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銀河鉄道の夜 『宮沢賢治』(Night on the Galactic Railroad), 9-3. ジョバンニ の 切符 (3)

9-3. ジョバンニ の 切符 (3)

どんどん どんどん 汽車 は 降りて 行きました 。 崖 の はじ に 鉄道 が かかる とき は 川 が 明るく 下 に のぞけた のです 。 ジョバンニ は だんだん こころもち が 明るく なって きました 。 汽車 が 小さな 小屋 の 前 を 通って 、 その 前 に しょんぼり ひと り の 子供 が 立って こっち を 見て いる とき など は 思わず 、 ほう 、 と 叫びました 。 どんどん どんどん 汽車 は 走って 行きました 。 室 中 の ひとたち は 半分 うしろ の 方 へ 倒れる ように なり ながら 腰掛 に しっかり しがみついて いました 。 ジョバンニ は 思わず カムパネルラ と わらいました 。 もう そして 天の川 は 汽車 の すぐ 横手 を いま まで よほど 激しく 流れて 来た らしく 、 ときどき ちらちら 光って ながれて いる のでした 。 うす あかい 河原 なでしこ の 花 が あちこち 咲いて いました 。 汽車 は ようやく 落ち着いた ように ゆっくり 走って いました 。 向こう と こっち の 岸 に 星 の かたち と つるはし を 書いた 旗 が たって いました 。 「 あれ なんの 旗 だろう ね 」 ジョバンニ が やっと もの を 言いました 。 「 さあ 、 わから ない ねえ 、 地図 に も ない んだ もの 。 鉄 の 舟 が おいて ある ねえ 」

「 ああ 」

「 橋 を 架ける とこ じゃ ない んでしょう か 」 女の子 が 言いました 。 「 ああ 、 あれ 工兵 の 旗 だ ねえ 。 架橋 演習 を して る んだ 。 けれど 兵隊 の かたち が 見え ない ねえ 」

その 時 向こう岸 ちかく の 少し 下流 の 方 で 、 見え ない 天の川 の 水 が ぎ らっと 光って 、 柱 の ように 高く はねあがり 、 どおと はげしい 音 が しました 。 「 発破 だ よ 、 発破 だ よ 」 カムパネルラ は こおどり しました 。 その 柱 の ように なった 水 は 見え なく なり 、 大きな 鮭 や 鱒 が きらっき らっと 白く 腹 を 光らせて 空中 に ほうり出されて まるい 輪 を 描いて また 水 に 落ちました 。 ジョバンニ は もう はねあがりたい くらい 気持ち が 軽く なって 言いました 。 「 空 の 工兵 大隊 だ 。 どう だ 、 マス なんか が まるで こんなに なって はねあげられた ねえ 。 僕 こんな 愉快な 旅 は した こと ない 。 いい ねえ 」

「 あの 鱒 なら 近く で 見たら これ くらい ある ねえ 、 たくさん さかな いる んだ な 、 この 水 の 中 に 」

「 小さな お 魚 も いる んでしょう か 」 女の子 が 話 に つり込まれて 言いました 。 「 いる んでしょう 。 大きな の が いる んだ から 小さい の も いる んでしょう 。 けれど 遠く だ から 、 いま 小さい の 見え なかった ねえ 」 ジョバンニ は もう すっかり 機嫌 が 直って おもしろ そうに わらって 女の子 に 答えました 。 「 あれ きっと 双子 の お 星 さま の お 宮 だ よ 」 男の子 が いきなり 窓 の 外 を さして 叫びました 。 右手 の 低い 丘 の 上 に 小さな 水晶 で でも こさえた ような 二 つ の お 宮 が ならんで 立って いました 。 「 双子 の お 星 さま の お 宮って なんだい 」 「 あたし 前 に なんべん も お母さん から 聞いた わ 。 ちゃんと 小さな 水晶 の お 宮 で 二 つ ならんで いる から きっと そう だ わ 」

「 はなして ごらん 。 双子 の お 星 さま が 何 を したって の 」

「 ぼく も 知って らい 。 双子 の お 星 さま が 野原 へ 遊び に でて 、 からす と 喧嘩 した んだろう 」

「 そう じゃ ない わ よ 。 あの ね 、 天の川 の 岸 に ね 、 おっか さん お 話し な すった わ 、……」 「 それ から 彗星 が ギーギーフーギーギーフー て 言って 来た ねえ 」 「 いやだ わ 、 た あ ちゃん 、 そう じゃ ない わ よ 。 それ は べつの 方 だ わ 」

「 する と あすこに いま 笛 を 吹いて いる んだろう か 」

「 いま 海 へ 行って ら あ 」

「 いけない わ よ 。 もう 海 から あがって いらっしゃった の よ 」

「 そうそう 。 ぼく 知って ら あ 、 ぼく お はなし しよう 」

川 の 向こう岸 が にわかに 赤く なりました 。 楊 の 木 や 何 かも まっ黒 に すかし出され 、 見え ない 天の川 の 波 も 、 ときどき ちらちら 針 の ように 赤く 光りました 。 まったく 向こう岸 の 野原 に 大きな まっ赤 な 火 が 燃され 、 その 黒い けむり は 高く 桔梗 いろ の つめた そうな 天 を も 焦がし そうでした 。 ルビー より も 赤く すきとおり 、 リチウム より も うつくしく 酔った ように なって 、 その 火 は 燃えて いる のでした 。

「 あれ は なんの 火 だろう 。 あんな 赤く 光る 火 は 何 を 燃やせば できる んだろう 」 ジョバンニ が 言いました 。 「 蠍 の 火 だ な 」 カムパネルラ が また 地図 と 首っぴきして 答えました 。 「 あら 、 蠍 の 火 の こと なら あたし 知って る わ 」

「 蠍 の 火って なんだい 」 ジョバンニ が ききました 。 「 蠍 が やけて 死んだ の よ 。 その 火 が いま でも 燃えて るって 、 あたし 何べん も お 父さん から 聴いた わ 」 「 蠍って 、 虫 だろう 」 「 ええ 、 蠍 は 虫 よ 。 だけど いい 虫 だ わ 」

「 蠍 いい 虫 じゃ ない よ 。 僕 博物 館 で アルコール に つけて ある の 見た 。 尾 に こんな かぎ が あって それ で 螫 さ れる と 死ぬって 先生 が 言って た よ 」 「 そう よ 。 だけど いい 虫 だ わ 、 お 父さん こう 言った の よ 。 むかし の バルドラ の 野原 に 一 ぴき の 蠍 が いて 小さな 虫 や なんか 殺して たべて 生きて いた んですって 。 する と ある 日 いたち に 見つかって 食べられ そうに なった んですって 。 さそり は 一生 けん命 にげて にげた けど 、 とうとう いたち に 押えられ そうに なった わ 、 その とき いきなり 前 に 井戸 が あって その 中 に 落ちて しまった わ 、 もう どうしても あがら れ ないで 、 さそり は おぼれ はじめた の よ 。 その とき さそり は こう 言って お 祈り した と いう の 。

ああ 、 わたし は いま まで 、 いく つ の もの の 命 を とった か わから ない 、 そして その 私 が こんど いたち に とら れよう と した とき は あんなに 一生 けん命に げた 。 それ でも とうとう こんなに なって しまった 。 ああ なんにも あて に なら ない 。 どうして わたし は わたし の からだ を 、 だまって い たち に くれて やら なかったろう 。 そしたら いたち も 一 日 生きのびたろう に 。 どうか 神さま 。 私 の 心 を ごらん ください 。 こんなに むなしく 命 を すて ず 、 どうか この 次に は 、 まこと の みんな の 幸い の ため に 私 の からだ を お つかい ください 。 って 言った と いう の 。

そ したら いつか 蠍 は じぶん の からだ が 、 まっ赤 な うつくしい 火 に なって 燃えて 、 よる の やみ を 照らして いる の を 見たって 。 いま でも 燃えて るって お 父さん おっしゃった わ 。 ほんとうに あの 火 、 それ だ わ 」

