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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第二章 アスターテ会戦 (3)

第 二 章 アスターテ 会戦 (3)

時計 方向 に 針路 を 変え ながら 全 速 前進 し 、 逆に 敵 の 後 背 に つく べきだ と 思います が 」 ラップ 少佐 の 提案 は 、 中将 の 巨体 に ぶつかって むなしく は じき かえさ れた 。

「 敵 の 後 背 に つく まで に 味方 の 大半 が やられて しまう 。 反転 攻撃 だ 」

「 ですが ――」

「 黙って おれ ! 」 ムーア 中将 は 満身 を 慄 わせ て 怒号 し 、 少佐 は 口 を 閉ざした 。 上官 が 冷静 さ を 欠いて いる こと を はっきり と 悟った から である 。

第 六 艦隊 旗 艦 ペルガモン の 巨体 が 反転 を 開始 する と 、 後続 の 諸 艦艇 も それ に ならった 。 だが 戦い つつ 反転 する の は 容易で は ない 。 老練な メルカッツ は 、 すかさず 敵 の 混乱 に 乗じた 。

帝国 軍 の ビーム 砲 は 流星 雨 に も 似た 光 の 束 を たたきつける 。 各 処 で 過 負荷 状態 に なった エネルギー 中和 磁場 が 引き裂か れ 、 同盟 軍 の 艦艇 は 破壊 されて いった 。 旧 戦場 に おける エネルギー の 怒 濤 が 、 新 戦場 でも 再現 さ れ つつ ある 。 それ に 翻弄 さ れる の は 、 同盟 軍 の 艦艇 ばかり である ように 、 ムーア 中将 に も ラップ 少佐 に も 思わ れた 。

「 小型 艦艇 多数 、 本 艦 に 急速 接近 ! 」 オペレーター が 叫ぶ 。 スクリーン の ひと つ に 、 ワルキューレ の 大群 が 映って いた が 、 その 姿 は たちまち 複数 の スクリーン の 画面 を 占拠 した 。 軽快な 運動 性 を 誇示 し つつ 、 至近 距離 から ビーム を 撃ちこんで くる 。

「 格闘 戦 だ 。 スパルタニアン を 発進 さ せろ 」

この 命令 も 遅き に 失した 。 スパルタニアン が 母艦 から 離脱 する 瞬間 を 、 ワルキューレ は 待ちかまえて いる 。 条 光 が 無慈悲に ほとばしる と 、 同盟 軍 の 戦闘 艇 は 闘 死 する 権利 すら あたえ られ ず 、 火 球 と 化して 四散 する のだった 。

「 司令 官 、 あれ を ! 」 オペレーター が スクリーン の ひと つ を 指ししめした 。 帝国 軍 の 戦艦 が 肉迫 して いる 。 その 背後 に も 、 さらに その 背後 に も 、 かさなりあう か の ように 敵 の 艦 影 が 見えた 。 威圧 感 が 艦 橋 内 に みなぎった 。 ペルガモン は いまや 重 囲 の なか に ある 。

「 発光 信号 を 送って きて います 」 オペレーター が ささやく ように 報告 した 。

「 解読 して みろ 」

ムーア 中将 が 沈黙 して いる ので 、 ラップ 少佐 が うながした 。 その 声 も 低く 乾いて いる 。

「 解読 します …… 貴 艦 は 完全に 包囲 せ られたり 、 脱出 の 途 なし 、 降伏 せよ 、 寛大なる 処遇 を 約束 す ……」 解読 が くりかえされて 終わる と 、 無数の 視線 と 無数の 沈黙 が 、 ムーア 中将 の 巨体 に 突き刺さった 。 その すべて が 、 司令 官 に 決断 を うながして いる 。

「 降伏 だ と ……」

うめいた 中将 の 顔 は 、 どす黒く 変色 して いた 。

「 いや 、 おれ は 無能であって も 卑怯 者 に は なれ ん 」

二〇 秒 後 、 白い 閃光 が 彼ら を つつんだ 。

Ⅴ 蓄積 さ れた 不安 が 飽和 状態 に 達しよう と して いる 。 同盟 軍 第 二 艦隊 旗 艦 パトロクロス の 艦 橋 は 見え ない 雷雲 に 支配 されて いた 。 いつ 強烈な 放電 が 襲いかかって くる か 。 第 一 級 臨戦 態勢 の 発令 で 全員 が スペース ・ スーツ を 着用 して いた が 、 不安 は スーツ を 透過 して 彼ら の 皮膚 を 鳥肌 だ た せて いる 。

「 第 四 艦隊 も 第 六 艦隊 も 全滅 した らしい ぞ 」

「 吾々 は 孤立 して いる 。 いまや 敵 は わが 部隊 より 数 が 多い 」

「 情報 が ほしい 、 どう なって いる んだ 、 現在 の 状況 は ? 」 私 語 は 禁止 されて いる 。 しかし なに か しゃべって いない と 不安に たえ られ ない 彼ら だった 。 こんな こと は 予定 に なかった 。 半数 の 敵 を 三方 から 包囲 撃 滅 し 、 完勝 の 凱歌 を あげる はずで は なかった の か ……。

「 敵 艦隊 、 接近 します ! 」 突然 、 オペレーター の 声 が マイク を とおして 艦 橋 内 に ひびきわたった 。 「 方角 は 一 時 から 二 時 ……」

