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Fairy Tales, ネコのおけさ節

ネコ の おけ さ 節

ネコ の おけ さ 節

むかし むかし 、 佐渡 島 ( さ ど が しま ) の 海辺 に 、 ネコ 好き の おばあ さん が い ました 。 若い 頃 から 一 人 暮らし です が 、 いつも 十 数 匹 の ネコ を 飼って い ます 。 ところが 年 を 取る に つれて 貯金 も なくなり 、 その 日 の 食べる 物 に さえ も 不自由 する ように なり ました 。 その 為 に 、 たくさん 飼って いた ネコ たち も 次々 と 逃げ 出して 、 ついに は 古くから いた 三 毛 ネコ 一 匹 しか 残り ませ ん でした 。 おばあ さん は この 三 毛 ネコ を 今 まで 以上 に 可愛がり 、 自分 が 食べ ない 日 は あって も 、 ネコ の 食べ物 だけ は 毎日 用意 し ました 。 しかし 、 いつしか その 食べ物 に も 困る ように なった ので 、 ある 日 おばあ さん は ネコ に 言い ました 。 「 ごらん の 通り の 貧乏 暮らし で 、 お前 に エサ を やれ ん ように なって しまった 。 だからといって 家出 を したり 、 よそ の 家 に 行って 食べ物 を 欲し がったり し ない でおくれ 。 お前 は 、 わたし の たった 一 つ の 生きがい な のだ から 」 ところが 次の 日 、 その ネコ も 姿 を 消して しまい ました 。 ( ああ 、 何て 事 だろう 。 あれほど 可愛がって いた ネコ に 見捨て られる なんて 。 貧乏 する と 人 ばかり か 、 ネコ に まで 嫌わ れて しまう の か ) おばあ さん は 、 思わず 涙 を こぼし ました 。 誰 も いない 家 の 中 で ボンヤリ と 座って いたら 、 突然 、 美しい 娘 が 訪ねて 来て 言い ました 。 「 おばあ さん 、 わたし は おばあ さん に 可愛がって もらった 三 毛 ネコ です 。 今 まで 、 何の お 役 に も 立ち ませ ん でした が 、 どうぞ 恩返し を さ せて 下さい 」 と 、 言う で は あり ませ ん か 。 おばあ さん は ビックリ して 娘 を 見 ました が 、 どこ から 見て も 人間 の 姿 で 、 とても ネコ が 化けて いる と は 思え ませ ん 。 「 お前 、 そんな 姿 に なって 、 何 を しよう と いう の かい ? わたし の 事 なら 心配 し なくて も 大丈夫だ から ね 」 「 いいえ 、 このまま で は おばあ さん が 可愛 そうです 。 何でも 、 江戸 ( え ど ) の 方 から 芸者 ( げいしゃ ) に なる 娘 を 探し に 来て いる と いう 噂 を 聞き ました 。 どうか 、 江戸 の 男 に わたし を 見せて 下さい 。 きっと 、 たくさんの お 金 で 買って くれる でしょう 」 娘 に 化けた ネコ が 、 あまりに も 熱心に 言う ので 、 「 そこ まで 、 わたし の 事 を 心配 して くれる と は ・・・」 と 、 おばあ さん は ネコ の 申し出 を 受ける 事 に し ました 。 やがて 、 おばあ さん の 村 へ 江戸 の 男 が やって 来て 、 娘 を 見る なり 、 「 なんて きれいな 娘 だ 。 こりゃ 間 違いなく 、 江戸 でも 指折り の 芸者 に なれる ぞ 」 と 、 言って 、 おばあ さん に たくさんの 金 を 渡して 、 娘 を 江戸 へ 連れて 行き ました 。

それ から 何 ヶ月 か あと 、 江戸 の 深川 ( ふか がわ ) の 料理 屋 に 、 おけ さ と 名乗る 芸者 が 現れ ました 。 その あでやかな 美し さ は 、 まるで 名人 が 描いた 絵 から 抜け出た ようです 。 しかも 、 おけ さ の 歌う 歌 は 江戸 で は 珍しい もの で 、 人々 から は 『 おけ さ 節 』 と 呼ば れて 、 たちまち 町 中 の 評判 ( ひょうばん ) に なり ました 。 そんな おけ さ を 一目 見 たい と いう 客 が 増えて 、 おけ さ の いる 料理 屋 は 毎晩 大変な 賑わい と なり ました 。

ある 晩 の 事 、 その 料理 屋 へ 船乗り たち を 引き連れた 船頭 ( せんどう ) が やって 来て 、 「 金 なら いくら でも 出す から 、 おけ さ を 呼んで くれ 」 と 、 言う のです 。 「 お呼び いただいて 、 ありがとう ございます 」 おけ さ が 部屋 に 行く と 、 部屋 は たちまち 花 が 咲いた 様 に 華やかに なり 、 とても 賑やかな 酒盛り が 始まり ました 。 やがて 三味線 ( しゃみせん ) が 鳴り 、 おけ さ の 歌う 「 おけ さ 節 」 が 流れ ます 。 「 よ よっ 、 いい ぞ 、 いい ぞ 」 おけ さ 節 に 合わせて 船乗り たち が 踊り 、 踊って いる うち に 酒 の 酔い が 回って 、 一 人 、 また 一 人 と 酔い潰れ 、 酒盛り が 終わった 時 に は 、 みんな 大 の 字 に なって い ました 。 飲み 過ぎた 船頭 は 、 はう ように して 隣 の 部屋 へ 行き 、 布団 の 中 へ 潜り 込み ました 。

さて 、 夜中 に ふと 目 を 覚ました 船頭 の 耳 に 、 酒盛り を した 部屋 から 、 何 か を 噛み砕く 様 な 音 が 聞こえて き ました 。 ( はて 、 何の 音 だろう ? ) 不思議に 思った 船頭 が 、 しょうじ の すきま から そっと 中 を のぞいて みる と 、 何と 芸者 姿 の 大きな ネコ が キバ を むき 、 食べ 残した 魚 の 頭 を かじって いる で は あり ませ ん か 。 その 着物 は どう 見て も 、 おけ さ の 着て いた もの です 。 ビックリ した 船頭 は 、 あわてて 床 の 中 へ 潜り 込み ました 。 する と 、 それ に 気づいた おけ さ が 船頭 の そば へ 来て 、 「 今 見た 事 は 、 誰 に も 言わ ないで 下さい ね 。 もし 人 に しゃべったら 、 ただ で は おき ませ ん から ね 」 と 、 言った のです 。 「 わ 、 わかった 。 誰 に も 言わ ない 」 船頭 は 、 ブルブル と 震え ながら 答え ました 。

次の 朝 、 船頭 と 船乗り たち は 料理 屋 を 出て 浜 に 向かい ました 。 海 は 静かで 空 に は 雲 一 つ なく 、 船旅 に は 絶好 ( ぜっこう ) の 日 より です 。 「 それ っ ! 」 船頭 の かけ声 と ともに 、 船 は ゆっくり と 動き 始め ました 。 やがて 船乗り たち が 、 一 か所 に 集まって ゆうべ の 話 を 始め ます 。 「 いや あ 、 ゆうべ は 楽しかった な 。 それにしても 、 芸者 の おけ さ の きれいな 事 」 「 そう よ 。 さすが は 江戸 だ 。 おら 、 あんなに きれいで 歌 の うまい 芸者 は 見た 事 が ない 」 そこ へ 船頭 も やって 来て 、 つい 口 を 滑ら せた のです 。 「 お前 たち 、 あの 芸者 の 正体 を 知って いる の か ? 」 「 正体 だって ? 」 「 実は な 、 あの 芸者 は ネコ が 化けた もの だ 」 と 、 ゆうべ の 出来事 を 、 詳しく 話して 聞か せ ました 。 「 まさか そんな 。 とても 信じ られ ない 」 「 まだ 、 酒 に 酔って いる の と 違う か ? 」 船乗り たち が 首 を かしげて いる と 、 今 まで 晴れて いた 空 に 突然 黒 雲 が わき 出し 、 見る見る うち に 船 へ と 近づいて き ます 。 「 大変だ 、 嵐 が 来る ぞ ! 」 船乗り たち が それぞれ の 持ち場 へ 行こう と した 時 、 黒 雲 の 上 から 大きな ネコ が 現れて 、 いきなり 船頭 を 引きずり 上げる と 、 そのまま 雲 の 中 へ 消えて しまった のです 。 同時に 海 は 激しい 嵐 と なり 、 船 は 木 の 葉 の ように ゆれて 、 船乗り たち は 生きた 心地 が し ませ ん 。 「 どうか 、 どうか お 助け を 。 今 の 事 は 決して しゃべり ませ ん から ! 」 船乗り たち が 船 に しがみつき ながら 必死で 叫ぶ と 、 やがて 嵐 が 治まり ました 。 しかし 船頭 は 空 へ 引きずり あげ られた まま 、 二度と 戻って は 来 なかった そうです 。

おしまい


ネコ の おけ さ 節 ねこ||||せつ Ochotona hyperborea japonica (eng mit Katzen verwandte Pflanzenart, Cynoglossus joyneri) Cat's vase section

ネコ の おけ さ 節 ねこ||||せつ Cat's vase section

むかし むかし 、 佐渡 島 ( さ ど が しま ) の 海辺 に 、 ネコ 好き の おばあ さん が い ました 。 ||さど|しま||||||うみべ||ねこ|すき|||||| Once upon a time, there was a grandmother who loved cats on the seaside of Sado Island. 若い 頃 から 一 人 暮らし です が 、 いつも 十 数 匹 の ネコ を 飼って い ます 。 わかい|ころ||ひと|じん|くらし||||じゅう|すう|ひき||ねこ||かって|| I have lived alone since I was young and have always had a dozen cats. ところが 年 を 取る に つれて 貯金 も なくなり 、 その 日 の 食べる 物 に さえ も 不自由 する ように なり ました 。 |とし||とる|||ちょきん||||ひ||たべる|ぶつ||||ふじゆう|||| However, as he got older, his savings dried up and he began to lack even the food he needed for the day. その 為 に 、 たくさん 飼って いた ネコ たち も 次々 と 逃げ 出して 、 ついに は 古くから いた 三 毛 ネコ 一 匹 しか 残り ませ ん でした 。 |ため|||かって||ねこ|||つぎつぎ||にげ|だして|||ふるくから||みっ|け|ねこ|ひと|ひき||のこり||| So many of our cats ran away one by one, until we were left with only one old tortoiseshell cat. おばあ さん は この 三 毛 ネコ を 今 まで 以上 に 可愛がり 、 自分 が 食べ ない 日 は あって も 、 ネコ の 食べ物 だけ は 毎日 用意 し ました 。 ||||みっ|け|ねこ||いま||いじょう||かわいがり|じぶん||たべ||ひ||||ねこ||たべもの|||まいにち|ようい|| She loved the tortoiseshell cat even more than before, and even if she didn't eat, she made sure the cat had something to eat every day. しかし 、 いつしか その 食べ物 に も 困る ように なった ので 、 ある 日 おばあ さん は ネコ に 言い ました 。 |||たべもの|||こまる|||||ひ||||ねこ||いい| One day, however, the food became too hard to come by, so one day Nanny told the cat. 「 ごらん の 通り の 貧乏 暮らし で 、 お前 に エサ を やれ ん ように なって しまった 。 ||とおり||びんぼう|くらし||おまえ||えさ|||||| As you can see, I'm living in poverty and I can't feed you anymore. だからといって 家出 を したり 、 よそ の 家 に 行って 食べ物 を 欲し がったり し ない でおくれ 。 |いえで|||||いえ||おこなって|たべもの||ほし|||| But don't run away from home or go to other people's houses and ask for food. お前 は 、 わたし の たった 一 つ の 生きがい な のだ から 」   ところが 次の 日 、 その ネコ も 姿 を 消して しまい ました 。 おまえ|||||ひと|||いきがい|||||つぎの|ひ||ねこ||すがた||けして|| The next day, however, the cat disappeared. ( ああ 、 何て 事 だろう 。 |なんて|こと| ( Oh, my God. あれほど 可愛がって いた ネコ に 見捨て られる なんて 。 |かわいがって||ねこ||みすて|| I can't believe that the cat I loved so much abandoned me. 貧乏 する と 人 ばかり か 、 ネコ に まで 嫌わ れて しまう の か )   おばあ さん は 、 思わず 涙 を こぼし ました 。 びんぼう|||じん|||ねこ|||きらわ||||||||おもわず|なみだ||| (If you are poor, not only people, but even cats hate you? ) Grandma burst into tears. 誰 も いない 家 の 中 で ボンヤリ と 座って いたら 、 突然 、 美しい 娘 が 訪ねて 来て 言い ました 。 だれ|||いえ||なか||ぼんやり||すわって||とつぜん|うつくしい|むすめ||たずねて|きて|いい| I was sitting in my empty house, feeling a bit out of place, when suddenly my beautiful daughter came to visit me and said, "I'm so happy to see you. 「 おばあ さん 、 わたし は おばあ さん に 可愛がって もらった 三 毛 ネコ です 。 |||||||かわいがって||みっ|け|ねこ| Grandma, I am a tortoiseshell cat that was cared for by my grandmother. 今 まで 、 何の お 役 に も 立ち ませ ん でした が 、 どうぞ 恩返し を さ せて 下さい 」 と 、 言う で は あり ませ ん か 。 いま||なんの||やく|||たち||||||おんがえし||||ください||いう|||||| I have been of no help to you in the past, but I would like to return the favor," he would say. おばあ さん は ビックリ して 娘 を 見 ました が 、 どこ から 見て も 人間 の 姿 で 、 とても ネコ が 化けて いる と は 思え ませ ん 。 |||びっくり||むすめ||み|||||みて||にんげん||すがた|||ねこ||ばけて||||おもえ|| The grandmother looked at her daughter in surprise, but she looked so human that it was hard to believe that the cat had turned into a cat. 「 お前 、 そんな 姿 に なって 、 何 を しよう と いう の かい ? おまえ||すがた|||なん|||||| What are you going to do now that you are in such a state? わたし の 事 なら 心配 し なくて も 大丈夫だ から ね 」 「 いいえ 、 このまま で は おばあ さん が 可愛 そうです 。 ||こと||しんぱい||||だいじょうぶだ||||||||||かわい|そう です I'm sure you don't have to worry about me," she said. 何でも 、 江戸 ( え ど ) の 方 から 芸者 ( げいしゃ ) に なる 娘 を 探し に 来て いる と いう 噂 を 聞き ました 。 なんでも|えど||||かた||げいしゃ||||むすめ||さがし||きて||||うわさ||きき| I heard a rumor that someone from Edo (Edo) was looking for a girl to become a geisha. どうか 、 江戸 の 男 に わたし を 見せて 下さい 。 |えど||おとこ||||みせて|ください Please show me to the man of Edo. きっと 、 たくさんの お 金 で 買って くれる でしょう 」   娘 に 化けた ネコ が 、 あまりに も 熱心に 言う ので 、 「 そこ まで 、 わたし の 事 を 心配 して くれる と は ・・・」 と 、 おばあ さん は ネコ の 申し出 を 受ける 事 に し ました 。 |||きむ||かって|||むすめ||ばけた|ねこ||||ねっしんに|いう||||||こと||しんぱい|||||||||ねこ||もうしで||うける|こと||| The cat that turned into her daughter was so enthusiastic that Nanny decided to accept the cat's offer, saying, "I didn't know you cared about me that much. やがて 、 おばあ さん の 村 へ 江戸 の 男 が やって 来て 、 娘 を 見る なり 、 「 なんて きれいな 娘 だ 。 ||||むら||えど||おとこ|||きて|むすめ||みる||||むすめ| Soon after, a man from Edo (Edo period) came to the grandmother's village, and upon seeing her, he said, "What a beautiful girl! こりゃ 間 違いなく 、 江戸 でも 指折り の 芸者 に なれる ぞ 」 と 、 言って 、 おばあ さん に たくさんの 金 を 渡して 、 娘 を 江戸 へ 連れて 行き ました 。 |あいだ|ちがいなく|えど||ゆびおり||げいしゃ|||||いって|||||きむ||わたして|むすめ||えど||つれて|いき| He gave her a lot of money and took her to Edo (present-day Tokyo).

それ から 何 ヶ月 か あと 、 江戸 の 深川 ( ふか がわ ) の 料理 屋 に 、 おけ さ と 名乗る 芸者 が 現れ ました 。 ||なん|かげつ|||えど||ふかがわ||||りょうり|や|||||なのる|げいしゃ||あらわれ| Some months later, a geisha who called herself "Okesa" appeared at a restaurant in Fukagawa, Edo. その あでやかな 美し さ は 、 まるで 名人 が 描いた 絵 から 抜け出た ようです 。 ||うつくし||||めいじん||えがいた|え||ぬけでた| Its gorgeous beauty looks as if it came out of a master's painting. しかも 、 おけ さ の 歌う 歌 は 江戸 で は 珍しい もの で 、 人々 から は 『 おけ さ 節 』 と 呼ば れて 、 たちまち 町 中 の 評判 ( ひょうばん ) に なり ました 。 ||||うたう|うた||えど|||めずらしい|||ひとびと|||||せつ||よば|||まち|なか||ひょうばん|||| Moreover, the songs sung by okesa were so rare in Edo that they were called "okesa-busi" by the people and quickly became popular throughout the town. そんな おけ さ を 一目 見 たい と いう 客 が 増えて 、 おけ さ の いる 料理 屋 は 毎晩 大変な 賑わい と なり ました 。 ||||いちもく|み||||きゃく||ふえて|||||りょうり|や||まいばん|たいへんな|にぎわい||| The number of customers who wanted to see such a special performance increased, and the restaurants with the okesas became very crowded every night.

ある 晩 の 事 、 その 料理 屋 へ 船乗り たち を 引き連れた 船頭 ( せんどう ) が やって 来て 、 「 金 なら いくら でも 出す から 、 おけ さ を 呼んで くれ 」 と 、 言う のです 。 |ばん||こと||りょうり|や||ふなのり|||ひきつれた|せんどう||||きて|きむ||||だす|||||よんで|||いう| One evening, a boatman with a group of sailors came to the restaurant and said, "I'll give you any amount of money you want. 「 お呼び いただいて 、 ありがとう ございます 」   おけ さ が 部屋 に 行く と 、 部屋 は たちまち 花 が 咲いた 様 に 華やかに なり 、 とても 賑やかな 酒盛り が 始まり ました 。 および|||||||へや||いく||へや|||か||さいた|さま||はなやかに|||にぎやかな|さかもり||はじまり| When Okesa went to her room, it was instantly filled with a blooming flowery atmosphere and a very lively party began. やがて 三味線 ( しゃみせん ) が 鳴り 、 おけ さ の 歌う 「 おけ さ 節 」 が 流れ ます 。 |しゃみせん|||なり||||うたう|||せつ||ながれ| Soon after, the shamisen (a three-stringed Japanese musical instrument) sounds and the song "Okesa-busi" is sung. 「 よ よっ 、 いい ぞ 、 いい ぞ 」   おけ さ 節 に 合わせて 船乗り たち が 踊り 、 踊って いる うち に 酒 の 酔い が 回って 、 一 人 、 また 一 人 と 酔い潰れ 、 酒盛り が 終わった 時 に は 、 みんな 大 の 字 に なって い ました 。 ||||||||せつ||あわせて|ふなのり|||おどり|おどって||||さけ||よい||まわって|ひと|じん||ひと|じん||よいつぶれ|さかもり||おわった|じ||||だい||あざ|||| The sailors danced to the music, and as they danced, one by one they got drunk and passed out, and by the time the party was over, they were all in big letters. 飲み 過ぎた 船頭 は 、 はう ように して 隣 の 部屋 へ 行き 、 布団 の 中 へ 潜り 込み ました 。 のみ|すぎた|せんどう|||||となり||へや||いき|ふとん||なか||くぐり|こみ| The boatman, having had too much to drink, hurried to the next room and crawled under the covers.

