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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第九章 アムリッツァ (2)

第 九 章 アムリッツァ (2)

磁力 砲 の 撃ち だす 超 硬度 鋼 の 砲弾 は 戦艦 の 装甲 を つらぬき 、 核 融合 榴散 弾 や 光子 弾 の 炸裂 は 、 乗員 もろとも ワルキューレ を 微 粒子 の 雲 に 変えて しまった 。

有 彩 色 と 無 彩 色 の 閃光 が かさなりあい 、 一瞬 ごと に 冥土 へ の 関門 を 開いて 兵士 たち を とおした 。

ビッテンフェルト が 誇る 〝 黒色 槍 騎兵 〟 の 黒色 は 、 屍 衣 の 色 と 化し つつ ある ようだった 。

通信 士官 が ラインハルト を ふりむいて 叫んだ 。

「 閣下 ! ビッテンフェルト 提督 より 通信 、 至急 、 援軍 を 請う と の こと です 」

「 援軍 ? 」 金髪 の 若い 元帥 は するどく 反応 し 、 通信 士官 は たじろいだ 。 「 はい 、 閣下 、 援軍 です 。 このまま 戦況 が 推移 すれば 負ける と 提督 は 申して おります 」 ラインハルト の 足 もと で 、 軍靴 の 踵 が 激しく 鳴った 。 可動 式 の 椅子 が あれば 蹴 倒して いた であろう 。

「 私 が 魔法 の 壺 を もって いて 、 そこ から 艦隊 が 湧きでて くる と でも 奴 は 思って いる の か !?」

どなった ラインハルト は 、 しかし 一瞬 で 怒り を 抑制 した 。 最高 司令 官 は つねに 冷静で なければ なら ない のだ 。

「 ビッテンフェルト に 伝えろ 。 総 司令 部 に 余剰 兵力 は ない 。 他の 戦線 から 兵力 を まわせば 、 全 戦線 の バランス が 崩れる 。 現有 兵力 を もって 部署 を 死守 し 、 武人 と して の 職責 を まっとうせよ 、 と 」

いったん 口 を 閉ざして から 改めて 命令 した 。

「 以後 、 ビッテンフェルト から の 通信 を 切れ 。 敵 に 傍受 さ れたら わが 軍 の 窮状 が 知れる 」

ふたたび スクリーン に 蒼氷 色 の 瞳 を むけた ラインハルト を 、 オーベルシュタイン の 視線 が おった 。

冷厳だ が 正しい 処置 だ 、 と 半 白 の 髪 の 参謀 長 は 考えた 。 ただ 、 と 彼 は 思う 。 万 人 にたいして ひとしく このような 処置 が とれる か 。 覇者 に 聖域 が あって は なら ない のだ が ……。

「 よく やって る じゃ ない か 、 どちら も 」

スクリーン を 見 ながら ラインハルト は つぶやいて いた 。

総 司令 部 が 遠い 後方 に あり 、 全体 の 指揮 が 円滑 を 欠く に も かかわら ず 、 同盟 軍 は 善戦 して いる 。 とくに 第 一三 艦隊 の 働き は みごとだ 。 司令 官 は あの ヤン ・ ウェンリー だ と いう 。 名将 の もと に 弱 兵 が ない と は よく 言った もの だ 。 自分 が これ から 征 こう と する 途上 に 、 あの 男 は 立ちはだかって くる のだろう か 。

ラインハルト は 、 不意に オーベルシュタイン を かえりみた 。

「 キルヒアイス は まだ 来 ない か ? 」 「 まだ です 」 簡明に 答えた 参謀 長 は 、 意識 して か 否 か 、 皮肉っぽい 質問 を 発した 。 「 ご 心配です か 、 閣下 ? 」 「 心配 など して いない 。 確認 した だけ だ 」

たたきつける ように 応じる と 、 ラインハルト は 口 を 閉ざして スクリーン を にらんだ 。

そのころ 、 全軍 の 三 割 と いう 大 兵力 を 指揮 下 に おいた キルヒアイス は 、 アムリッツァ の 太陽 を 大きく 迂回 して 同盟 軍 の 後 背 に まわりこみ つつ あった 。

「 予定 より すこし おくれて いる 。 急ぐ ぞ 」

同盟 軍 の 監視 から のがれる ため 、 キルヒアイス は 太陽 の 表面 ちかく を 航行 した のだ が 、 予測 以上 に 強い 磁力 や 重力 の ため 航法 システム が 影響 を うけ 、 航法 士 たち は 原始 的な 筆算 で 航路 を 算定 せ ざる を え なかった のだ 。 それ が 理由 で 、 彼 の 軍 は スピード を おとした のだ が 、 ようやく 目的 宙 域 に 到達 した 。

同盟 軍 の 後 背 ―― そこ に は 広大で 分厚い 機雷 原 が あった 。

たとえ 帝国 軍 が 後 背 に まわった と して も 、 四〇〇〇万 個 の 核 融合 機雷 が その 進行 を はばむ はずだった 。 同盟 軍 首脳 部 は そう 信じて いた 。 ヤン も 完全に 安心 して は い なかった が 、 敵 が 機雷 原 を 突破 する 有効な 手段 を もって いて も 、 短 時間 で は 無理であり 、 彼ら が 戦場 に 到達 する まで に 応戦 態勢 を ととのえる こと が できる ので は ない か 、 と 思って いた 。

しかし 、 帝国 軍 の 戦法 は 、 ヤン の 予測 すら も こえて いた のだ 。

「 指向 性 ゼッフル 粒子 を 放出 せよ 」

キルヒアイス の 命令 が 伝達 さ れた 。

帝国 軍 は 同盟 軍 に さきんじて 、 指向 性 を 有する ゼッフル 粒子 の 開発 に 成功 した のだった 。 これ を 実戦 で 使用 する の は 今回 が 最初である 。

円筒 状 の 放出 装置 が 三 台 、 工作 艦 に ひかれて 機雷 原 に ちかづいた 。 「 早く し ない と 、 やっつける 敵 が い なく なって しまう かも しれません な 」 幕僚 の ジンツァー 大佐 が 大声 で 言い 、 キルヒアイス は かるく 苦笑 した 。

濃密な 粒子 の 群 が 、 星 間 物質 の 雲 の 柱 の ように 機雷 原 を つらぬいて ゆく 。 機雷 に そなわった 熱量 や 質量 の 感知 システム も 反応 し ない 。

「 ゼッフル 粒子 、 機雷 原 の むこう 側 まで 達し ました 」

先頭 艦 から 報告 が とどいた 。

「 よし 、 点火 ! 」 キルヒアイス が 叫ぶ と 、 先頭 艦 の 三 門 の ビーム 砲 が 慎重に それぞれ ことなった 方向 を さだめ 、 ビーム を 射 出した 。 つぎの 瞬間 、 三 本 の 巨大な 炎 の 柱 が 機雷 原 を 割った 。 白熱 した 光 が 消えさった あと 、 機雷 原 は 三 カ所 に わたって えぐり 抜かれ 、 その 位置 に あった 機雷 は 消滅 して いた 。

機雷 原 の ただなか に 、 直径 二〇〇 キロ 、 長 さ 三〇万 キロ の トンネル 状 の 安全 通路 が 三 本 、 短 時間 の うち に つくら れた のである 。

「 全 艦隊 突撃 ! 最 大戦 速 だ 」

赤毛 の 若い 提督 の 命令 が 帝国 軍 を かりたてた 。 三万 隻 を かぞえる 彼 の 艦隊 は 、 三 本 の トンネル を 流星 群 の ように 駆けぬけ 、 同盟 軍 の 無防備の 背中 に 襲いかかって いく 。

「 後 背 に 敵 の 大軍 ! 」 数 を 特定 でき ない ほど の 発光 体 の 群 を 感知 して オペレーター たち が 絶叫 した とき 、 キルヒアイス 軍 の 先頭 部隊 は 砲撃 に よって 同盟 軍 の 艦 列 に つぎつぎ と 穴 を あけ はじめて いた 。 同盟 軍 の 指揮 官 たち は 驚き 、 うろたえた 。 それ は 何 倍 に も 増幅 されて 兵士 たち に 伝わり ―― その 瞬間 、 同盟 軍 の 戦線 は 崩壊 した 。 艦 列 が 崩れ 、 無秩序に 散らばり かけた 同盟 軍 に 帝国 軍 は 砲火 を あびせ 、 容赦 なく たたきのめし 、 撃ち くだいた 。

勝敗 は 決した 。

味方 が 総崩れ と なる 情景 を 、 ヤン は 黙って 見つめて いる 。 あらゆる 状況 を 想定 する こと は 人間 に は 不可能な のだ と 、 いまさら に 思い知ら されて いた 。 「 どう します 、 司令 官 」 生 つば を 飲みくだす 大きな 音 を たて ながら 、 パトリチェフ が 訊 ねた 。

「 そう だ な 、 逃げる に は まだ 早い だろう 」

どことなく 他人事 の ような 返答 だった 。

いっぽう 、 帝国 軍旗 艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 は 、 勝利 に 湧いて いる 。

「 一〇万 隻 の 追撃 戦 は はじめて 見る な 」

ラインハルト の 声 が 若者 らしく はずんだ 。 半 白 の 髪 の 参謀 長 は 散文 的に 反応 した 。

「 旗 艦 を 前進 さ せます か 、 閣下 ? 」 「 いや 、 やめて おく 。 この 段階 で 私 が しゃし ゃり で たら 、 部下 の 武 勲 を 横 ど りする の か と 言わ れる だろう 」

むろん それ は 冗談 だった が 、 ラインハルト の 心理 的 余裕 を しめす もの だった 。

会戦 じたい は 終幕 へ と なだれこんで いた が 、 殺戮 と 破壊 の 激し さ は 衰え を みせ なかった 。 狂 熱 的な 攻撃 と 絶望 的な 反撃 が 何度 も くりかえさ れ 、 局地 的に は 帝国 軍 が 劣勢に たった 宙 域 さえ あった 。

この 期 に およんで 戦術 的な 勝利 に なにほど の 意味 が あろう と も 思わ れ なかった が 、 勝利 を 目前 と した 者 は それ を より 徹底 さ せよう と のぞみ 、 敗北 に 瀕した 者 は 不名誉 を つぐなう ため に 一 兵 でも 多く 道連れ に しよう と 願って いる か の ようであった 。

しかし そのように 狂 的な 闘争 以上 に 、 勝者 たる 帝国 軍 に 流血 を しいた の は 、 ヤン ・ ウェンリー の 組織 した 秩序 ある 抵抗 で 、 彼 は 味方 を 安全 圏 に 逃がす ため 、 なお 戦場 に 残って いた のである 。

局地 的に 火力 を 集中 して 、 帝国 軍 の 兵力 を 分断 し 、 指揮 系統 を 混乱 さ せて は 各 個 に 打撃 を くわえる と いう の が 、 その 手法 だった 。

自滅 や 玉砕 を 悲壮 美 と して 、 それ に 陶酔 する ような 気分 は ヤン と は 無縁だった 。 敗走 する 味方 を 援護 し ながら 、 彼 は 自 軍 の 退路 を も 確保 し 、 撤退 の チャンス を うかがって いる 。

メイン ・ スクリーン と 戦術 コンピューター の パネル と を 交互に にらんで いた オーベルシュタイン 参謀 が 、 ラインハルト に 警告 を 発した 。

「 キルヒアイス 提督 でも 誰 でも よろしい が 、 ビッテンフェルト 提督 を 援護 さ せる べきです 。 敵 の 指揮 官 は 包囲 の もっとも 弱い 部分 を 狙って 、 いっきょに 突破 を はかります ぞ 。 現在 で は わが 軍 の 兵力 に 余裕 が ある のです から 、 先刻 と は ちがって そう なさる べきです 」

ラインハルト は 黄金色 の 頭髪 を かきあげ 、 視線 を 素早く 移動 さ せた 。 スクリーン へ 、 いく つ か の パネル へ 、 そして 参謀 長 の 顔 へ 。

「 そう しよう 。 それにしても ビッテンフェルト め 、 あいつ ひと り の 失敗 で 、 いつまでも 祟られる ! 」 ラインハルト の 命令 が 超 光速 通信 に のって 虚 空 を 飛んだ 。 それ を 受信 した キルヒアイス は 配下 の 戦列 を 伸ばして 、 ビッテンフェルト 艦隊 の 後方 に もう 一重 の 防御 ライン を 敷こう と した 。

撤退 の チャンス を 測り つづけて いた ヤン は 、 帝国 軍 の この うごき に 気づいて 、 瞬間 、 血行 が とまる 思い を あじわった 。 退路 を 絶た れた ! 遅 すぎた か ? もっと 早い 時機 に 脱出 す べきだった か ……。

しかし 、 ここ で 幸運 が ヤン に 味方 した 。

キルヒアイス 艦隊 の 急行 動 を 見て 、 その 進行 方向 に いあわせた 同盟 軍 の 戦艦 が パニック に 襲わ れ 、 大 質量 の ちかく である に も かかわら ず 、 跳躍 した のである 。

かならずしも 珍しい こと で は なかった 。 逃走 不可能 を 知った 宇宙 船 が 、 確実な 死 より 未知の 恐怖 を えらんで 、 進路 の 算定 も 不可能な まま 亜空 間 へ 逃げこんで しまう のだ 。 逃走 が でき ぬ と あれば 、 降伏 と いう 方法 も あり 、 その 意思 を しめす 信号 も さだめ られて いる のだ が 、 逆上 した 者 は 、 それ に 気づか ない 。 亜空 間 に 逃げこんだ 人々 が どのような 運命 に 迎え られた か 、 それ は 死後 の 世界 に ついて 定説 が ない の と 同様 、 誰 も 知ら なかった 。

それ でも 彼ら は 自己 の 運命 を 自己 の 手 で えらんだ のだ が 、 そう で ない 者 に とって は とんだ 災厄 であった 。 前方 の 敵 艦 が 消失 し 、 それ に ともなって 烈 しい 時空 震 の 発生 を 知覚 した 帝国 軍 各 艦 の オペレーター たち は 、 肺活量 の かぎり を つくして 危険 を 知らせた 。 その 声 に 回避 命令 の 怒号 が かさなる 。 艦隊 の 前半 が その 無秩序な 波動 に まきこま れ 、 混乱 の なか で 数 隻 が 衝突 、 破損 して しまった 。

この ため キルヒアイス は 艦隊 を 再編 する の に てまどり 、 それ は ヤン に 貴重な 時間 を あたえる こと に なった 。

ビッテンフェルト は 名誉 回復 に 熱中 し 、 少数 の 部下 を ひきいて 勇 戦 して いた 。 だが 、 その うごき は 眼前 に あらわれる 敵 に 、 その つど 対応 して の もの で 、 戦局 全体 を みて の もの で は なかった 。

彼 が キルヒアイス の うごき に 注意 して いれば 、 ラインハルト と の 通信 が 途絶 して いて も 、 ヤン の 意図 を 察して 、 その 退路 を 効果 的に 絶つ こと が できた かも しれ ない 。

しかし 味方 と の 有機 的な つながり を 欠く 以上 、 それ は たんに 少数 部隊 と いう だけ の こと に すぎ なかった 。

その ビッテンフェルト 艦隊 に 、 ヤン は 残存 兵力 の すべて を いっきょに たたきつけた のである 。

ビッテンフェルト に は 先刻 の 失敗 を つぐなう 戦意 が あり 、 能力 も あった が 、 それ ら を 生かす ため の 兵力 が 、 この とき は 決定 的に 不足 して いた 。 そして それ は 状況 に 対処 する 時間 的 余裕 の 欠乏 を も 意味 した のだ 。


第 九 章 アムリッツァ (2) だい|ここの|しょう|

磁力 砲 の 撃ち だす 超 硬度 鋼 の 砲弾 は 戦艦 の 装甲 を つらぬき 、 核 融合 榴散 弾 や 光子 弾 の 炸裂 は 、 乗員 もろとも ワルキューレ を 微 粒子 の 雲 に 変えて しまった 。 じりょく|ほう||うち||ちょう|こうど|はがね||ほうだん||せんかん||そうこう|||かく|ゆうごう|ざくろさん|たま||てるこ|たま||さくれつ||じょういん||||び|りゅうし||くも||かえて|

有 彩 色 と 無 彩 色 の 閃光 が かさなりあい 、 一瞬 ごと に 冥土 へ の 関門 を 開いて 兵士 たち を とおした 。 ゆう|あや|いろ||む|あや|いろ||せんこう|||いっしゅん|||めいど|||かんもん||あいて|へいし|||

ビッテンフェルト が 誇る 〝 黒色 槍 騎兵 〟 の 黒色 は 、 屍 衣 の 色 と 化し つつ ある ようだった 。 ||ほこる|こくしょく|やり|きへい||こくしょく||しかばね|ころも||いろ||かし|||

通信 士官 が ラインハルト を ふりむいて 叫んだ 。 つうしん|しかん|||||さけんだ

「 閣下 ! かっか ビッテンフェルト 提督 より 通信 、 至急 、 援軍 を 請う と の こと です 」 |ていとく||つうしん|しきゅう|えんぐん||こう||||

「 援軍 ? えんぐん 」 金髪 の 若い 元帥 は するどく 反応 し 、 通信 士官 は たじろいだ 。 きんぱつ||わかい|げんすい|||はんのう||つうしん|しかん|| 「 はい 、 閣下 、 援軍 です 。 |かっか|えんぐん| このまま 戦況 が 推移 すれば 負ける と 提督 は 申して おります 」 |せんきょう||すいい||まける||ていとく||もうして| ラインハルト の 足 もと で 、 軍靴 の 踵 が 激しく 鳴った 。 ||あし|||ぐんか||かかと||はげしく|なった 可動 式 の 椅子 が あれば 蹴 倒して いた であろう 。 かどう|しき||いす|||け|たおして||

「 私 が 魔法 の 壺 を もって いて 、 そこ から 艦隊 が 湧きでて くる と でも 奴 は 思って いる の か !?」 わたくし||まほう||つぼ||||||かんたい||わきでて||||やつ||おもって|||

どなった ラインハルト は 、 しかし 一瞬 で 怒り を 抑制 した 。 ||||いっしゅん||いかり||よくせい| 最高 司令 官 は つねに 冷静で なければ なら ない のだ 。 さいこう|しれい|かん|||れいせいで||||

「 ビッテンフェルト に 伝えろ 。 ||つたえろ 総 司令 部 に 余剰 兵力 は ない 。 そう|しれい|ぶ||よじょう|へいりょく|| 他の 戦線 から 兵力 を まわせば 、 全 戦線 の バランス が 崩れる 。 たの|せんせん||へいりょく|||ぜん|せんせん||ばらんす||くずれる 現有 兵力 を もって 部署 を 死守 し 、 武人 と して の 職責 を まっとうせよ 、 と 」 げんゆう|へいりょく|||ぶしょ||ししゅ||たけと||||しょくせき|||

いったん 口 を 閉ざして から 改めて 命令 した 。 |くち||とざして||あらためて|めいれい|

「 以後 、 ビッテンフェルト から の 通信 を 切れ 。 いご||||つうしん||きれ 敵 に 傍受 さ れたら わが 軍 の 窮状 が 知れる 」 てき||ぼうじゅ||||ぐん||きゅうじょう||しれる

ふたたび スクリーン に 蒼氷 色 の 瞳 を むけた ラインハルト を 、 オーベルシュタイン の 視線 が おった 。 |すくりーん||あおこおり|いろ||ひとみ|||||||しせん||

冷厳だ が 正しい 処置 だ 、 と 半 白 の 髪 の 参謀 長 は 考えた 。 れいげんだ||ただしい|しょち|||はん|しろ||かみ||さんぼう|ちょう||かんがえた ただ 、 と 彼 は 思う 。 ||かれ||おもう 万 人 にたいして ひとしく このような 処置 が とれる か 。 よろず|じん||||しょち||| 覇者 に 聖域 が あって は なら ない のだ が ……。 はしゃ||せいいき|||||||

「 よく やって る じゃ ない か 、 どちら も 」

スクリーン を 見 ながら ラインハルト は つぶやいて いた 。 すくりーん||み|||||

総 司令 部 が 遠い 後方 に あり 、 全体 の 指揮 が 円滑 を 欠く に も かかわら ず 、 同盟 軍 は 善戦 して いる 。 そう|しれい|ぶ||とおい|こうほう|||ぜんたい||しき||えんかつ||かく|||||どうめい|ぐん||ぜんせん|| とくに 第 一三 艦隊 の 働き は みごとだ 。 |だい|かずみ|かんたい||はたらき|| 司令 官 は あの ヤン ・ ウェンリー だ と いう 。 しれい|かん||||||| 名将 の もと に 弱 兵 が ない と は よく 言った もの だ 。 めいしょう||||じゃく|つわもの||||||いった|| 自分 が これ から 征 こう と する 途上 に 、 あの 男 は 立ちはだかって くる のだろう か 。 じぶん||||すすむ||||とじょう|||おとこ||たちはだかって|||

ラインハルト は 、 不意に オーベルシュタイン を かえりみた 。 ||ふいに|||

「 キルヒアイス は まだ 来 ない か ? |||らい|| 」 「 まだ です 」 簡明に 答えた 参謀 長 は 、 意識 して か 否 か 、 皮肉っぽい 質問 を 発した 。 かんめいに|こたえた|さんぼう|ちょう||いしき|||いな||ひにくっぽい|しつもん||はっした 「 ご 心配です か 、 閣下 ? |しんぱい です||かっか 」 「 心配 など して いない 。 しんぱい||| 確認 した だけ だ 」 かくにん|||

たたきつける ように 応じる と 、 ラインハルト は 口 を 閉ざして スクリーン を にらんだ 。 |よう に|おうじる||||くち||とざして|すくりーん||

そのころ 、 全軍 の 三 割 と いう 大 兵力 を 指揮 下 に おいた キルヒアイス は 、 アムリッツァ の 太陽 を 大きく 迂回 して 同盟 軍 の 後 背 に まわりこみ つつ あった 。 |ぜんぐん||みっ|わり|||だい|へいりょく||しき|した|||||||たいよう||おおきく|うかい||どうめい|ぐん||あと|せ||||

「 予定 より すこし おくれて いる 。 よてい|||| 急ぐ ぞ 」 いそぐ|

同盟 軍 の 監視 から のがれる ため 、 キルヒアイス は 太陽 の 表面 ちかく を 航行 した のだ が 、 予測 以上 に 強い 磁力 や 重力 の ため 航法 システム が 影響 を うけ 、 航法 士 たち は 原始 的な 筆算 で 航路 を 算定 せ ざる を え なかった のだ 。 どうめい|ぐん||かんし||||||たいよう||ひょうめん|||こうこう||||よそく|いじょう||つよい|じりょく||じゅうりょく|||こうほう|しすてむ||えいきょう|||こうほう|し|||げんし|てきな|ひっさん||こうろ||さんてい|||||| それ が 理由 で 、 彼 の 軍 は スピード を おとした のだ が 、 ようやく 目的 宙 域 に 到達 した 。 ||りゆう||かれ||ぐん||すぴーど||||||もくてき|ちゅう|いき||とうたつ|

同盟 軍 の 後 背 ―― そこ に は 広大で 分厚い 機雷 原 が あった 。 どうめい|ぐん||あと|せ||||こうだいで|ぶあつい|きらい|はら||

たとえ 帝国 軍 が 後 背 に まわった と して も 、 四〇〇〇万 個 の 核 融合 機雷 が その 進行 を はばむ はずだった 。 |ていこく|ぐん||あと|せ||||||よっ|よろず|こ||かく|ゆうごう|きらい|||しんこう||| 同盟 軍 首脳 部 は そう 信じて いた 。 どうめい|ぐん|しゅのう|ぶ|||しんじて| ヤン も 完全に 安心 して は い なかった が 、 敵 が 機雷 原 を 突破 する 有効な 手段 を もって いて も 、 短 時間 で は 無理であり 、 彼ら が 戦場 に 到達 する まで に 応戦 態勢 を ととのえる こと が できる ので は ない か 、 と 思って いた 。 ||かんぜんに|あんしん||||||てき||きらい|はら||とっぱ||ゆうこうな|しゅだん|||||みじか|じかん|||むりであり|かれら||せんじょう||とうたつ||||おうせん|たいせい|||||||||||おもって|

しかし 、 帝国 軍 の 戦法 は 、 ヤン の 予測 すら も こえて いた のだ 。 |ていこく|ぐん||せんぽう||||よそく|||||

「 指向 性 ゼッフル 粒子 を 放出 せよ 」 しこう|せい||りゅうし||ほうしゅつ|

キルヒアイス の 命令 が 伝達 さ れた 。 ||めいれい||でんたつ||

帝国 軍 は 同盟 軍 に さきんじて 、 指向 性 を 有する ゼッフル 粒子 の 開発 に 成功 した のだった 。 ていこく|ぐん||どうめい|ぐん|||しこう|せい||ゆうする||りゅうし||かいはつ||せいこう|| これ を 実戦 で 使用 する の は 今回 が 最初である 。 ||じっせん||しよう||||こんかい||さいしょである

円筒 状 の 放出 装置 が 三 台 、 工作 艦 に ひかれて 機雷 原 に ちかづいた 。 えんとう|じょう||ほうしゅつ|そうち||みっ|だい|こうさく|かん|||きらい|はら|| 「 早く し ない と 、 やっつける 敵 が い なく なって しまう かも しれません な 」 はやく|||||てき|||||||| 幕僚 の ジンツァー 大佐 が 大声 で 言い 、 キルヒアイス は かるく 苦笑 した 。 ばくりょう|||たいさ||おおごえ||いい||||くしょう|

濃密な 粒子 の 群 が 、 星 間 物質 の 雲 の 柱 の ように 機雷 原 を つらぬいて ゆく 。 のうみつな|りゅうし||ぐん||ほし|あいだ|ぶっしつ||くも||ちゅう||よう に|きらい|はら||| 機雷 に そなわった 熱量 や 質量 の 感知 システム も 反応 し ない 。 きらい|||ねつりょう||しつりょう||かんち|しすてむ||はんのう||

「 ゼッフル 粒子 、 機雷 原 の むこう 側 まで 達し ました 」 |りゅうし|きらい|はら|||がわ||たっし|

先頭 艦 から 報告 が とどいた 。 せんとう|かん||ほうこく||

「 よし 、 点火 ! |てんか 」 キルヒアイス が 叫ぶ と 、 先頭 艦 の 三 門 の ビーム 砲 が 慎重に それぞれ ことなった 方向 を さだめ 、 ビーム を 射 出した 。 ||さけぶ||せんとう|かん||みっ|もん|||ほう||しんちょうに|||ほうこう|||||い|だした つぎの 瞬間 、 三 本 の 巨大な 炎 の 柱 が 機雷 原 を 割った 。 |しゅんかん|みっ|ほん||きょだいな|えん||ちゅう||きらい|はら||わった 白熱 した 光 が 消えさった あと 、 機雷 原 は 三 カ所 に わたって えぐり 抜かれ 、 その 位置 に あった 機雷 は 消滅 して いた 。 はくねつ||ひかり||きえさった||きらい|はら||みっ|かしょ||||ぬか れ||いち|||きらい||しょうめつ||

機雷 原 の ただなか に 、 直径 二〇〇 キロ 、 長 さ 三〇万 キロ の トンネル 状 の 安全 通路 が 三 本 、 短 時間 の うち に つくら れた のである 。 きらい|はら||ただ なか||ちょっけい|ふた|きろ|ちょう||みっ|よろず|きろ||とんねる|じょう||あんぜん|つうろ||みっ|ほん|みじか|じかん||||||

「 全 艦隊 突撃 ! ぜん|かんたい|とつげき 最 大戦 速 だ 」 さい|たいせん|はや|

赤毛 の 若い 提督 の 命令 が 帝国 軍 を かりたてた 。 あかげ||わかい|ていとく||めいれい||ていこく|ぐん|| 三万 隻 を かぞえる 彼 の 艦隊 は 、 三 本 の トンネル を 流星 群 の ように 駆けぬけ 、 同盟 軍 の 無防備の 背中 に 襲いかかって いく 。 さんまん|せき|||かれ||かんたい||みっ|ほん||とんねる||りゅうせい|ぐん||よう に|かけぬけ|どうめい|ぐん||むぼうびの|せなか||おそいかかって|

「 後 背 に 敵 の 大軍 ! あと|せ||てき||たいぐん 」 数 を 特定 でき ない ほど の 発光 体 の 群 を 感知 して オペレーター たち が 絶叫 した とき 、 キルヒアイス 軍 の 先頭 部隊 は 砲撃 に よって 同盟 軍 の 艦 列 に つぎつぎ と 穴 を あけ はじめて いた 。 すう||とくてい|||||はっこう|からだ||ぐん||かんち|||||ぜっきょう||||ぐん||せんとう|ぶたい||ほうげき|||どうめい|ぐん||かん|れつ||||あな|||| 同盟 軍 の 指揮 官 たち は 驚き 、 うろたえた 。 どうめい|ぐん||しき|かん|||おどろき| それ は 何 倍 に も 増幅 されて 兵士 たち に 伝わり ―― その 瞬間 、 同盟 軍 の 戦線 は 崩壊 した 。 ||なん|ばい|||ぞうふく||へいし|||つたわり||しゅんかん|どうめい|ぐん||せんせん||ほうかい| 艦 列 が 崩れ 、 無秩序に 散らばり かけた 同盟 軍 に 帝国 軍 は 砲火 を あびせ 、 容赦 なく たたきのめし 、 撃ち くだいた 。 かん|れつ||くずれ|むちつじょに|ちらばり||どうめい|ぐん||ていこく|ぐん||ほうか|||ようしゃ|||うち|

勝敗 は 決した 。 しょうはい||けっした

味方 が 総崩れ と なる 情景 を 、 ヤン は 黙って 見つめて いる 。 みかた||そうくずれ|||じょうけい||||だまって|みつめて| あらゆる 状況 を 想定 する こと は 人間 に は 不可能な のだ と 、 いまさら に 思い知ら されて いた 。 |じょうきょう||そうてい||||にんげん|||ふかのうな|||||おもいしら|| 「 どう します 、 司令 官 」 ||しれい|かん 生 つば を 飲みくだす 大きな 音 を たて ながら 、 パトリチェフ が 訊 ねた 。 せい|||のみくだす|おおきな|おと||||||じん|

「 そう だ な 、 逃げる に は まだ 早い だろう 」 |||にげる||||はやい|

どことなく 他人事 の ような 返答 だった 。 |ひとごと|||へんとう|

いっぽう 、 帝国 軍旗 艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 は 、 勝利 に 湧いて いる 。 |ていこく|ぐんき|かん|||かん|きょう||しょうり||わいて|

「 一〇万 隻 の 追撃 戦 は はじめて 見る な 」 ひと|よろず|せき||ついげき|いくさ|||みる|

ラインハルト の 声 が 若者 らしく はずんだ 。 ||こえ||わかもの|| 半 白 の 髪 の 参謀 長 は 散文 的に 反応 した 。 はん|しろ||かみ||さんぼう|ちょう||さんぶん|てきに|はんのう|

「 旗 艦 を 前進 さ せます か 、 閣下 ? き|かん||ぜんしん||せま す||かっか 」 「 いや 、 やめて おく 。 この 段階 で 私 が しゃし ゃり で たら 、 部下 の 武 勲 を 横 ど りする の か と 言わ れる だろう 」 |だんかい||わたくし||||||ぶか||ぶ|いさお||よこ||||||いわ||

むろん それ は 冗談 だった が 、 ラインハルト の 心理 的 余裕 を しめす もの だった 。 |||じょうだん|||||しんり|てき|よゆう||||

会戦 じたい は 終幕 へ と なだれこんで いた が 、 殺戮 と 破壊 の 激し さ は 衰え を みせ なかった 。 かいせん|||しゅうまく||||||さつりく||はかい||はげし|||おとろえ||| 狂 熱 的な 攻撃 と 絶望 的な 反撃 が 何度 も くりかえさ れ 、 局地 的に は 帝国 軍 が 劣勢に たった 宙 域 さえ あった 。 くる|ねつ|てきな|こうげき||ぜつぼう|てきな|はんげき||なんど||||きょくち|てきに||ていこく|ぐん||れっせいに||ちゅう|いき||

この 期 に およんで 戦術 的な 勝利 に なにほど の 意味 が あろう と も 思わ れ なかった が 、 勝利 を 目前 と した 者 は それ を より 徹底 さ せよう と のぞみ 、 敗北 に 瀕した 者 は 不名誉 を つぐなう ため に 一 兵 でも 多く 道連れ に しよう と 願って いる か の ようであった 。 |き|||せんじゅつ|てきな|しょうり||||いみ|||||おもわ||||しょうり||もくぜん|||もの|||||てってい|||||はいぼく||ひんした|もの||ふめいよ|||||ひと|つわもの||おおく|みちづれ||||ねがって||||

しかし そのように 狂 的な 闘争 以上 に 、 勝者 たる 帝国 軍 に 流血 を しいた の は 、 ヤン ・ ウェンリー の 組織 した 秩序 ある 抵抗 で 、 彼 は 味方 を 安全 圏 に 逃がす ため 、 なお 戦場 に 残って いた のである 。 |そのよう に|くる|てきな|とうそう|いじょう||しょうしゃ||ていこく|ぐん||りゅうけつ||||||||そしき||ちつじょ||ていこう||かれ||みかた||あんぜん|けん||にがす|||せんじょう||のこって||

局地 的に 火力 を 集中 して 、 帝国 軍 の 兵力 を 分断 し 、 指揮 系統 を 混乱 さ せて は 各 個 に 打撃 を くわえる と いう の が 、 その 手法 だった 。 きょくち|てきに|かりょく||しゅうちゅう||ていこく|ぐん||へいりょく||ぶんだん||しき|けいとう||こんらん||||かく|こ||だげき||||||||しゅほう|

自滅 や 玉砕 を 悲壮 美 と して 、 それ に 陶酔 する ような 気分 は ヤン と は 無縁だった 。 じめつ||ぎょくさい||ひそう|び|||||とうすい|||きぶん|||||むえんだった 敗走 する 味方 を 援護 し ながら 、 彼 は 自 軍 の 退路 を も 確保 し 、 撤退 の チャンス を うかがって いる 。 はいそう||みかた||えんご|||かれ||じ|ぐん||たいろ|||かくほ||てったい||ちゃんす|||

メイン ・ スクリーン と 戦術 コンピューター の パネル と を 交互に にらんで いた オーベルシュタイン 参謀 が 、 ラインハルト に 警告 を 発した 。 |すくりーん||せんじゅつ|こんぴゅーたー||ぱねる|||こうごに||||さんぼう||||けいこく||はっした

「 キルヒアイス 提督 でも 誰 でも よろしい が 、 ビッテンフェルト 提督 を 援護 さ せる べきです 。 |ていとく||だれ|||||ていとく||えんご|||べき です 敵 の 指揮 官 は 包囲 の もっとも 弱い 部分 を 狙って 、 いっきょに 突破 を はかります ぞ 。 てき||しき|かん||ほうい|||よわい|ぶぶん||ねらって||とっぱ||| 現在 で は わが 軍 の 兵力 に 余裕 が ある のです から 、 先刻 と は ちがって そう なさる べきです 」 げんざい||||ぐん||へいりょく||よゆう|||の です||せんこく||||||べき です

ラインハルト は 黄金色 の 頭髪 を かきあげ 、 視線 を 素早く 移動 さ せた 。 ||こがねいろ||とうはつ|||しせん||すばやく|いどう|| スクリーン へ 、 いく つ か の パネル へ 、 そして 参謀 長 の 顔 へ 。 すくりーん||||||ぱねる|||さんぼう|ちょう||かお|

「 そう しよう 。 それにしても ビッテンフェルト め 、 あいつ ひと り の 失敗 で 、 いつまでも 祟られる ! |||||||しっぱい|||たたりられる 」 ラインハルト の 命令 が 超 光速 通信 に のって 虚 空 を 飛んだ 。 ||めいれい||ちょう|こうそく|つうしん|||きょ|から||とんだ それ を 受信 した キルヒアイス は 配下 の 戦列 を 伸ばして 、 ビッテンフェルト 艦隊 の 後方 に もう 一重 の 防御 ライン を 敷こう と した 。 ||じゅしん||||はいか||せんれつ||のばして||かんたい||こうほう|||ひとえ||ぼうぎょ|らいん||しこう||

撤退 の チャンス を 測り つづけて いた ヤン は 、 帝国 軍 の この うごき に 気づいて 、 瞬間 、 血行 が とまる 思い を あじわった 。 てったい||ちゃんす||はかり|||||ていこく|ぐん|||||きづいて|しゅんかん|けっこう|||おもい|| 退路 を 絶た れた ! たいろ||たた| 遅 すぎた か ? おそ|| もっと 早い 時機 に 脱出 す べきだった か ……。 |はやい|じき||だっしゅつ|||

しかし 、 ここ で 幸運 が ヤン に 味方 した 。 |||こううん||||みかた|

キルヒアイス 艦隊 の 急行 動 を 見て 、 その 進行 方向 に いあわせた 同盟 軍 の 戦艦 が パニック に 襲わ れ 、 大 質量 の ちかく である に も かかわら ず 、 跳躍 した のである 。 |かんたい||きゅうこう|どう||みて||しんこう|ほうこう|||どうめい|ぐん||せんかん||ぱにっく||おそわ||だい|しつりょう||||||||ちょうやく||

かならずしも 珍しい こと で は なかった 。 |めずらしい|||| 逃走 不可能 を 知った 宇宙 船 が 、 確実な 死 より 未知の 恐怖 を えらんで 、 進路 の 算定 も 不可能な まま 亜空 間 へ 逃げこんで しまう のだ 。 とうそう|ふかのう||しった|うちゅう|せん||かくじつな|し||みちの|きょうふ|||しんろ||さんてい||ふかのうな||あそら|あいだ||にげこんで|| 逃走 が でき ぬ と あれば 、 降伏 と いう 方法 も あり 、 その 意思 を しめす 信号 も さだめ られて いる のだ が 、 逆上 した 者 は 、 それ に 気づか ない 。 とうそう||||||こうふく|||ほうほう||||いし|||しんごう|||||||ぎゃくじょう||もの||||きづか| 亜空 間 に 逃げこんだ 人々 が どのような 運命 に 迎え られた か 、 それ は 死後 の 世界 に ついて 定説 が ない の と 同様 、 誰 も 知ら なかった 。 あそら|あいだ||にげこんだ|ひとびと|||うんめい||むかえ|||||しご||せかい|||ていせつ|||||どうよう|だれ||しら|

それ でも 彼ら は 自己 の 運命 を 自己 の 手 で えらんだ のだ が 、 そう で ない 者 に とって は とんだ 災厄 であった 。 ||かれら||じこ||うんめい||じこ||て||||||||もの|||||さいやく| 前方 の 敵 艦 が 消失 し 、 それ に ともなって 烈 しい 時空 震 の 発生 を 知覚 した 帝国 軍 各 艦 の オペレーター たち は 、 肺活量 の かぎり を つくして 危険 を 知らせた 。 ぜんぽう||てき|かん||しょうしつ|||||れつ||じくう|ふる||はっせい||ちかく||ていこく|ぐん|かく|かん|||||はいかつりょう|||||きけん||しらせた その 声 に 回避 命令 の 怒号 が かさなる 。 |こえ||かいひ|めいれい||どごう|| 艦隊 の 前半 が その 無秩序な 波動 に まきこま れ 、 混乱 の なか で 数 隻 が 衝突 、 破損 して しまった 。 かんたい||ぜんはん|||むちつじょな|はどう||||こんらん||||すう|せき||しょうとつ|はそん||

この ため キルヒアイス は 艦隊 を 再編 する の に てまどり 、 それ は ヤン に 貴重な 時間 を あたえる こと に なった 。 ||||かんたい||さいへん|||||||||きちょうな|じかん|||||

ビッテンフェルト は 名誉 回復 に 熱中 し 、 少数 の 部下 を ひきいて 勇 戦 して いた 。 ||めいよ|かいふく||ねっちゅう||しょうすう||ぶか|||いさみ|いくさ|| だが 、 その うごき は 眼前 に あらわれる 敵 に 、 その つど 対応 して の もの で 、 戦局 全体 を みて の もの で は なかった 。 ||||がんぜん|||てき||||たいおう|||||せんきょく|ぜんたい|||||||

彼 が キルヒアイス の うごき に 注意 して いれば 、 ラインハルト と の 通信 が 途絶 して いて も 、 ヤン の 意図 を 察して 、 その 退路 を 効果 的に 絶つ こと が できた かも しれ ない 。 かれ||||||ちゅうい||||||つうしん||とぜつ||||||いと||さっして||たいろ||こうか|てきに|たつ||||||

しかし 味方 と の 有機 的な つながり を 欠く 以上 、 それ は たんに 少数 部隊 と いう だけ の こと に すぎ なかった 。 |みかた|||ゆうき|てきな|||かく|いじょう||||しょうすう|ぶたい||||||||

その ビッテンフェルト 艦隊 に 、 ヤン は 残存 兵力 の すべて を いっきょに たたきつけた のである 。 ||かんたい||||ざんそん|へいりょく||||||

ビッテンフェルト に は 先刻 の 失敗 を つぐなう 戦意 が あり 、 能力 も あった が 、 それ ら を 生かす ため の 兵力 が 、 この とき は 決定 的に 不足 して いた 。 |||せんこく||しっぱい|||せんい|||のうりょく|||||||いかす|||へいりょく|||||けってい|てきに|ふそく|| そして それ は 状況 に 対処 する 時間 的 余裕 の 欠乏 を も 意味 した のだ 。 |||じょうきょう||たいしょ||じかん|てき|よゆう||けつぼう|||いみ||