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或る女 - 有島武郎(アクセス), 19.1 或る女

19.1 或る 女

しばらく の 間 食堂 で 事務 長 と 通り一ぺんの 話 でも して いる らしい 木村 が 、 ころ を 見計らって 再度 葉子 の 部屋 の 戸 を たたいた 時 に も 、 葉子 は まだ 枕 に 顔 を 伏せて 、 不思議な 感情 の 渦巻き の 中 に 心 を 浸して いた が 、 木村 が 一 人 で は いって 来た の に 気づく と 、 始めて 弱々しく 横向き に 寝 な おって 、 二の腕 まで 袖口 の まくれた まっ白 な 手 を さし 延べて 、 黙った まま 木村 と 握手 した 。 木村 は 葉子 の 激しく 泣いた の を 見て から 、 こらえ こらえて いた 感情 が さらに 嵩 じた もの か 、 涙 を あふれ ん ばかり 目 が しら に ためて 、 厚 ぼったい 口 び る を 震わせ ながら 、 痛々し げ に 葉子 の 顔つき を 見入って 突っ立った 。 ・・

葉子 は 、 今 まで 続けて いた 沈黙 の 惰性 で 第 一口 を きく の が 物 懶 かった し 、 木村 は なんと いい出した もの か 迷う 様子 で 、 二 人 の 間 に は 握手 の まま 意味 深 げ な 沈黙 が 取りかわさ れた 。 その 沈黙 は しかし 感傷 的 と いう 程度 である に は あまりに 長く 続き 過ぎた ので 、 外界 の 刺激 に 応じて 過敏な まで に 満 干 の できる 葉子 の 感情 は 今 まで 浸って いた 痛烈な 動乱 から 一 皮 一 皮 平 調 に 還って 、 果ては その 底 に 、 こう 嵩 じ てはい と わし い と 自分 で すら が 思う ような 冷ややかな 皮肉 が 、 そろそろ 頭 を 持ち上げる の を 感じた 。 握り合わ せた む ず かゆい ような 手 を 引っ込めて 、 目 もと まで ふとん を かぶって 、 そこ から 自分 の 前 に 立つ 若い 男 の 心 の 乱れ を 嘲笑って みたい ような 心 に すら なって いた 。 長く 続く 沈黙 が 当然 ひき起こす 一種 の 圧迫 を 木村 も 感じて うろたえた らしく 、 なんとか して 二 人 の 間 の 気まず さ を 引き裂く ような 、 心 の 切な さ を 表わす 適当 の 言葉 を 案じ 求めて いる らしかった が 、 とうとう 涙 に 潤った 低い 声 で 、 もう 一 度 、・・

「 葉子 さん 」・・

と 愛する もの の 名 を 呼んだ 。 それ は 先ほど 呼ば れた 時 の それ に 比べる と 、 聞き 違える ほど 美しい 声 だった 。 葉子 は 、 今 まで 、 これほど 切な 情 を こめて 自分 の 名 を 呼ば れた 事 は ない ように さえ 思った 。 「 葉子 」 と いう 名 に きわ立って 伝 奇 的な 色彩 が 添えられた ように も 聞こえた 。 で 、 葉子 は わざと 木村 と 握り合わ せた 手 に 力 を こめて 、 さらに なんとか 言葉 を つが せて み たく なった 。 その 目 も 木村 の 口 び る に 励まし を 与えて いた 。 木村 は 急に 弁 力 を 回復 して 、・・

「 一 日 千秋 の 思い と は この 事 です 」・・

と すら すら と なめらかに いって のけた 。 それ を 聞く と 葉子 は みごと 期待 に 背負 投げ を くわされて 、 その 場 の 滑稽に 思わず ふき出そう と した が 、 いかに 事務 長 に 対する 恋 に おぼれ きった 女心 の 残虐 さ から も 、 さすが に 木村 の 他意 ない 誠実 を 笑い きる 事 は 得し ないで 、 葉子 は ただ 心 の 中 で 失望 した ように 「 あれ だ から いやに なっち まう 」 と くさく さし ながら 喞った 。 ・・

しかし この 場合 、 木村 と 同様 、 葉子 も 格好な 空気 を 部屋 の 中 に 作る 事 に 当惑 せ ず に は いられ なかった 。 事務 長 と 別れて 自分 の 部屋 に 閉じこもって から 、 心 静かに 考えて 置こう と した 木村 に 対する 善後策 も 、 思い よら ぬ 感情 の 狂い から そのまま に なって しまって 、 今に なって みる と 、 葉子 は どう 木村 を もて あつかって いい の か 、 はっきり した 目論見 は できて い なかった 。 しかし 考えて みる と 、 木部 孤 と 別れた 時 でも 、 葉子 に は 格別 これという 謀略 が あった わけで は なく 、 ただ その 時々 に わがまま を 振る舞った に 過ぎ なかった のだ けれども 、 その 結果 は 葉子 が 何 か 恐ろしく 深い 企み と 手練 を 示した か の ように 人 に 取られて いた 事 も 思った 。 なんとか して 漕ぎ 抜けられ ない 事 は ある まい 。 そう 思って 、 まず 落ち付き 払って 木村 に 椅子 を すすめた 。 木村 が 手近に ある 畳み 椅子 を 取り上げて 寝 台 の そば に 来て すわる と 、 葉子 は また しなやかな 手 を 木村 の 膝 の 上 に おいて 、 男 の 顔 を しげしげ と 見 やり ながら 、・・

「 ほんとうに しばらく でした わ ね 。 少し お やつれ に なった ようです わ 」・・

と いって みた 。 木村 は 自分 の 感情 に 打ち 負かされて 身 を 震わして いた 。 そして わくわく と 流れ出る 涙 が 見る見る 目 から あふれて 、 顔 を 伝って 幾 筋 と なく 流れ 落ちた 。 葉子 は 、 その 涙 の 一 しずく が 気まぐれに も 、 うつむいた 男 の 鼻 の 先 に 宿って 、 落ち そうで 落ち ない の を 見 やって いた 。 ・・

「 ずいぶん いろいろ と 苦労な すったろう と 思って 、 気 が 気 で は なかった んです けれども 、 わたし の ほう も 御 承知 の とおり でしょう 。 今度 こっち に 来る に つけて も 、 それ は 困って 、 ありったけ の もの を 払ったり して 、 ようやく 間に合わ せた くらい だった もん です から ……」・・

