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JIN-仁- 完结编, JIN-仁- 完结编 #02

( 茜 ) 今   評判 の 安 道 名 津 です よ

脚気 に も 効く 体 に いい   お 菓子 だ よ

( 良 順 ) 大 人気 です な   脚気 に 効く 菓子 は

( 仁 ) はい   医学 所 の ほう でも

効用 を 説いて もらう と 助かり ます

実は   ある お方 が

脚気 の 疑い が ございまして

あん ドーナツ を 献上 して いただき たい のです

どなた に です か ?

は あ   和 宮 って 人 です か

左 様 で ございます

松本 先生 の 患者 さ …

それ って   こ ッ   皇女 ・ 和 宮 !

口 に する の も 畏れ多い お方 で ございます ぞ →

和 宮様 は   亡き 帝 の 内 親王 様 →

上 様 の 御 台所 で あら せ られる 最も 高貴な お方 で ございます

実は   大 の 甘い 物好きで いらっしゃい まして な

近々   お忍び で 田 之助 の 芝居 を 楽しま れる

よい 折 が ございます ので ぜひ   その 席 で

田 之助 さん の ?

私 は   これ を 皮切り に 先生 を   奥 医師 に と も

ちょっと 待って ください うん ?

( 福田 ) 仁 友 堂 の もの を

本道 の もの と して 和 宮様 に   ご 献上 さ れる の は

( 多紀 ) 無論

本道 なり の 工夫 を 施す つもりじゃ

お 主 は   これ に 何 が 入って おる の か 述べれば   それ で よい

しかし ≪( 多紀 ) 仁 友 堂 は

お 主 の 本道 で 食 うて おる そうで は ない か

教えて もろう て も 罰 は 当たら ぬ と 思う が のう

あの   何 か …

( 佐分利 ) 和 宮様 に

あん ドーナツ を 献上 する こと が 決まった んです

( 山田 ) あ ~ ッ   あ ~ ッ   あ ~ ッ

皆さん   し ~ ッ

くれぐれも 秘密で って 言わ れて ます んで

それ に まだ   やる と 決まった わけじゃ あり ませ ん から

え ッ …

いや …

あん ドーナツ の 作り 方 を 松本 先生 に 渡して しまえば

それ で 済む わけです し

おっしゃる とおり で ございます

大奥 は   しきたり や 人 と の 交わり が 難しく

些細 な   そそう が 命取り に なる 場所 かかわり に なら ぬ の が 一 番

何   言う か !

≪( 山田 ) 和 宮様 で っせ

( 咲 ) 何 か   ご 心配な こと が ?

いい んです かね

私 みたいな 人間 が 大奥 に 出入り したり

奥 医師 に なったり と か

当代 一 の 名医 で いらっしゃい ます のに

身元 も 明か せ ない わけだ し

ある 日   突然   い なく なる こと も ある かも しれ ない し

あ ッ …

左 様 で ございます よ ね

先生 は   いつか 必ず

いらっしゃら なく なって しまう ので ございます もの ね

すぐに   どうこう って こと は ない と 思う んです けど

もう 二 年 も   このまま な んだ し

私 と した こと が つい   忘れて おり ました

宮様 の 献上 の 件 は

先生 の   よろしき ように なさる の が 一 番 か と 存じ ます

あ ッ …

( 勝 ) この 操 練 所 も 取り 潰し って こと に なり そうだ よ

( 龍 馬 ) 悪い が は   幕府 の 石 頭 ぜ よ →

亀 弥 太 や 北 添 が 池田 屋 で 捕まった が は

やむ に やま れ ぬ あいつ ら の 憤り ゆえ じゃ

それ を   十 把 一 から げ に

攘夷 派 の 巣 くつ じゃ ち

ここ で   皆 で 生きて いけりゃ いい と 思って た んだ けど な

故郷 に 帰れ ねえ 奴 も 多かった から よ

《 もし かして 先生 は   ワシ ら の 運命 知 っち ょる が かえ ?》

ワシ ら の 故郷 に は

陸 も 海 も 続 いちゅう

帰れ ん ちゅう が は

まっ と 違う が じゃ

五百 両 !?

南方 様 の ご 注文 は   全て 特別な もの ばかり で ございます し

もう 少し   何とか お 支払い し ましょう

そんな   薩摩 藩 から もらった 治療 代 全部   なくなっちゃ い ます よ

大丈夫です 私 が   やりくり いたし ます

でも   どう やって

先生 は   どうぞ   お 先 に 患者 が   まいって る や も しれ ませ ぬ

はい

〈 仁 友 堂 に は   金 が ない 〉

〈 たまの 大きな 治療 費 は 医療 道具 に 消え 〉

〈 ペニシリン の 製造 は   いまだ 〉

〈 濱口 様 の 援助 に 頼りきり 〉

〈 先生 達 に は 一 度 も   給料 を 払えて い ない 〉

〈 もちろん   咲 さん に も 〉

〈 あん ドーナツ が 御用達 に なれば 仁 友 堂 は 潤う 〉

〈 献上 は ありがたい と いう しか ない 話 だ 〉

〈 だけど   ここ の ところ の 俺 は 〉

〈 あまりに も   歴史 上 の 人物 に かかわり すぎて いる 〉

〈 この上 和 宮様 に 会ったり でも したら …〉

〈 こう なって くる と   何だか もう 〉

〈 ここ に 骨 を うずめろ と 言わ れて いる 気 が して くる 〉

〈 江戸 は   いい ところ だ けど 〉

〈 ここ で   死んで も いい と 思える か と 聞か れれば 〉

〈「 いい 」 と は 言い切る こと は でき ない 〉

〈 俺 に も   残して きた 親 も いれば 〉

〈 友達 も いる 〉

〈 それ に   ここ に いる かぎり 〉

〈 未来 が   どう なった か を 知る こと は でき ない 〉

〈 それ でも 〉

〈「 いい 」 と 言い切れる 日 など 来る のだろう か 〉

野 風 さん

先生 が   ずっと …

〈 そんな 日 は   たぶん …〉

〈 永遠に 来 ない ような 気 が した 〉

長屋 を   追い出さ れた んです か !?

( 野 風 ) 色 目 を 使って いる と 言わ れ ん して なあ

昔 の 旦那衆 に でも 職 を 口利き して もらえ ぬ か と

あの …

お 妾 さん に なる なんて 考えて ないで す よ ね

ちゃんと 堅気に なり ん す

先生 に   いただいた 命

大事に 使い ん すよ

あの   よかったら 仁 友 堂 で 働き ませ ん か ?

そんな こと 言って も お 給料 と か   出せ ない んです けど

その …  食べる くらい は 困ら ない し

ありがたい お 話 であり ん すけ ん ど

先生 は   あ ちき に

何 ゆえ   そこ まで   ご 親切に

それ は …

野 風 さん に 幸せに なって ほしい から です

せっかく 助ける こと   できた んです から

へえ

先生   すっかり 遅く なって しまい …

咲 さ ん

野 風 さん   何 ゆえ   ここ に ?

あの …  咲 さ ん   実は

まさか   また 岩 が !?

相変わらず で お ざん す なあ   咲 様 は

落ち着き 先 が 決まり ん したら すぐに 出て いき ん す ゆえ

変な 遠慮 は   なさら ないで ください

困った とき は お互いさまで ございます

できる だけ の こと は いたし ん す ので

あ ッ   おはよう ございます

おはよう ございます

よろしゅう お 願い いた しん す

( 八木 ) こちら こそ

野 風 さん   頑張って くれて ます ね

先生   少し 出て も よろしい です か ?

はい

先生   献上 の 件 は どう なさる お つもりで ?

ちょっと   まだ

ちょっと   ふんぎり が

お 心 が 決まり ましたら 早 めに   お 知らせ ください ませ

また 今日 は   多い です ねえ 人 が 増え ました ゆえ

ああ   なるほど

あの   あれ は   お いくら でしょう か

まけて   一 両 くらい で

一 両 …

( 橘 ) 咲 で は ない か

こんな ところ で   何 を ?

南方 先生 は   その …

ご存じ な の か ?  お前 が このような こと を して いる の は

つまら ぬ こと で お 心 を 煩わ せ たく は ない のです

よい 話 も 来て おり ます

もう しばし の こと か と 思い ます ので

( 田 之助 ) 松本 先生 が まだ 返事 ない って   こぼして たよ

何   迷って ん だい ?  先生 は

作り 方 を 教えて しまえば 誰 でも   作れる もの です し

欲 が ない ねえ

あん が とよ   先生

あん ドーナツ の 作り 方 なんて どう する んです か ?

芝居 ん 中 に   こいつ を 作る 場面 を 入れよう と 思って さ

ウケ が よ さ そうじゃ ねえ か

張り切って る んです ね   田 之助 さん

あの 方 は 日本 で 一 番 寂しい   お姫様 だ から ね

寂しい ?

相 思 相愛 の 許婚 が いた の に 公 武 合体 だ なん だって

生まれ育った 京 から

言葉 も   しきたり も 違う 大奥 に 連れて こ られて さ

もう 一生   故郷 に は 戻れ ねえ んだ よ

一生 ?

つかの間 でも 笑わ して やりて え じゃ ねえ か

そう いえば   野 風 さん お 故郷 は   どこ な んです か ?

あ ちき に は 故郷 など   あり ん せ ん よ

≪( 佐分利 ) またまた もう 花魁 や ない んです から

吉原 に 行く 前 に   親 は 死に ん したし

故郷 と 呼べる ような ところ は …

( 野 風 ) あん れ …

先生 ?

《( 未来 ) いい よ   仁 先生 》

故郷 が ない んです ね   野 風 さん も

( 佐分利 ) 先生 !

松本 先生 ! 松本 先生   おら れ ます か ?

あん ドーナツ の 献上 やる こと に し はった んで っか

はい   松本 先生 に 先ほど   申し上げて き ました

そう で っか   よかった

当日 の 同行 は 女性 を と の こと です ので

咲 さ ん   お 願い でき ます か ? は ッ   はい

もっと よい 小麦 や 玄米 を 用意 いたし ましょう

では   卵 や 砂糖 を 使って もっと 色々   試して み ましょう か

≪( 山田 ) より   やわらかく でき ま する か ?

玄米 の 潰し 方 を 変えて は いかがでしょう

≪( 佐分利 ) 揚げ 具合 も 変えて み ましょう

色々   試して み ましょう か

宮様 に   脚気 に 効く 菓子 を と 進言 した ところ

仁 友 堂 から あん ドーナツ を 献上 する こと が

既に   決まって おる と 告げ られた が

それ は …  まったく

献上 を 失敗 に 終わら せよ

それ は …

いよいよ 明日 で ございます な

はい

先生   着物   ちゃんと した の 持って はり ました っけ ?

え ッ …  これ じゃ 駄目な んです か ?

相手 は   宮様 で っせ

こんな   いい 着物 どうした ん です か ?

兄 に 借り ました

あ ッ   ちょうど

ありがとう ございます

あの … 何 ゆえ   急に 献上 を お 決め に ?

初め は   あまり 気乗り も せ ぬ ご 様子 でした のに

和 宮様 は   故郷 に 戻れ ない 方 だって 聞いた んです

ある 日   突然

全然   違う 世界 に ほうり込ま れた ん だって

それ を 聞いたら   自分 で 持っていき たく なった と いう か

おじさん が 何   青臭い こと 言って ん だって 感じ です よ ね

いえ   分かり ます

それ に   もっと しっかり し なくて は いけない と 思った んです

野 風 さん の こと も ある し

野 風 さん ?

野 風 さん も   実家 が ない らしくて

他 で 働く の も 難し そうだ し

だったら   ここ に 居て いただく の が 一 番 だ と 思う んです

そう なる と 自然 と   お 金 も かかる わけで

野 風 さん は   未来 さん の ご 先祖 や も しれ ぬ 方 です もの ね

あの 手術 が あって   未来 は もう

生まれ なく なった の かも しれ ない し

もう   どう する こと も でき ない かも しれ ない けど

せめて   野 風 さん に は 幸せに なって ほしい と いう か

それ が   未来 に できる 唯一 の 罪滅ぼし と いう か

野 風 さん の 人生 に よって は

新しい 未来 が   生まれる 可能 性 が ある かも しれ ない し

咲 さ ん ?

あの   少し …

その …  少し

情けなく なって しまい まして

情けない ?

私 ども で 変え られ なかった   お 気持ち を

野 風 さん   いえ …

未来 さん は   たやすく 変えて おしまい に なら れる のだ と 思う と

あ ッ …

少し   少し です よ

〈 そこ に あった の は 俺 と 咲 さん の 生活 の 足跡 だった 〉

〈 咲 さん は 着物 や 持ち物 を 売って いた 〉

〈 日々 の 生活 に 消えて いく   些細 な 〉

〈 だけど   欠かせ ない もの の ため に 〉

《 兄 に 借り ました 》

《 あ ッ   ちょうど 》

《 少し 情けなく なって しまい まして 》

〈 いつ 消えて しまう かも しれ ない 男 の 〉

〈 たった 一 日 の ため に 〉

〈 でも   だからといって 〉

〈 俺 は   どう すれば いい んだろう 〉

〈 こんな 中途半端な 身の上 で 〉

〈 中途半端な 気持ち で 〉

〈 何 を 言えば   いい んだろう 〉

咲 さ ん

あの …

浅はかな こと を 申し上げ ました

野 風 さん の 手術 を 願った の は 私 で ございます

責め は   私 に も ございます のに

すみません でした

咲 さ ん

さあ   作り ましょう

≪( 山田 ) どう か なさ い ました か ?

ずっと 不思議に 思って いた ので ござ りん す

なぜ   先生 も 咲 様 も

かよう に ご 親切に して くだ さん す の か

早速   お 毒 味 役 に まわして 和 宮様 に 食べて いただき ましょう

はい

宮様 で ございます

( 和 宮 ) 良 順   そこ に ある 箱 を もう 少し   近う へ

中 を

( 御 年寄 ) 宮様 !  それ は まだ 毒 味 も 済んで おり ませ ぬ

これ は お 菓子 で は ない   お 薬 であろう

良 順   その者 達 は ?

あん ドーナツ を 考案 いたし ました 南方 と いう 医師 と →

その 弟子 で ございます

面 を 上げよ

先生   一 度 目 は 面 を 上げて は なり ませ ぬ

え ッ !?

え ッ ?

おいしい   お 薬 で あり ました

あ …  はい !

宮様

お 気 に 召して いただけた ようです ね

はい

( 拍子木 が 鳴る )

宮様 !?→

いかがな さ い ました   宮様 !→

宮様 ッ !

御簾 を 下ろせ !

胸 が   胸 が …

治療 し やすい 別室 へ 移し 急ぎ   油 を   お 飲ま せ せよ

宮様   宮様 …

≪( 御 年寄 ) 宮様 !

松本 先生   一体   何 が ?

宮様 は 毒 を 盛ら れた ようで ございます

症状 から して 恐らくは   ヒ素

あの   どのような 治療 を ? 油 を 飲ま せ   その後   ミョウバン の 粉 を

胃 の 腑 を 洗って は   どう でしょう い …  胃 の 腑 を 洗う !?

胃 の 中 に 入って る 毒 を 洗いだす の が

最も   はやく 確実な 治療 だ と 思い ませ ん か ?

しかし   そのような 治療 は 誰 も   でき ませ ぬ し

奥 医師 で は ない 先生 が   宮様 を … 方法 は   お 教え し ます

奥 医師 で も ない 者 に お 任せ する こと は でき ませ ぬ

この 者 は   指示 を する のみ 治療 を する の は   私 で ございます

今 は   何より 宮様 の 命 を 救う こと が 大事

お 含み ください ませ !

宮様 を 寝 台 に 左側 を 下 に して 寝か せて ください

もう 少し   上 に

止めて ください

その あたり が   胃 の 中  10 センチ

あ ッ … 3 寸 程度 の 位置 に くる はずです

口 の ところ に 印 を つけて ください は い

その 先端 に 油 を 塗り つけ ゴム 管 を 挿入 して ください

( 良 順 ) お 開け ください

印 の ところ まで   入り ました ぞ

スポイト を 管 に つないで 胃 の 中 の もの を 吸引 して ください

よし

もう 何も 出 ませ ぬ で は   洗浄 に 移り ます

スポイト を 抜き 漏斗 を   つないで ください

止めて ください その 位置 から   湯 を 流し 入れ ます

一 回 の 量 は   一 合 から 一 合 半 で

急激に 入れる と おう吐 を 誘発 し ます ので

ゆっくり   お 願い し ます

終わり ました

では   管 を 下 へ はい

何と いい んです   それ を

液 が 透明に なる まで 繰り返して ください

南方 先生

透明に なり ました ぞ

続いて これ を …  炭 を 溶かした 湯 に 下剤 を 混ぜた もの です

残って る 毒 を   炭 に 吸着 さ せ 体 外 に 排出 さ せ ます

もう 大丈夫です   あと は 自然に 排せつ さ れる の を 待ち ましょう

ありがとう ございました いえ   間に合って   よかった です

≪( 女 中 ) 橘 咲   吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す !

咲 さ ん 南方 仁 →

吟味 の ため   そ なた を 捕 縛 す !

お 待ち くだされ これ は 一体   何の まね だ !

宮様 は   その者 の 菓子 を 召し上がら れ ました

菓子 は 毒 味 した で は ない か

毒 味 前 の もの も 召し上がら れて おいで です

あの とき の もの が 原因 なら   症状 が 出る まで に 時 が たち すぎて おる

その者 は 奥 医師 である   松本 殿 で すら

知ら ぬ 治療 を 示して みせ ました →

自ら   毒 を 盛り   力 を 示し

出世 を たくらんだ の や も しれ ませ ぬ

それ は   あまり の お 言葉

先生 は   ここ に 来る こと すら 畏れ多い と   悩ま れて おり ました

先生 は … この 者 ども を   お 目付 へ

私 達 は   何も して ませ ん

その 人 だけ でも   離して ください

咲 さ ん   咲 さ ん !

咲 さ ん !

いずれ に せよ   あの 者 ら は 吟味 さ れる べきです

そう でしょう な

毒 味 役   そのほか 大奥 の 皆様 方 も 等しく

牢 入り

おい ッ

大 牢   二 人 の うち 入れ墨   一 人 ~

早く   入れ

≪( 囚人 達 ) 入れ墨   さあ 来い ! まけて やる ぞ →

新 入り   さあ 来い …

( 不気味な 声 が 続く )

( 牢 名主 ) よく 来た なあ   新 入り

( 戸 を 叩く 音 )

≪( 橘 ) 誰 か !

誰 か   ある !

≪( 牢 名主 ) お前 ら !

命 の ツル は   持ってきた か ?

≪( 新 囚人 ) へ い   二 両 二 分 で →

着物 に 縫い 込んで あり ます

しけて や がん な

≪( 牢 名主 ) お前 は ?

あの   ツル って ?

俺 達 に 渡す 金 だ !

そ ッ   そんな 金 は …

牢 を 甘く 見 んじゃ ねえ !  や ~ ッ

代わり に   やる よ

兄貴

( 小便 を する 音 )

( 穴 の 隠居 ) 宿 に 行って なあ ツル を 持ってこ させれば

出 られる ぞ え

あの …  女 の 人 も こんな 目 に   あう んです か ?

( 穴 の 隠居 が 笑う )

( 楽し そうに 手 を 洗う )

一体   何 が 起こった ん や

当 家 に 伝え に きた 役人 も

詳しい こと は 知ら さ れて おら ぬ ようであった

お 調べ は 行わ れる んです やろ ? ほしたら   先生 の 無実 は 必ず

しかし   大 牢送 り である から な

大 牢 の 中 で は   お 裁き に よら ず 無法に 殺さ れる 者 も 多い と 聞く

え ッ !?

≪( 山田 ) ツル が あれば 免れる や も しれ ぬ が

≪( 佐分利 ) ツル と は ?

牢 名主 や 役人 に 渡す   賄賂 の こと だ

( 佐分利 ) そんな   金 など

では   あ ちき は   これ で

ここ に   とどまり お 仲間 と   みなさ れて は

どのような   おと が め を 受ける か 分かり ん せ ん

ちょうど   よき 働き 口 も 見つかり ん して なあ

お 二 人 に は よろしく お 伝え くださ ん し

( 横 松 ) あれ が 吉原 の 流儀 な んです か ?

福田 先生 どうか なされた のです か ?

もしや 何 か   ご存じ で おら れる の か

( 佐分利 ) 何 や ?

何 を 知 っと る ん や   吐け !

かわいそうだ けど よ

あの 男   殺さ れる ぜ

え ッ ?

医者 は 普通   揚がり 屋 に 送ら れ んだ 大 牢 に 送ら れる って こと は

お上 は   あわよくば   牢 の 中 で 死んで くれ と 思って る って こと だ

何 ゆえ   先生 が   そのような 目 に

お 待ち ください 何 ゆえ で ございます か !

〈 何も 分から なかった 〉

〈 誰 が   何の ため に 和 宮様 に   ヒ素 を 盛った んだろう 〉

〈 俺 に 罪 を   なすりつける ため に ?〉

〈 それとも   俺 を 陥れる ため に ?〉

《≪( 象 山 ) お前 の やった こと が 意 に 沿わ ぬ こと であったら →》

《 神 は   容赦 なく お前 の やった こと を 取り消す 》

〈 これ は 〉

〈 そういう こと な の か ?〉

死体 …

≪( 牢 名主 ) ツル を 払わ ねえ と こう なる んだ よ

どう だ   え ッ ?

払え ませ ん

私 が 持って る 金 は 患者 が 払った   なけなし の 金

命 の ツル です

一緒に 働いて くれる 仲間 は

それ に 手 を つけよう と も せ ず

ツメ に 火 を ともす ように 暮らして ます

あなた 方 に 払う 金 は

あり ませ ん

う ッ   う ~ ッ …

〈 俺 は   このまま   ここ で 取り消さ れて しまう の か ?〉

〈 それ が   神 の 意志 な の か ?〉

《 咲 さ ん !》

口 で は 分かった ような こと を 言い ながら

私 は   ずっと 心 の 底 で は 望んで おり ました

先生 が   お 戻り に なる 日 など 来 なければ よい

できる なら

ずっと   ここ に 居て ほしい  … と

もしや   そんな 私 を 哀れ と 思い

願い を   お 聞き届け くださった のでしょう か

なれば   どうか

もう 一 度 だけ 哀れ と 思う て ください ませ

どうか   先生 を お 助け ください

今 すぐに

今 すぐに   先生 を 未来 へ お 戻し ください ませ

〈 これ は   幻 か ?〉

〈 それとも   このまま 死ねば 俺 は   戻れる の か ?〉

〈 でも   ここ で 戻って しまったら 〉

〈 どう なる んだろう ?〉

〈 咲 さん が   どう なった か を 未来 から 知る こと は 〉

〈 きっと   でき ない 〉

〈 あの 不器用な 優し さ に 応える こと は でき ない 〉

〈 あの 笑顔 を 見る こと は でき ない 〉

〈 それ でも   いつか 新しい 日々 の 中 で 〉

〈「 それ で よかった 」 と 言い切れる 日 が 〉

〈 来る んだろう か 〉

〈 そんな 日 など 〉

〈 そんな 日 など …〉

〈 絶対 に 来 ない と 思う なら 〉

( 囚人 ) あ ~ ッ

元 [ 外 :6 B 60 DB 49332 DF 70 F 090 FA 736992 B 8556] は   うち の 医師 に

献上 を   うまく いか ぬ ように しろ と 脅し を かけて た んです

本道 の 奥 医師 ならば 大奥 と 通じる こと も でき ます

これ は   医学 館 の 陰謀 で は …

そう であれば もう   どうにも なら ない かも しれ ぬ

この 件 の お 調べ は 医学 館 が する こと に なった のだ

〈 俺 は   ここ で 〉

〈 生きる しか ない んだ 〉

この 野郎 !

( 牢 名主 の 悲鳴 )



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( 茜 ) 今   評判 の 安 道 名 津 です よ

脚気 に も 効く 体 に いい   お 菓子 だ よ

( 良 順 ) 大 人気 です な   脚気 に 効く 菓子 は

( 仁 ) はい   医学 所 の ほう でも

効用 を 説いて もらう と 助かり ます

実は   ある お方 が

脚気 の 疑い が ございまして

あん ドーナツ を 献上 して いただき たい のです

どなた に です か ?

は あ   和 宮 って 人 です か

左 様 で ございます

松本 先生 の 患者 さ …

それ って   こ ッ   皇女 ・ 和 宮 !

口 に する の も 畏れ多い お方 で ございます ぞ →

和 宮様 は   亡き 帝 の 内 親王 様 →

上 様 の 御 台所 で あら せ られる 最も 高貴な お方 で ございます

実は   大 の 甘い 物好きで いらっしゃい まして な

近々   お忍び で 田 之助 の 芝居 を 楽しま れる

よい 折 が ございます ので ぜひ   その 席 で

田 之助 さん の ?

私 は   これ を 皮切り に 先生 を   奥 医師 に と も

ちょっと 待って ください うん ?

( 福田 ) 仁 友 堂 の もの を

本道 の もの と して 和 宮様 に   ご 献上 さ れる の は

( 多紀 ) 無論

本道 なり の 工夫 を 施す つもりじゃ

お 主 は   これ に 何 が 入って おる の か 述べれば   それ で よい

しかし ≪( 多紀 ) 仁 友 堂 は

お 主 の 本道 で 食 うて おる そうで は ない か

教えて もろう て も 罰 は 当たら ぬ と 思う が のう

あの   何 か …

( 佐分利 ) 和 宮様 に

あん ドーナツ を 献上 する こと が 決まった んです

( 山田 ) あ ~ ッ   あ ~ ッ   あ ~ ッ

皆さん   し ~ ッ

くれぐれも 秘密で って 言わ れて ます んで

それ に まだ   やる と 決まった わけじゃ あり ませ ん から

え ッ …

いや …

あん ドーナツ の 作り 方 を 松本 先生 に 渡して しまえば

それ で 済む わけです し

おっしゃる とおり で ございます

大奥 は   しきたり や 人 と の 交わり が 難しく

些細 な   そそう が 命取り に なる 場所 かかわり に なら ぬ の が 一 番

何   言う か !

≪( 山田 ) 和 宮様 で っせ

( 咲 ) 何 か   ご 心配な こと が ?

いい んです かね

私 みたいな 人間 が 大奥 に 出入り したり

奥 医師 に なったり と か

当代 一 の 名医 で いらっしゃい ます のに

身元 も 明か せ ない わけだ し

ある 日   突然   い なく なる こと も ある かも しれ ない し

あ ッ …

左 様 で ございます よ ね

先生 は   いつか 必ず

いらっしゃら なく なって しまう ので ございます もの ね

すぐに   どうこう って こと は ない と 思う んです けど

もう 二 年 も   このまま な んだ し

私 と した こと が つい   忘れて おり ました

宮様 の 献上 の 件 は

先生 の   よろしき ように なさる の が 一 番 か と 存じ ます

あ ッ …

( 勝 ) この 操 練 所 も 取り 潰し って こと に なり そうだ よ

( 龍 馬 ) 悪い が は   幕府 の 石 頭 ぜ よ →

亀 弥 太 や 北 添 が 池田 屋 で 捕まった が は

やむ に やま れ ぬ あいつ ら の 憤り ゆえ じゃ

それ を   十 把 一 から げ に

攘夷 派 の 巣 くつ じゃ ち

ここ で   皆 で 生きて いけりゃ いい と 思って た んだ けど な

故郷 に 帰れ ねえ 奴 も 多かった から よ

《 もし かして 先生 は   ワシ ら の 運命 知 っち ょる が かえ ?》

ワシ ら の 故郷 に は

陸 も 海 も 続 いちゅう

帰れ ん ちゅう が は

まっ と 違う が じゃ

五百 両 !?

南方 様 の ご 注文 は   全て 特別な もの ばかり で ございます し

もう 少し   何とか お 支払い し ましょう

そんな   薩摩 藩 から もらった 治療 代 全部   なくなっちゃ い ます よ

大丈夫です 私 が   やりくり いたし ます

でも   どう やって

先生 は   どうぞ   お 先 に 患者 が   まいって る や も しれ ませ ぬ

はい

〈 仁 友 堂 に は   金 が ない 〉

〈 たまの 大きな 治療 費 は 医療 道具 に 消え 〉

〈 ペニシリン の 製造 は   いまだ 〉

〈 濱口 様 の 援助 に 頼りきり 〉

〈 先生 達 に は 一 度 も   給料 を 払えて い ない 〉

〈 もちろん   咲 さん に も 〉

〈 あん ドーナツ が 御用達 に なれば 仁 友 堂 は 潤う 〉

〈 献上 は ありがたい と いう しか ない 話 だ 〉

〈 だけど   ここ の ところ の 俺 は 〉

〈 あまりに も   歴史 上 の 人物 に かかわり すぎて いる 〉

〈 この上 和 宮様 に 会ったり でも したら …〉

〈 こう なって くる と   何だか もう 〉

〈 ここ に 骨 を うずめろ と 言わ れて いる 気 が して くる 〉

〈 江戸 は   いい ところ だ けど 〉

〈 ここ で   死んで も いい と 思える か と 聞か れれば 〉

〈「 いい 」 と は 言い切る こと は でき ない 〉

〈 俺 に も   残して きた 親 も いれば 〉

〈 友達 も いる 〉

〈 それ に   ここ に いる かぎり 〉

〈 未来 が   どう なった か を 知る こと は でき ない 〉

〈 それ でも 〉

〈「 いい 」 と 言い切れる 日 など 来る のだろう か 〉

野 風 さん

先生 が   ずっと …

〈 そんな 日 は   たぶん …〉

〈 永遠に 来 ない ような 気 が した 〉

長屋 を   追い出さ れた んです か !?

( 野 風 ) 色 目 を 使って いる と 言わ れ ん して なあ

昔 の 旦那衆 に でも 職 を 口利き して もらえ ぬ か と

あの …

お 妾 さん に なる なんて 考えて ないで す よ ね

ちゃんと 堅気に なり ん す

先生 に   いただいた 命

大事に 使い ん すよ

あの   よかったら 仁 友 堂 で 働き ませ ん か ?

そんな こと 言って も お 給料 と か   出せ ない んです けど

その …  食べる くらい は 困ら ない し

ありがたい お 話 であり ん すけ ん ど

先生 は   あ ちき に

何 ゆえ   そこ まで   ご 親切に

それ は …

野 風 さん に 幸せに なって ほしい から です

せっかく 助ける こと   できた んです から

へえ

先生   すっかり 遅く なって しまい …

咲 さ ん

野 風 さん   何 ゆえ   ここ に ?

あの …  咲 さ ん   実は

まさか   また 岩 が !?

相変わらず で お ざん す なあ   咲 様 は

落ち着き 先 が 決まり ん したら すぐに 出て いき ん す ゆえ

変な 遠慮 は   なさら ないで ください

困った とき は お互いさまで ございます

できる だけ の こと は いたし ん す ので

あ ッ   おはよう ございます

おはよう ございます

よろしゅう お 願い いた しん す

( 八木 ) こちら こそ

野 風 さん   頑張って くれて ます ね

先生   少し 出て も よろしい です か ?

はい

先生   献上 の 件 は どう なさる お つもりで ?

ちょっと   まだ

ちょっと   ふんぎり が

お 心 が 決まり ましたら 早 めに   お 知らせ ください ませ

また 今日 は   多い です ねえ 人 が 増え ました ゆえ

ああ   なるほど

あの   あれ は   お いくら でしょう か

まけて   一 両 くらい で

一 両 …

( 橘 ) 咲 で は ない か

こんな ところ で   何 を ?

南方 先生 は   その …

ご存じ な の か ?  お前 が このような こと を して いる の は

つまら ぬ こと で お 心 を 煩わ せ たく は ない のです

よい 話 も 来て おり ます

もう しばし の こと か と 思い ます ので

( 田 之助 ) 松本 先生 が まだ 返事 ない って   こぼして たよ

何   迷って ん だい ?  先生 は

作り 方 を 教えて しまえば 誰 でも   作れる もの です し

欲 が ない ねえ

あん が とよ   先生

あん ドーナツ の 作り 方 なんて どう する んです か ?

芝居 ん 中 に   こいつ を 作る 場面 を 入れよう と 思って さ

ウケ が よ さ そうじゃ ねえ か

張り切って る んです ね   田 之助 さん

あの 方 は 日本 で 一 番 寂しい   お姫様 だ から ね

寂しい ?

相 思 相愛 の 許婚 が いた の に 公 武 合体 だ なん だって

生まれ育った 京 から

言葉 も   しきたり も 違う 大奥 に 連れて こ られて さ

もう 一生   故郷 に は 戻れ ねえ んだ よ

一生 ?

つかの間 でも 笑わ して やりて え じゃ ねえ か

そう いえば   野 風 さん お 故郷 は   どこ な んです か ?

あ ちき に は 故郷 など   あり ん せ ん よ

≪( 佐分利 ) またまた もう 花魁 や ない んです から

吉原 に 行く 前 に   親 は 死に ん したし

故郷 と 呼べる ような ところ は …

( 野 風 ) あん れ …

先生 ?

《( 未来 ) いい よ   仁 先生 》

故郷 が ない んです ね   野 風 さん も

( 佐分利 ) 先生 !

松本 先生 ! 松本 先生   おら れ ます か ?

あん ドーナツ の 献上 やる こと に し はった んで っか

はい   松本 先生 に 先ほど   申し上げて き ました

そう で っか   よかった

当日 の 同行 は 女性 を と の こと です ので

咲 さ ん   お 願い でき ます か ? は ッ   はい

もっと よい 小麦 や 玄米 を 用意 いたし ましょう

では   卵 や 砂糖 を 使って もっと 色々   試して み ましょう か

≪( 山田 ) より   やわらかく でき ま する か ?

玄米 の 潰し 方 を 変えて は いかがでしょう

≪( 佐分利 ) 揚げ 具合 も 変えて み ましょう

色々   試して み ましょう か

宮様 に   脚気 に 効く 菓子 を と 進言 した ところ

仁 友 堂 から あん ドーナツ を 献上 する こと が

既に   決まって おる と 告げ られた が

それ は …  まったく

献上 を 失敗 に 終わら せよ

それ は …

いよいよ 明日 で ございます な

はい

先生   着物   ちゃんと した の 持って はり ました っけ ?

え ッ …  これ じゃ 駄目な んです か ?

相手 は   宮様 で っせ

こんな   いい 着物 どうした ん です か ?

兄 に 借り ました

あ ッ   ちょうど

ありがとう ございます

あの … 何 ゆえ   急に 献上 を お 決め に ?

初め は   あまり 気乗り も せ ぬ ご 様子 でした のに

和 宮様 は   故郷 に 戻れ ない 方 だって 聞いた んです

ある 日   突然

全然   違う 世界 に ほうり込ま れた ん だって

それ を 聞いたら   自分 で 持っていき たく なった と いう か

おじさん が 何   青臭い こと 言って ん だって 感じ です よ ね

いえ   分かり ます

それ に   もっと しっかり し なくて は いけない と 思った んです

野 風 さん の こと も ある し

野 風 さん ?

野 風 さん も   実家 が ない らしくて

他 で 働く の も 難し そうだ し

だったら   ここ に 居て いただく の が 一 番 だ と 思う んです

そう なる と 自然 と   お 金 も かかる わけで

野 風 さん は   未来 さん の ご 先祖 や も しれ ぬ 方 です もの ね

あの 手術 が あって   未来 は もう

生まれ なく なった の かも しれ ない し

もう   どう する こと も でき ない かも しれ ない けど

せめて   野 風 さん に は 幸せに なって ほしい と いう か

それ が   未来 に できる 唯一 の 罪滅ぼし と いう か

野 風 さん の 人生 に よって は

新しい 未来 が   生まれる 可能 性 が ある かも しれ ない し

咲 さ ん ?

あの   少し …

その …  少し

情けなく なって しまい まして

情けない ?

私 ども で 変え られ なかった   お 気持ち を

野 風 さん   いえ …

未来 さん は   たやすく 変えて おしまい に なら れる のだ と 思う と

あ ッ …

少し   少し です よ

〈 そこ に あった の は 俺 と 咲 さん の 生活 の 足跡 だった 〉

〈 咲 さん は 着物 や 持ち物 を 売って いた 〉

〈 日々 の 生活 に 消えて いく   些細 な 〉

〈 だけど   欠かせ ない もの の ため に 〉

《 兄 に 借り ました 》

《 あ ッ   ちょうど 》

《 少し 情けなく なって しまい まして 》

〈 いつ 消えて しまう かも しれ ない 男 の 〉

〈 たった 一 日 の ため に 〉

〈 でも   だからといって 〉

〈 俺 は   どう すれば いい んだろう 〉

〈 こんな 中途半端な 身の上 で 〉

〈 中途半端な 気持ち で 〉

〈 何 を 言えば   いい んだろう 〉

咲 さ ん

あの …

浅はかな こと を 申し上げ ました

野 風 さん の 手術 を 願った の は 私 で ございます

責め は   私 に も ございます のに

すみません でした

咲 さ ん

さあ   作り ましょう

≪( 山田 ) どう か なさ い ました か ?

ずっと 不思議に 思って いた ので ござ りん す

なぜ   先生 も 咲 様 も

かよう に ご 親切に して くだ さん す の か

早速   お 毒 味 役 に まわして 和 宮様 に 食べて いただき ましょう

はい

宮様 で ございます

( 和 宮 ) 良 順   そこ に ある 箱 を もう 少し   近う へ

中 を

( 御 年寄 ) 宮様 !  それ は まだ 毒 味 も 済んで おり ませ ぬ

これ は お 菓子 で は ない   お 薬 であろう

良 順   その者 達 は ?

あん ドーナツ を 考案 いたし ました 南方 と いう 医師 と →

その 弟子 で ございます

面 を 上げよ

先生   一 度 目 は 面 を 上げて は なり ませ ぬ

え ッ !?

え ッ ?

おいしい   お 薬 で あり ました

あ …  はい !

宮様

お 気 に 召して いただけた ようです ね

はい

( 拍子木 が 鳴る )

宮様 !?→

いかがな さ い ました   宮様 !→

宮様 ッ !

御簾 を 下ろせ !

胸 が   胸 が …

治療 し やすい 別室 へ 移し 急ぎ   油 を   お 飲ま せ せよ

宮様   宮様 …

≪( 御 年寄 ) 宮様 !

松本 先生   一体   何 が ?

宮様 は 毒 を 盛ら れた ようで ございます

症状 から して 恐らくは   ヒ素

あの   どのような 治療 を ? 油 を 飲ま せ   その後   ミョウバン の 粉 を

胃 の 腑 を 洗って は   どう でしょう い …  胃 の 腑 を 洗う !?

胃 の 中 に 入って る 毒 を 洗いだす の が

最も   はやく 確実な 治療 だ と 思い ませ ん か ?

しかし   そのような 治療 は 誰 も   でき ませ ぬ し

奥 医師 で は ない 先生 が   宮様 を … 方法 は   お 教え し ます

奥 医師 で も ない 者 に お 任せ する こと は でき ませ ぬ

この 者 は   指示 を する のみ 治療 を する の は   私 で ございます

今 は   何より 宮様 の 命 を 救う こと が 大事

お 含み ください ませ !

宮様 を 寝 台 に 左側 を 下 に して 寝か せて ください

もう 少し   上 に

止めて ください

その あたり が   胃 の 中  10 センチ

あ ッ … 3 寸 程度 の 位置 に くる はずです

口 の ところ に 印 を つけて ください は い

その 先端 に 油 を 塗り つけ ゴム 管 を 挿入 して ください

( 良 順 ) お 開け ください

印 の ところ まで   入り ました ぞ

スポイト を 管 に つないで 胃 の 中 の もの を 吸引 して ください

よし

もう 何も 出 ませ ぬ で は   洗浄 に 移り ます

スポイト を 抜き 漏斗 を   つないで ください

止めて ください その 位置 から   湯 を 流し 入れ ます

一 回 の 量 は   一 合 から 一 合 半 で

急激に 入れる と おう吐 を 誘発 し ます ので

ゆっくり   お 願い し ます

終わり ました

では   管 を 下 へ はい

何と いい んです   それ を

液 が 透明に なる まで 繰り返して ください

南方 先生

透明に なり ました ぞ

続いて これ を …  炭 を 溶かした 湯 に 下剤 を 混ぜた もの です

残って る 毒 を   炭 に 吸着 さ せ 体 外 に 排出 さ せ ます

もう 大丈夫です   あと は 自然に 排せつ さ れる の を 待ち ましょう

ありがとう ございました いえ   間に合って   よかった です

≪( 女 中 ) 橘 咲   吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す !

咲 さ ん 南方 仁 →

吟味 の ため   そ なた を 捕 縛 す !

お 待ち くだされ これ は 一体   何の まね だ !

宮様 は   その者 の 菓子 を 召し上がら れ ました

菓子 は 毒 味 した で は ない か

毒 味 前 の もの も 召し上がら れて おいで です

あの とき の もの が 原因 なら   症状 が 出る まで に 時 が たち すぎて おる

その者 は 奥 医師 である   松本 殿 で すら

知ら ぬ 治療 を 示して みせ ました →

自ら   毒 を 盛り   力 を 示し

出世 を たくらんだ の や も しれ ませ ぬ

それ は   あまり の お 言葉

先生 は   ここ に 来る こと すら 畏れ多い と   悩ま れて おり ました

先生 は … この 者 ども を   お 目付 へ

私 達 は   何も して ませ ん

その 人 だけ でも   離して ください

咲 さ ん   咲 さ ん !

咲 さ ん !

いずれ に せよ   あの 者 ら は 吟味 さ れる べきです

そう でしょう な

毒 味 役   そのほか 大奥 の 皆様 方 も 等しく

牢 入り

おい ッ

大 牢   二 人 の うち 入れ墨   一 人 ~

早く   入れ

≪( 囚人 達 ) 入れ墨   さあ 来い ! まけて やる ぞ →

新 入り   さあ 来い …

( 不気味な 声 が 続く )

( 牢 名主 ) よく 来た なあ   新 入り

( 戸 を 叩く 音 )

≪( 橘 ) 誰 か !

誰 か   ある !

≪( 牢 名主 ) お前 ら !

命 の ツル は   持ってきた か ?

≪( 新 囚人 ) へ い   二 両 二 分 で →

着物 に 縫い 込んで あり ます

しけて や がん な

≪( 牢 名主 ) お前 は ?

あの   ツル って ?

俺 達 に 渡す 金 だ !

そ ッ   そんな 金 は …

牢 を 甘く 見 んじゃ ねえ !  や ~ ッ

代わり に   やる よ

兄貴

( 小便 を する 音 )

( 穴 の 隠居 ) 宿 に 行って なあ ツル を 持ってこ させれば

出 られる ぞ え

あの …  女 の 人 も こんな 目 に   あう んです か ?

( 穴 の 隠居 が 笑う )

( 楽し そうに 手 を 洗う )

一体   何 が 起こった ん や

当 家 に 伝え に きた 役人 も

詳しい こと は 知ら さ れて おら ぬ ようであった

お 調べ は 行わ れる んです やろ ? ほしたら   先生 の 無実 は 必ず

しかし   大 牢送 り である から な

大 牢 の 中 で は   お 裁き に よら ず 無法に 殺さ れる 者 も 多い と 聞く

え ッ !?

≪( 山田 ) ツル が あれば 免れる や も しれ ぬ が

≪( 佐分利 ) ツル と は ?

牢 名主 や 役人 に 渡す   賄賂 の こと だ

( 佐分利 ) そんな   金 など

では   あ ちき は   これ で

ここ に   とどまり お 仲間 と   みなさ れて は

どのような   おと が め を 受ける か 分かり ん せ ん

ちょうど   よき 働き 口 も 見つかり ん して なあ

お 二 人 に は よろしく お 伝え くださ ん し

( 横 松 ) あれ が 吉原 の 流儀 な んです か ?

福田 先生 どうか なされた のです か ?

もしや 何 か   ご存じ で おら れる の か

( 佐分利 ) 何 や ?

何 を 知 っと る ん や   吐け !

かわいそうだ けど よ

あの 男   殺さ れる ぜ

え ッ ?

医者 は 普通   揚がり 屋 に 送ら れ んだ 大 牢 に 送ら れる って こと は

お上 は   あわよくば   牢 の 中 で 死んで くれ と 思って る って こと だ

何 ゆえ   先生 が   そのような 目 に

お 待ち ください 何 ゆえ で ございます か !

〈 何も 分から なかった 〉

〈 誰 が   何の ため に 和 宮様 に   ヒ素 を 盛った んだろう 〉

〈 俺 に 罪 を   なすりつける ため に ?〉

〈 それとも   俺 を 陥れる ため に ?〉

《≪( 象 山 ) お前 の やった こと が 意 に 沿わ ぬ こと であったら →》

《 神 は   容赦 なく お前 の やった こと を 取り消す 》

〈 これ は 〉

〈 そういう こと な の か ?〉

死体 …

≪( 牢 名主 ) ツル を 払わ ねえ と こう なる んだ よ

どう だ   え ッ ?

払え ませ ん

私 が 持って る 金 は 患者 が 払った   なけなし の 金

命 の ツル です

一緒に 働いて くれる 仲間 は

それ に 手 を つけよう と も せ ず

ツメ に 火 を ともす ように 暮らして ます

あなた 方 に 払う 金 は

あり ませ ん

う ッ   う ~ ッ …

〈 俺 は   このまま   ここ で 取り消さ れて しまう の か ?〉

〈 それ が   神 の 意志 な の か ?〉

《 咲 さ ん !》

口 で は 分かった ような こと を 言い ながら

私 は   ずっと 心 の 底 で は 望んで おり ました

先生 が   お 戻り に なる 日 など 来 なければ よい

できる なら

ずっと   ここ に 居て ほしい  … と

もしや   そんな 私 を 哀れ と 思い

願い を   お 聞き届け くださった のでしょう か

なれば   どうか

もう 一 度 だけ 哀れ と 思う て ください ませ

どうか   先生 を お 助け ください

今 すぐに

今 すぐに   先生 を 未来 へ お 戻し ください ませ

〈 これ は   幻 か ?〉

〈 それとも   このまま 死ねば 俺 は   戻れる の か ?〉

〈 でも   ここ で 戻って しまったら 〉

〈 どう なる んだろう ?〉

〈 咲 さん が   どう なった か を 未来 から 知る こと は 〉

〈 きっと   でき ない 〉

〈 あの 不器用な 優し さ に 応える こと は でき ない 〉

〈 あの 笑顔 を 見る こと は でき ない 〉

〈 それ でも   いつか 新しい 日々 の 中 で 〉

〈「 それ で よかった 」 と 言い切れる 日 が 〉

〈 来る んだろう か 〉

〈 そんな 日 など 〉

〈 そんな 日 など …〉

〈 絶対 に 来 ない と 思う なら 〉

( 囚人 ) あ ~ ッ

元 [ 外 :6 B 60 DB 49332 DF 70 F 090 FA 736992 B 8556] は   うち の 医師 に

献上 を   うまく いか ぬ ように しろ と 脅し を かけて た んです

本道 の 奥 医師 ならば 大奥 と 通じる こと も でき ます

これ は   医学 館 の 陰謀 で は …

そう であれば もう   どうにも なら ない かも しれ ぬ

この 件 の お 調べ は 医学 館 が する こと に なった のだ

〈 俺 は   ここ で 〉

〈 生きる しか ない んだ 〉

この 野郎 !

( 牢 名主 の 悲鳴 )


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