれよ

芝居 に 出る の は   考え 直した ほう が いい と 思い ます   このまま 続ければ

舞台 に 立つ 前 に   亡くなって しまう こと だって   あり え ます

どうして   そこ まで して

舞台 に 立た なければ なら ない んです か ?

それ が   役者 だ から です か ?

親 だ から さ

親 ?

言わ ない ど いて くれよ

口止め さ れて る んだ から

はい

兄さん は   役者 バカ って やつで ね →

芸 の 肥やし って 言っちゃ あ 飲む   打つ   買う を 繰り返し →

女房 と   まだ 言葉 も 出 ねえ 与吉 を →

面倒 くせ え って 追い出し ち まった の さ →

だけど   今度 は その 母親 に 男 が できた らしくて ね

行く 場所 の なくなった 与吉 は

ここ に 転がりこんで きた って わけ さ →

その頃   兄さん は もう 体 を 悪く して たし →

長く ない だろう から →

何とか   道 を つけて やろう と →

躍起に なって 芝居 の 稽古 を さ せよう と した の さ

《 ほら   立つ んだ よ 》

≪( 田 之助 ) けど   あの 子 も 強情で →

まったく 覚えよう と し なくて さ

《 与吉 !》

≪( 田 之助 ) ついに 手 が 出る ように な っち まって

与吉 は 与吉 で 口 も きか なく な っち まって さ

与吉 ちゃん は   どうして 稽古 を し なかった のです か ?

芸 の ため に 捨て られた 与吉 に は

役者 稼業 は 恨み で しか ない んだろう さ

それ なら   しかた ねえ 奉公 の 口 を 探したら どう かって

兄さん に 相談 を 持ちかけた んだ よ そ したら さ …

《 田 之助 》

《 与吉 に   俺 の 芝居 を 見 しちゃ やれ ねえ だろう か 》

《 一 日 だけ で いい 》

《 朝比奈 を やらして もらえ ねえ かって 》

《 座頭 に 頼んじゃ くれ ねえ か ?》

《 兄さん   悪い けど   のめ ない よ 》

《 こんな 役者 を 客 の 前 に 出しちゃ 》

《 座 の 名折れ だ 》

《 俺 が 与吉 に 残して やれる もん は もう   それ しか ねえ んだ よ 》

《 兄さん 》

《 俺 は   人間 の クズ だ 》

《 恨ま れて 当然だ 》

《 今さら   謝って 許して もらおう と 思っちゃ いね えし 》

《 そんな くせ え 芝居 なんて   でき ねえ よ 》

《 けど よ 俺 が   すべて を 注いだ 芸 だけ は 》

《 見せて やりて えん だ よ 》

《 今 の まま じゃ よ 》

《 あいつ   クズ の 親父 から 生まれて きた んだ と 思って 》

《 生きて いく しか ねえ だろう よ 》

《 けど よ 》

《 その クズ に も たった ひと つ だけ でも 》

《 取り柄 が あった って 思えりゃ 》

《 生きて いく の も   ち っと は ましに なる って もんじゃ ねえ か 》

《 田 之助   後生 だ 》

《 田 之助 …》

兄さん に とっちゃ   手足 を 切って 生きながらえる こと は

大して   値打ち が ない の さ

先生

命 の 値打ち って の は

長 さ だけ な の かい ?

さっき は 何で   かばって くれた ん だい ?

私 は   医術 を 極め たい んです

だから   あんた が 最後 まで 芸 を 極め たい 言う 気持ち は 分かる

おう

自分 の 気持ち に 振り回さ れて

患者 を ちゃんと 診 れて い なかった です

長生き さ せる こと ばかり に とらわれて

先生 が   ここ に 送ら れて きた 目的 は

一人一人 の 命 を 救う こと と は 違う もの な ので は ない でしょう か

どういう こと です か ?

もっと 大きな

一人一人 の 世 の 営み を 超えた もの の ため   と いい ます か

何と は 言え ぬ のです が

世 の 営み を 超える もの

何という 薬 です か ?  これ は

吉 十郎 さん の 落ち込んで いる 体 の 働き を

もと に 戻す こと を 考えて 調合 した ので   名前 と 言わ れる と

ありがとう ございます

使わ せて いただき ます

はい

いる わきゃ ねえ か

すぐ 点滴   打ち ます さかい に

( 横 松 ) ここ に も   ゴム を 配すれば 動き やすく なる ので は …

なるほど

一 番   と まって くん さる なら

ありがた 茄子 の …

《 こいつ は なあ   俺 の こと が 》

《 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ 》

どう です か ?