なお いおう と する の を 木村 は 忙しく 打ち消す ように さえぎって 、・・

「 それ は 充分 わかって います 」・・

と 顔 を 上げた 拍子 に 涙 の しずく が ぽたり と 鼻 の 先 から ズボン の 上 に 落ちた の を 見た 。 葉子 は 、 泣いた ため に 妙に 脹 れ ぼったく 赤く なって 、 てら てら と 光る 木村 の 鼻 の 先 が 急に 気 に なり 出して 、 悪い と は 知り ながら も 、 ともすると そこ へ ばかり 目 が 行った 。 ・・

木村 は 何 から どう 話し出して いい か わから ない 様子 だった 。 ・・

「 わたし の 電報 を ビクトリヤ で 受け取った でしょう ね 」・・

など と も てれ隠し の ように いった 。 葉子 は 受け取った 覚え も ない くせ に いいかげんに 、・・

「 え ゝ 、 ありがとう ございました 」・・

と 答えて おいた 。 そして 一 時 も 早く こんな 息 気づ まる ように 圧迫 して 来る 二 人 の 間 の 心 の もつれ から のがれる 術 は ない か と 思案 して いた 。 ・・

「 今 始めて 事務 長 から 聞いた んです が 、 あなた が 病気 だった と いってました が 、 いったい どこ が 悪かった んです 。 さぞ 困った でしょう ね 。 そんな 事 と は ちっとも 知ら ず に 、 今 が 今 まで 、 祝福 さ れた 、 輝く ような あなた を 迎えられる と ばかり 思って いた んです 。 あなた は ほんとうに 試練 の 受け つづけ と いう もん です ね 。 どこ でした 悪い の は 」・・

葉子 は 、 不用意に も 女 を 捕えて じか づけ に 病気 の 種類 を 聞き ただす 男 の 心 の 粗雑 さ を 忌み ながら 、 当たら ず さわら ず 、 前 から あった 胃 病 が 、 船 の 中 で 食物 と 気候 と の 変わった ため に 、 だんだん 嵩 じ て 来て 起きられ なく なった ように いい 繕った 。 木村 は 痛まし そうに 眉 を 寄せ ながら 聞いて いた 。 ・・

葉子 は もう こんな 程々な 会話 に は 堪え きれ なく なって 来た 。 木村 の 顔 を 見る に つけて 思い出さ れる 仙台 時代 や 、 母 の 死 と いう ような 事 に も かなり 悩ま さ れる の を つらく 思った 。 で 、 話 の 調子 を 変える ため に しいて いくらか 快活 を 装って 、・・

「 それ は そう と こちら の 御 事業 は いかが 」・・

と 仕事 と か 様子 と か いう 代わり に 、 わざと 事業 と いう 言葉 を つかって こう 尋ねた 。 ・・

木村 の 顔つき は 見る見る 変わった 。 そして 胸 の ポッケット に のぞかせて あった 大きな リンネル の ハンケチ を 取り出して 、 器用に 片手 で それ を ふわり と 丸めて おいて 、 ちん と 鼻 を かんで から 、 また 器用に それ を ポケット に 戻す と 、・・

「 だめです 」・・

と いかにも 絶望 的な 調子 で いった が 、 その 目 は すでに 笑って いた 。 サンフランシスコ の 領事 が 在留 日本 人 の 企業 に 対して 全然 冷淡で 盲目である と いう 事 、 日本 人間 に 嫉 視 が 激しい ので 、 サンフランシスコ で の 事業 の 目論見 は 予期 以上 の 故障 に あって 大体 失敗 に 終わった 事 、 思いきった 発展 は やはり 想像 どおり の 米国 の 西部 より も 中央 、 ことに シカゴ を 中心 と して 計画 さ れ なければ なら ぬ と いう 事 、 幸いに 、 サンフランシスコ で 自分 の 話 に 乗って くれる ある 手堅い ドイツ 人 に 取り次ぎ を 頼んだ と いう 事 、 シヤトル でも 相当 の 店 を 見いだし かけて いる と いう 事 、 シカゴ に 行ったら 、 そこ で 日本 の 名誉 領事 を して いる かなり の 鉄 物 商 の 店 に まず 住み込んで 米国 に おける 取り引き の 手心 を のみ込む と 同時に 、 その 人 の 資本 の 一部 を 動かして 、 日本 と の 直 取り引き を 始める 算段 である と いう 事 、 シカゴ の 住まい は もう 決まって 、 借りる べき フラット の 図面 まで 取り寄せて ある と いう 事 、 フラット は 不経済 の ようだ けれども 部屋 の 明いた 部分 を 又貸し を すれば 、たいして 高い もの に も つか ず 、 住まい 便利 は 非常に いい と いう 事 …… そういう 点 に かけて は 、 なかなか 綿密に 行き届いた もの で 、 それ を いかにも 企業 家 らしい 説 服 的な 口調 で 順序 よく 述べて 行った 。 会話 の 流れ が こう 変わって 来る と 、 葉子 は 始めて 泥 の 中 から 足 を 抜き 上げた ような 気軽な 心持ち に なって 、 ずっと 木村 を 見つめ ながら 、 聞く と も なし に その 話 に 聞き 耳 を 立てて いた 。 木村 の 容貌 は しばらく の 間 に 見違える ほど refine されて 、 元 から 白かった その 皮膚 は 何 か 特殊な 洗 料 で 底光り の する ほど みがき が かけられて 、 日本 人 と は 思え ぬ まで なめらかな のに 、 油 で きれいに 分けた 濃い 黒 髪 は 、 西洋 人 の 金髪 に は また 見られ ぬ ような 趣 の ある 対照 を その 白 皙 の 皮膚 に 与えて 、 カラー と ネクタイ の 関係 に も 人 に 気 の つか ぬ 凝り かた を 見せて いた 。 ・・

「 会い たて から こんな 事 を いう の は 恥ずかしい ですけれども 、 実際 今度 と いう 今度 は 苦闘 しました 。 ここ まで 迎 い に 来る に も ろくろく 旅費 が ない 騒ぎ でしょう 」・・

と いって さすが に 苦しげに 笑い に まぎらそう と した 。 そのくせ 木村 の 胸 に は どっしり と 重 そうな 金 鎖 が かかって 、 両手 の 指 に は 四 つ まで 宝石 入り の 指輪 が きらめいて いた 。 葉子 は 木村 の いう 事 を 聞き ながら その 指 に 目 を つけて いた が 、 四 つ の 指輪 の 中 に 婚約 の 時 取りかわした 純金 の 指輪 も まじって いる のに 気 が つく と 、 自分 の 指 に は それ を はめて い なかった の を 思い出して 、 何 くわ ぬ 様子 で 木村 の 膝 の 上 から 手 を 引っ込めて 顎 まで ふとん を かぶって しまった 。 木村 は 引っ込められた 手 に 追いすがる ように 椅子 を 乗り出して 、 葉子 の 顔 に 近く 自分 の 顔 を さし出した 。 ・・

「 葉子 さん 」・・

「 何 ? 」・・

また Love - scene か 。 そう 思って 葉子 は うんざり した けれども 、 すげなく 顔 を そむける わけに も 行か ず 、 やや 当惑 して いる と 、 おりよく 事務 長 が 型 ばかり の ノック を して は いって 来た 。 葉子 は 寝た まま 、 目 で いそいそ と 事務 長 を 迎え ながら 、・・

「 まあ ようこそ …… 先ほど は 失礼 。 なんだか くだらない 事 を 考え 出して いた もん です から 、 つい わがまま を して しまって すみません …… お 忙しい でしょう 」・・

と いう と 、 事務 長 は からかい 半分 の 冗談 を きっかけ に 、・・

「 木村 さん の 顔 を 見る と えらい 事 を 忘れて いた のに 気 が ついた で 。 木村 さん から あなた に 電報 が 来 とった の を 、 わたしゃ ビクトリヤ の どさくさ で ころ り 忘れ とった んだ 。 すま ん 事 でした 。 こんな 皺 に なり くさった 」・・

と いい ながら 、 左 の ポッケット から 折り目 に 煙草 の 粉 が はさまって もみくちゃ に なった 電報 紙 を 取り出した 。 木村 は さっき 葉子 が それ を 見た と 確かに いった その 言葉 に 対して 、 怪 訝 な 顔つき を し ながら 葉子 を 見た 。 些細 な 事 で は ある が 、 それ が 事務 長 に も 関係 を 持つ 事 だ と 思う と 、 葉子 も ちょっと どぎまぎ せ ず に は いられ なかった 。 しかし それ は ただ 一 瞬間 だった 。 ・・

「 倉地 さん 、 あなた は きょう 少し どう かな すって いらっしゃる わ 。 それ は その 時 ちゃん と 拝見 した じゃ ありません か 」・・

と いい ながら すばやく 目 くば せ する と 、 事務 長 は すぐ 何 か わけ が ある の を 気取った らしく 、 巧みに 葉子 に ばつ を 合わせた 。 ・・

「 何 ? あなた 見た ? …… お ゝ そうそう …… これ は 寝ぼけ 返っと る ぞ 、 は ゝ ゝ ゝ 」・・

そして 互いに 顔 を 見合わせ ながら 二 人 は したたか 笑った 。 木村 は しばらく 二 人 を かたみ が わりに 見くらべて いた が 、 これ も やがて 声 を 立てて 笑い 出した 。 木村 の 笑い 出す の を 見た 二 人 は 無性に おかしく なって もう 一 度 新しく 笑いこけた 。 木村 と いう 大きな 邪魔者 を 目の前 に 据えて おき ながら 、 互い の 感情 が 水 の ように 苦 も なく 流れ 通う の を 二 人 は 子供 らしく 楽しんだ 。 ・・

しかし こんな いたずら めいた 事 の ため に 話 は ちょっと 途切れて しまった 。 くだらない 事 に 二 人 から わき出た 少し 仰 山 すぎた 笑い は 、 かすか ながら 木村 の 感情 を そこねた らしかった 。 葉子 は 、 この 場合 、 なお 居残ろう と する 事務 長 を 遠ざけて 、 木村 と さし向かい に なる の が 得策 だ と 思った ので 、 程 も なく きまじめな 顔つき に 返って 、 枕 の 下 を 探って 、 そこ に 入れて 置いた 古藤 の 手紙 を 取り出して 木村 に 渡し ながら 、・・

「 これ を あなた に 古藤 さん から 。 古藤 さん に は ずいぶん お 世話に なり まして よ 。 でも あの 方 の ぶ まさか げんったら 、 それ は じれったい ほど ね 。 愛 や 貞 の 学校 の 事 も お 頼み して 来た んです けれども 心もとない もん よ 。 きっと 今ごろ は けんか 腰 に なって み ん な と 談判 でも して いらっしゃる でしょう よ 。 見える ようです わ ね 」・・

と 水 を 向ける と 、 木村 は 始めて 話 の 領分 が 自分 の ほう に 移って 来た ように 、 顔色 を なおし ながら 、 事務 長 を そっちのけ に した 態度 で 、 葉子 に 対して は 自分 が 第 一 の 発言 権 を 持って いる と いわんばかり に 、 いろいろ と 話し出した 。 事務 長 は しばらく 風向き を 見計らって 立って いた が 突然 部屋 を 出て 行った 。


19.1 或る 女 ある|おんな 19.1 Una mujer

しばらく の 間 食堂 で 事務 長 と 通り一ぺんの 話 でも して いる らしい 木村 が 、 ころ を 見計らって 再度 葉子 の 部屋 の 戸 を たたいた 時 に も 、 葉子 は まだ 枕 に 顔 を 伏せて 、 不思議な 感情 の 渦巻き の 中 に 心 を 浸して いた が 、 木村 が 一 人 で は いって 来た の に 気づく と 、 始めて 弱々しく 横向き に 寝 な おって 、 二の腕 まで 袖口 の まくれた まっ白 な 手 を さし 延べて 、 黙った まま 木村 と 握手 した 。 ||あいだ|しょくどう||じむ|ちょう||とおりいっぺんの|はなし|||||きむら||||みはからって|さいど|ようこ||へや||と|||じ|||ようこ|||まくら||かお||ふせて|ふしぎな|かんじょう||うずまき||なか||こころ||ひたして|||きむら||ひと|じん||||きた|||きづく||はじめて|よわよわしく|よこむき||ね|||にのうで||そでぐち|||まっしろ||て|||のべて|だまった||きむら||あくしゅ| Kimura, who seemed to have been talking casually with the office manager in the cafeteria for a while, waited for the moment and knocked on the door of Yoko's room again. I was immersed in a whirlpool of emotions, but when I realized that Kimura had walked in alone, for the first time I weakly fell asleep on my side, my white hands with cuffs rolled up to my upper arms. After that, I silently shook hands with Kimura. 木村 は 葉子 の 激しく 泣いた の を 見て から 、 こらえ こらえて いた 感情 が さらに 嵩 じた もの か 、 涙 を あふれ ん ばかり 目 が しら に ためて 、 厚 ぼったい 口 び る を 震わせ ながら 、 痛々し げ に 葉子 の 顔つき を 見入って 突っ立った 。 きむら||ようこ||はげしく|ないた|||みて|||||かんじょう|||かさみ||||なみだ|||||め|||||こう|ぼっ たい|くち||||ふるわせ||いたいたし|||ようこ||かおつき||みいって|つったった ・・

葉子 は 、 今 まで 続けて いた 沈黙 の 惰性 で 第 一口 を きく の が 物 懶 かった し 、 木村 は なんと いい出した もの か 迷う 様子 で 、 二 人 の 間 に は 握手 の まま 意味 深 げ な 沈黙 が 取りかわさ れた 。 ようこ||いま||つづけて||ちんもく||だせい||だい|ひとくち|||||ぶつ|らん|||きむら|||いいだした|||まよう|ようす||ふた|じん||あいだ|||あくしゅ|||いみ|ふか|||ちんもく||とりかわさ| その 沈黙 は しかし 感傷 的 と いう 程度 である に は あまりに 長く 続き 過ぎた ので 、 外界 の 刺激 に 応じて 過敏な まで に 満 干 の できる 葉子 の 感情 は 今 まで 浸って いた 痛烈な 動乱 から 一 皮 一 皮 平 調 に 還って 、 果ては その 底 に 、 こう 嵩 じ てはい と わし い と 自分 で すら が 思う ような 冷ややかな 皮肉 が 、 そろそろ 頭 を 持ち上げる の を 感じた 。 |ちんもく|||かんしょう|てき|||ていど|||||ながく|つづき|すぎた||がいかい||しげき||おうじて|かびんな|||まん|ひ|||ようこ||かんじょう||いま||ひたって||つうれつな|どうらん||ひと|かわ|ひと|かわ|ひら|ちょう||かえって|はては||そこ|||かさみ|||||||じぶん||||おもう||ひややかな|ひにく|||あたま||もちあげる|||かんじた 握り合わ せた む ず かゆい ような 手 を 引っ込めて 、 目 もと まで ふとん を かぶって 、 そこ から 自分 の 前 に 立つ 若い 男 の 心 の 乱れ を 嘲笑って みたい ような 心 に すら なって いた 。 にぎりあわ||||||て||ひっこめて|め||||||||じぶん||ぜん||たつ|わかい|おとこ||こころ||みだれ||ちょうしょう って|||こころ|||| 長く 続く 沈黙 が 当然 ひき起こす 一種 の 圧迫 を 木村 も 感じて うろたえた らしく 、 なんとか して 二 人 の 間 の 気まず さ を 引き裂く ような 、 心 の 切な さ を 表わす 適当 の 言葉 を 案じ 求めて いる らしかった が 、 とうとう 涙 に 潤った 低い 声 で 、 もう 一 度 、・・ ながく|つづく|ちんもく||とうぜん|ひきおこす|いっしゅ||あっぱく||きむら||かんじて|||||ふた|じん||あいだ||きまず|||ひきさく||こころ||せつな|||あらわす|てきとう||ことば||あんじ|もとめて|||||なみだ||うるおった|ひくい|こえ|||ひと|たび

「 葉子 さん 」・・ ようこ|

と 愛する もの の 名 を 呼んだ 。 |あいする|||な||よんだ それ は 先ほど 呼ば れた 時 の それ に 比べる と 、 聞き 違える ほど 美しい 声 だった 。 ||さきほど|よば||じ||||くらべる||きき|ちがえる||うつくしい|こえ| 葉子 は 、 今 まで 、 これほど 切な 情 を こめて 自分 の 名 を 呼ば れた 事 は ない ように さえ 思った 。 ようこ||いま|||せつな|じょう|||じぶん||な||よば||こと|||||おもった 「 葉子 」 と いう 名 に きわ立って 伝 奇 的な 色彩 が 添えられた ように も 聞こえた 。 ようこ|||な||きわだって|つたい|き|てきな|しきさい||そえ られた|||きこえた で 、 葉子 は わざと 木村 と 握り合わ せた 手 に 力 を こめて 、 さらに なんとか 言葉 を つが せて み たく なった 。 |ようこ|||きむら||にぎりあわ||て||ちから|||||ことば|||||| その 目 も 木村 の 口 び る に 励まし を 与えて いた 。 |め||きむら||くち||||はげまし||あたえて| 木村 は 急に 弁 力 を 回復 して 、・・ きむら||きゅうに|べん|ちから||かいふく|

「 一 日 千秋 の 思い と は この 事 です 」・・ ひと|ひ|ちあき||おもい||||こと|

と すら すら と なめらかに いって のけた 。 それ を 聞く と 葉子 は みごと 期待 に 背負 投げ を くわされて 、 その 場 の 滑稽に 思わず ふき出そう と した が 、 いかに 事務 長 に 対する 恋 に おぼれ きった 女心 の 残虐 さ から も 、 さすが に 木村 の 他意 ない 誠実 を 笑い きる 事 は 得し ないで 、 葉子 は ただ 心 の 中 で 失望 した ように 「 あれ だ から いやに なっち まう 」 と くさく さし ながら 喞った 。 ||きく||ようこ|||きたい||せお|なげ||くわさ れて||じょう||こっけいに|おもわず|ふきで そう|||||じむ|ちょう||たいする|こい||||おんなごころ||ざんぎゃく||||||きむら||たい||せいじつ||わらい||こと||とくし||ようこ|||こころ||なか||しつぼう|||||||な っち||||||そく った Hearing this, Yoko was overcome with anticipation and tried to burst out laughing at the humor of the scene, but the cruelty of a woman who had fallen in love with the secretary-general made Kimura's heart beat. Not knowing how to laugh at his innocent sincerity, Yoko simply groaned, as if she was disappointed in her heart, "That's why I'm starting to hate you." ・・

しかし この 場合 、 木村 と 同様 、 葉子 も 格好な 空気 を 部屋 の 中 に 作る 事 に 当惑 せ ず に は いられ なかった 。 ||ばあい|きむら||どうよう|ようこ||かっこうな|くうき||へや||なか||つくる|こと||とうわく|||||いら れ| 事務 長 と 別れて 自分 の 部屋 に 閉じこもって から 、 心 静かに 考えて 置こう と した 木村 に 対する 善後策 も 、 思い よら ぬ 感情 の 狂い から そのまま に なって しまって 、 今に なって みる と 、 葉子 は どう 木村 を もて あつかって いい の か 、 はっきり した 目論見 は できて い なかった 。 じむ|ちょう||わかれて|じぶん||へや||とじこもって||こころ|しずかに|かんがえて|おこう|||きむら||たいする|ぜんごさく||おもい|||かんじょう||くるい||||||いまに||||ようこ|||きむら|||||||||もくろみ|||| しかし 考えて みる と 、 木部 孤 と 別れた 時 でも 、 葉子 に は 格別 これという 謀略 が あった わけで は なく 、 ただ その 時々 に わがまま を 振る舞った に 過ぎ なかった のだ けれども 、 その 結果 は 葉子 が 何 か 恐ろしく 深い 企み と 手練 を 示した か の ように 人 に 取られて いた 事 も 思った 。 |かんがえて|||きべ|こ||わかれた|じ||ようこ|||かくべつ||ぼうりゃく||||||||ときどき||||ふるまった||すぎ|||||けっか||ようこ||なん||おそろしく|ふかい|たくらみ||てだれ||しめした||||じん||とら れて||こと||おもった なんとか して 漕ぎ 抜けられ ない 事 は ある まい 。 ||こぎ|ぬけ られ||こと||| そう 思って 、 まず 落ち付き 払って 木村 に 椅子 を すすめた 。 |おもって||おちつき|はらって|きむら||いす|| 木村 が 手近に ある 畳み 椅子 を 取り上げて 寝 台 の そば に 来て すわる と 、 葉子 は また しなやかな 手 を 木村 の 膝 の 上 に おいて 、 男 の 顔 を しげしげ と 見 やり ながら 、・・ きむら||てぢかに||たたみ|いす||とりあげて|ね|だい||||きて|||ようこ||||て||きむら||ひざ||うえ|||おとこ||かお||||み||

「 ほんとうに しばらく でした わ ね 。 少し お やつれ に なった ようです わ 」・・ すこし||||||

と いって みた 。 木村 は 自分 の 感情 に 打ち 負かされて 身 を 震わして いた 。 きむら||じぶん||かんじょう||うち|まかさ れて|み||ふるわして| そして わくわく と 流れ出る 涙 が 見る見る 目 から あふれて 、 顔 を 伝って 幾 筋 と なく 流れ 落ちた 。 |||ながれでる|なみだ||みるみる|め|||かお||つたって|いく|すじ|||ながれ|おちた 葉子 は 、 その 涙 の 一 しずく が 気まぐれに も 、 うつむいた 男 の 鼻 の 先 に 宿って 、 落ち そうで 落ち ない の を 見 やって いた 。 ようこ|||なみだ||ひと|||きまぐれに|||おとこ||はな||さき||やどって|おち|そう で|おち||||み|| ・・

「 ずいぶん いろいろ と 苦労な すったろう と 思って 、 気 が 気 で は なかった んです けれども 、 わたし の ほう も 御 承知 の とおり でしょう 。 |||くろうな|||おもって|き||き||||||||||ご|しょうち||| "I thought it would be a lot of hard work, and I wasn't feeling well, but you know that. 今度 こっち に 来る に つけて も 、 それ は 困って 、 ありったけ の もの を 払ったり して 、 ようやく 間に合わ せた くらい だった もん です から ……」・・ こんど|||くる||||||こまって|||||はらったり|||まにあわ|||||| Even when I came here next time, I was at a loss and had to pay everything I could to make it in time..."

なお いおう と する の を 木村 は 忙しく 打ち消す ように さえぎって 、・・ ||||||きむら||いそがしく|うちけす||

「 それ は 充分 わかって います 」・・ ||じゅうぶん||い ます

と 顔 を 上げた 拍子 に 涙 の しずく が ぽたり と 鼻 の 先 から ズボン の 上 に 落ちた の を 見た 。 |かお||あげた|ひょうし||なみだ||||||はな||さき||ずぼん||うえ||おちた|||みた 葉子 は 、 泣いた ため に 妙に 脹 れ ぼったく 赤く なって 、 てら てら と 光る 木村 の 鼻 の 先 が 急に 気 に なり 出して 、 悪い と は 知り ながら も 、 ともすると そこ へ ばかり 目 が 行った 。 ようこ||ないた|||みょうに|ちょう||ぼっ たく|あかく|||||ひかる|きむら||はな||さき||きゅうに|き|||だして|わるい|||しり|||||||め||おこなった ・・

木村 は 何 から どう 話し出して いい か わから ない 様子 だった 。 きむら||なん|||はなしだして|||||ようす| ・・

「 わたし の 電報 を ビクトリヤ で 受け取った でしょう ね 」・・ ||でんぽう||||うけとった||

など と も てれ隠し の ように いった 。 |||てれかくし||| 葉子 は 受け取った 覚え も ない くせ に いいかげんに 、・・ ようこ||うけとった|おぼえ|||||

「 え ゝ 、 ありがとう ございました 」・・

と 答えて おいた 。 |こたえて| そして 一 時 も 早く こんな 息 気づ まる ように 圧迫 して 来る 二 人 の 間 の 心 の もつれ から のがれる 術 は ない か と 思案 して いた 。 |ひと|じ||はやく||いき|きづ|||あっぱく||くる|ふた|じん||あいだ||こころ|||||じゅつ|||||しあん|| ・・

「 今 始めて 事務 長 から 聞いた んです が 、 あなた が 病気 だった と いってました が 、 いったい どこ が 悪かった んです 。 いま|はじめて|じむ|ちょう||きいた|||||びょうき|||いって ました|||||わるかった| さぞ 困った でしょう ね 。 |こまった|| そんな 事 と は ちっとも 知ら ず に 、 今 が 今 まで 、 祝福 さ れた 、 輝く ような あなた を 迎えられる と ばかり 思って いた んです 。 |こと||||しら|||いま||いま||しゅくふく|||かがやく||||むかえ られる|||おもって|| あなた は ほんとうに 試練 の 受け つづけ と いう もん です ね 。 |||しれん||うけ|||||| どこ でした 悪い の は 」・・ ||わるい||

葉子 は 、 不用意に も 女 を 捕えて じか づけ に 病気 の 種類 を 聞き ただす 男 の 心 の 粗雑 さ を 忌み ながら 、 当たら ず さわら ず 、 前 から あった 胃 病 が 、 船 の 中 で 食物 と 気候 と の 変わった ため に 、 だんだん 嵩 じ て 来て 起きられ なく なった ように いい 繕った 。 ようこ||ふよういに||おんな||とらえて||||びょうき||しゅるい||きき||おとこ||こころ||そざつ|||いみ||あたら||||ぜん|||い|びょう||せん||なか||しょくもつ||きこう|||かわった||||かさみ|||きて|おき られ|||||つくろった Yoko hates the crudeness of the heart of a man who inadvertently captures a woman and directly asks her what kind of illness she has. Because of the change in the weather, it gradually increased and I pretended that I couldn't get up. 木村 は 痛まし そうに 眉 を 寄せ ながら 聞いて いた 。 きむら||いたまし|そう に|まゆ||よせ||きいて| ・・

葉子 は もう こんな 程々な 会話 に は 堪え きれ なく なって 来た 。 ようこ||||ほどほどな|かいわ|||こらえ||||きた 木村 の 顔 を 見る に つけて 思い出さ れる 仙台 時代 や 、 母 の 死 と いう ような 事 に も かなり 悩ま さ れる の を つらく 思った 。 きむら||かお||みる|||おもいださ||せんだい|じだい||はは||し||||こと||||なやま||||||おもった で 、 話 の 調子 を 変える ため に しいて いくらか 快活 を 装って 、・・ |はなし||ちょうし||かえる|||||かいかつ||よそおって

「 それ は そう と こちら の 御 事業 は いかが 」・・ ||||||ご|じぎょう||

と 仕事 と か 様子 と か いう 代わり に 、 わざと 事業 と いう 言葉 を つかって こう 尋ねた 。 |しごと|||ようす||||かわり|||じぎょう|||ことば||||たずねた ・・

木村 の 顔つき は 見る見る 変わった 。 きむら||かおつき||みるみる|かわった そして 胸 の ポッケット に のぞかせて あった 大きな リンネル の ハンケチ を 取り出して 、 器用に 片手 で それ を ふわり と 丸めて おいて 、 ちん と 鼻 を かんで から 、 また 器用に それ を ポケット に 戻す と 、・・ |むね||||||おおきな|||||とりだして|きように|かたて||||||まるめて||||はな|||||きように|||ぽけっと||もどす|

「 だめです 」・・

と いかにも 絶望 的な 調子 で いった が 、 その 目 は すでに 笑って いた 。 ||ぜつぼう|てきな|ちょうし|||||め|||わらって| サンフランシスコ の 領事 が 在留 日本 人 の 企業 に 対して 全然 冷淡で 盲目である と いう 事 、 日本 人間 に 嫉 視 が 激しい ので 、 サンフランシスコ で の 事業 の 目論見 は 予期 以上 の 故障 に あって 大体 失敗 に 終わった 事 、 思いきった 発展 は やはり 想像 どおり の 米国 の 西部 より も 中央 、 ことに シカゴ を 中心 と して 計画 さ れ なければ なら ぬ と いう 事 、 幸いに 、 サンフランシスコ で 自分 の 話 に 乗って くれる ある 手堅い ドイツ 人 に 取り次ぎ を 頼んだ と いう 事 、 シヤトル でも 相当 の 店 を 見いだし かけて いる と いう 事 、 シカゴ に 行ったら 、 そこ で 日本 の 名誉 領事 を して いる かなり の 鉄 物 商 の 店 に まず 住み込んで 米国 に おける 取り引き の 手心 を のみ込む と 同時に 、 その 人 の 資本 の 一部 を 動かして 、 日本 と の 直 取り引き を 始める 算段 である と いう 事 、 シカゴ の 住まい は もう 決まって 、 借りる べき フラット の 図面 まで 取り寄せて ある と いう 事 、 フラット は 不経済 の ようだ けれども 部屋 の 明いた 部分 を 又貸し を すれば 、たいして 高い もの に も つか ず 、 住まい 便利 は 非常に いい と いう 事 …… そういう 点 に かけて は 、 なかなか 綿密に 行き届いた もの で 、 それ を いかにも 企業 家 らしい 説 服 的な 口調 で 順序 よく 述べて 行った 。 さんふらんしすこ||りょうじ||ざいりゅう|にっぽん|じん||きぎょう||たいして|ぜんぜん|れいたんで|もうもくである|||こと|にっぽん|にんげん||そね|し||はげしい||さんふらんしすこ|||じぎょう||もくろみ||よき|いじょう||こしょう|||だいたい|しっぱい||おわった|こと|おもいきった|はってん|||そうぞう|||べいこく||せいぶ|||ちゅうおう||しかご||ちゅうしん|||けいかく||||||||こと|さいわいに|さんふらんしすこ||じぶん||はなし||のって|||てがたい|どいつ|じん||とりつぎ||たのんだ|||こと|||そうとう||てん||みいだし|||||こと|しかご||おこなったら|||にっぽん||めいよ|りょうじ||||||くろがね|ぶつ|しょう||てん|||すみこんで|べいこく|||とりひき||てごころ||のみこむ||どうじに||じん||しほん||いちぶ||うごかして|にっぽん|||なお|とりひき||はじめる|さんだん||||こと|しかご||すまい|||きまって|かりる||ふらっと||ずめん||とりよせて||||こと|ふらっと||ふけいざい||||へや||あいた|ぶぶん||またがし||||たかい||||||すまい|べんり||ひじょうに||||こと||てん|||||めんみつに|ゆきとどいた||||||きぎょう|いえ||せつ|ふく|てきな|くちょう||じゅんじょ||のべて|おこなった The consul in San Francisco was completely cold and blind to Japanese companies residing in Japan, and because of the intense jealousy toward Japanese people, business plans in San Francisco were more or less unsuccessful due to unexpected failures. The thing is that any drastic development must still be planned around the center of the United States, especially Chicago, rather than the imaginary western part of the United States. The fact that he asked a German to act as an intermediary, and that he was trying to find a similar shop in Seattle, meant that when he went to Chicago, he first settled in at a large iron shop that was honorary consul of Japan. At the same time as he swallowed the tricks of the deal in the United States, he moved some of that person's capital to start a direct deal with Japan. The fact that the flat is uneconomical, but if you rent out the open part of the room, it won't be too expensive, and it's a very convenient place to live. He was very meticulous about everything, and explained it in order, with a persuasive tone that was typical of an entrepreneur. 会話 の 流れ が こう 変わって 来る と 、 葉子 は 始めて 泥 の 中 から 足 を 抜き 上げた ような 気軽な 心持ち に なって 、 ずっと 木村 を 見つめ ながら 、 聞く と も なし に その 話 に 聞き 耳 を 立てて いた 。 かいわ||ながれ|||かわって|くる||ようこ||はじめて|どろ||なか||あし||ぬき|あげた||きがるな|こころもち||||きむら||みつめ||きく||||||はなし||きき|みみ||たてて| 木村 の 容貌 は しばらく の 間 に 見違える ほど refine されて 、 元 から 白かった その 皮膚 は 何 か 特殊な 洗 料 で 底光り の する ほど みがき が かけられて 、 日本 人 と は 思え ぬ まで なめらかな のに 、 油 で きれいに 分けた 濃い 黒 髪 は 、 西洋 人 の 金髪 に は また 見られ ぬ ような 趣 の ある 対照 を その 白 皙 の 皮膚 に 与えて 、 カラー と ネクタイ の 関係 に も 人 に 気 の つか ぬ 凝り かた を 見せて いた 。 きむら||ようぼう||||あいだ||みちがえる|||さ れて|もと||しろかった||ひふ||なん||とくしゅな|あら|りょう||そこびかり||||||かけ られて|にっぽん|じん|||おもえ|||||あぶら|||わけた|こい|くろ|かみ||せいよう|じん||きんぱつ||||み られ|||おもむき|||たいしょう|||しろ|せき||ひふ||あたえて|からー||ねくたい||かんけい|||じん||き||||こり|||みせて| Kimura's face had been refined to such an extent that it was difficult to recognize him for a while, and his white skin, which was originally white, was polished with a special cleanser to a depth of luster, and he was so smooth that you wouldn't even think he was Japanese. His dark hair, neatly parted with oil, gives his whitish skin a tasteful contrast that cannot be found in Western blond hair, and the relationship between collar and necktie is elusive. He was showing a stiff attitude. ・・

「 会い たて から こんな 事 を いう の は 恥ずかしい ですけれども 、 実際 今度 と いう 今度 は 苦闘 しました 。 あい||||こと|||||はずかしい||じっさい|こんど|||こんど||くとう|し ました ここ まで 迎 い に 来る に も ろくろく 旅費 が ない 騒ぎ でしょう 」・・ ||むかい|||くる||||りょひ|||さわぎ|

と いって さすが に 苦しげに 笑い に まぎらそう と した 。 ||||くるしげに|わらい|||| そのくせ 木村 の 胸 に は どっしり と 重 そうな 金 鎖 が かかって 、 両手 の 指 に は 四 つ まで 宝石 入り の 指輪 が きらめいて いた 。 |きむら||むね|||||おも|そう な|きむ|くさり|||りょうて||ゆび|||よっ|||ほうせき|はいり||ゆびわ||| 葉子 は 木村 の いう 事 を 聞き ながら その 指 に 目 を つけて いた が 、 四 つ の 指輪 の 中 に 婚約 の 時 取りかわした 純金 の 指輪 も まじって いる のに 気 が つく と 、 自分 の 指 に は それ を はめて い なかった の を 思い出して 、 何 くわ ぬ 様子 で 木村 の 膝 の 上 から 手 を 引っ込めて 顎 まで ふとん を かぶって しまった 。 ようこ||きむら|||こと||きき|||ゆび||め|||||よっ|||ゆびわ||なか||こんやく||じ|とりかわした|じゅんきん||ゆびわ|||||き||||じぶん||ゆび||||||||||おもいだして|なん|||ようす||きむら||ひざ||うえ||て||ひっこめて|あご||||| 木村 は 引っ込められた 手 に 追いすがる ように 椅子 を 乗り出して 、 葉子 の 顔 に 近く 自分 の 顔 を さし出した 。 きむら||ひっこめ られた|て||おいすがる||いす||のりだして|ようこ||かお||ちかく|じぶん||かお||さしだした ・・

「 葉子 さん 」・・ ようこ|

「 何 ? なん 」・・

また Love - scene か 。 |love|| そう 思って 葉子 は うんざり した けれども 、 すげなく 顔 を そむける わけに も 行か ず 、 やや 当惑 して いる と 、 おりよく 事務 長 が 型 ばかり の ノック を して は いって 来た 。 |おもって|ようこ||||||かお|||||いか|||とうわく|||||じむ|ちょう||かた||||||||きた 葉子 は 寝た まま 、 目 で いそいそ と 事務 長 を 迎え ながら 、・・ ようこ||ねた||め||||じむ|ちょう||むかえ|

「 まあ ようこそ …… 先ほど は 失礼 。 ||さきほど||しつれい なんだか くだらない 事 を 考え 出して いた もん です から 、 つい わがまま を して しまって すみません …… お 忙しい でしょう 」・・ ||こと||かんがえ|だして||||||||||||いそがしい| I've been thinking of some silly things, so I'm sorry for being selfish... I'm sure you're busy."

