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悪人 (Villain) (2nd book), 悪人 下 (2)

悪人 下 (2)

車 を 降りる と 、 暖房 で 暖まって いた から だ が 急激に 冷えた 。 すぐに 降りて きた 祐一 が ホテル の 入口 の ほう へ 歩いて いく 。 セックス なんか どうでも よかった 。 ただ 、 誰 か と 抱き合い たかった 。 抱き 合える 誰 か を 、 もう 何 年 も 求めて いた 。 歩いて 行く 祐一 の 背中 に 、 光代 は そう 語りかけて いた 。 これ が 本心 な のだ と 、 その 背 中 に 伝え たかった 。 誰 でも よかった わけじゃ ない 。 誰 で も いい から 抱き合い たかった わけじゃ ない 。 自分 の こと を 抱きたい と 思って くれる 人 に 、 強く 抱きしめて もらい たかった 。 無人の 受付 に 二 室 だけ 残って いる 空室 を 示す パネル が あった 。 祐一 が 選んだ の は 「 フ ィレンツェ 」 と いう 名 の 部屋 だった 。 一瞬 迷って 、 祐一 は パネル 上 で 「 休憩 」 を 選択 した 。 すぐに 「4800 円 」 と いう 値 段 が 表示 さ れる 。 寂し さ を 紛らわす ため だけ に 、 生きて いく の は もう うんざり だった 。 寂しく ない よう に 笑って いる の は もう 嫌だった 。 狭い エレベーター で 二 階 へ 上がる と 、 目の前 に 「 フィレンツェ 」 と 書か れた ドア が あった 。 噛み合わ せ が 悪い の か 、 祐一 が 何度 か 鍵 を 回して やっと ドア が 開く 。 開いた とたん 、 まぶ 眩 しい ほど の 色 が 目 に 飛び込んで くる 。 壁 は 黄色く 塗ら れ 、 ベッド に オレンジ色 の カバ く ぬ - が かけられ 、 白い 天井 が 丸く 削り 貫かれて フレスコ 画 も どき の 絵 が はめ込んで ある が 、 新鮮 味 だけ が ない 。 中 に 入って 光代 は 後ろ手 で ドア を 閉めた 。 強い 暖房 と 通 気 の 悪い 空気 の せい で 、 汗 が 樛 み 出し そうだった 。 ベッド まで 真っすぐに 歩いた 祐一 が 、 鍵 を そこ に 投げ 置いた 。 鍵 は バウンド する こと も なく 、 すっと 羽毛 布団 に 埋もれた 。 エアコン の 音 だけ が 聞こえた 。 静かな ので は なく 音 を 奪わ れた ようだった 。 「 なんか 、 派手な 部屋 や ねえ 」 祐一 の 背中 に 声 を かけた 。 振り返った 祐一 が とつぜん 近づいて くる 。 あっという間 だった 。 光代 はだ ら り と 垂らして いた 腕 ごと 、 背 の 高い 祐一 に 抱きしめられて いた 。 ちょうど つむ じ の 辺り に 祐一 の 熱い 息 が かかった 。 その 熱 を 感じて いる う ち に 、 おなか の 辺り で 祐一 の 性器 が 硬く なる の が 分かった 。 互い の 服 を 通して も その 鼓 動 が 伝わって きた 。 光代 は 腕 を 回した 。 腕 を 回して 祐一 の 腰 を 抱いた 。 強く 抱きしめ れ ば 抱きしめる ほど 、 柔らかい 自分 の おなか に 祐一 の 硬い 性器 を 感じた 。 休憩 4800 円 の 「 フィレンツェ 」 と 名付けられた 部屋 だった 。 個性 的な こと を 強調 する が 故 に 個性 を 消されて しまった ラブ ホテル の 一室 だった 。 「…… 笑わ んで よ 」 光代 は 抱きしめられた まま 、 祐一 の 胸 に 眩 いた 。 祐一 が 離れよう と する ので 、 顔 を 見られ ない ように しがみついた 。 「 正直に 言う けど 、 笑わ んで よ 」 と 光代 は 言った 。 「:…・ 私 ね 、…。 : 私 、 本気で メール 送った と ょ 。 他の 人 は ただ の 暇潰し で 、 あんな こと する と かもし れ ん けど 、…… 私 、 本気で 誰 か と 出会い たかった と 。 ダサ い やろ ? そん な の 、 寂し すぎる やろ ? ・・・… バカに して いい よ 。 でも 、 笑わ んで 。 笑われたら 、 私 。 ・・:。」 祐一 に しがみついた まま だった 。 自分 でも 性急 すぎる の は 分かって いた 。 ただ今 言わ ない と 永遠に 、 そして もう 誰 に も 、 こんな こと を 言え ない ような 気 が した 。 「・・…・ 俺 も 」 その とき だった 。 そんな 祐一 の 言葉 が 落ちて きた 。 「 俺 も 、…:・ 俺 も 、 本気 やった 」 祐一 の 声 が 頬 を 押しつけて いる 胸 から 聞こえた 。 浴室 の ほう で 水音 が した 。 水道 管 に たまって いた らしい 水 が 落ち 、 タイル を 叩く 音 だった 。 それ 以外 、 音 と いう 音 が なかった 。 いや 、 耳 を 押しつけた 祐一 の 胸 から 聞こえる 鼓動 以外 に 、 光代 に は 何も 聞こえ なかった 。 とつぜん 祐一 が からだ を 動かした か と 思う と 、 いきなり 唇 を 奪わ れた 。 乱暴な キス で 、 乾いた 祐一 の 唇 が 痛かった 。 唇 を 吸わ れ 、 舌 を 押し込ま れた 。 光代 は 祐一 の シャシ を 掴 やけど んだ まま 、 その 熱い 舌 を ふくんだ 。 火傷 し そうな 熱い 舌 を 、 からだ 全体 で 抱きしめて い る ようだった 。 腰 から 力 が 抜けた 。 祐一 の 舌 が 唇 から 耳 へ と 移り 、 熱い 吐息 が 耳 の 奥 を 刺激 する 。 乱暴に シャシ を 脱 が さ れ 、 ブラ を 外さ れ 、 立った まま 祐一 の キス を 乳房 に 受けた 。 目 の 前 に 安っぽい ラブ ホテル の ベッド が あった 。 柔らか そうな 羽毛 布団 に 半 裸 で 倒れ込む 自分 が 見えた 。 すべて が 乱暴な のに 、 尻 を 撫でる 祐一 の 指先 だけ が 優しかった 。 とても 乱暴に 扱わ れ て いる のに 、 からだ が それ 以上 を 求めて いた 。 乱暴な の が 祐一 な の か 、 自分 な の か 分か ら なかった 。 まるで 自分 が 祐一 を 操って 、 乱暴に 自分 自身 を 愛 撫 して いる ようだった 。 自分 だけ が 裸 に なって 、 男 の 前 に 立って いた 。 明る すぎる 蛍光 灯 の 下 、 内股 を 撫で ら れ 、 尻 を 掴まれ 、 光代 は 今にも 声 を 漏らし そうだった 。 裸 の 光代 を 祐一 は 軽々 と 抱えて ベッド へ 運んだ 。 ほとんど 投げ捨てる ように 羽毛 布団 むし の 上 に 転がし 、 自分 の シャシ や Tシャツ を 鼈 り 取る ように 脱ぐ 。 祐一 の 固い 胸 で 光代 の 乳房 が 潰れた 。 祐一 が 動く たび に 、 光代 の 乳首 が 彼 の 肌 を 滑った 。 気 が つく と うつ伏せ に されて いた 。 羽毛 布団 に 埋もれた から だ が 宙 に 浮いて いる よう あら が だった 。 熱い 祐一 の 舌 が 、 背骨 を おりて いく 。 押し込ま れた 祐一 の 膝 で 、 どんなに 抗って も 脚 が 開く 。 枕 に 顔 を 押しつける と 、 洗剤 の 匂い が した 。 光代 は 全身 から 力 を 抜いた 。 祐一 は まるで 壊そう と でも する ように 乱暴に 光代 の からだ を 愛 撫 した 。 そして 、 まる で直そう と でも する ように 、 強く 抱きしめて きた 。 壊して は 直し 、 また 壊して は 直す 。 光代 は 自分 の からだ が 壊れた の か 、 それとも 最初 から 壊れて いた の か 分から なく なって くる 。 祐一 が 壊した から だ なら 、 もっと 激しく 壊して 欲しかった 。 元々 壊れて いた から だ な ら 、 祐一 の 手 で 優しく 直して 欲しかった 。 「 この 人 と は もう 二度と 会わ ん で も いい 。 今回 だけ 。 そう 、 こんな こと 、 今日 だけ の こ と や もん 」 祐一 の 愛 撫 を 受け ながら 、 光代 は 胸 の うち で そう 眩 いた 。 もちろん 本心 で は ない のだ が 、 そう でも 自分 に 言わ ない と 、 ベッド の 上 で 身 を 振る 、 見た こと も ない 破廉恥な 自分 を 受け入れる こと が でき なかった 。 祐一 が ベルト を 外す 金属 音 が 聞こえた 。 ベッド に 運ばれて から 、 どれ くらい 時間 が 経った の か 、 とても 長い 間 、 ここ で 祐一 の 愛 撫 を 受けて いた ような 気 が する 。 十五 分 ? 三十 分 ? いや 、 もう 一晩 も 二 晩 も 、 こう やって 祐一 の 指 に 撫でられ 、 祐一 の 熱い から だ に 押し潰されて いる ようだった 。 その とき 、 ふっと から だ が 軽く なった 。 ベッド が 軋み 、 その 振動 で 枕 から 頭 が 落ちた 。 目 を 開ける と 、 裸 に なった 祐一 が 立って いる 。 泣いて いた わけで も ない のに 、 祐一 の 性器 が 涙 に かすんで 見えた 。 から だ から すっか り 力 が 抜けて しまって 、 指 を 動かす の も 面倒だった 。 自分 が 素っ裸 で 見下ろされて いる のに 、 まったく 恥ずかし さ を 感じ なかった 。 祐一 の 片 膝 が 光代 の 顔 の すぐ 近く に のった 。 マット が 深く 沈み 込み 、 光代 の 顔 は 転が る ように 、 祐一 の ほう へ 近づいた 。 大きな 手のひら で 頭 を 後ろ から 抱え 上げられ 、 光代 は 目 を 閉じて 、 口 を 開いた 。 首筋 を 支える 祐一 の 手のひら は 優しい のに 、 喉 に 突き刺さる 性器 は 凶暴だった 。 光代 は また 自分 が 優しく されて いる の か 、 乱暴に 扱われて いる の か 分から なく なり 、 苦しい の か 、 嬉しい の か 分から ず に シーツ を 何度 も 掴んだ 。 