( 横 松 ) よい 感じ です

ふん !

何 して る んです か ?  咲 さ ん

ふん ッ

ふん !

ふん ッ !

これ は …

やはり

もって くれよ

何 か あって も   私ら が 舞台 の 袖 に   い ます から

あり が と な   先生

吉 十郎 さん お 芝居   楽しみに して ます ね

おう

与吉 ちゃん   捜して まいり ます ね

さて と

俺 も   田 之助 に 礼 の ひと つ でも 言って くる かな

与吉 ちゃん

≪( 座頭 ) 吉 十郎   で え じょうぶ か !

兄さん   立てる かい ?

廊下 が 濡れて て 滑 っち まった だけ だい

よい しょ

あ ッ

おかしい な

( 座頭 ) 吉 十郎   残念だ が 諦めて くん ねえ か

≪( 座頭 ) 何 が 起こる か 分か ん ねえ 役者 を

客 の 前 に 出す わけに は いか ん よ

いい じゃ ねえ か 動け なく なった って

血 ヘド   吐いて 倒れた って

それ が 最高に   かぶ いた 芝居 に 見せ れりゃ いい だけ の 話 だ ろ !

能書き ばっかり 並べて んじゃ ねえ よ

そんな こと できる わけ ねえ だろう が !

大丈夫です

必ず   立てる ように し ます

実は   ひと つ   策 が

( 吉 十郎 の うなり 声 )

( 田 之助 ) 兄さん ! 部屋 に 運び ましょう

吉 十郎 さん   聞こえ ます か ?

聞こえ ます か ?

かぶ いた 芝居 だった ろ ?

芝居   だった んです か ?

やっぱり よ

芝居 は 俺 だけ の もん じゃ ねえ もん な

( 足音 )

( 拍手 )

始ま っち まった な

ちき しょう

もう ちょっと だった のに な

吉 十郎 さん   体   起こせ ます か ?

立つ ため の 道具 です

芝居 中   立て なく なったら と 思って つくって みた んです

さて

これ から は   祐 経 殿 へ

折り入って   頼み が ある →

頼んで おいた   二 人 の …

本当 は   吉 十郎 さん が

お 芝居 の こと ばかり 考えて る の が 悔しくて …

だから こんな こと   した んでしょ ?

≪( 吉 十郎 ) すりゃ

逢って くん さる か

死に そうに なって いて も

与吉 ちゃん に は   ひと言 も なし に

お 芝居 の こと ばかり で

ひどい   お 父 っつ ぁん よ ね

だけど   ほんと は

言い たかった こと   たくさん あって

でも   素直に 言え なく なって た だけ じゃ ない か な

与吉 ちゃん と 同じ ように

お 父 っつ ぁん   今   与吉 ちゃん に

話しかけよう と して る んじゃ ない か な

う う ~

うわ ~ ッ

うわ ッ   うわ ~!

( 吉 十郎 の うなり 声 )

≪( 与吉 ) や …  大和屋

大和屋 ~ ッ !

あい すま ぬ

ああ ッ

あいす ま ~ ぬ !

与吉 ~!

よ ッ   日本 一 !

〈 つかの間 の 延命 〉

〈 もしかしたら   延命 に すら なって い ない の かも しれ ない 〉

〈 こうした こと で 命 を 縮めた 可能 性 すら ある 〉

〈 だけど   この 瞬間 に は 〉

〈 長 さ で は 語れ ない 命 の 意味 が ある 〉

〈 残さ れた 時間 を 輝か せる と いう 〉

〈 医療 の 意味 が ある 〉

さらば ~!

田 之助 さん   おい ら

お 父 っつ ぁん の 跡 を 継ぎ たい です

仕込んで もらえ ませ ん か ?

楽な 世界 じゃ ない よ

はい

〈 世代 を 超え 受け継が れて いく 芸 の ように 〉

〈 世 の 営み を 超えて いく もの 〉

〈 歴史 の 修正 力 に あら が える もの を 〉

〈 俺 も 残し たい 〉

な ッ   何 ゆえ !?

え ッ   間違え ました ?

咲 さ ん   何 を した んです か ?

