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青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る, 青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 3

青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 3

「 雪 、 かなり 降ってる ぞ 」

ファミレス の 裏口 から ゴミ 出し に 出て いた 佑 真 が 、 フロア に 戻って くる なり そう 教えて くれた 。

「 みたいだ な 」

佑 真 の 頭 や ウェイター の 制服 に は 、 雪 の 結晶 が いく つ も 張り付いて いる 。

「 これ 、 ほんとに 積もる な 」

「 だ な 」

そんな やり取り を 交わした の が 、 ランチ タイム が 落ち着き はじめた 午後 二 時 過ぎ 。

その後 も 雪 は 降り続け 、 咲 太 が バイト を 上がった 午後 五 時 に は 、 藤沢 駅 周辺 の 街並み は だいぶ 白く 染まって いた 。

「 お 疲れ 様 でした 。 お 先 に 失礼 します 」

店長 に 挨拶 して から 店 を 出る 。 日 が 落ちて 一層 冷たく なった 風 に 身 が 縮んだ 。 駐車 場 に 止まった 車 の ボンネット に は 、 しっかり 雷 が 積もって いる 。

「 麻衣 さん 、 大丈夫 か な 」

今 の ところ 交通 機関 に 目立った 遅れ は ない と 、 一緒に 上がった 朋絵 が スマホ を 見 ながら 休憩 室 で 教えて くれた が 、 この 調子 で 降り 続ける と 油断 は できない 。 人 や 車 の 往来 が ある ファミレス 前 の 道路 も 、 雪 の 白 さ が 目立って きて いる 。

雪 に 慣れて いない 都市 部 で は 、 最悪 運行 中止 も あり 得る 。

「 ま 、 麻衣 さん が 遅刻 して きたら 、 お 詫び に 色々 して もらおう 」

むしろ 、 そう なって くれた 方 が 咲 太 と して は 楽しい クリスマス に なる かも しれない 。 そんな こと を 考え ながら 、 店 で 借りた ビニール 傘 を 差して 、 咲 太 は ひとり歩き 出した 。

約束 の 時間 まで 一 時間 近く ある 。 だから 、 一 度 家 に 帰る つもりだった 。 学校 帰り に 直接 バイト に 行った ため 、 咲 太 は 制服 の まま だった し 、 家 で は お腹 を 空か せた なす の が 待って いる 。

駅前 まで 戻る と 、 咲 太 は 階段 を 使って 立体 歩道 に 上がった 。 バイト 先 から だ と 、 咲 太 の 住んで いる マンション は 駅 の 反対 側 に 位置 して いる 。

その 立体 歩 追 の 上 も 、 だいぶ 雪 が 積もって いる 。 人 が よく 通る 中央 部分 は 地面 の 色 が 見えて いる けれど 、 人 が 歩か ない 両 サイド は 真っ白だ 。

足元 に 気 を 付け ながら 駅 の 反対 側 に 向かって いる と 、 ビックカメラ の 前 で 店 から 出て きた 客 と ぶつかり そうに なった 。 濡れた 足元 を 気 に して 、 前 を 確認 できて い なかった ようだ 。

「 あ 、 すみません 」

顔 を 上げた 相手 と 目 が 合う 。 手 に は ジュンク 堂 書店 の 袋 を 提げた 女子 。

見覚え が ある ような 気 が した が 一瞬 誰 だ か 咲 太 に は わから なかった 。 彼女 が 「 しまった 」 と いう 顔 で 目 を 逸ら す 仕草 を 見て 、 目の前 に いる の が 理 央 だ と 気づいた 。

ぱっと 見 で わから なかった の は 、 普段 と 雰囲気 が 違って いた から 。 服装 も 、 髪 型 も 見慣れた 理 央 で は ない 。

ドレスっぽい 感じ の ワンピース の 上 に 、 ふわふわ の ファー が ついた 上品な コート 。 スカート 部分 は 膝 丈 くらい で 、 裾 が アルファベット の 「 A 」 の よう に 広がって いる 。 黒 の タイツ に 、 艶 々 した 質感 の 靴 。 少し だけ 踵 が 上がって いる 。

髪 は アップ で まとめて 軽く 横 に 流して いた 。

普段 より も ぐっと 大人っぽくて エレガントな 仕上がり だ 。

何 か 特別な 用事 でも ある のだろう か 。 ちゃんと した コース 料理 が 出て くる ような お 店 に も人 れ そうな 格好だ 。

「……」

咲 太 が 視線 で 説明 を 求めて も 理 央 は 何も 言って こない 。 な ので 、 咲 太 の 方 から 先 に 簡単な 質問 を ぶつけた 。

「 双葉 、 買い物 か ?

手 に 提げて いる 書店 の 袋 に 視線 を 落とす 。 また 難しい 物理 の 本 でも 買った のだろう か 。 たぶん 、 そうだ 。 ビックカメラ の 七 、 八 階 は 図書 館 の よう に 広い 書店 が 入って いる 。 専門 書 の 取り扱い も 非常に 多い 。

「 梓川 は これ から デート で しよ ?