みっともない 格好で ベッド に 横たわって いる の は 知っていた 。 そんな 格好 を さ せて 性 いし 』 器 を 舐め させる 祐一 が 憎らしくて 、 愛 おしかった 。 腕 を 伸ばして 祐一 の 尻 を 掴んだ 。 汗ばんだ 尻 に 爪 を 立てた 。 痛み を 堪えた 祐一 が 声 を 漏らす 。 その 声 を 、 光代 は もっと 聞きたい と 思った 。 ◇ やっぱり 光代 に は 幸せに なって 欲し か です よ 。 光代 の こと を 「 お 姉ちゃん 」って 呼ぶ こと は なか です ね 。 でも 、 どう やる ……、 呼び 捨て に し ながら 、 心 のどっか で 「 お 姉ちゃん 」って 呼びかけて る ところ は ある の かも し れません 。 うち 、 弟 が 一 人 おって 、 その 弟 が 私 の 代わりって いう の は へ ン です けど 、 光代 の こと を 「 姉ちゃん 」って 呼ぶ んです よ 。 私 の こと は 、「 珠代 」って 呼び捨て やけど 。 よく 双子って 互い の 考え とる こと が 分かる なんて 言わ れる じゃ ない です か 。 でも 私 と 光代って あんまり そういう ところ が なかった んです よ 。 別に 仲 が 悪かった わけじゃ なく て 、 もちろん 双子 や から 学校 でも 目立つ で しよ ? だ から 小学校 の ころ まで は いつも 一 緒 に いて 、 クラスメイト たち の 好 奇 の 目 から 自分 たち を 守っとったって いう か 。 …… う ん 、 やっぱり 小学校 まで は 私 たち 、 目立つ とったん じゃ ない か と 思います 。 でも 中学 に 進学 したら 、 隣 の 小学校 から 別の 双子 の 姉妹 が やってきて 、 それ も 私 たち なんか より 十 倍 くらい 可愛い 双子 。 子供って 残酷 やけん 、 いつの間にか 私 たち は 「 不細工な 方 」 なん て 言わ れる ように なって 、 私 は どっち かって いう と そういう の 気 に せ ん ほう やけん 、 そ はう 患 』 んな こ と 言う 男の子 が おったら 追いかけて 、 箒 で 叩いたり し とった けど 、 あの ころ から か なあ 、 私 と 光代 の 性格って いう か 、 印象って いう か 、 髪 型 と か 洋服 の 趣味 と か 、 そう いう の が 少しずつ 違って きた の 。 …:。 高校 に 入った とき 、 高校 も ほんと は 同じ 学校 に 行く つもりじゃ なくて 、 私 は 最初 から 255 第 三 章 彼女 は 誰 に 出会った か ? 共学 が よかった んです けど 、 光代 は 私立 の 女子 高 志望 で 、 でも 受験 に 失敗 して し も うて とにかく 高校 に 入って すぐ 、 お互い 好きな 人 が できた んです よ 。 私 の ほう は もう ほん と に 分かり やすくて 、 サッカー 部 の 花形 みたいな 男の子 やった ん やけど 、 光代 の ほう は おおき わ 大沢 くんって いう 、 なんか こう ネクラって わけ で も ない と やけど 、 バレー 部 も 一 カ月 く らい で 辞めて し も うて 、 どっち かって 言う と 勉強 も できる ほう じゃ なくて 、 ボーッ と し た 印象 の 子 で 。 もう ちょっと 髪 型 と か 洋服 と か 気 を 使えば 、 どうにか なり そうな もん や のに 、 ぜん ぜ ん そういう こと に も 興味 が ない みたいで 、 かといって 他 に 興味 が ある こと も な さ そうで ……。 とにかく 光代 に 大沢 くん が 好き みたいな こと 言わ れた とき 、 私 、 え ッ ! て 声 上 げた んです よ ね 。 あの とき か なあ 、 決定 的に 自分 と 光代 は 違う 人間 な んだ な あって 思う た の 。 私 の ほう は 相手 が サッカー 部 の 花形 やった けん ライバル も 多くて 、 もちろん うまく い く こと も なかった んです けど 、 他 に 競争 相手 が おら ん か つた 光代 と 大沢 くん の ほう はう まく いったん です よ 。 いつ つ も 二 人 で 一緒に 帰ってました よ 。 並んで 自転車 押して 。 だ いたい いつも 光代 が 大沢 くん の 家 に 寄って 、 それ でも 毎日 六 時 半 に は 帰って くる んです けど ね 、 夕飯 前 に 。 仲 の いい 双子って 言って も 、 訊 け ない こと も ある じゃ ない です か 。 毎日 学校 が 終わる の が 四 時 頃 で 、 大沢 くん ち まで 歩いて 二十 分 くらい な んです ね 、って こと は 大沢 くん ち から うち まで 自転車 で 帰って くる と して も 、 毎日 二 人っきり で 二 時間 十五 分 くらい は 一 緒 に いる わけです よ 。 学校 でも ちらっと 噂 に なったり して て 、 みんな 、 光代 本人 に は 訊 けんもん やけん 、「 ねえ 、 光代 ちゃん と 大沢 くんって 、 もう ? 」 なんて 、 私 に 訊 いて く る 人 も おって 。 正直 、 妹 の 直感 と して は 、 光代 と 大沢 くん が 、 もう 、 その 、 なんて いう か 、 すでに して る 、って いう 感じ は ぜんぜん なかった んです けど ね 。 どっち に しろ 、 知 り たかった けど 、 聞き たく ないって いう か ……。 それ が 、 夏 休み が 終わった ばっかり の ころ やった か なぁ 、 やっぱり 光代 が 大沢 くん ち に 行って た とき 、 私 、 たまたま チアリーディング 部 の 練習 が 休み で 、 早く 家 に 帰って た んです よ 。 当時 、 二 人 で 同じ 部屋 を 使っとって 、 本当に それ まで は そんな こと した こと なかった と やけど ……、 魔 が 差したって いう か 、 光代 の 机 の 引き出し 開けて 、 いつも 光 代 が 大沢 ぐんと 交換 して いる ノート を 盗み 読み して し もう たん です よ 。 たぶん 、 くだらない こと ばっかり なん やろう と 思った んです よ 。 心配 して た と して も 、 もし 自分 の 悪 口 と か 書いて あったら どう しよう と か 、 その 程度 やった んです 。 パラパラって 捲ったら 、 予想 に 反して ぎっしり と 小さい 文字 が 書き込ま れ とって 。 私 、 光代 が 帰って こ ない か ビクビク し ながら 読んだ んです よ 。 読み 始めたら 、 なんか 背筋 が ぞっと して し も うて …。 :。 たしか 、 こんな 感じ の 内容 やった と 思います 。 「 今 まで は ね 、 私 、 大沢 くん の こと が 好き やった と よ ◎ でも 最近 、 大沢 くん の 右腕 と か 、 大沢 くん の 耳 と か 、 大沢 くん の 指 と か 、 膝 と か 、 前歯 と か 、 息 と か 、 そういう 部分 部分 で 好きに なって きて しも うた ( 笑 )。 大沢 くん 全体 じゃ なくて 、 大沢 くん の 一つ一つ が 私 は 好きな んだ な あって 思う 。 本当に 誰 に も 取ら れ たく なか よ ・ 学校 と か で 誰 か が 大沢 くん の こと を 見る の も イヤ ( 笑 )」 どっち かって 言う と 、 光代 は 執着 心 が あまり ない んだ と 、 私 、 思って た んです よ 。 子 供 の ころ から お 菓子 も おもちゃ も 全部 私 や 弟 に 譲って くれた し 、 なんて いう か 、 やっぱ り 長女 な んだ な あって 。 でも 大沢 ぐんと の 交換 日記 に は 、 そんな いつも の 光代 が いないって いう か 。 お ので ら 「 今日 、2 組 の 小野寺 さん から 何 か 話しかけられ とった ね ? 大沢 くん が 迷惑 そうな 顔 し とる けん 、 すごく おもしろかった 」 と か 、「 早く 卒業 して 大沢 ぐんと 一緒に 暮らした い ! 暮らせる よ ね ? ね ? そう 言えば 、 この 前 、 外 から 見た アパート 良 さ そう やった ね 。 あそこ なら 外 に 大沢 くん が 買う 車 も 置ける し 、 子供 が 生まれて も 庭 で 遊ば せられ る し ね 」 と か 、 とにかく 、 いつも の 光代 の 口調 と 違って 、 どこ か 攻撃 的な 感じ やった ん です 。 読み ながら 、 こん なんじ や 大沢 くん 迷惑 し とる んじゃ ない かって 思いました ね 。 私 、 だんだん 怖く なって ノート を 引き出し に 戻しました 。 なんか 光代って 本当に 無欲な 人 だ ご もつ と 思って た んです けど 、 光代 の 業って いう か 、 それ まで 知ら なかった 光代 の 欲 みたいな もの が 伝わって きて 、 なんか 悲しいって いう か 、 かわいそうって いう か 。 …:。 光代 と 大沢 くん 、 高校 を 卒業 する 前 に 別れた んです よ 。 噂 だ と 大沢 くん が そのころ 通 い 始めた 塾 で 、 別の 子 を 好きに なった みたいな ん やけど 、 光代 本人 は 私 に 何も 言わ ん か つた です ね 。 私 も 敢えて 訊 かんかつ たし ……。 二 人 が 別れた とき 、 光代 が 荒れたり 、 泣 いて たりって 記憶 も ない んです 。 もちろん 陰 で 泣 いとった の かも しれ ん けど :….。 でも 、 もう 昔 の 話 です もん ね 。 卒業 して 就職 して から 、 光代 が きちんと 付き合った 人って 二 人 だけ じゃ ないで す か ね 。 どっち も あんまり 長続き せんか つた けど 。 光代って 私 みたいに 男の子 たち と 遊び 回る タ イプ じゃ ない んです よ 。 もう ちょっと 社交 的 ならって 、 思う こと も あります ね 。 今 、 一 緒 に 暮らし とる けど 、 心 のどっか で 、 この 同居 は 、「 光代 の ため 」って 思って る ところ が ある ような 気 も します 。 私 が 誰 か と 結婚 したら 、 この 人 、 一生 一 人 な んじゃ ない かって 思う こと も ある し 。 結局 、 私 、 光代 の こと 好きな んです よ ね 。 すごく 引っ込み思案 な 姉 やけど 、 本当に 幸 せ に なって 欲しいって 思う 。 あれ は いつごろ やった か なあ 、 光代 が すごく 幸せ そうな 顔 して 自転車 漕いで る ところ を 、 私 、 たまたま バス の 中 から 見た んです よ 。 考えて みれば 、 ちょうど あの ころ 、 光代 は その 清水 祐一って 人 と メール の やりとり 始めて た んです よ ねえ 。 体温 に は 匂い が ある んだ と 光代 は 思う 。 匂い が 混じり合う ように 体温 も 混じり合う の だ と 。 終了 時間 を 知らせる 電話 が 鳴った とき 、 祐一 は まだ 光代 の 上 に いた 。 暖房 の 利き 過ぎ た ラブ ホテル の ベッド で 、 お互い の からだ が 汗 で 滑った 。 祐一 は 美しい 肌 を して いた 。 美しい 肌 に 汗 を 浮かべて 、 光代 の からだ を 突いて いた 。 電話 を 気 に して 動き を 止めた 祐一 に 、「…… やめ ん で 」 と 光代 は 言った 。 祐一 は 電話 を 無視 した 。 電話 を 無視 して 、 その 数 分 後 に ドア が ノック さ れる まで 、 光 代 の からだ を 突き 続けた 。 ドア の 向こう から 聞こえた おばさん の 声 に 、「 分かった ! すぐ 出る ! 」 と 祐一 は 怒 鳴った 。 怒鳴った とたん 、 更に 奥 の ほう を 突か れた 。 光代 は 唇 を 噛み締めた 。 すぐに 出る 、 と 祐一 が 叫び 返して から 、 すでに 十五 分 以上 経って いる 。 光代 は 毛布 の 中 で 祐一 の 汗ばんだ から だ を 抱きしめ ながら 、「 おなか 減った ね ? 」 と 笑った 。 返事 の つもりな の か 、 まだ 荒い 息 を して いる 祐一 が 毛布 を 軽く 蹴り 飛ばす 。 「 すぐ そこ に 、 美味しい うなぎ の 店 が ある と よ 」 毛布 が ベッド の 下 に 落ちて 、 裸 の まま 抱き合う 二 人 が 横 の 鏡 に 映って いる 。 先 に 起き 上がった の は 祐一 で 、 くっきり と 背骨 の 浮かんだ 背中 が 鏡 に 映る 。 「 白 焼き と かも あって 、 けつ こう 本格 的な 店 」 ベッド を 降りよう と する 祐一 の 手 を 光代 は 、「 そこ に 行く ? 」 と 強く 引っ張った 。 か ら だ を 捻った 祐一 が しばらく 光代 を 見つめた あと 、 小さく 頷く 。 光代 は ベッド から 降りる と 、 先 に 浴室 へ 向かった 。 背中 に 、「 時間 、 ない よ 」 と いう 祐一 の 声 が 聞こえた が 、「 もう どうせ 遅れ とる けん 、 延長 料 払わ ん ば さ 」 と 光代 は 答え た 。 黄色い タイル の 可愛い 浴室 だった 。 ここ に 窓 が あれば いい な 、 と 光代 は 思った 。 ここ に 窓 が あって 、 外 に は 小さな 庭 が ある 。 庭 の 向こう に 車 を 洗って いる 祐一 の 姿 が 見える 。 「 うなぎ 食べたら 、 今度 こそ 灯台 に 連れてって よ ! 」 と 光代 は 叫んだ 。 返事 は なかった が 、 光代 は 気分 よく シャワー を 浴びた 。 まだ 二 時 に も なって いない はずだった 。 これ か ら 長い 週 末 が 始まる のだ と 思う と 、 肌 を 流れる お 湯 まで 歌い 踊って いる ようだった 。 「 時間 ない けん 、 一緒に シャワー 浴びれば ? 」 光代 は 水音 に 負け ない ように 祐一 を 呼んだ 。 「 ねえ 、 清水 祐一って 本名 ? 」 と 光代 は 訊 いた 。 祐一 が 前 を 見た まま 、 黙って 頷く 。 ラブ ホテル を 出て 、 うなぎ 屋 へ 向かう 車 の 中 だった 。 今 、 浴びて きた ばかりの シャワ ー の せい か 、 からだ が まだ 火照って いた 。 し おり 「 じゃあ 、 私 、 謝ら ん と いけん 。 私 の 名前 、 馬 込 光代って 言う と 。 あの 栞って いう と は .・・・:」 光代 が そこ まで 言う と 、「 別に よか よ 。 みんな 最初 は 偽名 やけん 」 と 祐一 が 言葉 を 遮 る 。 「 みんなって 、 そんなに たくさんの 女の子 と 会う た わけ ? 」 車 は 空いた 国道 を 信号 に も 引っかから ず に 走って いた 。 自分 たち の 車 が 近寄る と 、 信 号 が さっと 青 に 変わる ようだった 。 「…… まあ 、 いい けど 」 祐一 が 何も 答え ない ので 、 光代 は すぐに 自分 の 質問 を 引っ込めた 。 「 この 道 、 高校 の とき の 通学 路 」 光代 は 流れる 景色 を 目 で 追った 。 「 あそこ に 安売り の 靴 屋 の 看板 ある やろ ? あそこ を 右 に 曲がって 真っすぐ 田んぼ の 中 を 進んだ ところ が 高校 やった と 。 それ で この 道 を もう ちょっと 駅 の ほう に 戻った ところ に 小学校 と 中学 が あって ……、 それ より も もっと ちょっと 鳥栖 の ほう へ 行った ところ に 前 の 職場 。 ・・…。 考えて みれば 、 私って 、 この 国道 から ぜんぜん 離れ ん か つた と ねえ 。 こ の 国道 を 行ったり 来たり し とった だけ やった と よれ ぇ 。 …… 前 の 職場って ね 、 食品 関係 の 工場 やった と 。 同期 の 子 たち は みんな 単調 すぎるって 文句 ばっかり 言い よった けど 、 私 、 ああいう 流れ作業って そんなに 嫌いじゃ なかった かも 」 珍しく 車 が 信号 に 引っかかり 、 祐一 が ハンドル を 指 で 撫で ながら 光代 の ほう へ 顔 を 向 ける 。 「 俺 も 似た ような もん 」 祐一 が ぼ そっと 眩 く ・ 一瞬 、 何の こと を 言わ れた の か 分から ず 、 光代 が 首 を 傾げる と 、 「 俺 も ずっと 近く ばっかり 。 小学校 も 中学 も 高校 も 家 から すぐ の 所 やった し 」 と 続ける 。 「 でも 海 の 近く やった と やる ? 海 の 近く なんて 羨ま しか ぁ 。 私 なんて ここ よ 」 ちょうど 信号 が 変わり 、 祐一 は ゆっくり と アクセル を 踏み込んだ 。 光代 の 町 、 ぽつり ぽつり と 店舗 の 建つ 殺風景な 街道 が 流れて いく 。 「 あ 、 あれ あれ 、 ほら 、 うなぎって 看板 見える やろ ? ほんとに 美味し か と よ ・・ 値段 も そんなに 高く ない し 」 おなか が 減って いた 。 こんなに お なか が 減った の は ずいぶん 久しぶりの ような 気 が し た 。


悪人 下 (2) あくにん|した villain lower (2) Méchant, en bas (2). Cattivo, in basso (2). злодей нижний (2)

車 を 降りる と 、 暖房 で 暖まって いた から だ が 急激に 冷えた 。 くるま||おりる||だんぼう||あたたまって|||||きゅうげきに|ひえた When I got out of the car, the body was warmed up by the heating, but it suddenly cooled down. すぐに 降りて きた 祐一 が ホテル の 入口 の ほう へ 歩いて いく 。 |おりて||ゆういち||ほてる||いりぐち||||あるいて| Yuichi, who came down immediately, walked toward the entrance of the hotel. セックス なんか どうでも よかった 。 せっくす||| I didn't care about sex. ただ 、 誰 か と 抱き合い たかった 。 |だれ|||だきあい| I just wanted to hug someone. 抱き 合える 誰 か を 、 もう 何 年 も 求めて いた 。 いだき|あえる|だれ||||なん|とし||もとめて| I've been looking for someone to hug me for years. 歩いて 行く 祐一 の 背中 に 、 光代 は そう 語りかけて いた 。 あるいて|いく|ゆういち||せなか||てるよ|||かたりかけて| Mitsuyo spoke to Yuuichi as he walked away. これ が 本心 な のだ と 、 その 背 中 に 伝え たかった 。 ||ほんしん|||||せ|なか||つたえ| I wanted to tell him that this was his true intention. 誰 でも よかった わけじゃ ない 。 だれ|||| Not everyone was fine. 誰 で も いい から 抱き合い たかった わけじゃ ない 。 だれ|||||だきあい||| It's not that I wanted to hug anyone. 自分 の こと を 抱きたい と 思って くれる 人 に 、 強く 抱きしめて もらい たかった 。 じぶん||||いだき たい||おもって||じん||つよく|だきしめて|| I wanted someone who wanted to hug me to hold me tight. 無人の 受付 に 二 室 だけ 残って いる 空室 を 示す パネル が あった 。 ぶにんの|うけつけ||ふた|しつ||のこって||くうしつ||しめす|ぱねる|| There was a panel in the unmanned reception desk showing only two rooms remaining vacant. 