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三姉妹探偵団 1, 三姉妹探偵団01 chapter 14 (1)

三 姉妹 探偵 団 01 chapter 14 (1)

14 闇 の 中 の 愛

「 こちら です 。 どうぞ ご ゆっくり 」

明り が つく と 、 ドア の 閉る 音 が した 。

「 こりゃ 凄い や 」

と 、 安東 が 言った 。

そろそろ と 顔 を 上げた 綾子 は 、 目 を パチクリ さ せた 。

もちろん 綾子 も 普通の ホテル なら 泊った こと が ある 。 ラブ ・ ホテル だって 、 週刊 誌 の 写真 なんか で 見た こと は ある 。

しかし 、 こんなに キンキラキン と は 思わ なかった 。 大きな 鏡 、 金色 の ベッド カバー 、 シャンデリア ……。 まるで ネオンサイン の 中 へ でも 迷い こんで しまった ようだ 。

「 さあ 、 寛ごう じゃ ない か 。 ビール ぐらい 飲める んだろう ? 「 いえ 、 私 、 全然 ──」

「 少し 酔った 方 が いい よ 。 さあ 、 座ろう 」

ソファ に 座って も 、 何 か 居心地 が 悪い 。 綾子 が モジモジ して いる と 、 ドア が ノック さ れて 、 ビール が 運ば れて 来た 。

コップ に たっぷり と 注が れ 、

「 乾杯 」

と 来て は 、 飲ま ない わけに も いか ず 、 綾子 はぐ いと 一口 飲んで 、 苦 さ に 目 を 白黒 さ せた 。

頰 が たちまち ほてって 来る 。 動 悸 が して 、 目 が 回り そうだ 。

何しろ アルコール は まるで だめな のである 。

「── こっち へ おいで 」

と 安東 が 、 自分 の 座って いる 長 椅子 で 体 を ずらした 。

言わ れた 通り に 、 並んで 腰 を おろす と 、 安東 が 抱き 寄せて 、 キス して 来る 。 アルコール の せい も あって か 、 もう 初め から 、 燃え 立つ ような 熱気 が 、 綾子 を 包み込んで いた ……。

今日 の 抱擁 は 、 今 まで と は 違って いた 。 ただ 、 力強い だけ で なく 、 優しかったり 、 荒々しかったり した 。 綾子 は もう 何 が どう なって いる の か 、 分 ら なく なった 。

「── 後悔 し ない か ? 耳 もと で 、 安東 が 囁いた 。

「 はい ……」

綾子 は 答えた 。 だが 、 本当 は 何 を 言わ れて いる か 、 よく 分 ら なかった のである 。

ともかく 、 ここ まで 来て しまった のだ 。 もう 後戻り は でき ない 。

不意に 、 安東 が 離れた 。

「 シャワー を 浴びて おいで 」

「 ええ ……」

「 こっち だ 」

手 を 取って 立た せる と 、 奥 の ドア を 開ける 。 やたら だだっ広い バス ルーム だった 。

「 二 人 で 入る ように なって る んだ 」

と 安東 は 言った 。

「 一緒に 入る かい ? 「 それ は ……」

と うつむいて しまう 。

「 分 って る よ 。 じゃ 、 さっぱり し なさい 。 君 が 出たら 、 僕 が 入る 。 その 間 に ベッド へ 入って おいで 」

綾子 は コックリ 肯 いた 。

一 人 に なる と 、 綾子 は 、 よろけて 倒れ そうに なり 、 あわてて 壁 に 手 を ついた 。

「 しっかり し なきゃ ……」

決心 した んだ 。 もう 、 覚悟 を 決めて ある んだ !

脱衣 かご の 前 で 、 綾子 は 服 を 脱いだ 。 浴槽 の 中 に 立って 、 コック を ひねる と 、 お 湯 が 雨 と なって 降って くる 。 あわてて 、 後ろ に 退 がり 、 シャワー の ノズル を 取って 、 全身 に 湯 を 流して 行った 。

ちょうど いい 熱 さ だ 。 ── ふと 横 を 見る と 、 大きな 鏡 が 、 壁面 一 杯 に はめ込ま れて いて 、 ギクリと した 。

ちょっと 肉付き の 豊かな 、 裸体 が 映って いる 。 まるで 、 自分 で は ない ようで 、 他人 の 裸 を 盗み 見て いる ような 、 きまり 悪 さ が あった 。

でも …… これ で いい の かしら ? 安東 先生 の もの に なって 、 いい のだろう か ?

今さら 迷って も 仕方ない 。 もう 総 て 、 先生 に 任せて おけば いい んだ ……。

シャワー を 浴び ながら 、 綾子 は 目 を 閉じて いた 。

安東 は 、 綾子 の 裸 身 を 、 ソファ に 座って ビール を 飲み ながら 眺めて いた 。 壁 の 鏡 が 、 室 内 から は 素 通し の ハーフミラー に なって いる のだ 。

カーテン が 引いて ある ので 分 ら ない が 、 こうして 開ける と 、 バス ルーム の 中 が 見える と いう わけである 。

安東 は 、 口元 に 笑み を 浮かべ ながら 、 じっと 綾子 の 裸 を 見つめて いた が 、 綾子 が シャワー を 止め 、 バス タオル で 体 を 拭い 始める と 、 立って 行って 元 の 通り に カーテン を 閉めた 。

少し して 、 ドア が 開き 、 バス タオル を 体 に 巻きつけた 綾子 が 出て 来た 。

「 きれいだ よ 」

安東 は 綾子 を 抱いて キス した 。 バス タオル が 落ち そうに なって 、 綾子 は あわてて 押えた 。

「 じゃ 、 僕 も シャワー を 浴びて 来る 。 君 は ベッド に 入って 待って い なさい 」

「 はい 」

安東 が バス ルーム に 入って 行く と 、 綾子 は 大きく 息 を ついた 。 恐る恐る ベッド へ 近付く 。

三 、 四 人 も 寝 られ そうな 、 大きな ベッド だった 。

それ から 、 思い付いて 、 急いで 入口 の ドア の 方 へ 走った 。 室 内 の 明り を 消す と 、 ドア の 下 だけ が 、 ほのかに 明るく なって 、 後 は 闇 に 包ま れた 。

綾子 は 、 そろそろ と ベッド の 方 へ 歩み寄り 、 腰 を おろした 。 ── バス ルーム から 、 シャワー の 音 が 聞こえて 来る 。

綾子 は 立ち上る と 、 バス タオル を 足下 に 落として 、 ベッド の 中 へ 滑り込んだ 。

安東 は 、 腰 に バス タオル を 巻いて 、 バス ルーム を 出て 来た 。

一瞬 、 部屋 が 真 暗 な のに 戸惑った 。

「 何 だ 、 明り を 消した の かい ? と 笑い ながら 声 を かける 。

「 恥ずかしい ……」

ベッド から 、 低い 声 が した 。

「 そう か 。 ── いい よ 、 それ じゃ 消して おこう 。 でも 、 後 で 、 ゆっくり 君 の 体 を 見せて くれる ね 」

「 ええ ……」

安東 は 、 バス ルーム の ドア を 閉めた 。 部屋 は 、 すっかり 暗く なった 。

「 これ じゃ どこ に ベッド が ある か 分 ら ない な ……」

安東 が 苦笑 し ながら 言った 。 「 今 行く から な 」

バス タオル を 投げ捨てる と 、 安東 は 見当 を つけて 、 歩いて 行った 。 ベッド へ ぶつかる と 、 そっと 手 を 這わ せる 。

毛布 の 、 こんもり と した 膨み に 出会った 。

「 震えて る の かい ? 大丈夫だ 。 怖い こと なんか ない よ 」

安東 は ベッド へ 入り込む と 、 奥 へ 進んだ 。 滑らかな 肌 に 、 手 が 触れた 。

「 大丈夫だ 。 ── 楽に して 。 リラックス して れば いい んだ よ 」

安東 は 、 柔らかい 裸体 を 抱きしめた 。 震える ような 息づかい が 聞こえて 来る 。

急に 、 身 を よじって 、 安東 の 手 から 、 裸 身 が 脱け出した 。

「 おい 、 どうした ん だ ? と 安東 は 言った 。

床 に 何 か の 動く 音 が した 。

「 どうした ? 怖い の か ? ── 大丈夫だ よ 。 戻って おいで 」

安東 は 起き上って 、 部屋 の 中 を 見回した 。 ── ごく わずかだ が 、 白い 姿 が 、 動く の が 、 目 に 入った 。

「 そこ に いる ね 。 さあ 、 こっち へ 来る んだ 」

「 いや ……」

と 囁く ような 声 が 返って 来る 。

「 何 を 言って る んだ 。 もう 決心 した んじゃ ない か 」

安東 は ちょっと 苛立った 声 を 出した 。 「 さあ ! ふっと 、 見えて いた 白い 影 が 消えた 。

「 どこ だ ? 安東 は 、 ナイトテーブル を 手 で 探った 。 スタンド が ある 。 これ を 点ければ 。 ── 手 に 触れて 、 探る と 紐 が あった 。

紐 を 引く 。 しかし 、 スタンド は 点か なかった 。 ── 故障 か ? 畜生 !

カチャカチャ と 、 何度 も 紐 を 引いた が 、 スタンド は 点か なかった 。

「 こいつ め ! 手 で はたく と 、 スタンド が 倒れて 音 を 立てた 。

「 おい ! いつまで 隠れて る つもりな んだ ? 子供 じゃ ない だろう 。 何 を 今さら 怖がって る んだ ? 安東 は 、 ニヤッ と 笑う と 、「 よし 。 ── それ なら 、 取 っ 捕まえて やる 。 待って ろ よ 」

と 、 ベッド から そっと 脱け出した 。

じっと 闇 の 中 へ 目 を こらす 。 何 か が 動く 物音 が した 。

「 いた な ! 安東 は その 方向 へ と 走った 。 椅子 が 正面 に あった 。 それ に まともに ぶつかって 、 安東 は 椅子 ごと 引っくり返って いた 。

「── 畜生 ! どこ だ ? 起き上る と 、 安東 は 怒鳴った 。 ── そう だ 、 部屋 の 明り の スイッチ !

ドア の 所 だけ は 、 廊下 の 明り が 少し 洩 れて 明るく なって いる 。 安東 は 素早く 近付く と 壁 へ 手 を 這わ せた 。 スイッチ …… スイッチ ……。

「 あった ぞ 。 ── さあ 、 どこ に 隠れて る ? 今 、 見つけ出して やる から な 」

スイッチ を 押した 。 カチッ と 音 が して ── 明り は 一 つ も 点か ない 。

何 だ 、 これ は ? どう なって る んだ ?

その とき 、 右 の 奥 で 、 机 が ゴトッ と 動いた 。 あそこ だ 。 安東 は 足早に 進んで 行った 。 足 が 何 か に 引っかかって 、 安東 は 前 のめり に 転んだ 。

何 か 硬い もの が 額 に 当って 、 安東 は 思わず 声 を 上げた 。

「 ああ ……。 痛い 、 畜生 ! ── おい ! いい加減に しろ ! 安東 は 立ち上った 。 声 が 震えて いた 。

「 お前 みたいな 小 娘 に 馬鹿に さ れて 黙って る と 思う の か ? 見付けたら 縛り 上げて 泣き わめく まで 殴って やる ぞ 。 分 った か ! 安東 は 息 を 弾ま せ ながら 、 じっと 立って 、 暗がり の 中 へ 視線 を 投げかけ 、 ゆっくり と 巡らせて 行った 。

「 俺 を なめる な よ ……。 いざ と なれば 何 を する か 分 ら ない んだ ぞ 」

カチッ 、 と 、 どこ か で 音 が した 。 「 どこ だ ? おい ! 突然 、 何 か が 飛んで 来て 、 安東 の 膝 に 当った 。 アッ と 声 を 上げて 、 安東 が 膝 を かかえて うずくまる 。

「 やった な ! 出て 来い ! 安東 の 顔 は 怒り に 歪んで いた 。 「 殺して やる ! 本気だ ぞ ! 俺 は あの 女 だって 殺して やった んだ ! 殺さ れ たく なかったら 、 おとなしく 出て 来て 、 手 を ついて 謝れ ! 俺 に ああ しろ こう しろ と 命令 したり 、 反抗 し や がった 奴 は ただ じゃ おか ない ! さあ 、 出て 来い ! 安東 は 怒鳴り まくった 。 ── 不意に 、 暗がり の 奥 に 、 ポッ と 白い 光 が 射 した 。

安東 は 、 目 を 見張った 。 ── そこ に 全裸 で 立って いる の は 、 綾子 で は なかった 。

夕 里子 が 、 立って いた のだ 。

「 貴 様 ……」

「 あなた が 殺した んです ね 、 水口 淳子 さん を 」

遠い 声 に 聞こえた 。

「 俺 を …… 騙した な ! 安東 は 、 夕 里子 へ 向 って 猛然と 突進 した 。

── バシッ と いう 鋭い 音 が して 、 夕 里子 の 前 に 、 白い 網目 の 模様 が 広がった 。 安東 が 、 その 場 に 崩れる ように 倒れた 。

部屋 の 明り が ついた 。

夕 里子 は バスローブ を はおって 、 バス ルーム から 出て 来た 。

安東 は 、 ひび割れた ハーフミラー の 前 に 倒れて いる 。

国友 が 、 ソファ の 陰 から 立ち上って 、 安東 の 方 へ 歩み寄る と 、 かがみ 込んだ 。

「── 気 を 失って る だけ だ 。 大丈夫 。 君 は 何とも ない の ? 夕 里子 は 、 肯 いた 。

ベッド の 下 から 、 綾子 が 頭 だけ 出した 。

「 夕 里子 ……」

「 お 姉さん 、 もう 済んだ よ 」

「 あの 人 は …… 人殺し だった の ね 」

「 一種 の 二 重人 格 じゃ ない の か な 。 女 が 言う なり に なって いる とき は いい が 、 逆らう と 人 が 変った ように 乱暴に なった んだろう 」

「 大丈夫 、 お 姉さん ? 「 うん ……」

綾子 は シクシク 泣き出した 。 「 私 …… 馬鹿だった ……」

「 やめ な よ 。 長女 でしょ 。 しっかり して 」

「 夕 里子 が い なきゃ 、 私 なんて 何も でき ない わ 」

「 そんな こと 言って ないで 、 ベッド の 下 から 出て らっしゃい 」

「 ずっと ここ に いる 」

「 馬鹿 ね 」

と 、 夕 里子 は 笑った 。

「 だって 、 裸 な んだ もの 」

「 あ 、 そう か 。 今 、 服 を 取って 来る 。 ── 国友 さん 」

「 何 だい ? 「 その 犯人 を かついで 外 へ 出て て 下さい な 。 レディ たち の 着替え です から 」

「 あ 、 そう か 。 でも 君 の 裸 を さっき 見そこな っち まったん だ 。 何なら アンコール で ──」

夕 里子 が ソファ の クッション を 国友 めがけて 投げつけた 。

刑事 が 何 人 か ホテル へ 駆けつけて 来て 、 安東 も 連行 さ れて 行った 。

夕 里子 と 綾子 は 、 派手な 部屋 の 中 を 見回して 、

「 凄い ねえ 」

と 改めて 感心 して いた 。

「 おい 、 君 たち 」

国友 が ドア を 開けて 入って 来た 。 「 ホテル の 方 に も 礼 を 言 っと か ない と な 。 照明 を うまく やって くれた から 。 ── 今 、 連絡 が あった よ 。 安東 岐子 が 自首 して 出た そうだ 」

「 自首 ? 「 夫 の 犯罪 を 知っていた んだ な 。 そして 神田 初江 の 口 から それ が 洩 れる の を 恐れて 、 彼女 を 殺した 」

「 じゃ 、 安東 先生 は 、 水口 淳子 を 殺して ──」

「 片瀬 紀子 も 、 だ 。 バッグ が 家 の 押入れ に あった 」

「 それ も 奥さん は 知って た の ね 」

「 そして 、 真相 に 気付いた 珠美 君 を 殺そう と した 」

「 珠美 を ? 夕 里子 と 綾子 は 飛び上った 。

「 珠美 は ? 大丈夫な の ? そこ へ ドア が 開いて 、 当の 珠美 が 飛び込んで 来た 。

「 ヒロイン 登場 ! 「 珠美 ! ── ああ びっくり した 」

と 、 二 人 は 胸 を 撫でおろした 。

「 へ へ ……。 一躍 、 有名 人 だ もん ね 」

珠美 は 、「 これ 見て 」

と 、 首 に 巻いた 布 を 指さした 。

「 どうした の ? 「 首 絞め られた の 。 でも 、 結局 、 あの 奥さん 、 泣き出しちゃ って ね 、 だめだった の よ 」

「 全く もう ! 死んで た かも しれ ない の よ ! 夕 里子 は 珠美 を 抱きしめた 。 綾子 が 、 また 泣き出した 。 今度 は 嬉し泣き である 。