話 を 逸ら す よう に 、 理 央 は そう 咲 太 に 振って きた 。

「 今日 は 、 水族 館 に 行く 予定 だ 」

待ち合わせ を して いる の は 片瀬 江ノ島 駅 。 改札 を 出て すぐ の ところ 。

「 そんな こと 聞いてない 」

理 央 は 今もなお そっぽ を 向いて いる 。 とにかく 居心地 が 悪 そうだ 。 早く 咲 太 に どこ か へ 行って ほし そうに して いる 。

それ が わかって い ながら も 、 咲 太 は めげ ず に 理 央 の 珍しい 服装 を 瞳 に 映して いた 。 すると 、 諦めた よう に 、「 は あ 」 と 大きな ため 息 を 吐かれた 。

「 これ から 両親 と みなと みらい まで 食事 に 行く ところ な の 」

ようやく 咲 太 の 疑問 に 触れた 理 央 は 、 いかにも 渋々 と いった 様子 だ 。 それ は 食事 に 行く こと に 対して の 渋々 で は なくて 、 咲 太 に こんな 説明 を しなければ ならない この 状況 に 対して の 反応 だ 。

「 双葉 の 両親って 、 どっち も 忙しい人 だって 言って たよ な ?

「 お互い 今日 の 予定 が 急に キャンセル に なった みたい 。 私 が 学校 から 帰ったら 、 ふた り と も 家 に いて …… 何 年 振り だろう ね 。 時間 が 出来た からって 、 食事 の 予定 も 勝手に 決められて た の 」

理 央 の 父親 は 大学 病院 に 勤める 医師 だ と 聞いて いる 。 日々 、 派閥 争い に 明け暮れて いる らしい 。

母親 の 方 は アパレル 関連 の 経営者 で 、 一 年 の 大半 を 商談 の ため 海外 で 過ごして いる ような こと を 前 に 言って いた 。

だから 、 家族 揃って 食事 を する 機会 など 殆どない のだ と ……。

理 央 が 自分 の 言葉 戸惑った 様子 な の は 、 そうした 家庭 の 事情 が ある から だ 。

「 この 服 も 全部 母親 の 指定 。 髪 も 母親 が 美容院 予約 して 、 この ありさま 」

「 似合ってる と 思う ぞ 」

普通に 色っぽい 。 それ は エロ い と いう ニュアンス で は なくて 、 知的で 大人びた 雰囲気 が ある と いう 意味 だ 。 さらに 、 年 相応 の 少し 背伸び した 雰囲気 も 混ざって いて 、 理 央 の 魅力 を よく わかって いる人 が 選んだ 服 な のだろう な 、 と いう 感じ が した 。

以前 、 理 央 は 両親 ともに あまり 自分 に 興味 が ない ような こと を 言って いた が 、 見て いる ところ は ちゃんと 見て いる ので は ない だろう か 。

「 私 は 着 たくて 着てる ん じゃない から 」

その 一言 を 、 理 央 は やけに はっきり と 咲 太 に ぶつけて きた 。

これ こそ が 理 央 が 咲 太 に 今 一 番 言いたい こと だった のだろう 。 その ため に 、 わざわざ 「 みな と みらい まで 食事 に 行く 」 と 細かい こと まで 教えて くれた のだ 。

こんな とき でも 、 順 を 追って 物事 を 説明 する ところ は 実に 理 央 らしい 。

「 なあ 、 双葉 」

「 なに ?

理 央 の 目 に は 警戒 心 が 宿って いる 。

「 スマホ 代 して くんない ?

「 や だ よ 」

「 なんで ?

「 梓川 の こと だから 、 私 の 写真 を 撮って 国見 に 送る つもりでしょ 」

「 ばれた か 」

見事に 言い当てられて しまった 。 持つ べき もの は 、 自分 を 理解 して いる 友人 だ 。

貴重な フォーマルスタイル な の て 、 ぜひとも 記録 に 残して おき たかった が 断られて しまって は 仕方ない 。

「 梓川 に 会う なら 、 寄り道 なんて しなければ よかった 」

「 僕 は いい もの 見れて よかった よ 」

「 本当に 見たい の は 桜島 先輩 でしょ 、 梓川 の 場合 」

「 麻衣 さん の ドレス 姿 は さぞ 綺麗だろう な 」

「 梓川 が 捨てられ なければ 、 いずれ は 見られる ん じゃない ? 純白の ドレス が 」

「 もちろん 、 特等 席 で 見る 予定 だ よ 」

純白の ドレス と 言えば 、 もちろん ウェディングドレス 。 麻衣 の 花嫁 姿 を 想像 しよう と する と 、 ふと 何 か 強烈な 感情 が 咲 太 の 中 に 流れ込んで きた 。

「……?

一瞬 だけ 、 ウェディングドレス を 着た 女性 の シルエット が 頭 を 過 る 。 背 格好 から 麻衣 でない こと は わかる 。 でも 、 わかる の は そこ まで だ 。 面影 は おぼろな まま で 、 輪郭 が はっきり しない 。 彼女 の 唇 が 何 か を 呟いた 気 が した が 、 その 言葉 が 聞き 取れない 。 声 が 聞こえない 。 考えよう と する と 、 不安定な 姿 さえ も 霧散 して 消えて しまう 。

ただ 、 感情 だけ が 咲 太 の 胸 を ざ わ つか せて いた 。

大事な こと を 忘れて いる 感じ 。

思い出せ そうで 思い出せない もどかしい 感じ 。

そして 、 それ 以上 に 妙な あたたか さ が 胸 の 中 に ある 。

その 感覚 に 導かれて 、 咲 太 は 自然 と 胸 に 手 を 当てて いた 。

「……」

「 梓川 ? どうかした ?

突然 黙り 込んだ 咲 太 を 、 理 央 が 怪 訝 な 顔 で 覗き込んで くる 。

「 いや …… なんでもない 」

自分 に も 言い聞かせる よう に して 、 胸 に 当てた 手 を 下ろす 。 この 感覚 に 襲わ れる の は 、 これ が はじめて と いう わけで も なかった 。 これ まで に 何度 も ある 。 特に 藤沢 に 引っ越して きて から 頻度 が 増えた 。

けれど 、 何 度 繰り返して も 、 この 不思議な 感覚 の 正体 は わからない 。 わからない まま 今日 まで 過ごして きた 。

「 そう ? なら いい けど 」

メール の 着信 が あった の か 、 理 央 が ポーチ から スマホ を 取り出して いる 。 画面 を 見て 、 返事 を 送って いた 。 恐らく 、 両親 の どちら か だろう 。 迎え が 来た の かも しれない 。

「 そう だ 、 梓川 」

「 ん ?

「 今 、 店 内 の アナウンス 、 桜島 先輩 が やってる よ 」

そう 言って 振り向いた 理 央 が 見て いる の は ビックカメラ の 入口 だ 。 少し 離れた この 場所 に いて も 、 スピーカー から 響く 麻衣 の 声 が 薄っすら 聞こえて いる 。

「 知ってる 。 もう 聞いて 」

「 さすが 梓川 」

「 それ に 、 麻衣 さん の 声 なら 、 この あと 生 で たっぷり 聞く から 大丈夫だ 」

言い ながら 理 央 が スマホ を ポーチ に しまった 。

「 父親 の 車 が 来た みたい 。 行か ない と 」

そう 口 に した 理 央 の 目 は 階段 下 の 道路 を 見て いた 。 歩道 に 寄せて 一 台 の 車 が ハザード を 出して 停車 する 。 ドイツ 製 の 高級 車 。 咲 太 だって 知っている メーカー の 車 だ 。 その 助手 席 の 窓 が 開く と 、 サングラス を した 女性 が 頭 を 出した 。 理 央 を 見つけて 、 手招き して いる 。

「 ん じゃ 、 楽しんで こい よ 」

その 言葉 に 理 央 は 一瞬 だけ 迷う よう に 視線 を 落とした 。 でも 、 すぐに 顔 を 上げる と 、

「 梓川 も 羽目 を 外さない よう に ね 」

と 、 どこ か 吹っ切れた ような 顔 で 理 央 は 微笑んだ 。

その 背中 は 階段 を 静かに 下りて いき 、 止まって いた 車 の 後部 座席 に 乗り込んで いく 。 ドア が 閉まる と 、 すぐに 車 は 走り出した 。 その テールランプ を 目 で 追い ながら

「 双葉って 、 何 気 に お 嬢 様 な ん だ よ な 」

と 、 咲 太 は 今さら の よう に 実感 する のだった 。

青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 3 せいしゅん ぶた やろう は ホワイトクリスマス の ゆめ を みる Seishun Butajyauha ha White Christmas no Yume wo Mimemiru 3 Seishun Butajyaku ha White Christmas no Yumeume wo Mamoru 3 Seishun Butajyauha ha White Christmas no Yume wo Mimemiru 3 Seishun Butajyauha ha White Christmas no Yume wo Mimemiru 3 Seishun Butajyauha ha White Christmas no Yume wo Mimemiru 3 Сэйсюн Бутадзяуха ха Белое Рождество но Юмэ во Мимэмиру 3 Seishun Butajyauha ha White Christmas no Yume wo Mimemiru 3 流氓梦想白色圣诞节3

「 雪 、 かなり 降ってる ぞ 」 ゆき||ふってる| It's snowing like crazy.

ファミレス の 裏口 から ゴミ 出し に 出て いた 佑 真 が 、 フロア に 戻って くる なり そう 教えて くれた 。 ||うらぐち||ごみ|だし||でて||たすく|まこと||ふろあ||もどって||||おしえて| Yuma, who had gone out the back door of the family restaurant to take out the trash, told me this as soon as he returned to the floor.

「 みたいだ な 」 "Looks like it."

佑 真 の 頭 や ウェイター の 制服 に は 、 雪 の 結晶 が いく つ も 張り付いて いる 。 たすく|まこと||あたま||||せいふく|||ゆき||けっしょう|||||はりついて| Auf Yumas Kopf und auf der Uniform des Kellners befinden sich viele Schneeflocken.

「 これ 、 ほんとに 積もる な 」 ||つもる|

「 だ な 」

そんな やり取り を 交わした の が 、 ランチ タイム が 落ち着き はじめた 午後 二 時 過ぎ 。 |やりとり||かわした|||らんち|たいむ||おちつき||ごご|ふた|じ|すぎ It was after 2 p.m., just as lunchtime was beginning to settle down, that we had this exchange.

その後 も 雪 は 降り続け 、 咲 太 が バイト を 上がった 午後 五 時 に は 、 藤沢 駅 周辺 の 街並み は だいぶ 白く 染まって いた 。 そのご||ゆき||ふりつづけ|さ|ふと||ばいと||あがった|ごご|いつ|じ|||ふじさわ|えき|しゅうへん||まちなみ|||しろく|そまって| The snow continued to fall, and by the time Sakihta left work at 5:00 p.m., the streets around Fujisawa Station had turned much whiter.

「 お 疲れ 様 でした 。 |つかれ|さま| お 先 に 失礼 します 」 |さき||しつれい|

店長 に 挨拶 して から 店 を 出る 。 てんちょう||あいさつ|||てん||でる I greeted the manager and left the store. 日 が 落ちて 一層 冷たく なった 風 に 身 が 縮んだ 。 ひ||おちて|いっそう|つめたく||かぜ||み||ちぢんだ The sun was setting and the wind, which had become even colder, made me shiver. 駐車 場 に 止まった 車 の ボンネット に は 、 しっかり 雷 が 積もって いる 。 ちゅうしゃ|じょう||とまった|くるま||ぼんねっと||||かみなり||つもって| The hood of a car parked in a parking lot is firmly covered with lightning.

「 麻衣 さん 、 大丈夫 か な 」 まい||だいじょうぶ||

今 の ところ 交通 機関 に 目立った 遅れ は ない と 、 一緒に 上がった 朋絵 が スマホ を 見 ながら 休憩 室 で 教えて くれた が 、 この 調子 で 降り 続ける と 油断 は できない 。 いま|||こうつう|きかん||めだった|おくれ||||いっしょに|あがった|ともえ||||み||きゅうけい|しつ||おしえて||||ちょうし||ふり|つづける||ゆだん||でき ない Tomoe, who came up with me, told me in the break room while looking at her cell phone that there were no significant delays in the transportation system at the moment, but I couldn't be too careful if I continued to come down in this condition. 人 や 車 の 往来 が ある ファミレス 前 の 道路 も 、 雪 の 白 さ が 目立って きて いる 。 じん||くるま||おうらい||||ぜん||どうろ||ゆき||しろ|||めだって|| The road in front of the family restaurant, where people and cars are passing by, is also showing the whiteness of the snow.

雪 に 慣れて いない 都市 部 で は 、 最悪 運行 中止 も あり 得る 。 ゆき||なれて||とし|ぶ|||さいあく|うんこう|ちゅうし|||える In urban areas that are not accustomed to snow, the worst-case scenario is to cancel the service.

「 ま 、 麻衣 さん が 遅刻 して きたら 、 お 詫び に 色々 して もらおう 」 |まい|||ちこく||||わび||いろいろ|| "Well, if Mai-san is late, I'll ask her to do various things for me as an apology.

むしろ 、 そう なって くれた 方 が 咲 太 と して は 楽しい クリスマス に なる かも しれない 。 ||||かた||さ|ふと||||たのしい|くりすます||||しれ ない Saki would rather have that happen, and it would probably be a fun Christmas for Saki. そんな こと を 考え ながら 、 店 で 借りた ビニール 傘 を 差して 、 咲 太 は ひとり歩き 出した 。 |||かんがえ||てん||かりた|びにーる|かさ||さして|さ|ふと||ひとりあるき|だした

約束 の 時間 まで 一 時間 近く ある 。 やくそく||じかん||ひと|じかん|ちかく| だから 、 一 度 家 に 帰る つもりだった 。 |ひと|たび|いえ||かえる| So I was going to go home once. 学校 帰り に 直接 バイト に 行った ため 、 咲 太 は 制服 の まま だった し 、 家 で は お腹 を 空か せた なす の が 待って いる 。 がっこう|かえり||ちょくせつ|ばいと||おこなった||さ|ふと||せいふく|||||いえ|||おなか||あか|||||まって|

駅前 まで 戻る と 、 咲 太 は 階段 を 使って 立体 歩道 に 上がった 。 えきまえ||もどる||さ|ふと||かいだん||つかって|りったい|ほどう||あがった バイト 先 から だ と 、 咲 太 の 住んで いる マンション は 駅 の 反対 側 に 位置 して いる 。 ばいと|さき||||さ|ふと||すんで||まんしょん||えき||はんたい|がわ||いち|| From his part-time job, the apartment where Saki-ta lives is located on the opposite side of the station.

その 立体 歩 追 の 上 も 、 だいぶ 雪 が 積もって いる 。 |りったい|ふ|つい||うえ|||ゆき||つもって| 人 が よく 通る 中央 部分 は 地面 の 色 が 見えて いる けれど 、 人 が 歩か ない 両 サイド は 真っ白だ 。 じん|||とおる|ちゅうおう|ぶぶん||じめん||いろ||みえて|||じん||あるか||りょう|さいど||まっしろだ

足元 に 気 を 付け ながら 駅 の 反対 側 に 向かって いる と 、 ビックカメラ の 前 で 店 から 出て きた 客 と ぶつかり そうに なった 。 あしもと||き||つけ||えき||はんたい|がわ||むかって|||||ぜん||てん||でて||きゃく|||そう に| As I was heading toward the other side of the station, watching my step, I almost collided with a customer coming out of a store in front of a Bic Camera. 濡れた 足元 を 気 に して 、 前 を 確認 できて い なかった ようだ 。 ぬれた|あしもと||き|||ぜん||かくにん||||

「 あ 、 すみません 」

顔 を 上げた 相手 と 目 が 合う 。 かお||あげた|あいて||め||あう 手 に は ジュンク 堂 書店 の 袋 を 提げた 女子 。 て||||どう|しょてん||ふくろ||さげた|じょし A girl with a Junkudo bookstore bag in her hand.