と いう と 、 事務 長 は からかい 半分 の 冗談 を きっかけ に 、・・ |||じむ|ちょう|||はんぶん||じょうだん|||

「 木村 さん の 顔 を 見る と えらい 事 を 忘れて いた のに 気 が ついた で 。 きむら|||かお||みる|||こと||わすれて|||き||| "When I saw Mr. Kimura's face, I realized that I had forgotten something great. 木村 さん から あなた に 電報 が 来 とった の を 、 わたしゃ ビクトリヤ の どさくさ で ころ り 忘れ とった んだ 。 きむら|||||でんぽう||らい|||||||||||わすれ|| In the confusion of Victoria, I forgot that you received a telegram from Mr. Kimura. すま ん 事 でした 。 ||こと| こんな 皺 に なり くさった 」・・ |しわ|||

と いい ながら 、 左 の ポッケット から 折り目 に 煙草 の 粉 が はさまって もみくちゃ に なった 電報 紙 を 取り出した 。 |||ひだり||||おりめ||たばこ||こな||||||でんぽう|かみ||とりだした 木村 は さっき 葉子 が それ を 見た と 確かに いった その 言葉 に 対して 、 怪 訝 な 顔つき を し ながら 葉子 を 見た 。 きむら|||ようこ||||みた||たしかに|||ことば||たいして|かい|いぶか||かおつき||||ようこ||みた 些細 な 事 で は ある が 、 それ が 事務 長 に も 関係 を 持つ 事 だ と 思う と 、 葉子 も ちょっと どぎまぎ せ ず に は いられ なかった 。 ささい||こと|||||||じむ|ちょう|||かんけい||もつ|こと|||おもう||ようこ||||||||いら れ| しかし それ は ただ 一 瞬間 だった 。 ||||ひと|しゅんかん| ・・

「 倉地 さん 、 あなた は きょう 少し どう かな すって いらっしゃる わ 。 くらち|||||すこし||||| "Kurachi-san, you're asking for some help today. それ は その 時 ちゃん と 拝見 した じゃ ありません か 」・・ |||じ|||はいけん|||あり ませ ん| Didn't you see it properly then?"

と いい ながら すばやく 目 くば せ する と 、 事務 長 は すぐ 何 か わけ が ある の を 気取った らしく 、 巧みに 葉子 に ばつ を 合わせた 。 ||||め|||||じむ|ちょう|||なん|||||||きどった||たくみに|ようこ||||あわせた ・・

「 何 ? なん あなた 見た ? |みた …… お ゝ そうそう …… これ は 寝ぼけ 返っと る ぞ 、 は ゝ ゝ ゝ 」・・ ||そう そう|||ねぼけ|かえ っと||||||

そして 互いに 顔 を 見合わせ ながら 二 人 は したたか 笑った 。 |たがいに|かお||みあわせ||ふた|じん|||わらった 木村 は しばらく 二 人 を かたみ が わりに 見くらべて いた が 、 これ も やがて 声 を 立てて 笑い 出した 。 きむら|||ふた|じん|||||みくらべて||||||こえ||たてて|わらい|だした 木村 の 笑い 出す の を 見た 二 人 は 無性に おかしく なって もう 一 度 新しく 笑いこけた 。 きむら||わらい|だす|||みた|ふた|じん||ぶしょうに||||ひと|たび|あたらしく|わらいこけた 木村 と いう 大きな 邪魔者 を 目の前 に 据えて おき ながら 、 互い の 感情 が 水 の ように 苦 も なく 流れ 通う の を 二 人 は 子供 らしく 楽しんだ 。 きむら|||おおきな|じゃまもの||めのまえ||すえて|||たがい||かんじょう||すい|||く|||ながれ|かよう|||ふた|じん||こども||たのしんだ ・・

しかし こんな いたずら めいた 事 の ため に 話 は ちょっと 途切れて しまった 。 ||||こと||||はなし|||とぎれて| くだらない 事 に 二 人 から わき出た 少し 仰 山 すぎた 笑い は 、 かすか ながら 木村 の 感情 を そこねた らしかった 。 |こと||ふた|じん||わきでた|すこし|あお|やま||わらい||||きむら||かんじょう||| 葉子 は 、 この 場合 、 なお 居残ろう と する 事務 長 を 遠ざけて 、 木村 と さし向かい に なる の が 得策 だ と 思った ので 、 程 も なく きまじめな 顔つき に 返って 、 枕 の 下 を 探って 、 そこ に 入れて 置いた 古藤 の 手紙 を 取り出して 木村 に 渡し ながら 、・・ ようこ|||ばあい||いのころう|||じむ|ちょう||とおざけて|きむら||さしむかい|||||とくさく|||おもった||ほど||||かおつき||かえって|まくら||した||さぐって|||いれて|おいた|ことう||てがみ||とりだして|きむら||わたし| In this case, Yoko thought that it would be a good idea to keep the secretary-general, who was still trying to stay, at a distance and face Kimura face-to-face, so she soon returned to a serious expression and groped under her pillow. , while taking out the letter from Furuto that I had put in there and handing it to Kimura,

「 これ を あなた に 古藤 さん から 。 ||||ことう|| 古藤 さん に は ずいぶん お 世話に なり まして よ 。 ことう||||||せわに||| でも あの 方 の ぶ まさか げんったら 、 それ は じれったい ほど ね 。 ||かた||||げん ったら||||| 愛 や 貞 の 学校 の 事 も お 頼み して 来た んです けれども 心もとない もん よ 。 あい||さだ||がっこう||こと|||たのみ||きた|||こころもとない|| きっと 今ごろ は けんか 腰 に なって み ん な と 談判 でも して いらっしゃる でしょう よ 。 |いまごろ|||こし|||||||だんぱん||||| 見える ようです わ ね 」・・ みえる|||

と 水 を 向ける と 、 木村 は 始めて 話 の 領分 が 自分 の ほう に 移って 来た ように 、 顔色 を なおし ながら 、 事務 長 を そっちのけ に した 態度 で 、 葉子 に 対して は 自分 が 第 一 の 発言 権 を 持って いる と いわんばかり に 、 いろいろ と 話し出した 。 |すい||むける||きむら||はじめて|はなし||りょうぶん||じぶん||||うつって|きた||かおいろ||なお し||じむ|ちょう|||||たいど||ようこ||たいして||じぶん||だい|ひと||はつげん|けん||もって|||||||はなしだした 事務 長 は しばらく 風向き を 見計らって 立って いた が 突然 部屋 を 出て 行った 。 じむ|ちょう|||かざむき||みはからって|たって|||とつぜん|へや||でて|おこなった