「 でも …… そんな 馬鹿な こと ! と 、 夕 里子 は 言った 。


三 姉妹 探偵 団 01 chapter 14 (1) みっ|しまい|たんてい|だん| Three Sisters Detective Agency 01 chapter 14 (1)

14  闇 の 中 の 愛 やみ||なか||あい 14 Love in the dark

「 こちら です 。 どうぞ ご ゆっくり 」

明り が つく と 、 ドア の 閉る 音 が した 。 あかり||||どあ||しまる|おと||

「 こりゃ 凄い や 」 |すごい|

と 、 安東 が 言った 。 |あんどう||いった

そろそろ と 顔 を 上げた 綾子 は 、 目 を パチクリ さ せた 。 ||かお||あげた|あやこ||め||||

もちろん 綾子 も 普通の ホテル なら 泊った こと が ある 。 |あやこ||ふつうの|ほてる||とまった||| ラブ ・ ホテル だって 、 週刊 誌 の 写真 なんか で 見た こと は ある 。 らぶ|ほてる||しゅうかん|し||しゃしん|||みた|||

しかし 、 こんなに キンキラキン と は 思わ なかった 。 |||||おもわ| 大きな 鏡 、 金色 の ベッド カバー 、 シャンデリア ……。 おおきな|きよう|きんいろ||べっど|かばー| まるで ネオンサイン の 中 へ でも 迷い こんで しまった ようだ 。 |||なか|||まよい|||

「 さあ 、 寛ごう じゃ ない か 。 |くつろごう||| ビール ぐらい 飲める んだろう ? びーる||のめる| 「 いえ 、 私 、 全然 ──」 |わたくし|ぜんぜん

「 少し 酔った 方 が いい よ 。 すこし|よった|かた||| さあ 、 座ろう 」 |すわろう

ソファ に 座って も 、 何 か 居心地 が 悪い 。 ||すわって||なん||いごこち||わるい 綾子 が モジモジ して いる と 、 ドア が ノック さ れて 、 ビール が 運ば れて 来た 。 あやこ||もじもじ||||どあ|||||びーる||はこば||きた

コップ に たっぷり と 注が れ 、 こっぷ||||そそが|

「 乾杯 」 かんぱい

と 来て は 、 飲ま ない わけに も いか ず 、 綾子 はぐ いと 一口 飲んで 、 苦 さ に 目 を 白黒 さ せた 。 |きて||のま||||||あやこ|||ひとくち|のんで|く|||め||しろくろ||

頰 が たちまち ほてって 来る 。 ||||くる 動 悸 が して 、 目 が 回り そうだ 。 どう|き|||め||まわり|そう だ

何しろ アルコール は まるで だめな のである 。 なにしろ|あるこーる||||

「── こっち へ おいで 」

と 安東 が 、 自分 の 座って いる 長 椅子 で 体 を ずらした 。 |あんどう||じぶん||すわって||ちょう|いす||からだ||

言わ れた 通り に 、 並んで 腰 を おろす と 、 安東 が 抱き 寄せて 、 キス して 来る 。 いわ||とおり||ならんで|こし||||あんどう||いだき|よせて|きす||くる アルコール の せい も あって か 、 もう 初め から 、 燃え 立つ ような 熱気 が 、 綾子 を 包み込んで いた ……。 あるこーる|||||||はじめ||もえ|たつ||ねっき||あやこ||つつみこんで|

今日 の 抱擁 は 、 今 まで と は 違って いた 。 きょう||ほうよう||いま||||ちがって| ただ 、 力強い だけ で なく 、 優しかったり 、 荒々しかったり した 。 |ちからづよい||||やさしかったり|あらあらしかったり| 綾子 は もう 何 が どう なって いる の か 、 分 ら なく なった 。 あやこ|||なん|||||||ぶん|||

「── 後悔 し ない か ? こうかい||| 耳 もと で 、 安東 が 囁いた 。 みみ|||あんどう||ささやいた

「 はい ……」

綾子 は 答えた 。 あやこ||こたえた だが 、 本当 は 何 を 言わ れて いる か 、 よく 分 ら なかった のである 。 |ほんとう||なん||いわ|||||ぶん|||

ともかく 、 ここ まで 来て しまった のだ 。 |||きて|| もう 後戻り は でき ない 。 |あともどり|||

不意に 、 安東 が 離れた 。 ふいに|あんどう||はなれた

「 シャワー を 浴びて おいで 」 しゃわー||あびて|

「 ええ ……」

「 こっち だ 」

手 を 取って 立た せる と 、 奥 の ドア を 開ける 。 て||とって|たた|||おく||どあ||あける やたら だだっ広い バス ルーム だった 。 |だだっぴろい|ばす|るーむ|

「 二 人 で 入る ように なって る んだ 」 ふた|じん||はいる||||

と 安東 は 言った 。 |あんどう||いった

「 一緒に 入る かい ? いっしょに|はいる| 「 それ は ……」

と うつむいて しまう 。

「 分 って る よ 。 ぶん||| じゃ 、 さっぱり し なさい 。 君 が 出たら 、 僕 が 入る 。 きみ||でたら|ぼく||はいる その 間 に ベッド へ 入って おいで 」 |あいだ||べっど||はいって|

綾子 は コックリ 肯 いた 。 あやこ|||こう|

一 人 に なる と 、 綾子 は 、 よろけて 倒れ そうに なり 、 あわてて 壁 に 手 を ついた 。 ひと|じん||||あやこ|||たおれ|そう に|||かべ||て|| When becoming alone, Ayako was lying down and likely to collapse, and hurriedly hit the wall.

「 しっかり し なきゃ ……」

決心 した んだ 。 けっしん|| もう 、 覚悟 を 決めて ある んだ ! |かくご||きめて||

脱衣 かご の 前 で 、 綾子 は 服 を 脱いだ 。 だつい|||ぜん||あやこ||ふく||ぬいだ In front of the undressing basket, Ayako took off his clothes. 浴槽 の 中 に 立って 、 コック を ひねる と 、 お 湯 が 雨 と なって 降って くる 。 よくそう||なか||たって|こっく|||||ゆ||あめ|||ふって| あわてて 、 後ろ に 退 がり 、 シャワー の ノズル を 取って 、 全身 に 湯 を 流して 行った 。 |うしろ||しりぞ||しゃわー||のずる||とって|ぜんしん||ゆ||ながして|おこなった

ちょうど いい 熱 さ だ 。 ||ねつ|| ── ふと 横 を 見る と 、 大きな 鏡 が 、 壁面 一 杯 に はめ込ま れて いて 、 ギクリと した 。 |よこ||みる||おおきな|きよう||へきめん|ひと|さかずき||はめこま|||ぎくりと|

ちょっと 肉付き の 豊かな 、 裸体 が 映って いる 。 |にくづき||ゆたかな|らたい||うつって| まるで 、 自分 で は ない ようで 、 他人 の 裸 を 盗み 見て いる ような 、 きまり 悪 さ が あった 。 |じぶん|||||たにん||はだか||ぬすみ|みて||||あく|||

でも …… これ で いい の かしら ? 安東 先生 の もの に なって 、 いい のだろう か ? あんどう|せんせい|||||||

今さら 迷って も 仕方ない 。 いまさら|まよって||しかたない もう 総 て 、 先生 に 任せて おけば いい んだ ……。 |そう||せんせい||まかせて|||

シャワー を 浴び ながら 、 綾子 は 目 を 閉じて いた 。 しゃわー||あび||あやこ||め||とじて|

安東 は 、 綾子 の 裸 身 を 、 ソファ に 座って ビール を 飲み ながら 眺めて いた 。 あんどう||あやこ||はだか|み||||すわって|びーる||のみ||ながめて| 壁 の 鏡 が 、 室 内 から は 素 通し の ハーフミラー に なって いる のだ 。 かべ||きよう||しつ|うち|||そ|とおし||||||

カーテン が 引いて ある ので 分 ら ない が 、 こうして 開ける と 、 バス ルーム の 中 が 見える と いう わけである 。 かーてん||ひいて|||ぶん|||||あける||ばす|るーむ||なか||みえる|||

安東 は 、 口元 に 笑み を 浮かべ ながら 、 じっと 綾子 の 裸 を 見つめて いた が 、 綾子 が シャワー を 止め 、 バス タオル で 体 を 拭い 始める と 、 立って 行って 元 の 通り に カーテン を 閉めた 。 あんどう||くちもと||えみ||うかべ|||あやこ||はだか||みつめて|||あやこ||しゃわー||とどめ|ばす|たおる||からだ||ぬぐい|はじめる||たって|おこなって|もと||とおり||かーてん||しめた

少し して 、 ドア が 開き 、 バス タオル を 体 に 巻きつけた 綾子 が 出て 来た 。 すこし||どあ||あき|ばす|たおる||からだ||まきつけた|あやこ||でて|きた

「 きれいだ よ 」

安東 は 綾子 を 抱いて キス した 。 あんどう||あやこ||いだいて|きす| バス タオル が 落ち そうに なって 、 綾子 は あわてて 押えた 。 ばす|たおる||おち|そう に||あやこ|||おさえた

「 じゃ 、 僕 も シャワー を 浴びて 来る 。 |ぼく||しゃわー||あびて|くる 君 は ベッド に 入って 待って い なさい 」 きみ||べっど||はいって|まって||

「 はい 」

安東 が バス ルーム に 入って 行く と 、 綾子 は 大きく 息 を ついた 。 あんどう||ばす|るーむ||はいって|いく||あやこ||おおきく|いき|| 恐る恐る ベッド へ 近付く 。 おそるおそる|べっど||ちかづく

三 、 四 人 も 寝 られ そうな 、 大きな ベッド だった 。 みっ|よっ|じん||ね||そう な|おおきな|べっど|

それ から 、 思い付いて 、 急いで 入口 の ドア の 方 へ 走った 。 ||おもいついて|いそいで|いりぐち||どあ||かた||はしった 室 内 の 明り を 消す と 、 ドア の 下 だけ が 、 ほのかに 明るく なって 、 後 は 闇 に 包ま れた 。 しつ|うち||あかり||けす||どあ||した||||あかるく||あと||やみ||つつま|

綾子 は 、 そろそろ と ベッド の 方 へ 歩み寄り 、 腰 を おろした 。 あやこ||||べっど||かた||あゆみより|こし|| ── バス ルーム から 、 シャワー の 音 が 聞こえて 来る 。 ばす|るーむ||しゃわー||おと||きこえて|くる

綾子 は 立ち上る と 、 バス タオル を 足下 に 落として 、 ベッド の 中 へ 滑り込んだ 。 あやこ||たちのぼる||ばす|たおる||あしもと||おとして|べっど||なか||すべりこんだ

安東 は 、 腰 に バス タオル を 巻いて 、 バス ルーム を 出て 来た 。 あんどう||こし||ばす|たおる||まいて|ばす|るーむ||でて|きた

一瞬 、 部屋 が 真 暗 な のに 戸惑った 。 いっしゅん|へや||まこと|あん|||とまどった

「 何 だ 、 明り を 消した の かい ? なん||あかり||けした|| と 笑い ながら 声 を かける 。 |わらい||こえ||

「 恥ずかしい ……」 はずかしい

ベッド から 、 低い 声 が した 。 べっど||ひくい|こえ||

「 そう か 。 ── いい よ 、 それ じゃ 消して おこう 。 ||||けして| でも 、 後 で 、 ゆっくり 君 の 体 を 見せて くれる ね 」 |あと|||きみ||からだ||みせて||

