トラ 退治 とら|たいじ extermination of tigers

トラ 退治 とら|たいじ

むかし むかし 、 ある ところ に 、 トラ 狩り の 上手な お じいさん が い ました 。 |||||とら|かり||じょうずな||||| この お じいさん に 鉄砲 ( てっぽう ) を 向け られたら 、 どんなに 強い トラ も たちまち 撃ち 殺さ れて しまい ます 。 ||||てっぽう|||むけ|||つよい|とら|||うち|ころさ||| ですから トラ 山 の トラ たち は 、 お じいさん の 姿 を 見る と 慌てて 逃げ 帰って しまい ました 。 |とら|やま||とら||||||すがた||みる||あわてて|にげ|かえって|| 「 やあ 、 今日 は 危ない ところ だった 。 や あ|きょう||あぶない|| もう 少し で あの じいさん に 見つかる ところ だった 」 と 、 トラ の お 父さん は 冷や汗 を ふき ながら 、 子ども に 話し ました 。 |すこし|||||みつかる||||とら|||とうさん||ひやあせ||||こども||はなし| お じいさん の 腕前 は 、 トラ たち の 間 で は 誰一人 知ら ない もの は あり ませ ん 。 |||うでまえ||とら|||あいだ|||だれひとり|しら|||||| けれども お じいさん は 、 もう 年 を 取って い ました 。 |||||とし||とって|| それ で 鉄砲 の 打ち 方 を 、 息子 に 教え たい と 思い ました 。 ||てっぽう||うち|かた||むすこ||おしえ|||おもい| ところが この 息子 は 大変な 怠け者 で 、 まったく 鉄砲 を 習おう と は し ない のです 。 ||むすこ||たいへんな|なまけもの|||てっぽう||ならおう||||| 「 そんな もの覚え たって しようがない 。 |ものおぼえ|| 山中 の トラ は 、 親父 が みんな 退治 し ちまう だろう から 」 と 、 勝手な 事 を 言って は 、 毎日 毎日 遊んで い ました 。 さんちゅう||とら||おやじ|||たいじ||ち まう||||かってな|こと||いって||まいにち|まいにち|あそんで|| 「・・・・・・」 　 お じいさん は どう しよう も なく 、 一 人 で 山 へ 行って は トラ を 打ち取って い ました 。 |||||||ひと|じん||やま||おこなって||とら||うちとって|| けれども 息子 の お 嫁 さん は とても しっかり して いる ので 、 お じいさん は この お 嫁 さん だけ を 頼り に して い ました 。 |むすこ|||よめ|||||||||||||よめ||||たより||||

ある 日 、 お じいさん が ポックリ と 死んで しまい ました 。 |ひ||||||しんで|| 今度 は 息子 が 働か なければ 、 暮らして は いけ ませ ん 。 こんど||むすこ||はたらか||くらして|||| そこ で 息子 は 仕方なし に 、 山 へ 木 を 切り に 出かけ ました 。 ||むすこ||しかた なし||やま||き||きり||でかけ|

ある 時 、 息子 が 山 で 木 を 切って いる と 、 木 の かげ から 大きな トラ が 現れ ました 。 |じ|むすこ||やま||き||きって|||き||||おおきな|とら||あらわれ| 息子 は ビックリ して 、 腰 が 抜けて しまい ました 。 むすこ||びっくり||こし||ぬけて|| 「 ト 、 ト 、 トラ さま 。 ||とら| ど 、 どう か 、 お 、 お 助け を ・・・」 　 トラ は 、 舌なめずり を して 言い ました 。 |||||たすけ||とら||したなめずり|||いい| 「 駄目だ 。 だめだ わし の 家族 は みんな 、 お前 の じいさん に 殺さ れて しまった 。 ||かぞく|||おまえ||||ころさ|| 今度 は こっち が お前 を 殺す 番 だ 」 「 ト 、 トラ さま 。 こんど||||おまえ||ころす|ばん|||とら| 待って 下さい 。 まって|ください 召し上がる なら 、 明日 の 朝 まで 待って 下さい 。 めしあがる||あした||あさ||まって|ください この たき ぎ を 家 へ 置いて 来 ます から 。 ||||いえ||おいて|らい|| そう し ない と 、 家 の 者 が 困る んです 」 「・・・ ふむ 。 ||||いえ||もの||こまる|ん です| それ なら 、 明日 の 朝 早く 来い 」 　 トラ は 、 ゆっくり 立ち去り ました 。 ||あした||あさ|はやく|こい|とら|||たちさり|

息子 は 青い 顔 で 家 に たどり着く と 、 お 嫁 さん に 山 で 何 が あった か を 話し ました 。 むすこ||あおい|かお||いえ||たどりつく|||よめ|||やま||なん|||||はなし| 「 それ で 、 どう する つもりな の ？ 」 と 、 お 嫁 さん は 尋ね ました 。 ||よめ|||たずね| 息子 は 、 「 どう する って 、 夜 が 明けたら 、 約束 通り 殺さ れ に 行く しか ない だろう 」 と 、 言って 、 泣き 出し ました 。 むすこ|||||よ||あけたら|やくそく|とおり|ころさ|||いく|||||いって|なき|だし| する と 、 お 嫁 さん は ニッコリ して 言い ました 。 |||よめ|||にっこり||いい| 「 そう ね 。 では 行って らっしゃい な 。 |おこなって|| お 父さん が トラ 退治 を 教えて 下さる と 言って いた のに 、 なまけて いた あなた が 悪い んです もの 」 |とうさん||とら|たいじ||おしえて|くださる||いって|||||||わるい|ん です|