ヤン は つぶやいた 。 その 独 語 に 、 つぎの 報告 が 応えた 。

「 方角 は 一 時 二〇 分 、 俯 角一 一 度 、 急速に 接近 中 」

旗 艦 パトロクロス の 艦 橋 を 鷲づかみ した 緊張 に 、 ヤン は 感応 し なかった 。

予測 して いた とおり である 。 帝国 軍 は 同盟 軍 第 六 艦隊 の 右側 背 から 左 前面 へ 抜け 、 しぜんな カーブ を 描き ながら 、 最後に 残った 第 二 艦隊 へ と 矛先 を むけた のだ 。 第 二 艦隊 が 直進 する 以上 、 帝国 軍 が 一 時 から 二 時 に かけて の 方角 に 出現 する の は 当然である 。

「 戦闘 準備 ! 」 パエッタ 中将 が 指令 する 。 遅い な 、 と ヤン は 思う 。

敵 が 来る の を 待って 応戦 する の は 正統 的な 戦法 で は ある が 、 今回 の 場合 、 思考 の 硬直 性 を 指摘 せ ざる を え ない 。 うつ べき 手 も 、 その ため の 時間 も あった はずだ 。 急速 移動 して 敵 の 背後 を つき 、 第 六 艦隊 と 呼応 して 挟 撃 する の は 不可能で は なかった 。

戦う 以上 、 犠牲 が 皆無 と いう こと は あり え ない 。 だが 同時に 、 犠牲 の 増加 に 反比例 して 戦勝 の 効果 は 減少 する 。 この 双方 の 命題 を 両立 さ せる 点 に 用 兵 学 の 存在 意義 が ある はずだ 。 つまり 最小 の 犠牲 で 最大 の 効果 を 、 と いう こと であり 、 冷酷な 表現 を もちいれば 、 いかに 効率 よく 味方 を 殺す か 、 と いう こと に なる であろう 。 司令 官 は それ を 理解 して いる の か な 、 と ヤン は うたがった 。

すでに 生じた 犠牲 は しかたない 。 本来 、 しかたない で すませられる 問題 で は なく 、 軍 首脳 は 自分 たち の 作戦 指揮 の 拙劣 さ を 恥じ なければ なら ない ところ である 。 しかし それ は すべて が 終結 して から であり 、 現在 心せ ねば なら ない こと は ミス の 拡大 再 生産 を 防止 し 、 禍 を 転じて 福 と なす べく 工夫 する こと だ 。

後悔 して 、 戦死 した 将兵 が 復活 する もの なら 、 キロ リットル 単位 の 涙 を 流す の も よかろう 。 だが …… けっきょく 、 それ は 悲愴 ごっこ に すぎ ないで は ない か 。

「 全 艦隊 、 砲門 開け ! 」 その 命令 と 、 どちら が さき か 判 じ がたい 。 網膜 を 灼 きつく す か と 思わ れる ほど の 閃光 が 、 艦 橋 に いる 全員 の 視力 を 奪った 。

半 瞬 の 差 を おいて 、 パトロクロス の 艦 体 が 咋裂 する エネルギー に つきあげ られ 、 あらゆる 方向 に 揺すぶら れた 。

悲鳴 と 怒声 に 、 転倒 と 衝突 の 音 が かさなった 。 ヤン も 転倒 を まぬがれ なかった 。 背中 を 強打 して 呼吸 が 停 まる 。 周囲 で いり乱れる 音 や 声 、 強烈な 空気 の 流れ を ヘルメット の 通信 装置 に 感じ ながら 、 ヤン は 呼吸 を ととのえ 、 見え ない 目 に 掌 を あてて いまさら の ように かばった 。

誰 を 責める べき か 、 スクリーン の 入 光 量 さえ 調整 して なかった と は 許し がたい 失態 だ 。 こんな こと が かさなって は 負け ない ほう が 不思議である 。

「…… こちら 後部 砲塔 ! 艦 橋 、 応答 せよ 、 どうか 指令 を ! 」 「 機関 室 、 こちら 機関 室 、 艦 橋 、 応答 願います ……」 ヤン は ようやく 目 を あけた 。 視界 全体 に エメラルド 色 の 靄 が かかって いる 。

半身 を おこして 、 傍 に 転がって いる 人間 に 気 が つく 。 濃い 色調 を した 粘り の ある 液体 が 口 もと から 胸 に かけて その 身体 を おおって いる ……。

「 総 司令 官 ! 」 つぶやいて 、 ヤン は 中将 の 顔 を 覗きこんだ 。 両足 を 踏みしめて たちあがる 。

壁面 の 一部 に 裂 目 が はいり 、 気圧 が 急 低下 して いる 。 磁力 靴 の スイッチ を いれて い なかった 者 が 幾 人 か 吸いだされて しまった ようだ 。 しかし その 裂 目 は 、 自動 修復 システム の 作業 銃 が 吹きつける 接着 剤 の 霧 に よって 急速に ふさがれ つつ ある 。

ほとんど 立つ 者 の ない ありさま に なった 艦 橋 内 を 見わたし 、 スペース ・ スーツ の 通信 装置 が 機能 して いる こと を 確認 する と 、 ヤン は 指示 を くだし はじめた 。