「 そうだ 。 見た まえ 。 そこら の 三角 標 は ちょうど さそり の 形 に ならんで いる よ 」

ジョバンニ は まったく その 大きな 火 の 向こう に 三 つ の 三角 標 が 、 ちょうど さそり の 腕 の ように 、 こっち に 五 つ の 三角 標 が さそり の 尾 や かぎ の ように ならんで いる の を 見ました 。 そして ほんとうに その まっ赤 な うつくしい さそり の 火 は 音 なく あかるく あかるく 燃えた のです 。 その 火 が だんだん うしろ の 方 に なる に つれて 、 みんな は なんとも 言え ず にぎやかな 、 さまざまの 楽 の 音 や 草花 の におい の ような もの 、 口笛 や 人々 の ざ わざ わ 言う 声 やら を 聞きました 。 それ は もう じき ちかく に 町 か 何 か が あって 、 そこ に お祭り で も ある と いう ような 気 が する のでした 。

「 ケンタウル 露 を ふらせ 」 いきなり いま まで 眠って いた ジョバンニ の となり の 男の子 が 向こう の 窓 を 見 ながら 叫んで いました 。 ああ そこ に は クリスマストリイ の ように まっ青 な 唐 檜 か もみの 木 が たって 、 その 中 に は たくさんの たくさんの 豆 電灯 が まるで 千 の 蛍 で も 集まった ように ついて いました 。 「 ああ 、 そう だ 、 今夜 ケンタウル 祭 》 だ ねえ 」

「 ああ 、 ここ は ケンタウル の 村 だ よ 」 カムパネルラ が すぐ 言いました 。 ( 此の 間 原稿 なし )

「 ボール 投げ なら 僕 決して はずさ ない 」 男の子 が 大いばり で 言いました 。 「 もう じき サウザンクロス です 。 おりる したく を して ください 」 青年 が みんな に 言いました 。 「 僕 、 も 少し 汽車 に 乗って る んだ よ 」 男の子 が 言いました 。 カムパネルラ の となり の 女の子 は そわそわ 立って したく を はじめました けれども やっぱり ジョバンニ たち と わかれ たく ない ような ようす でした 。 「 ここ で おり なけ ぁ いけない のです 」 青年 は きちっと 口 を 結んで 男の子 を 見おろし ながら 言いました 。 「 厭 だい 。 僕 もう 少し 汽車 へ 乗って から 行く ん だい 」

ジョバンニ が こらえ かねて 言いました 。 「 僕たち と いっしょに 乗って 行こう 。 僕たち どこ まで だって 行ける 切符 持って る んだ 」

「 だけど あたし たち 、 もう ここ で 降り なけ ぁ いけない の よ 。 ここ 天上 へ 行く と こ なんだ から 」

女の子 が さびし そうに 言いました 。 「 天上 へ なんか 行か なく たって いい じゃ ない か 。 ぼくたち ここ で 天上 より も もっと いい とこ を こ さえ なけ ぁ いけないって 僕 の 先生 が 言った よ 」 「 だって おっか さん も 行って らっしゃる し 、 それ に 神さま が おっしゃる んだ わ 」 「 そんな 神さま うそ の 神さま だい 」 「 あなた の 神さま うそ の 神さま よ 」 「 そう じゃ ない よ 」 「 あなた の 神さまって どんな 神さま です か 」 青年 は 笑い ながら 言いました 。 「 ぼく ほんとう は よく 知りません 。 けれども そんな ん で なし に 、 ほんとうの たった 一 人 の 神さま です 」

「 ほんとうの 神さま は もちろん たった 一 人 です 」

「 ああ 、 そんな ん で なし に 、 たった ひと り の ほんとうの ほんとうの 神さま です 」

「 だから そうじゃ ありません か 。 わたくし は あなた 方 が いまに その ほんとうの 神さま の 前 に 、 わたくし たち と お 会い に なる こと を 祈ります 」 青年 は つつましく 両手 を 組みました 。 女の子 も ちょうど その 通り に しました 。 みんな ほんとうに 別れ が 惜し そうで 、 その 顔 いろ も 少し 青ざめて 見えました 。 ジョバンニ は あぶなく 声 を あげて 泣き出そう と しました 。 「 さあ もう したく は いい んです か 。 じき サウザンクロス です から 」

ああ その とき でした 。 見え ない 天の川 の ず うっと 川下 に 青 や 橙 や 、 もう あらゆる 光 で ちりばめられた 十字架 が 、 まるで 一 本 の 木 と いう ふうに 川 の 中 から 立って かがやき 、 その 上 に は 青じろい 雲 が まるい 環 に なって 後光 の ように かかって いる のでした 。 汽車 の 中 が まるで ざわざわ しました 。 みんな あの 北 の 十字 の とき の ように まっすぐに 立って お 祈り を はじめました 。 あっち に も こっち に も 子供 が 瓜 に 飛びついた とき の ような よろこび の 声 や 、 なんとも 言いよう ない 深い つつましい ためいき の 音 ばかり きこえました 。 そして だんだん 十字架 は 窓 の 正面 に なり 、 あの りんご の 肉 の ような 青じろい 環 の 雲 も 、 ゆるやかに ゆるやかに めぐって いる の が 見えました 。 「 ハレルヤ 、 ハレルヤ 」 明るく たのしく みんな の 声 は ひびき 、 みんな は その そら の 遠く から 、 つめたい そら の 遠く から 、 すきとおった なんとも 言え ず さわやかな ラッパ の 声 を ききました 。 そして たくさんの シグナル や 電灯 の 灯 の なか を 汽車 は だんだん ゆるやかに なり 、 とうとう 十字架 の ちょうど ま 向かい に 行って すっかり とまりました 。 「 さあ 、 おりる んです よ 」 青年 は 男の子 の 手 を ひき 姉 は 互いに えり や 肩 を なおして やって だんだん 向こう の 出口 の 方 へ 歩き 出しました 。 「 じゃ さよなら 」 女の子 が ふりかえって 二 人 に 言いました 。 「 さよなら 」 ジョバンニ は まるで 泣き出したい の を こらえて おこった ように ぶっきらぼうに 言いました 。 女の子 は いかにも つら そうに 眼 を 大きく して 、 も 一 度 こっち を ふりかえって 、 それ から あと は もう だまって 出て 行って しまいました 。 汽車 の 中 は もう 半分 以上 も 空いて しまい にわかに がらんとして 、 さびしく なり 風 が いっぱいに 吹き込みました 。 そして 見て いる と みんな は つつましく 列 を 組んで 、 あの 十字架 の 前 の 天の川 の なぎさ に ひざまずいて いました 。 そして その 見え ない 天の川 の 水 を わたって 、 ひと り の こうごうしい 白 いきもの の 人 が 手 を のばして こっち へ 来る の を 二 人 は 見ました 。 けれども その とき は もう 硝子 の 呼び子 は 鳴らさ れ 汽車 は うごきだし 、 と 思う うち に 銀 いろ の 霧 が 川下 の 方 から 、 すうっと 流れて 来て 、 もう そっち は 何も 見え なく なりました 。 ただ たくさんの くるみ の 木 が 葉 を さんさんと 光らして その 霧 の 中 に 立ち 、 金 の 円 光 を もった 電気 りす が 可愛い 顔 を その 中 から ちらちら のぞいて いる だけ でした 。

その とき 、 すうっと 霧 が はれかかりました 。 どこ か へ 行く 街道 らしく 小さな 電灯 の 一 列 に ついた 通り が ありました 。 それ は しばらく 線路 に 沿って 進んで いました 。 そして 二 人 が その あかし の 前 を 通って 行く とき は 、 その 小さな 豆 いろ の 火 は ちょうど あいさつ でも する ように ぽかっと 消え 、 二 人 が 過ぎて 行く とき また 点く のでした 。 ふりかえって 見る と 、 さっき の 十字架 は すっかり 小さく なって しまい 、 ほんとうに もう そのまま 胸 に も つるさ れ そうに なり 、 さっき の 女の子 や 青年 たち が その 前 の 白い 渚 に まだ ひざまずいて いる の か 、 それとも どこ か 方角 も わから ない その 天上 へ 行った の か 、 ぼんやり して 見分けられません でした 。 ジョバンニ は 、 ああ 、 と 深く 息 しました 。 「 カムパネルラ 、 また 僕たち 二 人きり に なった ねえ 、 どこまでも どこまでも いっしょに 行こう 。 僕 は もう 、 あの さそり の ように 、 ほんとうに みんな の 幸い の ため ならば 僕 の からだ なんか 百 ぺん 灼 いて も かまわ ない 」

「 うん 。 僕 だって そう だ 」 カムパネルラ の 眼 に は きれいな 涙 が うかんで いました 。 「 けれども ほんとうの さいわい は いったい なんだろう 」