見覚え が ある ような 気 が した が 一瞬 誰 だ か 咲 太 に は わから なかった 。 みおぼえ||||き||||いっしゅん|だれ|||さ|ふと|||| 彼女 が 「 しまった 」 と いう 顔 で 目 を 逸ら す 仕草 を 見て 、 目の前 に いる の が 理 央 だ と 気づいた 。 かのじょ|||||かお||め||はやら||しぐさ||みて|めのまえ|||||り|なかば|||きづいた When I saw her look away with a "Oh my God" expression on her face, I realized it was Rio in front of me.

ぱっと 見 で わから なかった の は 、 普段 と 雰囲気 が 違って いた から 。 |み||||||ふだん||ふんいき||ちがって|| 服装 も 、 髪 型 も 見慣れた 理 央 で は ない 。 ふくそう||かみ|かた||みなれた|り|なかば|||

ドレスっぽい 感じ の ワンピース の 上 に 、 ふわふわ の ファー が ついた 上品な コート 。 どれすっぽい|かんじ||わんぴーす||うえ|||||||じょうひんな|こーと スカート 部分 は 膝 丈 くらい で 、 裾 が アルファベット の 「 A 」 の よう に 広がって いる 。 すかーと|ぶぶん||ひざ|たけ|||すそ||あるふぁべっと||||||ひろがって| 黒 の タイツ に 、 艶 々 した 質感 の 靴 。 くろ||||つや|||しつかん||くつ 少し だけ 踵 が 上がって いる 。 すこし||かかと||あがって|

髪 は アップ で まとめて 軽く 横 に 流して いた 。 かみ||あっぷ|||かるく|よこ||ながして| Her hair was pulled up in an updo and swept lightly to the side.

普段 より も ぐっと 大人っぽくて エレガントな 仕上がり だ 。 ふだん||||おとなっぽくて|えれがんとな|しあがり|

何 か 特別な 用事 でも ある のだろう か 。 なん||とくべつな|ようじ|||| ちゃんと した コース 料理 が 出て くる ような お 店 に も人 れ そうな 格好だ 。 ||こーす|りょうり||でて||||てん||も じん||そう な|かっこうだ It looks like it could be served in a restaurant that serves a proper course meal.

「……」

咲 太 が 視線 で 説明 を 求めて も 理 央 は 何も 言って こない 。 さ|ふと||しせん||せつめい||もとめて||り|なかば||なにも|いって| Sakita asked for an explanation with his eyes, but Rio didn't say anything. な ので 、 咲 太 の 方 から 先 に 簡単な 質問 を ぶつけた 。 ||さ|ふと||かた||さき||かんたんな|しつもん|| So, Sakihta asked him a simple question first.

「 双葉 、 買い物 か ? ふたば|かいもの| Futaba, shopping?

手 に 提げて いる 書店 の 袋 に 視線 を 落とす 。 て||さげて||しょてん||ふくろ||しせん||おとす また 難しい 物理 の 本 でも 買った のだろう か 。 |むずかしい|ぶつり||ほん||かった|| たぶん 、 そうだ 。 |そう だ ビックカメラ の 七 、 八 階 は 図書 館 の よう に 広い 書店 が 入って いる 。 ||なな|やっ|かい||としょ|かん||||ひろい|しょてん||はいって| 専門 書 の 取り扱い も 非常に 多い 。 せんもん|しょ||とりあつかい||ひじょうに|おおい

「 梓川 は これ から デート で しよ ? あずさがわ||||でーと|| Azusa River has a date with you from now on, right?

話 を 逸ら す よう に 、 理 央 は そう 咲 太 に 振って きた 。 はなし||はやら||||り|なかば|||さ|ふと||ふって| Rio asked Sakihta to change the subject.

「 今日 は 、 水族 館 に 行く 予定 だ 」 きょう||すいぞく|かん||いく|よてい|

待ち合わせ を して いる の は 片瀬 江ノ島 駅 。 まちあわせ||||||かたせ|えのしま|えき We are meeting at Katase Enoshima Station. 改札 を 出て すぐ の ところ 。 かいさつ||でて|||

「 そんな こと 聞いてない 」 ||きいて ない

理 央 は 今もなお そっぽ を 向いて いる 。 り|なかば||いまもなお|||むいて| とにかく 居心地 が 悪 そうだ 。 |いごこち||あく|そう だ Anyway, it looks uncomfortable. 早く 咲 太 に どこ か へ 行って ほし そうに して いる 。 はやく|さ|ふと|||||おこなって||そう に||

それ が わかって い ながら も 、 咲 太 は めげ ず に 理 央 の 珍しい 服装 を 瞳 に 映して いた 。 ||||||さ|ふと|||||り|なかば||めずらしい|ふくそう||ひとみ||うつして| すると 、 諦めた よう に 、「 は あ 」 と 大きな ため 息 を 吐かれた 。 |あきらめた||||||おおきな||いき||はかれた

「 これ から 両親 と みなと みらい まで 食事 に 行く ところ な の 」 ||りょうしん||みな と|||しょくじ||いく||| "I'm going to Minato Mirai for dinner with my parents."