さて 、 夜中 に ふと 目 を 覚ました 船頭 の 耳 に 、 酒盛り を した 部屋 から 、 何 か を 噛み砕く 様 な 音 が 聞こえて き ました 。 |よなか|||め||さました|せんどう||みみ||さかもり|||へや||なん|||かみくだく|さま||おと||きこえて|| The boatman woke up in the middle of the night and heard the sound of something being chewed up in the room where they were serving alcohol. ( はて 、 何の 音 だろう ? |なんの|おと| (Hatte, what's that sound? )   不思議に 思った 船頭 が 、 しょうじ の すきま から そっと 中 を のぞいて みる と 、 何と 芸者 姿 の 大きな ネコ が キバ を むき 、 食べ 残した 魚 の 頭 を かじって いる で は あり ませ ん か 。 ふしぎに|おもった|せんどう|||||||なか|||||なんと|げいしゃ|すがた||おおきな|ねこ|||||たべ|のこした|ぎょ||あたま||||||||| The boatman, wondering what was going on, peeked through a crack in the doorway and saw a large cat dressed as a geisha peeling its teeth and chewing on the head of a fish that had been left uneaten. その 着物 は どう 見て も 、 おけ さ の 着て いた もの です 。 |きもの|||みて|||||きて||| The kimono was apparently worn by an okesa. ビックリ した 船頭 は 、 あわてて 床 の 中 へ 潜り 込み ました 。 びっくり||せんどう|||とこ||なか||くぐり|こみ| Startled, the boatman rushed to the floor to hide. する と 、 それ に 気づいた おけ さ が 船頭 の そば へ 来て 、 「 今 見た 事 は 、 誰 に も 言わ ないで 下さい ね 。 ||||きづいた||||せんどう||||きて|いま|みた|こと||だれ|||いわ||ください| Then Okesa noticed this and came to the boatman's side and said, "Please don't tell anyone what you just saw. もし 人 に しゃべったら 、 ただ で は おき ませ ん から ね 」 と 、 言った のです 。 |じん||||||||||||いった| If you tell anyone, you won't get off scot-free," he said. 「 わ 、 わかった 。 "Wow, okay. 誰 に も 言わ ない 」   船頭 は 、 ブルブル と 震え ながら 答え ました 。 だれ|||いわ||せんどう||ぶるぶる||ふるえ||こたえ| I won't tell anyone," the boatman replied, trembling.