ジョバンニ が 言いました 。 「 僕 わから ない 」 カムパネルラ が ぼんやり 言いました 。 「 僕たち しっかり やろう ねえ 」 ジョバンニ が 胸 いっぱい 新しい 力 が 湧く ように 、 ふう と 息 を し ながら 言いました 。 「 あ 、 あす こ 石炭 袋 だ よ 。 そら の 孔 だ よ 」 カムパネルラ が 少し そっち を 避ける ように し ながら 天の川 の ひと とこ を 指さしました 。 ジョバンニ は そっち を 見て 、 まるで ぎくっとして しまいました 。 天の川 の 一 とこ に 大きな まっくらな 孔 が 、 どおんと あいて いる のです 。 その 底 が どれほど 深い か 、 その 奥 に 何 が ある か 、 いくら 眼 を こすって のぞいて も なんにも 見え ず 、 ただ 眼 が しんしんと 痛む のでした 。 ジョバンニ が 言いました 。 「 僕 もう あんな 大きな やみ の 中 だって こわく ない 。 きっと みんな の ほんとうの さいわい を さがし に 行く 。 どこまでも どこまでも 僕たち いっしょに 進んで 行こう 」

「 ああ きっと 行く よ 。 ああ 、 あす この 野原 は なんて きれいだろう 。 みんな 集まって る ねえ 。 あす こ が ほんとうの 天上 な んだ 。 あっ、 あす こ に いる の は ぼく の お母さん だ よ 」 カムパネルラ は にわかに 窓 の 遠く に 見える きれいな 野原 を 指して 叫びました 。 ジョバンニ も そっち を 見ました けれども 、 そこ は ぼんやり 白く けむって いる ばかり 、 どうしても カムパネルラ が 言った ように 思わ れません でした 。 なんとも 言え ず さびしい 気 が して 、 ぼんやり そっち を 見て いましたら 、 向こう の 河 岸 に 二 本 の 電信 ば しらが 、 ちょうど 両方 から 腕 を 組んだ ように 赤い 腕 木 を つらねて 立って いました 。 「 カムパネルラ 、 僕たち いっしょに 行こう ねえ 」 ジョバンニ が こう 言い ながら ふりかえって 見ましたら 、 その いま まで カムパネルラ の すわって いた 席 に 、 もう カムパネルラ の 形 は 見え ず 、 ただ 黒い びろうど ばかり ひかって いました 。 ジョバンニ は まるで 鉄砲 丸 の ように 立ちあがりました 。 そして 誰 に も 聞こえ ない ように 窓 の 外 へ から だ を 乗り出して 、 力いっぱい はげしく 胸 を うって 叫び 、 それ から もう 咽喉 いっぱい 泣きだしました 。

9-3. ジョバンニ の 切符 (3) ||きっぷ 9-3. Fahrschein von Giovanni (3) 9-3. ticket of Giovanni (3) 9-3. 조반니의 티켓 (3) 9-3. билет Джованни (3) 9-3. 乔凡尼的票(3) 9-3. 乔瓦尼的门票 (3)

どんどん どんどん 汽車 は 降りて 行きました 。 ||きしゃ||おりて|いき ました 崖 の はじ に 鉄道 が かかる とき は 川 が 明るく 下 に のぞけた のです 。 がけ||||てつどう|||||かわ||あかるく|した||のぞけ た| The river peeked brightly down when the railroad crossed over the cliff. Когда железная дорога перевалила через обрыв, внизу показалась река. 當鐵路駛過懸崖邊緣時,下面的河流顯得明亮。 ジョバンニ は だんだん こころもち が 明るく なって きました 。 |||||あかるく||き ました 喬瓦尼的心漸漸變得明亮起來。 汽車 が 小さな 小屋 の 前 を 通って 、 その 前 に しょんぼり ひと り の 子供 が 立って こっち を 見て いる とき など は 思わず 、 ほう 、 と 叫びました 。 きしゃ||ちいさな|こや||ぜん||かよって||ぜん||||||こども||たって|||みて|||||おもわず|||さけび ました 當火車經過一間小茅屋時,我看到一個小孩子站在小屋前,沮喪地看著我,我忍不住哭了出來。 どんどん どんどん 汽車 は 走って 行きました 。 ||きしゃ||はしって|いき ました 火車繼續前進。 室 中 の ひとたち は 半分 うしろ の 方 へ 倒れる ように なり ながら 腰掛 に しっかり しがみついて いました 。 しつ|なか||ひと たち||はんぶん|||かた||たおれる||||こし かかり||||い ました The people in the room clung tightly to the perch, half toppling to the rear. 房間裡的人都緊緊抓著座位,半個身子向後倒去。 ジョバンニ は 思わず カムパネルラ と わらいました 。 ||おもわず|||わらい ました Giovanni couldn't help but laugh with the campanella. 喬瓦尼忍不住與坎帕內拉交談。 もう そして 天の川 は 汽車 の すぐ 横手 を いま まで よほど 激しく 流れて 来た らしく 、 ときどき ちらちら 光って ながれて いる のでした 。 ||あまのがわ||きしゃ|||よこて|||||はげしく|ながれて|きた||||ひかって||| And the Milky Way seemed to have been flowing ever so violently right beside the train, sometimes flickering and flitting and fluttering. 火車旁的銀河似乎流動得非常強烈,不時有閃爍的光芒流過。 うす あかい 河原 なでしこ の 花 が あちこち 咲いて いました 。 ||かわはら|なで しこ||か|||さいて|い ました 河床處處盛開著淺紅色的石竹花。 汽車 は ようやく 落ち着いた ように ゆっくり 走って いました 。 きしゃ|||おちついた|||はしって|い ました The train was running slowly as if it had finally calmed down. 向こう と こっち の 岸 に 星 の かたち と つるはし を 書いた 旗 が たって いました 。 むこう||||きし||ほし||||||かいた|き|||い ました On the other side and on this side of the river there were flags with stars and pickaxes on them. 岸邊掛著旗幟,一面是星形的,一面是這邊的。 「 あれ なんの 旗 だろう ね 」 ジョバンニ が やっと もの を 言いました 。 ||き||||||||いい ました Giovanni finally said something: "What flag is that? 「那是什麼樣的旗幟?」喬瓦尼最後說。 「 さあ 、 わから ない ねえ 、 地図 に も ない んだ もの 。 ||||ちず||||| I don't know, I don't know. It's not even on the map. “嗯,我不明白,它甚至不在地圖上。” 鉄 の 舟 が おいて ある ねえ 」 くろがね||ふね|||| There's an iron boat in there. Там находится железный корабль. 有一艘鐵船在等你。”

「 ああ 」

「 橋 を 架ける とこ じゃ ない んでしょう か 」 女の子 が 言いました 。 きょう||かける||||||おんなのこ||いい ました I think you're supposed to build a bridge," the girl said. 「現在不是建橋的時候嗎?」女孩說。 「 ああ 、 あれ 工兵 の 旗 だ ねえ 。 ||こうへい||き|| 「啊,那是工程師的旗幟。 架橋 演習 を して る んだ 。 かきょう|えんしゅう|||| 我正在做一個交叉連結練習。 けれど 兵隊 の かたち が 見え ない ねえ 」 |へいたい||||みえ|| 但我看不到士兵的形狀。”

その 時 向こう岸 ちかく の 少し 下流 の 方 で 、 見え ない 天の川 の 水 が ぎ らっと 光って 、 柱 の ように 高く はねあがり 、 どおと はげしい 音 が しました 。 |じ|むこうぎし|||すこし|かりゅう||かた||みえ||あまのがわ||すい|||ら っと|ひかって|ちゅう|||たかく||ど おと||おと||し ました A little downstream, near the other side of the river, the invisible waters of the Milky Way glinted and rose up like pillars, making a loud booming sound. 就在這時,靠近對岸,下游一點的地方,看不見的銀河水光大放異彩,如柱子般升起,一聲巨響響起。 「 発破 だ よ 、 発破 だ よ 」 カムパネルラ は こおどり しました 。 はつ やぶ|||はつ やぶ||||||し ました 「太棒了!太棒了!」坎帕內拉喊道。 その 柱 の ように なった 水 は 見え なく なり 、 大きな 鮭 や 鱒 が きらっき らっと 白く 腹 を 光らせて 空中 に ほうり出されて まるい 輪 を 描いて また 水 に 落ちました 。 |ちゅう||||すい||みえ|||おおきな|さけ||ます||きら っき|ら っと|しろく|はら||ひからせて|くうちゅう||ほうりださ れて||りん||えがいて||すい||おち ました 柱狀的海水消失在視野中,腹部泛著白光的大鮭魚和鱒魚被拋到空中,轉了一圈,又落回了水中。 ジョバンニ は もう はねあがりたい くらい 気持ち が 軽く なって 言いました 。 |||はねあがり たい||きもち||かるく||いい ました 喬瓦尼說著,感覺全身一輕,想要跳起來。 「 空 の 工兵 大隊 だ 。 から||こうへい|だいたい| 「這是一個航空工兵營。 どう だ 、 マス なんか が まるで こんなに なって はねあげられた ねえ 。 ||ます||||||はねあげ られた| How's it going? The trout have been lifted up like this. Как это происходит? Форель подняли вот так. 一條鱒魚怎麼能被如此吹走呢? 僕 こんな 愉快な 旅 は した こと ない 。 ぼく||ゆかいな|たび|||| I have never had such a pleasant trip. 我從來沒有經歷過如此有趣的旅行。 いい ねえ 」

