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百物語 - Yōkai​ Stories, お 乳 を 飲ま せ に 来た 幽霊

お 乳 を 飲ま せ に 来た 幽霊

お 乳 を 飲ま せ に 来た 幽霊

むかし むかし 、 ある 田舎 に 、 とても 裕福な お 屋敷 が あり ました 。 お 屋敷 に は 家族 全員 で 十八 人 も い ました が 、 なぜ が 家族 に 病気 が あいついで 、 数 年 の 間 に 家 を 継いだ 兄 と 弟 と 、 弟 の 奥さん だけ に なって しまい ました 。 そして その 奥さん も 、 初めて の 赤ちゃん を 産んで すぐに 死んで しまった のです 。

ある 晩 の 事 、 赤ちゃん が お 母さん の お 乳 を 欲しがって 、 激しく 泣き出し ました 。 「 妻 は い ない し 、 どう したら 良い のだ ? 」 弟 が 困って いる と 、 「 おお 、 よし よし 」 と 、 どこ から か 女 の 人 が 現れて 、 赤ちゃん を 抱きかかえる と お 乳 を 与えて くれた のです 。 「 どこ の どなた か は 存じ ませ ん が 、 おかげ で 助かり ました 」 弟 は そう 言って 、 その 女 の 人 の 顔 を 見て びっくり です 。 「 お っ 、 お前 は 、 死んだ わし の 妻 で は ない か ! 」 なんと 、 死んだ はずの 奥さん が 幽霊 と なって 、 わが 子 に 、 お 乳 を 飲ま せ に 来て くれた のです 。 赤ちゃん が 、 たっぷり と お 乳 を 飲んで 眠る と 、 奥さん は 弟 に 言い ました 。 「 これ から は 毎晩 参り ます が 、 この 事 は 、 誰 に も 知ら れて は なり ませ ん 」 そして 奥さん は 、 ふっと 消え去り ました 。

さて 、 それ から 奥さん の 幽霊 は 約束 通り 、 毎晩 赤ちゃん に お 乳 を 飲ま せる ため に 現れ ました 。 弟 も 約束 を 守って 、 その 事 は 誰 に も 言い ませ ん でした 。 でも ある 晩 、 兄 は 弟 の 部屋 の 前 を 通る 時 、 弟 と 女 の 人 が 何やら 楽しげに 語り合って いる の を 聞いた のです 。

次の 朝 、 兄 は 弟 を しかりつけ ました 。 「 お前 と いう やつ は ! 妻 が 死んで 間 も ない と いう のに 、 さっそく 女 を 部屋 に 呼び 入れる と は 何事 だ ! 」 「 兄さん 、 それ は 誤解 です 」 「 何 が 、 どう 誤解 な のだ ! 」 「・・・ 実は 、 死んだ 妻 が 毎晩 、 我が 子 に 乳 を 与え に 来て くれる のです 。 お 願い です から 、 赤ん坊 が 大きく なる まで は 、 そっと して おいて ください 」 弟 は 何度 も 頼んだ のです が 、 兄 は 全く 信じよう と は し ませ ん 。 それどころか 、 「 きっと その 女 は 、 おれたち の 身内 を 次々 と 殺した 魔物 に 違いない 。 そいつ が お前 の 妻 に 化けて 、 お前 を たぶらかし に 来た のだ 。 このまま で は 、 おれたち も 取り 殺さ れて しまう ぞ 」 と 、 決めつけた のです 。 そして その 晩 遅く 、 いつも の 様 に やって 来た 奥さん の 幽霊 を 待ち伏せ して 、 刀 で 斬り つけた のです 。 「 き ゃぁ ぁぁ ぁっ ーー ! 」 斬ら れた 奥さん の 幽霊 は 、 兄 を にらみ ながら 暗やみ に 消えて いき ました 。

次の 朝 、 兄 と 弟 が 幽霊 の 血 の 跡 を たどって 行く と 、 血 の 跡 は 奥さん の お 墓 まで 続いて い ました 。 「 まさか ! 」 兄 と 弟 が 奥さん の お 墓 を 掘って 中 の 棺 を 開けて みる と 、 何と 棺 の 中 の 奥さん の 死体 に は 、 大きく 刀 で 斬ら れた 跡 が あった のです 。 「 お前 が 言って いた の は 、 本当だった の か ・・・」 事実 を 知った 兄 は 弟 と 奥さん に 手 を ついて 謝り ました が 、 その 日 から 奥さん の 幽霊 は 現れ ませ ん でした 。 そして 、 お 乳 を もらえ なく なった 赤ちゃん は 、 やせおとろえて 死んで しまい 、 兄 も 弟 も 病 に 倒れて 、 屋敷 は すっかり ほろんで しまった と いう 事 です 。

おしまい

お 乳 を 飲ま せ に 来た 幽霊 |ちち||のま|||きた|ゆうれい Geister, die kamen, um die Milch zu füttern. Το φάντασμα που ήρθε να σε θηλάσει. A ghost who came to give you milk Fantasmas que vinieron a alimentar la leche. Des fantômes qui venaient nourrir le lait. Il fantasma che è venuto ad allattarti. 젖을 먹이러 온 유령의 모습 Geesten die de melk kwamen voeden. O fantasma que veio amamentar-te. Призраки, пришедшие покормить молоком. 来喂奶的鬼魂 來餵你牛奶的鬼魂

お 乳 を 飲ま せ に 来た 幽霊 |ちち||のま|||きた|ゆうれい A ghost who came to give me milk

むかし むかし 、 ある 田舎 に 、 とても 裕福な お 屋敷 が あり ました 。 |||いなか|||ゆうふくな||やしき||| Once upon a time, there was a very wealthy family in the countryside. お 屋敷 に は 家族 全員 で 十八 人 も い ました が 、 なぜ が 家族 に 病気 が あいついで 、 数 年 の 間 に 家 を 継いだ 兄 と 弟 と 、 弟 の 奥さん だけ に なって しまい ました 。 |やしき|||かぞく|ぜんいん||じゅうはち|じん|||||||かぞく||びょうき|||すう|とし||あいだ||いえ||ついだ|あに||おとうと||おとうと||おくさん||||| There were eighteen members of the whole family in the mansion, but why did the family become ill, leaving only the older brother and younger brother who took over the house for several years, and the younger brother's wife. そして その 奥さん も 、 初めて の 赤ちゃん を 産んで すぐに 死んで しまった のです 。 ||おくさん||はじめて||あかちゃん||うんで||しんで|| And his wife also died shortly after giving birth to her first baby.

ある 晩 の 事 、 赤ちゃん が お 母さん の お 乳 を 欲しがって 、 激しく 泣き出し ました 。 |ばん||こと|あかちゃん|||かあさん|||ちち||ほしがって|はげしく|なきだし| One night, the baby burst into tears as she wanted her mother's milk. 「 妻 は い ない し 、 どう したら 良い のだ ? つま|||||||よい| "I don't have a wife, what should I do? 」   弟 が 困って いる と 、 「 おお 、 よし よし 」 と 、 どこ から か 女 の 人 が 現れて 、 赤ちゃん を 抱きかかえる と お 乳 を 与えて くれた のです 。 おとうと||こまって||||||||||おんな||じん||あらわれて|あかちゃん||だきかかえる|||ちち||あたえて|| When my younger brother was in trouble, he said, "Oh, okay," and a woman appeared from somewhere, and when she held her baby, she gave her milk. 「 どこ の どなた か は 存じ ませ ん が 、 おかげ で 助かり ました 」   弟 は そう 言って 、 その 女 の 人 の 顔 を 見て びっくり です 。 |||||ぞんじ||||||たすかり||おとうと|||いって||おんな||じん||かお||みて|| "I don't know who it is, but it helped me," said the younger brother, who was surprised to see the woman's face. 「 お っ 、 お前 は 、 死んだ わし の 妻 で は ない か ! ||おまえ||しんだ|||つま|||| "Oh, aren't you my dead wife! 」   なんと 、 死んだ はずの 奥さん が 幽霊 と なって 、 わが 子 に 、 お 乳 を 飲ま せ に 来て くれた のです 。 |しんだ||おくさん||ゆうれい||||こ|||ちち||のま|||きて|| The wife, who should have died, became a ghost and came to her child to drink milk. 赤ちゃん が 、 たっぷり と お 乳 を 飲んで 眠る と 、 奥さん は 弟 に 言い ました 。 あかちゃん|||||ちち||のんで|ねむる||おくさん||おとうと||いい| When the baby had a lot of milk and fell asleep, the wife said to her brother. 「 これ から は 毎晩 参り ます が 、 この 事 は 、 誰 に も 知ら れて は なり ませ ん 」   そして 奥さん は 、 ふっと 消え去り ました 。 |||まいばん|まいり||||こと||だれ|||しら|||||||おくさん|||きえさり| "I'm coming every night from now on, but this shouldn't be known to anyone." And his wife suddenly disappeared.

さて 、 それ から 奥さん の 幽霊 は 約束 通り 、 毎晩 赤ちゃん に お 乳 を 飲ま せる ため に 現れ ました 。 |||おくさん||ゆうれい||やくそく|とおり|まいばん|あかちゃん|||ちち||のま||||あらわれ| Well, then, as promised, the wife's ghost appeared every night to nurse the baby. 弟 も 約束 を 守って 、 その 事 は 誰 に も 言い ませ ん でした 。 おとうと||やくそく||まもって||こと||だれ|||いい||| My younger brother also kept his promise and didn't tell anyone about it. でも ある 晩 、 兄 は 弟 の 部屋 の 前 を 通る 時 、 弟 と 女 の 人 が 何やら 楽しげに 語り合って いる の を 聞いた のです 。 ||ばん|あに||おとうと||へや||ぜん||とおる|じ|おとうと||おんな||じん||なにやら|たのしげに|かたりあって||||きいた| But one night, as he passed in front of his brother's room, he heard the younger brother and the woman talking somehow happily.

次の 朝 、 兄 は 弟 を しかりつけ ました 。 つぎの|あさ|あに||おとうと||| The next morning the older brother scolded the younger brother. 「 お前 と いう やつ は ! おまえ|||| "What is you! 妻 が 死んで 間 も ない と いう のに 、 さっそく 女 を 部屋 に 呼び 入れる と は 何事 だ ! つま||しんで|あいだ|||||||おんな||へや||よび|いれる|||なにごと| What's the point of calling a woman into the room right away, even though her wife has just died! 」 「 兄さん 、 それ は 誤解 です 」 「 何 が 、 どう 誤解 な のだ ! にいさん|||ごかい||なん|||ごかい|| "Brother, that's a misunderstanding." "What kind of misunderstanding! 」 「・・・ 実は 、 死んだ 妻 が 毎晩 、 我が 子 に 乳 を 与え に 来て くれる のです 。 じつは|しんだ|つま||まいばん|わが|こ||ちち||あたえ||きて|| "... Actually, my dead wife comes to feed my child every night. お 願い です から 、 赤ん坊 が 大きく なる まで は 、 そっと して おいて ください 」   弟 は 何度 も 頼んだ のです が 、 兄 は 全く 信じよう と は し ませ ん 。 |ねがい|||あかんぼう||おおきく||||||||おとうと||なんど||たのんだ|||あに||まったく|しんじよう||||| It's a wish, so keep it quiet until your baby grows up. "My brother asked me many times, but my brother wouldn't believe it at all. それどころか 、 「 きっと その 女 は 、 おれたち の 身内 を 次々 と 殺した 魔物 に 違いない 。 |||おんな||||みうち||つぎつぎ||ころした|まもの||ちがいない On the contrary, "I'm sure the woman must be a demon who slaughtered our relatives one after another. そいつ が お前 の 妻 に 化けて 、 お前 を たぶらかし に 来た のだ 。 そい つ||おまえ||つま||ばけて|おまえ||||きた| She disguised herself as your wife and came to trick you. このまま で は 、 おれたち も 取り 殺さ れて しまう ぞ 」 と 、 決めつけた のです 。 |||||とり|ころさ|||||きめつけた| そして その 晩 遅く 、 いつも の 様 に やって 来た 奥さん の 幽霊 を 待ち伏せ して 、 刀 で 斬り つけた のです 。 ||ばん|おそく|||さま|||きた|おくさん||ゆうれい||まちぶせ||かたな||きり|| Later that night, as usual, he ambushed the ghost of his wife and slashed her with his sword. 「 き ゃぁ ぁぁ ぁっ ーー ! ||||-- 」   斬ら れた 奥さん の 幽霊 は 、 兄 を にらみ ながら 暗やみ に 消えて いき ました 。 きら||おくさん||ゆうれい||あに||||くらやみ||きえて|| The ghost of the slain wife disappeared into the darkness, glaring at her brother.

次の 朝 、 兄 と 弟 が 幽霊 の 血 の 跡 を たどって 行く と 、 血 の 跡 は 奥さん の お 墓 まで 続いて い ました 。 つぎの|あさ|あに||おとうと||ゆうれい||ち||あと|||いく||ち||あと||おくさん|||はか||つづいて|| The next morning, he and his brother followed the trail of ghostly blood, and found that the trail continued to the wife's grave. 「 まさか ! 」   兄 と 弟 が 奥さん の お 墓 を 掘って 中 の 棺 を 開けて みる と 、 何と 棺 の 中 の 奥さん の 死体 に は 、 大きく 刀 で 斬ら れた 跡 が あった のです 。 あに||おとうと||おくさん|||はか||ほって|なか||ひつぎ||あけて|||なんと|ひつぎ||なか||おくさん||したい|||おおきく|かたな||きら||あと||| When my brother and brother dug his wife's grave and opened the casket inside, there was a big sword-cut mark on his wife's corpse in the casket. 「 お前 が 言って いた の は 、 本当だった の か ・・・」   事実 を 知った 兄 は 弟 と 奥さん に 手 を ついて 謝り ました が 、 その 日 から 奥さん の 幽霊 は 現れ ませ ん でした 。 おまえ||いって||||ほんとうだった|||じじつ||しった|あに||おとうと||おくさん||て|||あやまり||||ひ||おくさん||ゆうれい||あらわれ||| "Is that what you were saying was true ..." The older brother, who knew the facts, apologized to his younger brother and his wife, but from that day on, his wife's ghost did not appear. そして 、 お 乳 を もらえ なく なった 赤ちゃん は 、 やせおとろえて 死んで しまい 、 兄 も 弟 も 病 に 倒れて 、 屋敷 は すっかり ほろんで しまった と いう 事 です 。 ||ちち|||||あかちゃん|||しんで||あに||おとうと||びょう||たおれて|やしき|||||||こと| And the baby, who could not get any milk, languished and died, and both brothers fell ill, and the mansion was completely destroyed.

おしまい