次の 朝 、 船頭 と 船乗り たち は 料理 屋 を 出て 浜 に 向かい ました 。 つぎの|あさ|せんどう||ふなのり|||りょうり|や||でて|はま||むかい| The next morning, the boatman and sailors left the restaurant and headed for the beach. 海 は 静かで 空 に は 雲 一 つ なく 、 船旅 に は 絶好 ( ぜっこう ) の 日 より です 。 うみ||しずかで|から|||くも|ひと|||ふなたび|||ぜっこう|||ひ|| The sea was calm and there was not a cloud in the sky, making it a perfect day for a boat trip. 「 それ っ ! I'll tell you what! 」   船頭 の かけ声 と ともに 、 船 は ゆっくり と 動き 始め ました 。 せんどう||かけごえ|||せん||||うごき|はじめ| The boat began to move slowly with the call of the boatman. やがて 船乗り たち が 、 一 か所 に 集まって ゆうべ の 話 を 始め ます 。 |ふなのり|||ひと|かしょ||あつまって|||はなし||はじめ| Soon the sailors gather in one place and begin to talk about last night. 「 いや あ 、 ゆうべ は 楽しかった な 。 ||||たのしかった| I had a lot of fun last night. それにしても 、 芸者 の おけ さ の きれいな 事 」 「 そう よ 。 |げいしゃ||||||こと|| By the way, the geisha's dress is beautiful. さすが は 江戸 だ 。 ||えど| Edo is indeed Edo. おら 、 あんなに きれいで 歌 の うまい 芸者 は 見た 事 が ない 」   そこ へ 船頭 も やって 来て 、 つい 口 を 滑ら せた のです 。 |||うた|||げいしゃ||みた|こと|||||せんどう|||きて||くち||すべら|| I have never seen such a beautiful and talented geisha. 「 お前 たち 、 あの 芸者 の 正体 を 知って いる の か ? おまえ|||げいしゃ||しょうたい||しって||| Do you know who the geisha is? 」 「 正体 だって ? しょうたい| Because of who he is? 」 「 実は な 、 あの 芸者 は ネコ が 化けた もの だ 」 と 、 ゆうべ の 出来事 を 、 詳しく 話して 聞か せ ました 。 じつは|||げいしゃ||ねこ||ばけた||||||できごと||くわしく|はなして|きか|| He told them the details of what had happened last night, saying, "Actually, that geisha was a cat that turned into a cat. 「 まさか そんな 。 No way. とても 信じ られ ない 」 「 まだ 、 酒 に 酔って いる の と 違う か ? |しんじ||||さけ||よって||||ちがう| I can't believe it." "Are you sure you're not still drunk? 」   船乗り たち が 首 を かしげて いる と 、 今 まで 晴れて いた 空 に 突然 黒 雲 が わき 出し 、 見る見る うち に 船 へ と 近づいて き ます 。 ふなのり|||くび|||||いま||はれて||から||とつぜん|くろ|くも|||だし|みるみる|||せん|||ちかづいて|| While the sailors were puzzling over the situation, a black cloud suddenly rose out of the previously clear sky, and it was approaching the ship. 「 大変だ 、 嵐 が 来る ぞ ! たいへんだ|あらし||くる| "Oh my God, there's a storm coming! 」   船乗り たち が それぞれ の 持ち場 へ 行こう と した 時 、 黒 雲 の 上 から 大きな ネコ が 現れて 、 いきなり 船頭 を 引きずり 上げる と 、 そのまま 雲 の 中 へ 消えて しまった のです 。 ふなのり|||||もちば||いこう|||じ|くろ|くも||うえ||おおきな|ねこ||あらわれて||せんどう||ひきずり|あげる|||くも||なか||きえて|| Just as the sailors were about to leave for their posts, a large cat appeared out of the black clouds, pulled the boatman up, and disappeared into the clouds. 同時に 海 は 激しい 嵐 と なり 、 船 は 木 の 葉 の ように ゆれて 、 船乗り たち は 生きた 心地 が し ませ ん 。 どうじに|うみ||はげしい|あらし|||せん||き||は||||ふなのり|||いきた|ここち|||| At the same time, the sea became a raging storm, the ship shaking like a leaf, making life unlivable for the sailors. 「 どうか 、 どうか お 助け を 。 |||たすけ| 今 の 事 は 決して しゃべり ませ ん から ! いま||こと||けっして|||| I will never talk about what happened! 」   船乗り たち が 船 に しがみつき ながら 必死で 叫ぶ と 、 やがて 嵐 が 治まり ました 。 ふなのり|||せん||||ひっしで|さけぶ|||あらし||おさまり| The sailors clung to their boats and shouted desperately, and soon the storm subsided. しかし 船頭 は 空 へ 引きずり あげ られた まま 、 二度と 戻って は 来 なかった そうです 。 |せんどう||から||ひきずり||||にどと|もどって||らい||そう です However, the boatman was dragged away and never returned.

おしまい the end