蜘蛛 の 糸 (3/3)
御 釈迦 様 は 極楽 の 蓮池 の ふち に 立って 、この 一部始終 を じっと 見て いらっしゃいました が 、やがて 犍陀多 が 血 の 池 の 底 へ 石 の ように 沈んで しまいます と 、悲し そうな 御顔 を なさり ながら 、また ぶらぶら 御歩き に なり 始めました 。 自分 ばかり 地獄 から ぬけ出そう と する 、犍陀多 の 無慈悲 な 心 が 、そうして その 心 相当な 罰 を うけて 、元 の 地獄 へ 落ちて しまった のが 、御 釈迦 様 の 御 目 から 見る と 、浅間しく 思召さ れた ので ございましょう 。
しかし 極楽 の 蓮池 の 蓮 は 、少しも そんな 事 に は 頓着 致しません 。 その 玉 の ような 白い 花 は 、御釈迦様 の 御足 の まわり に 、ゆらゆら 萼 を 動かして 、その まん中 に ある 金色 の 蕊 から は 、何とも 云え ない 好い 匂 が 、絶間なく あたり へ 溢れて 居ります 。 極楽 も もう 午 に 近く なった ので ございましょう 。