青い 煙 の ヒツジ
青い 煙 の ヒツジ
むかし むかし 、 ピレネー 山脈 の 山 の 中 に 、 お じいさん の ヒツジ 飼い が 住んで い ました 。 お じいさん は 夕方 なる と 、 あちこち で 草 を 食べて いる ヒツジ たち を 、 みんな 呼び 集め なければ なら ない ので 、 とても 大忙しです 。 もし 、 ヒツジ を 山 に 残した まま に する と 、 夜 の 間 に オオカミ に 襲わ れて しまう から です 。 「 さあ 、 早く こっち へ 来る んだ 」 お じいさん は ムチ を 振り 上げて 命令 し ます が 、 ヒツジ たち は 、 なかなか 言う 事 を きき ませ ん 。 「 何 を して いる ! こっち へ 来 ない か 」 いくら どなって も 、 ヒツジ たち は 知らん顔 で 草 を 食べて い ます 。
する と 、 これ を 見て いた 妖精 が 、 お じいさん を こう 言い ました 。 「 お じいさん 。 この 棒 を かまど の 火 に 入れて 、 立ち上る 青い 煙 で 好きな 物 の 姿 を 描いて ごらん なさい 。 それ が 、 きっと ヒツジ を 呼び 集めて くれる でしょう 。 そう すれば 、 お じいさん は 、 のんびり と 星空 を ながめて い られる でしょう 」 お じいさん は 、 さっそく 妖精 が くれた 棒 を かまど に 入れ ました 。 そして 立ち上る 青い 煙 の 中 で 棒 を 動かして 、 若い ヒツジ 飼い を 描き ました 。 その 若い ヒツジ 飼い は 王子 の ように 上品で 、 羽 の 付いた ぼうし を かぶり 、 まっ 赤 な マント を 着て い ます 。 お じいさん は 、 その 若い ヒツジ 飼い に 頼み ました 。 「 どうか 、 ヒツジ たち を 呼んで 来 ておくれ 」 若い ヒツジ 飼い は 角笛 を 吹く と 、 動か ない ヒツジ たち に ムチ を 振り ました が 、 ヒツジ は 草 を 食べる の に 夢中で 見向き も し ませ ん 。 「・・・ 若い 奴 で は 駄目 か 」 しょんぼり と 戻って きた 若い ヒツジ 飼い を 、 お じいさん は 棒 の 先 で なでて 消し ました 。 「 よし 。 今度 は 番犬 に しよう 」 お じいさん は 青い 煙 で 、 今度 は 大きな 犬 を 描き ました 。 「 さあ 番犬 よ 。 ヒツジ たち を 呼んで 来 ておくれ 」 「 ワンワン ! 」 番犬 は 、 風 の 様 に 走りまわり ました 。 「 おっ 、 今度 は うまく 行く かな ? 」 お じいさん が 見て いる と 、 番犬 に 吠え られた ヒツジ は 草 を 食べる の を 止め ました が 、 でも 番犬 を 怖 がって 動こう と し ませ ん 。 「・・・ 番 犬 で は 駄目 か 」 お じいさん は 、 番犬 も 棒 の 先 で なでて 消し ました 。 「 番犬 が 駄目 なら 、 オオカミ は どう だろう ? 」 お じいさん が オオカミ を 描く と 、 オオカミ は 鋭く 、 「 ウォーーーーン ! 」 と 、 吠え ました 。 その オオカミ の 声 を 聞いた ヒツジ たち は 、 びっくり して 逃げ 出し ました 。 「 そう そう 、 その 調子 だ 。 そう やって 、 ヒツジ を 一 頭 残らず 連れて き ておくれ 」 おじさん は 、 今度 こそ は と 期待 し ました が 、 オオカミ は ヒツジ を 連れて くる どころ か 、 逃げる ヒツジ を 捕まえて は 食べ 始め ました 。 「・・・ オオカミ で は 駄目 か 」 お じいさん は がっかり して 、 オオカミ も 消し ました 。 「 ああ 、 若い ヒツジ 飼い も 、 番犬 も 、 オオカミ も 、 どれ も 役 に 立た なかった 」 お じいさん は 、 もう 一 度 かまど の 前 に 座って 考え ました 。 「 これ まで は 、 力ずく で ヒツジ を 集めよう と した けど 駄目だった 。 北風 と 太陽 の 話 に ある ように 、 力ずく で は なく 、 相手 の 気持ち に なって 考えれば 、 うまく 行く かも しれ ん ぞ 」 お じいさん は 、 今度 は 年寄り の ヒツジ を 一 頭 描き ました 。 「 年寄り は 話し 上手な はず 。 年寄り の ヒツジ さん よ 、 どう かわし の ヒツジ たち に 、 面白い 話 を して やって くれ ない か ? 」 「 メェーー 」 年寄り の ヒツジ は 、 静かに うなずき ました 。 もう 体 が 弱って いる ので 、 遠く まで 歩く 事 が 出来 ませ ん 。 そこ で 近く の 野原 に うずくまる と 、 ぽつりぽつり と 話し 始め ました 。 「 これ は 、 わし が 若かった 頃 に 聞いた 話し だ が ・・・」 する と 、 どう でしょう 。 まもなく 十 頭 、 二十 頭 、 三十 頭 と 、 ヒツジ たち が 残ら ず 年寄り の ヒツジ の まわり に 集まり 、 その おもしろい 話 に 耳 を 傾ける 様 に なり ました 。
その 日 から 、 夕暮れ に なる と いつも 年寄り ヒツジ の まわり に ヒツジ たち が 集まって き ます 。 おかげ で 、 お じいさん は 星空 を のんびり ながめて い られる ように なり ました 。
おしまい