消毒 用 の アルコール を つくろう と

高 濃度 の アルコール に

蒸留 水 を 加えた ところ …

( 山田 ) これ は 水 で は ございませ ぬ

ペニシリン で ございます する と

100 パーセント 近い   アルコール の 脱水 作用 で

ペニシリン が 結晶 化 した んです

これ を   こせば

ペニシリン の 粉末 が 取り出せ ます

ばんざい ばん ざ ~ い

ばんざい   あ ~ ッ

ばんざい

坂本 様 は   何と ?

亀山 社 中 で ペニシリン を 扱う こと は でき ない か と

何 か   ご 心配な こと が ?

龍 馬 さん に 今   かかわる こと は

仁 友 堂 に とって 危険な んじゃ ない か って

では 何の ため に   ペニシリン の 粉末 化 を ?

ここ で 行か ず に して

どこ で 行く ので ございます か

これ は 仁 友 堂 の 使命 で ございます

では

はい

〈 行こう   龍 馬 さん の ところ へ 〉

見て て くれよ

お初 ちゃん



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( 咲 ) え ッ …  え ッ !?

≪( 三吉 ) 坂本 様   後ろ !

先生 !

先生 !

〈( 仁 ) 何 が …  起こって る んだ 〉

先生 ッ   先生 !

〈 ここ   どこ だ ?〉

〈 結婚 式 ?〉

( 文 左 衛 門 ) お初 に こんな 日 が 来る た あ

〈 あれ は 成長 した   お初 ちゃん な の か ?〉

〈 南 …  方 ?〉

〈 じゃあ   あの 男 は   俺 の 先祖 ?〉

〈 何 だ ?〉

〈 ここ は 現代 ?〉

〈 俺 の   生まれた 家 〉

行って きま ~ す

〈 あれ は   俺 …〉

〈 じゃ ない 〉

あ ッ   体操 着

〈 どういう こと な んだ 〉

〈 お初 ちゃん が 成長 する と 俺 じゃ ない 俺 が 生まれる ?〉

お 返事 ください まし   先生 !

お初 ちゃん !

戻った 先生

お初 ちゃん が !

DIC …  何で !?

何で !  何で ッ

戻って こい   お初 ちゃん !

お初 ちゃん   戻って こい !

( 女将 ) お初 …

( 文 左 衛 門 ) これ が お初 の 運命 だった のだ

申し訳 あり ませ ん

お初 ちゃん が 大きく なる と 先生 の ご 先祖 の 方 に 嫁ぐ

すると   先生 の ご 先祖 は

本来   出会う はずの ご 先祖 と 出会わ なく なり

先生 は   今 の 先生 と して は

お 生まれ に なら ない と いう こと で ございます か ?

消えて しまった 間 に そういう 映像 を 見た んです

あの … 「 えいぞう 」 と は ?

絵巻 みたいな もの です

私 は   お初 ちゃん の 命 と 引き換え に 生まれて くる

人間 な んじゃ ない でしょう か

だから   あんな   あり え ない ような DIC が 起こって

お初 ちゃん は   助から なく なって

その 代わり に   私 が 戻って こ れて …

では   これ が

お初 ちゃん の 運命 であった と いう こと で ございましょう

でも   私 が 来 なければ

もう 少し 長く   生き られたり …

運命 であれば イカヒコーキ を 追いかけ ず と も

蝶 を 追いかけて   同じ とき に 同じ 怪我 を した の や も しれ ませ ぬ

先生 の せい で は …

前 から 感じて いた こと です けど

私 は 本当 は   誰一人 助けて い ない の かも しれ ませ ん

先生 が 助けた 方々 は

先生 が   いら した から 病気 に なった

逆に   死ぬ 運命 である 方 は

助けて も   程なく 命 を 落とさ れる と いう カラ クリ の こと で ございます か

私 は   何 か を 変える こと なんて でき ない し

そんな こと   望ま れて も い ない

神 は   それ を 改めて 知ら しめた んじゃ ない でしょう か

一 番   分かり やすい 形 で

龍 馬 さん が   襲わ れた んです か ?

( 勝 ) 京 の 寺田 屋 で 謀 反 を 企てた かどで

捕らえ られ そうに なった って 噂 だ

あの … 龍 馬 さん は   無事な んです か ?

逃げのびた らしい よ

先生

こっか ら 先 龍 馬 と   かかわる とき に ゃあ

十分   用心 して くん な

先生   ありゃ   例の アレ かい ?