「 ええ ……」

安東 は 、 バス ルーム の ドア を 閉めた 。 あんどう||ばす|るーむ||どあ||しめた 部屋 は 、 すっかり 暗く なった 。 へや|||くらく|

「 これ じゃ どこ に ベッド が ある か 分 ら ない な ……」 ||||べっど||||ぶん|||

安東 が 苦笑 し ながら 言った 。 あんどう||くしょう|||いった 「 今 行く から な 」 いま|いく||

バス タオル を 投げ捨てる と 、 安東 は 見当 を つけて 、 歩いて 行った 。 ばす|たおる||なげすてる||あんどう||けんとう|||あるいて|おこなった ベッド へ ぶつかる と 、 そっと 手 を 這わ せる 。 べっど|||||て||はわ|

毛布 の 、 こんもり と した 膨み に 出会った 。 もうふ|||||ふくらみ||であった

「 震えて る の かい ? ふるえて||| 大丈夫だ 。 だいじょうぶだ 怖い こと なんか ない よ 」 こわい||||

安東 は ベッド へ 入り込む と 、 奥 へ 進んだ 。 あんどう||べっど||はいりこむ||おく||すすんだ 滑らかな 肌 に 、 手 が 触れた 。 なめらかな|はだ||て||ふれた

「 大丈夫だ 。 だいじょうぶだ ── 楽に して 。 らくに| リラックス して れば いい んだ よ 」 りらっくす|||||

安東 は 、 柔らかい 裸体 を 抱きしめた 。 あんどう||やわらかい|らたい||だきしめた 震える ような 息づかい が 聞こえて 来る 。 ふるえる||いきづかい||きこえて|くる

急に 、 身 を よじって 、 安東 の 手 から 、 裸 身 が 脱け出した 。 きゅうに|み|||あんどう||て||はだか|み||ぬけだした

「 おい 、 どうした ん だ ? と 安東 は 言った 。 |あんどう||いった

床 に 何 か の 動く 音 が した 。 とこ||なん|||うごく|おと||

「 どうした ? 怖い の か ? こわい|| ── 大丈夫だ よ 。 だいじょうぶだ| 戻って おいで 」 もどって|

安東 は 起き上って 、 部屋 の 中 を 見回した 。 あんどう||おきあがって|へや||なか||みまわした ── ごく わずかだ が 、 白い 姿 が 、 動く の が 、 目 に 入った 。 |||しろい|すがた||うごく|||め||はいった ── Very little, but the white figure moves, it got in the eyes.

「 そこ に いる ね 。 さあ 、 こっち へ 来る んだ 」 |||くる|

「 いや ……」

と 囁く ような 声 が 返って 来る 。 |ささやく||こえ||かえって|くる

「 何 を 言って る んだ 。 なん||いって|| もう 決心 した んじゃ ない か 」 |けっしん||||

安東 は ちょっと 苛立った 声 を 出した 。 あんどう|||いらだった|こえ||だした 「 さあ ! ふっと 、 見えて いた 白い 影 が 消えた 。 |みえて||しろい|かげ||きえた

「 どこ だ ? 安東 は 、 ナイトテーブル を 手 で 探った 。 あんどう||||て||さぐった スタンド が ある 。 すたんど|| これ を 点ければ 。 ||つければ ── 手 に 触れて 、 探る と 紐 が あった 。 て||ふれて|さぐる||ひも||

紐 を 引く 。 ひも||ひく しかし 、 スタンド は 点か なかった 。 |すたんど||つか| ── 故障 か ? こしょう| 畜生 ! ちくしょう

カチャカチャ と 、 何度 も 紐 を 引いた が 、 スタンド は 点か なかった 。 ||なんど||ひも||ひいた||すたんど||つか|

「 こいつ め ! 手 で はたく と 、 スタンド が 倒れて 音 を 立てた 。 て||||すたんど||たおれて|おと||たてた

「 おい ! いつまで 隠れて る つもりな んだ ? |かくれて||| 子供 じゃ ない だろう 。 こども||| 何 を 今さら 怖がって る んだ ? なん||いまさら|こわがって|| 安東 は 、 ニヤッ と 笑う と 、「 よし 。 あんどう||||わらう|| ── それ なら 、 取 っ 捕まえて やる 。 ||と||つかまえて| 待って ろ よ 」 まって||

と 、 ベッド から そっと 脱け出した 。 |べっど|||ぬけだした

じっと 闇 の 中 へ 目 を こらす 。 |やみ||なか||め|| 何 か が 動く 物音 が した 。 なん|||うごく|ものおと||

「 いた な ! 安東 は その 方向 へ と 走った 。 あんどう|||ほうこう|||はしった 椅子 が 正面 に あった 。 いす||しょうめん|| それ に まともに ぶつかって 、 安東 は 椅子 ごと 引っくり返って いた 。 ||||あんどう||いす||ひっくりかえって|

「── 畜生 ! ちくしょう どこ だ ? 起き上る と 、 安東 は 怒鳴った 。 おきあがる||あんどう||どなった ── そう だ 、 部屋 の 明り の スイッチ ! ||へや||あかり||すいっち

ドア の 所 だけ は 、 廊下 の 明り が 少し 洩 れて 明るく なって いる 。 どあ||しょ|||ろうか||あかり||すこし|えい||あかるく|| 安東 は 素早く 近付く と 壁 へ 手 を 這わ せた 。 あんどう||すばやく|ちかづく||かべ||て||はわ| スイッチ …… スイッチ ……。 すいっち|すいっち

「 あった ぞ 。 ── さあ 、 どこ に 隠れて る ? |||かくれて| 今 、 見つけ出して やる から な 」 いま|みつけだして|||

スイッチ を 押した 。 すいっち||おした カチッ と 音 が して ── 明り は 一 つ も 点か ない 。 ||おと|||あかり||ひと|||つか|

何 だ 、 これ は ? なん||| どう なって る んだ ?

