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JIN-仁-, JIN-仁- #08

〈( 仁 )2009 年 10 月 11 日 〉

〈 俺 は   幕末 の 江戸 に タイム スリップ し 〉

( 橘 ) 逃げろ   早く !

〈 一 人 の 若者 に 助け られ 〉

〈 ここ で 医者 と して 暮らして いく こと に なった 〉

坂本   龍 馬

あの 患者 が …

( 洪 庵 ) より よき 未来 を

お つくり ください

皆さん   改めて よろしく お 願い し ます !

( 一同 ) はい ッ

《 攘夷 だ !  長 州 が メリケン の 船 を 攻撃 した って よ 》

どうかした んです か ? 恭 太郎 さん

いえ   世 は   どんどん 動いて いく もの だ と

( 咲 ) 先生

まずは   何 から お 始め に ?

そう です ね

まずは …

〈 そして   俺 は   ペニシリン を 〉

〈 より 強い もの に する 実験 を 始めた 〉

≪ ほお ~ ッ

新しい ペニシリン です

効力 は   今 まで の 30 倍 か と 思わ れ ます

どう やって   つくら れた のです か ?

今 まで の ペニシリン を 和紙 を 使って 精製 して みた んです

まず   従来 の ペニシリン を 和紙 に 塗り つけ   乾燥 さ せ

続いて   その 和紙 を   酸 ニ 割

アルカリ   八 割 に 調節 した 触媒 の 水 に つけ ます

酸 ニ 割   アルカリ 八 割 の 触媒 の 水 は

毛 細管 現象 で   和紙 を のぼって いき

その 途中 で   乾燥 した ペニシリン と

ペニシリン 溶液 に 含ま れる 不純 物質 を 分離 し ます

物質 に は   それぞれ Rf 値 と いう もの が あって

それぞれ   固有の 高 さ まで しか のぼれ ませ ん

つまり   不純 物質 「 ア 」 は   ここ まで

不純 物質 「 イ 」 は ここ まで と いう ふうに

高 さ が 決まる わけです

ペニシリン に も   当然 Rf 値 が あり ます から

その 高 さ の 部分 に は ペニシリン だけ が 集まる わけです

その 性質 を 使って   いら ない 物質 を ふるい に かけた ので ございます

あと は   その ペニシリン の 集まった 部分 の 和紙 を 切り取り

その 薬効 を 調べ

薬効 の 強い もの を 蒸留 水 に つける と

以前 より も   純度 の 高い

強い ペニシリン が できる わけです

これ から は   この 方法 で ペニシリン を つくり たい のです が

その …

始める ため に は   四百 両 ほど かかる みたいな んです

以前   医学 所 の 前身 であった 種痘 所 が 焼失 した おり

その 再興 の ため に 最初に 私 が 寄付 した かかり が

三百 両 で ございました

そこ で   何 千 人 も の 人間 が 種痘 を 受け られ ました

つまり   四百 両 と いう の は それ ほど の 金 だ と いう こと は

お 分かり です かな ? は あ …

私 が   ペニシリン へ の 援助 を 決めた の は

緒方 先生 が 援助 を 差し上げる に たる

器 の お方 であった から です

考えぬ わけで は あり ませ ん が …

その ため に は   まず   あなた 様 の 器 が   どれほど の もの か

見せて いただき たい

器 …

≪( 咲 ) まずは   己 で   何とか しろ って こと な んでしょう か

そう と しか   とれ ませ ん よ ね 体よく 断ら れた って いう か

( 佐分利 ) お 帰り なさい ませ ペニシリン は   いかがでした か ?

器 を 見せろ と … ≪( 栄 ) 器 が ございませ ぬ !

ない ?

( 栄 ) 父上 の 形見 の

備前 の 茶わん が 見当たら ぬ のです !

形見 の 茶わん が !?

≪( 咲 ) 母上   それ は 本当です か ?

私 が 売り ました

父上 の 形見 を です か !? 金 が 入り用に なった ので

入り用 と は   何 に … 人助け です

目 の 悪い 者 に   眼鏡 を 与え ました

( 栄 ) は あ !?

≪( 橘 ) 会え ぬ と は   何 ゆえ ?

風邪 で げ す   すぐに 出 られる ように なり ます ので

そう か

え ッ   龍 馬 さん   五千 両 も 借りて きた んです か !?

( 龍 馬 ) こん 国 の 海軍 を 背負う

海軍 塾 を つくろう っ ちゅう が ぜ よ

そん くらい ない と 話 に なら ん の じゃき

私 は   どうも その 手 の こと が ダメで

新しい ペニシリン つくり たい んです けど お 金 が   どうにも …

( 勝 ) 先生 は   金策 なんか でき なくて いい んだ よ

人 に は   それぞれ 天分 って の が あんだ から よ

何とか して 差し上げろ よ

お前 さん の   その 自慢 の 舌 で チョロチョロ っと な

う ~ ん

龍 馬 さん   濱口 様 に 認めて もらう ため に も

自分 で 何とか し なきゃ いけない んです

だから   自分 で 何とか し ます んで … ほ いたら   行く ぜ よ

行く って ? 京 の 島原

長崎 の 丸山   大坂 の 新町

どこ の 女子 も   す ん ば らしい

けん ど   野 風 は 吉原 に しか おら ん が じゃき !

おい ら を   待 っ ちょき 今 から 行 くき

相変わらず です ね

♪♪~ 高知 の   はり ま や 橋 で

最近   元気 ないで すね 恭 太郎 さん

何 か あった んです か ?

あ ッ   いかん   いかん

ち っく と 待 っと う せ

〈 こんな とき   改めて 失った もの の 大き さ を 思う 〉

〈 緒方 先生 は   いつも 〉

〈 俺 の 進もう と する 道 を 照らし 続けて くれた 〉

〈 だけど   これ から は 〉

〈 俺 が   自分 の 手 で 〉

〈 皆 の 進む 道 を 照らさ なければ なら ない のだ 〉

〈 幕末 と いう 先 の 見え ぬ 時代 の 中 で 〉

待た せた のう   行こう

♪♪~ 土佐 の

器 と は

闇 に 火 を ともす

力 の こと かも しれ ませ ぬ な

《 あなた 様 の 器 が どれほど の もの か 》

《 見せて いただき たい 》

〈 俺 に   そんな 器 が ある のだろう か ?〉

ま っこ と す ん ば らしい のう ~  吉原 は

≪( 野 風 ) お ぶ しゃれ ざん すな !→

実 の ない 男

( 男 ) あん が と よ 最高の 褒め 言葉 さ   花魁

去り なん し !

≪( 龍 馬 ) 相変わらず ええ 女 っぷり じゃ のう

久しぶり や のう   花魁

南方 先生   実は   急ぎ 診て いただき たい 病人 が

このまま で は 命 を 落とし かね ぬ 様子 で …

いい です よ   どなた です か ?

玉屋 の 初音 と いう 女 郎 であり ん す

どうかした んです か ?

いえ   何も

♪♪~

≪( 玉屋 の おやじ ) 客 の 子 を はらんで しまった のです が →

なかなか 流れ ず 中条 流 を 呼んで 流した のです

中条 流 ?

子 を 流す 専門 の 医者 で お ざ りん す

( 初音 ) は あ …

たの   すけ   さん …

たの すけ さん って ? 当代 一 の 人気 女形

三 代 目   澤村 田 之助

さっき の   に やけた 男 であり ん す

でも   さっき の 人 は お 武家 さん じゃ ?

歌舞伎 役者 の 登 楼 は 禁じ られて おり ん す ゆえ

変装 して いた のであり ん しょう →

ご ひいき の 旦那衆 に くっついて →

初音 を もてあそんで いた のであり ん す

田 之助 さん の 子 な んです か ?

≪( 野 風 ) 父親 を 定める こと など で きんせん →

初音 は   そう 思い たい ので あ りんしょう が

( 玉屋 の おやじ ) 先生   初音 は ?

おそらく   子 を 流した 手術 が 原因 で

敗血症 に なった もの と 思わ れ ます

敗血症 ? 細菌 など に 感染 し

全身 が 過剰な 炎症 反応 を 起こして る んです

このまま   ほうっておけば 死 に 至り ます

ペニシリン を 使い ましょう

ペニシリン やに ゃあ ペニシリン   ペニシリン !

恭 太郎 さん ?

あ ッ   はい

咲 さ んに   これ を はい

や っぱ 何 か 変だ よ な   恭 太郎 さん

≪( 野 風 ) お 相手 は 初音 であり ん した か

お 相手 って ?

《 人助け です   目 の 悪い 者 に 眼鏡 を 与え ました 》

( 初音 ) は あ …

たの すけ   さん …

つらい 話 であり ん すな

≪( 咲 ) 静 注 と 点滴   用意 でき ました ありがとう ございます

従来 の ペニシリン 投与 を 続けて いる のです が

熱 が   あまり 引き ませ ん

今 の ペニシリン で は   敗血症 の 菌 に 勝て ない んだ と 思い ます

このまま で は   非常に まずい です

≪( 野 風 ) ほか に 手だて は ?

新しい ペニシリン なら   何とか なる かも しれ ない んです が   その …

何 か 使え ぬ わけ でも ?

つくる が に   四百 両 も かかる が じゃ   のう   先生

四百 …

どう じゃ   もう いっぺん 濱口 様 に かけあって

四百 両 と いう の は 何 千 人 も の 人 の 命 を

救える 金額 だ と 言わ れ ました

見ず知らず の 一 人 の ため に 出して くださる と は …

《( 野 風 ) 去り なん し !》

田 之助 に   かけあって みる と いう の は   いかがでしょう ?

文字どおり の 千 両 役者 です し

初音 を 憎から ず 思って も いる だろう し

でも   それ は … そりゃ   えい !

こう なった の も   田 之助 の せい かも しれん が じゃ きのう

先生   行く ぜ よ ちょ   ちょ   龍 馬 さん …

あなた の 子 か どう か 分から ない の は 承知 の うえ です が

なんとか ! 頼む ぜ よ ッ

( 田 之助 ) 四百 両 ねえ ~  そんな 大金 ここ い ら に 転がって る と でも ?

おや   あった

お 願い し ます 四百 両   貸して ください !

こういう が は   どう じゃ ? 新しき 薬 に は

お まん の 名 を つける が じゃ 名付けて  「 妙薬 ・ 田 之助 」

薬 は   田 之助   助かる   田 之助 …

ほ いたら   田 之助 の 名 は ますます 上がる が じゃき

どうぜよ ?  悪い 話 で は ない ろう

名前 ねえ

そんな こと せ ず と も   私 は 芸 だけ で 名 を あげて みせる さ

悪い けど ね   この 小判 は この 田 之助 の 汗さ

血 さ   肉 さ

一 両 たり と も   やる こと など で きや し ない よ

何 が 血 だ   肉 じゃ

しょせん は   己 を 体よく 見せ物 に した だけ の

あぶく 銭 で は ない か ッ 恭 太郎 さん !

お 侍 さん   初音 を 買った だろう

役者 の 身分 に も かかわら ず 禁 を 破って の 登 楼

斬ら れた とて 文句 は 言え ぬ はずじゃ !

初音 は   うわごと でも お ぬし の 名 を 呼んで おる ッ

身 を 売る 女 が 本気で 慕って おる のじゃ

あわれ と は 思わ ぬ の か !

私 だって 身 を 売って やってきた んだ よ

小さい ころ は   坊主 相手 に

年 を 取りゃ   暇 と 金 を 持て余した ご 婦人 相手 に

女 郎 と 同じ こと を し ながら

血 を 吐く ような 思い で 芸 を 磨き やっと 手 に した

これ は   そういう 金 な んだ よ

どうしても   初音 を 助け たい なら

て め え が   まず 身 を 切る の が 筋 だろう さ

旗本 株 でも 売って から 出直して きや がれ !

悪寒 が ひか ぬ の で 温めて は いる んです が

ペニシリン の 注射 を 追加 して ください は い

≪( 野 風 ) 先生 よろしゅう お ざん す か ?

先生   これ を

五十 両 と 少し ばかり あり ん す

初音 の 身 に 起こった の は 吉原 の 女 郎 なら

誰 に でも 起こり うる こと

どうか   お 役立て くださ ん し

お 気持ち だけ 受け取って おき ます え ッ …

この お 金 は   野 風 さん に とって 血 や 肉 と 同じ はずです

野 風 さん 自身 の 身の上 の ため に 使う べきです

あ ちき の 身の上 など … このような   お 金 を 使った あと で

濱口 様 に 認めて いただく わけに は 濱口 様 ?

あー ッ   もう ちゃちゃ ちゃちゃ !

よし   先生 は   もう ペニシリン を つくり 始める が じゃ

金 は   わし が 何とか する これ は 私 の 問題 です

頭 を 冷やせ   先生 ! こう し とる うち に

初音 が 死んで し もう て は 元 も 子 も な いわい

胸 くそ 悪い 田 之助 の 鼻 も あか せ ん

そう なって し もう て は 橘 の 顔 も つぶれた ま まぜよ

そう です ね

行って き ます

野 風 さん   ありがとう ございます !

は よう   行け !

お まん の 仕事 は 先生 の 護衛 じゃ ろう が ッ

はい !

はて   どういった もん かのう …

わ しか ?  今度 は

中条 は   ためこんで る かも しれ ん のう

触媒 の 水 は   酸 ニ 割 アルカリ 八 割 で お 願い し ます

( 職人 ) おり ゃあ   帰る よ   もう ッ

どうした ん です か ?

給金 だって ろくに 払わ ねえ くせ に よ

おりゃ   臨時 の 日雇い な んだ けど よ とっぱ らい じゃ ねえ の かよ ッ

( 抗議 して いる )

あと で   必ず   お 支払い し ます から 今 は 皆さん の 力 が 必要な んです

お 願い し ます   お 願い し ます !

≪( 龍 馬 ) 先生 !

龍 馬 さん   これ   どう やって …

初音 の 子 を 流した 中条 流 の 医者 から

新しい ペニシリン を 質 に 借りて きた ぜ よ

《 私 とて   医者 の はしくれ 》

《 ペニシリン が   いかに   すばらしい 薬 で ある か は 聞き 及んで は おり ます 》

《 四百 両 を   七 年 の 返済 》

《 無 利息 で   いかがでしょう ?》 《 七 年 で 無 利息 かえ !?》

《 早速   証文 を したため ます ゆえ 》 《 おう   すま ん のう 》

勝手に   薬 を 質 に 入れた 形 に なって し もう たけん ど

七 年間 で 四百 両 やったら わし が 何とか する が じゃき

龍 馬 さん   ありがたく 使わ せて いただき ます

金 は 支払う こっち から 順に 並び !

すごい で すね →

坂本 龍 馬 と いう 人 は

器 が 違う

はい

下 から 九 寸 って いう の は 下端 から 九 寸 です

ちょっと 待って ください 床 と 平行 に お 願い し ます

この 両端 を 二 人 で 持って いただいて

なるべく   ていねいに お 願い し ます

( 男 ) 和紙 の 乾き ぐあい は ? 大丈夫だ と 思い ます

( 山田 ) どう か なさ い ました か ?

こう やって つくら れて いた のです ね →

皆 が   汗水 を たらし …

≪( 山田 ) この 薬 は 南方 先生 が つくり出し

緒方 先生 が 命がけ で お守り に なった

この世 の 宝 で ございます から

敗血症 に 勝って くれよ   お前 ら

恭 太郎 さん の ため に も

出来 次第   順に   お 願い し ます 山田 先生 !  行き ましょう

気 を つけて ! はい !

ペニシリン   注射 でき ます

眼鏡 …  喜んで いた そうで あり ん すよ

こんな 心遣い を して くださる 客 は

初めて であった と

( 咲 ) 先生

効いて くれよ

私 も   初めて で あり ました

《 小さな 杯 も よき もの であり ん すよ 》

あのように 心 を 軽う して くれた 女子 は

夜 が 明ける ぜ よ

初音 さん !?

無事に 意識 が 戻り ました もう 大丈夫です

もう 会える が かい ? 少し なら   大丈夫です

どうぞ   中 へ ほうか   ほうか

恭 太郎 さん やめて おき ます

( 龍 馬 ) 何 を 言う が ぜ よ !

初音 が 困る 顔 は 見 たく あり ませ ぬ ゆえ

今 の 声 は ?

橘   恭 太郎

私 の 兄 で ございます が ?

あの …  わ ちき は 正体 なき とき

何 か 申して おり ん した か ?

田 之助 さん の 名 を ずっと   お呼び で

申し訳 ござ りんせん …

わ ちき は   人でなし であり ん す

あんなに   お 優しい 方 を 傷つけ …

女 郎 の くせ に   嘘 さえ つきとおす こと も でき ず

己 の 気持ち に   嘘 は つけ ませ ぬ

詮 ない もの か と 存じ ます よ

( 男 ) 南方 って いう お 医者 さん は いらっしゃって ます か ?

おう   おう   先生 !→

何 ぜ よ   見舞い に 来て くれた が かい ?

先生   こちら が 金 を 貸して くれた 中条 の …

ああ   その 節 は   ホントに

あれ から   今日 で   ちょうど 七 日

お 約束 の もの を 受け取り に まいった

約束 の もの ?

また   おと ぼけ を   ここ に はっきり と 書いて ございます

「 七 日 後 に 返済 でき ぬ 場合 は 新薬 の すべて を 譲り渡す 」 と

七 日 って   七 年 じゃ ?

七 日 で ございます よ →

ほら   ここ に   坂本 様 の 署名 も ある

謀った がか !

この   強 欲 じ じい !

欲 に 目 が くらんで よくよく 確かめ なかった の は →

そちら の 落ち度

さあ   四百 両 か   新薬 か →

どちら か を   お 渡し 願え ます か ?

《≪( 山田 ) この 薬 は 南方 先生 が つくりだし →》

《 緒方 先生 が 命がけ で お守り に なった 》

《 この世 の 宝 で ございます から 》

分かり ました

まだ じゃ

こん 取り決め を 交わした が は 暮れ 六 つ じゃ

まだ   七 日 は たっ ちょ らん

フッ …  小僧 が

お 待ち ください ! ダメで ございます

田 之助 !  田 之助   頼み が ある

金 は 借り られた と 聞き ました が 貸し手 に 裏 を かかれ

南方 先生 は   薬 の すべて を 手放せ と 迫ら れて おる のじゃ

それ は   一大事 で ござい

あの 薬 は 皆 の 血 と 肉 で できて おる !

あの 薬 の ため に   皆 が   すべて を なげうって 闘って きた

あれ は   そう やって できた 宝 な のだ

頼む   四百 両   貸して くれ !

こない だ も 言った と 思う けど … 私 が   お ぬし に 身 を 売る !

身 を 切った 金 を 借りる のだ こちら も 身 を 切ろう

煮る なり   焼く なり どう と でも する が よい !

