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世界の昔話, トコトコ歩くつぼ

トコトコ 歩く つぼ

トコトコ 歩く つぼ

むかし むかし 、 貧乏 なお 百姓 が 、 町 へ 牛 を 売り に 行き ました 。 少し 行く と 向こう側 から 、 一 頭 の ヒツジ を 連れた 男 が やってき ました 。 「 やあ 、 ずいぶん と 立派な ヒツジ だ ね 」 「 ああ 、 そう だろう 。 何なら その 牛 と 、 取り替えて やって も いい よ 」 ヒツジ を 連れた 男 は 冗談 で 言った のです が 、 「 ほんと うかい ? では そう しよう 」 と 、 お 百姓 は 喜んで 牛 と ヒツジ を 取り替え ました 。

また 少し 行く と 、 今度 は ガチョウ を 連れた 男 が やってき ました 。 「 やあ 、 まるまる と 太って 、 美味し そうな ガチョウ だ ね 」 「 ああ 、 そう だろう 。 何なら 、 ヒツジ と 取り替えて あげ ます よ 」 ガチョウ を 連れた 男 も 冗談 で 言った のです が 、 「 ほんと うかい ? では そう しよう 」 と 、 お 百姓 は 喜んで ヒツジ と ガチョウ を 取り替え ました 。

そして 今度 は 、 つぼ を 持った おばあ さん が やって 来 ました 。 「 やあ 、 持ち やす そうな つぼ を 持って いる ね 」 「 これ かい ? 道 で 拾った やつ だ けど 、 よかったら ガチョウ と 替えて あげよう か ? 」 「 ほんと うかい ? では そう しよう 」 こうして お 百姓 は ガチョウ と つぼ を 取り替える と 、 つぼ を 持って 家 に 帰り ました 。

「 ただいま 。 ほら 、 なかなか 良い つぼ だろう 。 あの 牛 を 色々な 物 に 替えて 、 この つぼ を 手 に 入れた んだ よ 」 すると おかみ さん は 、 とても 怒って 言い ました 。 「 あんた は 何て 大 馬鹿な の ! 牛 が そんな 汚い つぼ に なる なんて 大 損じゃ ない の ! 」 「 そう な の か ? 」 「 当たり前 よ ! 」 「・・・ ごめん な 」 怒ら れた お 百姓 は すっかり しょげて 、 つぼ を きれいに 洗う と 棚 の 上 に 乗せて おき ました 。

さて 、 次の 日 の 夕方 。 不思議な 事 に 棚 に 乗せて あった つぼ が 、 ぶつぶつ と つぶやき だした のです 。 「 さあ 、 そろそろ 出かける か 。 大 金持ち の うそつき じいさん の 所 へ 」 つぼ は 一 人 で 動き 出す と 、 トコトコ と 、 お じいさん の お 屋敷 の 台所 へ 入って いき ました 。 お 屋敷 の コック さん は 、 つぼ を 見つけて 喜び ました 。 「 これ は スープ を 入れる のに 、 ちょうど いい 大き さ だ 」 コック さん は 、 おいし そうな スープ を つぼ に そそぎ ました 。 する と 、 つぼ は 、 「 さあ 、 そろそろ 帰る か 。 貧乏な 人 の 所 へ 」 と 、 トコトコ と 、 お 百姓 の 所 に 戻って 行き ました 。

おいしい スープ が 入った つぼ が トコトコ と 帰って きた ので 、 お 百姓 と おかみ さん は 大喜びです 。 二 人 は つぼ の スープ を 喜んで 飲む と 、 つぼ を きれいに 洗って 棚 の 上 に 乗せて おき ました 。

次の 晩 、 つぼ は また ぶつぶつ つぶやき ました 。 「 さあ 、 そろそろ 出かける か 。 悪い 金貸し の 所 へ 」 つぼ が トコトコ と 金貸し の 所 へ やってくる と 、 金貸し は ちょうど 金貨 を 数えて いる 所 でした 。 「 こりゃ 、 いい つぼ だ 。 金貨 を 入れる の に ぴったりの 大き さ だ 」 そう 言って 金貸し は 、 ありったけ の 金貨 を ザラザラ と つぼ に 詰め ました 。 する と 、 つぼ は 、 「 さあ 、 そろそろ 帰る か 。 貧乏な 人 の 所 へ 」 と 、 さっさと 金貸し の 家 を 出て 、 お 百姓 の 所 に 戻って いき ました 。 お 百姓 は 大喜びで お 金 を 取り出す と 、 また つぼ を 棚 の 上 に 乗せ ました 。

そして その 次の 晩 も 、 つぼ は また ぶつぶつ つぶやき ました 。 「 さて 、 もう 一 度 、 出かける か 。 金貸し の 所 へ 」 つぼ は 暗い 夜 の 道 を トコトコ と 歩き 出して 、 金貸し の 家 に 行き ました 。

その頃 、 金貸し は つぼ に 仕返し を して やろう と 待ちかまえて い ました 。 「 よし 、 また やって 来た な 。 憎らしい 泥棒 つぼめ 」 金貸し は つぼ が 家 に 入って くる と 、 つぼ の 中 に お 金 を 入れる ふり を して 牛 の フン を 投げ 込んだ のです 。 「 これ でも くらえ ! 」 その 時 、 つぼ は 急に 大きく なり ました 。 そして その はずみ に 金貸し は 、 つぼ の 中 に 転げ 落ちて しまった のです 。 「 さて 、 そろそろ 出かける か 」 つぼ は 金貸し を 入れた まま 、 トコトコ と 歩き 出し ました 。 「 おい こら 、 どこ へ 行く んだ 」 金貸し が つぼ の 底 から 叫ぶ と 、 つぼ は 答え ました 。 「 あんなに ふさわしい 所 さ 。 地獄 へ 」 金貸し を 入れた つぼ は 暗い 夜道 を どこまでも トコトコ 歩いて いき 、 二度と 帰って はき ませ ん でした 。

おしまい


トコトコ 歩く つぼ |あるく| jar that walks on tokotoko

トコトコ 歩く つぼ |あるく|

むかし むかし 、 貧乏 なお 百姓 が 、 町 へ 牛 を 売り に 行き ました 。 ||びんぼう||ひゃくしょう||まち||うし||うり||いき| 少し 行く と 向こう側 から 、 一 頭 の ヒツジ を 連れた 男 が やってき ました 。 すこし|いく||むこうがわ||ひと|あたま||ひつじ||つれた|おとこ||| 「 やあ 、 ずいぶん と 立派な ヒツジ だ ね 」 「 ああ 、 そう だろう 。 や あ|||りっぱな|ひつじ||||| 何なら その 牛 と 、 取り替えて やって も いい よ 」   ヒツジ を 連れた 男 は 冗談 で 言った のです が 、 「 ほんと うかい ? なんなら||うし||とりかえて|||||ひつじ||つれた|おとこ||じょうだん||いった|の です||| では そう しよう 」 と 、 お 百姓 は 喜んで 牛 と ヒツジ を 取り替え ました 。 |||||ひゃくしょう||よろこんで|うし||ひつじ||とりかえ|

また 少し 行く と 、 今度 は ガチョウ を 連れた 男 が やってき ました 。 |すこし|いく||こんど||||つれた|おとこ||| 「 やあ 、 まるまる と 太って 、 美味し そうな ガチョウ だ ね 」 「 ああ 、 そう だろう 。 や あ|||ふとって|おいし|そう な|||||| 何なら 、 ヒツジ と 取り替えて あげ ます よ 」   ガチョウ を 連れた 男 も 冗談 で 言った のです が 、 「 ほんと うかい ? なんなら|ひつじ||とりかえて||||||つれた|おとこ||じょうだん||いった|の です||| では そう しよう 」 と 、 お 百姓 は 喜んで ヒツジ と ガチョウ を 取り替え ました 。 |||||ひゃくしょう||よろこんで|ひつじ||||とりかえ|

そして 今度 は 、 つぼ を 持った おばあ さん が やって 来 ました 。 |こんど||||もった|||||らい| 「 やあ 、 持ち やす そうな つぼ を 持って いる ね 」 「 これ かい ? や あ|もち||そう な|||もって|||| "Hey, you have a nice jar. "Is this it? 道 で 拾った やつ だ けど 、 よかったら ガチョウ と 替えて あげよう か ? どう||ひろった|||||||かえて|| I found it on the street, but I'll trade it for a goose if you like. 」 「 ほんと うかい ? では そう しよう 」   こうして お 百姓 は ガチョウ と つぼ を 取り替える と 、 つぼ を 持って 家 に 帰り ました 。 |||||ひゃくしょう||||||とりかえる||||もって|いえ||かえり|

「 ただいま 。 ほら 、 なかなか 良い つぼ だろう 。 ||よい|| See, that's a pretty good jar, isn't it? あの 牛 を 色々な 物 に 替えて 、 この つぼ を 手 に 入れた んだ よ 」   すると おかみ さん は 、 とても 怒って 言い ました 。 |うし||いろいろな|ぶつ||かえて||||て||いれた||||||||いかって|いい| 「 あんた は 何て 大 馬鹿な の ! ||なんて|だい|ばかな| 牛 が そんな 汚い つぼ に なる なんて 大 損じゃ ない の ! うし|||きたない|||||だい|そんじゃ|| It's a great loss for a cow to be in such a filthy jar! 」 「 そう な の か ? " "Is that so? 」 「 当たり前 よ ! あたりまえ| " Of course! 」 「・・・ ごめん な 」   怒ら れた お 百姓 は すっかり しょげて 、 つぼ を きれいに 洗う と 棚 の 上 に 乗せて おき ました 。 ||いから|||ひゃくしょう|||||||あらう||たな||うえ||のせて||

さて 、 次の 日 の 夕方 。 |つぎの|ひ||ゆうがた 不思議な 事 に 棚 に 乗せて あった つぼ が 、 ぶつぶつ と つぶやき だした のです 。 ふしぎな|こと||たな||のせて||||||||の です 「 さあ 、 そろそろ 出かける か 。 ||でかける| I'm going to go out soon. 大 金持ち の うそつき じいさん の 所 へ 」   つぼ は 一 人 で 動き 出す と 、 トコトコ と 、 お じいさん の お 屋敷 の 台所 へ 入って いき ました 。 だい|かねもち|||||しょ||||ひと|じん||うごき|だす||||||||やしき||だいどころ||はいって|| "To the place of rich, lying old men." The jar started to move by itself and walked into the kitchen of grandpa's house. お 屋敷 の コック さん は 、 つぼ を 見つけて 喜び ました 。 |やしき||こっく|||||みつけて|よろこび| The cook in the house was delighted to find the jar. 「 これ は スープ を 入れる のに 、 ちょうど いい 大き さ だ 」   コック さん は 、 おいし そうな スープ を つぼ に そそぎ ました 。 ||すーぷ||いれる||||おおき|||こっく||||そう な|すーぷ||||| する と 、 つぼ は 、 「 さあ 、 そろそろ 帰る か 。 ||||||かえる| 貧乏な 人 の 所 へ 」 と 、 トコトコ と 、 お 百姓 の 所 に 戻って 行き ました 。 びんぼうな|じん||しょ||||||ひゃくしょう||しょ||もどって|いき| "Go to the poor." And then, he walked back to the farmer's place.

おいしい スープ が 入った つぼ が トコトコ と 帰って きた ので 、 お 百姓 と おかみ さん は 大喜びです 。 |すーぷ||はいった|||||かえって||||ひゃくしょう|||||おおよろこび です The peasant and mom are overjoyed because the pot with the delicious soup is back with a tokotoko. 二 人 は つぼ の スープ を 喜んで 飲む と 、 つぼ を きれいに 洗って 棚 の 上 に 乗せて おき ました 。 ふた|じん||||すーぷ||よろこんで|のむ|||||あらって|たな||うえ||のせて||

次の 晩 、 つぼ は また ぶつぶつ つぶやき ました 。 つぎの|ばん|||||| 「 さあ 、 そろそろ 出かける か 。 ||でかける| 悪い 金貸し の 所 へ 」   つぼ が トコトコ と 金貸し の 所 へ やってくる と 、 金貸し は ちょうど 金貨 を 数えて いる 所 でした 。 わるい|かねかし||しょ||||||かねかし||しょ||||かねかし|||きんか||かぞえて||しょ| 「 こりゃ 、 いい つぼ だ 。 金貨 を 入れる の に ぴったりの 大き さ だ 」   そう 言って 金貸し は 、 ありったけ の 金貨 を ザラザラ と つぼ に 詰め ました 。 きんか||いれる||||おおき||||いって|かねかし||||きんか||ざらざら||||つめ| It's the perfect size to put a gold coin in." Saying this, the moneylender filled the jar with as many gold coins as he could find. する と 、 つぼ は 、 「 さあ 、 そろそろ 帰る か 。 ||||||かえる| 貧乏な 人 の 所 へ 」 と 、 さっさと 金貸し の 家 を 出て 、 お 百姓 の 所 に 戻って いき ました 。 びんぼうな|じん||しょ||||かねかし||いえ||でて||ひゃくしょう||しょ||もどって|| お 百姓 は 大喜びで お 金 を 取り出す と 、 また つぼ を 棚 の 上 に 乗せ ました 。 |ひゃくしょう||おおよろこびで||きむ||とりだす|||||たな||うえ||のせ|

そして その 次の 晩 も 、 つぼ は また ぶつぶつ つぶやき ました 。 ||つぎの|ばん||||||| 「 さて 、 もう 一 度 、 出かける か 。 ||ひと|たび|でかける| "Well, let's go out one more time. 金貸し の 所 へ 」   つぼ は 暗い 夜 の 道 を トコトコ と 歩き 出して 、 金貸し の 家 に 行き ました 。 かねかし||しょ||||くらい|よ||どう||||あるき|だして|かねかし||いえ||いき|

その頃 、 金貸し は つぼ に 仕返し を して やろう と 待ちかまえて い ました 。 そのころ|かねかし||||しかえし|||||まちかまえて|| 「 よし 、 また やって 来た な 。 |||きた| "Okay, here we go again. 憎らしい 泥棒 つぼめ 」   金貸し は つぼ が 家 に 入って くる と 、 つぼ の 中 に お 金 を 入れる ふり を して 牛 の フン を 投げ 込んだ のです 。 にくらしい|どろぼう||かねかし||||いえ||はいって|||||なか|||きむ||いれる||||うし||ふん||なげ|こんだ|の です "Hateful thief, jar." When the moneylender entered the house, he pretended to put money in the jar and threw cow poo into it. 「 これ でも くらえ ! Eat this! 」   その 時 、 つぼ は 急に 大きく なり ました 。 |じ|||きゅうに|おおきく|| " At that time, the jar suddenly became very large. そして その はずみ に 金貸し は 、 つぼ の 中 に 転げ 落ちて しまった のです 。 ||||かねかし||||なか||ころげ|おちて||の です 「 さて 、 そろそろ 出かける か 」   つぼ は 金貸し を 入れた まま 、 トコトコ と 歩き 出し ました 。 ||でかける||||かねかし||いれた||||あるき|だし| "Well, I'd better get going." The crucible was filled with moneylenders and started walking away. 「 おい こら 、 どこ へ 行く んだ 」   金貸し が つぼ の 底 から 叫ぶ と 、 つぼ は 答え ました 。 ||||いく||かねかし||||そこ||さけぶ||||こたえ| 「 あんなに ふさわしい 所 さ 。 ||しょ| "It's the only place I've ever been. 地獄 へ 」   金貸し を 入れた つぼ は 暗い 夜道 を どこまでも トコトコ 歩いて いき 、 二度と 帰って はき ませ ん でした 。 じごく||かねかし||いれた|||くらい|よみち||||あるいて||にどと|かえって|||| "To hell." The jar with the moneylender in it walked down the dark night streets, never to return.

おしまい