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江戸小話, かけ値

かけ値

ある 日 、 店 の 旦那 が 小僧 に 、 お 客 に 品物 を 売りつける 時 の コツ を 教えて やり ました 。 「 いい か 、 お前 は 品物 を 売る 時 、 かけ値 を つけ ず に 売ろう と する だろう 。 だ から なかなか 、 商売 が うまく いか ない んだ 。 品物 と 言う の は な 、 一 文 で 売ろう と 思う 時 に は 、 二 文 と 高く 値 を つけて おく 。 五 文 で 売ろう と 思う 時 に は 、 十 文 と 高く 値 を つけて おく が いい 。 そして お 客 が まけろ と 言ったら 、 少しずつ 値段 を 下げて いく んだ 。 これ を かけ値 と 言って な 、 商い を する 時 の 大事な コツ な んだ 。 いい か 、 わかった な 。 これ から は 、 全て この 要領 ( ようりょう ) で やる のだ ぞ 」

さて 、 それ から 何 日 か たった ある 日 の 事 。 近所 で 、 「 火事 だ ! 」 と 、 騒ぎ 出した ので 、 小僧 が 急いで 屋根 の 上 に あがり ました 。 そこ へ 旦那 が やって 来て 、 「 おい 、 火事 は どこ だ ? 」 と 、 聞き ました 。 する と 小僧 が 、 「 はい 、 五 、 六 丁 (→ 約 五 、 六百 メートル ) も 南 で ございます 」 と 、 答え ました 。 「 ほう 、 そんなに 遠く なら 安心だ な 。 ・・・ しかし 、 それ に して は 騒ぎ が 近い ような 気 が する が 」 「 はい 、 かけ値 を つけて 言った ので 、 実は もう 少し 近い です 」 それ を 聞いた 旦那 が 怒って 、 小僧 を 怒鳴りつけ ました 。 「 た わけ 者 ! 火事 を かけ値 で 言う 奴 が ある か ! 」 する と 小僧 は 、 こう 言い 直し ました 。 「 では 、 かけ値 を つけ ず に 申し ます 。 火事 は 、 すぐ 目の前 の 五 、 六 軒先 で ございます 。 火の手 が どんどん 大きく なって 、 あら ら 、 ついに この 家 の 屋根 に も 飛び火 し ました よ 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )


かけ値 かけね

ある 日 、 店 の 旦那 が 小僧 に 、 お 客 に 品物 を 売りつける 時 の コツ を 教えて やり ました 。 |ひ|てん||だんな||こぞう|||きゃく||しなもの||うりつける|じ||こつ||おしえて|| 「 いい か 、 お前 は 品物 を 売る 時 、 かけ値 を つけ ず に 売ろう と する だろう 。 ||おまえ||しなもの||うる|じ|かけね|||||うろう||| だ から なかなか 、 商売 が うまく いか ない んだ 。 |||しょうばい||||| 品物 と 言う の は な 、 一 文 で 売ろう と 思う 時 に は 、 二 文 と 高く 値 を つけて おく 。 しなもの||いう||||ひと|ぶん||うろう||おもう|じ|||ふた|ぶん||たかく|あたい||| 五 文 で 売ろう と 思う 時 に は 、 十 文 と 高く 値 を つけて おく が いい 。 いつ|ぶん||うろう||おもう|じ|||じゅう|ぶん||たかく|あたい||||| そして お 客 が まけろ と 言ったら 、 少しずつ 値段 を 下げて いく んだ 。 ||きゃく||||いったら|すこしずつ|ねだん||さげて|| これ を かけ値 と 言って な 、 商い を する 時 の 大事な コツ な んだ 。 ||かけね||いって||あきない|||じ||だいじな|こつ|| いい か 、 わかった な 。 これ から は 、 全て この 要領 ( ようりょう ) で やる のだ ぞ 」 |||すべて||ようりょう|||||

さて 、 それ から 何 日 か たった ある 日 の 事 。 |||なん|ひ||||ひ||こと 近所 で 、 「 火事 だ ! きんじょ||かじ| 」 と 、 騒ぎ 出した ので 、 小僧 が 急いで 屋根 の 上 に あがり ました 。 |さわぎ|だした||こぞう||いそいで|やね||うえ||| そこ へ 旦那 が やって 来て 、 「 おい 、 火事 は どこ だ ? ||だんな|||きて||かじ||| 」 と 、 聞き ました 。 |きき| する と 小僧 が 、 「 はい 、 五 、 六 丁 (→ 約 五 、 六百 メートル ) も 南 で ございます 」 と 、 答え ました 。 ||こぞう|||いつ|むっ|ちょう|やく|いつ|ろくひゃく|めーとる||みなみ||||こたえ| 「 ほう 、 そんなに 遠く なら 安心だ な 。 ||とおく||あんしんだ| ・・・ しかし 、 それ に して は 騒ぎ が 近い ような 気 が する が 」 「 はい 、 かけ値 を つけて 言った ので 、 実は もう 少し 近い です 」   それ を 聞いた 旦那 が 怒って 、 小僧 を 怒鳴りつけ ました 。 |||||さわぎ||ちかい||き|||||かけね|||いった||じつは||すこし|ちかい||||きいた|だんな||いかって|こぞう||どなりつけ| 「 た わけ 者 ! ||もの 火事 を かけ値 で 言う 奴 が ある か ! かじ||かけね||いう|やつ||| 」   する と 小僧 は 、 こう 言い 直し ました 。 ||こぞう|||いい|なおし| 「 では 、 かけ値 を つけ ず に 申し ます 。 |かけね|||||もうし| 火事 は 、 すぐ 目の前 の 五 、 六 軒先 で ございます 。 かじ|||めのまえ||いつ|むっ|のきさき|| 火の手 が どんどん 大きく なって 、 あら ら 、 ついに この 家 の 屋根 に も 飛び火 し ました よ 」 ひのて|||おおきく||||||いえ||やね|||とびひ|||

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )