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或る女 - 有島武郎(アクセス), 30.1 或る女

30.1 或る 女

「 僕 が 毎日 ―― 毎日 と は いわ ず 毎 時間 あなた に 筆 を 執ら ない の は 執り たく ない から 執ら ない の では ありません 。 僕 は 一 日 あなた に 書き 続けて いて も なお 飽き足ら ない のです 。 それ は 今 の 僕 の 境界 で は 許さ れ ない 事 です 。 僕 は 朝 から 晩 まで 機械 の ごとく 働か ねば なりません から 。 ・・

あなた が 米国 を 離れて から この 手紙 は たぶん 七 回 目 の 手紙 と して あなた に 受け取ら れる と 思います 。 しかし 僕 の 手紙 は いつまでも 暇 を ぬすんで 少しずつ 書いて いる のです から 、 僕 から いう と 日 に 二 度 も 三 度 も あなた に あてて 書いて る わけに なる のです 。 しかし あなた は あの 後 一 回 の 音信 も 恵んで は くださら ない 。 ・・

僕 は 繰り返し 繰り返し いいます 。 た とい あなた に どんな 過失 どんな 誤 謬 が あろう と も 、 それ を 耐え 忍び 、 それ を 許す 事 に おいて は 主 キリスト 以上 の 忍耐 力 を 持って いる の を 僕 は 自ら 信じて います 。 誤解 して は 困ります 。 僕 が いかなる 人 に 対して も かかる 力 を 持って いる と いう ので は ない のです 。 ただ あなた に 対して です 。 あなた は いつでも 僕 の 品性 を 尊く 導いて くれます 。 僕 は あなた に よって 人 が どれほど 愛し うる か を 学びました 。 あなた に よって 世間 で いう 堕落 と か 罪悪 と か いう 者 が どれほど まで 寛容の 余裕 が ある か を 学びました 。 そうして その 寛容 に よって 、 寛容 する 人 自身 が どれほど 品性 を 陶冶 さ れる か を 学びました 。 僕 は また 自分 の 愛 を 成就 する ため に は どれほど の 勇者 に なり うる か を 学びました 。 これほど まで に 僕 を 神 の 目 に 高めて くださった あなた が 、 僕 から 万一 に も 失わ れる と いう の は 想像 が できません 。 神 が そんな 試練 を 人 の 子 に 下される 残虐 は なさら ない の を 僕 は 信じて います 。 そんな 試練 に 堪える の は 人力 以上 です から 。 今 の 僕 から あなた が 奪わ れる と いう の は 神 が 奪わ れる の と 同じ 事 です 。 あなた は 神 だ と は いい ま すまい 。 しかし あなた を 通して のみ 僕 は 神 を 拝む 事 が できる のです 。 ・・

時々 僕 は 自分 で 自分 を あわれんで しまう 事 が あります 。 自分 自身 だけ の 力 と 信仰 と で すべて の もの を 見る 事 が できたら どれほど 幸福で 自由だろう と 考える と 、 あなた を わずらわさ なければ 一 歩 を 踏み出す 力 を も 感じ 得 ない 自分 の 束縛 を 呪い たく も なります 。 同時に それほど 慕わ しい 束縛 は 他 に ない 事 を 知る のです 。 束縛 の ない 所 に 自由 は ない と いった 意味 で あなた の 束縛 は 僕 の 自由です 。 ・・

あなた は ―― いったん 僕 に 手 を 与えて くださる と 約束 なさった あなた は 、 ついに 僕 を 見捨てよう と して おら れる のです か 。 どうして 一 回 の 音信 も 恵んで は くださら ない のです 。 しかし 僕 は 信じて 疑いません 。 世にも し 真理 が ある ならば 、 そして 真理 が 最後 の 勝利 者 ならば あなた は 必ず 僕 に 還って くださる に 違いない と 。 なぜ なれば 、 僕 は 誓います 。 ―― 主 よこ の 僕 を 見守り たまえ ―― 僕 は あなた を 愛して 以来 断じて 他の 異性 に 心 を 動かさ なかった 事 を 。 この 誠意 が あなた に よって 認められ ない わけ は ない と 思います 。 ・・

あなた は 従来 暗い いくつか の 過去 を 持って います 。 それ が 知らず知らず あなた の 向上 心 を 躊躇 さ せ 、 あなた を やや 絶望 的に して いる ので は ない のです か 。 もし そう なら あなた は 全然 誤 謬 に 陥って いる と 思います 。 すべて の 救い は 思いきって その 中 から 飛び出す ほか に は ない のでしょう 。 そこ に 停滞 して いる の は それ だけ あなた の 暗い 過去 を 暗く する ばかりです 。 あなた は 僕 に 信頼 を 置いて くださる 事 は でき ない のでしょう か 。 人類 の 中 に 少なく も 一 人 、 あなた の すべて の 罪 を 喜んで 忘れよう と 両手 を 広げて 待ち 設けて いる もの の ある の を 信じて くださる 事 は でき ない でしょう か 。 ・・