ようやく 咲 太 の 疑問 に 触れた 理 央 は 、 いかにも 渋々 と いった 様子 だ 。 |さ|ふと||ぎもん||ふれた|り|なかば|||しぶしぶ|||ようす| Rio, finally touched by Sakita's question, seemed to be reluctant to answer. それ は 食事 に 行く こと に 対して の 渋々 で は なくて 、 咲 太 に こんな 説明 を しなければ ならない この 状況 に 対して の 反応 だ 。 ||しょくじ||いく|||たいして||しぶしぶ||||さ|ふと|||せつめい|||なら ない||じょうきょう||たいして||はんのう| It was not a reluctance to go out to eat, but a reaction to this situation that I had to explain to Sakihta.

「 双葉 の 両親って 、 どっち も 忙しい人 だって 言って たよ な ? ふたば||りょうしんって|||いそがしい じん||いって||

「 お互い 今日 の 予定 が 急に キャンセル に なった みたい 。 おたがい|きょう||よてい||きゅうに|きゃんせる||| We both said that our plans for today had been suddenly cancelled. 私 が 学校 から 帰ったら 、 ふた り と も 家 に いて …… 何 年 振り だろう ね 。 わたくし||がっこう||かえったら|||||いえ|||なん|とし|ふり|| When I got home from school, they were both at home ...... for the first time in years. 時間 が 出来た からって 、 食事 の 予定 も 勝手に 決められて た の 」 じかん||できた||しょくじ||よてい||かってに|きめられて|| Just because they had more time, they decided to make our dinner plans on their own.

理 央 の 父親 は 大学 病院 に 勤める 医師 だ と 聞いて いる 。 り|なかば||ちちおや||だいがく|びょういん||つとめる|いし|||きいて| 日々 、 派閥 争い に 明け暮れて いる らしい 。 ひび|はばつ|あらそい||あけくれて|| It is said that he spends his days fighting factions.

母親 の 方 は アパレル 関連 の 経営者 で 、 一 年 の 大半 を 商談 の ため 海外 で 過ごして いる ような こと を 前 に 言って いた 。 ははおや||かた|||かんれん||けいえい しゃ||ひと|とし||たいはん||しょうだん|||かいがい||すごして|||||ぜん||いって|

だから 、 家族 揃って 食事 を する 機会 など 殆どない のだ と ……。 |かぞく|そろって|しょくじ|||きかい||ほとんど ない||

理 央 が 自分 の 言葉 戸惑った 様子 な の は 、 そうした 家庭 の 事情 が ある から だ 。 り|なかば||じぶん||ことば|とまどった|ようす|||||かてい||じじょう|||| Rio's confusion about his own words is due to his family situation.

「 この 服 も 全部 母親 の 指定 。 |ふく||ぜんぶ|ははおや||してい 髪 も 母親 が 美容院 予約 して 、 この ありさま 」 かみ||ははおや||びよういん|よやく|||

「 似合ってる と 思う ぞ 」 にあってる||おもう| I think it looks good on you.

普通に 色っぽい 。 ふつうに|いろっぽい It's usually sexy. それ は エロ い と いう ニュアンス で は なくて 、 知的で 大人びた 雰囲気 が ある と いう 意味 だ 。 ||||||にゅあんす||||ちてきで|おとなびた|ふんいき|||||いみ| I don't mean that in the erotic sense, but in the intellectual and mature sense. さらに 、 年 相応 の 少し 背伸び した 雰囲気 も 混ざって いて 、 理 央 の 魅力 を よく わかって いる人 が 選んだ 服 な のだろう な 、 と いう 感じ が した 。 |とし|そうおう||すこし|せのび||ふんいき||まざって||り|なかば||みりょく||||いる じん||えらんだ|ふく||||||かんじ|| Furthermore, there was a slightly grown-up atmosphere that was appropriate for their age, and I felt that the clothes were chosen by people who well understood the appeal of Rio.

以前 、 理 央 は 両親 ともに あまり 自分 に 興味 が ない ような こと を 言って いた が 、 見て いる ところ は ちゃんと 見て いる ので は ない だろう か 。 いぜん|り|なかば||りょうしん|||じぶん||きょうみ||||||いって|||みて|||||みて|||||| Rio had said before that neither of his parents were very interested in him, but I think they are watching what he sees.

「 私 は 着 たくて 着てる ん じゃない から 」 わたくし||ちゃく||きてる||じゃ ない| "I'm not wearing it because I want to."

その 一言 を 、 理 央 は やけに はっきり と 咲 太 に ぶつけて きた 。 |いちげん||り|なかば|||||さ|ふと||| Rio made that comment to Sakihito very clearly.

これ こそ が 理 央 が 咲 太 に 今 一 番 言いたい こと だった のだろう 。 |||り|なかば||さ|ふと||いま|ひと|ばん|いいたい||| This is probably what Rio wanted to say to Sakihta the most. その ため に 、 わざわざ 「 みな と みらい まで 食事 に 行く 」 と 細かい こと まで 教えて くれた のだ 。 ||||||||しょくじ||いく||こまかい|||おしえて|| That's why I go all the way to Minato Mirai for a meal." He told me every little detail.

こんな とき でも 、 順 を 追って 物事 を 説明 する ところ は 実に 理 央 らしい 。 |||じゅん||おって|ものごと||せつめい||||じつに|り|なかば| Even at times like this, he is very centered in his step-by-step explanations.

「 なあ 、 双葉 」 |ふたば

「 なに ?

理 央 の 目 に は 警戒 心 が 宿って いる 。 り|なかば||め|||けいかい|こころ||やどって|

「 スマホ 代 して くんない ? |だい||くん ない "Can you pay for my cell phone?

「 や だ よ 」

「 なんで ?

「 梓川 の こと だから 、 私 の 写真 を 撮って 国見 に 送る つもりでしょ 」 あずさがわ||||わたくし||しゃしん||とって|くにみ||おくる| "Since you're talking about Azusa River, you're going to take my picture and send it to Kunimi, aren't you?"

「 ばれた か 」

見事に 言い当てられて しまった 。 みごとに|いいあてられて| I was right on the money. 持つ べき もの は 、 自分 を 理解 して いる 友人 だ 。 もつ||||じぶん||りかい|||ゆうじん| What you should have is a friend who understands you.

貴重な フォーマルスタイル な の て 、 ぜひとも 記録 に 残して おき たかった が 断られて しまって は 仕方ない 。 きちょうな||||||きろく||のこして||||ことわられて|||しかたない I would have loved to have recorded this valuable formal style, but I had no choice but to decline.

「 梓川 に 会う なら 、 寄り道 なんて しなければ よかった 」 あずさがわ||あう||よりみち||| "If I'm going to see Azusa River, I shouldn't have made the detour."

「 僕 は いい もの 見れて よかった よ 」 ぼく||||みれて|| "I'm glad I got to see the good stuff."

「 本当に 見たい の は 桜島 先輩 でしょ 、 梓川 の 場合 」 ほんとうに|みたい|||さくらじま|せんぱい||あずさがわ||ばあい "What I really want to see is Sakurajima, senior, in Azusa River's case."

「 麻衣 さん の ドレス 姿 は さぞ 綺麗だろう な 」 まい|||どれす|すがた|||きれいだろう|

「 梓川 が 捨てられ なければ 、 いずれ は 見られる ん じゃない ? あずさがわ||すてられ||||みられる||じゃ ない If Azusa River is not abandoned, we will see it sooner or later, won't we? 純白の ドレス が 」 じゅんぱくの|どれす|

「 もちろん 、 特等 席 で 見る 予定 だ よ 」 |とくとう|せき||みる|よてい||

純白の ドレス と 言えば 、 もちろん ウェディングドレス 。 じゅんぱくの|どれす||いえば|| 麻衣 の 花嫁 姿 を 想像 しよう と する と 、 ふと 何 か 強烈な 感情 が 咲 太 の 中 に 流れ込んで きた 。 まい||はなよめ|すがた||そうぞう||||||なん||きょうれつな|かんじょう||さ|ふと||なか||ながれこんで|

「……?

一瞬 だけ 、 ウェディングドレス を 着た 女性 の シルエット が 頭 を 過 る 。 いっしゅん||||きた|じょせい||しるえっと||あたま||か| 背 格好 から 麻衣 でない こと は わかる 。 せ|かっこう||まい|で ない||| From her height, it is clear that she is not Mai. でも 、 わかる の は そこ まで だ 。 面影 は おぼろな まま で 、 輪郭 が はっきり しない 。 おもかげ|||||りんかく|||し ない The image is still dim and the contours are not clear. 彼女 の 唇 が 何 か を 呟いた 気 が した が 、 その 言葉 が 聞き 取れない 。 かのじょ||くちびる||なん|||つぶやいた|き|||||ことば||きき|とれ ない 声 が 聞こえない 。 こえ||きこえ ない 考えよう と する と 、 不安定な 姿 さえ も 霧散 して 消えて しまう 。 かんがえよう||||ふあんていな|すがた|||むさん||きえて| Even the instability fizzles out when we try to think about it.

ただ 、 感情 だけ が 咲 太 の 胸 を ざ わ つか せて いた 。 |かんじょう|||さ|ふと||むね|||||| The only thing that made Sakihta's heart flutter was emotion.

大事な こと を 忘れて いる 感じ 。 だいじな|||わすれて||かんじ

思い出せ そうで 思い出せない もどかしい 感じ 。 おもいだせ|そう で|おもいだせ ない||かんじ

そして 、 それ 以上 に 妙な あたたか さ が 胸 の 中 に ある 。 ||いじょう||みょうな||||むね||なか|| And even more than that, there is a strange warmth in my heart.

その 感覚 に 導かれて 、 咲 太 は 自然 と 胸 に 手 を 当てて いた 。 |かんかく||みちびかれて|さ|ふと||しぜん||むね||て||あてて| Sakihta was led by this sensation and naturally put his hand on his chest.

「……」

「 梓川 ? あずさがわ どうかした ?

