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LibriVOX 04 - Japanese, (6) Abuno Orei- 虻のおれい (Yumeno Kyūsaku - 夢野 久作)

(6) Abuno Orei - 虻 の おれい ( Yumeno Kyūsaku - 夢野 久作 )

チエ子 さん は 今年 六 つ に なる 可愛い お嬢さん でした 。 ある 日 裏 の お 庭 で 一 人 で おとなしく 遊んで います と 、 「 ブルブル ブルブル 」 と 変な 歌 の ような 声 が きこえました 。 何 だろう と そこ い ら を 見まわします と 、 そこ の 白壁 に よせ かけて あった サイダー の 瓶 に 一 匹 の 虻 が 落ち込んで 、 ブルンブルン と 狂い まわり ながら 、 「 ドウゾ 助けて 下さい 。 ドウゾ 助けて 下さい 」 と 言って います 。 チエ子 さん は すぐに 走って 行って その 瓶 を 取り上げて 、 口 の ところ から のぞき ながら 、 「 虻 さん 虻 さん 、 どうした の 」 と 言いました 。 虻 は 狂い まわって ビン の ガラス の アッチコッチ へ ぶつかり ながら 、 「 どうして か 、 落ち込みました ところ が 、 出て 行か れ なく なりました 。 助けて 下さい 、 助けて 下さい 」 と 泣いて 狂い まわります 。 チエ子 さん は 笑い 出しました 。 「 虻 さん 、 お前 は バカだ ねえ 。 上 の 方 に 穴 が ある じゃ ない か 。 そう 、 あたし の 声 が 聞こえる でしょう 。 その方 へ 来れば 逃げられる よ 。 横 の 方 へ 行って も ダメだ よ 。 ガラス が ある から 」 と 言いました が 、 虻 は もう 夢中に なって 、 「 どこ です か 、 どこ です か 」 と 狂い まわる ばかりです 。 チエ子 さん は 虻 が 可哀そうに なりました 。 どうかして 助けて やりたい と 思って 、 そこ い ら に 落ちて いた 棒切れ を 拾って 上 から 突 込んで 上 の 方 へ 追いやろう と しました が 、 虻 は どうしても 上 の 方 へ 来ません 。 うっかり する と 棒 に さわって 殺さ れ そうに なります 。 チエ子 さん は 困って しまいました 。 どうして 助けて やろう か と いろいろ 考えました 。 上 から 息 を 吹きこんだり 、 瓶 を さかさまに して 打ち ふったり しました が 、 虻 は なかなか 口 の 方 へ 来ません 。 やっぱり 横 の 方 へ 横 の 方 へ と 飛んで は 打 かり 、 打かって は 飛んで 、 死ぬ 程 苦しんで います 。 チエ子 さん は 又 考えました 。 どうかして 助けたい と 一 所 懸命に 考えました が 、 とうとう 一 つ うまい こと を 考え 出し まして 、 瓶 を 手 に 持った まま お 台所 の 方 へ 走って 行きました 。 チエ子 さん は 台所 に 行って 、 サイダー を 飲む とき の 麦わら と コップ を 一 つ お 母 さま から 貸して いただきました 。 その コップ に 水 を 入れて 麦わら で 吸い取って 、 虻 が ジッと して いる とき に すこしずつ 瓶 の 中 に 吹き込んで やります と 、 虻 は 水 が こわい ので 段々 上 の 方 へ やって 来ました 。 チエ子 さん は 喜んで もう 一 いき 水 を 吹いて みます と 、 どうした もの か 虻 は 又 あわて 出して ブルブル と 飛ぶ 拍子 に 水 の 中 へ 落ち込んで しまいました 。 チエ子 さん は あわてて 瓶 を さかさまに します と 、 水 と 一 諸 に 虻 も 流れ出て 、 ビショビショ に 濡れた 羽根 を 引きずり ながら 苦し そうに 地べた の 上 を はい出 しました が 、 やがて 水 の ない ところ へ 来て 羽根 を ブルブル と ふるわした と 思う と 、 「 ありがとう 御座います 。 