祐一 が 選んだ の は 「 フ ィレンツェ 」 と いう 名 の 部屋 だった 。 ゆういち||えらんだ|||||||な||へや| Yuichi chose a room called "Florence". 一瞬 迷って 、 祐一 は パネル 上 で 「 休憩 」 を 選択 した 。 いっしゅん|まよって|ゆういち||ぱねる|うえ||きゅうけい||せんたく| After a moment of hesitation, Yuichi selected ``Break'' on the panel. すぐに 「4800 円 」 と いう 値 段 が 表示 さ れる 。 |えん|||あたい|だん||ひょうじ|| A price of 4,800 yen is displayed immediately. 寂し さ を 紛らわす ため だけ に 、 生きて いく の は もう うんざり だった 。 さびし|||まぎらわす||||いきて|||||| I was tired of living just to escape my loneliness. 寂しく ない よう に 笑って いる の は もう 嫌だった 。 さびしく||||わらって|||||いやだった I didn't want to smile so that I wouldn't be lonely. 狭い エレベーター で 二 階 へ 上がる と 、 目の前 に 「 フィレンツェ 」 と 書か れた ドア が あった 。 せまい|えれべーたー||ふた|かい||あがる||めのまえ||||かか||どあ|| When I took the narrow elevator upstairs, I saw a door with the words "Florence" in front of me. 噛み合わ せ が 悪い の か 、 祐一 が 何度 か 鍵 を 回して やっと ドア が 開く 。 かみあわ|||わるい|||ゆういち||なんど||かぎ||まわして||どあ||あく Yuichi turned the key a few times and the door finally opened. 開いた とたん 、 まぶ 眩 しい ほど の 色 が 目 に 飛び込んで くる 。 あいた|||くら||||いろ||め||とびこんで| As soon as you open it, a dazzling color jumps into your eyes. 壁 は 黄色く 塗ら れ 、 ベッド に オレンジ色 の カバ く ぬ - が かけられ 、 白い 天井 が 丸く 削り 貫かれて フレスコ 画 も どき の 絵 が はめ込んで ある が 、 新鮮 味 だけ が ない 。 かべ||きいろく|ぬら||べっど||おれんじいろ||かば||||かけ られ|しろい|てんじょう||まるく|けずり|つらぬか れて||が||||え||はめこんで|||しんせん|あじ||| 中 に 入って 光代 は 後ろ手 で ドア を 閉めた 。 なか||はいって|てるよ||うしろで||どあ||しめた 強い 暖房 と 通 気 の 悪い 空気 の せい で 、 汗 が 樛 み 出し そうだった 。 つよい|だんぼう||つう|き||わるい|くうき||||あせ||きゅう||だし|そう だった ベッド まで 真っすぐに 歩いた 祐一 が 、 鍵 を そこ に 投げ 置いた 。 べっど||まっすぐに|あるいた|ゆういち||かぎ||||なげ|おいた 鍵 は バウンド する こと も なく 、 すっと 羽毛 布団 に 埋もれた 。 かぎ||ばうんど|||||す っと|うもう|ふとん||うずもれた The key did not bounce and was completely buried in the duvet. エアコン の 音 だけ が 聞こえた 。 えあこん||おと|||きこえた 静かな ので は なく 音 を 奪わ れた ようだった 。 しずかな||||おと||うばわ|| 「 なんか 、 派手な 部屋 や ねえ 」 祐一 の 背中 に 声 を かけた 。 |はでな|へや|||ゆういち||せなか||こえ|| 振り返った 祐一 が とつぜん 近づいて くる 。 ふりかえった|ゆういち|||ちかづいて| あっという間 だった 。 あっというま| 光代 はだ ら り と 垂らして いた 腕 ごと 、 背 の 高い 祐一 に 抱きしめられて いた 。 てるよ|||||たらして||うで||せ||たかい|ゆういち||だきしめ られて| ちょうど つむ じ の 辺り に 祐一 の 熱い 息 が かかった 。 ||||あたり||ゆういち||あつい|いき|| その 熱 を 感じて いる う ち に 、 おなか の 辺り で 祐一 の 性器 が 硬く なる の が 分かった 。 |ねつ||かんじて|||||||あたり||ゆういち||せいき||かたく||||わかった While feeling the heat, I found that Yuichi's genitals became stiff around his tummy. 互い の 服 を 通して も その 鼓 動 が 伝わって きた 。 たがい||ふく||とおして|||つづみ|どう||つたわって| 光代 は 腕 を 回した 。 てるよ||うで||まわした 腕 を 回して 祐一 の 腰 を 抱いた 。 うで||まわして|ゆういち||こし||いだいた 強く 抱きしめ れ ば 抱きしめる ほど 、 柔らかい 自分 の おなか に 祐一 の 硬い 性器 を 感じた 。 つよく|だきしめ|||だきしめる||やわらかい|じぶん||||ゆういち||かたい|せいき||かんじた 休憩 4800 円 の 「 フィレンツェ 」 と 名付けられた 部屋 だった 。 きゅうけい|えん||||なづけ られた|へや| 個性 的な こと を 強調 する が 故 に 個性 を 消されて しまった ラブ ホテル の 一室 だった 。 こせい|てきな|||きょうちょう|||こ||こせい||けさ れて||らぶ|ほてる||いっしつ| It was a room in a love hotel, where the emphasis on individuality had been erased. 「…… 笑わ んで よ 」 光代 は 抱きしめられた まま 、 祐一 の 胸 に 眩 いた 。 わらわ|||てるよ||だきしめ られた||ゆういち||むね||くら| 祐一 が 離れよう と する ので 、 顔 を 見られ ない ように しがみついた 。 ゆういち||はなれよう||||かお||み られ||| Yuichi was about to leave, so he clung to his face so that he couldn't see it. 「 正直に 言う けど 、 笑わ んで よ 」 と 光代 は 言った 。 しょうじきに|いう||わらわ||||てるよ||いった Mitsuyo said, "I'm going to be honest with you, but don't laugh at me. 「:…・ 私 ね 、…。 わたくし| : 私 、 本気で メール 送った と ょ 。 わたくし|ほんきで|めーる|おくった|| 他の 人 は ただ の 暇潰し で 、 あんな こと する と かもし れ ん けど 、…… 私 、 本気で 誰 か と 出会い たかった と 。 たの|じん||||ひまつぶし||||||||||わたくし|ほんきで|だれ|||であい|| ダサ い やろ ? そん な の 、 寂し すぎる やろ ? |||さびし|| ・・・… バカに して いい よ 。 ばかに||| ・ ・ ・… You can be stupid. でも 、 笑わ んで 。 |わらわ| 笑われたら 、 私 。 えみわれたら|わたくし ・・:。」 祐一 に しがみついた まま だった 。 ゆういち|||| 自分 でも 性急 すぎる の は 分かって いた 。 じぶん||せいきゅう||||わかって| ただ今 言わ ない と 永遠に 、 そして もう 誰 に も 、 こんな こと を 言え ない ような 気 が した 。 ただいま|いわ|||えいえんに|||だれ||||||いえ|||き|| 「・・…・ 俺 も 」 その とき だった 。 おれ|||| そんな 祐一 の 言葉 が 落ちて きた 。 |ゆういち||ことば||おちて| 「 俺 も 、…:・ 俺 も 、 本気 やった 」 祐一 の 声 が 頬 を 押しつけて いる 胸 から 聞こえた 。 おれ||おれ||ほんき||ゆういち||こえ||ほお||おしつけて||むね||きこえた 浴室 の ほう で 水音 が した 。 よくしつ||||みずおと|| 水道 管 に たまって いた らしい 水 が 落ち 、 タイル を 叩く 音 だった 。 すいどう|かん|||||すい||おち|たいる||たたく|おと| それ 以外 、 音 と いう 音 が なかった 。 |いがい|おと|||おと|| いや 、 耳 を 押しつけた 祐一 の 胸 から 聞こえる 鼓動 以外 に 、 光代 に は 何も 聞こえ なかった 。 |みみ||おしつけた|ゆういち||むね||きこえる|こどう|いがい||てるよ|||なにも|きこえ| とつぜん 祐一 が からだ を 動かした か と 思う と 、 いきなり 唇 を 奪わ れた 。 |ゆういち||||うごかした|||おもう|||くちびる||うばわ| Юичи внезапно двинулся своим телом, и внезапно его губы оторвались. 乱暴な キス で 、 乾いた 祐一 の 唇 が 痛かった 。 らんぼうな|きす||かわいた|ゆういち||くちびる||いたかった Грубый поцелуй причинил боль пересохшим губам Юичи. 唇 を 吸わ れ 、 舌 を 押し込ま れた 。 くちびる||すわ||した||おしこま| Его губы были засосаны, а язык высунут. 光代 は 祐一 の シャシ を 掴 やけど んだ まま 、 その 熱い 舌 を ふくんだ 。 てるよ||ゆういち||||つか|||||あつい|した|| Мицуё, все еще держась за шасси Юичи, проглотил его горячий язык. 火傷 し そうな 熱い 舌 を 、 からだ 全体 で 抱きしめて い る ようだった 。 やけど||そう な|あつい|した|||ぜんたい||だきしめて||| Словно все его тело обнимало горячий язык, который вот-вот обожжется. 腰 から 力 が 抜けた 。 こし||ちから||ぬけた Я потерял силу в талии. 祐一 の 舌 が 唇 から 耳 へ と 移り 、 熱い 吐息 が 耳 の 奥 を 刺激 する 。 ゆういち||した||くちびる||みみ|||うつり|あつい|といき||みみ||おく||しげき| Yuichi's tongue moves from his lips to his ears, and his hot sighs irritate the back of his ears. Язык Юичи двинулся от его губ к ушам, и его горячее дыхание стимулировало глубину его ушей. 乱暴に シャシ を 脱 が さ れ 、 ブラ を 外さ れ 、 立った まま 祐一 の キス を 乳房 に 受けた 。 らんぼうに|||だつ||||||はずさ||たった||ゆういち||きす||ちぶさ||うけた 目 の 前 に 安っぽい ラブ ホテル の ベッド が あった 。 め||ぜん||やすっぽい|らぶ|ほてる||べっど|| 柔らか そうな 羽毛 布団 に 半 裸 で 倒れ込む 自分 が 見えた 。 やわらか|そう な|うもう|ふとん||はん|はだか||たおれこむ|じぶん||みえた すべて が 乱暴な のに 、 尻 を 撫でる 祐一 の 指先 だけ が 優しかった 。 ||らんぼうな||しり||なでる|ゆういち||ゆびさき|||やさしかった とても 乱暴に 扱わ れ て いる のに 、 からだ が それ 以上 を 求めて いた 。 |らんぼうに|あつかわ||||||||いじょう||もとめて| It was treated very roughly, but the body wanted more. 乱暴な の が 祐一 な の か 、 自分 な の か 分か ら なかった 。 らんぼうな|||ゆういち||||じぶん||||わか|| まるで 自分 が 祐一 を 操って 、 乱暴に 自分 自身 を 愛 撫 して いる ようだった 。 |じぶん||ゆういち||あやつって|らんぼうに|じぶん|じしん||あい|ぶ||| 自分 だけ が 裸 に なって 、 男 の 前 に 立って いた 。 じぶん|||はだか|||おとこ||ぜん||たって| 明る すぎる 蛍光 灯 の 下 、 内股 を 撫で ら れ 、 尻 を 掴まれ 、 光代 は 今にも 声 を 漏らし そうだった 。 あかる||けいこう|とう||した|うちまた||なで|||しり||つかま れ|てるよ||いまにも|こえ||もらし|そう だった 裸 の 光代 を 祐一 は 軽々 と 抱えて ベッド へ 運んだ 。 はだか||てるよ||ゆういち||かるがる||かかえて|べっど||はこんだ ほとんど 投げ捨てる ように 羽毛 布団 むし の 上 に 転がし 、 自分 の シャシ や Tシャツ を 鼈 り 取る ように 脱ぐ 。 |なげすてる||うもう|ふとん|||うえ||ころがし|じぶん||||t しゃつ||べつ||とる||ぬぐ 祐一 の 固い 胸 で 光代 の 乳房 が 潰れた 。 ゆういち||かたい|むね||てるよ||ちぶさ||つぶれた 祐一 が 動く たび に 、 光代 の 乳首 が 彼 の 肌 を 滑った 。 ゆういち||うごく|||てるよ||ちくび||かれ||はだ||すべった 気 が つく と うつ伏せ に されて いた 。 き||||うつぶせ||さ れて| 羽毛 布団 に 埋もれた から だ が 宙 に 浮いて いる よう あら が だった 。 うもう|ふとん||うずもれた||||ちゅう||ういて||||| 熱い 祐一 の 舌 が 、 背骨 を おりて いく 。 あつい|ゆういち||した||せぼね||| The hot Yuichi's tongue goes down the spine. 押し込ま れた 祐一 の 膝 で 、 どんなに 抗って も 脚 が 開く 。 おしこま||ゆういち||ひざ|||こう って||あし||あく 枕 に 顔 を 押しつける と 、 洗剤 の 匂い が した 。 まくら||かお||おしつける||せんざい||におい|| 光代 は 全身 から 力 を 抜いた 。 てるよ||ぜんしん||ちから||ぬいた 祐一 は まるで 壊そう と でも する ように 乱暴に 光代 の からだ を 愛 撫 した 。 ゆういち|||こわそう|||||らんぼうに|てるよ||||あい|ぶ| そして 、 まる で直そう と でも する ように 、 強く 抱きしめて きた 。 ||でなおそう|||||つよく|だきしめて| And I hugged him strongly, as if I was trying to fix it. 壊して は 直し 、 また 壊して は 直す 。 こわして||なおし||こわして||なおす 光代 は 自分 の からだ が 壊れた の か 、 それとも 最初 から 壊れて いた の か 分から なく なって くる 。 てるよ||じぶん||||こぼれた||||さいしょ||こぼれて||||わから||| 祐一 が 壊した から だ なら 、 もっと 激しく 壊して 欲しかった 。 ゆういち||こわした|||||はげしく|こわして|ほしかった 元々 壊れて いた から だ な ら 、 祐一 の 手 で 優しく 直して 欲しかった 。 もともと|こぼれて||||||ゆういち||て||やさしく|なおして|ほしかった 「 この 人 と は もう 二度と 会わ ん で も いい 。 |じん||||にどと|あわ|||| 今回 だけ 。 こんかい| そう 、 こんな こと 、 今日 だけ の こ と や もん 」 祐一 の 愛 撫 を 受け ながら 、 光代 は 胸 の うち で そう 眩 いた 。 |||きょう|||||||ゆういち||あい|ぶ||うけ||てるよ||むね|||||くら| もちろん 本心 で は ない のだ が 、 そう でも 自分 に 言わ ない と 、 ベッド の 上 で 身 を 振る 、 見た こと も ない 破廉恥な 自分 を 受け入れる こと が でき なかった 。 |ほんしん||||||||じぶん||いわ|||べっど||うえ||み||ふる|みた||||はれんちな|じぶん||うけいれる|||| 祐一 が ベルト を 外す 金属 音 が 聞こえた 。 ゆういち||べると||はずす|きんぞく|おと||きこえた ベッド に 運ばれて から 、 どれ くらい 時間 が 経った の か 、 とても 長い 間 、 ここ で 祐一 の 愛 撫 を 受けて いた ような 気 が する 。 べっど||はこば れて||||じかん||たった||||ながい|あいだ|||ゆういち||あい|ぶ||うけて|||き|| 十五 分 ? じゅうご|ぶん 三十 分 ? さんじゅう|ぶん いや 、 もう 一晩 も 二 晩 も 、 こう やって 祐一 の 指 に 撫でられ 、 祐一 の 熱い から だ に 押し潰されて いる ようだった 。 ||ひとばん||ふた|ばん||||ゆういち||ゆび||なで られ|ゆういち||あつい||||おしつぶさ れて|| その とき 、 ふっと から だ が 軽く なった 。 ||||||かるく| ベッド が 軋み 、 その 振動 で 枕 から 頭 が 落ちた 。 べっど||きしみ||しんどう||まくら||あたま||おちた The bed creaked and the vibration caused my head to fall from the pillow. 目 を 開ける と 、 裸 に なった 祐一 が 立って いる 。 め||あける||はだか|||ゆういち||たって| 泣いて いた わけで も ない のに 、 祐一 の 性器 が 涙 に かすんで 見えた 。 ないて||||||ゆういち||せいき||なみだ|||みえた から だ から すっか り 力 が 抜けて しまって 、 指 を 動かす の も 面倒だった 。 |||す っか||ちから||ぬけて||ゆび||うごかす|||めんどうだった 自分 が 素っ裸 で 見下ろされて いる のに 、 まったく 恥ずかし さ を 感じ なかった 。 じぶん||そ っ はだか||みおろさ れて||||はずかし|||かんじ| 祐一 の 片 膝 が 光代 の 顔 の すぐ 近く に のった 。 ゆういち||かた|ひざ||てるよ||かお|||ちかく|| マット が 深く 沈み 込み 、 光代 の 顔 は 転が る ように 、 祐一 の ほう へ 近づいた 。 まっと||ふかく|しずみ|こみ|てるよ||かお||てん が|||ゆういち||||ちかづいた 大きな 手のひら で 頭 を 後ろ から 抱え 上げられ 、 光代 は 目 を 閉じて 、 口 を 開いた 。 おおきな|てのひら||あたま||うしろ||かかえ|あげ られ|てるよ||め||とじて|くち||あいた 首筋 を 支える 祐一 の 手のひら は 優しい のに 、 喉 に 突き刺さる 性器 は 凶暴だった 。 くびすじ||ささえる|ゆういち||てのひら||やさしい||のど||つきささる|せいき||きょうぼうだった 光代 は また 自分 が 優しく されて いる の か 、 乱暴に 扱われて いる の か 分から なく なり 、 苦しい の か 、 嬉しい の か 分から ず に シーツ を 何度 も 掴んだ 。 てるよ|||じぶん||やさしく|さ れて||||らんぼうに|あつかわ れて||||わから|||くるしい|||うれしい|||わから|||しーつ||なんど||つかんだ みっともない 格好で ベッド に 横たわって いる の は 知っていた 。 |かっこうで|べっど||よこたわって||||しっていた そんな 格好 を さ せて 性 いし 』 器 を 舐め させる 祐一 が 憎らしくて 、 愛 おしかった 。 |かっこう||||せい||うつわ||なめ|さ せる|ゆういち||にくらしくて|あい| 腕 を 伸ばして 祐一 の 尻 を 掴んだ 。 うで||のばして|ゆういち||しり||つかんだ 汗ばんだ 尻 に 爪 を 立てた 。 あせばんだ|しり||つめ||たてた 痛み を 堪えた 祐一 が 声 を 漏らす 。 いたみ||こらえた|ゆういち||こえ||もらす その 声 を 、 光代 は もっと 聞きたい と 思った 。 |こえ||てるよ|||きき たい||おもった ◇ やっぱり 光代 に は 幸せに なって 欲し か です よ 。 |てるよ|||しあわせに||ほし||| 光代 の こと を 「 お 姉ちゃん 」って 呼ぶ こと は なか です ね 。 てるよ|||||ねえちゃん||よぶ||||| でも 、 どう やる ……、 呼び 捨て に し ながら 、 心 のどっか で 「 お 姉ちゃん 」って 呼びかけて る ところ は ある の かも し れません 。 |||よび|すて||||こころ|のど っか|||ねえちゃん||よびかけて||||||||れ ませ ん うち 、 弟 が 一 人 おって 、 その 弟 が 私 の 代わりって いう の は へ ン です けど 、 光代 の こと を 「 姉ちゃん 」って 呼ぶ んです よ 。 |おとうと||ひと|じん|||おとうと||わたくし||かわり って||||||||てるよ||||ねえちゃん||よぶ|| 私 の こと は 、「 珠代 」って 呼び捨て やけど 。 わたくし||||たまよ||よびすて| よく 双子って 互い の 考え とる こと が 分かる なんて 言わ れる じゃ ない です か 。 |ふたご って|たがい||かんがえ||||わかる||いわ||||| でも 私 と 光代って あんまり そういう ところ が なかった んです よ 。 |わたくし||てるよ って||||||| 別に 仲 が 悪かった わけじゃ なく て 、 もちろん 双子 や から 学校 でも 目立つ で しよ ? べつに|なか||わるかった|||||ふたご|||がっこう||めだつ|| だ から 小学校 の ころ まで は いつも 一 緒 に いて 、 クラスメイト たち の 好 奇 の 目 から 自分 たち を 守っとったって いう か 。 ||しょうがっこう||||||ひと|お||||||よしみ|き||め||じぶん|||しゅ っと った って|| …… う ん 、 やっぱり 小学校 まで は 私 たち 、 目立つ とったん じゃ ない か と 思います 。 |||しょうがっこう|||わたくし||めだつ||||||おもい ます でも 中学 に 進学 したら 、 隣 の 小学校 から 別の 双子 の 姉妹 が やってきて 、 それ も 私 たち なんか より 十 倍 くらい 可愛い 双子 。 |ちゅうがく||しんがく||となり||しょうがっこう||べつの|ふたご||しまい|||||わたくし||||じゅう|ばい||かわいい|ふたご 子供って 残酷 やけん 、 いつの間にか 私 たち は 「 不細工な 方 」 なん て 言わ れる ように なって 、 私 は どっち かって いう と そういう の 気 に せ ん ほう やけん 、 そ はう 患 』 んな こ と 言う 男の子 が おったら 追いかけて 、 箒 で 叩いたり し とった けど 、 あの ころ から か なあ 、 私 と 光代 の 性格って いう か 、 印象って いう か 、 髪 型 と か 洋服 の 趣味 と か 、 そう いう の が 少しずつ 違って きた の 。 こども って|ざんこく||いつのまにか|わたくし|||ぶさいくな|かた|||いわ||||わたくし||||||||き||||||||わずら||||いう|おとこのこ|||おいかけて|そう||たたいたり|||||||||わたくし||てるよ||せいかく って|||いんしょう って|||かみ|かた|||ようふく||しゅみ|||||||すこしずつ|ちがって|| …:。 高校 に 入った とき 、 高校 も ほんと は 同じ 学校 に 行く つもりじゃ なくて 、 私 は 最初 から 255 第 三 章 彼女 は 誰 に 出会った か ? こうこう||はいった||こうこう||||おなじ|がっこう||いく|||わたくし||さいしょ||だい|みっ|しょう|かのじょ||だれ||であった| When I entered high school, I wasn't really going to go to the same school, I was 255 from the beginning Chapter 3 Who did she meet? 共学 が よかった んです けど 、 光代 は 私立 の 女子 高 志望 で 、 でも 受験 に 失敗 して し も うて とにかく 高校 に 入って すぐ 、 お互い 好きな 人 が できた んです よ 。 きょうがく|||||てるよ||しりつ||じょし|たか|しぼう|||じゅけん||しっぱい||||||こうこう||はいって||おたがい|すきな|じん|||| Co-education was good, but Mitsuyo was aspiring to be a private high school girl, but even though he failed to take the exam, he just entered high school, and soon after he entered high school, we had people who liked each other. 私 の ほう は もう ほん と に 分かり やすくて 、 サッカー 部 の 花形 みたいな 男の子 やった ん やけど 、 光代 の ほう は おおき わ 大沢 くんって いう 、 なんか こう ネクラって わけ で も ない と やけど 、 バレー 部 も 一 カ月 く らい で 辞めて し も うて 、 どっち かって 言う と 勉強 も できる ほう じゃ なくて 、 ボーッ と し た 印象 の 子 で 。 わたくし||||||||わかり||さっかー|ぶ||はながた||おとこのこ||||てるよ||||||おおさわ|くん って||||ネクラ って|||||||ばれー|ぶ||ひと|かげつ||||やめて||||||いう||べんきょう||||||ぼーっ||||いんしょう||こ| もう ちょっと 髪 型 と か 洋服 と か 気 を 使えば 、 どうにか なり そうな もん や のに 、 ぜん ぜ ん そういう こと に も 興味 が ない みたいで 、 かといって 他 に 興味 が ある こと も な さ そうで ……。 ||かみ|かた|||ようふく|||き||つかえば|||そう な|||||||||||きょうみ|||||た||きょうみ|||||||そう で とにかく 光代 に 大沢 くん が 好き みたいな こと 言わ れた とき 、 私 、 え ッ ! |てるよ||おおさわ|||すき|||いわ|||わたくし|| て 声 上 げた んです よ ね 。 |こえ|うえ|||| あの とき か なあ 、 決定 的に 自分 と 光代 は 違う 人間 な んだ な あって 思う た の 。 ||||けってい|てきに|じぶん||てるよ||ちがう|にんげん|||||おもう|| 私 の ほう は 相手 が サッカー 部 の 花形 やった けん ライバル も 多くて 、 もちろん うまく い く こと も なかった んです けど 、 他 に 競争 相手 が おら ん か つた 光代 と 大沢 くん の ほう はう まく いったん です よ 。 わたくし||||あいて||さっかー|ぶ||はながた|||らいばる||おおくて||||||||||た||きょうそう|あいて||||||てるよ||おおさわ|||||||| いつ つ も 二 人 で 一緒に 帰ってました よ 。 |||ふた|じん||いっしょに|かえって ました| 並んで 自転車 押して 。 ならんで|じてんしゃ|おして だ いたい いつも 光代 が 大沢 くん の 家 に 寄って 、 それ でも 毎日 六 時 半 に は 帰って くる んです けど ね 、 夕飯 前 に 。 |い たい||てるよ||おおさわ|||いえ||よって|||まいにち|むっ|じ|はん|||かえって|||||ゆうはん|ぜん| 仲 の いい 双子って 言って も 、 訊 け ない こと も ある じゃ ない です か 。 なか|||ふたご って|いって||じん||||||||| 毎日 学校 が 終わる の が 四 時 頃 で 、 大沢 くん ち まで 歩いて 二十 分 くらい な んです ね 、って こと は 大沢 くん ち から うち まで 自転車 で 帰って くる と して も 、 毎日 二 人っきり で 二 時間 十五 分 くらい は 一 緒 に いる わけです よ 。 まいにち|がっこう||おわる|||よっ|じ|ころ||おおさわ||||あるいて|にじゅう|ぶん||||||||おおさわ||||||じてんしゃ||かえって|||||まいにち|ふた|じん っきり||ふた|じかん|じゅうご|ぶん|||ひと|お|||| 学校 でも ちらっと 噂 に なったり して て 、 みんな 、 光代 本人 に は 訊 けんもん やけん 、「 ねえ 、 光代 ちゃん と 大沢 くんって 、 もう ? がっこう|||うわさ||||||てるよ|ほんにん|||じん||||てるよ|||おおさわ|くん って| 」 なんて 、 私 に 訊 いて く る 人 も おって 。 |わたくし||じん||||じん|| 正直 、 妹 の 直感 と して は 、 光代 と 大沢 くん が 、 もう 、 その 、 なんて いう か 、 すでに して る 、って いう 感じ は ぜんぜん なかった んです けど ね 。 しょうじき|いもうと||ちょっかん||||てるよ||おおさわ|||||||||||||かんじ|||||| どっち に しろ 、 知 り たかった けど 、 聞き たく ないって いう か ……。 |||ち||||きき||ない って|| それ が 、 夏 休み が 終わった ばっかり の ころ やった か なぁ 、 やっぱり 光代 が 大沢 くん ち に 行って た とき 、 私 、 たまたま チアリーディング 部 の 練習 が 休み で 、 早く 家 に 帰って た んです よ 。 ||なつ|やすみ||おわった||||||||てるよ||おおさわ||||おこなって|||わたくし|||ぶ||れんしゅう||やすみ||はやく|いえ||かえって||| 当時 、 二 人 で 同じ 部屋 を 使っとって 、 本当に それ まで は そんな こと した こと なかった と やけど ……、 魔 が 差したって いう か 、 光代 の 机 の 引き出し 開けて 、 いつも 光 代 が 大沢 ぐんと 交換 して いる ノート を 盗み 読み して し もう たん です よ 。 