そう です

ペニシリン を 粉末 化 しよう と して る んです

どれ   ちょいと

( 橘 ) あの …

咲 と   川越 に 行か れた そうで

あ ッ ≪( 橘 ) 先生 は   その …

咲 の こと を   いかが お 考え な ので ございましょう か

私 に   できる こと は

咲 さん を 一人前 の 医者 に する こと だけ です

咲 さん も それ を 望んで いる と 思い ます

本当に   そう でしょう か ?

身元 も 分かり ませ ん し

こんな 幽霊 みたいな 男 と 一緒に なろう なんて 人   いま せ ん よ

〈 俺 が 聞いた 話 は 〉

〈 あの 「 寺田 屋 事件 」 て やつ だ と 思う 〉

〈 俺 と いう 異物 を 抱え込み ながら も 〉

〈 歴史 は   おそらく 〉

〈 史実 どおり に 進んで いって いる んだろう 〉

〈 龍 馬 さん の 暗殺 に 向けて 〉

《( 龍 馬 ) 南方 仁 が おれば 坂本 龍 馬 は 死な ん !》

《 助け ます よ   俺 が 》

《 この 手 で 》

〈 そんな こと は でき ない んじゃ ない だろう か 〉

〈 もし 俺 が   襲わ れた 龍 馬 さん を 助け られた と して も 〉

〈 それ は   やはり つかの間 の 延命 で 〉

〈 すべて は   無 に 帰して いく ので は ない だろう か 〉

〈 歴史 の 修正 力 と でも いう もの に よって 〉

〈 だ と したら   俺 は 〉

〈 何の ため に ここ に 送ら れて きた のだろう 〉

田 之助 さん

( 田 之助 ) 先生   ちょっくら 診て ほしい やつ が いる んだ よ

( 田 之助 ) 兄さん 先生 に 来て もらった よ

私 の 兄 弟子 で ね   吉 十郎 って 役者 さ

吉 十郎 と は

あの   坂東 吉 十郎 様 で ?

≪( 田 之助 ) ああ   裸 一貫 から

名 題 まで 上りつめた 天才 役者 さ

先生   早く 診て やって くん な

失礼 し ます

鉛 縁 が 見 られ ます

鉛 中毒 です ね

鉛 ?  何 だって   兄さん は 鉛 なんか

舞台 で 使う   お しろい か 何 か に 入って る んじゃ ない でしょう か

お しろ いって   塗る だけ で 中毒 に なる ような もの な の かい ?

お しろい を 落とす とき は どうして ます か ?

( 吉 十郎 ) あ ~ ッ !  う ~ ッ

咲 さ ん   モルヒネ ! はい

これ かも しれ ませ ん ね

落とす とき   湯気 と 一緒に 知らず知らず の うち に

大量の お しろい を   吸い込んで しまう んじゃ ない でしょう か

先生

モルヒネ は   あんまり 効か ぬ よう で 自然に   おさまる の を 待ち ました が

そう です か

兄さん の 息子 の 与吉 だ よ →

ここ で   下働き を さ せて んだ

で   先生   兄さん は 治る の かい ?

鉛 を 体 の 外 に 出す 薬 が ない んです

残念です が   手足 を 切って 延命 を 図る こと しか …

じゃあ   せめて   もう 一 度 舞台 に 立た せる こと は 無理かい ?

舞台 です か ?

来月 の 芝居 に 出 れりゃ →

兄さん は 当たり役 の 朝比奈 を やれる の さ

もう 一 度   朝比奈 やり たい って の が 兄さん の 最後 の 望み な んだ から さ

お 気持ち は 分かり ます が   無理です

手 も 足 も 神経 が 麻痺 して る んです よ

でも   やって み なきゃ 分から ねえ だろう

養生 して も   ひと 月 や そこら で

動き 回れる ように する なんて 絶対 に 無理です

無理 無理 って それ でも 医者 な の かい !

無理 無理   言う だけ なら 誰 だって で きら あ

無理 ひと つ   通せ ねえ で 何 が   医者 先生 様 だ

そんだったら   やめ ち まえ !

先生 に とて   できる こと と …

そう です よ ね

先生 !?

吉 十郎 さん を 仁 友 堂 に 運んで も いい です か ?

壊 疽部 分 が 感染 症 を 起こして る ので

ペニシリン を 点滴 して い ます

同時に   食事 療法 も 始め ます

しらす 干し   ゆず や   しょうが あと   ビタミン C や ミネラル

カルシウム を 多く 含んだ もの を とら せる ように して ください

咲 さ ん   お 願い し ます は い

先生 方 に は   塩化 カルシウム の 製造 を 手伝って いただき ます

( 佐分利 ) 塩化 カルシウム ? はい

塩化 カルシウム で   鉛 中毒 に よる カルシウム 不足 を 補える と 思う んです

塩化 カルシウム は  「 いし ばい 」 から つくる こと が できる ので

腹壁 の 硬直 が   おさまって き ました

やっぱり   塩化 カルシウム は 有効な ようです ね

お 父 っつ ぁん お 薬   効く みたいで   よかった わ ね

与吉 ちゃん ?

佐分利 先生   あと   お 願い し ます 何 か あったら 呼んで ください

( 佐分利 ) はい

先生   いつも に も 増して 張り切って はり まん なあ

ええ

〈 鉛 中毒 の 治療 に は 〉

〈 通常   キレート 剤 が 使用 さ れる 〉

〈 だが   この 時代 に キレート 剤 を つくりだす の は 不可能だ 〉

〈 と なれば 生薬 を 調べて みる しか ない 〉

≪( 福田 ) あらゆる 中毒 に 効く …→

植物 の 中毒 に   よい と さ れる …→

毒 に よる 発熱 の 解熱 作用 が ある と さ れる →

ご 注文 どおり 解毒 作用 の ある 生薬 を 集め ました

じゃあ 鉛 を 排出 する 効果 が ある か どう か

片っ端から 調べて み ましょう

あの   ちなみに どう やって   お 調べ に ?

ネズミ で 薬 を 試す ので ございます か ?

かわいそうです が   医術 の ため です

まず ネズミ の 蒸し 風呂 を つくり ます

お しろい が   蒸気 に 混ざり こむ よう 細工 した 蒸し 風呂 を つくり

そこ に   ネズミ を 入れ ます

これ を 繰り返す こと で

まず   鉛 中毒 の 症状 を 見せる ネズミ を つくりだし

その あと   その ネズミ に 生薬 を 練りこんだ エサ を 与え

その 薬 に   効き目 が ある か どう か 判断 する んです

しかし   何とも 残酷です なあ

本当に

ごめん な

感染 症 は よく なって きて る みたいで ん なあ

傷 も 乾いて き ました ね

( 吉 十郎 ) と まって くれ

一 番   と まって くん さる なら …

これ は お 芝居 の セリフ で ございます か ?

≪( 佐分利 ) 先生   この 分 やったら 舞台   立てる ん と ちゃ い ます ?

先生 !

あまりに 経過 が いい ので びっくり して

よかった わ ね   与吉 ちゃん

お 父 っつ ぁん の 芝居 見 られる かも よ

与吉 ちゃん と 吉 十郎 さん は

けんか でも して いる のでしょう か

≪( 佐分利 ) 舞台 に 立つ の は 反対 なんか も …

そんな こと せ ん と   養生 して

少し でも 長生き して ほしい ん と ちゃ い ます か ?→

吉 十郎 さん   起こし ます よ

吉 十郎 さん は 順調な ので ございます か

では 私 達 も   頑張ら ねば なり ませ ん な

はい

与吉 ちゃん   何 して る の ?

( 与吉 ) ずれて たから

ずれて おり ました か

油   お 持ち いたし ました

ちゃんと 眠ら れて いらっしゃい ます か ?

川越 から 戻ら れて

ろくに お 休み さ れて い ない ので は ?

そう だ   そうだ   ほら   おい

そっち の 檻 の ネズミ   どう です か ?

はい   ただいま

先生   ちょっと 来て ください

お 願い し ます ≪( 福田 ) はい

食事 療法 と 塩化 カルシウム が 思いのほか   効いた みたいで

《 DIC …  何で !》

先生

そう です ね   このまま いけば …

え ~ い

あ ~ ッ !

動ける …

先生

何 か   ご 心配な こと でも …

とても よい 経過 だ と 思わ れる のです が

信じ られ ない ほど   いい です

何 か おかしい んじゃ ない か って ぐらい

え ッ ?

福田 先生   残り の ネズミ は ?

改善 は   さ れて おり ませ ん でした

他 に 生薬 は   ない んです か ?

私 の 知る かぎり 効く と 思わ れる もの は

本当に   もう ない んです か ?

何 千 種類 も 薬 が あって   効く もの が ひと つ も ない んです か ?

先生 !?

すいません   興奮 して

あれ   何で だ ?

少し   のめりこみ すぎて は おら れ ませ ぬ か ?

負け たく ない んです

歴史 の 修正 力 に

修正 力

これ まで 何度 も   治した と 思ったら

足 もと を すくわ れて の 繰り返し でした から

今回 は   完璧に 治し たい んです

ここ で 負けたら

私 は   認める しか なくなる んです

自分 に できる こと は

ほんの 少し の 延命 だけ で

結局 は   何も 変える こと は でき ない んだ って

延命 だけ で は   いけない のです か ?

すべて の 医術 は   しょせん

延命 に しか すぎ ぬ ので は ございませ ぬ か ?

未来 が   いかに 進んだ 世 か は 存じ ませ ぬ が

人 は   やはり 死ぬ ので ございましょう ?

それ は …

勝つ の 負ける の   おっしゃい ます が

吉 十郎 さん を 鉛 中毒 から   完璧に 救え

70 まで   生き延び させた と して も

先生 が   ここ に 来 なければ

そもそも   そういう 運命 であった と いう 考え から する と

それ とて   勝った と いう こと に は なら ぬ ので は ございませ ぬ か ?

じゃあ

私 は   何の ため に ここ に 送ら れて きた んでしょう か

( 物音 )

( 吉 十郎 ) どこ やった   与吉 !

何 やって は る んで っか   やめ な は れ

何 が あった んです か ?

こいつ が 俺 の ホン を 捨て や がった んだ よ

ホン ? 歌舞伎 の ホン だ よ

今度 やる 曽我 対面 だけ が   ねえ んだ よ !

《 与吉 ちゃん   何 して る の ?》

やった ん か ?  お前

芝居 なんか せ ん と 長生き して ほしい から か ?

( 吉 十郎 ) そんな ん じゃ ねえ んだ よ   先生

こいつ は なあ   俺 の こと が 嫌いで 嫌いで   しかた が ねえ んだ よ

俺 が 舞台 に 立つ の を 邪魔 し たい だけ な んだ よ

そう だ よ なあ

何とか 言え   この 野郎 ! 吉 十郎 さん !

治療   やめ ます よ

事情 は 知ら ん けど 子供 を 殴ら せる ため に

あんた を 治して る ん と ちゃ う

吉 十郎 さん も   佐分利 先生 も

ちょっと 待って ください

与吉

荷物   まとめろ

待って ください   吉 十郎 さん

行く こと ない   ここ に おり !

今度 は ここ の 厄介 者 に なる つもり か ?

とりあえず 行って 様子 を 見て き ます

投薬 やめたら どう なる か 分かり ませ ん し

では   支度 を いたし ます

≪( 吉 十郎 ) 逢って くん さる か →

いかにも ~→

そい つ あ   近頃   か っち け ねえ

さらば 二 人 を   呼び出す べ え か ~

よく   あんなに 動け ます ね

あ ッ …

大丈夫です か ?  吉 十郎 さん

で え じょうぶだ

これ …

≪( 役者 ) やっぱり 無理な んじゃ ねえ か ?

ありゃ   駄目だ よ 大丈夫な の か ?

で え じょうぶだ よ !

俺 は   でき んだ よ

ああ ッ 吉 十郎 さん

ここ で 無理 したら ≪( 佐分利 ) ちょっと   す ん ま へん

ちょっと   す ん ま へん

て め え   やぶ医者

ああ ~  もう 大丈夫   大丈夫

私 が 痛み止め   打ち 忘れた ん や

ちょ ちょ ちょっと   治せ ます さかい 心配 せ ん と いて ください

≪( 役者 達 ) 医者 が   そう 言う なら よ 本番 は   しっかり 頼んだ ぞ

( 佐分利 ) す ん ま へんな

≪( 役者 ) しっかり して くれよ

芝居 に 出る の は   考え 直した ほう が いい と 思い ます   このまま 続ければ

舞台 に 立つ 前 に   亡くなって しまう こと だって   あり え ます

どうして   そこ まで して

舞台 に 立た なければ なら ない んです か ?

それ が   役者 だ から です か ?

親 だ から さ

親 ?