じゃあ   一 つ

見せ物 でも して もらおう か

( 鐘 が 鳴る )

そろそろ で ございます な

考え 直せ !  頼む !

さっき から それ ばかりです な

では   先生   お 返事 を

分かり ました 玉屋 の おやじ 様 !

私 が   ここ で   ご 奉公 し ます ので 四百 両   お 貸し 願え ませ ぬ か ?

おお …

少々   とう が 立って おり ます が

旗本 の 娘 と いう もの珍し さ は ございましょう し

何 を 言って る んです か   咲 さ ん

咲 様 …

私 に できる こと は これ しか ございませ ぬ !

おっと   そんな 大切な もん を 売り渡しちゃ いけ ねえ よ

田 之助 さん

先生   あの 薬 は あんた ら の 血肉 を 刻んだ

命 だって 話 じゃ ねえ か

そう と なりゃ   話 は 別だ

この 田 之助   命 に は 命 で 応える さ

おととい 来 や がれ !

役者 風情 が

先生

あの 金 は 返さ なくて いい から な え ッ ?

貸す なんて   せ こい マネ きれ え なんだ よ

ありがとう ございます

けん ど   どう いて こ ん こと を 知った が じゃ ?

私 に 身売り を した 男 が いた の さ

≪( 龍 馬 ) 男 ?

≪( 男 ) よ ッ   田 之助 !

《 田 之助 殿   金 を 貸して ください !》

《 お 頼み 申す !》

《 田 之助 殿   金 を 貸して ください 》

《 お 頼み 申す !》

《 田 之助 殿   お 頼み 申す !》

《 金 を …》

《 お 侍 さん が 土下座 して る ぜ 》

《 お 頼み 申す !》

≪( 咲 ) 兄 上

では   ご ゆる り と

お 話 と は ?

ありがとう ございました 恭 太郎 さん

お 侍 さん が   役者 に 頭 を 下げる と いう の は

ものすごく 勇気 の いる こと です よ ね

それ しか   でき なかった だけ で ございます

ぼん くら の 旗本 に は それ ぐらい しか …

お まん の   どこ が   ぼん くら じゃ

ええ かい ?

お まん は   ペニシリン を 守った が じゃ

こん 薬 を 守る ちゅうこ と は

吉原 の 女 郎 たち を 守った ちゅうこ と じゃ →

こん 国 の 医術 を 守った のじゃ

お まん は   こん 国 を 守った ような もん じゃ

お まん は   どだい   すごい こと を やった が ぜ よ !

私 は   あなた が 嫌いでした

嫌い ?

勝 先生 は   私 に は 護衛 を

あなた に は   海軍 を つくる 手伝い を さ せる

どちら も 大切な 役目 だ と は 分かって は いて も

世 を 動かす ような 仕事 を して いる   あなた を

ねたま ず に は   い られ なかった

けれど   こうして   そば に いる と

器 の 違い が   嫌というほど 分かる

今 も   まだ そう 感じ ず に は い られ ず   私 は …

何で   そんな こと 言う んです か ?

恭 太郎 さん ほど の 護衛 は どこ に も い ない のに

恭 太郎 さん   初めて 会った とき

私 を 守って 斬ら れて くれた じゃ ないで す か

身元 も 知れ ない 私 を 居候 さ して くれて

今日 は   もう   私 の すべて を

身 を 切って 守って くれた じゃ ないで す か

恭 太郎 さん が い なければ

私 は   ここ で 生きて いく こと は でき ませ ん でした よ

恭 太郎 さん が い なければ

私 は   ここ で 薬 を つくる こと が でき ませ ん でした よ

だから …

恭 太郎 さん は   私 に とって 最高の 護衛 な んです !

男子 たる もの

人前 で は   決して 泣いて は なら ぬ と …

しかし

今日 は   少し だけ …

咲 様 は   ゆくゆくは 先生 と   ご 一緒に ?

え ッ ?