とうじ|ふた|じん||おなじ|へや||つか っと って|ほんとうに|||||||||||ま||さした って|||てるよ||つくえ||ひきだし|あけて||ひかり|だい||おおさわ||こうかん|||のーと||ぬすみ|よみ|||||| たぶん 、 くだらない こと ばっかり なん やろう と 思った んです よ 。 |||||||おもった|| 心配 して た と して も 、 もし 自分 の 悪 口 と か 書いて あったら どう しよう と か 、 その 程度 やった んです 。 しんぱい|||||||じぶん||あく|くち|||かいて|||||||ていど|| パラパラって 捲ったら 、 予想 に 反して ぎっしり と 小さい 文字 が 書き込ま れ とって 。 ぱらぱら って|まくったら|よそう||はんして|||ちいさい|もじ||かきこま|| 私 、 光代 が 帰って こ ない か ビクビク し ながら 読んだ んです よ 。 わたくし|てるよ||かえって||||びくびく|||よんだ|| 読み 始めたら 、 なんか 背筋 が ぞっと して し も うて …。 よみ|はじめたら||せすじ|||||| :。 たしか 、 こんな 感じ の 内容 やった と 思います 。 ||かんじ||ないよう|||おもい ます 「 今 まで は ね 、 私 、 大沢 くん の こと が 好き やった と よ ◎ でも 最近 、 大沢 くん の 右腕 と か 、 大沢 くん の 耳 と か 、 大沢 くん の 指 と か 、 膝 と か 、 前歯 と か 、 息 と か 、 そういう 部分 部分 で 好きに なって きて しも うた ( 笑 )。 いま||||わたくし|おおさわ|||||すき|||||さいきん|おおさわ|||みぎうで|||おおさわ|||みみ|||おおさわ|||ゆび|||ひざ|||まえば|||いき||||ぶぶん|ぶぶん||すきに|||||わら 大沢 くん 全体 じゃ なくて 、 大沢 くん の 一つ一つ が 私 は 好きな んだ な あって 思う 。 おおさわ||ぜんたい|||おおさわ|||ひとつひとつ||わたくし||すきな||||おもう 本当に 誰 に も 取ら れ たく なか よ ・ 学校 と か で 誰 か が 大沢 くん の こと を 見る の も イヤ ( 笑 )」 どっち かって 言う と 、 光代 は 執着 心 が あまり ない んだ と 、 私 、 思って た んです よ 。 ほんとうに|だれ|||とら|||||がっこう||||だれ|||おおさわ|||||みる|||いや|わら|||いう||てるよ||しゅうちゃく|こころ||||||わたくし|おもって||| 子 供 の ころ から お 菓子 も おもちゃ も 全部 私 や 弟 に 譲って くれた し 、 なんて いう か 、 やっぱ り 長女 な んだ な あって 。 こ|とも|||||かし||||ぜんぶ|わたくし||おとうと||ゆずって||||||や っぱ||ちょうじょ|||| でも 大沢 ぐんと の 交換 日記 に は 、 そんな いつも の 光代 が いないって いう か 。 |おおさわ|||こうかん|にっき||||||てるよ||いない って|| お ので ら 「 今日 、2 組 の 小野寺 さん から 何 か 話しかけられ とった ね ? |||きょう|くみ||おのてら|||なん||はなしかけ られ|| 大沢 くん が 迷惑 そうな 顔 し とる けん 、 すごく おもしろかった 」 と か 、「 早く 卒業 して 大沢 ぐんと 一緒に 暮らした い ! おおさわ|||めいわく|そう な|かお||||||||はやく|そつぎょう||おおさわ||いっしょに|くらした| 暮らせる よ ね ? くらせる|| We can live here, right? ね ? そう 言えば 、 この 前 、 外 から 見た アパート 良 さ そう やった ね 。 |いえば||ぜん|がい||みた|あぱーと|よ|||| あそこ なら 外 に 大沢 くん が 買う 車 も 置ける し 、 子供 が 生まれて も 庭 で 遊ば せられ る し ね 」 と か 、 とにかく 、 いつも の 光代 の 口調 と 違って 、 どこ か 攻撃 的な 感じ やった ん です 。 ||がい||おおさわ|||かう|くるま||おける||こども||うまれて||にわ||あそば|せら れ|||||||||てるよ||くちょう||ちがって|||こうげき|てきな|かんじ||| 読み ながら 、 こん なんじ や 大沢 くん 迷惑 し とる んじゃ ない かって 思いました ね 。 よみ|||||おおさわ||めいわく||||||おもい ました| 私 、 だんだん 怖く なって ノート を 引き出し に 戻しました 。 わたくし||こわく||のーと||ひきだし||もどし ました なんか 光代って 本当に 無欲な 人 だ ご もつ と 思って た んです けど 、 光代 の 業って いう か 、 それ まで 知ら なかった 光代 の 欲 みたいな もの が 伝わって きて 、 なんか 悲しいって いう か 、 かわいそうって いう か 。 |てるよ って|ほんとうに|むよくな|じん|||||おもって||||てるよ||ぎょう って|||||しら||てるよ||よく||||つたわって|||かなしい って|||かわいそう って|| …:。 光代 と 大沢 くん 、 高校 を 卒業 する 前 に 別れた んです よ 。 てるよ||おおさわ||こうこう||そつぎょう||ぜん||わかれた|| 噂 だ と 大沢 くん が そのころ 通 い 始めた 塾 で 、 別の 子 を 好きに なった みたいな ん やけど 、 光代 本人 は 私 に 何も 言わ ん か つた です ね 。 うわさ|||おおさわ||||つう||はじめた|じゅく||べつの|こ||すきに|||||てるよ|ほんにん||わたくし||なにも|いわ||||| 私 も 敢えて 訊 かんかつ たし ……。 わたくし||あえて|じん|| 二 人 が 別れた とき 、 光代 が 荒れたり 、 泣 いて たりって 記憶 も ない んです 。 ふた|じん||わかれた||てるよ||あれたり|なき||たり って|きおく||| もちろん 陰 で 泣 いとった の かも しれ ん けど :….。 |かげ||なき|||||| でも 、 もう 昔 の 話 です もん ね 。 ||むかし||はなし||| 卒業 して 就職 して から 、 光代 が きちんと 付き合った 人って 二 人 だけ じゃ ないで す か ね 。 そつぎょう||しゅうしょく|||てるよ|||つきあった|じん って|ふた|じん|||||| どっち も あんまり 長続き せんか つた けど 。 |||ながつづき||| 光代って 私 みたいに 男の子 たち と 遊び 回る タ イプ じゃ ない んです よ 。 てるよ って|わたくし||おとこのこ|||あそび|まわる|||||| もう ちょっと 社交 的 ならって 、 思う こと も あります ね 。 ||しゃこう|てき||おもう|||あり ます| 今 、 一 緒 に 暮らし とる けど 、 心 のどっか で 、 この 同居 は 、「 光代 の ため 」って 思って る ところ が ある ような 気 も します 。 いま|ひと|お||くらし|||こころ|のど っか|||どうきょ||てるよ||||おもって||||||き||し ます 私 が 誰 か と 結婚 したら 、 この 人 、 一生 一 人 な んじゃ ない かって 思う こと も ある し 。 わたくし||だれ|||けっこん|||じん|いっしょう|ひと|じん|||||おもう|||| 結局 、 私 、 光代 の こと 好きな んです よ ね 。 けっきょく|わたくし|てるよ|||すきな||| すごく 引っ込み思案 な 姉 やけど 、 本当に 幸 せ に なって 欲しいって 思う 。 |ひっこみじあん||あね||ほんとうに|こう||||ほっし いって|おもう あれ は いつごろ やった か なあ 、 光代 が すごく 幸せ そうな 顔 して 自転車 漕いで る ところ を 、 私 、 たまたま バス の 中 から 見た んです よ 。 ||||||てるよ|||しあわせ|そう な|かお||じてんしゃ|こいで||||わたくし||ばす||なか||みた|| 考えて みれば 、 ちょうど あの ころ 、 光代 は その 清水 祐一って 人 と メール の やりとり 始めて た んです よ ねえ 。 かんがえて|||||てるよ|||きよみず|ゆういち って|じん||めーる|||はじめて|||| 体温 に は 匂い が ある んだ と 光代 は 思う 。 たいおん|||におい|||||てるよ||おもう 匂い が 混じり合う ように 体温 も 混じり合う の だ と 。 におい||まじりあう||たいおん||まじりあう||| 終了 時間 を 知らせる 電話 が 鳴った とき 、 祐一 は まだ 光代 の 上 に いた 。 しゅうりょう|じかん||しらせる|でんわ||なった||ゆういち|||てるよ||うえ|| 暖房 の 利き 過ぎ た ラブ ホテル の ベッド で 、 お互い の からだ が 汗 で 滑った 。 だんぼう||きき|すぎ||らぶ|ほてる||べっど||おたがい||||あせ||すべった 祐一 は 美しい 肌 を して いた 。 ゆういち||うつくしい|はだ||| 美しい 肌 に 汗 を 浮かべて 、 光代 の からだ を 突いて いた 。 うつくしい|はだ||あせ||うかべて|てるよ||||ついて| 電話 を 気 に して 動き を 止めた 祐一 に 、「…… やめ ん で 」 と 光代 は 言った 。 でんわ||き|||うごき||とどめた|ゆういち||||||てるよ||いった 祐一 は 電話 を 無視 した 。 ゆういち||でんわ||むし| 電話 を 無視 して 、 その 数 分 後 に ドア が ノック さ れる まで 、 光 代 の からだ を 突き 続けた 。 でんわ||むし|||すう|ぶん|あと||どあ||||||ひかり|だい||||つき|つづけた ドア の 向こう から 聞こえた おばさん の 声 に 、「 分かった ! どあ||むこう||きこえた|||こえ||わかった すぐ 出る ! |でる 」 と 祐一 は 怒 鳴った 。 |ゆういち||いか|なった 怒鳴った とたん 、 更に 奥 の ほう を 突か れた 。 どなった||さらに|おく||||つか| 光代 は 唇 を 噛み締めた 。 てるよ||くちびる||かみしめた すぐに 出る 、 と 祐一 が 叫び 返して から 、 すでに 十五 分 以上 経って いる 。 |でる||ゆういち||さけび|かえして|||じゅうご|ぶん|いじょう|たって| 光代 は 毛布 の 中 で 祐一 の 汗ばんだ から だ を 抱きしめ ながら 、「 おなか 減った ね ? てるよ||もうふ||なか||ゆういち||あせばんだ||||だきしめ|||へった| 」 と 笑った 。 |わらった 返事 の つもりな の か 、 まだ 荒い 息 を して いる 祐一 が 毛布 を 軽く 蹴り 飛ばす 。 へんじ||||||あらい|いき||||ゆういち||もうふ||かるく|けり|とばす 「 すぐ そこ に 、 美味しい うなぎ の 店 が ある と よ 」 毛布 が ベッド の 下 に 落ちて 、 裸 の まま 抱き合う 二 人 が 横 の 鏡 に 映って いる 。 |||おいしい|||てん|||||もうふ||べっど||した||おちて|はだか|||だきあう|ふた|じん||よこ||きよう||うつって| 先 に 起き 上がった の は 祐一 で 、 くっきり と 背骨 の 浮かんだ 背中 が 鏡 に 映る 。 さき||おき|あがった|||ゆういち||||せぼね||うかんだ|せなか||きよう||うつる 「 白 焼き と かも あって 、 けつ こう 本格 的な 店 」 ベッド を 降りよう と する 祐一 の 手 を 光代 は 、「 そこ に 行く ? しろ|やき||||||ほんかく|てきな|てん|べっど||おりよう|||ゆういち||て||てるよ||||いく 」 と 強く 引っ張った 。 |つよく|ひっぱった か ら だ を 捻った 祐一 が しばらく 光代 を 見つめた あと 、 小さく 頷く 。 ||||ねじった|ゆういち|||てるよ||みつめた||ちいさく|うなずく 光代 は ベッド から 降りる と 、 先 に 浴室 へ 向かった 。 てるよ||べっど||おりる||さき||よくしつ||むかった 背中 に 、「 時間 、 ない よ 」 と いう 祐一 の 声 が 聞こえた が 、「 もう どうせ 遅れ とる けん 、 延長 料 払わ ん ば さ 」 と 光代 は 答え た 。 せなか||じかん|||||ゆういち||こえ||きこえた||||おくれ|||えんちょう|りょう|はらわ|||||てるよ||こたえ| 黄色い タイル の 可愛い 浴室 だった 。 きいろい|たいる||かわいい|よくしつ| ここ に 窓 が あれば いい な 、 と 光代 は 思った 。 ||まど||||||てるよ||おもった Mitsuyo thought it would be nice if there was a window here. ここ に 窓 が あって 、 外 に は 小さな 庭 が ある 。 ||まど|||がい|||ちいさな|にわ|| 庭 の 向こう に 車 を 洗って いる 祐一 の 姿 が 見える 。 にわ||むこう||くるま||あらって||ゆういち||すがた||みえる 「 うなぎ 食べたら 、 今度 こそ 灯台 に 連れてって よ ! |たべたら|こんど||とうだい||つれて って| 」 と 光代 は 叫んだ 。 |てるよ||さけんだ 返事 は なかった が 、 光代 は 気分 よく シャワー を 浴びた 。 へんじ||||てるよ||きぶん||しゃわー||あびた There was no reply, but Mitsuyo took a shower feeling good. まだ 二 時 に も なって いない はずだった 。 |ふた|じ||||| これ か ら 長い 週 末 が 始まる のだ と 思う と 、 肌 を 流れる お 湯 まで 歌い 踊って いる ようだった 。 |||ながい|しゅう|すえ||はじまる|||おもう||はだ||ながれる||ゆ||うたい|おどって|| 「 時間 ない けん 、 一緒に シャワー 浴びれば ? じかん|||いっしょに|しゃわー|あびれば 」 光代 は 水音 に 負け ない ように 祐一 を 呼んだ 。 てるよ||みずおと||まけ|||ゆういち||よんだ 「 ねえ 、 清水 祐一って 本名 ? |きよみず|ゆういち って|ほんみょう 」 と 光代 は 訊 いた 。 |てるよ||じん| 祐一 が 前 を 見た まま 、 黙って 頷く 。 ゆういち||ぜん||みた||だまって|うなずく ラブ ホテル を 出て 、 うなぎ 屋 へ 向かう 車 の 中 だった 。 らぶ|ほてる||でて||や||むかう|くるま||なか| 今 、 浴びて きた ばかりの シャワ ー の せい か 、 からだ が まだ 火照って いた 。 いま|あびて||||-|||||||ほてって| し おり 「 じゃあ 、 私 、 謝ら ん と いけん 。 |||わたくし|あやまら||| 私 の 名前 、 馬 込 光代って 言う と 。 わたくし||なまえ|うま|こみ|てるよ って|いう| あの 栞って いう と は .・・・:」 光代 が そこ まで 言う と 、「 別に よか よ 。 |しおり って||||てるよ||||いう||べつに|| みんな 最初 は 偽名 やけん 」 と 祐一 が 言葉 を 遮 る 。 |さいしょ||ぎめい|||ゆういち||ことば||さえぎ| 「 みんなって 、 そんなに たくさんの 女の子 と 会う た わけ ? みんな って|||おんなのこ||あう|| 」 車 は 空いた 国道 を 信号 に も 引っかから ず に 走って いた 。 くるま||あいた|こくどう||しんごう|||ひっかから|||はしって| 自分 たち の 車 が 近寄る と 、 信 号 が さっと 青 に 変わる ようだった 。 じぶん|||くるま||ちかよる||しん|ごう|||あお||かわる| 「…… まあ 、 いい けど 」 祐一 が 何も 答え ない ので 、 光代 は すぐに 自分 の 質問 を 引っ込めた 。 |||ゆういち||なにも|こたえ|||てるよ|||じぶん||しつもん||ひっこめた 「 この 道 、 高校 の とき の 通学 路 」 光代 は 流れる 景色 を 目 で 追った 。 |どう|こうこう||||つうがく|じ|てるよ||ながれる|けしき||め||おった 「 あそこ に 安売り の 靴 屋 の 看板 ある やろ ? ||やすうり||くつ|や||かんばん|| あそこ を 右 に 曲がって 真っすぐ 田んぼ の 中 を 進んだ ところ が 高校 やった と 。 ||みぎ||まがって|まっすぐ|たんぼ||なか||すすんだ|||こうこう|| それ で この 道 を もう ちょっと 駅 の ほう に 戻った ところ に 小学校 と 中学 が あって ……、 それ より も もっと ちょっと 鳥栖 の ほう へ 行った ところ に 前 の 職場 。 |||どう||||えき||||もどった|||しょうがっこう||ちゅうがく||||||||とす||||おこなった|||ぜん||しょくば ・・…。 考えて みれば 、 私って 、 この 国道 から ぜんぜん 離れ ん か つた と ねえ 。 かんがえて||わたくし って||こくどう|||はなれ||||| こ の 国道 を 行ったり 来たり し とった だけ やった と よれ ぇ 。 ||こくどう||おこなったり|きたり||||||| …… 前 の 職場って ね 、 食品 関係 の 工場 やった と 。 ぜん||しょくば って||しょくひん|かんけい||こうじょう|| …… The previous workplace was a food-related factory. 同期 の 子 たち は みんな 単調 すぎるって 文句 ばっかり 言い よった けど 、 私 、 ああいう 流れ作業って そんなに 嫌いじゃ なかった かも 」 珍しく 車 が 信号 に 引っかかり 、 祐一 が ハンドル を 指 で 撫で ながら 光代 の ほう へ 顔 を 向 ける 。 どうき||こ||||たんちょう|すぎる って|もんく||いい|||わたくし||ながれさぎょう って||きらいじゃ|||めずらしく|くるま||しんごう||ひっかかり|ゆういち||はんどる||ゆび||なで||てるよ||||かお||むかい| All the children in sync just complained that it was too monotonous, but I didn't hate that kind of assembly line so much. ”Unusually, the car got caught in the traffic light, and Yuichi stroked the steering wheel with his finger. Turn your face to. 「 俺 も 似た ような もん 」 祐一 が ぼ そっと 眩 く ・ 一瞬 、 何の こと を 言わ れた の か 分から ず 、 光代 が 首 を 傾げる と 、 「 俺 も ずっと 近く ばっかり 。 おれ||にた|||ゆういち||||くら||いっしゅん|なんの|||いわ||||わから||てるよ||くび||かしげる||おれ|||ちかく| 小学校 も 中学 も 高校 も 家 から すぐ の 所 やった し 」 と 続ける 。 しょうがっこう||ちゅうがく||こうこう||いえ||||しょ||||つづける 「 でも 海 の 近く やった と やる ? |うみ||ちかく||| 海 の 近く なんて 羨ま しか ぁ 。 うみ||ちかく||うらやま|| 私 なんて ここ よ 」 ちょうど 信号 が 変わり 、 祐一 は ゆっくり と アクセル を 踏み込んだ 。 わたくし|||||しんごう||かわり|ゆういち||||あくせる||ふみこんだ 光代 の 町 、 ぽつり ぽつり と 店舗 の 建つ 殺風景な 街道 が 流れて いく 。 てるよ||まち||||てんぽ||たつ|さっぷうけいな|かいどう||ながれて| 「 あ 、 あれ あれ 、 ほら 、 うなぎって 看板 見える やろ ? ||||うなぎ って|かんばん|みえる| ほんとに 美味し か と よ ・・ 値段 も そんなに 高く ない し 」 おなか が 減って いた 。 |おいし||||ねだん|||たかく|||||へって| こんなに お なか が 減った の は ずいぶん 久しぶりの ような 気 が し た 。 ||||へった||||ひさしぶりの||き|||