言わ ない ど いて くれよ

口止め さ れて る んだ から

はい

兄さん は   役者 バカ って やつで ね →

芸 の 肥やし って 言っちゃ あ 飲む   打つ   買う を 繰り返し →

女房 と   まだ 言葉 も 出 ねえ 与吉 を →

面倒 くせ え って 追い出し ち まった の さ →

だけど   今度 は その 母親 に 男 が できた らしくて ね

行く 場所 の なくなった 与吉 は

ここ に 転がりこんで きた って わけ さ →

その頃   兄さん は もう 体 を 悪く して たし →

長く ない だろう から →

何とか   道 を つけて やろう と →

躍起に なって 芝居 の 稽古 を さ せよう と した の さ

《 ほら   立つ んだ よ 》

≪( 田 之助 ) けど   あの 子 も 強情で →

まったく 覚えよう と し なくて さ

《 与吉 !》

≪( 田 之助 ) ついに 手 が 出る ように な っち まって

与吉 は 与吉 で 口 も きか なく な っち まって さ

与吉 ちゃん は   どうして 稽古 を し なかった のです か ?

芸 の ため に 捨て られた 与吉 に は

役者 稼業 は 恨み で しか ない んだろう さ

それ なら   しかた ねえ 奉公 の 口 を 探したら どう かって

兄さん に 相談 を 持ちかけた んだ よ そ したら さ …

《 田 之助 》

《 与吉 に   俺 の 芝居 を 見 しちゃ やれ ねえ だろう か 》

《 一 日 だけ で いい 》

《 朝比奈 を やらして もらえ ねえ かって 》

《 座頭 に 頼んじゃ くれ ねえ か ?》

《 兄さん   悪い けど   のめ ない よ 》

《 こんな 役者 を 客 の 前 に 出しちゃ 》

《 座 の 名折れ だ 》

《 俺 が 与吉 に 残して やれる もん は もう   それ しか ねえ んだ よ 》

《 兄さん 》

《 俺 は   人間 の クズ だ 》

《 恨ま れて 当然だ 》

《 今さら   謝って 許して もらおう と 思っちゃ いね えし 》

《 そんな くせ え 芝居 なんて   でき ねえ よ 》

《 けど よ 俺 が   すべて を 注いだ 芸 だけ は 》

《 見せて やりて えん だ よ 》

《 今 の まま じゃ よ 》

《 あいつ   クズ の 親父 から 生まれて きた んだ と 思って 》

《 生きて いく しか ねえ だろう よ 》

《 けど よ 》

《 その クズ に も たった ひと つ だけ でも 》

《 取り柄 が あった って 思えりゃ 》

《 生きて いく の も   ち っと は ましに なる って もんじゃ ねえ か 》

《 田 之助   後生 だ 》

《 田 之助 …》

兄さん に とっちゃ   手足 を 切って 生きながらえる こと は

大して   値打ち が ない の さ

先生

命 の 値打ち って の は

長 さ だけ な の かい ?

さっき は 何で   かばって くれた ん だい ?

私 は   医術 を 極め たい んです

だから   あんた が 最後 まで 芸 を 極め たい 言う 気持ち は 分かる

おう

自分 の 気持ち に 振り回さ れて

患者 を ちゃんと 診 れて い なかった です

長生き さ せる こと ばかり に とらわれて

先生 が   ここ に 送ら れて きた 目的 は

一人一人 の 命 を 救う こと と は 違う もの な ので は ない でしょう か

どういう こと です か ?

もっと 大きな

一人一人 の 世 の 営み を 超えた もの の ため   と いい ます か

何と は 言え ぬ のです が

世 の 営み を 超える もの

何という 薬 です か ?  これ は

吉 十郎 さん の 落ち込んで いる 体 の 働き を

もと に 戻す こと を 考えて 調合 した ので   名前 と 言わ れる と

ありがとう ございます

使わ せて いただき ます

はい

いる わきゃ ねえ か

すぐ 点滴   打ち ます さかい に

( 横 松 ) ここ に も   ゴム を 配すれば 動き やすく なる ので は …

なるほど

一 番   と まって くん さる なら

ありがた 茄子 の …

《 こいつ は なあ   俺 の こと が 》

《 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ 》

どう です か ?

( 横 松 ) よい 感じ です

ふん !

何 して る んです か ?  咲 さ ん

ふん ッ

ふん !

ふん ッ !

これ は …

やはり

もって くれよ

何 か あって も   私ら が 舞台 の 袖 に   い ます から

あり が と な   先生

吉 十郎 さん お 芝居   楽しみに して ます ね

おう

与吉 ちゃん   捜して まいり ます ね

さて と

俺 も   田 之助 に 礼 の ひと つ でも 言って くる かな

与吉 ちゃん

≪( 座頭 ) 吉 十郎   で え じょうぶ か !

兄さん   立てる かい ?