その とき 、 右 の 奥 で 、 机 が ゴトッ と 動いた 。 ||みぎ||おく||つくえ||||うごいた あそこ だ 。 安東 は 足早に 進んで 行った 。 あんどう||あしばやに|すすんで|おこなった Andong went on fast. 足 が 何 か に 引っかかって 、 安東 は 前 のめり に 転んだ 。 あし||なん|||ひっかかって|あんどう||ぜん|||ころんだ

何 か 硬い もの が 額 に 当って 、 安東 は 思わず 声 を 上げた 。 なん||かたい|||がく||あたって|あんどう||おもわず|こえ||あげた

「 ああ ……。 痛い 、 畜生 ! いたい|ちくしょう ── おい ! いい加減に しろ ! いいかげんに| 安東 は 立ち上った 。 あんどう||たちのぼった 声 が 震えて いた 。 こえ||ふるえて|

「 お前 みたいな 小 娘 に 馬鹿に さ れて 黙って る と 思う の か ? おまえ||しょう|むすめ||ばかに|||だまって|||おもう|| 見付けたら 縛り 上げて 泣き わめく まで 殴って やる ぞ 。 みつけたら|しばり|あげて|なき|||なぐって|| 分 った か ! ぶん|| 安東 は 息 を 弾ま せ ながら 、 じっと 立って 、 暗がり の 中 へ 視線 を 投げかけ 、 ゆっくり と 巡らせて 行った 。 あんどう||いき||はずま||||たって|くらがり||なか||しせん||なげかけ|||めぐらせて|おこなった

「 俺 を なめる な よ ……。 おれ|||| いざ と なれば 何 を する か 分 ら ない んだ ぞ 」 |||なん||||ぶん||||

カチッ 、 と 、 どこ か で 音 が した 。 |||||おと|| 「 どこ だ ? おい ! 突然 、 何 か が 飛んで 来て 、 安東 の 膝 に 当った 。 とつぜん|なん|||とんで|きて|あんどう||ひざ||あたった アッ と 声 を 上げて 、 安東 が 膝 を かかえて うずくまる 。 ||こえ||あげて|あんどう||ひざ|||

「 やった な ! 出て 来い ! でて|こい 安東 の 顔 は 怒り に 歪んで いた 。 あんどう||かお||いかり||ゆがんで| 「 殺して やる ! ころして| 本気だ ぞ ! ほんきだ| 俺 は あの 女 だって 殺して やった んだ ! おれ|||おんな||ころして|| 殺さ れ たく なかったら 、 おとなしく 出て 来て 、 手 を ついて 謝れ ! ころさ|||||でて|きて|て|||あやまれ If you do not want to be killed, come out quietly, please hold hands and apologize! 俺 に ああ しろ こう しろ と 命令 したり 、 反抗 し や がった 奴 は ただ じゃ おか ない ! おれ|||||||めいれい||はんこう||||やつ||||| さあ 、 出て 来い ! |でて|こい 安東 は 怒鳴り まくった 。 あんどう||どなり| ── 不意に 、 暗がり の 奥 に 、 ポッ と 白い 光 が 射 した 。 ふいに|くらがり||おく||||しろい|ひかり||い|

安東 は 、 目 を 見張った 。 あんどう||め||みはった ── そこ に 全裸 で 立って いる の は 、 綾子 で は なかった 。 ||ぜんら||たって||||あやこ|||

夕 里子 が 、 立って いた のだ 。 ゆう|さとご||たって||

「 貴 様 ……」 とうと|さま

「 あなた が 殺した んです ね 、 水口 淳子 さん を 」 ||ころした|||みずぐち|あつこ||

遠い 声 に 聞こえた 。 とおい|こえ||きこえた

「 俺 を …… 騙した な ! おれ||だました| 安東 は 、 夕 里子 へ 向 って 猛然と 突進 した 。 あんどう||ゆう|さとご||むかい||もうぜんと|とっしん|

── バシッ と いう 鋭い 音 が して 、 夕 里子 の 前 に 、 白い 網目 の 模様 が 広がった 。 |||するどい|おと|||ゆう|さとご||ぜん||しろい|あみめ||もよう||ひろがった 安東 が 、 その 場 に 崩れる ように 倒れた 。 あんどう|||じょう||くずれる||たおれた

部屋 の 明り が ついた 。 へや||あかり||

夕 里子 は バスローブ を はおって 、 バス ルーム から 出て 来た 。 ゆう|さとご|||||ばす|るーむ||でて|きた

安東 は 、 ひび割れた ハーフミラー の 前 に 倒れて いる 。 あんどう||ひびわれた|||ぜん||たおれて|

国友 が 、 ソファ の 陰 から 立ち上って 、 安東 の 方 へ 歩み寄る と 、 かがみ 込んだ 。 くにとも||||かげ||たちのぼって|あんどう||かた||あゆみよる|||こんだ

「── 気 を 失って る だけ だ 。 き||うしなって||| 大丈夫 。 だいじょうぶ 君 は 何とも ない の ? きみ||なんとも|| 夕 里子 は 、 肯 いた 。 ゆう|さとご||こう|

