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青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る, 青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 4

青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 4

理 央 と 別れた あと 、 雪 の 舞う 帰り道 を 咲 太 は 少し 急いだ 。 午後 五 時 まで バイト を して 、 六 時 が デート の 待ち合わせ 時刻 。 理 央 と 立ち話 を した 分 、 時間 の 余裕 は なく なって いた 。

咲 太 が 家 に 着いた の は 五 時 二十五 分 。

玄関 で 出迎えて くれた なす のに 、 まずは 夜 の 分 の カリカリ を あげる 。 その あと で 、 咲 太 は 自室 に 入って 制服 を 脱ぎ 拾 て た 。

一 度 、 靴下 だけ の 格好に なる 。 新しい パンツ に は き替えて 、 T シャツ を 着て から セーター を かぶった 。 最後に コート を 羽織る と 、「 なす の 、 また 留守番 頼む な 」 と 声 を かけて 玄 閲 に 急ぐ 。

カリカリ に 夢中の なす の から 返事 は なかった ので 、 咲 太 は 見送り なし で 家 を 出た 。

つい さっき 通った ばかりの 道 を 遡る ルート で 藤沢 駅 に 戻って いく 。 雪 の 勢い は 収まる どころ か 増して いた 。

風 も 少し 出て きて 、 雪 が 左右 に 流されて いる 。 傘 だけ で 雪 を 防ぐ の は 難しく 、 腰 から 下 に は 雪 の 結晶 が 張り付いて きた 。 時々 払って おか ない と 、 服 が 真っ白に なる 。

外 は そんな 状況 だった ので 、 駅 に 着いた とき に は 思った より も 時間 が 経って いた 。

約束 の 時間 に 遅刻 する ほど で は ない が 、 有名人 の 麻衣 を 長く 待た せる わけに は いか ない 。 できる だけ 早 めに 行って 待って おき だ かった 。

咲 太 が 小田急 江ノ島 線 の ホーム に 入る と 、 乗ろう と 思って いた 午後 五 時 四十一 分 発 の 片瀬 江ノ島 行き の 電車 は 発車 ベル を 嗚 ら した 。

「 それ 、 乗ります ー 」

急いで 電車 に 乗り込む 。 一 番 後ろ の 車両 。

少し 遅れて ドア が 閉まり 、 電車 は 走り出した 。 藤沢 駅 の 周辺 で は 駅 ビル や 背 の 高い マンション が 見えて いた が 、 すぐに 景色 は 落ち着いた 住宅 街 に 姿 を 変える 。 線路 沿い に 並ぶ 一戸建て の 屋根 は どこ も 雪 で 白く なって いた 。 見慣れた 風景 が 見慣れない もの に 変わって いる 。

そうした 街並み を 、 咲 太 は 先頭 車両 の 方 に 移動 し ながら 横目 に 映して いた 。 終点 の 片瀬 江ノ島 駅 の 改札 は 先頭 車両 側 に ある のだ 。

雪 の 中 でも 順調に 走行 する 電車 は 、 本鵠沼 、 鵠沼 海岸 の 両 駅 に 停車 した 後 、 定刻 の 五 時 四十八 分 に 終点 の 片瀬 江ノ島 駅 に 到着 した 。

ドア が 開く の を 待って ホーム に 降りる 。 傘 の 花 が いく つ も 咲いて いる の を 見て 、 今さら の よう に 他 に も 多く の 乗客 が いた こと に 気づいた 。 半分 は カップル だ 。 彼 氏 が 持った 傘 の 下 に 彼女 たち が 潜り込んで いる 。

あいにくの 天気 も 恋人 たち に は 関係ない 。 むしろ 、 雪 を 楽しんで いる 。 今日 は 特別 。 クリスマス で 、 雪 で 、 楽しい デート だから 。 駅 全体 が どこ か 浮かれた 雰囲気 に 包まれて いた 。

そして 、 その 空気 は 、 改札 を 出て も 変わら なかった 。

駅前 の ちょっと した 広場 が 、 恋人 たち の 待ち合わせ スポット と 化して いる 。 ざっと 見た 感じ で 、 三 、 四十人 は いる だろう か 。 二十 歳 前後 の 若い 男女 が 、 それぞれ に 恋人 の 到着 を 待って いる 。

改札 から 出て きた 相手 を 見つけて 笑顔 で 手 を 振って いる人 も いれば 、 お互いに 駆け寄って 足 を 滑らせる カップル も いた 。

まだ 待ち合わせ 相手 が 現れ ない人 は スマホ を いじって 、 待ちぼうけ だ 。

咲 太 も その 群れ に 仲間 入り しよう と 思い 、 傘 を 差して 、 竜宮 城 みたいな 駅舎 の 屋根 から 一 歩 踏み出した 。

麻衣 が やってくる の は 次の 電車 だろう か 。 このあと に 来る 電車 で 、 六 時 前 に 到着 する の は その 一 本 だけ な ので 、 恐らく 間違いない と 思う 。 麻衣 が 遅刻 を する と は 考え にくい から 。

到着 まで あと 七 分 。 ぼ ーっと 待って いよう と 思った 咲 太 だった が 、 その 必要 は すぐに なく なった 。 駅前 で 待つ人 の 中 に 、 咲 太 は 待ち合わせ 相手 を 見つけた のだ 。

「 あ 」

と 、 思わず 声 が もれる 。

改札 を 出た ほぼ 正面 。 相手 の 到着 ま 待つ人 たち の ど真ん中 に 、 傘 を 差して 堂々と 立って いる の は 麻衣 だ 。

スリムな シルエット の ダウン コート の 中 に 、 ゆったり した ニット を 着込んで いる 。 下 は スキニー の パンツ スタイル 。 靴 は 雪 でも 安心 の ブーツ だ 。 桜島 麻衣 だ と ばれない よう に 、 キャスケット を 目深に かぶり 、 おしゃれな 丸い ふち の 伊達 眼鏡 も かけて いる 。 髪 は ゆるく 編み込んで 前 に 流し 、 マフラー を 口元 近く まで 自然な 感じ に 巻いて いた 。

全体 の まとまり と して は 、 大学生 の お 姉さん と いう 印象 。

普段 の 服装 や 、 ドラマ や 映画 、 ファッション 雑誌 の 衣装 と 比べる と 個性的 な 仕上がり に なって いる せい か 、 周囲 の人々 は 誰 も 麻衣 だ と 気づいて いない 。 疑って いる 様子 すら なかった 。 みんな 、 スマホ の 向こう に いる 待ち合わせ 相手 と メッセージ の やり取り を する の に 夢中だ 。

咲 太 が 麻衣 を じっと 見つめて いる と 、 ちらっと だけ こちら を 見た 。

確かに 目 が 合った 。

けれど 、 何事 も なかった か の よう に 、 麻衣 は 視線 を 逸ら す 。 ダウン コート の ポケット から スマホ を 出して 、 何 か 操作 して いた 。 う さ 耳 の カバー は 、 麻衣 が 使って いる もの と 同じだ 。

咲 太 は そんな 麻衣 に 近づいて いく と 、

「 麻衣 さん 、 な に してる の ?

と 、 小声 で 話しかけた 。

スマホ の 操作 を やめた 麻衣 が 咲 太 に 視線 を 戻して くる 。 なんだか 、 面白く な さ そうだった 。

「 もう しばらく 気づか ない と 思った のに 」

小さな ため 息 まで もらして 、 麻衣 が 不満 を ぶつけて くる 。

「 ここ に 来る まで 、 誰 に も 気づか れ なかった ん だから 」

自ら の 変装 を 咲 太 に 見せつける よう に 、「 どう ? 」 と 胸 を 張る 。

「 デート な のに 、 スカート じゃ なくて ガッカリ です 」

率直な 感想 を とりあえず 口 に する 。

「 かわいい 彼女 が 寒くて も いい わけ ?

麻衣 は ますます つまらな そうだ 。

「 その とき は 僕 が あたためて …… あだっ」

あげます 、 と 言う 前 に 、 麻衣 が ブーツ で 咲 太 の 足 を 踏んで きた 。

「 他 に 言う こと が ある でしょ 」

「 好き です 」

「 そう じゃ なくて 」

「 大好き です 」

「……」

麻衣 が 無言 で 目 を 細める 。

「 今日 も 僕 の 麻衣 さん は 最高に かわいい です 」

「 でも 、 スカート じゃない から 不満な ん でしょ ?

「 仕方ない ので 、 それ は 春 まで 我慢 します よ 。 我慢 した 分 、 麻衣 さん なら 僕 に ご 褒美 を くれる はずだ し 」

「 は いはい 、 あたたかく なったら スカート で デート して あげる わ よ 」

「 生 足 が いい なあ 」

「 日焼け し たくない から それ は ダメ 」

「 日焼け 止め なら 僕 が 途 ります よ 」

「 もっと 嫌に 決まってる でしょ 」

「 えー 、 そんな ぁ 」

「 なんで 今 の が いい 案 だ と 思った の よ 」

麻衣 は 日焼け を し ないで 済む 。 咲 太 は 生 足 を 視覚 的に も 、 感触 的に も 楽しめる 。 どう 考えて も 最高の アイディア だ 。

「 ほら 、 行 くわ よ 」

話 を 打ち切った 麻衣 は 、 自分 の 傘 を 閉じる と 、 当然の よう に 咲 太 の 傘 に 入って きた 。 咲 太 の 腕 に 手 を 回して くっついて くる 。 背 の 高い 麻衣 の 横顔 が すぐ 隣 に やってきた 。

「……」

「 なに よ ?

その 目 は 、「 文句 でも ある の ? 」 と語って いる 。

「 もっと 薄着 で くれば よかった 」

咲 太 は コート で 、 麻衣 は ダウン コート 。 これ で は 腕 に 押し付けられた 麻衣 の うれしい 感触 が 何も 伝わって こない 。

「 バカ 言ってない の 。 水族 館 に 行く ん でしょ 」

麻衣 に 促さ れ 、 雪 の 中 を ふた り で 歩き 出す 。 駅前 から 南 に 進んで いく 。 歩道 に は 、 海 沿い に 向かう カップル と 、 海 の 方 から 戻って くる カップル の 流れ が できて いた 。

「 そう 言えば 、 咲 太 」

「 な ん です か ?

「 さっき 、 どうして すぐに 私 だって 気づいた の よ 」

よほど 変装 に 自信 が あった の か 、 麻衣 は まだ 納得 して いない 様子 だ 。 麻衣 と して は 自分 に 気づか なかった 咲 太 を 、 あと で いじめて やろう と 思って いた のだろう 。 それ が 失敗 に 終わって しまい 、 不服な のだ 。

「 いつも 麻衣 さん の こと ばかり 考えてる から だ と 思います 」

それ 以外 の 理由 は 思いつか ない 。

「 他の こと も 少し は 考え なさい 」

「 たとえば ?

「 そう ね …… 将来 の こと と か ?

少し 考えて から 麻衣 は そんな 話 を 振って きた 。

「 結婚 したら 「 あなた 」って 呼んで ほしい か なあ 」

真っ先 に 思い浮かんだ の は 、 そんな 将来 だ 。

「 私 、 将来 の 夢 が サンタクロース の人 と は 結婚 しない から 」

「 えー 」

子供 に 夢 を 与える とても 素晴らしい 仕事 な のに ……。

それにしても 、 咲 太 が 何の 気 なし に 言った 将来 の 夢 を 、 麻衣 が 覚えて いる と は 驚き だ 。

「 じゃあ 、 トナカイ に なろう か な 」

「 咲 太 、 鞭 で 打た れる の 好き そうだ もん ね 」

「 僕 が 好きな の は 、 麻衣 さん の 愛 の 鞭 だけ で すって 」

「 なら 、 明日 から 勉強 の ノルマ 増やして あげる わ ね 。 咲 太 、 私 と 同じ 学 に 絶対 合格 する ん だ もの ね 」

にん まり と 麻衣 が 笑う 。 調子 に 乗って 余計な こと を 言って しまった らしい 。 ここ は 新しい 約束 を さ せられる 前 に 、 話 を 元 に 戻した 方 が よ さ そうだ 。

「 て か 、 麻衣 さん は 気づか れない 方 が よかった の ?

「 ん ?

「 自慢 の 変装 に 」

国道 134 号 線 に 出た ところ で 、 赤 信号 に 捕まる 。 海岸 線 を 走る 道路 は 、 今日 も 車 の 往来 が 盛んだ 。

信号 待ち の 間 は 暇な ので 、 咲 太 は 隣 に いる 麻衣 に を 向けた 。 すると 、 麻衣 も 咲 太 を 見て いた 。

「 もちろん 、 うれしかった わ よ 」

ぽつり と 麻衣 が もらした の は そんな 言葉 。 口元 を マフラー で 隠す よう に して 、 少し 俯いて いる 。 恥ずかし そうで 、 くすぐった そうで 、 言葉 通り うれし そうで も あった 。 それ ら 全部 を 混ぜ合わせる と 、 幸せ そうな 表情 が 出来上がる 。

そんな 麻衣 を 誰 より も 近く に 感じられる 咲 太 も 幸せだ 。 幸せ の 衝動 が 体 の 中 を 駆け上がって くる 。

「 あの さ 、 麻衣 さん 」

「 な 、 なに よ 」

「 抱きしめたい です 」

「 そういう の は 家 に 帰って から ね 」

「 え ? いい の ?

絶対 に 「 ダメ 」 と 言わ れる と 思った のに 。

「 ただし 、 それ 以上 は ダメ よ 」

喜び もつ か の 間 、 すぐに 麻衣 が 釘 を 刺して くる 。

「 パンツ なら ちゃんと 取り替えました よ ?

「 じゃあ 、 なおのこと ダメ 」

咲 太 を 見る 麻衣 の 目 は 冷ややかだ 。

「 勢い で チュー したい なあ 」

「 ライプ 終わったら 、 のど か 帰って くるって 言って たし …… 今日 は 我 悛 し なさい 」

「 もっと 雪 降って 、 電車 止まれば いい のに 」

そう すれば 、 都 内 の ライブハウス で クリスマス ライブ を やって いる のどか は 、 帰って こられ なく なる 。

デート の あと 、 咲 太 の 家 で 麻衣 が 振る舞って くれる 予定 の 手 料理 も 独り占め できる 。 なにより 、 麻衣 を 独り占め できる 。

「 絶対 に 帰って くるって 言って た から 、 あの 子 、 帰って くるわ よ 」

その とき の のどか の 様子 を 思い出して いる の か 、 麻衣 は 楽しげだ 。

「 豊浜 の やつ 、 いい加減 本気で 姉 離れ して くれない か なぁ 」

信号 が が 青 に 変わる 。

待って いた 歩行者 が 一斉に 渡り はじめた 。

咲 太 と 麻衣 も 前 を 歩く カップル に 合わせて 歩き 出す 。

道路 の 反対 側 から も 同じ よう に人々 が 信号 を 渡って くる 。 ふた つ の人 の 流れ は 、 真ん中 あたり で すれ違った 。 その 中 に 、 咲 太 は 赤い 傘 を 見つけた 。 持って いる の は たぶん 服装 から 察する に 中学生 くらい の 女の子 。 傘 の 陰 に 隠れて いた ので 、 顔 は 見え なかった 。 ただ 、 楽し そうに 笑って 、 両親 と 何 か 言葉 を 交わして いた 。

最初 は 少し 気 に なった 程度 。

倍 号 を 渡り 終えた とき に は 、 体 が 勝手に 反応 して 、 咲 太 は 振り返って いた 。 でも 、 人 の 流れ に 紛れて 、 赤い 傘 は もう 見えない 。

「 誰 かいた の ?」

横 から 麻衣 が 尋ねて くる 。

「 今 、 赤い 傘 の 子 が いて ……」

答えられた の は それ だけ 。

気 に なった 理由 を 説明 しよう に も 、 咲 太 自身 が 理由 を 見つけ ら ないで いた 。

「 知り合い だった と か ?」

「 そういう わけ じゃない ん です けど ……」

今度 も 、 咲 太 の 返事 は 曖昧だった 。

「 初恋 の人 が 、 赤い 傘 を 差して た と か ?」

少し からかう よう に 麻衣 が 言って くる 。

「 それ なら さすが に 覚えてますって 」

なんだっけ なあ 、 と 考え ながら 水族 館 の 方 へ と 歩いて いく 。

目的 地 である 新 江ノ島 水族 館 の 建物 は 、 もう 見えて いた 。

なおも 赤い 傘 の 女の子 の こと を 考えて いる と 、 突然 、 頬 を 引っ張られた 。麻衣 の 仕業 だ 。

理由 は 聞か なくて も わかる 。 デート の 最中 に 他の 誰 か に 気 を 取られて いる 咲 太 を 咎めて いる のだ 。

「 麻衣 さん 、 焼きもち ?」

「 そう よ 」

生意気 を 言う と 、 さらに 強く 頬 を 引っ張られた 。

「 いた たた たっ」

「 他 に 言う こと が ある でしょ 」

「 ごめんなさい 」

ここ は 素直に 謝って おく 。 すると 、 麻衣 は 咲 太 の 頬 から 手 を 離した 。その あと で 、 さっき より も 強く 咲 太 の 腕 に 抱きついて くる 。しがみ付いて いる 感じ だ 。

「 麻衣 さん が 彼女 で 、 僕 は 幸せだ なあ 」

頬 が 緩んで 落ちて いく 。

「 デレデレ しない の 」

「 麻衣 さん の せい だ よ ね ?」

「 離れて ほしい の ?」

「 ずっと このまま が いい です 」

そう 明確な 意思 表明 を した のに 、 水族 館 の 前 に 着く と 、 麻衣 は あっさり 咲 太から 離れて しまった 。

チケット 購入 の 列 に 並んで 、 ふた り 分 の 入場 券 を 買って 戻って くる 。

「 麻衣 さん 、 僕 の 話 を 聞いてました か ?」

「 帰り も 雪 が 降って たら 、 咲 太 の 傘 に 入って あげる 」

「 だったら 、 水族 館 は また 今度 に して 、 今日 は 散歩 が いい ん だけど 」

「 もう チケット 買った から ダメ よ 」

麻衣 が 入場 口 に 歩き 出す 。麻衣 の 足取り は 弾んで いる 。とても 楽し そうだ 。

「 麻衣 さん 、 水族 館 好きな ん だ 」

隣 に 追いついて 咲 太 が そう 声 を かける と 、

「 好き よ 。咲 太 と 一緒だ と なおさら ね 」

と 言って 、 咲 太 の 手 を 握って きた 。

こんな こと を 言われたら 、 水族 館 に 入ら ず に は いられない 。 頭 の 中 が 麻衣 で いっぱいに なる 。

だから 、 今 は ふた り の 時間 に 集中 する こと に した 。


青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 4 せいしゅん ぶた やろう は ホワイトクリスマス の ゆめ を みる Seishun Butajyauha wa White Christmas no Yume wo Yume 4 Seishun Butajyaku ha White Christmas no Yumeume wo Mamoru 4 Seishun Butajyauha wa White Christmas no Yume wo Yume 4 Seishun Butajyauha wa White Christmas no Yume wo Yume 4 Seishun Butajyauha wa White Christmas no Yume wo Yume 4 Seishun Butajyauha wa White Christmas no Yume wo Yume 4 一个年轻的猪杂种梦想着一个白色的圣诞节 4

理 央 と 別れた あと 、 雪 の 舞う 帰り道 を 咲 太 は 少し 急いだ 。 り|なかば||わかれた||ゆき||まう|かえりみち||さ|ふと||すこし|いそいだ 午後 五 時 まで バイト を して 、 六 時 が デート の 待ち合わせ 時刻 。 ごご|いつ|じ||ばいと|||むっ|じ||でーと||まちあわせ|じこく 理 央 と 立ち話 を した 分 、 時間 の 余裕 は なく なって いた 。 り|なかば||たちばなし|||ぶん|じかん||よゆう||||

咲 太 が 家 に 着いた の は 五 時 二十五 分 。 さ|ふと||いえ||ついた|||いつ|じ|にじゅうご|ぶん

玄関 で 出迎えて くれた なす のに 、 まずは 夜 の 分 の カリカリ を あげる 。 げんかん||でむかえて|||||よ||ぶん|||| その あと で 、 咲 太 は 自室 に 入って 制服 を 脱ぎ 拾 て た 。 |||さ|ふと||じしつ||はいって|せいふく||ぬぎ|ひろ||

一 度 、 靴下 だけ の 格好に なる 。 ひと|たび|くつした|||かっこうに| Once in the sock-only state. 新しい パンツ に は き替えて 、 T シャツ を 着て から セーター を かぶった 。 あたらしい|ぱんつ|||きがえて||しゃつ||きて||せーたー|| 最後に コート を 羽織る と 、「 なす の 、 また 留守番 頼む な 」 と 声 を かけて 玄 閲 に 急ぐ 。 さいごに|こーと||はおる|||||るすばん|たのむ|||こえ|||げん|えつ||いそぐ

カリカリ に 夢中の なす の から 返事 は なかった ので 、 咲 太 は 見送り なし で 家 を 出た 。 ||むちゅうの||||へんじ||||さ|ふと||みおくり|||いえ||でた

つい さっき 通った ばかりの 道 を 遡る ルート で 藤沢 駅 に 戻って いく 。 ||かよった||どう||さかのぼる|るーと||ふじさわ|えき||もどって| 雪 の 勢い は 収まる どころ か 増して いた 。 ゆき||いきおい||おさまる|||まして| The snow had increased, not decreased.

風 も 少し 出て きて 、 雪 が 左右 に 流されて いる 。 かぜ||すこし|でて||ゆき||さゆう||ながされて| The wind has picked up a little and the snow is drifting from side to side. 傘 だけ で 雪 を 防ぐ の は 難しく 、 腰 から 下 に は 雪 の 結晶 が 張り付いて きた 。 かさ|||ゆき||ふせぐ|||むずかしく|こし||した|||ゆき||けっしょう||はりついて| 時々 払って おか ない と 、 服 が 真っ白に なる 。 ときどき|はらって||||ふく||まっしろに| If you don't pay them from time to time, your clothes will turn white.

外 は そんな 状況 だった ので 、 駅 に 着いた とき に は 思った より も 時間 が 経って いた 。 がい|||じょうきょう|||えき||ついた||||おもった|||じかん||たって|

約束 の 時間 に 遅刻 する ほど で は ない が 、 有名人 の 麻衣 を 長く 待た せる わけに は いか ない 。 やくそく||じかん||ちこく|||||||ゆうめい じん||まい||ながく|また||||| Although she was not late for the appointment, she could not keep Mai, a celebrity, waiting too long. できる だけ 早 めに 行って 待って おき だ かった 。 ||はや||おこなって|まって||| It would have been better to go as early as possible and wait.

咲 太 が 小田急 江ノ島 線 の ホーム に 入る と 、 乗ろう と 思って いた 午後 五 時 四十一 分 発 の 片瀬 江ノ島 行き の 電車 は 発車 ベル を 嗚 ら した 。 さ|ふと||おだきゅう|えのしま|せん||ほーむ||はいる||のろう||おもって||ごご|いつ|じ|しじゅういち|ぶん|はつ||かたせ|えのしま|いき||でんしゃ||はっしゃ|べる||お||

「 それ 、 乗ります ー 」 |のります|-

急いで 電車 に 乗り込む 。 いそいで|でんしゃ||のりこむ 一 番 後ろ の 車両 。 ひと|ばん|うしろ||しゃりょう

少し 遅れて ドア が 閉まり 、 電車 は 走り出した 。 すこし|おくれて|どあ||しまり|でんしゃ||はしりだした 藤沢 駅 の 周辺 で は 駅 ビル や 背 の 高い マンション が 見えて いた が 、 すぐに 景色 は 落ち着いた 住宅 街 に 姿 を 変える 。 ふじさわ|えき||しゅうへん|||えき|びる||せ||たかい|まんしょん||みえて||||けしき||おちついた|じゅうたく|がい||すがた||かえる 線路 沿い に 並ぶ 一戸建て の 屋根 は どこ も 雪 で 白く なって いた 。 せんろ|ぞい||ならぶ|いっこだて||やね||||ゆき||しろく|| 見慣れた 風景 が 見慣れない もの に 変わって いる 。 みなれた|ふうけい||みなれ ない|||かわって|

そうした 街並み を 、 咲 太 は 先頭 車両 の 方 に 移動 し ながら 横目 に 映して いた 。 |まちなみ||さ|ふと||せんとう|しゃりょう||かた||いどう|||よこめ||うつして| 終点 の 片瀬 江ノ島 駅 の 改札 は 先頭 車両 側 に ある のだ 。 しゅうてん||かたせ|えのしま|えき||かいさつ||せんとう|しゃりょう|がわ|||

雪 の 中 でも 順調に 走行 する 電車 は 、 本鵠沼 、 鵠沼 海岸 の 両 駅 に 停車 した 後 、 定刻 の 五 時 四十八 分 に 終点 の 片瀬 江ノ島 駅 に 到着 した 。 ゆき||なか||じゅんちょうに|そうこう||でんしゃ||ほんくげぬま|くげぬま|かいがん||りょう|えき||ていしゃ||あと|ていこく||いつ|じ|しじゅうはち|ぶん||しゅうてん||かたせ|えのしま|えき||とうちゃく|

ドア が 開く の を 待って ホーム に 降りる 。 どあ||あく|||まって|ほーむ||おりる 傘 の 花 が いく つ も 咲いて いる の を 見て 、 今さら の よう に 他 に も 多く の 乗客 が いた こと に 気づいた 。 かさ||か|||||さいて||||みて|いまさら||||た|||おおく||じょうきゃく|||||きづいた Seeing how many umbrellas were in bloom, I realized that there were many more passengers. 半分 は カップル だ 。 はんぶん||かっぷる| 彼 氏 が 持った 傘 の 下 に 彼女 たち が 潜り込んで いる 。 かれ|うじ||もった|かさ||した||かのじょ|||もぐりこんで|

あいにくの 天気 も 恋人 たち に は 関係ない 。 |てんき||こいびと||||かんけいない Unfortunately, the weather doesn't matter to the lovers. むしろ 、 雪 を 楽しんで いる 。 |ゆき||たのしんで| Rather, they enjoy the snow. 今日 は 特別 。 きょう||とくべつ クリスマス で 、 雪 で 、 楽しい デート だから 。 くりすます||ゆき||たのしい|でーと| 駅 全体 が どこ か 浮かれた 雰囲気 に 包まれて いた 。 えき|ぜんたい||||うかれた|ふんいき||つつまれて| The entire station was enveloped in a somewhat buoyant atmosphere.

そして 、 その 空気 は 、 改札 を 出て も 変わら なかった 。 ||くうき||かいさつ||でて||かわら|

駅前 の ちょっと した 広場 が 、 恋人 たち の 待ち合わせ スポット と 化して いる 。 えきまえ||||ひろば||こいびと|||まちあわせ|すぽっと||かして| ざっと 見た 感じ で 、 三 、 四十人 は いる だろう か 。 |みた|かんじ||みっ|しじゅう り|||| 二十 歳 前後 の 若い 男女 が 、 それぞれ に 恋人 の 到着 を 待って いる 。 にじゅう|さい|ぜんご||わかい|だんじょ||||こいびと||とうちゃく||まって|

改札 から 出て きた 相手 を 見つけて 笑顔 で 手 を 振って いる人 も いれば 、 お互いに 駆け寄って 足 を 滑らせる カップル も いた 。 かいさつ||でて||あいて||みつけて|えがお||て||ふって|いる じん|||おたがいに|かけよって|あし||すべらせる|かっぷる||

まだ 待ち合わせ 相手 が 現れ ない人 は スマホ を いじって 、 待ちぼうけ だ 。 |まちあわせ|あいて||あらわれ|ない じん|||||まちぼうけ|

咲 太 も その 群れ に 仲間 入り しよう と 思い 、 傘 を 差して 、 竜宮 城 みたいな 駅舎 の 屋根 から 一 歩 踏み出した 。 さ|ふと|||むれ||なかま|はいり|||おもい|かさ||さして|りゅうぐう|しろ||えきしゃ||やね||ひと|ふ|ふみだした

麻衣 が やってくる の は 次の 電車 だろう か 。 まい|||||つぎの|でんしゃ|| このあと に 来る 電車 で 、 六 時 前 に 到着 する の は その 一 本 だけ な ので 、 恐らく 間違いない と 思う 。 ||くる|でんしゃ||むっ|じ|ぜん||とうちゃく|||||ひと|ほん||||おそらく|まちがい ない||おもう It is the only train that will arrive before 6:00 p.m., so I am sure that it will be the only one. 麻衣 が 遅刻 を する と は 考え にくい から 。 まい||ちこく|||||かんがえ||

到着 まで あと 七 分 。 とうちゃく|||なな|ぶん ぼ ーっと 待って いよう と 思った 咲 太 だった が 、 その 必要 は すぐに なく なった 。 |-っと|まって|||おもった|さ|ふと||||ひつよう|||| 駅前 で 待つ人 の 中 に 、 咲 太 は 待ち合わせ 相手 を 見つけた のだ 。 えきまえ||まつ じん||なか||さ|ふと||まちあわせ|あいて||みつけた|

「 あ 」

と 、 思わず 声 が もれる 。 |おもわず|こえ||

改札 を 出た ほぼ 正面 。 かいさつ||でた||しょうめん 相手 の 到着 ま 待つ人 たち の ど真ん中 に 、 傘 を 差して 堂々と 立って いる の は 麻衣 だ 。 あいて||とうちゃく||まつ じん|||どまんなか||かさ||さして|どうどうと|たって||||まい| Standing proudly with an umbrella in the middle of the crowd waiting for the other to arrive is Mai.

スリムな シルエット の ダウン コート の 中 に 、 ゆったり した ニット を 着込んで いる 。 すりむな|しるえっと||だうん|こーと||なか||||にっと||きこんで| 下 は スキニー の パンツ スタイル 。 した||||ぱんつ|すたいる 靴 は 雪 でも 安心 の ブーツ だ 。 くつ||ゆき||あんしん||ぶーつ| 桜島 麻衣 だ と ばれない よう に 、 キャスケット を 目深に かぶり 、 おしゃれな 丸い ふち の 伊達 眼鏡 も かけて いる 。 さくらじま|まい|||ばれ ない|||||まぶかに|||まるい|||だて|めがね||| She wears a cassock over her eyes and stylish round framed date glasses to avoid being identified as Mai Sakurajima. 髪 は ゆるく 編み込んで 前 に 流し 、 マフラー を 口元 近く まで 自然な 感じ に 巻いて いた 。 かみ|||あみこんで|ぜん||ながし|まふらー||くちもと|ちかく||しぜんな|かんじ||まいて|

全体 の まとまり と して は 、 大学生 の お 姉さん と いう 印象 。 ぜんたい||||||だいがくせい|||ねえさん|||いんしょう

普段 の 服装 や 、 ドラマ や 映画 、 ファッション 雑誌 の 衣装 と 比べる と 個性的 な 仕上がり に なって いる せい か 、 周囲 の人々 は 誰 も 麻衣 だ と 気づいて いない 。 ふだん||ふくそう||どらま||えいが|ふぁっしょん|ざっし||いしょう||くらべる||こせい てき||しあがり||||||しゅうい|の ひとびと||だれ||まい|||きづいて| Compared to her regular clothes and the costumes she wears for TV dramas, movies, and fashion magazines, the costumes she wears are so unique that no one around her recognizes her as Mai. 疑って いる 様子 すら なかった 。 うたがって||ようす|| みんな 、 スマホ の 向こう に いる 待ち合わせ 相手 と メッセージ の やり取り を する の に 夢中だ 。 |||むこう|||まちあわせ|あいて||めっせーじ||やりとり|||||むちゅうだ

咲 太 が 麻衣 を じっと 見つめて いる と 、 ちらっと だけ こちら を 見た 。 さ|ふと||まい|||みつめて|||||||みた

確かに 目 が 合った 。 たしかに|め||あった

けれど 、 何事 も なかった か の よう に 、 麻衣 は 視線 を 逸ら す 。 |なにごと|||||||まい||しせん||はやら| ダウン コート の ポケット から スマホ を 出して 、 何 か 操作 して いた 。 だうん|こーと||ぽけっと||||だして|なん||そうさ|| う さ 耳 の カバー は 、 麻衣 が 使って いる もの と 同じだ 。 ||みみ||かばー||まい||つかって||||おなじだ The cover for the bunny ears is the same as the one Mai uses.

咲 太 は そんな 麻衣 に 近づいて いく と 、 さ|ふと|||まい||ちかづいて||

「 麻衣 さん 、 な に してる の ? まい|||||

と 、 小声 で 話しかけた 。 |こごえ||はなしかけた

スマホ の 操作 を やめた 麻衣 が 咲 太 に 視線 を 戻して くる 。 ||そうさ|||まい||さ|ふと||しせん||もどして| なんだか 、 面白く な さ そうだった 。 |おもしろく|||そう だった

「 もう しばらく 気づか ない と 思った のに 」 ||きづか|||おもった| "I thought I wouldn't notice you for a while."

小さな ため 息 まで もらして 、 麻衣 が 不満 を ぶつけて くる 。 ちいさな||いき|||まい||ふまん|||

「 ここ に 来る まで 、 誰 に も 気づか れ なかった ん だから 」 ||くる||だれ|||きづか||||

自ら の 変装 を 咲 太 に 見せつける よう に 、「 どう ? おのずから||へんそう||さ|ふと||みせつける||| As if to show his disguise to Sakita, he asked, "How do you like it? 」 と 胸 を 張る 。 |むね||はる

「 デート な のに 、 スカート じゃ なくて ガッカリ です 」 でーと|||すかーと|||がっかり| "I'm disappointed that she's not wearing a skirt on our date."

率直な 感想 を とりあえず 口 に する 。 そっちょくな|かんそう|||くち||

「 かわいい 彼女 が 寒くて も いい わけ ? |かのじょ||さむくて|||

麻衣 は ますます つまらな そうだ 。 まい||||そう だ

「 その とき は 僕 が あたためて …… あだっ」 |||ぼく||| I'll warm it up for you at .......

あげます 、 と 言う 前 に 、 麻衣 が ブーツ で 咲 太 の 足 を 踏んで きた 。 ||いう|ぜん||まい||ぶーつ||さ|ふと||あし||ふんで|

「 他 に 言う こと が ある でしょ 」 た||いう||||

「 好き です 」 すき|

「 そう じゃ なくて 」

「 大好き です 」 だいすき|

「……」

麻衣 が 無言 で 目 を 細める 。 まい||むごん||め||ほそめる

「 今日 も 僕 の 麻衣 さん は 最高に かわいい です 」 きょう||ぼく||まい|||さいこうに||

「 でも 、 スカート じゃない から 不満な ん でしょ ? |すかーと|じゃ ない||ふまんな||

「 仕方ない ので 、 それ は 春 まで 我慢 します よ 。 しかたない||||はる||がまん|| I have no choice but to put up with it until spring. 我慢 した 分 、 麻衣 さん なら 僕 に ご 褒美 を くれる はずだ し 」 がまん||ぶん|まい|||ぼく|||ほうび||||

「 は いはい 、 あたたかく なったら スカート で デート して あげる わ よ 」 ||||すかーと||でーと||||

「 生 足 が いい なあ 」 せい|あし||| "I like your bare feet, right?"

「 日焼け し たくない から それ は ダメ 」 ひやけ||たく ない||||だめ "I don't want to get a sunburn, so don't do that."

「 日焼け 止め なら 僕 が 途 ります よ 」 ひやけ|とどめ||ぼく||と||

「 もっと 嫌に 決まってる でしょ 」 |いやに|きまってる| "Of course I'd hate it even more."

「 えー 、 そんな ぁ 」

「 なんで 今 の が いい 案 だ と 思った の よ 」 |いま||||あん|||おもった||

麻衣 は 日焼け を し ないで 済む 。 まい||ひやけ||||すむ Mai avoids getting sunburned. 咲 太 は 生 足 を 視覚 的に も 、 感触 的に も 楽しめる 。 さ|ふと||せい|あし||しかく|てきに||かんしょく|てきに||たのしめる Sakita enjoys the raw legs both visually and tactilely. どう 考えて も 最高の アイディア だ 。 |かんがえて||さいこうの|あいでぃあ|

「 ほら 、 行 くわ よ 」 |ぎょう||

話 を 打ち切った 麻衣 は 、 自分 の 傘 を 閉じる と 、 当然の よう に 咲 太 の 傘 に 入って きた 。 はなし||うちきった|まい||じぶん||かさ||とじる||とうぜんの|||さ|ふと||かさ||はいって| 咲 太 の 腕 に 手 を 回して くっついて くる 。 さ|ふと||うで||て||まわして|| 背 の 高い 麻衣 の 横顔 が すぐ 隣 に やってきた 。 せ||たかい|まい||よこがお|||となり||

「……」

「 なに よ ?

その 目 は 、「 文句 でも ある の ? |め||もんく||| His eyes were like, "Do you have a problem with me? 」 と語って いる 。 と かたって|

「 もっと 薄着 で くれば よかった 」 |うすぎ||| "I should have worn lighter clothes."

咲 太 は コート で 、 麻衣 は ダウン コート 。 さ|ふと||こーと||まい||だうん|こーと これ で は 腕 に 押し付けられた 麻衣 の うれしい 感触 が 何も 伝わって こない 。 |||うで||おしつけられた|まい|||かんしょく||なにも|つたわって| This did nothing to convey the happy sensation of Mai pressed against her arm.

「 バカ 言ってない の 。 ばか|いって ない| 水族 館 に 行く ん でしょ 」 すいぞく|かん||いく||

麻衣 に 促さ れ 、 雪 の 中 を ふた り で 歩き 出す 。 まい||うながさ||ゆき||なか|||||あるき|だす 駅前 から 南 に 進んで いく 。 えきまえ||みなみ||すすんで| 歩道 に は 、 海 沿い に 向かう カップル と 、 海 の 方 から 戻って くる カップル の 流れ が できて いた 。 ほどう|||うみ|ぞい||むかう|かっぷる||うみ||かた||もどって||かっぷる||ながれ|||

「 そう 言えば 、 咲 太 」 |いえば|さ|ふと

「 な ん です か ?

「 さっき 、 どうして すぐに 私 だって 気づいた の よ 」 |||わたくし||きづいた||

よほど 変装 に 自信 が あった の か 、 麻衣 は まだ 納得 して いない 様子 だ 。 |へんそう||じしん|||||まい|||なっとく|||ようす| 麻衣 と して は 自分 に 気づか なかった 咲 太 を 、 あと で いじめて やろう と 思って いた のだろう 。 まい||||じぶん||きづか||さ|ふと|||||||おもって|| Mai was probably thinking of bullying Saki Ta later on for not noticing her. それ が 失敗 に 終わって しまい 、 不服な のだ 。 ||しっぱい||おわって||ふふくな|

「 いつも 麻衣 さん の こと ばかり 考えてる から だ と 思います 」 |まい|||||かんがえてる||||おもいます

それ 以外 の 理由 は 思いつか ない 。 |いがい||りゆう||おもいつか|

「 他の こと も 少し は 考え なさい 」 たの|||すこし||かんがえ|

「 たとえば ?

「 そう ね …… 将来 の こと と か ? ||しょうらい||||

少し 考えて から 麻衣 は そんな 話 を 振って きた 。 すこし|かんがえて||まい|||はなし||ふって|

「 結婚 したら 「 あなた 」って 呼んで ほしい か なあ 」 けっこん||||よんで|||

真っ先 に 思い浮かんだ の は 、 そんな 将来 だ 。 まっさき||おもいうかんだ||||しょうらい|

「 私 、 将来 の 夢 が サンタクロース の人 と は 結婚 しない から 」 わたくし|しょうらい||ゆめ|||の じん|||けっこん|し ない| "I'm not marrying someone whose dream is to be Santa Claus."

「 えー 」

子供 に 夢 を 与える とても 素晴らしい 仕事 な のに ……。 こども||ゆめ||あたえる||すばらしい|しごと||

それにしても 、 咲 太 が 何の 気 なし に 言った 将来 の 夢 を 、 麻衣 が 覚えて いる と は 驚き だ 。 |さ|ふと||なんの|き|||いった|しょうらい||ゆめ||まい||おぼえて||||おどろき| I was still surprised that Mai remembered what Sakihta casually said about her future dream.

「 じゃあ 、 トナカイ に なろう か な 」 |となかい||||

「 咲 太 、 鞭 で 打た れる の 好き そうだ もん ね 」 さ|ふと|むち||うた|||すき|そう だ||

「 僕 が 好きな の は 、 麻衣 さん の 愛 の 鞭 だけ で すって 」 ぼく||すきな|||まい|||あい||むち||| "All I love is Mai-san's whip of love."

「 なら 、 明日 から 勉強 の ノルマ 増やして あげる わ ね 。 |あした||べんきょう||のるま|ふやして||| 咲 太 、 私 と 同じ 学 に 絶対 合格 する ん だ もの ね 」 さ|ふと|わたくし||おなじ|まな||ぜったい|ごうかく||||| Saki, you are definitely going to pass the same school as me, aren't you?

にん まり と 麻衣 が 笑う 。 |||まい||わらう 調子 に 乗って 余計な こと を 言って しまった らしい 。 ちょうし||のって|よけいな|||いって|| He seemed to have gotten carried away and said unnecessary things. ここ は 新しい 約束 を さ せられる 前 に 、 話 を 元 に 戻した 方 が よ さ そうだ 。 ||あたらしい|やくそく|||せら れる|ぜん||はなし||もと||もどした|かた||||そう だ

「 て か 、 麻衣 さん は 気づか れない 方 が よかった の ? ||まい|||きづか|れ ない|かた|||

「 ん ?

「 自慢 の 変装 に 」 じまん||へんそう|

国道 134 号 線 に 出た ところ で 、 赤 信号 に 捕まる 。 こくどう|ごう|せん||でた|||あか|しんごう||つかまる 海岸 線 を 走る 道路 は 、 今日 も 車 の 往来 が 盛んだ 。 かいがん|せん||はしる|どうろ||きょう||くるま||おうらい||さかんだ

信号 待ち の 間 は 暇な ので 、 咲 太 は 隣 に いる 麻衣 に を 向けた 。 しんごう|まち||あいだ||ひまな||さ|ふと||となり|||まい|||むけた すると 、 麻衣 も 咲 太 を 見て いた 。 |まい||さ|ふと||みて|

「 もちろん 、 うれしかった わ よ 」

ぽつり と 麻衣 が もらした の は そんな 言葉 。 ||まい||||||ことば 口元 を マフラー で 隠す よう に して 、 少し 俯いて いる 。 くちもと||まふらー||かくす||||すこし|うつむいて| 恥ずかし そうで 、 くすぐった そうで 、 言葉 通り うれし そうで も あった 。 はずかし|そう で||そう で|ことば|とおり||そう で|| それ ら 全部 を 混ぜ合わせる と 、 幸せ そうな 表情 が 出来上がる 。 ||ぜんぶ||まぜあわせる||しあわせ|そう な|ひょうじょう||できあがる

そんな 麻衣 を 誰 より も 近く に 感じられる 咲 太 も 幸せだ 。 |まい||だれ|||ちかく||かんじられる|さ|ふと||しあわせだ 幸せ の 衝動 が 体 の 中 を 駆け上がって くる 。 しあわせ||しょうどう||からだ||なか||かけあがって|

「 あの さ 、 麻衣 さん 」 ||まい|

「 な 、 なに よ 」

「 抱きしめたい です 」 だきしめたい|

「 そういう の は 家 に 帰って から ね 」 |||いえ||かえって||

「 え ? いい の ?

絶対 に 「 ダメ 」 と 言わ れる と 思った のに 。 ぜったい||だめ||いわ|||おもった|

「 ただし 、 それ 以上 は ダメ よ 」 ||いじょう||だめ|

喜び もつ か の 間 、 すぐに 麻衣 が 釘 を 刺して くる 。 よろこび||||あいだ||まい||くぎ||さして|

「 パンツ なら ちゃんと 取り替えました よ ? ぱんつ|||とりかえました|

「 じゃあ 、 なおのこと ダメ 」 ||だめ "Well, then, no need to say anything."

咲 太 を 見る 麻衣 の 目 は 冷ややかだ 。 さ|ふと||みる|まい||め||ひややかだ

「 勢い で チュー したい なあ 」 いきおい||||

「 ライプ 終わったら 、 のど か 帰って くるって 言って たし …… 今日 は 我 悛 し なさい 」 |おわったら|||かえって||いって||きょう||われ|しゅん|| "He said he'd be back after the ride. ...... Do me a favor and be penitent today."

「 もっと 雪 降って 、 電車 止まれば いい のに 」 |ゆき|ふって|でんしゃ|とまれば||

そう すれば 、 都 内 の ライブハウス で クリスマス ライブ を やって いる のどか は 、 帰って こられ なく なる 。 ||と|うち||||くりすます|らいぶ||||||かえって|こら れ||

デート の あと 、 咲 太 の 家 で 麻衣 が 振る舞って くれる 予定 の 手 料理 も 独り占め できる 。 でーと|||さ|ふと||いえ||まい||ふるまって||よてい||て|りょうり||ひとりじめ| なにより 、 麻衣 を 独り占め できる 。 |まい||ひとりじめ|

「 絶対 に 帰って くるって 言って た から 、 あの 子 、 帰って くるわ よ 」 ぜったい||かえって||いって||||こ|かえって||

その とき の のどか の 様子 を 思い出して いる の か 、 麻衣 は 楽しげだ 。 |||||ようす||おもいだして||||まい||たのしげだ Perhaps remembering how she felt at that time, Mai seemed to be enjoying herself.

「 豊浜 の やつ 、 いい加減 本気で 姉 離れ して くれない か なぁ 」 とよはま|||いいかげん|ほんきで|あね|はなれ|||| I really wish that Toyohama guy would get off my sister's back.

信号 が が 青 に 変わる 。 しんごう|||あお||かわる

待って いた 歩行者 が 一斉に 渡り はじめた 。 まって||ほこう しゃ||いっせいに|わたり|

咲 太 と 麻衣 も 前 を 歩く カップル に 合わせて 歩き 出す 。 さ|ふと||まい||ぜん||あるく|かっぷる||あわせて|あるき|だす

道路 の 反対 側 から も 同じ よう に人々 が 信号 を 渡って くる 。 どうろ||はんたい|がわ|||おなじ||に ひとびと||しんごう||わたって| ふた つ の人 の 流れ は 、 真ん中 あたり で すれ違った 。 ||の じん||ながれ||まんなか|||すれちがった その 中 に 、 咲 太 は 赤い 傘 を 見つけた 。 |なか||さ|ふと||あかい|かさ||みつけた 持って いる の は たぶん 服装 から 察する に 中学生 くらい の 女の子 。 もって|||||ふくそう||さっする||ちゅうがくせい|||おんなのこ The person carrying it is probably a girl in junior high school, judging from her clothes. 傘 の 陰 に 隠れて いた ので 、 顔 は 見え なかった 。 かさ||かげ||かくれて|||かお||みえ| ただ 、 楽し そうに 笑って 、 両親 と 何 か 言葉 を 交わして いた 。 |たのし|そう に|わらって|りょうしん||なん||ことば||かわして|

最初 は 少し 気 に なった 程度 。 さいしょ||すこし|き|||ていど At first, I was a little concerned.

倍 号 を 渡り 終えた とき に は 、 体 が 勝手に 反応 して 、 咲 太 は 振り返って いた 。 ばい|ごう||わたり|おえた||||からだ||かってに|はんのう||さ|ふと||ふりかえって| でも 、 人 の 流れ に 紛れて 、 赤い 傘 は もう 見えない 。 |じん||ながれ||まぎれて|あかい|かさ|||みえ ない

「 誰 かいた の ?」 だれ||

横 から 麻衣 が 尋ねて くる 。 よこ||まい||たずねて|

**「 今 、 赤い 傘 の 子 が いて ……」** いま|あかい|かさ||こ||

答えられた の は それ だけ 。 こたえられた||||

気 に なった 理由 を 説明 しよう に も 、 咲 太 自身 が 理由 を 見つけ ら ないで いた 。 き|||りゆう||せつめい||||さ|ふと|じしん||りゆう||みつけ|||

「 知り合い だった と か ?」 しりあい|||

**「 そういう わけ じゃない ん です けど ……」** ||じゃ ない|||

今度 も 、 咲 太 の 返事 は 曖昧だった 。 こんど||さ|ふと||へんじ||あいまいだった

「 初恋 の人 が 、 赤い 傘 を 差して た と か ?」 はつこい|の じん||あかい|かさ||さして|||

少し からかう よう に 麻衣 が 言って くる 。 すこし||||まい||いって|

**「 それ なら さすが に 覚えてますって 」** ||||おぼえてますって

なんだっけ なあ 、 と 考え ながら 水族 館 の 方 へ と 歩いて いく 。 |||かんがえ||すいぞく|かん||かた|||あるいて|

目的 地 である 新 江ノ島 水族 館 の 建物 は 、 もう 見えて いた 。 もくてき|ち||しん|えのしま|すいぞく|かん||たてもの|||みえて|

なおも 赤い 傘 の 女の子 の こと を 考えて いる と 、 突然 、 頬 を 引っ張られた 。麻衣 の 仕業 だ 。 |あかい|かさ||おんなのこ||||かんがえて|||とつぜん|ほお||ひっぱられた|まい||しわざ|

理由 は 聞か なくて も わかる 。 りゆう||きか||| デート の 最中 に 他の 誰 か に 気 を 取られて いる 咲 太 を 咎めて いる のだ 。 でーと||さい なか||たの|だれ|||き||とられて||さ|ふと||とがめて||

「 麻衣 さん 、 焼きもち ?」 まい||やきもち

**「 そう よ 」**

生意気 を 言う と 、 さらに 強く 頬 を 引っ張られた 。 なまいき||いう|||つよく|ほお||ひっぱられた

**「 いた たた たっ」**

「 他 に 言う こと が ある でしょ 」 た||いう|||| "You have something else to say."

**「 ごめんなさい 」**

ここ は 素直に 謝って おく 。 ||すなおに|あやまって| すると 、 麻衣 は 咲 太 の 頬 から 手 を 離した 。その あと で 、 さっき より も 強く 咲 太 の 腕 に 抱きついて くる 。しがみ付いて いる 感じ だ 。 |まい||さ|ふと||ほお||て||はなした|||||||つよく|さ|ふと||うで||だきついて||しがみついて||かんじ|

**「 麻衣 さん が 彼女 で 、 僕 は 幸せだ なあ 」** まい|||かのじょ||ぼく||しあわせだ|

頬 が 緩んで 落ちて いく 。 ほお||ゆるんで|おちて| Her cheeks are loosening and falling.

**「 デレデレ しない の 」** |し ない|

「 麻衣 さん の せい だ よ ね ?」 まい||||||

「 離れて ほしい の ?」 はなれて|| Do you want me to leave?

**「 ずっと このまま が いい です 」** "I like it the way it is.

そう 明確な 意思 表明 を した のに 、 水族 館 の 前 に 着く と 、 麻衣 は あっさり 咲 太から 離れて しまった 。 |めいかくな|いし|ひょうめい||||すいぞく|かん||ぜん||つく||まい|||さ|ふとから|はなれて|

チケット 購入 の 列 に 並んで 、 ふた り 分 の 入場 券 を 買って 戻って くる 。 ちけっと|こうにゅう||れつ||ならんで|||ぶん||にゅうじょう|けん||かって|もどって|

「 麻衣 さん 、 僕 の 話 を 聞いてました か ?」 まい||ぼく||はなし||きいてました| "Mai, did you hear what I said?"

「 帰り も 雪 が 降って たら 、 咲 太 の 傘 に 入って あげる 」 かえり||ゆき||ふって||さ|ふと||かさ||はいって| If it snows on the way home, I'll get under Saki-ta's umbrella for you.

「 だったら 、 水族 館 は また 今度 に して 、 今日 は 散歩 が いい ん だけど 」 |すいぞく|かん|||こんど|||きょう||さんぽ|||| So we'll go to the aquarium next time and take a walk today."

「 もう チケット 買った から ダメ よ 」 |ちけっと|かった||だめ|

麻衣 が 入場 口 に 歩き 出す 。麻衣 の 足取り は 弾んで いる 。とても 楽し そうだ 。 まい||にゅうじょう|くち||あるき|だす|まい||あしどり||はずんで|||たのし|そう だ

**「 麻衣 さん 、 水族 館 好きな ん だ 」** まい||すいぞく|かん|すきな||

隣 に 追いついて 咲 太 が そう 声 を かける と 、 となり||おいついて|さ|ふと|||こえ|||

「 好き よ 。咲 太 と 一緒だ と なおさら ね 」 すき||さ|ふと||いっしょだ|||

と 言って 、 咲 太 の 手 を 握って きた 。 |いって|さ|ふと||て||にぎって|

こんな こと を 言われたら 、 水族 館 に 入ら ず に は いられない 。 |||いわれたら|すいぞく|かん||はいら||||いられ ない If I were told this, I would have no choice but to enter the aquarium. 頭 の 中 が 麻衣 で いっぱいに なる 。 あたま||なか||まい|||

だから 、 今 は ふた り の 時間 に 集中 する こと に した 。 |いま|||||じかん||しゅうちゅう||||