「 あの 鱒 なら 近く で 見たら これ くらい ある ねえ 、 たくさん さかな いる んだ な 、 この 水 の 中 に 」 |ます||ちかく||みたら|||||||||||すい||なか| "That's about the size of a trout up close, there must be a lot of fish in this water." “如果你仔細看,你會看到那麼多鱒魚。這水里一定有很多鱒魚。”

「 小さな お 魚 も いる んでしょう か 」 女の子 が 話 に つり込まれて 言いました 。 ちいさな||ぎょ|||||おんなのこ||はなし||つり こまれて|いい ました The girl was dragged into the conversation and said, "I wonder if there are any little fish? 「我猜那裡也有小魚,對吧?」女孩說道,加入了對話。 「 いる んでしょう 。 「我想是有的。 大きな の が いる んだ から 小さい の も いる んでしょう 。 おおきな||||||ちいさい|||| 既然有大的,必然也有一些小的。 けれど 遠く だ から 、 いま 小さい の 見え なかった ねえ 」 ジョバンニ は もう すっかり 機嫌 が 直って おもしろ そうに わらって 女の子 に 答えました 。 |とおく||||ちいさい||みえ|||||||きげん||なおって||そう に||おんなのこ||こたえ ました 不過剛才距離太遠了,看不到那個小傢伙。」喬瓦尼心情不錯,用一種玩味的語氣回答女孩。 「 あれ きっと 双子 の お 星 さま の お 宮 だ よ 」 男の子 が いきなり 窓 の 外 を さして 叫びました 。 ||ふたご|||ほし||||みや|||おとこのこ|||まど||がい|||さけび ました The boy suddenly shouted out the window, "That must be the palace of the twin stars. 「那一定是雙星神殿。」男孩突然指著窗外喊道。 右手 の 低い 丘 の 上 に 小さな 水晶 で でも こさえた ような 二 つ の お 宮 が ならんで 立って いました 。 みぎて||ひくい|おか||うえ||ちいさな|すいしょう|||こさ えた||ふた||||みや|||たって|い ました 在我右邊的小山上矗立著兩座神殿,看起來像是由小水晶製成的。 「 双子 の お 星 さま の お 宮って なんだい 」 「 あたし 前 に なんべん も お母さん から 聞いた わ 。 ふたご|||ほし||||みや って|||ぜん||||お かあさん||きいた| I've heard this many times before from my mother. “雙星神殿是什麼?” “我母親以前告訴過我這一切。 ちゃんと 小さな 水晶 の お 宮 で 二 つ ならんで いる から きっと そう だ わ 」 |ちいさな|すいしょう|||みや||ふた|||||||| 一座小小的水晶神殿裡有兩個人排列著,所以我確信是這樣的。”

「 はなして ごらん 。 Let's talk about it. 「請告訴我。 双子 の お 星 さま が 何 を したって の 」 ふたご|||ほし|||なん||| What did the twins do?" 雙子星做了什麼?

「 ぼく も 知って らい 。 ||しって| I want to know, too. 「我也想知道。 双子 の お 星 さま が 野原 へ 遊び に でて 、 からす と 喧嘩 した んだろう 」 ふたご|||ほし|||のはら||あそび|||||けんか|| The twin stars must have gone out to play in the field and had a fight with a raven." 這對雙胞胎肯定是出去玩了,和烏鴉打架了。”

「 そう じゃ ない わ よ 。 That's not true. 」 「那不是真的。 あの ね 、 天の川 の 岸 に ね 、 おっか さん お 話し な すった わ 、……」 「 それ から 彗星 が ギーギーフーギーギーフー て 言って 来た ねえ 」 「 いやだ わ 、 た あ ちゃん 、 そう じゃ ない わ よ 。 ||あまのがわ||きし|||お っか|||はなし||||||すいせい||||いって|きた||||||||||| You know, on the shore of the Milky Way, my mom talked to you. ......" "And then the comet came whizzing by, whizzing by, whizzing by, whizzing by. Знаешь, на берегу Млечного Пути мама рассказывала мне одну историю. ......" "А потом прилетела комета, хихи-хихи-хихи" "Нет, папа, все не так. 你知道,有一位老人在銀河系的岸邊和我說話…」「然後一顆彗星來了,說「吉-吉-胡-吉-吉-胡」」「不,大醬,這不對。哇。 それ は べつの 方 だ わ 」 |||かた|| It's the other way. 那是另一種方式。”

「 する と あすこに いま 笛 を 吹いて いる んだろう か 」 ||あす こ に||ふえ||ふいて||| "And is there a whistle blowing there and now?" “那明天,不知道你現在吹笛子嗎?”

「 いま 海 へ 行って ら あ 」 |うみ||おこなって|| "If you go to the sea now..." “我們現在就去海邊吧。”

「 いけない わ よ 。 I can't do that. もう 海 から あがって いらっしゃった の よ 」 |うみ||||| 你已經從海裡出來了。”

「 そうそう 。 そう そう ぼく 知って ら あ 、 ぼく お はなし しよう 」 |しって|||||| I know, and I'll tell you all about it. 如果你認識我,我就跟你講個故事。”

川 の 向こう岸 が にわかに 赤く なりました 。 かわ||むこうぎし|||あかく|なり ました 河對岸突然變成了紅色。 楊 の 木 や 何 かも まっ黒 に すかし出され 、 見え ない 天の川 の 波 も 、 ときどき ちらちら 針 の ように 赤く 光りました 。 よう||き||なん||まっ くろ||すかし ださ れ|みえ||あまのがわ||なみ||||はり|||あかく|ひかり ました 陽樹等一切都漆黑一片,就連看不見的銀河波浪,也時不時閃現出針一般的紅色。 まったく 向こう岸 の 野原 に 大きな まっ赤 な 火 が 燃され 、 その 黒い けむり は 高く 桔梗 いろ の つめた そうな 天 を も 焦がし そうでした 。 |むこうぎし||のはら||おおきな|まっ あか||ひ||もさ れ||くろい|||たかく|ききょう||||そう な|てん|||こがし|そう でした A great red fire burned in the field on the other side of the river, and its black smoke seemed to scorch the high, bellflower-red sky. 對岸的田野裡熊熊燃燒著紅色的大火,黑色的煙霧似乎燒焦了天空,天空中似乎開滿了風鈴草。 ルビー より も 赤く すきとおり 、 リチウム より も うつくしく 酔った ように なって 、 その 火 は 燃えて いる のでした 。 るびー|||あかく||||||よった||||ひ||もえて|| The fire was burning, clearing redder than rubies and becoming drunker than lithium. 火比紅寶石還紅,比鋰還漂亮,讓人沉醉。

「 あれ は なんの 火 だろう 。 |||ひ| 「那是什麼樣的火? あんな 赤く 光る 火 は 何 を 燃やせば できる んだろう 」 ジョバンニ が 言いました 。 |あかく|ひかる|ひ||なん||もやせば|||||いい ました I wonder what you have to burn to make such a red, glowing fire," said Giovanni. 「我想知道我們可以燃燒什麼來使火發出那樣的紅光?」喬瓦尼說。 「 蠍 の 火 だ な 」 カムパネルラ が また 地図 と 首っぴきして 答えました 。 さそり||ひ||||||ちず||くびっぴ きして|こたえ ました 「蝎子火,」康帕內拉回答道,再次看著地圖。 「 あら 、 蠍 の 火 の こと なら あたし 知って る わ 」 |さそり||ひ|||||しって|| "Oh, I know all about the scorpion fire. “哦,我知道蠍火。”