こんな 下らない 理屈 は もう やめましょう 。 ・・

昨夜 書いた 手紙 に 続けて 書きます 。 けさ ハミルトン 氏 の 所 から 至急 に 来い と いう 電話 が かかりました 。 シカゴ の 冬 は 予期 以上 に 寒い のです 。 仙台 どころ の 比 では ありません 。 雪 は 少しも ない けれども 、 イリー 湖 を 多 湖 地方 から 渡って 来る 風 は 身 を 切る ようでした 。 僕 は 外套 の 上 に また 大 外套 を 重ね 着して い ながら 、 風 に 向いた 皮膚 に しみ とおる 風 の 寒 さ を 感じました 。 ハミルトン 氏 の 用 と いう の は 来年 セントルイス に 開催 さ れる 大規模な 博覧 会 の 協議 の ため 急に そこ に 赴く ように なった から 同行 しろ と いう のでした 。 僕 は 旅行 の 用意 は なんら して い なかった が 、 ここ に アメリカニズム が ある のだ と 思って そのまま 同行 する 事 に しました 。 自分 の 部屋 の 戸 に 鍵 も かけ ず に 飛び出した のです から バビコック 博士 の 奥さん は 驚いて いる でしょう 。 しかし さすが に 米国 です 。 着のみ着のまま で ここ まで 来て も 何一つ 不自由 を 感じません 。 鎌倉 あたり まで 行く の に も 膝 かけ から 旅 カバン まで 用意 しなければ なら ない のです から 、 日本 の 文明 は まだ なかなか の もの です 。 僕たち は この 地 に 着く と 、 停車場 内 の 化粧 室 で 髭 を そり 、 靴 を みがか せ 、 夜会 に 出て も 恥ずかしく ない したく が できて しまいました 。 そして すぐ 協議 会 に 出席 しました 。 あなた も 知って おら る る とおり ドイツ 人 の あの へんに おける 勢力 は 偉い もの です 。 博覧 会 が 開けたら 、 われわれ は 米国 に 対して より も むしろ これら の ドイツ 人 に 対して 褌 裸 一 番 する 必要 が あります 。 ランチ の 時 僕 は ハミルトン 氏 に 例 の 日本 に 買い占めて ある キモノ その他 の 話 を もう 一 度 しました 。 博覧 会 を 前 に 控えて いる ので ハミルトン 氏 も 今度 は 乗り気に なって くれ まして 、 高島 屋 と 連絡 を つけて おく ため に とにかく 品物 を 取り寄せて 自分 の 店 で さ ばかして みよう と いって くれました 。 これ で 僕 の 財政 は 非常に 余裕 が できる わけです 。 今 まで 店 が なかった ばかりに 、 取り寄せて も 荷 厄介 だった もの です が 、 ハミルトン 氏 の 店 で 取り扱って くれれば 相当に 売れる の は わかって います 。 そう なったら 今 まで と 違って あなた の ほう に も 足りない ながら 仕送り を して 上げる 事 が できましょう 。 さっそく 電報 を 打って いちばん 早い 船便 で 取り寄せる 事 に に しました から 不 日 着 荷 する 事 と 思って います 。 ・・

今 は 夜 も だいぶ ふけました 。 ハミルトン 氏 は 今夜 も 饗応 に 呼ばれて 出かけました 。 大きらいな テーブル ・ スピーチ に なやま されて いる のでしょう 。 ハミルトン 氏 は 実に シャープな ビジネスマンライキ な 人 です 。 そして 熱心な 正統 派 の 信仰 を 持った 慈善 家 です 。 僕 は ことのほか 信頼 さ れ 重宝がられて います 。 そこ から 僕 の ライフ ・ キャリヤア を 踏み出す の は 大 なる 利益 です 。 僕 の 前途 に は 確かに 光明 が 見え 出して 来ました 。 ・・

あなた に 書く 事 は 底 止 なく 書く 事 です 。 しかし あす の 奮闘 的 生活 ( これ は 大統領 ルーズベルト の 著書 の “ Strenuous Life ” を 訳して みた 言葉 です 。 今 この 言葉 は 当地 の 流行 語 に なって います ) に 備える ため に 筆 を 止め ねば なりません 。 この 手紙 は あなた に も 喜び を 分けて いただく 事 が できる か と 思います 。 ・・

きのう セントルイス から 帰って 来たら 、 手紙 が かなり 多数 届いて いました 。 郵便 局 の 前 を 通る に つけ 、 郵便 箱 を 見る に つけ 、 脚 夫 に 行きあう に つけ 、 僕 は あなた を 連想 し ない 事 は ありません 。 自分 の 机 の 上 に 来信 を 見いだした 時 は なおさら の 事 です 。 僕 は 手紙 の 束の間 を かき分けて あなた の 手 跡 を 見いだそう と つとめました 。 しかし 僕 は また 絶望 に 近い 失望 に 打た れ なければ なりません でした 。 僕 は 失望 は しましょう 。 しかし 絶望 は しません 。 できません 葉子 さん 、 信じて ください 。 僕 は ロングフェロー の エヴァンジェリン の 忍耐 と 謙遜 と を もって あなた が 僕 の 心 を ほんとうに 汲み取って くださる 時 を 待って います 。 しかし 手紙 の 束 の 中 から は わずかに 僕 を 失望 から 救う ため に 古藤 君 と 岡 君 と の 手紙 が 見いださ れました 。 古藤 君 の 手紙 は 兵 営 に 行く 五 日 前 に 書か れた もの でした 。 いまだに あなた の 居所 を 知る 事 が でき ない ので 、 僕 の 手紙 は やはり 倉地 氏 に あてて 回送 して いる と 書いて あります 。 古藤 君 は そうした 手続き を 取る の を はなはだしく 不快に 思って いる ようです 。 岡 君 は 人 に もらし 得 ない 家庭 内 の 紛 擾 や 周囲 から 受ける 誤解 を 、 岡 君 らしく 過敏に 考え 過ぎて 弱い 体質 を ますます 弱く して いる ようです 。 書いて ある 事 に は ところどころ 僕 の 持つ 常識 で は 判断 し かねる ような 所 が あります 。 あなた から いつか 必ず 消息 が 来る の を 信じ きって 、 その 時 を ただ 一 つ の 救い と して 待って います 。 その 時 の 感謝 と 喜 悦 と を 想像 で 描き出して 、 小説 でも 読む ように 書いて あります 。 僕 は 岡 君 の 手紙 を 読む と 、 いつでも 僕 自身 の 心 が そのまま 書き 現わされて いる ように 思って 涙 を 感じます 。 ・・

なぜ あなた は 自分 を それほど まで 韜晦 して おら れる の か 、 それ に は 深い わけ が ある 事 と 思います けれども 、 僕 に は どちら の 方面 から 考えて も 想像 が つきません 。 ・・

日本 から の 消息 は どんな 消息 も 待ち遠しい 。 しかし それ を 見 終わった 僕 は きっと 憂鬱に 襲わ れます 。 僕 に もし 信仰 が 与えられて い なかったら 、 僕 は 今 どう なって いた か を 知りません 。 ・・

前 の 手紙 と の 間 に 三 日 が たちました 。 僕 は バビコック 博士 夫婦 と 今夜 ライシアム 座 に ウェルシ 嬢 の 演じた トルストイ の 「 復活 」 を 見物 しました 。 そこ に は キリスト 教徒 と して 目 を そむけ なければ なら ない ような 場面 が ない で は なかった けれども 、 終わり の ほう に 近づいて 行って の 荘厳 さ は 見物人 の すべて を 捕 捉 して しまいました 。 ウェルシ 嬢 の 演じた 女 主人公 は 真に 迫り すぎて いる くらい でした 。 あなた が もし まだ 「 復活 」 を 読んで いられ ない の なら 僕 は ぜひ それ を お 勧め します 。 僕 は トルストイ の 「 懺悔 」 を K 氏 の 邦文 訳 で 日本 に いる 時 読んだ だけ です が 、 あの 芝居 を 見て から 、 暇 が あったら もっと 深く いろいろ 研究 したい と 思う ように なりました 。 日本 で は トルストイ の 著書 は まだ 多く の 人 に 知られて いない と 思います が 、 少なくとも 「 復活 」 だけ は 丸善 から でも 取り寄せて 読んで いただきたい 、 あなた を 啓発 する 事 が 必ず 多い の は 請け合います から 。 僕ら は 等しく 神 の 前 に 罪人 です 。 しかし その 罪 を 悔い改める 事 に よって 等しく 選ば れた 神 の 僕 と なり うる のです 。 この 道 の ほか に は 人 の 子 の 生活 を 天国 に 結び付ける 道 は 考えられません 。 神 を 敬い 人 を 愛する 心 の 萎えて しまわ ない うち に お互いに 光 を 仰ごう では ありません か 。 ・・

葉子 さん 、 あなた の 心 に 空虚 なり 汚点 なり が あって も 万 望 絶望 し ないで ください よ 。 あなた を そのまま に 喜んで 受け入れて 、―― 苦し み が あれば あなた と 共に 苦しみ 、 あなた に 悲しみ が あれば あなた と 共に 悲しむ もの が ここ に 一 人 いる 事 を 忘れ ないで ください 。 僕 は 戦って 見せます 。 どんなに あなた が 傷ついて いて も 、 僕 は あなた を かばって 勇ましく この 人生 を 戦って 見せます 。 僕 の 前 に 事業 が 、 そして 後ろ に あなた が あれば 、 僕 は 神 の 最も 小さい 僕 と して 人類 の 祝福 の ため に 一生 を ささげます 。 ・・

あ ゝ 、 筆 も 言語 も ついに 無益です 。 火 と 熱する 誠意 と 祈り と を こめて 僕 は ここ に この 手紙 を 封じます 。 この 手紙 が 倉地 氏 の 手 から あなた に 届いたら 、 倉地 氏 に も よろしく 伝えて ください 。 倉地 氏 に 迷惑 を おか けした 金銭 上 の 事 に ついて は 前 便 に 書いて おきました から 見て くださった と 思います 。 願 わく は 神 われら と 共に 在 し たまわ ん 事 を 。 ・・

明治 三十四 年 十二 月 十三 日 」


30.1 或る 女 ある|おんな 30.1 Una mujer

「 僕 が 毎日 ―― 毎日 と は いわ ず 毎 時間 あなた に 筆 を 執ら ない の は 執り たく ない から 執ら ない の では ありません 。 ぼく||まいにち|まいにち|||||まい|じかん|||ふで||とら||||とり||||とら||||あり ませ ん "The reason I don't write to you every day--not every day, every hour--is not because I don't want to. 僕 は 一 日 あなた に 書き 続けて いて も なお 飽き足ら ない のです 。 ぼく||ひと|ひ|||かき|つづけて||||あきたら|| それ は 今 の 僕 の 境界 で は 許さ れ ない 事 です 。 ||いま||ぼく||きょうかい|||ゆるさ|||こと| 僕 は 朝 から 晩 まで 機械 の ごとく 働か ねば なりません から 。 ぼく||あさ||ばん||きかい|||はたらか||なり ませ ん| ・・