ベッド の 下 から 、 綾子 が 頭 だけ 出した 。 べっど||した||あやこ||あたま||だした

「 夕 里子 ……」 ゆう|さとご

「 お 姉さん 、 もう 済んだ よ 」 |ねえさん||すんだ|

「 あの 人 は …… 人殺し だった の ね 」 |じん||ひとごろし|||

「 一種 の 二 重人 格 じゃ ない の か な 。 いっしゅ||ふた|しげと|かく||||| 女 が 言う なり に なって いる とき は いい が 、 逆らう と 人 が 変った ように 乱暴に なった んだろう 」 おんな||いう|||||||||さからう||じん||かわった||らんぼうに||

「 大丈夫 、 お 姉さん ? だいじょうぶ||ねえさん 「 うん ……」

綾子 は シクシク 泣き出した 。 あやこ||しくしく|なきだした 「 私 …… 馬鹿だった ……」 わたくし|ばかだった

「 やめ な よ 。 長女 でしょ 。 ちょうじょ| しっかり して 」

「 夕 里子 が い なきゃ 、 私 なんて 何も でき ない わ 」 ゆう|さとご||||わたくし||なにも|||

「 そんな こと 言って ないで 、 ベッド の 下 から 出て らっしゃい 」 ||いって||べっど||した||でて|

「 ずっと ここ に いる 」

「 馬鹿 ね 」 ばか|

と 、 夕 里子 は 笑った 。 |ゆう|さとご||わらった

「 だって 、 裸 な んだ もの 」 |はだか|||

「 あ 、 そう か 。 今 、 服 を 取って 来る 。 いま|ふく||とって|くる ── 国友 さん 」 くにとも|

「 何 だい ? なん| 「 その 犯人 を かついで 外 へ 出て て 下さい な 。 |はんにん|||がい||でて||ください| レディ たち の 着替え です から 」 |||きがえ||

「 あ 、 そう か 。 でも 君 の 裸 を さっき 見そこな っち まったん だ 。 |きみ||はだか|||みそこな||| 何なら アンコール で ──」 なんなら|あんこーる|

夕 里子 が ソファ の クッション を 国友 めがけて 投げつけた 。 ゆう|さとご||||くっしょん||くにとも||なげつけた

刑事 が 何 人 か ホテル へ 駆けつけて 来て 、 安東 も 連行 さ れて 行った 。 けいじ||なん|じん||ほてる||かけつけて|きて|あんどう||れんこう|||おこなった

夕 里子 と 綾子 は 、 派手な 部屋 の 中 を 見回して 、 ゆう|さとご||あやこ||はでな|へや||なか||みまわして

「 凄い ねえ 」 すごい|

と 改めて 感心 して いた 。 |あらためて|かんしん||

「 おい 、 君 たち 」 |きみ|

国友 が ドア を 開けて 入って 来た 。 くにとも||どあ||あけて|はいって|きた 「 ホテル の 方 に も 礼 を 言 っと か ない と な 。 ほてる||かた|||れい||げん||||| "I must say thank you to the hotel. 照明 を うまく やって くれた から 。 しょうめい||||| ── 今 、 連絡 が あった よ 。 いま|れんらく||| 安東 岐子 が 自首 して 出た そうだ 」 あんどう|しこ||じしゅ||でた|そう だ

「 自首 ? じしゅ 「 夫 の 犯罪 を 知っていた んだ な 。 おっと||はんざい||しっていた|| そして 神田 初江 の 口 から それ が 洩 れる の を 恐れて 、 彼女 を 殺した 」 |しんでん|はつえ||くち||||えい||||おそれて|かのじょ||ころした

「 じゃ 、 安東 先生 は 、 水口 淳子 を 殺して ──」 |あんどう|せんせい||みずぐち|あつこ||ころして

「 片瀬 紀子 も 、 だ 。 かたせ|としこ|| バッグ が 家 の 押入れ に あった 」 ばっぐ||いえ||おしいれ||

「 それ も 奥さん は 知って た の ね 」 ||おくさん||しって|||

「 そして 、 真相 に 気付いた 珠美 君 を 殺そう と した 」 |しんそう||きづいた|たまみ|きみ||ころそう||

「 珠美 を ? たまみ| 夕 里子 と 綾子 は 飛び上った 。 ゆう|さとご||あやこ||とびあがった

「 珠美 は ? たまみ| 大丈夫な の ? だいじょうぶな| そこ へ ドア が 開いて 、 当の 珠美 が 飛び込んで 来た 。 ||どあ||あいて|とうの|たまみ||とびこんで|きた

「 ヒロイン 登場 ! ひろいん|とうじょう 「 珠美 ! たまみ ── ああ びっくり した 」

と 、 二 人 は 胸 を 撫でおろした 。 |ふた|じん||むね||なでおろした

「 へ へ ……。 一躍 、 有名 人 だ もん ね 」 いちやく|ゆうめい|じん|||

珠美 は 、「 これ 見て 」 たまみ|||みて

と 、 首 に 巻いた 布 を 指さした 。 |くび||まいた|ぬの||ゆびさした

「 どうした の ? 「 首 絞め られた の 。 くび|しめ|| でも 、 結局 、 あの 奥さん 、 泣き出しちゃ って ね 、 だめだった の よ 」 |けっきょく||おくさん|なきだしちゃ|||||

「 全く もう ! まったく| 死んで た かも しれ ない の よ ! しんで|||||| 夕 里子 は 珠美 を 抱きしめた 。 ゆう|さとご||たまみ||だきしめた 綾子 が 、 また 泣き出した 。 あやこ|||なきだした 今度 は 嬉し泣き である 。 こんど||うれしなき|

「 でも …… そんな 馬鹿な こと ! ||ばかな| と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった