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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第一章 永遠の夜のなかで (1)

第一章 永遠の夜のなかで (1)

Ⅰ 銀河 帝国 軍 大佐 ジークフリード ・ キルヒアイス は 、 艦 橋 に 一 歩 を 踏みいれた 瞬間 、 思わず 立ちすくんだ 。 無数の 光 点 を ちりばめた 宇宙 の 深淵 が 、 圧倒 的な 量 感 で 彼 の 全身 を おし つつんだ から である 。

「…………」

無 窮 の 暗黒 間 に 浮揚 した か の ごとき 錯覚 は 、 しかし 一瞬 で 去った 。 戦艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 は 巨大な 半球 型 を なして おり 、 その 上 半 部 が 一面の ディスプレイ ・ スクリーン と なって いる と いう 事実 が 、 キルヒアイス の 記憶 に あった のだ 。

感性 を 宙 空 から 地上 へ ひきずり おろす と 、 キルヒアイス は あらためて 周囲 を 見わたした 。 広大な 室 内 の 照明 は 極度に 抑え られて 、 薄暗がり の 支配 下 に おかれて いた 。 大小 無数 の スクリーン 、 操作 卓 、 計器 類 、 コンピューター 、 通信 装置 など が 幾何学 的に 配置 さ れた なか を 、 男 たち が うごきまわって いる 。 その 頭部 や 手足 の うごき が 、 水流 に のって 回遊 する 魚 群 を 連想 さ せた 。

キルヒアイス の 鼻 孔 を 、 ある かなし か の かすかな 臭気 が 刺激 した 。 戦闘 を 控えて 緊張 した 人 問 が 分泌 する アドレナリン の 匂い と 、 機械 が 発する 電子 臭 と を 、 還元 酸素 の なか で 混合 さ せる と 、 宇宙 の 軍人 に 親しい この 匂い が 生まれる のだ 。

赤毛 の 若者 は 艦 橋 の 中央 部 に むかって 大股 に 歩き だした 。 大佐 と いって も 、 キルヒアイス は まだ 二一 歳 に なって い なかった 。 軍服 を ぬいだ とき の 彼 は 、 後方 勤務 の 女性 兵 たち が 噂 する ように 、〝 ハンサムな 赤毛 の のっぽ さん 〟 に すぎ なかった 。 ときとして 、 自分 の 年齢 と 階級 と の 相関 関係 に つりあわ ない もの を 感じて と まどう こと が ある 。 彼 の 上官 の ように 平然と して それ を うけとめる こと は 、 なかなか でき ない のだった 。

ローエングラム 伯 ラインハルト は 、 指揮 シート の 角度 を 傾けて 、 ディスプレイ ・ スクリーン を 埋めつくす 星 の 大海 に じっと 見いって いた 。 彼 に ちかづいた とき 、 やわらかな 空気 の 抵抗 を キルヒアイス は 感じた 。 遮音 力 場 が 張って あった のだ 。 ラインハルト を 中心 と した 半径 五 メートル 以内 の 会話 は 、 外 に いる 者 に は 聴 こえ ない 。

「 星 を 見て おいで です か 、 閣下 」

キルヒアイス の 声 に 、 一瞬 の 間 を おいて ラインハルト は 視線 を 転じ 、 シート の 角度 を 水平に もどした 。 すわった まま で は あって も 、 黒 を 基調 と して 各 処 に 銀色 を 配した 機能 的な 軍服 が 、 すらりと 均整 の とれた 肢体 を 、 より いっそう 精悍に ひきしめて いる の が わかる 。

ラインハルト は 美しい 若者 だった 。 ほか に 類 を み ない ほど の 美貌 と 称して も よい 。 やや 癖 の ある 黄金色 の 頭髪 が 白い 卵 型 の 顔 の 三方 を 飾って いる 。 鼻 梁 と 唇 の 端 麗 さ は 、 古代 の 名工 の 手 に なる 彫刻 を 想わ せた 。

しかし 生命 の ない 彫刻 で あり え ない 証明 は その 双 眼 で 、 蒼氷 色 の 瞳 は するどく 研磨 さ れた 剣 の ような 光 を 放って いた 。 それとも 、 凍 て ついた 星 の 輝き 、 と 呼ぶ べきだろう か 。 宮廷 の 女 たち は 〝 美しい 野心 的な 瞳 〟 と 噂 し 、 男 たち は 〝 危険な 野心 家 の 目 〟 と 表現 して いる 。 いずれ に せよ 、 無機 的な 完璧 さ を 有する 彫刻 の 目 で ない こと は たしかだった 。

「 ああ 、 星 は いい 」

ラインハルト は 応え 、 自分 と 同 年齢 の 腹心 の 部下 を 仰ぎみる ように した 。

「 また すこし 背 が 伸びた ので は ない か ? 」 「 二 カ月 前 と おなじ 一九〇 センチ です 、 閣下 。 もう これ 以上 は 伸び ない でしょう 」

「 おれ より 七 センチ も 高ければ たしかに もう 充分だ な 」

負けん気 の 強い 少年 の ような ひびき が 、 その 声 に は ある 。 キルヒアイス は かすかに 笑った 。 六 年 ほど 前 まで 、 両者 の 身長 に は ほとんど 差 が なかった 。 金髪 の 少年 に 差 を つけて キルヒアイス の 背 が 伸び はじめた とき 、 ラインハルト は 本気で 口惜し がり 、 友人 を おきざり に して 自分 だけ 背 を 伸ばす の か 、 など と 抗議 口調 で 言った もの である 。 キルヒアイス と 、 ほか に もう ひと り の 人物 だけ しか 知ら ない 、 ラインハルト の 子供っぽい 側面 だった 。 「 ところで なに か 用件 が ある の か ? 」 「 はい 、 叛乱 軍 の 布陣 です 。 偵察 艇 三 隻 から の 報告 に よります と 、 やはり 三方 から 同一 速度 で わが 軍 に 接近 し つつ ある ようです 。 指揮 卓 の ディスプレイ を 使って よろしい です か ? 」 金髪 の 若い 上級 大将 が うなずく の を 見て 、 キルヒアイス は 手 を リズミカル に うごかした 。 指揮 卓 の 左 半分 を しめる ディスプレイ の 画面 に 、 四 本 の 矢印 が 浮かびあがった 。 上下 左右 の 各 方向 から 、 画面 の 中心 へ と 進行 する かたち である 。 下方 の 矢印 だけ が 赤く 、 他の 矢印 は 緑色 だった 。

「 赤い 矢印 が わが 軍 、 緑 の 矢印 が 敵 です 。 わが 軍 の 正面 に 敵 軍 の 第 四 艦隊 が 位置 し 、 その 兵力 は 艦艇 一万二〇〇〇 と 推定 さ れます 。 距離 は 二二〇〇 光秒 、 このまま の 速度 です と 、 約 六 時間 後 に 接触 します 」 画面 を さす キルヒアイス の 指 が うごいた 。 左 方向 に は 敵 軍 第 二 艦隊 が おり 、 兵力 は 艦艇 一万五〇〇〇 隻 、 距離 は 二四〇〇 光秒 。 右 方向 に は 敵 軍 第 六 艦隊 が おり 、 兵力 は 艦艇 一万三〇〇〇 隻 、 距離 は 二〇五〇 光秒 。

反 重力 磁場 システム を はじめ と する 各種の レーダー 透過 装置 や 妨害 電波 など の 発達 、 さらに レーダー を 無力 化 する 材料 の 出現 に より 、 レーダー が 索敵 装置 と して 用 を なさ なく なって 数 世紀 が 経過 して いる 。 索敵 は 有人 偵察 機 や 監視 衛星 など 、 古典 的な 手段 に たよる しか ない 。 それ ら に よって え られた 情報 に 、 時差 や 距離 的 要素 を 加算 して 敵 の 位置 を 知る 。 これ に 熱量 や 質量 の 測定 を くわえれば 、 不完全 ながら も いちおう の 索敵 が 可能 と なる のだ 。

「 敵 軍 の 合計 は 四万 隻 か 。 わが 軍 の 二 倍 だ な 」

「 それ が わが 軍 を 三方 から 包囲 しよう と して おります 」 「 老 将 ども が 青く なって いる だろう …… いや 、 赤く かな 」

ラインハルト は 意地 の 悪い 笑い を 白 皙 の 顔 に ひらめか せた 。 二 倍 の 敵 に 三方 から 包囲 さ れ つつ ある と 知り ながら 、 狼狽 の 気色 は まったく みえ ない 。

「 たしかに 青く なって います 。 五 人 の 提督 が 閣下 に 緊急に お 会い したい と 申しこんで こ られ ました 」 「 ほう 、 おれ の 顔 も 見 たく ない と 放言 して いた のに な 」

「 お 会い に なりません か ? 」 「 いや 、 会って やる さ 。 …… 奴 ら の 蒙 を 啓 く ため に も な 」

ラインハルト の 前 に あらわれた の は メルカッツ 大将 、 シュターデン 中将 、 フォーゲル 中将 、 ファーレンハイト 少将 、 エルラッハ 少将 の 五 人 だった 。 ラインハルト の 言う 〝 老 将 〟 たち である 。 しかし その 評 語 は 酷に すぎる かも しれ ない 。 最 年長の メルカッツ でも いまだ 六〇 歳 に は 達して おら ず 、 最 年少の ファーレンハイト は 三一 歳 で しか なかった 。 ラインハルト たち の ほう が 若 すぎる のである 。

「 司令 官 閣下 、 意見 具申 を 許可 して いただき 、 ありがとう ございます 」

一同 を 代表 して メルカッツ 大将 が 述べた 。 ラインハルト が 生まれる はるか 以前 から 軍 籍 に あり 、 実戦 に も 軍政 に も 豊富な 知識 と 経験 を もって いる 。 中 背 で 骨太の 体格 と 眠 そうな 両眼 を のぞいて は 特徴 の ない 中年 男 だ が 、 その 実績 と 声価 は ラインハルト など より ずっと 大きい であろう 。

「 卿 ら の 言いたい こと は わかって いる 」 メルカッツ の しめした 儀礼 に かたち ばかり の 答礼 を して 、 ラインハルト は 先手 を うった 。

「 わが 軍 が 不利な 状況 に ある 、 その こと に 私 の 注意 を 喚起 したい と いう のだろう 」 「 さ ようです 、 閣下 」

シュターデン 中将 が 半 歩 前 へ 進み で ながら 応じた 。 ナイフ の ように 細身 で シャープな 印象 を あたえる 四〇 代 なかば の 人物 で 、 戦術 理論 と 弁舌 に 長じた 参謀 型 の 軍人 だった 。

「 わが 軍 にたいして 敵 の 数 は 二 倍 、 しかも 三 方向 より わが 軍 を 包囲 せんと して おります 。 これ は すでに 交戦 態勢 に おいて 敵 に 後れ を とった こと を 意味 します 」 ラインハルト の 蒼氷 色 の 瞳 が 冷 然 たる 輝き を 放ち ながら 、 中将 を 直視 した 。

「 つまり 、 負ける と 卿 は 言う の か ? 」 「―― と は 申して おりません 、 閣下 。 ただ 、 不利な 態勢 に ある こと は 事実 です 。 ディスプレイ ・ スクリーン を 見 まして も わかります ように ……」 七 対 の 目 が 指揮 卓 の ディスプレイ に 集中 した 。

キルヒアイス が ラインハルト に しめした 両軍 の 配置 が 、 そこ に 図示 されて いる 。 遮音 力 場 の 外 で 幾 人 か の 兵 が 興味 津 々 と 高級 士官 たち を 見 やって いた が 、 シュターデン 中将 が にらみつける と 、 あわてて 目 を そら せた 。 せきばらい の のち 、 中将 が ふたたび 口 を 開く 。

「 これ は すぐ る 年 、 帝国 の 誇ります 宇宙 艦隊 が 、 自由 惑星 同盟 を 僭称 する 叛乱 軍 の ため 、 無念の 敗北 を 喫した とき と 同様の 陣形 です 」 「〝 ダゴン の 殲滅 戦 〟 だ な 」

「 さよう 、 まことに 無念な 敗戦 でした 」

荘重な 歎息 が 中将 の 口 から 洩 れた 。

「 戦い の 正義 は 、 人類 の 正統な 支配 者 たる 銀河 帝国 皇帝 陛下 と 、 その 忠実な 臣下 たる わ が 軍将 兵 に あった のです が 、 叛乱 軍 の 狡猾 な トリック に かかり 、 忠勇 なる 百万 の 精鋭 は 虚 空 に 散 華 する に いたった のです 。 今回 の 戦い に おいて 、 もし 前者 の 轍 を 踏む こと あら ば 、 皇帝 陛下 の 宸襟 を 傷つけ たてまつる は 必定 であり 、 ここ は 功 に はやる こと なく 、 名誉 ある 撤退 を なさる べきで は ない か と 愚 考 する しだい です 」

まさしく 愚 考 だ 、 無能 きわまる 饒舌 家 め 、 と ラインハルト は 心 の なか で ののしった 。 口 に だして は こう 言った 。

「 卿 の 能 弁 は 認める 。 しかし その 主張 を 認める わけに は いか ぬ 。 撤退 など 思い も よら ぬ こと だ 」

「…… なぜ です 。 理由 を 聞か せて いただけます か ? 」 ど し がたい 孺子 め が 、 と ののしる 表情 が シュターデン 中将 の 瞳 に 浮きあがって いる 。 それ を 意 に 介せ ず 、 ラインハルト は 答えた 。

「 吾々 が 敵 より 圧倒 的に 有利な 態勢 に ある から だ 」

「 なん です と ? 」 シュターデン の 眉 が 大きく 上下 した 。 メルカッツ は 憮然と して 、 フォーゲル と エルラッハ は 愕然と して 、 若い 美貌 の 指揮 官 を 見つめた 。

五 人 中 最 年少の ファーレンハイト だけ が 、 色素 の 薄い 水色 の 瞳 に おもしろ そうな 表情 を たたえて いる 。 下級 貴族 の 出身 で 、 食う ため に 軍人 に なった と 広言 して いる 男 だ 。 機動 性 に 富んだ 速攻 の 用 兵 に 定評 が ある が 、 迎撃 戦 と なる と やや 粘り に 欠ける と も いわ れる 。

「 どうも 私 の ように 不敏な 者 に は 理解 し がたい 見解 を 有して おいで の ようです な 。 もう すこし くわしく 説明 して いただける と ありがたい のです が ……」

シュターデン 中将 が 耳ざわりな 声 で 言った 。 その 不愉快な 舌 を ひきぬいて やる の は 後日 の こと と して 、 ラインハルト は 相手 の 要請 に 応じた 。

「 私 が 有利 と 言う の は つぎの 二 点 に おいて だ 。 ひと つ 、 敵 が 三 方向 に 兵力 を 分散 さ せて いる のにたい し 、 わが 軍 は 一 カ所 に 集中 して いる 。


第一章 永遠の夜のなかで (1) だい ひと しょう|えいえんの よ の なか で Chapter 1 In the Eternal Night (1)

Ⅰ 銀河 帝国 軍 大佐 ジークフリード ・ キルヒアイス は 、 艦 橋 に 一 歩 を 踏みいれた 瞬間 、 思わず 立ちすくんだ 。 ぎんが|ていこく|ぐん|たいさ||||かん|きょう||ひと|ふ||ふみいれた|しゅんかん|おもわず|たちすくんだ Ⅰ Galaxy Imperial Army Colonel Siegfried Kircheis involuntarily stood the moment he took a step on the bridge. 無数の 光 点 を ちりばめた 宇宙 の 深淵 が 、 圧倒 的な 量 感 で 彼 の 全身 を おし つつんだ から である 。 むすうの|ひかり|てん|||うちゅう||しんえん||あっとう|てきな|りょう|かん||かれ||ぜんしん||||| This is because the abyss of the universe with countless points of light plunging his whole body with an overwhelming sense of volume.

「…………」

無 窮 の 暗黒 間 に 浮揚 した か の ごとき 錯覚 は 、 しかし 一瞬 で 去った 。 む|きゅう||あんこく|あいだ||ふよう|||||さっかく|||いっしゅん||さった The illusion of having levitated in the darkness of innocence, but left in an instant. 戦艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 は 巨大な 半球 型 を なして おり 、 その 上 半 部 が 一面の ディスプレイ ・ スクリーン と なって いる と いう 事実 が 、 キルヒアイス の 記憶 に あった のだ 。 せんかん|||かん|きょう||きょだいな|はんきゅう|かた|||||うえ|はん|ぶ||いちめんの|でぃすぷれい|すくりーん||||||じじつ||||きおく||| The fact that the bridge of the battleship Brunhild has a huge hemispherical shape and that the upper half is a single-sided display screen was in Kirchice's memory.

感性 を 宙 空 から 地上 へ ひきずり おろす と 、 キルヒアイス は あらためて 周囲 を 見わたした 。 かんせい||ちゅう|から||ちじょう||||||||しゅうい||みわたした As he dragged his sensibilities from the air to the ground, Kircheis looked around again. 広大な 室 内 の 照明 は 極度に 抑え られて 、 薄暗がり の 支配 下 に おかれて いた 。 こうだいな|しつ|うち||しょうめい||きょくどに|おさえ||うすくらがり||しはい|した||おか れて| The lighting in the vast room was extremely subdued and under the control of dim light. 大小 無数 の スクリーン 、 操作 卓 、 計器 類 、 コンピューター 、 通信 装置 など が 幾何学 的に 配置 さ れた なか を 、 男 たち が うごきまわって いる 。 だいしょう|むすう||すくりーん|そうさ|すぐる|けいき|るい|こんぴゅーたー|つうしん|そうち|||きかがく|てきに|はいち|||||おとこ|||| その 頭部 や 手足 の うごき が 、 水流 に のって 回遊 する 魚 群 を 連想 さ せた 。 |とうぶ||てあし||||すいりゅう|||かいゆう||ぎょ|ぐん||れんそう|| The movement of its head and limbs was reminiscent of a school of fish migrating along a stream of water.

キルヒアイス の 鼻 孔 を 、 ある かなし か の かすかな 臭気 が 刺激 した 。 ||はな|あな|||||||しゅうき||しげき| 戦闘 を 控えて 緊張 した 人 問 が 分泌 する アドレナリン の 匂い と 、 機械 が 発する 電子 臭 と を 、 還元 酸素 の なか で 混合 さ せる と 、 宇宙 の 軍人 に 親しい この 匂い が 生まれる のだ 。 せんとう||ひかえて|きんちょう||じん|とい||ぶんぴつ||||におい||きかい||はっする|でんし|くさ|||かんげん|さんそ||||こんごう||||うちゅう||ぐんじん||したしい||におい||うまれる| By mixing the scent of adrenaline secreted by nervous people ahead of battle with the electronic scent emitted by machines in reduced oxygen, this scent familiar to military personnel in space is created.

赤毛 の 若者 は 艦 橋 の 中央 部 に むかって 大股 に 歩き だした 。 あかげ||わかもの||かん|きょう||ちゅうおう|ぶ|||おおまた||あるき| The red-haired youth began to stride towards the center of the bridge. 大佐 と いって も 、 キルヒアイス は まだ 二一 歳 に なって い なかった 。 たいさ|||||||にいち|さい|||| 軍服 を ぬいだ とき の 彼 は 、 後方 勤務 の 女性 兵 たち が 噂 する ように 、〝 ハンサムな 赤毛 の のっぽ さん 〟 に すぎ なかった 。 ぐんぷく|||||かれ||こうほう|きんむ||じょせい|つわもの|||うわさ|||はんさむな|あかげ|||||| When he took off his uniform, he was nothing more than a "handsome red-haired Noppo-san," as logistical female soldiers rumored. ときとして 、 自分 の 年齢 と 階級 と の 相関 関係 に つりあわ ない もの を 感じて と まどう こと が ある 。 |じぶん||ねんれい||かいきゅう|||そうかん|かんけい||||||かんじて||||| 彼 の 上官 の ように 平然と して それ を うけとめる こと は 、 なかなか でき ない のだった 。 かれ||じょうかん|||へいぜんと|||||||||| It was difficult to accept it as plainly as his superior.

ローエングラム 伯 ラインハルト は 、 指揮 シート の 角度 を 傾けて 、 ディスプレイ ・ スクリーン を 埋めつくす 星 の 大海 に じっと 見いって いた 。 |はく|||しき|しーと||かくど||かたむけて|でぃすぷれい|すくりーん||うずめつくす|ほし||たいかい|||みいって| Reinhardt, Count of Lohengram, tilted the command sheet and stared at the ocean of stars that filled the display screen. 彼 に ちかづいた とき 、 やわらかな 空気 の 抵抗 を キルヒアイス は 感じた 。 かれ|||||くうき||ていこう||||かんじた Kircheis felt the soft air resistance when he approached him. 遮音 力 場 が 張って あった のだ 。 しゃおん|ちから|じょう||はって|| ラインハルト を 中心 と した 半径 五 メートル 以内 の 会話 は 、 外 に いる 者 に は 聴 こえ ない 。 ||ちゅうしん|||はんけい|いつ|めーとる|いない||かいわ||がい|||もの|||き||

「 星 を 見て おいで です か 、 閣下 」 ほし||みて||||かっか

キルヒアイス の 声 に 、 一瞬 の 間 を おいて ラインハルト は 視線 を 転じ 、 シート の 角度 を 水平に もどした 。 ||こえ||いっしゅん||あいだ|||||しせん||てんじ|しーと||かくど||すいへいに| すわった まま で は あって も 、 黒 を 基調 と して 各 処 に 銀色 を 配した 機能 的な 軍服 が 、 すらりと 均整 の とれた 肢体 を 、 より いっそう 精悍に ひきしめて いる の が わかる 。 ||||||くろ||きちょう|||かく|しょ||ぎんいろ||はいした|きのう|てきな|ぐんぷく|||きんせい|||したい||||せいかんに||||| Even if it remains seated, it can be seen that the functional military uniform, which is based on black and has silver in each part, tightens the slender and well-proportioned limbs even more fearlessly.

ラインハルト は 美しい 若者 だった 。 ||うつくしい|わかもの| ほか に 類 を み ない ほど の 美貌 と 称して も よい 。 ||るい||||||びぼう||そやして|| It may be called an unparalleled beauty. やや 癖 の ある 黄金色 の 頭髪 が 白い 卵 型 の 顔 の 三方 を 飾って いる 。 |くせ|||こがねいろ||とうはつ||しろい|たまご|かた||かお||さんぼう||かざって| The slightly quirky golden hair adorns the three sides of the white egg-shaped face. 鼻 梁 と 唇 の 端 麗 さ は 、 古代 の 名工 の 手 に なる 彫刻 を 想わ せた 。 はな|りょう||くちびる||はし|うらら|||こだい||めいこう||て|||ちょうこく||おもわ|

しかし 生命 の ない 彫刻 で あり え ない 証明 は その 双 眼 で 、 蒼氷 色 の 瞳 は するどく 研磨 さ れた 剣 の ような 光 を 放って いた 。 |せいめい|||ちょうこく|||||しょうめい|||そう|がん||あおこおり|いろ||ひとみ|||けんま|||けん|||ひかり||はなって| But the proof that it couldn't be a lifeless sculpture was its binocular, with its blue-ice eyes shining a sharply polished sword-like light. それとも 、 凍 て ついた 星 の 輝き 、 と 呼ぶ べきだろう か 。 |こお|||ほし||かがやき||よぶ|| Or should we call it the brilliance of a frozen star? 宮廷 の 女 たち は 〝 美しい 野心 的な 瞳 〟 と 噂 し 、 男 たち は 〝 危険な 野心 家 の 目 〟 と 表現 して いる 。 きゅうてい||おんな|||うつくしい|やしん|てきな|ひとみ||うわさ||おとこ|||きけんな|やしん|いえ||め||ひょうげん|| The women in the court are rumored to be "beautiful and ambitious eyes," and the men are described as "the eyes of dangerous ambitions." いずれ に せよ 、 無機 的な 完璧 さ を 有する 彫刻 の 目 で ない こと は たしかだった 。 |||むき|てきな|かんぺき|||ゆうする|ちょうこく||め|||||

「 ああ 、 星 は いい 」 |ほし||

ラインハルト は 応え 、 自分 と 同 年齢 の 腹心 の 部下 を 仰ぎみる ように した 。 ||こたえ|じぶん||どう|ねんれい||ふくしん||ぶか||あおぎみる|| Reinhard responded by looking up at his confidant subordinates, who were the same age as him.

「 また すこし 背 が 伸びた ので は ない か ? ||せ||のびた|||| "Isn't it a little taller again? 」 「 二 カ月 前 と おなじ 一九〇 センチ です 、 閣下 。 ふた|かげつ|ぜん|||いちきゅう|せんち||かっか もう これ 以上 は 伸び ない でしょう 」 ||いじょう||のび||

「 おれ より 七 センチ も 高ければ たしかに もう 充分だ な 」 ||なな|せんち||たかければ|||じゅうぶんだ|

負けん気 の 強い 少年 の ような ひびき が 、 その 声 に は ある 。 まけんき||つよい|しょうねん||||||こえ||| There is a sound like a boy with a strong sense of defeat in his voice. キルヒアイス は かすかに 笑った 。 |||わらった 六 年 ほど 前 まで 、 両者 の 身長 に は ほとんど 差 が なかった 。 むっ|とし||ぜん||りょうしゃ||しんちょう||||さ|| 金髪 の 少年 に 差 を つけて キルヒアイス の 背 が 伸び はじめた とき 、 ラインハルト は 本気で 口惜し がり 、 友人 を おきざり に して 自分 だけ 背 を 伸ばす の か 、 など と 抗議 口調 で 言った もの である 。 きんぱつ||しょうねん||さ|||||せ||のび|||||ほんきで|くちおし||ゆうじん|||||じぶん||せ||のばす|||||こうぎ|くちょう||いった|| When Kircheis began to grow taller than the blonde boy, Reinhardt was seriously reluctant to say, "Is it just me to stretch my back by leaving my friends behind?" キルヒアイス と 、 ほか に もう ひと り の 人物 だけ しか 知ら ない 、 ラインハルト の 子供っぽい 側面 だった 。 ||||||||じんぶつ|||しら||||こども っぽい|そくめん| It was a childish side of Reinhardt, who only knew Kircheis and one more person. 「 ところで なに か 用件 が ある の か ? |||ようけん|||| 」 「 はい 、 叛乱 軍 の 布陣 です 。 |はんらん|ぐん||ふじん| 偵察 艇 三 隻 から の 報告 に よります と 、 やはり 三方 から 同一 速度 で わが 軍 に 接近 し つつ ある ようです 。 ていさつ|てい|みっ|せき|||ほうこく||より ます|||さんぼう||どういつ|そくど|||ぐん||せっきん|||| According to reports from three reconnaissance boats, it seems that they are approaching our army at the same speed from all three sides. 指揮 卓 の ディスプレイ を 使って よろしい です か ? しき|すぐる||でぃすぷれい||つかって||| 」 金髪 の 若い 上級 大将 が うなずく の を 見て 、 キルヒアイス は 手 を リズミカル に うごかした 。 きんぱつ||わかい|じょうきゅう|たいしょう|||||みて|||て|||| 指揮 卓 の 左 半分 を しめる ディスプレイ の 画面 に 、 四 本 の 矢印 が 浮かびあがった 。 しき|すぐる||ひだり|はんぶん|||でぃすぷれい||がめん||よっ|ほん||やじるし||うかびあがった 上下 左右 の 各 方向 から 、 画面 の 中心 へ と 進行 する かたち である 。 じょうげ|さゆう||かく|ほうこう||がめん||ちゅうしん|||しんこう||| 下方 の 矢印 だけ が 赤く 、 他の 矢印 は 緑色 だった 。 かほう||やじるし|||あかく|たの|やじるし||みどりいろ|

「 赤い 矢印 が わが 軍 、 緑 の 矢印 が 敵 です 。 あかい|やじるし|||ぐん|みどり||やじるし||てき| わが 軍 の 正面 に 敵 軍 の 第 四 艦隊 が 位置 し 、 その 兵力 は 艦艇 一万二〇〇〇 と 推定 さ れます 。 |ぐん||しょうめん||てき|ぐん||だい|よっ|かんたい||いち|||へいりょく||かんてい|いちまんに||すいてい||れ ます The 4th Fleet of the enemy army is located in front of our army, and its troops are estimated to be 12,000 ships. 距離 は 二二〇〇 光秒 、 このまま の 速度 です と 、 約 六 時間 後 に 接触 します 」 きょり||にに|こうびょう|||そくど|||やく|むっ|じかん|あと||せっしょく|し ます 画面 を さす キルヒアイス の 指 が うごいた 。 がめん|||||ゆび|| Kircheis's finger pointing at the screen moved. 左 方向 に は 敵 軍 第 二 艦隊 が おり 、 兵力 は 艦艇 一万五〇〇〇 隻 、 距離 は 二四〇〇 光秒 。 ひだり|ほうこう|||てき|ぐん|だい|ふた|かんたい|||へいりょく||かんてい|いちまんご|せき|きょり||にし|こうびょう To the left is the 2nd Fleet of the Enemy Army, with 15,000 ships and a distance of 24,000 light seconds. 右 方向 に は 敵 軍 第 六 艦隊 が おり 、 兵力 は 艦艇 一万三〇〇〇 隻 、 距離 は 二〇五〇 光秒 。 みぎ|ほうこう|||てき|ぐん|だい|むっ|かんたい|||へいりょく||かんてい|いちまんさん|せき|きょり||ふた|いつ|こうびょう

反 重力 磁場 システム を はじめ と する 各種の レーダー 透過 装置 や 妨害 電波 など の 発達 、 さらに レーダー を 無力 化 する 材料 の 出現 に より 、 レーダー が 索敵 装置 と して 用 を なさ なく なって 数 世紀 が 経過 して いる 。 はん|じゅうりょく|じば|しすてむ|||||かくしゅの|れーだー|とうか|そうち||ぼうがい|でんぱ|||はったつ||れーだー||むりょく|か||ざいりょう||しゅつげん|||れーだー||さくてき|そうち|||よう||な さ|||すう|せいき||けいか|| Centuries have passed since radars became useless as search devices due to the development of various radar transmission devices such as anti-gravity magnetic field systems and interfering radio waves, and the emergence of materials that neutralize radar. ing . 索敵 は 有人 偵察 機 や 監視 衛星 など 、 古典 的な 手段 に たよる しか ない 。 さくてき||ゆうじん|ていさつ|き||かんし|えいせい||こてん|てきな|しゅだん|||| Searching for enemies can only be done by classical means, such as manned reconnaissance aircraft and surveillance satellites. それ ら に よって え られた 情報 に 、 時差 や 距離 的 要素 を 加算 して 敵 の 位置 を 知る 。 ||||||じょうほう||じさ||きょり|てき|ようそ||かさん||てき||いち||しる To know the position of the enemy by adding the time difference and the distance element to the information obtained from them. これ に 熱量 や 質量 の 測定 を くわえれば 、 不完全 ながら も いちおう の 索敵 が 可能 と なる のだ 。 ||ねつりょう||しつりょう||そくてい|||ふかんぜん|||||さくてき||かのう||| In addition to this, the measurement of calorific value and mass makes it possible to search for the enemy, albeit incompletely.

「 敵 軍 の 合計 は 四万 隻 か 。 てき|ぐん||ごうけい||しまん|せき| "Is the total number of enemy troops 40,000? わが 軍 の 二 倍 だ な 」 |ぐん||ふた|ばい||

「 それ が わが 軍 を 三方 から 包囲 しよう と して おります 」 |||ぐん||さんぼう||ほうい||||おり ます "It is trying to siege my army from three sides." 「 老 将 ども が 青く なって いる だろう …… いや 、 赤く かな 」 ろう|すすむ|||あおく|||||あかく|

ラインハルト は 意地 の 悪い 笑い を 白 皙 の 顔 に ひらめか せた 。 ||いじ||わるい|わらい||しろ|せき||かお||| 二 倍 の 敵 に 三方 から 包囲 さ れ つつ ある と 知り ながら 、 狼狽 の 気色 は まったく みえ ない 。 ふた|ばい||てき||さんぼう||ほうい||||||しり||ろうばい||けしき|||| Knowing that he is being surrounded by twice as many enemies from three sides, he does not seem to be upset at all.

「 たしかに 青く なって います 。 |あおく||い ます 五 人 の 提督 が 閣下 に 緊急に お 会い したい と 申しこんで こ られ ました 」 いつ|じん||ていとく||かっか||きんきゅうに||あい|し たい||もうしこんで||| Five Admirals have offered to meet with His Excellency urgently. " 「 ほう 、 おれ の 顔 も 見 たく ない と 放言 して いた のに な 」 |||かお||み||||ほうげん|||| "Well, I said I didn't want to see my face either."

「 お 会い に なりません か ? |あい||なり ませ ん| "Would you like to meet me? 」 「 いや 、 会って やる さ 。 |あって|| …… 奴 ら の 蒙 を 啓 く ため に も な 」 やつ|||かぶ||あきら|||||

ラインハルト の 前 に あらわれた の は メルカッツ 大将 、 シュターデン 中将 、 フォーゲル 中将 、 ファーレンハイト 少将 、 エルラッハ 少将 の 五 人 だった 。 ||ぜん||||||たいしょう||ちゅうじょう||ちゅうじょう||しょうしょう||しょうしょう||いつ|じん| ラインハルト の 言う 〝 老 将 〟 たち である 。 ||いう|ろう|すすむ|| しかし その 評 語 は 酷に すぎる かも しれ ない 。 ||ひょう|ご||こくに|||| 最 年長の メルカッツ でも いまだ 六〇 歳 に は 達して おら ず 、 最 年少の ファーレンハイト は 三一 歳 で しか なかった 。 さい|ねんちょうの||||むっ|さい|||たっして|||さい|ねんしょうの|||さんいち|さい||| Even the oldest Mercatz had not yet reached the age of sixty, and the youngest Fahrenheit was only thirty-one. ラインハルト たち の ほう が 若 すぎる のである 。 |||||わか||

「 司令 官 閣下 、 意見 具申 を 許可 して いただき 、 ありがとう ございます 」 しれい|かん|かっか|いけん|ぐしん||きょか|||| "Thank you, Your Excellency, for allowing us to express your opinions."

一同 を 代表 して メルカッツ 大将 が 述べた 。 いちどう||だいひょう|||たいしょう||のべた ラインハルト が 生まれる はるか 以前 から 軍 籍 に あり 、 実戦 に も 軍政 に も 豊富な 知識 と 経験 を もって いる 。 ||うまれる||いぜん||ぐん|せき|||じっせん|||ぐんせい|||ほうふな|ちしき||けいけん||| He has been in the military for a long time before Reinhardt was born, and has a wealth of knowledge and experience in both combat and military affairs. 中 背 で 骨太の 体格 と 眠 そうな 両眼 を のぞいて は 特徴 の ない 中年 男 だ が 、 その 実績 と 声価 は ラインハルト など より ずっと 大きい であろう 。 なか|せ||ほねぶとの|たいかく||ねむ|そう な|りょうがん||||とくちょう|||ちゅうねん|おとこ||||じっせき||せいか||||||おおきい| Although he is a middle-aged man with no characteristics except for his medium-backed, thick-bone physique and sleepy eyes, his achievements and voice will be much greater than those of Reinhardt and others.

「 卿 ら の 言いたい こと は わかって いる 」 きょう|||いい たい|||| "I know what the Lords are saying." メルカッツ の しめした 儀礼 に かたち ばかり の 答礼 を して 、 ラインハルト は 先手 を うった 。 |||ぎれい|||||とうれい|||||せんて|| Reinhardt took the initiative in giving a form of salute to Mercatz's salute.

「 わが 軍 が 不利な 状況 に ある 、 その こと に 私 の 注意 を 喚起 したい と いう のだろう 」 |ぐん||ふりな|じょうきょう||||||わたくし||ちゅうい||かんき|し たい||| 「 さ ようです 、 閣下 」 ||かっか "Goodbye, Your Excellency."

シュターデン 中将 が 半 歩 前 へ 進み で ながら 応じた 。 |ちゅうじょう||はん|ふ|ぜん||すすみ|||おうじた ナイフ の ように 細身 で シャープな 印象 を あたえる 四〇 代 なかば の 人物 で 、 戦術 理論 と 弁舌 に 長じた 参謀 型 の 軍人 だった 。 ないふ|||ほそみ||しゃーぷな|いんしょう|||よっ|だい|||じんぶつ||せんじゅつ|りろん||べんぜつ||ちょうじた|さんぼう|かた||ぐんじん|

「 わが 軍 にたいして 敵 の 数 は 二 倍 、 しかも 三 方向 より わが 軍 を 包囲 せんと して おります 。 |ぐん|に たいして|てき||すう||ふた|ばい||みっ|ほうこう|||ぐん||ほうい|||おり ます これ は すでに 交戦 態勢 に おいて 敵 に 後れ を とった こと を 意味 します 」 |||こうせん|たいせい|||てき||おくれ|||||いみ|し ます This means that we are already in a position to engage and lag behind our enemies. " ラインハルト の 蒼氷 色 の 瞳 が 冷 然 たる 輝き を 放ち ながら 、 中将 を 直視 した 。 ||あおこおり|いろ||ひとみ||ひや|ぜん||かがやき||はなち||ちゅうじょう||ちょくし|

「 つまり 、 負ける と 卿 は 言う の か ? |まける||きょう||いう|| "In other words, does the Lord say that he will lose? 」 「―― と は 申して おりません 、 閣下 。 ||もうして|おり ませ ん|かっか "-I'm not saying, Your Excellency. ただ 、 不利な 態勢 に ある こと は 事実 です 。 |ふりな|たいせい|||||じじつ| ディスプレイ ・ スクリーン を 見 まして も わかります ように ……」 でぃすぷれい|すくりーん||み|||わかり ます| Display ・ As you can see by looking at the screen …… ” 七 対 の 目 が 指揮 卓 の ディスプレイ に 集中 した 。 なな|たい||め||しき|すぐる||でぃすぷれい||しゅうちゅう|

キルヒアイス が ラインハルト に しめした 両軍 の 配置 が 、 そこ に 図示 されて いる 。 |||||りょうぐん||はいち||||ずし|さ れて| 遮音 力 場 の 外 で 幾 人 か の 兵 が 興味 津 々 と 高級 士官 たち を 見 やって いた が 、 シュターデン 中将 が にらみつける と 、 あわてて 目 を そら せた 。 しゃおん|ちから|じょう||がい||いく|じん|||つわもの||きょうみ|つ|||こうきゅう|しかん|||み|||||ちゅうじょう|||||め||| Outside the sound insulation field, several soldiers were curiously looking at the senior officers, but when Vice Admiral Staden glanced at him, he hurriedly turned away. せきばらい の のち 、 中将 が ふたたび 口 を 開く 。 |||ちゅうじょう|||くち||あく

「 これ は すぐ る 年 、 帝国 の 誇ります 宇宙 艦隊 が 、 自由 惑星 同盟 を 僭称 する 叛乱 軍 の ため 、 無念の 敗北 を 喫した とき と 同様の 陣形 です 」 ||||とし|ていこく||ほこり ます|うちゅう|かんたい||じゆう|わくせい|どうめい||せんしょう||はんらん|ぐん|||むねんの|はいぼく||きっした|||どうようの|じんけい| "This is the same formation that the Empire's proud space fleet suffered a regrettable defeat in the coming years because of the rebellious army nicknamed the Free Planet Alliance." 「〝 ダゴン の 殲滅 戦 〟 だ な 」 ||せんめつ|いくさ||

「 さよう 、 まことに 無念な 敗戦 でした 」 ||むねんな|はいせん|

荘重な 歎息 が 中将 の 口 から 洩 れた 。 そうちょうな|たんいき||ちゅうじょう||くち||えい|

「 戦い の 正義 は 、 人類 の 正統な 支配 者 たる 銀河 帝国 皇帝 陛下 と 、 その 忠実な 臣下 たる わ が 軍将 兵 に あった のです が 、 叛乱 軍 の 狡猾 な トリック に かかり 、 忠勇 なる 百万 の 精鋭 は 虚 空 に 散 華 する に いたった のです 。 たたかい||せいぎ||じんるい||せいとうな|しはい|もの||ぎんが|ていこく|こうてい|へいか|||ちゅうじつな|しんか||||ぐんしょう|つわもの|||||はんらん|ぐん||こうかつ||とりっく|||ただお||ひゃくまん||せいえい||きょ|から||ち|はな|||| "The justice of the battle was with His Majesty the Emperor of the Galactic Empire, the orthodox ruler of mankind, and his loyal vassal, my army general, but with the cunning tricks of the rebellious army. The elite have come to scatter in the void. 今回 の 戦い に おいて 、 もし 前者 の 轍 を 踏む こと あら ば 、 皇帝 陛下 の 宸襟 を 傷つけ たてまつる は 必定 であり 、 ここ は 功 に はやる こと なく 、 名誉 ある 撤退 を なさる べきで は ない か と 愚 考 する しだい です 」 こんかい||たたかい||||ぜんしゃ||わだち||ふむ||||こうてい|へいか||しんえり||きずつけ|||ひつじょう||||いさお|||||めいよ||てったい||||||||ぐ|こう||| In this battle, if the former rut is to be stepped on, it is inevitable that the Emperor's collar will be hurt, and this should not be done well, and should not be considered an honorable withdrawal. It depends on what you do. "

まさしく 愚 考 だ 、 無能 きわまる 饒舌 家 め 、 と ラインハルト は 心 の なか で ののしった 。 |ぐ|こう||むのう||じょうぜつ|いえ|||||こころ|||| Reinhardt screamed in his heart, just stupid, incompetent and talkative. 口 に だして は こう 言った 。 くち|||||いった

「 卿 の 能 弁 は 認める 。 きょう||のう|べん||みとめる しかし その 主張 を 認める わけに は いか ぬ 。 ||しゅちょう||みとめる|||| However, we cannot accept the claim. 撤退 など 思い も よら ぬ こと だ 」 てったい||おもい||||| It's something you wouldn't expect, such as withdrawal. "

「…… なぜ です 。 理由 を 聞か せて いただけます か ? りゆう||きか||いただけ ます| 」 ど し がたい 孺子 め が 、 と ののしる 表情 が シュターデン 中将 の 瞳 に 浮きあがって いる 。 |||じゅし|||||ひょうじょう|||ちゅうじょう||ひとみ||うきあがって| それ を 意 に 介せ ず 、 ラインハルト は 答えた 。 ||い||かいせ||||こたえた Reinhardt replied, not knowing that.

「 吾々 が 敵 より 圧倒 的に 有利な 態勢 に ある から だ 」 われ々||てき||あっとう|てきに|ゆうりな|たいせい||||

「 なん です と ? 」 シュターデン の 眉 が 大きく 上下 した 。 ||まゆ||おおきく|じょうげ| メルカッツ は 憮然と して 、 フォーゲル と エルラッハ は 愕然と して 、 若い 美貌 の 指揮 官 を 見つめた 。 ||ぶぜんと||||||がくぜんと||わかい|びぼう||しき|かん||みつめた

五 人 中 最 年少の ファーレンハイト だけ が 、 色素 の 薄い 水色 の 瞳 に おもしろ そうな 表情 を たたえて いる 。 いつ|じん|なか|さい|ねんしょうの||||しきそ||うすい|みずいろ||ひとみ|||そう な|ひょうじょう||| 下級 貴族 の 出身 で 、 食う ため に 軍人 に なった と 広言 して いる 男 だ 。 かきゅう|きぞく||しゅっしん||くう|||ぐんじん||||こうげん|||おとこ| 機動 性 に 富んだ 速攻 の 用 兵 に 定評 が ある が 、 迎撃 戦 と なる と やや 粘り に 欠ける と も いわ れる 。 きどう|せい||とんだ|そっこう||よう|つわもの||ていひょう||||げいげき|いくさ|||||ねばり||かける|||| Although it has a good reputation for its highly mobile and haste soldiers, it is said that it lacks tenacity when it comes to interception battles.

「 どうも 私 の ように 不敏な 者 に は 理解 し がたい 見解 を 有して おいで の ようです な 。 |わたくし|||ふびんな|もの|||りかい|||けんかい||ゆうして|||| "It seems that someone like me has an incomprehensible view. もう すこし くわしく 説明 して いただける と ありがたい のです が ……」 |||せつめい|||||| I would be grateful if you could explain in a little more detail ... "

シュターデン 中将 が 耳ざわりな 声 で 言った 。 |ちゅうじょう||みみざわりな|こえ||いった その 不愉快な 舌 を ひきぬいて やる の は 後日 の こと と して 、 ラインハルト は 相手 の 要請 に 応じた 。 |ふゆかいな|した||||||ごじつ|||||||あいて||ようせい||おうじた Reinhardt responded to the request of the other party, saying that he would pull out the unpleasant tongue at a later date.

「 私 が 有利 と 言う の は つぎの 二 点 に おいて だ 。 わたくし||ゆうり||いう||||ふた|てん||| ひと つ 、 敵 が 三 方向 に 兵力 を 分散 さ せて いる のにたい し 、 わが 軍 は 一 カ所 に 集中 して いる 。 ||てき||みっ|ほうこう||へいりょく||ぶんさん||||のに たい|||ぐん||ひと|かしょ||しゅうちゅう||