突然 黙り 込んだ 咲 太 を 、 理 央 が 怪 訝 な 顔 で 覗き込んで くる 。 とつぜん|だまり|こんだ|さ|ふと||り|なかば||かい|いぶか||かお||のぞきこんで|

「 いや …… なんでもない 」

自分 に も 言い聞かせる よう に して 、 胸 に 当てた 手 を 下ろす 。 じぶん|||いいきかせる||||むね||あてた|て||おろす この 感覚 に 襲わ れる の は 、 これ が はじめて と いう わけで も なかった 。 |かんかく||おそわ||||||||||| This was not the first time I had this sensation. これ まで に 何度 も ある 。 |||なんど|| 特に 藤沢 に 引っ越して きて から 頻度 が 増えた 。 とくに|ふじさわ||ひっこして|||ひんど||ふえた

けれど 、 何 度 繰り返して も 、 この 不思議な 感覚 の 正体 は わからない 。 |なん|たび|くりかえして|||ふしぎな|かんかく||しょうたい||わから ない わからない まま 今日 まで 過ごして きた 。 わから ない||きょう||すごして| I have spent my entire life until today not knowing.

「 そう ? なら いい けど 」

メール の 着信 が あった の か 、 理 央 が ポーチ から スマホ を 取り出して いる 。 めーる||ちゃくしん|||||り|なかば||ぽーち||||とりだして| 画面 を 見て 、 返事 を 送って いた 。 がめん||みて|へんじ||おくって| He looked at the screen and sent a reply. 恐らく 、 両親 の どちら か だろう 。 おそらく|りょうしん|||| 迎え が 来た の かも しれない 。 むかえ||きた|||しれ ない

「 そう だ 、 梓川 」 ||あずさがわ

「 ん ?

「 今 、 店 内 の アナウンス 、 桜島 先輩 が やってる よ 」 いま|てん|うち||あなうんす|さくらじま|せんぱい||| "Mr. Sakurajima is doing the announcements in the store right now."

そう 言って 振り向いた 理 央 が 見て いる の は ビックカメラ の 入口 だ 。 |いって|ふりむいた|り|なかば||みて||||||いりぐち| 少し 離れた この 場所 に いて も 、 スピーカー から 響く 麻衣 の 声 が 薄っすら 聞こえて いる 。 すこし|はなれた||ばしょ||||すぴーかー||ひびく|まい||こえ||すすきっすら|きこえて| Even though I am a little far away, I can faintly hear Mai's voice echoing through the speakers.

「 知ってる 。 しってる もう 聞いて 」 |きいて

「 さすが 梓川 」 |あずさがわ

「 それ に 、 麻衣 さん の 声 なら 、 この あと 生 で たっぷり 聞く から 大丈夫だ 」 ||まい|||こえ||||せい|||きく||だいじょうぶだ Besides, I'll be able to hear Mai-san's voice live after this, so I'm sure I'll be fine.

言い ながら 理 央 が スマホ を ポーチ に しまった 。 いい||り|なかば||||ぽーち||

「 父親 の 車 が 来た みたい 。 ちちおや||くるま||きた| 行か ない と 」 いか||

そう 口 に した 理 央 の 目 は 階段 下 の 道路 を 見て いた 。 |くち|||り|なかば||め||かいだん|した||どうろ||みて| 歩道 に 寄せて 一 台 の 車 が ハザード を 出して 停車 する 。 ほどう||よせて|ひと|だい||くるま||はざーど||だして|ていしゃ| A car pulls over to the sidewalk and stops with its hazard lights on. ドイツ 製 の 高級 車 。 どいつ|せい||こうきゅう|くるま 咲 太 だって 知っている メーカー の 車 だ 。 さ|ふと||しっている|めーかー||くるま| その 助手 席 の 窓 が 開く と 、 サングラス を した 女性 が 頭 を 出した 。 |じょしゅ|せき||まど||あく||さんぐらす|||じょせい||あたま||だした 理 央 を 見つけて 、 手招き して いる 。 り|なかば||みつけて|てまねき||

「 ん じゃ 、 楽しんで こい よ 」 ||たのしんで||

その 言葉 に 理 央 は 一瞬 だけ 迷う よう に 視線 を 落とした 。 |ことば||り|なかば||いっしゅん||まよう|||しせん||おとした Rio dropped his gaze as if he was lost for a moment at those words. でも 、 すぐに 顔 を 上げる と 、 ||かお||あげる|

「 梓川 も 羽目 を 外さない よう に ね 」 あずさがわ||はめ||はずさ ない||| "Don't let Azusa River get away with too much."

と 、 どこ か 吹っ切れた ような 顔 で 理 央 は 微笑んだ 。 |||ふっきれた||かお||り|なかば||ほおえんだ

その 背中 は 階段 を 静かに 下りて いき 、 止まって いた 車 の 後部 座席 に 乗り込んで いく 。 |せなか||かいだん||しずかに|おりて||とまって||くるま||こうぶ|ざせき||のりこんで| ドア が 閉まる と 、 すぐに 車 は 走り出した 。 どあ||しまる|||くるま||はしりだした その テールランプ を 目 で 追い ながら |||め||おい| I followed the tail lights with my eyes.

「 双葉って 、 何 気 に お 嬢 様 な ん だ よ な 」 ふたばって|なん|き|||じょう|さま||||| Futaba is a bit of a tomboy, isn't she?

と 、 咲 太 は 今さら の よう に 実感 する のだった 。 |さ|ふと||いまさら||||じっかん||