「 蠍 の 火って なんだい 」 ジョバンニ が ききました 。 さそり||ひ って||||きき ました 「什麼是蝎子之火?」喬瓦尼問。 「 蠍 が やけて 死んだ の よ 。 さそり|||しんだ|| 『蝎子被燒死了。 その 火 が いま でも 燃えて るって 、 あたし 何べん も お 父さん から 聴いた わ 」 「 蠍って 、 虫 だろう 」 「 ええ 、 蠍 は 虫 よ 。 |ひ||||もえて|る って||なんべん|||とうさん||きいた||さそり って|ちゅう|||さそり||ちゅう| 我聽我父親說,那火至今仍在燃燒。 ” “蝎子是一種昆蟲,對嗎?” “是的,蝎子是一種昆蟲。 だけど いい 虫 だ わ 」 ||ちゅう|| But he's a good bug." 但它們是好昆蟲。”

「 蠍 いい 虫 じゃ ない よ 。 さそり||ちゅう||| “蝎子不是好昆蟲。 僕 博物 館 で アルコール に つけて ある の 見た 。 ぼく|はくぶつ|かん||あるこーる|||||みた 我在博物館看到它浸在酒精裡。 尾 に こんな かぎ が あって それ で 螫 さ れる と 死ぬって 先生 が 言って た よ 」 「 そう よ 。 お||||||||せき||||しぬ って|せんせい||いって|||| 我的老師說過,如果你的尾巴被這樣的鑰匙擊中,你就會死。 」「是的。 だけど いい 虫 だ わ 、 お 父さん こう 言った の よ 。 ||ちゅう||||とうさん||いった|| But he's a good bug, Dad, that's what I said. 但它們是好昆蟲,我父親就是這麼說的。 むかし の バルドラ の 野原 に 一 ぴき の 蠍 が いて 小さな 虫 や なんか 殺して たべて 生きて いた んですって 。 ||||のはら||ひと|||さそり|||ちいさな|ちゅう|||ころして||いきて||んです って Once upon a time there was a scorpion in the field of Bardola, killing small insects and other things and living alive. 據說從前,巴爾德拉的田野裡有一隻蝎子,它靠捕食小昆蟲和其他東西為生。 する と ある 日 いたち に 見つかって 食べられ そうに なった んですって 。 |||ひ|||みつかって|たべ られ|そう に||んです って Then one day, the weasels found him and tried to eat him. 有一天,一隻黃鼠狼發現了它,差點把牠吃掉。 さそり は 一生 けん命 にげて にげた けど 、 とうとう いたち に 押えられ そうに なった わ 、 その とき いきなり 前 に 井戸 が あって その 中 に 落ちて しまった わ 、 もう どうしても あがら れ ないで 、 さそり は おぼれ はじめた の よ 。 ||いっしょう|けんめい|||||||おさえ られ|そう に||||||ぜん||いど||||なか||おちて||||||||||||| 蝎子冒著生命危險逃跑,但最後,威斯似乎把他壓住了,突然,他面前出現了一口井,他掉進了井裡,我開始被淹死。 その とき さそり は こう 言って お 祈り した と いう の 。 |||||いって||いのり|||| 那時,蝎子祈禱說:

ああ 、 わたし は いま まで 、 いく つ の もの の 命 を とった か わから ない 、 そして その 私 が こんど いたち に とら れよう と した とき は あんなに 一生 けん命に げた 。 ||||||||||いのち||||||||わたくし||||||||||||いっしょう|けんめいに| Oh, I don't know how many lives I've ever had, and when I tried to be taken by these guys, I was so deadly. 哦,我不知道我奪走了多少人的生命,下次他們試圖奪走我時,我冒著生命危險。 それ でも とうとう こんなに なって しまった 。 然而,最後卻變成這樣了。 ああ なんにも あて に なら ない 。 Yeah, we don't know what to expect. 啊,我不能依賴任何東西。 どうして わたし は わたし の からだ を 、 だまって い たち に くれて やら なかったろう 。 Why didn't I just sit back and let them have my body? 我為什麼不把我的身體給你呢? そしたら いたち も 一 日 生きのびたろう に 。 そ したら|||ひと|ひ|いきのびたろう| 那我們也能多活一天。 どうか 神さま 。 |かみさま 請上帝。 私 の 心 を ごらん ください 。 わたくし||こころ||| 請看看我的內心。 こんなに むなしく 命 を すて ず 、 どうか この 次に は 、 まこと の みんな の 幸い の ため に 私 の からだ を お つかい ください 。 ||いのち||||||つぎに||||||さいわい||||わたくし|||||| 拜託,不要這樣白白地浪費我的生命,請利用我的身體來造福所有人。 って 言った と いう の 。 |いった||| I was told that the woman was a "good person" and that she was a "good person. 他就是這麼說的。

そ したら いつか 蠍 は じぶん の からだ が 、 まっ赤 な うつくしい 火 に なって 燃えて 、 よる の やみ を 照らして いる の を 見たって 。 |||さそり||||||まっ あか|||ひ|||もえて|||||てらして||||みた って 然後有一天,蝎子看到自己的身體像一團美麗的紅色火焰一樣燃燒,照亮了黑暗。 いま でも 燃えて るって お 父さん おっしゃった わ 。 ||もえて|る って||とうさん|| 爸爸說還在燃燒。 ほんとうに あの 火 、 それ だ わ 」 ||ひ||| 確實是那場火。”

「 そうだ 。 そう だ 「 就是這樣 。 見た まえ 。 みた| 看它。 そこら の 三角 標 は ちょうど さそり の 形 に ならんで いる よ 」 ||さんかく|しるべ|||||かた|||| 那邊的三角形標記排列成蝎子形狀。”

ジョバンニ は まったく その 大きな 火 の 向こう に 三 つ の 三角 標 が 、 ちょうど さそり の 腕 の ように 、 こっち に 五 つ の 三角 標 が さそり の 尾 や かぎ の ように ならんで いる の を 見ました 。 ||||おおきな|ひ||むこう||みっ|||さんかく|しるべ|||||うで|||||いつ|||さんかく|しるべ||||お|||||||||み ました Giovanni saw three triangles on the other side of the great fire, just like the arms of a scorpion, and five triangles on this side, like the tail or the crook of a scorpion. 喬凡尼看到,在大火的另一邊,三個三角形符號排列得像蝎子的手臂,五個三角形符號排列得像蝎子的尾巴和鉤子。 そして ほんとうに その まっ赤 な うつくしい さそり の 火 は 音 なく あかるく あかるく 燃えた のです 。 |||まっ あか|||||ひ||おと||||もえた| 確實,美麗的紅蠍火靜靜地、明亮地燃燒著。 その 火 が だんだん うしろ の 方 に なる に つれて 、 みんな は なんとも 言え ず にぎやかな 、 さまざまの 楽 の 音 や 草花 の におい の ような もの 、 口笛 や 人々 の ざ わざ わ 言う 声 やら を 聞きました 。 |ひ|||||かた||||||||いえ||||がく||おと||くさばな||||||くちぶえ||ひとびと|||||いう|こえ|||きき ました As the fire grew further and further toward the rear, everyone heard the indescribable sounds of music, the smell of flowers and grass, whistling and the murmuring of people. 隨著火勢在後面越移越遠,他們都聽到了難以形容的響亮的音樂聲、花香、口哨聲、以及人們的呢喃。 それ は もう じき ちかく に 町 か 何 か が あって 、 そこ に お祭り で も ある と いう ような 気 が する のでした 。 ||||||まち||なん||||||おまつり|||||||き||| It seemed as if there was a town or something close by, and that there would be a festival there. 感覺附近好像有個城鎮什麼的,而且那裡正在舉辦節慶。

「 ケンタウル 露 を ふらせ 」 いきなり いま まで 眠って いた ジョバンニ の となり の 男の子 が 向こう の 窓 を 見 ながら 叫んで いました 。 |ろ||||||ねむって||||||おとこのこ||むこう||まど||み||さけんで|い ました 「半人馬,讓露水落下吧!」突然,喬瓦尼身邊一直睡著的男孩看著窗外喊道。 ああ そこ に は クリスマストリイ の ように まっ青 な 唐 檜 か もみの 木 が たって 、 その 中 に は たくさんの たくさんの 豆 電灯 が まるで 千 の 蛍 で も 集まった ように ついて いました 。 |||||||まっ あお||とう|ひのき||もみ の|き||||なか|||||まめ|でんとう|||せん||ほたる|||あつまった|||い ました There was a Christmas tree as blue as a candy cane, and inside it were many, many, many bean lamps lit as if they were a thousand fireflies. Там стояла голубая, как леденец, елка, внутри которой было много-много ламп-бобов, словно тысячи светлячков. 啊,有一棵像聖誕樹一樣翠綠的檜樹,裡面有很多很多的小電燈,像一千隻螢火蟲一樣亮起來。 「 ああ 、 そう だ 、 今夜 ケンタウル 祭 》 だ ねえ 」 |||こんや||さい||