あなた が 米国 を 離れて から この 手紙 は たぶん 七 回 目 の 手紙 と して あなた に 受け取ら れる と 思います 。 ||べいこく||はなれて|||てがみ|||なな|かい|め||てがみ|||||うけとら|||おもい ます しかし 僕 の 手紙 は いつまでも 暇 を ぬすんで 少しずつ 書いて いる のです から 、 僕 から いう と 日 に 二 度 も 三 度 も あなた に あてて 書いて る わけに なる のです 。 |ぼく||てがみ|||いとま|||すこしずつ|かいて||||ぼく||||ひ||ふた|たび||みっ|たび|||||かいて|||| しかし あなた は あの 後 一 回 の 音信 も 恵んで は くださら ない 。 ||||あと|ひと|かい||おんしん||めぐんで||| ・・

僕 は 繰り返し 繰り返し いいます 。 ぼく||くりかえし|くりかえし|いい ます た とい あなた に どんな 過失 どんな 誤 謬 が あろう と も 、 それ を 耐え 忍び 、 それ を 許す 事 に おいて は 主 キリスト 以上 の 忍耐 力 を 持って いる の を 僕 は 自ら 信じて います 。 |||||かしつ||ご|びゅう|||||||たえ|しのび|||ゆるす|こと||||おも|きりすと|いじょう||にんたい|ちから||もって||||ぼく||おのずから|しんじて|い ます No matter what mistakes you make, no matter what mistakes you make, I believe that you have more patience than the Lord Christ in enduring and forgiving them. 誤解 して は 困ります 。 ごかい|||こまり ます 僕 が いかなる 人 に 対して も かかる 力 を 持って いる と いう ので は ない のです 。 ぼく|||じん||たいして|||ちから||もって||||||| ただ あなた に 対して です 。 |||たいして| あなた は いつでも 僕 の 品性 を 尊く 導いて くれます 。 |||ぼく||ひんせい||とうとく|みちびいて|くれ ます You always guide my character with respect. 僕 は あなた に よって 人 が どれほど 愛し うる か を 学びました 。 ぼく|||||じん|||あいし||||まなび ました あなた に よって 世間 で いう 堕落 と か 罪悪 と か いう 者 が どれほど まで 寛容の 余裕 が ある か を 学びました 。 |||せけん|||だらく|||ざいあく||||もの||||かんようの|よゆう|||||まなび ました Through you, I learned how much tolerance people have for what people call depravity and guilt. そうして その 寛容 に よって 、 寛容 する 人 自身 が どれほど 品性 を 陶冶 さ れる か を 学びました 。 ||かんよう|||かんよう||じん|じしん|||ひんせい||とうや|||||まなび ました 僕 は また 自分 の 愛 を 成就 する ため に は どれほど の 勇者 に なり うる か を 学びました 。 ぼく|||じぶん||あい||じょうじゅ|||||||ゆうしゃ||||||まなび ました これほど まで に 僕 を 神 の 目 に 高めて くださった あなた が 、 僕 から 万一 に も 失わ れる と いう の は 想像 が できません 。 |||ぼく||かみ||め||たかめて||||ぼく||まんいち|||うしなわ||||||そうぞう||でき ませ ん 神 が そんな 試練 を 人 の 子 に 下される 残虐 は なさら ない の を 僕 は 信じて います 。 かみ|||しれん||じん||こ||くだされる|ざんぎゃく||||||ぼく||しんじて|い ます I believe that God would not be so cruel as to pass such trials upon the Son of Man. そんな 試練 に 堪える の は 人力 以上 です から 。 |しれん||こらえる|||じんりょく|いじょう|| 今 の 僕 から あなた が 奪わ れる と いう の は 神 が 奪わ れる の と 同じ 事 です 。 いま||ぼく||||うばわ||||||かみ||うばわ||||おなじ|こと| あなた は 神 だ と は いい ま すまい 。 ||かみ|||||| しかし あなた を 通して のみ 僕 は 神 を 拝む 事 が できる のです 。 |||とおして||ぼく||かみ||おがむ|こと||| ・・

時々 僕 は 自分 で 自分 を あわれんで しまう 事 が あります 。 ときどき|ぼく||じぶん||じぶん||||こと||あり ます 自分 自身 だけ の 力 と 信仰 と で すべて の もの を 見る 事 が できたら どれほど 幸福で 自由だろう と 考える と 、 あなた を わずらわさ なければ 一 歩 を 踏み出す 力 を も 感じ 得 ない 自分 の 束縛 を 呪い たく も なります 。 じぶん|じしん|||ちから||しんこう|||||||みる|こと||||こうふくで|じゆうだろう||かんがえる||||||ひと|ふ||ふみだす|ちから|||かんじ|とく||じぶん||そくばく||まじない|||なり ます 同時に それほど 慕わ しい 束縛 は 他 に ない 事 を 知る のです 。 どうじに||したわ||そくばく||た|||こと||しる| 束縛 の ない 所 に 自由 は ない と いった 意味 で あなた の 束縛 は 僕 の 自由です 。 そくばく|||しょ||じゆう|||||いみ||||そくばく||ぼく||じゆうです ・・

あなた は ―― いったん 僕 に 手 を 与えて くださる と 約束 なさった あなた は 、 ついに 僕 を 見捨てよう と して おら れる のです か 。 |||ぼく||て||あたえて|||やくそく|||||ぼく||みすてよう|||||| どうして 一 回 の 音信 も 恵んで は くださら ない のです 。 |ひと|かい||おんしん||めぐんで|||| しかし 僕 は 信じて 疑いません 。 |ぼく||しんじて|うたがい ませ ん 世にも し 真理 が ある ならば 、 そして 真理 が 最後 の 勝利 者 ならば あなた は 必ず 僕 に 還って くださる に 違いない と 。 よにも||しんり|||||しんり||さいご||しょうり|もの||||かならず|ぼく||かえって|||ちがいない| なぜ なれば 、 僕 は 誓います 。 ||ぼく||ちかい ます ―― 主 よこ の 僕 を 見守り たまえ ―― 僕 は あなた を 愛して 以来 断じて 他の 異性 に 心 を 動かさ なかった 事 を 。 おも|||ぼく||みまもり||ぼく||||あいして|いらい|だんじて|たの|いせい||こころ||うごかさ||こと| --Watch over the Lord's servant--that ever since I loved you, I have never been moved by another of the opposite sex. この 誠意 が あなた に よって 認められ ない わけ は ない と 思います 。 |せいい|||||みとめ られ||||||おもい ます ・・

あなた は 従来 暗い いくつか の 過去 を 持って います 。 ||じゅうらい|くらい|いく つ か||かこ||もって|い ます それ が 知らず知らず あなた の 向上 心 を 躊躇 さ せ 、 あなた を やや 絶望 的に して いる ので は ない のです か 。 ||しらずしらず|||こうじょう|こころ||ちゅうちょ||||||ぜつぼう|てきに||||||| もし そう なら あなた は 全然 誤 謬 に 陥って いる と 思います 。 |||||ぜんぜん|ご|びゅう||おちいって|||おもい ます すべて の 救い は 思いきって その 中 から 飛び出す ほか に は ない のでしょう 。 ||すくい||おもいきって||なか||とびだす||||| そこ に 停滞 して いる の は それ だけ あなた の 暗い 過去 を 暗く する ばかりです 。 ||ていたい|||||||||くらい|かこ||くらく|| あなた は 僕 に 信頼 を 置いて くださる 事 は でき ない のでしょう か 。 ||ぼく||しんらい||おいて||こと||||| 人類 の 中 に 少なく も 一 人 、 あなた の すべて の 罪 を 喜んで 忘れよう と 両手 を 広げて 待ち 設けて いる もの の ある の を 信じて くださる 事 は でき ない でしょう か 。 じんるい||なか||すくなく||ひと|じん|||||ざい||よろこんで|わすれよう||りょうて||ひろげて|まち|もうけて|||||||しんじて||こと||||| ・・

こんな 下らない 理屈 は もう やめましょう 。 |くだらない|りくつ|||やめ ましょう ・・

昨夜 書いた 手紙 に 続けて 書きます 。 さくや|かいた|てがみ||つづけて|かき ます けさ ハミルトン 氏 の 所 から 至急 に 来い と いう 電話 が かかりました 。 |はみるとん|うじ||しょ||しきゅう||こい|||でんわ||かかり ました This morning I received a call from Mr. Hamilton asking me to come urgently. シカゴ の 冬 は 予期 以上 に 寒い のです 。 しかご||ふゆ||よき|いじょう||さむい| 仙台 どころ の 比 では ありません 。 せんだい|||ひ||あり ませ ん 雪 は 少しも ない けれども 、 イリー 湖 を 多 湖 地方 から 渡って 来る 風 は 身 を 切る ようでした 。 ゆき||すこしも||||こ||おお|こ|ちほう||わたって|くる|かぜ||み||きる| 僕 は 外套 の 上 に また 大 外套 を 重ね 着して い ながら 、 風 に 向いた 皮膚 に しみ とおる 風 の 寒 さ を 感じました 。 ぼく||がいとう||うえ|||だい|がいとう||かさね|ちゃくして|||かぜ||むいた|ひふ||||かぜ||さむ|||かんじ ました ハミルトン 氏 の 用 と いう の は 来年 セントルイス に 開催 さ れる 大規模な 博覧 会 の 協議 の ため 急に そこ に 赴く ように なった から 同行 しろ と いう のでした 。 はみるとん|うじ||よう|||||らいねん|||かいさい|||だいきぼな|はくらん|かい||きょうぎ|||きゅうに|||おもむく||||どうこう|||| 僕 は 旅行 の 用意 は なんら して い なかった が 、 ここ に アメリカニズム が ある のだ と 思って そのまま 同行 する 事 に しました 。 ぼく||りょこう||ようい||||||||||||||おもって||どうこう||こと||し ました 自分 の 部屋 の 戸 に 鍵 も かけ ず に 飛び出した のです から バビコック 博士 の 奥さん は 驚いて いる でしょう 。 じぶん||へや||と||かぎ|||||とびだした||||はかせ||おくさん||おどろいて|| しかし さすが に 米国 です 。 |||べいこく| 着のみ着のまま で ここ まで 来て も 何一つ 不自由 を 感じません 。 きのみきのまま||||きて||なにひとつ|ふじゆう||かんじ ませ ん 鎌倉 あたり まで 行く の に も 膝 かけ から 旅 カバン まで 用意 しなければ なら ない のです から 、 日本 の 文明 は まだ なかなか の もの です 。 かまくら|||いく||||ひざ|||たび|かばん||ようい|し なければ|||||にっぽん||ぶんめい|||||| 僕たち は この 地 に 着く と 、 停車場 内 の 化粧 室 で 髭 を そり 、 靴 を みがか せ 、 夜会 に 出て も 恥ずかしく ない したく が できて しまいました 。 ぼくたち|||ち||つく||ていしゃば|うち||けしょう|しつ||ひげ|||くつ||||やかい||でて||はずかしく|||||しまい ました そして すぐ 協議 会 に 出席 しました 。 ||きょうぎ|かい||しゅっせき|し ました あなた も 知って おら る る とおり ドイツ 人 の あの へんに おける 勢力 は 偉い もの です 。 ||しって|||||どいつ|じん|||||せいりょく||えらい|| 博覧 会 が 開けたら 、 われわれ は 米国 に 対して より も むしろ これら の ドイツ 人 に 対して 褌 裸 一 番 する 必要 が あります 。 はくらん|かい||あけたら|||べいこく||たいして||||これ ら||どいつ|じん||たいして|ふんどし|はだか|ひと|ばん||ひつよう||あり ます ランチ の 時 僕 は ハミルトン 氏 に 例 の 日本 に 買い占めて ある キモノ その他 の 話 を もう 一 度 しました 。 らんち||じ|ぼく||はみるとん|うじ||れい||にっぽん||かいしめて|||そのほか||はなし|||ひと|たび|し ました 博覧 会 を 前 に 控えて いる ので ハミルトン 氏 も 今度 は 乗り気に なって くれ まして 、 高島 屋 と 連絡 を つけて おく ため に とにかく 品物 を 取り寄せて 自分 の 店 で さ ばかして みよう と いって くれました 。 はくらん|かい||ぜん||ひかえて|||はみるとん|うじ||こんど||のりきに||||たかしま|や||れんらく|||||||しなもの||とりよせて|じぶん||てん|||||||くれ ました これ で 僕 の 財政 は 非常に 余裕 が できる わけです 。 ||ぼく||ざいせい||ひじょうに|よゆう||| 今 まで 店 が なかった ばかりに 、 取り寄せて も 荷 厄介 だった もの です が 、 ハミルトン 氏 の 店 で 取り扱って くれれば 相当に 売れる の は わかって います 。 いま||てん||||とりよせて||に|やっかい|||||はみるとん|うじ||てん||とりあつかって||そうとうに|うれる||||い ます そう なったら 今 まで と 違って あなた の ほう に も 足りない ながら 仕送り を して 上げる 事 が できましょう 。 ||いま|||ちがって||||||たりない||しおくり|||あげる|こと||でき ましょう さっそく 電報 を 打って いちばん 早い 船便 で 取り寄せる 事 に に しました から 不 日 着 荷 する 事 と 思って います 。 |でんぽう||うって||はやい|ふなびん||とりよせる|こと|||し ました||ふ|ひ|ちゃく|に||こと||おもって|い ます ・・

今 は 夜 も だいぶ ふけました 。 いま||よ|||ふけ ました ハミルトン 氏 は 今夜 も 饗応 に 呼ばれて 出かけました 。 はみるとん|うじ||こんや||きょうおう||よば れて|でかけ ました 大きらいな テーブル ・ スピーチ に なやま されて いる のでしょう 。 だいきらいな|てーぶる|すぴーち|||さ れて|| ハミルトン 氏 は 実に シャープな ビジネスマンライキ な 人 です 。 はみるとん|うじ||じつに|しゃーぷな|||じん| そして 熱心な 正統 派 の 信仰 を 持った 慈善 家 です 。 |ねっしんな|せいとう|は||しんこう||もった|じぜん|いえ| 僕 は ことのほか 信頼 さ れ 重宝がられて います 。 ぼく|||しんらい|||ちょうほうがら れて|い ます そこ から 僕 の ライフ ・ キャリヤア を 踏み出す の は 大 なる 利益 です 。 ||ぼく||らいふ|||ふみだす|||だい||りえき| 僕 の 前途 に は 確かに 光明 が 見え 出して 来ました 。 ぼく||ぜんと|||たしかに|こうみょう||みえ|だして|き ました ・・

あなた に 書く 事 は 底 止 なく 書く 事 です 。 ||かく|こと||そこ|や||かく|こと| しかし あす の 奮闘 的 生活 ( これ は 大統領 ルーズベルト の 著書 の “ Strenuous Life ” を 訳して みた 言葉 です 。 |||ふんとう|てき|せいかつ|||だいとうりょう|||ちょしょ||strenuous|life||やくして||ことば| 今 この 言葉 は 当地 の 流行 語 に なって います ) に 備える ため に 筆 を 止め ねば なりません 。 いま||ことば||とうち||りゅうこう|ご|||い ます||そなえる|||ふで||とどめ||なり ませ ん この 手紙 は あなた に も 喜び を 分けて いただく 事 が できる か と 思います 。 |てがみ|||||よろこび||わけて||こと|||||おもい ます ・・