廊下 が 濡れて て 滑 っち まった だけ だい

よい しょ

あ ッ

おかしい な

( 座頭 ) 吉 十郎   残念だ が 諦めて くん ねえ か

≪( 座頭 ) 何 が 起こる か 分か ん ねえ 役者 を

客 の 前 に 出す わけに は いか ん よ

いい じゃ ねえ か 動け なく なった って

血 ヘド   吐いて 倒れた って

それ が 最高に   かぶ いた 芝居 に 見せ れりゃ いい だけ の 話 だ ろ !

能書き ばっかり 並べて んじゃ ねえ よ

そんな こと できる わけ ねえ だろう が !

大丈夫です

必ず   立てる ように し ます

実は   ひと つ   策 が

( 吉 十郎 の うなり 声 )

( 田 之助 ) 兄さん ! 部屋 に 運び ましょう

吉 十郎 さん   聞こえ ます か ?

聞こえ ます か ?

かぶ いた 芝居 だった ろ ?

芝居   だった んです か ?

やっぱり よ

芝居 は 俺 だけ の もん じゃ ねえ もん な

( 足音 )

( 拍手 )

始ま っち まった な

ちき しょう

もう ちょっと だった のに な

吉 十郎 さん   体   起こせ ます か ?

立つ ため の 道具 です

芝居 中   立て なく なったら と 思って つくって みた んです

さて

これ から は   祐 経 殿 へ

折り入って   頼み が ある →

頼んで おいた   二 人 の …

本当 は   吉 十郎 さん が

お 芝居 の こと ばかり 考えて る の が 悔しくて …

だから こんな こと   した んでしょ ?

≪( 吉 十郎 ) すりゃ

逢って くん さる か

死に そうに なって いて も

与吉 ちゃん に は   ひと言 も なし に

お 芝居 の こと ばかり で

ひどい   お 父 っつ ぁん よ ね

だけど   ほんと は

言い たかった こと   たくさん あって

でも   素直に 言え なく なって た だけ じゃ ない か な

与吉 ちゃん と 同じ ように

お 父 っつ ぁん   今   与吉 ちゃん に

話しかけよう と して る んじゃ ない か な

う う ~

うわ ~ ッ

うわ ッ   うわ ~!

( 吉 十郎 の うなり 声 )

≪( 与吉 ) や …  大和屋

大和屋 ~ ッ !

あい すま ぬ

ああ ッ

あいす ま ~ ぬ !

与吉 ~!

よ ッ   日本 一 !

〈 つかの間 の 延命 〉

〈 もしかしたら   延命 に すら なって い ない の かも しれ ない 〉

〈 こうした こと で 命 を 縮めた 可能 性 すら ある 〉

〈 だけど   この 瞬間 に は 〉

〈 長 さ で は 語れ ない 命 の 意味 が ある 〉

〈 残さ れた 時間 を 輝か せる と いう 〉

〈 医療 の 意味 が ある 〉

さらば ~!

田 之助 さん   おい ら

お 父 っつ ぁん の 跡 を 継ぎ たい です

仕込んで もらえ ませ ん か ?

楽な 世界 じゃ ない よ

はい

〈 世代 を 超え 受け継が れて いく 芸 の ように 〉

〈 世 の 営み を 超えて いく もの 〉

〈 歴史 の 修正 力 に あら が える もの を 〉

〈 俺 も 残し たい 〉

な ッ   何 ゆえ !?

え ッ   間違え ました ?

咲 さ ん   何 を した んです か ?

消毒 用 の アルコール を つくろう と

高 濃度 の アルコール に

蒸留 水 を 加えた ところ …

( 山田 ) これ は 水 で は ございませ ぬ

ペニシリン で ございます する と

100 パーセント 近い   アルコール の 脱水 作用 で

ペニシリン が 結晶 化 した んです

これ を   こせば

ペニシリン の 粉末 が 取り出せ ます

ばんざい ばん ざ ~ い

ばんざい   あ ~ ッ

ばんざい

坂本 様 は   何と ?

亀山 社 中 で ペニシリン を 扱う こと は でき ない か と

何 か   ご 心配な こと が ?

龍 馬 さん に 今   かかわる こと は

仁 友 堂 に とって 危険な んじゃ ない か って

では 何の ため に   ペニシリン の 粉末 化 を ?

ここ で 行か ず に して

どこ で 行く ので ございます か

これ は 仁 友 堂 の 使命 で ございます

では

はい

〈 行こう   龍 馬 さん の ところ へ 〉

見て て くれよ

お初 ちゃん


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