「 パエッタ 総 司令 官 が 負傷 さ れた 。 軍医 および 看護 兵 は 艦 橋 に 来て くれ 。 運用 士官 は ただちに 艦 体 の 被害 状況 を 調べて 修復 せよ 、 報告 は その あと で よし 。 急いで くれ 。 後部 砲塔 は すでに 全 艦隊 が 戦闘 状態 に ある 以上 、 とくに 指令 の 必要 は ない はずだ 。 あたえ られた 任務 を はたせ 。 機関 室 は なに か ? 」 「 艦 橋 の 状況 が 心配だった のです 。 こちら は 損害 ありません 」 「 それ は よかった 」

声 に 多少 の 皮肉 が あった 。

「 この とおり 艦 橋 は 機能 して いる 。 安心 して 任務 に 専念 して ほしい 」

ふたたび 艦 橋 内 を 見わたす 。

「 誰 か 士官 で 無事な 者 は ? 」 「 私 は 大丈夫です 、 准将 」 いささか あぶない 歩調 で 、 ひと り が ちかづいて きた 。

「 きみ は 、 ええ と ……」

「 幕僚 チーム の ラオ 少佐 です 」

スペース ・ スーツ の ヘルメット から のぞく 目 と 鼻 の 小さな 顔 は ヤン と 同 年配 の ようだった 。 それ に 二 名 の 航 宙 士 、 ひと り の オペレーター が 手 を あげて たちあがった が 、 それ だけ である 。

「 ほか に は いない の か ……」 ヤン は ヘルメット の うえ から 頰 を たたいた 。 これ で は 第 二 艦隊 首脳 部 は 全滅 に ひとしい 。

軍医 と 看護 兵 の 一団 が 駆けつけて きた 。 手ぎわ よく パエッタ 中将 を 診察 し 、 指揮 卓 の 角 で 胸 を 強打 した とき 、 折れた 肋骨 が 肺 に 刺さった のだ と 告げる 。 よほど 運 が 悪かった のです な 、 と いら ざる 感想 を 述べた 。 その 逆に ヤン が 運 が よかった こと は 否定 でき ない 。

「 ヤン 准将 ……」

心身 双方 の 苦痛 に 責め られ ながら パエッタ 中将 が 若い 幕僚 を 呼んだ 。

「 きみ が 艦隊 の 指揮 を とれ ……」

「 私 が です か ? 」 「 健在な 士官 の なか で 、 どうやら きみ が 最 高位 だ 。 用 兵 家 と して の きみ の 手腕 を ……」

声 が とぎれ 、 中将 は 失神 した 。 軍医 が 救急 用 ロボット ・ カー を 呼んだ 。

「 高く 評価 されてます ね 」 ラオ 少佐 が 感心 した 。

「 そう かな ? 」 中将 と ヤン の 意見 対立 を 知ら ない ラオ 少佐 は 、 その 返答 に 不審 げ な 表情 に なった 。 ヤン は 通信 盤 に 歩みより 、 艦 外 通信 の スイッチ を いれた 。 人間 より 機械 の ほう が 安全に 造られて いる ようだ 。 「 全 艦隊 に 告げる 。 私 は パエッタ 総 司令 官 の 次 席 幕僚 ヤン 准将 だ 」

ヤン の 声 は 虚無 の 空間 を つらぬいて は しった 。

「 旗 艦 パトロクロス が 被弾 し 、 パエッタ 総 司令 官 は 重傷 を おわ れた 。 総 司令 官 の 命令 に より 、 私 が 全 艦隊 の 指揮 を ひきつぐ 」

ここ で ひと 呼吸 おいて 、 味方 が 驚愕 から 解放 さ れる だけ の 余裕 を あたえる 。

「 心配 する な 。 私 の 命令 に したがえば 助かる 。 生還 したい 者 は おちついて 私 の 指示 に したがって ほしい 。 わが 部隊 は 現在 の ところ 負けて いる が 、 要は 最後 の 瞬間 に 勝って いれば いい のだ 」

お やおや 、 自分 も 偉 そうな こと を 言って いる な …… ヤン は 苦笑 した が 、 内心 だけ の こと で 、 表面 に は ださ なかった 。 指揮 官 たる 者 は 、 当人 は うなだれて いて も 影 だけ は 胸 を 張って い なければ なら ない 。

「 負け は し ない 。 あらたな 指示 を 伝える まで 、 各 艦 は 各 個 撃破 に 専念 せよ 。 以上 だ 」

その 声 は 帝国 軍 に も 傍受 されて いた 。 旗 艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 で 、 ラインハルト が かたち の いい 眉 を かるく 吊 り あげた 。

「 負け は し ない 。 自分 の 命令 に したがえば 助かる 、 か 。 ずいぶん と 大言壮語 を 吐く 奴 が 叛乱 軍 に も いる のだ な 」

氷 片 に 似た 冷たい 輝き が 両眼 に 宿った 。

「 この 期 に およんで 、 どう 劣勢 を 挽回 する 気 で いる のだ ? …… ふむ 、 まあ いい 、 お てなみ 拝見 と いこう か 。 キルヒアイス ! 」 「 はい 」 「 戦列 を くみ なおす 。 全 艦隊 、 紡 錘陣 形 を とる よう 伝達 して くれ 。 理由 は わかる な ? 」 「 中央 突破 を なさる お つもり です か 」 「 そうだ 。


第 二 章 アスターテ 会戦 (3) だい|ふた|しょう||かいせん Chapter II Astarte Battle (3)

時計 方向 に 針路 を 変え ながら 全 速 前進 し 、 逆に 敵 の 後 背 に つく べきだ と 思います が 」 とけい|ほうこう||しんろ||かえ||ぜん|はや|ぜんしん||ぎゃくに|てき||あと|せ|||||おもいます| ラップ 少佐 の 提案 は 、 中将 の 巨体 に ぶつかって むなしく は じき かえさ れた 。 らっぷ|しょうさ||ていあん||ちゅうじょう||きょたい||||||かえ さ|

「 敵 の 後 背 に つく まで に 味方 の 大半 が やられて しまう 。 てき||あと|せ|||||みかた||たいはん||| 反転 攻撃 だ 」 はんてん|こうげき|

「 ですが ――」

「 黙って おれ ! だまって| 」 ムーア 中将 は 満身 を 慄 わせ て 怒号 し 、 少佐 は 口 を 閉ざした 。 むーあ|ちゅうじょう||まんしん||りつ|||どごう||しょうさ||くち||とざした 上官 が 冷静 さ を 欠いて いる こと を はっきり と 悟った から である 。 じょうかん||れいせい|||かいて||||||さとった||

第 六 艦隊 旗 艦 ペルガモン の 巨体 が 反転 を 開始 する と 、 後続 の 諸 艦艇 も それ に ならった 。 だい|むっ|かんたい|き|かん|||きょたい||はんてん||かいし|||こうぞく||しょ|かんてい|||| だが 戦い つつ 反転 する の は 容易で は ない 。 |たたかい||はんてん||||よういで|| 老練な メルカッツ は 、 すかさず 敵 の 混乱 に 乗じた 。 ろうれんな||||てき||こんらん||じょうじた

帝国 軍 の ビーム 砲 は 流星 雨 に も 似た 光 の 束 を たたきつける 。 ていこく|ぐん|||ほう||りゅうせい|あめ|||にた|ひかり||たば|| 各 処 で 過 負荷 状態 に なった エネルギー 中和 磁場 が 引き裂か れ 、 同盟 軍 の 艦艇 は 破壊 されて いった 。 かく|しょ||か|ふか|じょうたい|||えねるぎー|ちゅうわ|じば||ひきさか||どうめい|ぐん||かんてい||はかい|| 旧 戦場 に おける エネルギー の 怒 濤 が 、 新 戦場 でも 再現 さ れ つつ ある 。 きゅう|せんじょう|||えねるぎー||いか|とう||しん|せんじょう||さいげん|||| それ に 翻弄 さ れる の は 、 同盟 軍 の 艦艇 ばかり である ように 、 ムーア 中将 に も ラップ 少佐 に も 思わ れた 。 ||ほんろう|||||どうめい|ぐん||かんてい|||よう に|むーあ|ちゅうじょう|||らっぷ|しょうさ|||おもわ|

「 小型 艦艇 多数 、 本 艦 に 急速 接近 ! こがた|かんてい|たすう|ほん|かん||きゅうそく|せっきん 」 オペレーター が 叫ぶ 。 ||さけぶ スクリーン の ひと つ に 、 ワルキューレ の 大群 が 映って いた が 、 その 姿 は たちまち 複数 の スクリーン の 画面 を 占拠 した 。 すくりーん|||||||たいぐん||うつって||||すがた|||ふくすう||すくりーん||がめん||せんきょ| 軽快な 運動 性 を 誇示 し つつ 、 至近 距離 から ビーム を 撃ちこんで くる 。 けいかいな|うんどう|せい||こじ|||しきん|きょり||||うちこんで|

「 格闘 戦 だ 。 かくとう|いくさ| スパルタニアン を 発進 さ せろ 」 ||はっしん||

この 命令 も 遅き に 失した 。 |めいれい||おそき||しっした スパルタニアン が 母艦 から 離脱 する 瞬間 を 、 ワルキューレ は 待ちかまえて いる 。 ||ぼかん||りだつ||しゅんかん||||まちかまえて| 条 光 が 無慈悲に ほとばしる と 、 同盟 軍 の 戦闘 艇 は 闘 死 する 権利 すら あたえ られ ず 、 火 球 と 化して 四散 する のだった 。 じょう|ひかり||むじひに|||どうめい|ぐん||せんとう|てい||たたか|し||けんり|||||ひ|たま||かして|しさん||

「 司令 官 、 あれ を ! しれい|かん|| 」 オペレーター が スクリーン の ひと つ を 指ししめした 。 ||すくりーん|||||さししめした 帝国 軍 の 戦艦 が 肉迫 して いる 。 ていこく|ぐん||せんかん||にくはく|| その 背後 に も 、 さらに その 背後 に も 、 かさなりあう か の ように 敵 の 艦 影 が 見えた 。 |はいご|||||はいご||||||よう に|てき||かん|かげ||みえた 威圧 感 が 艦 橋 内 に みなぎった 。 いあつ|かん||かん|きょう|うち|| ペルガモン は いまや 重 囲 の なか に ある 。 |||おも|かこ||||

「 発光 信号 を 送って きて います 」 はっこう|しんごう||おくって|| オペレーター が ささやく ように 報告 した 。 |||よう に|ほうこく|

「 解読 して みろ 」 かいどく||

ムーア 中将 が 沈黙 して いる ので 、 ラップ 少佐 が うながした 。 むーあ|ちゅうじょう||ちんもく||||らっぷ|しょうさ|| その 声 も 低く 乾いて いる 。 |こえ||ひくく|かわいて|

「 解読 します …… 貴 艦 は 完全に 包囲 せ られたり 、 脱出 の 途 なし 、 降伏 せよ 、 寛大なる 処遇 を 約束 す ……」 かいどく||とうと|かん||かんぜんに|ほうい|||だっしゅつ||と||こうふく||かんだいなる|しょぐう||やくそく| 解読 が くりかえされて 終わる と 、 無数の 視線 と 無数の 沈黙 が 、 ムーア 中将 の 巨体 に 突き刺さった 。 かいどく|||おわる||むすうの|しせん||むすうの|ちんもく||むーあ|ちゅうじょう||きょたい||つきささった その すべて が 、 司令 官 に 決断 を うながして いる 。 |||しれい|かん||けつだん|||

「 降伏 だ と ……」 こうふく||

うめいた 中将 の 顔 は 、 どす黒く 変色 して いた 。 |ちゅうじょう||かお||どすぐろく|へんしょく||

「 いや 、 おれ は 無能であって も 卑怯 者 に は なれ ん 」 |||むのうであって||ひきょう|もの||||

二〇 秒 後 、 白い 閃光 が 彼ら を つつんだ 。 ふた|びょう|あと|しろい|せんこう||かれら||

Ⅴ 蓄積 さ れた 不安 が 飽和 状態 に 達しよう と して いる 。 ちくせき|||ふあん||ほうわ|じょうたい||たっしよう||| 同盟 軍 第 二 艦隊 旗 艦 パトロクロス の 艦 橋 は 見え ない 雷雲 に 支配 されて いた 。 どうめい|ぐん|だい|ふた|かんたい|き|かん|||かん|きょう||みえ||らいうん||しはい|| いつ 強烈な 放電 が 襲いかかって くる か 。 |きょうれつな|ほうでん||おそいかかって|| 第 一 級 臨戦 態勢 の 発令 で 全員 が スペース ・ スーツ を 着用 して いた が 、 不安 は スーツ を 透過 して 彼ら の 皮膚 を 鳥肌 だ た せて いる 。 だい|ひと|きゅう|りんせん|たいせい||はつれい||ぜんいん||すぺーす|すーつ||ちゃくよう||||ふあん||すーつ||とうか||かれら||ひふ||とりはだ||||

「 第 四 艦隊 も 第 六 艦隊 も 全滅 した らしい ぞ 」 だい|よっ|かんたい||だい|むっ|かんたい||ぜんめつ|||

「 吾々 は 孤立 して いる 。 われ々||こりつ|| いまや 敵 は わが 部隊 より 数 が 多い 」 |てき|||ぶたい||すう||おおい

「 情報 が ほしい 、 どう なって いる んだ 、 現在 の 状況 は ? じょうほう|||||||げんざい||じょうきょう| 」 私 語 は 禁止 されて いる 。 わたくし|ご||きんし|| しかし なに か しゃべって いない と 不安に たえ られ ない 彼ら だった 。 ||||||ふあんに||||かれら| こんな こと は 予定 に なかった 。 |||よてい|| 半数 の 敵 を 三方 から 包囲 撃 滅 し 、 完勝 の 凱歌 を あげる はずで は なかった の か ……。 はんすう||てき||さんぼう||ほうい|う|めつ||かんしょう||がいか|||||||

「 敵 艦隊 、 接近 します ! てき|かんたい|せっきん| 」 突然 、 オペレーター の 声 が マイク を とおして 艦 橋 内 に ひびきわたった 。 とつぜん|||こえ||まいく|||かん|きょう|うち|| 「 方角 は 一 時 から 二 時 ……」 ほうがく||ひと|じ||ふた|じ

ヤン は つぶやいた 。 その 独 語 に 、 つぎの 報告 が 応えた 。 |どく|ご|||ほうこく||こたえた

「 方角 は 一 時 二〇 分 、 俯 角一 一 度 、 急速に 接近 中 」 ほうがく||ひと|じ|ふた|ぶん|うつむ|かくいち|ひと|たび|きゅうそくに|せっきん|なか

旗 艦 パトロクロス の 艦 橋 を 鷲づかみ した 緊張 に 、 ヤン は 感応 し なかった 。 き|かん|||かん|きょう||わしづかみ||きんちょう||||かんのう||

予測 して いた とおり である 。 よそく|||| 帝国 軍 は 同盟 軍 第 六 艦隊 の 右側 背 から 左 前面 へ 抜け 、 しぜんな カーブ を 描き ながら 、 最後に 残った 第 二 艦隊 へ と 矛先 を むけた のだ 。 ていこく|ぐん||どうめい|ぐん|だい|むっ|かんたい||みぎがわ|せ||ひだり|ぜんめん||ぬけ||かーぶ||えがき||さいごに|のこった|だい|ふた|かんたい|||ほこさき||| 第 二 艦隊 が 直進 する 以上 、 帝国 軍 が 一 時 から 二 時 に かけて の 方角 に 出現 する の は 当然である 。 だい|ふた|かんたい||ちょくしん||いじょう|ていこく|ぐん||ひと|じ||ふた|じ||||ほうがく||しゅつげん||||とうぜんである

「 戦闘 準備 ! せんとう|じゅんび 」 パエッタ 中将 が 指令 する 。 |ちゅうじょう||しれい| 遅い な 、 と ヤン は 思う 。 おそい|||||おもう

敵 が 来る の を 待って 応戦 する の は 正統 的な 戦法 で は ある が 、 今回 の 場合 、 思考 の 硬直 性 を 指摘 せ ざる を え ない 。 てき||くる|||まって|おうせん||||せいとう|てきな|せんぽう|||||こんかい||ばあい|しこう||こうちょく|せい||してき||||| うつ べき 手 も 、 その ため の 時間 も あった はずだ 。 ||て|||||じかん||| 急速 移動 して 敵 の 背後 を つき 、 第 六 艦隊 と 呼応 して 挟 撃 する の は 不可能で は なかった 。 きゅうそく|いどう||てき||はいご|||だい|むっ|かんたい||こおう||はさ|う||||ふかのうで||

戦う 以上 、 犠牲 が 皆無 と いう こと は あり え ない 。 たたかう|いじょう|ぎせい||かいむ||||||| だが 同時に 、 犠牲 の 増加 に 反比例 して 戦勝 の 効果 は 減少 する 。 |どうじに|ぎせい||ぞうか||はんぴれい||せんしょう||こうか||げんしょう| この 双方 の 命題 を 両立 さ せる 点 に 用 兵 学 の 存在 意義 が ある はずだ 。 |そうほう||めいだい||りょうりつ|||てん||よう|つわもの|まな||そんざい|いぎ||| つまり 最小 の 犠牲 で 最大 の 効果 を 、 と いう こと であり 、 冷酷な 表現 を もちいれば 、 いかに 効率 よく 味方 を 殺す か 、 と いう こと に なる であろう 。 |さいしょう||ぎせい||さいだい||こうか||||||れいこくな|ひょうげん||||こうりつ||みかた||ころす||||||| 司令 官 は それ を 理解 して いる の か な 、 と ヤン は うたがった 。 しれい|かん||||りかい|||||||||

すでに 生じた 犠牲 は しかたない 。 |しょうじた|ぎせい|| 本来 、 しかたない で すませられる 問題 で は なく 、 軍 首脳 は 自分 たち の 作戦 指揮 の 拙劣 さ を 恥じ なければ なら ない ところ である 。 ほんらい||||もんだい||||ぐん|しゅのう||じぶん|||さくせん|しき||せつれつ|||はじ||||| しかし それ は すべて が 終結 して から であり 、 現在 心せ ねば なら ない こと は ミス の 拡大 再 生産 を 防止 し 、 禍 を 転じて 福 と なす べく 工夫 する こと だ 。 |||||しゅうけつ||||げんざい|こころせ||||||みす||かくだい|さい|せいさん||ぼうし||か||てんじて|ふく||||くふう|||

後悔 して 、 戦死 した 将兵 が 復活 する もの なら 、 キロ リットル 単位 の 涙 を 流す の も よかろう 。 こうかい||せんし||しょうへい||ふっかつ||||きろ||たんい||なみだ||ながす||| だが …… けっきょく 、 それ は 悲愴 ごっこ に すぎ ないで は ない か 。 ||||ひそう|||||||

「 全 艦隊 、 砲門 開け ! ぜん|かんたい|ほうもん|あけ 」 その 命令 と 、 どちら が さき か 判 じ がたい 。 |めいれい||||||はん|| 網膜 を 灼 きつく す か と 思わ れる ほど の 閃光 が 、 艦 橋 に いる 全員 の 視力 を 奪った 。 もうまく||しゃく|||||おもわ||||せんこう||かん|きょう|||ぜんいん||しりょく||うばった

半 瞬 の 差 を おいて 、 パトロクロス の 艦 体 が 咋裂 する エネルギー に つきあげ られ 、 あらゆる 方向 に 揺すぶら れた 。 はん|またた||さ|||||かん|からだ||さくれつ||えねるぎー|||||ほうこう||ゆすぶら|

悲鳴 と 怒声 に 、 転倒 と 衝突 の 音 が かさなった 。 ひめい||どせい||てんとう||しょうとつ||おと|| ヤン も 転倒 を まぬがれ なかった 。 ||てんとう||| 背中 を 強打 して 呼吸 が 停 まる 。 せなか||きょうだ||こきゅう||てい| 周囲 で いり乱れる 音 や 声 、 強烈な 空気 の 流れ を ヘルメット の 通信 装置 に 感じ ながら 、 ヤン は 呼吸 を ととのえ 、 見え ない 目 に 掌 を あてて いまさら の ように かばった 。 しゅうい||いりみだれる|おと||こえ|きょうれつな|くうき||ながれ||へるめっと||つうしん|そうち||かんじ||||こきゅう|||みえ||め||てのひら|||||よう に|

誰 を 責める べき か 、 スクリーン の 入 光 量 さえ 調整 して なかった と は 許し がたい 失態 だ 。 だれ||せめる|||すくりーん||はい|ひかり|りょう||ちょうせい|||||ゆるし||しったい| こんな こと が かさなって は 負け ない ほう が 不思議である 。 |||||まけ||||ふしぎである

「…… こちら 後部 砲塔 ! |こうぶ|ほうとう 艦 橋 、 応答 せよ 、 どうか 指令 を ! かん|きょう|おうとう|||しれい| 」 「 機関 室 、 こちら 機関 室 、 艦 橋 、 応答 願います ……」 きかん|しつ||きかん|しつ|かん|きょう|おうとう|ねがいます ヤン は ようやく 目 を あけた 。 |||め|| 視界 全体 に エメラルド 色 の 靄 が かかって いる 。 しかい|ぜんたい|||いろ||もや|||

半身 を おこして 、 傍 に 転がって いる 人間 に 気 が つく 。 はんしん|||そば||ころがって||にんげん||き|| 濃い 色調 を した 粘り の ある 液体 が 口 もと から 胸 に かけて その 身体 を おおって いる ……。 こい|しきちょう|||ねばり|||えきたい||くち|||むね||||からだ|||

「 総 司令 官 ! そう|しれい|かん 」 つぶやいて 、 ヤン は 中将 の 顔 を 覗きこんだ 。 |||ちゅうじょう||かお||のぞきこんだ 両足 を 踏みしめて たちあがる 。 りょうあし||ふみしめて|

壁面 の 一部 に 裂 目 が はいり 、 気圧 が 急 低下 して いる 。 へきめん||いちぶ||さ|め|||きあつ||きゅう|ていか|| 磁力 靴 の スイッチ を いれて い なかった 者 が 幾 人 か 吸いだされて しまった ようだ 。 じりょく|くつ||すいっち|||||もの||いく|じん||すいだされて|| しかし その 裂 目 は 、 自動 修復 システム の 作業 銃 が 吹きつける 接着 剤 の 霧 に よって 急速に ふさがれ つつ ある 。 ||さ|め||じどう|しゅうふく|しすてむ||さぎょう|じゅう||ふきつける|せっちゃく|ざい||きり|||きゅうそくに|||

ほとんど 立つ 者 の ない ありさま に なった 艦 橋 内 を 見わたし 、 スペース ・ スーツ の 通信 装置 が 機能 して いる こと を 確認 する と 、 ヤン は 指示 を くだし はじめた 。 |たつ|もの||||||かん|きょう|うち||みわたし|すぺーす|すーつ||つうしん|そうち||きのう|||||かくにん|||||しじ|||

「 パエッタ 総 司令 官 が 負傷 さ れた 。 |そう|しれい|かん||ふしょう|| 軍医 および 看護 兵 は 艦 橋 に 来て くれ 。 ぐんい||かんご|つわもの||かん|きょう||きて| 運用 士官 は ただちに 艦 体 の 被害 状況 を 調べて 修復 せよ 、 報告 は その あと で よし 。 うんよう|しかん|||かん|からだ||ひがい|じょうきょう||しらべて|しゅうふく||ほうこく||||| 急いで くれ 。 いそいで| 後部 砲塔 は すでに 全 艦隊 が 戦闘 状態 に ある 以上 、 とくに 指令 の 必要 は ない はずだ 。 こうぶ|ほうとう|||ぜん|かんたい||せんとう|じょうたい|||いじょう||しれい||ひつよう||| あたえ られた 任務 を はたせ 。 ||にんむ|| 機関 室 は なに か ? きかん|しつ||| 」 「 艦 橋 の 状況 が 心配だった のです 。 かん|きょう||じょうきょう||しんぱいだった|の です こちら は 損害 ありません 」 ||そんがい| 「 それ は よかった 」

声 に 多少 の 皮肉 が あった 。 こえ||たしょう||ひにく||

「 この とおり 艦 橋 は 機能 して いる 。 ||かん|きょう||きのう|| 安心 して 任務 に 専念 して ほしい 」 あんしん||にんむ||せんねん||

ふたたび 艦 橋 内 を 見わたす 。 |かん|きょう|うち||みわたす

「 誰 か 士官 で 無事な 者 は ? だれ||しかん||ぶじな|もの| 」 「 私 は 大丈夫です 、 准将 」 わたくし||だいじょうぶ です|じゅんしょう いささか あぶない 歩調 で 、 ひと り が ちかづいて きた 。 ||ほちょう||||||

「 きみ は 、 ええ と ……」

「 幕僚 チーム の ラオ 少佐 です 」 ばくりょう|ちーむ|||しょうさ|

スペース ・ スーツ の ヘルメット から のぞく 目 と 鼻 の 小さな 顔 は ヤン と 同 年配 の ようだった 。 すぺーす|すーつ||へるめっと|||め||はな||ちいさな|かお||||どう|ねんぱい|| それ に 二 名 の 航 宙 士 、 ひと り の オペレーター が 手 を あげて たちあがった が 、 それ だけ である 。 ||ふた|な||わたる|ちゅう|し||||||て|||||||

「 ほか に は いない の か ……」 ヤン は ヘルメット の うえ から 頰 を たたいた 。 ||へるめっと|||||| これ で は 第 二 艦隊 首脳 部 は 全滅 に ひとしい 。 |||だい|ふた|かんたい|しゅのう|ぶ||ぜんめつ||

軍医 と 看護 兵 の 一団 が 駆けつけて きた 。 ぐんい||かんご|つわもの||いちだん||かけつけて| 手ぎわ よく パエッタ 中将 を 診察 し 、 指揮 卓 の 角 で 胸 を 強打 した とき 、 折れた 肋骨 が 肺 に 刺さった のだ と 告げる 。 てぎわ|||ちゅうじょう||しんさつ||しき|すぐる||かど||むね||きょうだ|||おれた|あばらぼね||はい||ささった|||つげる よほど 運 が 悪かった のです な 、 と いら ざる 感想 を 述べた 。 |うん||わるかった|の です|||||かんそう||のべた その 逆に ヤン が 運 が よかった こと は 否定 でき ない 。 |ぎゃくに|||うん|||||ひてい||

「 ヤン 准将 ……」 |じゅんしょう

心身 双方 の 苦痛 に 責め られ ながら パエッタ 中将 が 若い 幕僚 を 呼んだ 。 しんしん|そうほう||くつう||せめ||||ちゅうじょう||わかい|ばくりょう||よんだ

「 きみ が 艦隊 の 指揮 を とれ ……」 ||かんたい||しき||

「 私 が です か ? わたくし||| 」 「 健在な 士官 の なか で 、 どうやら きみ が 最 高位 だ 。 けんざいな|しかん|||||||さい|こうい| 用 兵 家 と して の きみ の 手腕 を ……」 よう|つわもの|いえ||||||しゅわん|

声 が とぎれ 、 中将 は 失神 した 。 こえ|||ちゅうじょう||しっしん| 軍医 が 救急 用 ロボット ・ カー を 呼んだ 。 ぐんい||きゅうきゅう|よう|ろぼっと|かー||よんだ

「 高く 評価 されてます ね 」 たかく|ひょうか|| ラオ 少佐 が 感心 した 。 |しょうさ||かんしん|

「 そう かな ? 」 中将 と ヤン の 意見 対立 を 知ら ない ラオ 少佐 は 、 その 返答 に 不審 げ な 表情 に なった 。 ちゅうじょう||||いけん|たいりつ||しら|||しょうさ|||へんとう||ふしん|||ひょうじょう|| ヤン は 通信 盤 に 歩みより 、 艦 外 通信 の スイッチ を いれた 。 ||つうしん|ばん||あゆみより|かん|がい|つうしん||すいっち|| 人間 より 機械 の ほう が 安全に 造られて いる ようだ 。 にんげん||きかい||||あんぜんに|つくられて|| 「 全 艦隊 に 告げる 。 ぜん|かんたい||つげる 私 は パエッタ 総 司令 官 の 次 席 幕僚 ヤン 准将 だ 」 わたくし|||そう|しれい|かん||つぎ|せき|ばくりょう||じゅんしょう|

ヤン の 声 は 虚無 の 空間 を つらぬいて は しった 。 ||こえ||きょむ||くうかん||||

「 旗 艦 パトロクロス が 被弾 し 、 パエッタ 総 司令 官 は 重傷 を おわ れた 。 き|かん|||ひだん|||そう|しれい|かん||じゅうしょう||| 総 司令 官 の 命令 に より 、 私 が 全 艦隊 の 指揮 を ひきつぐ 」 そう|しれい|かん||めいれい|||わたくし||ぜん|かんたい||しき||

ここ で ひと 呼吸 おいて 、 味方 が 驚愕 から 解放 さ れる だけ の 余裕 を あたえる 。 |||こきゅう||みかた||きょうがく||かいほう|||||よゆう||

「 心配 する な 。 しんぱい|| 私 の 命令 に したがえば 助かる 。 わたくし||めいれい|||たすかる 生還 したい 者 は おちついて 私 の 指示 に したがって ほしい 。 せいかん||もの|||わたくし||しじ||| わが 部隊 は 現在 の ところ 負けて いる が 、 要は 最後 の 瞬間 に 勝って いれば いい のだ 」 |ぶたい||げんざい|||まけて|||ようは|さいご||しゅんかん||かって|||

お やおや 、 自分 も 偉 そうな こと を 言って いる な …… ヤン は 苦笑 した が 、 内心 だけ の こと で 、 表面 に は ださ なかった 。 ||じぶん||えら|そう な|||いって|||||くしょう|||ないしん|||||ひょうめん|||| 指揮 官 たる 者 は 、 当人 は うなだれて いて も 影 だけ は 胸 を 張って い なければ なら ない 。 しき|かん||もの||とうにん|||||かげ|||むね||はって||||

「 負け は し ない 。 まけ||| あらたな 指示 を 伝える まで 、 各 艦 は 各 個 撃破 に 専念 せよ 。 |しじ||つたえる||かく|かん||かく|こ|げきは||せんねん| 以上 だ 」 いじょう|

その 声 は 帝国 軍 に も 傍受 されて いた 。 |こえ||ていこく|ぐん|||ぼうじゅ|| 旗 艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 で 、 ラインハルト が かたち の いい 眉 を かるく 吊 り あげた 。 き|かん|||かん|きょう|||||||まゆ|||つり||

「 負け は し ない 。 まけ||| 自分 の 命令 に したがえば 助かる 、 か 。 じぶん||めいれい|||たすかる| ずいぶん と 大言壮語 を 吐く 奴 が 叛乱 軍 に も いる のだ な 」 ||たいげんそうご||はく|やつ||はんらん|ぐん|||||

氷 片 に 似た 冷たい 輝き が 両眼 に 宿った 。 こおり|かた||にた|つめたい|かがやき||りょうがん||やどった

「 この 期 に およんで 、 どう 劣勢 を 挽回 する 気 で いる のだ ? |き||||れっせい||ばんかい||き||| …… ふむ 、 まあ いい 、 お てなみ 拝見 と いこう か 。 |||||はいけん||| キルヒアイス ! 」 「 はい 」 「 戦列 を くみ なおす 。 せんれつ||| 全 艦隊 、 紡 錘陣 形 を とる よう 伝達 して くれ 。 ぜん|かんたい|つむ|すいじん|かた||||でんたつ|| 理由 は わかる な ? りゆう||| 」 「 中央 突破 を なさる お つもり です か 」 ちゅうおう|とっぱ|||||| 「 そうだ 。 そう だ