きのう セントルイス から 帰って 来たら 、 手紙 が かなり 多数 届いて いました 。 |||かえって|きたら|てがみ|||たすう|とどいて|い ました 郵便 局 の 前 を 通る に つけ 、 郵便 箱 を 見る に つけ 、 脚 夫 に 行きあう に つけ 、 僕 は あなた を 連想 し ない 事 は ありません 。 ゆうびん|きょく||ぜん||とおる|||ゆうびん|はこ||みる|||あし|おっと||いきあう|||ぼく||||れんそう|||こと||あり ませ ん 自分 の 机 の 上 に 来信 を 見いだした 時 は なおさら の 事 です 。 じぶん||つくえ||うえ||らいしん||みいだした|じ||||こと| 僕 は 手紙 の 束の間 を かき分けて あなた の 手 跡 を 見いだそう と つとめました 。 ぼく||てがみ||つかのま||かきわけて|||て|あと||みいだそう||つとめ ました I pushed my way through the bundles of letters, trying to find your traces. しかし 僕 は また 絶望 に 近い 失望 に 打た れ なければ なりません でした 。 |ぼく|||ぜつぼう||ちかい|しつぼう||うた|||なり ませ ん| 僕 は 失望 は しましょう 。 ぼく||しつぼう||し ましょう しかし 絶望 は しません 。 |ぜつぼう||し ませ ん できません 葉子 さん 、 信じて ください 。 でき ませ ん|ようこ||しんじて| 僕 は ロングフェロー の エヴァンジェリン の 忍耐 と 謙遜 と を もって あなた が 僕 の 心 を ほんとうに 汲み取って くださる 時 を 待って います 。 ぼく||||||にんたい||けんそん||||||ぼく||こころ|||くみとって||じ||まって|い ます しかし 手紙 の 束 の 中 から は わずかに 僕 を 失望 から 救う ため に 古藤 君 と 岡 君 と の 手紙 が 見いださ れました 。 |てがみ||たば||なか||||ぼく||しつぼう||すくう|||ことう|きみ||おか|きみ|||てがみ||みいださ|れ ました 古藤 君 の 手紙 は 兵 営 に 行く 五 日 前 に 書か れた もの でした 。 ことう|きみ||てがみ||つわもの|いとな||いく|いつ|ひ|ぜん||かか||| いまだに あなた の 居所 を 知る 事 が でき ない ので 、 僕 の 手紙 は やはり 倉地 氏 に あてて 回送 して いる と 書いて あります 。 |||いどころ||しる|こと|||||ぼく||てがみ|||くらち|うじ|||かいそう||||かいて|あり ます 古藤 君 は そうした 手続き を 取る の を はなはだしく 不快に 思って いる ようです 。 ことう|きみ|||てつづき||とる||||ふかいに|おもって|| 岡 君 は 人 に もらし 得 ない 家庭 内 の 紛 擾 や 周囲 から 受ける 誤解 を 、 岡 君 らしく 過敏に 考え 過ぎて 弱い 体質 を ますます 弱く して いる ようです 。 おか|きみ||じん|||とく||かてい|うち||まがい|じょう||しゅうい||うける|ごかい||おか|きみ||かびんに|かんがえ|すぎて|よわい|たいしつ|||よわく||| It seems that Mr. Oka is overly sensitive to domestic turmoil that cannot be revealed to others and the misunderstandings he receives from those around him, making his weak constitution even weaker. 書いて ある 事 に は ところどころ 僕 の 持つ 常識 で は 判断 し かねる ような 所 が あります 。 かいて||こと||||ぼく||もつ|じょうしき|||はんだん||||しょ||あり ます あなた から いつか 必ず 消息 が 来る の を 信じ きって 、 その 時 を ただ 一 つ の 救い と して 待って います 。 |||かならず|しょうそく||くる|||しんじ|||じ|||ひと|||すくい|||まって|い ます その 時 の 感謝 と 喜 悦 と を 想像 で 描き出して 、 小説 でも 読む ように 書いて あります 。 |じ||かんしゃ||よろこ|えつ|||そうぞう||えがきだして|しょうせつ||よむ||かいて|あり ます 僕 は 岡 君 の 手紙 を 読む と 、 いつでも 僕 自身 の 心 が そのまま 書き 現わされて いる ように 思って 涙 を 感じます 。 ぼく||おか|きみ||てがみ||よむ|||ぼく|じしん||こころ|||かき|あらわさ れて|||おもって|なみだ||かんじ ます ・・

なぜ あなた は 自分 を それほど まで 韜晦 して おら れる の か 、 それ に は 深い わけ が ある 事 と 思います けれども 、 僕 に は どちら の 方面 から 考えて も 想像 が つきません 。 |||じぶん||||とうかい|||||||||ふかい||||こと||おもい ます||ぼく|||||ほうめん||かんがえて||そうぞう||つき ませ ん ・・

日本 から の 消息 は どんな 消息 も 待ち遠しい 。 にっぽん|||しょうそく|||しょうそく||まちどおしい しかし それ を 見 終わった 僕 は きっと 憂鬱に 襲わ れます 。 |||み|おわった|ぼく|||ゆううつに|おそわ|れ ます 僕 に もし 信仰 が 与えられて い なかったら 、 僕 は 今 どう なって いた か を 知りません 。 ぼく|||しんこう||あたえ られて|||ぼく||いま||||||しり ませ ん ・・

前 の 手紙 と の 間 に 三 日 が たちました 。 ぜん||てがみ|||あいだ||みっ|ひ||たち ました 僕 は バビコック 博士 夫婦 と 今夜 ライシアム 座 に ウェルシ 嬢 の 演じた トルストイ の 「 復活 」 を 見物 しました 。 ぼく|||はかせ|ふうふ||こんや||ざ|||じょう||えんじた|||ふっかつ||けんぶつ|し ました そこ に は キリスト 教徒 と して 目 を そむけ なければ なら ない ような 場面 が ない で は なかった けれども 、 終わり の ほう に 近づいて 行って の 荘厳 さ は 見物人 の すべて を 捕 捉 して しまいました 。 |||きりすと|きょうと|||め|||||||ばめん|||||||おわり||||ちかづいて|おこなって||そうごん|||けんぶつにん||||ほ|そく||しまい ました ウェルシ 嬢 の 演じた 女 主人公 は 真に 迫り すぎて いる くらい でした 。 |じょう||えんじた|おんな|しゅじんこう||しんに|せまり|||| あなた が もし まだ 「 復活 」 を 読んで いられ ない の なら 僕 は ぜひ それ を お 勧め します 。 ||||ふっかつ||よんで|いら れ||||ぼく||||||すすめ|し ます 僕 は トルストイ の 「 懺悔 」 を K 氏 の 邦文 訳 で 日本 に いる 時 読んだ だけ です が 、 あの 芝居 を 見て から 、 暇 が あったら もっと 深く いろいろ 研究 したい と 思う ように なりました 。 ぼく||||ざんげ||k|うじ||ほうぶん|やく||にっぽん|||じ|よんだ|||||しばい||みて||いとま||||ふかく||けんきゅう|し たい||おもう||なり ました 日本 で は トルストイ の 著書 は まだ 多く の 人 に 知られて いない と 思います が 、 少なくとも 「 復活 」 だけ は 丸善 から でも 取り寄せて 読んで いただきたい 、 あなた を 啓発 する 事 が 必ず 多い の は 請け合います から 。 にっぽん|||||ちょしょ|||おおく||じん||しら れて|||おもい ます||すくなくとも|ふっかつ|||まるぜん|||とりよせて|よんで|いただき たい|||けいはつ||こと||かならず|おおい|||うけあい ます| 僕ら は 等しく 神 の 前 に 罪人 です 。 ぼくら||ひとしく|かみ||ぜん||ざいにん| しかし その 罪 を 悔い改める 事 に よって 等しく 選ば れた 神 の 僕 と なり うる のです 。 ||ざい||くいあらためる|こと|||ひとしく|えらば||かみ||ぼく|||| But by repenting of their sins, they can become equally chosen servants of God. この 道 の ほか に は 人 の 子 の 生活 を 天国 に 結び付ける 道 は 考えられません 。 |どう|||||じん||こ||せいかつ||てんごく||むすびつける|どう||かんがえ られ ませ ん 神 を 敬い 人 を 愛する 心 の 萎えて しまわ ない うち に お互いに 光 を 仰ごう では ありません か 。 かみ||うやまい|じん||あいする|こころ||なえて|||||おたがいに|ひかり||あおごう||あり ませ ん| Let us look to each other before our hearts of reverence for God and love for others wither away. ・・

葉子 さん 、 あなた の 心 に 空虚 なり 汚点 なり が あって も 万 望 絶望 し ないで ください よ 。 ようこ||||こころ||くうきょ||おてん|||||よろず|のぞみ|ぜつぼう|||| あなた を そのまま に 喜んで 受け入れて 、―― 苦し み が あれば あなた と 共に 苦しみ 、 あなた に 悲しみ が あれば あなた と 共に 悲しむ もの が ここ に 一 人 いる 事 を 忘れ ないで ください 。 ||||よろこんで|うけいれて|にがし||||||ともに|くるしみ|||かなしみ|||||ともに|かなしむ|||||ひと|じん||こと||わすれ|| 僕 は 戦って 見せます 。 ぼく||たたかって|みせ ます どんなに あなた が 傷ついて いて も 、 僕 は あなた を かばって 勇ましく この 人生 を 戦って 見せます 。 |||きずついて|||ぼく|||||いさましく||じんせい||たたかって|みせ ます 僕 の 前 に 事業 が 、 そして 後ろ に あなた が あれば 、 僕 は 神 の 最も 小さい 僕 と して 人類 の 祝福 の ため に 一生 を ささげます 。 ぼく||ぜん||じぎょう|||うしろ|||||ぼく||かみ||もっとも|ちいさい|ぼく|||じんるい||しゅくふく||||いっしょう||ささげ ます ・・

あ ゝ 、 筆 も 言語 も ついに 無益です 。 ||ふで||げんご|||むえきです 火 と 熱する 誠意 と 祈り と を こめて 僕 は ここ に この 手紙 を 封じます 。 ひ||ねっする|せいい||いのり||||ぼく|||||てがみ||ほうじ ます With my burning sincerity and prayers, I am enclosing this letter here. この 手紙 が 倉地 氏 の 手 から あなた に 届いたら 、 倉地 氏 に も よろしく 伝えて ください 。 |てがみ||くらち|うじ||て||||とどいたら|くらち|うじ||||つたえて| 倉地 氏 に 迷惑 を おか けした 金銭 上 の 事 に ついて は 前 便 に 書いて おきました から 見て くださった と 思います 。 くらち|うじ||めいわく||||きんせん|うえ||こと||||ぜん|びん||かいて|おき ました||みて|||おもい ます 願 わく は 神 われら と 共に 在 し たまわ ん 事 を 。 ねがい|||かみ|||ともに|ざい||||こと| ・・

明治 三十四 年 十二 月 十三 日 」 めいじ|さんじゅうし|とし|じゅうに|つき|じゅうさん|ひ