次の 朝 、 息子 は ションボリ と うなだれて 、 山 へ 登って 行き ました 。 つぎの|あさ|むすこ||しょんぼり|||やま||のぼって|いき| お 父さん に 鉄砲 の 打ち 方 ぐらい 教わって おけば よかった と 思って も 、 もう どうにも なり ませ ん 。 |とうさん||てっぽう||うち|かた||おそわって||||おもって|||||| おまけに お 嫁 さん まで 、 ニッコリ 笑って 送り出して くれた のです 。 ||よめ|||にっこり|わらって|おくりだして|| これ で は もう 、 死ぬ より ほか は あり ませ ん 。 ||||しぬ||||||

息子 は お 昼 近く に 、 やっと 昨日 の 場所 ヘ 着き ました 。 むすこ|||ひる|ちかく|||きのう||ばしょ||つき| 「 やい 、 遅い ぞ ！ |おそい| 」 　 トラ が 、 キバ を むいて 怒鳴り ました 。 とら|||||どなり| 「 は 、 はい 、 その 、 あの ・・・」 と 、 息子 が モグモグ 言って いる と 、 突然 後ろ の 木 の 間 から 、 「 せがれ 、 お前 の 前 に ある の は たき ぎ か ？ |||||むすこ||もぐもぐ|いって|||とつぜん|うしろ||き||あいだ|||おまえ||ぜん||||||| それとも トラ か ？ |とら| 」 と 、 言う 声 が し ました 。 |いう|こえ||| ハッと 振り向く と 、 木 の 間 から トラ 狩り 名人 の お じいさん が 、 鉄砲 を こちら に 向けて 立って いる で は あり ませ ん か 。 はっと|ふりむく||き||あいだ||とら|かり|めいじん|||||てっぽう||||むけて|たって||||||| ビックリ した の は 、 トラ の 方 です 。 びっくり||||とら||かた| あわてて 首 を すくめる と 、 息子 に 小声 で 言い ました 。 |くび||||むすこ||こごえ||いい| 「『 たき ぎ です 』 と 、 言え 」 　 息子 は 、 言わ れた 通り 、 「 たき ぎ です ！ ||||いえ|むすこ||いわ||とおり||| 」 と 、 大きな 声 で 返事 を し ました 。 |おおきな|こえ||へんじ||| 「 それ なら 、 なぜ さっさと 束 に して しばら ない んだ ？ ||||たば||||| 」 と 、 お じいさん が 尋ね ました 。 ||||たずね| すると トラ が 、 「『 一 人 じゃ 、 しばれ ませ ん 。 |とら||ひと|じん|||| あと で やり ます 』 と 、 言え 」 「 一 人 じゃ 、 しばれ ませ ん 。 |||||いえ|ひと|じん|||| あと で ・・・」 　 息子 が 言い かける と 、 お じいさん は 、 「 一 人 で 出来 ない の なら 、 わし が 手伝って やる 」 と 、 言い ました 。 ||むすこ||いい||||||ひと|じん||でき||||||てつだって|||いい| トラ は 驚いて 、 「 じいさん を 呼ぶ な 。 とら||おどろいて|||よぶ| お前 一 人 で しばれ 。 おまえ|ひと|じん|| その代わり あと で ほどいて くれ よ 。 そのかわり||||| お前 を 食う の は 、 やめ に して やる から な 」 　 そこ で 息子 は 、 震え ながら トラ を しばり 始め ました 。 おまえ||くう|||||||||||むすこ||ふるえ||とら|||はじめ| すると お じいさん は 、 「 グルグル 巻き に 、 しばった か ？ ||||ぐるぐる|まき||| 」 と 、 尋ね ました 。 |たずね| 「 いいえ 、 一 回 きり です 」 「 たき ぎ なら 、 グルグル 巻き に しろ 」 「 うん 。 |ひと|かい||||||ぐるぐる|まき||| 五 回 しばった よ 」 「 まだ だ 、 もっと 、 しばれ 」 　 息子 は 言わ れる まま に 、 トラ の 体 を グルグル 巻き に しばり ました 。 いつ|かい|||||||むすこ||いわ||||とら||からだ||ぐるぐる|まき||| 「 どう だ 」 「 十五 回 、 しばった よ 」 「 よかろう 」 　 お じいさん は 鉄砲 を 持ちかえる と 、 木 の 間 から 出て き ました 。 ||じゅうご|かい|||||||てっぽう||もちかえる||き||あいだ||でて|| そして 近寄って きて 、 息子 の 顔 を 見て ニッコリ 。 |ちかよって||むすこ||かお||みて|にっこり 「・・・？ あっ 、 あれっ 、 お前 か あ 」 　 現れた の は 、 お じいさん の 姿 を した 自分 の お 嫁 さん だった のです 。 ||おまえ|||あらわれた||||||すがた|||じぶん|||よめ||| しっかり者 の お 嫁 さん の おかげ で 、 だんな さん は トラ を 生け捕り に した のです 。 しっかりもの|||よめ||||||||とら||いけどり|||

おしまい