チエ子 さん 。 この おれい は いつか きっと いたします 」 と 言う うち に ブーン と 飛んで 行きました 。 「 お母さん 、 お母さん 。 チエ子 は 虻 を 助けました 。 サイダー の 瓶 の 中 に 落ちて いた の を 水 を 入れて 外 に 出して やりました 」 と チエ子 さん は 大喜び を し ながら お母さん に お 話しました 。 「 そう 。 チエ子 さん は お 利口 ね 。 けれども 虻 は 刺します から 、 これ から いじら ない ように なさい 」 と 言わ れました 。 「 いいえ 。 お母さん 。 あの 虻 は 、 チエ子 に ありがとうって お礼 を 言って 逃げて 行きました の よ 。 ですから もう あたし は 刺さ ない の よ 」 と まじめに なって 言いました 。 お母さん は これ を お きき に なって 大そう お 笑い に なりました 。 チエ子 さん は 虻 と お 話した こと を いつまでも 本当に して おりました 。 それ から いく 日 も 経って から 、 チエ子 さん が お 座敷 で うたたね を して いた 間 に お 母 さま は ちょっと お 買物 に 行か れました 。 その 留守 の 事 でした 。 お 台所 の 方 から 一 人 の 泥棒 が 入って 来 まして 、 チエ子 さん が 寝て いる の を 見つけます と 、 つかつか と 近寄って ゆすぶり 起しました 。 チエ子 さん は ビックリ して 眼 を さまします と 、 眼 の 前 に 気味 の 悪い 顔 を した 大きな 男 が ニヤニヤ 笑って 立って おります 。 チエ子 さん は 眼 を こすり ながら 、 「 おじさん だ あれ 」 と 言いました 。 泥棒 は やっぱり ニヤニヤ 笑い ながら 、 「 可愛い お嬢さん だ ね 。 いい 子だから お 金 は どこ に 仕舞って ある か 教えて おくれ 」 と 言いました 。 チエ子 さん は 眼 を パチパチ さ せて 泣き出し そうな 顔 を し ながら 、 「 あたし 知ら ない 。 おじさん は どこ の 人 ? 」 と 尋ねました 。 泥棒 は こわい 顔 に なって ふところ から ピカピカ 光る 庖丁 を 出して 見せ ながら 、 「 泣いたら きか ない ぞ 。 さ 、 お前 の お母さん は お 金 を どこ に 仕舞って いる か 。 言わ ない と これ で 殺して しまう ぞ 」 と 言いました 。 チエ子 さん は 、 「 お母さん 」 と 泣き ながら 逃げ出しました 。 「 この やつ 、 逃げた な 」 と 泥棒 は いきなり 追っかけて チエ子 さん を 捕まえよう と しました 。 その 時 ブーン と 唸って 一 匹 の 虻 が 飛んで 来て 、 泥棒 の 眼 の 前 で ブルンブルンブルン と まわり 始めました 。 泥棒 は 邪魔に なる ので 、 「 こんち くしょう 、 こんち くしょう 」 と 払い除けよう と しました が 、 なかなか 払い除けられません 。 その うち に チエ子 さん は 、 「 お母さん 、 お母さん 」 と 叫び ながら 障子 を 開けて お 縁 の 方 に 逃げて 行きます 。 「 逃がして なる もの か 」 と 泥棒 は 一 所 懸命 と なって 、 とうとう 虻 を タタキ 落として 追っかけて ゆきました spanclass =" notes "[#「 追っかけて ゆきました 」 は 底 本 で は 「 追っかけて ゆました 」] span 。 そう する と 虻 は タタキ 落とされて ちょっと 死んだ ように なりました が 、 又 飛び上って 泥棒 の 足 へ 飛びついて 力一 パイ 喰 いつきました 。 「 アイタッ 」 と 泥棒 は うしろ 向き に 立ち止まる 拍子 に お 縁 から 足 を 辷 ら して 、 石 の 上 に 落っこ ち て 頭 を ぶって 眼 を まわして しまいました 。 その うち に チエ子 さん は 表 へ 出て 、 通りがかり の お 巡査 さん に この 事 を 言いました ので 、 泥棒 は すぐに 縛られて しまいました 。 お母さん が お 帰り に なって この お 話 を お きき に なる と 、 涙 を こぼして チエ子 さん を 抱きしめて お よろこび に なりました 。 その 時 に チエ子 さん は お 縁側 を 見る と 一 匹 の 虻 が 死んで 落ちて おりました 。 「 お母さん 、 御覧 なさい 。 この 間 の 虻 が 泥棒 を 刺した の よ 。 あたし が 助けて やった お 礼 を して くれた の よ 」 と 言いました 。 お母さん は お うなずき に なりました 。 そうして 晩 方 お 父さん が お 帰り に なって お母さん が この お 話 を さ れます と 、 お 父 さま は チエ子 の 頭 を 撫で ながら 、 「 あぶ と お 話した 子 は 世界中 で チエ子 一 人 だろう 」 と お 笑い に なりました 。 チエ子 さん は 虻 の お 墓 を 作って やりました 。


(6) Abuno Orei - 虻 の おれい ( Yumeno Kyūsaku - 夢野 久作 ) ||あぶ|||||ゆめの|きゅうさく (6) Abuno Orei- Abuno Orei (Yumeno Kyūsaku)

チエ子 さん は 今年 六 つ に なる 可愛い お嬢さん でした 。 ちえこ|||ことし|むっ||||かわいい|おじょうさん| ある 日 裏 の お 庭 で 一 人 で おとなしく 遊んで います と 、 「 ブルブル ブルブル 」  と 変な 歌 の ような 声 が きこえました 。 |ひ|うら|||にわ||ひと|じん|||あそんで|||ぶるぶる|ぶるぶる||へんな|うた|||こえ|| 何 だろう と そこ い ら を 見まわします と 、 そこ の 白壁 に よせ かけて あった サイダー の 瓶 に 一 匹 の 虻 が 落ち込んで 、 ブルンブルン と 狂い まわり ながら 、 「 ドウゾ 助けて 下さい 。 なん|||||||みまわします||||しらかべ|||||さいだー||びん||ひと|ひき||あぶ||おちこんで|||くるい||||たすけて|ください ドウゾ 助けて 下さい 」  と 言って います 。 |たすけて|ください||いって| チエ子 さん は すぐに 走って 行って その 瓶 を 取り上げて 、 口 の ところ から のぞき ながら 、 「 虻 さん 虻 さん 、 どうした の 」  と 言いました 。 ちえこ||||はしって|おこなって||びん||とりあげて|くち||||||あぶ||あぶ|||||いいました 虻 は 狂い まわって ビン の ガラス の アッチコッチ へ ぶつかり ながら 、 「 どうして か 、 落ち込みました ところ が 、 出て 行か れ なく なりました 。 あぶ||くるい||||がらす||||||||おちこみました|||でて|いか||| 助けて 下さい 、 助けて 下さい 」  と 泣いて 狂い まわります 。 たすけて|ください|たすけて|ください||ないて|くるい| チエ子 さん は 笑い 出しました 。 ちえこ|||わらい|だしました 「 虻 さん 、 お前 は バカだ ねえ 。 あぶ||おまえ||ばかだ| 上 の 方 に 穴 が ある じゃ ない か 。 うえ||かた||あな||||| そう 、 あたし の 声 が 聞こえる でしょう 。 |||こえ||きこえる| その方 へ 来れば 逃げられる よ 。 そのほう||くれば|にげられる| 横 の 方 へ 行って も ダメだ よ 。 よこ||かた||おこなって||だめだ| ガラス が ある から 」  と 言いました が 、 虻 は もう 夢中に なって 、 「 どこ です か 、 どこ です か 」  と 狂い まわる ばかりです 。 がらす|||||いいました||あぶ|||むちゅうに|||||||||くるい||ばかり です チエ子 さん は 虻 が 可哀そうに なりました 。 ちえこ|||あぶ||かわいそうに| どうかして 助けて やりたい と 思って 、 そこ い ら に 落ちて いた 棒切れ を 拾って 上 から 突 込んで 上 の 方 へ 追いやろう と しました が 、 虻 は どうしても 上 の 方 へ 来ません 。 |たすけて|||おもって|||||おちて||ぼうきれ||ひろって|うえ||つ|こんで|うえ||かた||おいやろう||||あぶ|||うえ||かた||きません うっかり する と 棒 に さわって 殺さ れ そうに なります 。 |||ぼう|||ころさ||そう に| チエ子 さん は 困って しまいました 。 ちえこ|||こまって| どうして 助けて やろう か と いろいろ 考えました 。 |たすけて|||||かんがえました 上 から 息 を 吹きこんだり 、 瓶 を さかさまに して 打ち ふったり しました が 、 虻 は なかなか 口 の 方 へ 来ません 。 うえ||いき||ふきこんだり|びん||||うち||||あぶ|||くち||かた||きません やっぱり 横 の 方 へ 横 の 方 へ と 飛んで は 打 かり 、 打かって は 飛んで 、 死ぬ 程 苦しんで います 。 |よこ||かた||よこ||かた|||とんで||だ||うちかって||とんで|しぬ|ほど|くるしんで| チエ子 さん は 又 考えました 。 ちえこ|||また|かんがえました どうかして 助けたい と 一 所 懸命に 考えました が 、 とうとう 一 つ うまい こと を 考え 出し まして 、 瓶 を 手 に 持った まま お 台所 の 方 へ 走って 行きました 。 |たすけたい||ひと|しょ|けんめいに|かんがえました|||ひと|||||かんがえ|だし||びん||て||もった|||だいどころ||かた||はしって|いきました チエ子 さん は 台所 に 行って 、 サイダー を 飲む とき の 麦わら と コップ を 一 つ お 母 さま から 貸して いただきました 。 ちえこ|||だいどころ||おこなって|さいだー||のむ|||むぎわら||こっぷ||ひと|||はは|||かして| その コップ に 水 を 入れて 麦わら で 吸い取って 、 虻 が ジッと して いる とき に すこしずつ 瓶 の 中 に 吹き込んで やります と 、 虻 は 水 が こわい ので 段々 上 の 方 へ やって 来ました 。 |こっぷ||すい||いれて|むぎわら||すいとって|あぶ||じっと||||||びん||なか||ふきこんで|||あぶ||すい||||だんだん|うえ||かた|||きました チエ子 さん は 喜んで もう 一 いき 水 を 吹いて みます と 、 どうした もの か 虻 は 又 あわて 出して ブルブル と 飛ぶ 拍子 に 水 の 中 へ 落ち込んで しまいました 。 ちえこ|||よろこんで||ひと||すい||ふいて||||||あぶ||また||だして|ぶるぶる||とぶ|ひょうし||すい||なか||おちこんで| チエ子 さん は あわてて 瓶 を さかさまに します と 、 水 と 一 諸 に 虻 も 流れ出て 、 ビショビショ に 濡れた 羽根 を 引きずり ながら 苦し そうに 地べた の 上 を はい出 しました が 、 やがて 水 の ない ところ へ 来て 羽根 を ブルブル と ふるわした と 思う と 、 「 ありがとう 御座います 。 ちえこ||||びん|||||すい||ひと|しょ||あぶ||ながれでて|||ぬれた|はね||ひきずり||にがし|そう に|じべた||うえ||はいしゅつ||||すい|||||きて|はね||ぶるぶる||||おもう|||ございます チエ子 さん 。 ちえこ| この おれい は いつか きっと いたします 」  と 言う うち に ブーン と 飛んで 行きました 。 |||||||いう|||||とんで|いきました 「 お母さん 、 お母さん 。 お かあさん|お かあさん チエ子 は 虻 を 助けました 。 ちえこ||あぶ||たすけました サイダー の 瓶 の 中 に 落ちて いた の を 水 を 入れて 外 に 出して やりました 」  と チエ子 さん は 大喜び を し ながら お母さん に お 話しました 。 さいだー||びん||なか||おちて||||すい||いれて|がい||だして|||ちえこ|||おおよろこび||||お かあさん|||はなしました 「 そう 。 チエ子 さん は お 利口 ね 。 ちえこ||||りこう| けれども 虻 は 刺します から 、 これ から いじら ない ように なさい 」  と 言わ れました 。 |あぶ||さします||||||よう に|||いわ| 「 いいえ 。 お母さん 。 お かあさん あの 虻 は 、 チエ子 に ありがとうって お礼 を 言って 逃げて 行きました の よ 。 |あぶ||ちえこ|||お れい||いって|にげて|いきました|| ですから もう あたし は 刺さ ない の よ 」  と まじめに なって 言いました 。 ||||ささ|||||||いいました お母さん は これ を お きき に なって 大そう お 笑い に なりました 。 お かあさん||||||||たいそう||わらい|| チエ子 さん は 虻 と お 話した こと を いつまでも 本当に して おりました 。 ちえこ|||あぶ|||はなした||||ほんとうに|| それ から いく 日 も 経って から 、 チエ子 さん が お 座敷 で うたたね を して いた 間 に お 母 さま は ちょっと お 買物 に 行か れました 。 |||ひ||たって||ちえこ||||ざしき||||||あいだ|||はは|||||かいもの||いか| その 留守 の 事 でした 。 |るす||こと| お 台所 の 方 から 一 人 の 泥棒 が 入って 来 まして 、 チエ子 さん が 寝て いる の を 見つけます と 、 つかつか と 近寄って ゆすぶり 起しました 。 |だいどころ||かた||ひと|じん||どろぼう||はいって|らい||ちえこ|||ねて||||みつけます||||ちかよって||おこしました チエ子 さん は ビックリ して 眼 を さまします と 、 眼 の 前 に 気味 の 悪い 顔 を した 大きな 男 が ニヤニヤ 笑って 立って おります 。 ちえこ|||びっくり||がん||||がん||ぜん||きみ||わるい|かお|||おおきな|おとこ|||わらって|たって| チエ子 さん は 眼 を こすり ながら 、 「 おじさん だ あれ 」  と 言いました 。 ちえこ|||がん||||||||いいました 泥棒 は やっぱり ニヤニヤ 笑い ながら 、 「 可愛い お嬢さん だ ね 。 どろぼう||||わらい||かわいい|おじょうさん|| いい 子だから お 金 は どこ に 仕舞って ある か 教えて おくれ 」  と 言いました 。 |こだから||きむ||||しまって|||おしえて|||いいました チエ子 さん は 眼 を パチパチ さ せて 泣き出し そうな 顔 を し ながら 、 「 あたし 知ら ない 。 ちえこ|||がん|||||なきだし|そう な|かお|||||しら| おじさん は どこ の 人 ? ||||じん 」  と 尋ねました 。 |たずねました 泥棒 は こわい 顔 に なって ふところ から ピカピカ 光る 庖丁 を 出して 見せ ながら 、 「 泣いたら きか ない ぞ 。 どろぼう|||かお|||||ぴかぴか|ひかる|ほうちょう||だして|みせ||ないたら||| さ 、 お前 の お母さん は お 金 を どこ に 仕舞って いる か 。 |おまえ||お かあさん|||きむ||||しまって|| 言わ ない と これ で 殺して しまう ぞ 」  と 言いました 。 いわ|||||ころして||||いいました チエ子 さん は 、 「 お母さん 」  と 泣き ながら 逃げ出しました 。 ちえこ|||お かあさん||なき||にげだしました 「 この やつ 、 逃げた な 」  と 泥棒 は いきなり 追っかけて チエ子 さん を 捕まえよう と しました 。 ||にげた|||どろぼう|||おっかけて|ちえこ|||つかまえよう|| その 時 ブーン と 唸って 一 匹 の 虻 が 飛んで 来て 、 泥棒 の 眼 の 前 で ブルンブルンブルン と まわり 始めました 。 |じ|||うなって|ひと|ひき||あぶ||とんで|きて|どろぼう||がん||ぜん|||||はじめました 泥棒 は 邪魔に なる ので 、 「 こんち くしょう 、 こんち くしょう 」  と 払い除けよう と しました が 、 なかなか 払い除けられません 。 どろぼう||じゃまに||||||||はらいのけよう|||||はらいのけられません その うち に チエ子 さん は 、 「 お母さん 、 お母さん 」  と 叫び ながら 障子 を 開けて お 縁 の 方 に 逃げて 行きます 。 |||ちえこ|||お かあさん|お かあさん||さけび||しょうじ||あけて||えん||かた||にげて|いきます 「 逃がして なる もの か 」  と 泥棒 は 一 所 懸命 と なって 、 とうとう 虻 を タタキ 落として 追っかけて ゆきました spanclass =" notes "[#「 追っかけて ゆきました 」 は 底 本 で は 「 追っかけて ゆました 」] span 。 にがして|||||どろぼう||ひと|しょ|けんめい||||あぶ|||おとして|おっかけて||||おっかけて|||そこ|ほん|||おっかけて|| そう する と 虻 は タタキ 落とされて ちょっと 死んだ ように なりました が 、 又 飛び上って 泥棒 の 足 へ 飛びついて 力一 パイ 喰 いつきました 。 |||あぶ|||おとされて||しんだ|よう に|||また|とびあがって|どろぼう||あし||とびついて|りきいち|ぱい|しょく| 「 アイタッ 」  と 泥棒 は うしろ 向き に 立ち止まる 拍子 に お 縁 から 足 を 辷 ら して 、 石 の 上 に 落っこ ち て 頭 を ぶって 眼 を まわして しまいました 。 ||どろぼう|||むき||たちどまる|ひょうし|||えん||あし||すべり|||いし||うえ||おとっこ|||あたま|||がん||| その うち に チエ子 さん は 表 へ 出て 、 通りがかり の お 巡査 さん に この 事 を 言いました ので 、 泥棒 は すぐに 縛られて しまいました 。 |||ちえこ|||ひょう||でて|とおりがかり|||じゅんさ||||こと||いいました||どろぼう|||しばられて| お母さん が お 帰り に なって この お 話 を お きき に なる と 、 涙 を こぼして チエ子 さん を 抱きしめて お よろこび に なりました 。 お かあさん|||かえり|||||はなし|||||||なみだ|||ちえこ|||だきしめて|||| その 時 に チエ子 さん は お 縁側 を 見る と 一 匹 の 虻 が 死んで 落ちて おりました 。 |じ||ちえこ||||えんがわ||みる||ひと|ひき||あぶ||しんで|おちて| 「 お母さん 、 御覧 なさい 。 お かあさん|ごらん| この 間 の 虻 が 泥棒 を 刺した の よ 。 |あいだ||あぶ||どろぼう||さした|| あたし が 助けて やった お 礼 を して くれた の よ 」  と 言いました 。 ||たすけて|||れい|||||||いいました お母さん は お うなずき に なりました 。 お かあさん||||| そうして 晩 方 お 父さん が お 帰り に なって お母さん が この お 話 を さ れます と 、 お 父 さま は チエ子 の 頭 を 撫で ながら 、 「 あぶ と お 話した 子 は 世界中 で チエ子 一 人 だろう 」  と お 笑い に なりました 。 |ばん|かた||とうさん|||かえり|||お かあさん||||はなし||||||ちち|||ちえこ||あたま||なで|||||はなした|こ||せかいじゅう||ちえこ|ひと|じん||||わらい|| チエ子 さん は 虻 の お 墓 を 作って やりました 。 ちえこ|||あぶ|||はか||つくって|