「 ああ 、 ここ は ケンタウル の 村 だ よ 」 カムパネルラ が すぐ 言いました 。 |||||むら||||||いい ました 「哦,這是一個半人馬村莊。」康帕內拉立刻說。 ( 此の 間 原稿 なし ) この|あいだ|げんこう| (No manuscripts in the meantime) (這段時間沒有稿件)

「 ボール 投げ なら 僕 決して はずさ ない 」 男の子 が 大いばり で 言いました 。 ぼーる|なげ||ぼく|けっして|||おとこのこ||だい いばり||いい ました I'll never take off the ball," the boy said with great enthusiasm. 「如果你扔一個球,我永遠不會錯過它,」男孩非常自豪地說。 「 もう じき サウザンクロス です 。 おりる したく を して ください 」 青年 が みんな に 言いました 。 |||||せいねん||||いい ました 「 僕 、 も 少し 汽車 に 乗って る んだ よ 」 男の子 が 言いました 。 ぼく||すこし|きしゃ||のって||||おとこのこ||いい ました 「我也坐火車有一段時間了,」男孩說。 カムパネルラ の となり の 女の子 は そわそわ 立って したく を はじめました けれども やっぱり ジョバンニ たち と わかれ たく ない ような ようす でした 。 ||||おんなのこ|||たって|||はじめ ました||||||||||| 康帕內拉身邊的女孩緊張地站了起來,開始想做點什麼,但她似乎不想與喬瓦尼和他的朋友分開。 「 ここ で おり なけ ぁ いけない のです 」 青年 は きちっと 口 を 結んで 男の子 を 見おろし ながら 言いました 。 |||||||せいねん|||くち||むすんで|おとこのこ||みおろし||いい ました I'm afraid you'll have to leave here," the young man said, looking down at the boy with a primly puckered mouth. 「我必須留在這裡,」年輕人說,他的嘴緊緊地抿著,低頭看著男孩。 「 厭 だい 。 いと| I'm not interested. 「我恨它。 僕 もう 少し 汽車 へ 乗って から 行く ん だい 」 ぼく||すこし|きしゃ||のって||いく|| I'm going to take the train for a bit longer before I go." 我要再坐一會兒火車,然後就走。”

ジョバンニ が こらえ かねて 言いました 。 ||||いい ました Giovanni said, in a chorus of laughter, "I'm sorry, I'm sorry. 喬瓦尼忍不住說。 「 僕たち と いっしょに 乗って 行こう 。 ぼくたち|||のって|いこう Let's go for a ride with us. “跟我們一起騎吧。” 僕たち どこ まで だって 行ける 切符 持って る んだ 」 ぼくたち||||いける|きっぷ|もって|| We have a ticket to go wherever we want." 我們有一張可以帶我們去任何地方的車票。”

「 だけど あたし たち 、 もう ここ で 降り なけ ぁ いけない の よ 。 ||||||ふり||||| “但我們現在必須離開這裡。” ここ 天上 へ 行く と こ なんだ から 」 |てんじょう||いく|||| This is the place to go to heaven." 這就是我們去天堂的地方。”

女の子 が さびし そうに 言いました 。 おんなのこ|||そう に|いい ました 「 天上 へ なんか 行か なく たって いい じゃ ない か 。 てんじょう|||いか|||||| I don't think it's necessary to go to the top of the world. 「我不用去天堂不是很好嗎? ぼくたち ここ で 天上 より も もっと いい とこ を こ さえ なけ ぁ いけないって 僕 の 先生 が 言った よ 」 「 だって おっか さん も 行って らっしゃる し 、 それ に 神さま が おっしゃる んだ わ 」 「 そんな 神さま うそ の 神さま だい 」 「 あなた の 神さま うそ の 神さま よ 」 「 そう じゃ ない よ 」 「 あなた の 神さまって どんな 神さま です か 」 青年 は 笑い ながら 言いました 。 |||てんじょう|||||||||||いけない って|ぼく||せんせい||いった|||お っか|||おこなって|||||かみさま||||||かみさま|||かみさま||||かみさま|||かみさま||||||||かみさま って||かみさま|||せいねん||わらい||いい ました My teacher told me that we have to do better than just staying here in heaven," he said with a laugh, "because my mother goes there and God says so. The young man laughed and said, "What kind of God is yours? 我的老師說,「我們必須在這裡嘗試比在天堂更好的東西。」「因為老人也走了,上帝告訴我們這一點。」「上帝是一個謊言。」「 「你們的神是假神。 」 「那不是真的。」 「你們的神是什麼樣的神?」年輕人笑著說。 「 ぼく ほんとう は よく 知りません 。 ||||しり ませ ん 「我真的知道的不多。 けれども そんな ん で なし に 、 ほんとうの たった 一 人 の 神さま です 」 ||||||||ひと|じん||かみさま| But there is no such thing, there is really only one God. 然而,只有一位真神。”

「 ほんとうの 神さま は もちろん たった 一 人 です 」 |かみさま||||ひと|じん| "Of course, there is only one true god." “當然,只有一位真神。”

「 ああ 、 そんな ん で なし に 、 たった ひと り の ほんとうの ほんとうの 神さま です 」 ||||||||||||かみさま| "Ah, there is no such thing, but only one true and real God." 「啊,不是這樣的,只有一位真神。」

「 だから そうじゃ ありません か 。 |そう じゃ|あり ませ ん| "So there is no such thing. 「那麼,不是這樣嗎? わたくし は あなた 方 が いまに その ほんとうの 神さま の 前 に 、 わたくし たち と お 会い に なる こと を 祈ります 」 青年 は つつましく 両手 を 組みました 。 |||かた|||||かみさま||ぜん||||||あい|||||いのり ます|せいねん|||りょうて||くみ ました I pray that you will meet us now in the presence of the true God. 我祈求你現在能在真神面前見到我們。」年輕人謙卑地合十雙手。 女の子 も ちょうど その 通り に しました 。 おんなのこ||||とおり||し ました The girls did just that. 女孩就是這麼做的。 みんな ほんとうに 別れ が 惜し そうで 、 その 顔 いろ も 少し 青ざめて 見えました 。 ||わかれ||おし|そう で||かお|||すこし|あおざめて|みえ ました 每個人都顯得非常難過,臉色都顯得有些蒼白。 ジョバンニ は あぶなく 声 を あげて 泣き出そう と しました 。 |||こえ|||なきだそう||し ました Giovanni tried to fall over and cry out. 喬瓦尼尖叫著想要哭。 「 さあ もう したく は いい んです か 。 I'm not sure if I want to do it anymore. “現在,你確定現在就這麼做嗎?” じき サウザンクロス です から 」 即將成為南十字星。”

ああ その とき でした 。 Oh, it was then. 啊,就是那時。 見え ない 天の川 の ず うっと 川下 に 青 や 橙 や 、 もう あらゆる 光 で ちりばめられた 十字架 が 、 まるで 一 本 の 木 と いう ふうに 川 の 中 から 立って かがやき 、 その 上 に は 青じろい 雲 が まるい 環 に なって 後光 の ように かかって いる のでした 。 みえ||あまのがわ|||う っと|かわしも||あお||だいだい||||ひかり||ちりばめ られた|じゅうじか|||ひと|ほん||き||||かわ||なか||たって|||うえ|||あおじろい|くも|||かん|||ごこう||||| Far below the invisible Milky Way, a cross studded with blue, orange and every other kind of light, stood like a tree, shimmering in the river, and above it, a halo of blue clouds formed a round ring. 在看不見的銀河的下游深處,一個佈滿藍色、橙色等各種光芒的十字架從河中央矗立起來,像一棵樹一樣閃閃發光,而它的上方則是一圈藍白色的雲。如此明亮,就像一個光環一樣懸掛著。 汽車 の 中 が まるで ざわざわ しました 。 きしゃ||なか|||ざ わざ わ| The train was full of excitement. 火車內真的很熱鬧。 みんな あの 北 の 十字 の とき の ように まっすぐに 立って お 祈り を はじめました 。 ||きた||じゅうじ||||||たって||いのり||はじめ ました Everyone stood up straight and began to pray, just as they did at the time of the Northern Cross. 每個人都站直並開始祈禱,就像他們在北十字星所做的那樣。 あっち に も こっち に も 子供 が 瓜 に 飛びついた とき の ような よろこび の 声 や 、 なんとも 言いよう ない 深い つつましい ためいき の 音 ばかり きこえました 。 あっ ち||||||こども||うり||とびついた||||||こえ|||いいよう||ふかい||||おと||きこえ ました I could hear the sound of a child's rejoicing as if it had jumped on a gourd, as well as deep, humming sighs. 這裡只聽見孩子們跳瓜一樣的歡呼聲,還有難以形容的低沉卑微的心跳聲。 そして だんだん 十字架 は 窓 の 正面 に なり 、 あの りんご の 肉 の ような 青じろい 環 の 雲 も 、 ゆるやかに ゆるやかに めぐって いる の が 見えました 。 ||じゅうじか||まど||しょうめん||||||にく|||あおじろい|かん||くも||||||||みえ ました 漸漸地,十字架就在窗前,我可以看到一團藍色的光環,像蘋果的果肉一樣,慢慢地移動。 「 ハレルヤ 、 ハレルヤ 」 明るく たのしく みんな の 声 は ひびき 、 みんな は その そら の 遠く から 、 つめたい そら の 遠く から 、 すきとおった なんとも 言え ず さわやかな ラッパ の 声 を ききました 。 ||あかるく||||こえ||||||||とおく|||||とおく||||いえ|||||こえ||きき ました Hallelujah, hallelujah," they joyously and cheerfully shouted, and from far away in the sky, far away in the freezing cold sky, they heard a clear and clear, yet unmistakable, sound of a trumpet. 「哈利路亞,哈利路亞!」眾人的聲音明亮而歡快,從遠方冰冷的天空中,眾人都聽到了那清亮無比、難以形容的清爽喇叭聲。 そして たくさんの シグナル や 電灯 の 灯 の なか を 汽車 は だんだん ゆるやかに なり 、 とうとう 十字架 の ちょうど ま 向かい に 行って すっかり とまりました 。 ||しぐなる||でんとう||とう||||きしゃ||||||じゅうじか||||むかい||おこなって||とまり ました The train gradually slowed down amidst the many signals and lights, and finally came to a complete stop right across from the cross. 火車在眾多燈光和燈光的照耀下緩緩前行,直到在十字路口對面完全停了下來。 「 さあ 、 おりる んです よ 」 青年 は 男の子 の 手 を ひき 姉 は 互いに えり や 肩 を なおして やって だんだん 向こう の 出口 の 方 へ 歩き 出しました 。 ||||せいねん||おとこのこ||て|||あね||たがいに|||かた||なお して|||むこう||でぐち||かた||あるき|だし ました The young man took the boy by the hand and the two sisters adjusted each other's fur and shoulders, and gradually walked toward the other exit. 「走吧,我們下去。」青年牽著男孩的手,姊姊互相扶著肩膀,漸漸地開始往另一邊的出口走去。 「 じゃ さよなら 」 女の子 が ふりかえって 二 人 に 言いました 。 ||おんなのこ|||ふた|じん||いい ました The girl turned around and said to them, "Well, goodbye. 「 さよなら 」 ジョバンニ は まるで 泣き出したい の を こらえて おこった ように ぶっきらぼうに 言いました 。 ||||なきだし たい|||||||いい ました Good-bye," Giovanni said bluntly, as if he was trying to hold back tears. 「再見,」喬凡尼直言不諱地說,彷彿他努力忍住淚水。 女の子 は いかにも つら そうに 眼 を 大きく して 、 も 一 度 こっち を ふりかえって 、 それ から あと は もう だまって 出て 行って しまいました 。 おんなのこ||||そう に|がん||おおきく|||ひと|たび||||||||||でて|おこなって|しまい ました The girl's eyes grew wide with pain, she turned around once more, and then simply walked out. 女孩痛苦地睜大眼睛,回頭看了我一眼,然後一言不發地離開了。 汽車 の 中 は もう 半分 以上 も 空いて しまい にわかに がらんとして 、 さびしく なり 風 が いっぱいに 吹き込みました 。 きしゃ||なか|||はんぶん|いじょう||あいて|||がらんと して|||かぜ|||ふきこみ ました 車廂內原本已經空了大半,突然間變得空蕩蕩的,冷清的,一陣強風吹了進來。 そして 見て いる と みんな は つつましく 列 を 組んで 、 あの 十字架 の 前 の 天の川 の なぎさ に ひざまずいて いました 。 |みて||||||れつ||くんで||じゅうじか||ぜん||あまのがわ||なぎ さ|||い ました And as I watched, they stood in lines humbly, kneeling on the edge of the Milky Way in front of that cross. 當我看到時,他們都排成一排,跪在銀河系的乳白色海水中的十字架前。 そして その 見え ない 天の川 の 水 を わたって 、 ひと り の こうごうしい 白 いきもの の 人 が 手 を のばして こっち へ 来る の を 二 人 は 見ました 。 ||みえ||あまのがわ||すい|||||||しろ|||じん||て|||||くる|||ふた|じん||み ました Then they saw a great white creature reach across the invisible waters of the Milky Way and come towards them. 然後,越過看不見的銀河水域,兩人看到了一個美麗的白色生物,張開雙臂向他們走來。 けれども その とき は もう 硝子 の 呼び子 は 鳴らさ れ 汽車 は うごきだし 、 と 思う うち に 銀 いろ の 霧 が 川下 の 方 から 、 すうっと 流れて 来て 、 もう そっち は 何も 見え なく なりました 。 |||||がらす||よびこ||ならさ||きしゃ||||おもう|||ぎん|||きり||かわしも||かた||すう っと|ながれて|きて||||なにも|みえ||なり ました But by then, the glass beeper was already ringing, the train was moving, and a silvery mist came swirling downstream, and I couldn't see anything anymore. 但這時,玻璃鈴已經響了,火車已經開動了,還沒等我想出什麼來,一股銀色的霧氣從下游飄了過來,我已經看不到那裡的任何東西了。 ただ たくさんの くるみ の 木 が 葉 を さんさんと 光らして その 霧 の 中 に 立ち 、 金 の 円 光 を もった 電気 りす が 可愛い 顔 を その 中 から ちらちら のぞいて いる だけ でした 。 ||||き||は|||ひからして||きり||なか||たち|きむ||えん|ひかり|||でんき|||かわいい|かお|||なか|||||| Only many walnut trees stood in the mist with their leaves shining brightly, and an electric squirrel with a golden halo peeked out of the mist, its pretty face glimmering. 只有幾棵核桃樹矗立在霧氣中,葉子閃閃發亮,還有一隻帶著金色光環的電松鼠,露出可愛的臉蛋。

その とき 、 すうっと 霧 が はれかかりました 。 ||すう っと|きり||はれ かかりました Then, with a nod, the fog lifted. 就在這時,霧氣突然散去。 どこ か へ 行く 街道 らしく 小さな 電灯 の 一 列 に ついた 通り が ありました 。 |||いく|かいどう||ちいさな|でんとう||ひと|れつ|||とおり||あり ました There was a street with a row of small electric lamps that looked like a road to somewhere. 有一條街道,有一排小電燈,就像一條通往某個地方的高速公路。 それ は しばらく 線路 に 沿って 進んで いました 。 |||せんろ||そって|すすんで|い ました 它沿著鐵軌繼續行駛了一段時間。 そして 二 人 が その あかし の 前 を 通って 行く とき は 、 その 小さな 豆 いろ の 火 は ちょうど あいさつ でも する ように ぽかっと 消え 、 二 人 が 過ぎて 行く とき また 点く のでした 。 |ふた|じん|||||ぜん||かよって|いく||||ちいさな|まめ|||ひ|||||||ぽか っと|きえ|ふた|じん||すぎて|いく|||つく| And as they passed by, the little bean-colored fire would go out and come back on as they passed by, just like a greeting. 當他們經過證詞時,豆色的小火就會熄滅,就像他們打招呼時所做的那樣,然後當他們經過時它會再次點亮。 ふりかえって 見る と 、 さっき の 十字架 は すっかり 小さく なって しまい 、 ほんとうに もう そのまま 胸 に も つるさ れ そうに なり 、 さっき の 女の子 や 青年 たち が その 前 の 白い 渚 に まだ ひざまずいて いる の か 、 それとも どこ か 方角 も わから ない その 天上 へ 行った の か 、 ぼんやり して 見分けられません でした 。 |みる||||じゅうじか|||ちいさく||||||むね|||||そう に||||おんなのこ||せいねん||||ぜん||しろい|なぎさ||||||||||ほうがく|||||てんじょう||おこなった|||||みわけ られ ませ ん| 當我回頭一看,十字架已經變得很小,幾乎掛在我的胸前,我不知道先前的女孩和年輕人是否還跪在它前面的白色海岸上,或者在哪裡。模糊得我分不清是不是去了那個我不知道方向的天堂。 ジョバンニ は 、 ああ 、 と 深く 息 しました 。 ||||ふかく|いき|し ました 喬瓦尼深吸了一口氣。 「 カムパネルラ 、 また 僕たち 二 人きり に なった ねえ 、 どこまでも どこまでも いっしょに 行こう 。 ||ぼくたち|ふた|ひときり|||||||いこう I'm going with you forever and ever. “康帕內拉,現在我們又單獨在一起了,我們去哪裡都一起吧。” 僕 は もう 、 あの さそり の ように 、 ほんとうに みんな の 幸い の ため ならば 僕 の からだ なんか 百 ぺん 灼 いて も かまわ ない 」 ぼく||||||||||さいわい||||ぼく||||ひゃく||しゃく|||| I would burn my body a hundred times if I really wanted to make everyone happy, just like that scorpion. 就像那隻蝎子一樣,我不在乎自己的身體燃燒一百分,只要真的是為了大家好。”

「 うん 。 僕 だって そう だ 」 カムパネルラ の 眼 に は きれいな 涙 が うかんで いました 。 ぼく||||||がん||||なみだ|||い ました I am the same way," he said with beautiful tears in his eyes. 我也是。」坎帕內拉的眼睛裡充滿了美麗的淚水。 「 けれども ほんとうの さいわい は いったい なんだろう 」 "But what in the world is the true joy?" “但是什麼才是真正的幸福呢?”

ジョバンニ が 言いました 。 ||いい ました 喬瓦尼說。 「 僕 わから ない 」 カムパネルラ が ぼんやり 言いました 。 ぼく||||||いい ました 「我不明白,」康帕內拉含糊地說。 「 僕たち しっかり やろう ねえ 」 ジョバンニ が 胸 いっぱい 新しい 力 が 湧く ように 、 ふう と 息 を し ながら 言いました 。 ぼくたち||||||むね||あたらしい|ちから||わく||||いき||||いい ました Giovanni puffed and puffed as if his heart was full of new energy. 「讓我們盡力而為吧,」喬瓦尼深吸一口氣說道,彷彿一股新的能量正在他的胸中升起。 「 あ 、 あす こ 石炭 袋 だ よ 。 |||せきたん|ふくろ|| “啊,明天有一袋煤。” そら の 孔 だ よ 」 カムパネルラ が 少し そっち を 避ける ように し ながら 天の川 の ひと とこ を 指さしました 。 ||あな|||||すこし|||さける||||あまのがわ|||||ゆびさし ました It's a hole in the sky," he said, pointing to a part of the Milky Way while slightly averting his gaze. 就是天上的那個洞。」康帕內拉指著銀河系的一部分,試圖稍微避開一點。 ジョバンニ は そっち を 見て 、 まるで ぎくっとして しまいました 。 ||||みて||ぎ くっと して|しまい ました Giovanni looked at him and was almost shocked. 喬瓦尼看著他,幾乎驚呆了。 天の川 の 一 とこ に 大きな まっくらな 孔 が 、 どおんと あいて いる のです 。 あまのがわ||ひと|||おおきな||あな||ど おん と||| There is a big, dark hole just rattling around at one end of the Milky Way. 銀河系的一部分有一個巨大的黑洞。 その 底 が どれほど 深い か 、 その 奥 に 何 が ある か 、 いくら 眼 を こすって のぞいて も なんにも 見え ず 、 ただ 眼 が しんしんと 痛む のでした 。 |そこ|||ふかい|||おく||なん|||||がん||||||みえ|||がん|||いたむ| 無論我揉多深的眼睛,我都看不到任何東西,不知道它到底有多深,那裡有什麼。我的眼睛很痛。 ジョバンニ が 言いました 。 ||いい ました 喬瓦尼說。 「 僕 もう あんな 大きな やみ の 中 だって こわく ない 。 ぼく|||おおきな|||なか||| I am no longer afraid of being in such a big darkness. 「我不再害怕置身於那片巨大的黑暗之中。 きっと みんな の ほんとうの さいわい を さがし に 行く 。 ||||||||いく 我確信我會去尋找每個人真正的幸福。 どこまでも どこまでも 僕たち いっしょに 進んで 行こう 」 ||ぼくたち||すすんで|いこう 讓我們一起前進,無論我們走到哪裡。”

「 ああ きっと 行く よ 。 ||いく| ああ 、 あす この 野原 は なんて きれいだろう 。 |||のはら||| Ah, what a beautiful field this morning. 哦,明天這片田野將是多麼美麗啊! みんな 集まって る ねえ 。 |あつまって|| 大家都聚集在這裡了。 あす こ が ほんとうの 天上 な んだ 。 ||||てんじょう|| 明天將是真正的天堂。 あっ、 あす こ に いる の は ぼく の お母さん だ よ 」 カムパネルラ は にわかに 窓 の 遠く に 見える きれいな 野原 を 指して 叫びました 。 |||||||||お かあさん||||||まど||とおく||みえる||のはら||さして|さけび ました 「哦,我媽媽明天會在這裡,」康帕內拉喊道,突然指著窗外遠處美麗的田野。 ジョバンニ も そっち を 見ました けれども 、 そこ は ぼんやり 白く けむって いる ばかり 、 どうしても カムパネルラ が 言った ように 思わ れません でした 。 ||||み ました|||||しろく|||||||いった||おもわ|れ ませ ん| Giovanni also looked in that direction, but it was a hazy white haze, so he could not believe that this was what Campanella had said. 喬凡尼也望向那裡,但那隻是一團模糊的白煙,他不由想起了康帕內拉所說的話。 なんとも 言え ず さびしい 気 が して 、 ぼんやり そっち を 見て いましたら 、 向こう の 河 岸 に 二 本 の 電信 ば しらが 、 ちょうど 両方 から 腕 を 組んだ ように 赤い 腕 木 を つらねて 立って いました 。 |いえ|||き||||||みて|いま したら|むこう||かわ|きし||ふた|ほん||でんしん||||りょうほう||うで||くんだ||あかい|うで|き|||たって|い ました Feeling inexplicably lonely, I glanced over and saw two telegraph wires on the other side of the riverbank, both standing arm in arm, each with a red barbed wire. 我不禁感到孤獨,心不在焉地向那邊望去,只見河對岸矗立著兩座電報塔,由一棵紅臂樹串成一串,彷彿雙臂相連。 「 カムパネルラ 、 僕たち いっしょに 行こう ねえ 」 ジョバンニ が こう 言い ながら ふりかえって 見ましたら 、 その いま まで カムパネルラ の すわって いた 席 に 、 もう カムパネルラ の 形 は 見え ず 、 ただ 黒い びろうど ばかり ひかって いました 。 |ぼくたち||いこう|||||いい|||み ましたら||||||||せき|||||かた||みえ|||くろい|び ろう ど|||い ました Giovanni turned around and saw that the seat where he had been sitting was no longer occupied by him. 「康帕內拉,我們一起走吧。」喬瓦尼說道,回頭一看,康帕內拉原來坐的座位上已經看不到康帕內拉了,只有一朵黑色的睡蓮葉。 ジョバンニ は まるで 鉄砲 丸 の ように 立ちあがりました 。 |||てっぽう|まる|||たちあがり ました 喬瓦尼像獵槍一樣站了起來。 そして 誰 に も 聞こえ ない ように 窓 の 外 へ から だ を 乗り出して 、 力いっぱい はげしく 胸 を うって 叫び 、 それ から もう 咽喉 いっぱい 泣きだしました 。 |だれ|||きこえ|||まど||がい|||||のりだして|ちからいっぱい||むね|||さけび||||むせ のど||なきだし ました 然後,為了沒人聽得到我的聲音,我把身體探出窗外,用盡全身力氣拍著胸口尖叫,然後我就放聲大哭起來。