お 慕い して いる ので あ りんしょう

先生 に は   心 に 決めた 方 が おら れる ようです

けん ど   ご 記憶 が あり ん せんと

その方 の こと だけ は 覚えて おら れる ようです

お つらく は あり ん せんか ?  咲 様 は

私 に は

先生 の 医術 が あり ます から

( 龍 馬 ) この アホ が ッ

〈 ようやく 分かった 気 が した 〉

〈 江戸 の 夜道 は 暗くて 〉

〈 助け合わ ねば   とても 歩いて は いけない 〉

〈 誰 も が   誰 か を 支え 〉

〈 誰 か に 支え られ ながら 生きて いる 〉

〈 少なくとも   俺 は 〉

〈 きっと   一 人 で は 何も でき ない 〉

〈 それ でも   進んで いき たい と 願う の なら …〉

私 は   本当に 器 の 小さな 人間 である と 痛感 し ました

みんな に 支え られて ここ まで   やってこ れた のだ と

改めて 分かり ました

濱口 様   だ から こそ

私 を   ご 援助 願え ませ ん でしょう か ?

ちっぽけな 私 が 受けた 恩 を 返す に は

医術 より ほか は あり ませ ん

お 願い し ます !

正直で   己 を 大きく 見せる こと は し ない

けれど   自分 の なす べき こと に 対して は

あらんかぎり の 努力 を する

あなた の 器 は きっと   そう 大きく は ない

しかし   とても 美しい んでしょう なあ

それ が ゆえ に   周り の 人間 は

助け たい   守り たい と 思う

それ が   南方 仁 と いう 器 な のでしょう

はい !

〈 こうして   また 一 つ 〉

〈 恩 が たまって いく 〉

〈 俺 と いう   小さな 器 の 中 に 〉

〈 大切に   こぼさ ぬ ように 歩いて いこう と 思う 〉

〈 医学 の 時計 の 針 を 前 へ と 進ま せる ため に も 〉

おりゃ ~!

お まん ら も   武士 じゃ ったら

こそこそ せ ん と 名乗り を あげ ん かや !

また   先生 に 刺客 が ?

いや   あれ は わし に ついた もん の ようじゃ

龍 馬 さん に   どうして ?

分から ん けん ど   わしゃ コロコロ 考え を 変える きね

お もろ ない やつ も こ じゃ ん と お るろう

〈 嫌な 予感 が した 〉

〈 俺 が 医学 の 時計 の 針 を 進める こと で 〉

〈 維新 へ の 歴史 も 早く 進む こと は ない のだろう か 〉

〈 龍 馬   暗殺 の 瞬間 は 〉

〈 俺 が 知る より   もっと 早く に …〉

龍 馬 さん

気 を つけて ください   ホントに

お ッ   前 と は   あべこべじゃ

笑いごと じゃ ない んです

けん ど   先生 が おる が じゃ ろう

わしゃ 斬ら れて も 助かる が じゃ ろう

南方 仁 が おれば

坂本 龍 馬 は 死な ん !

そう じゃ ろう ?

〈 たとえ   歴史 の 時計 の 針 が 早く 進んだ と して も …〉

助け ます よ

俺 が   この 手 で

〈 そして   時 は 〉

〈 その 流れ を 変え 始めた のだ 〉

《 私 に は   先生 の 医術 が あり ます から 》

あ ちき に は   何も あり ん せ ん よ

先生

〈 極めて   残酷な 未来 へ と …〉



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〈( 仁 )2009 年 10 月 11 日 〉

〈 俺 は   幕末 の 江戸 に タイム スリップ し 〉

( 橘 ) 逃げろ   早く !

〈 一 人 の 若者 に 助け られ 〉

〈 ここ で 医者 と して 暮らして いく こと に なった 〉

坂本   龍 馬

あの 患者 が …

( 洪 庵 ) より よき 未来 を

お つくり ください

皆さん   改めて よろしく お 願い し ます !

( 一同 ) はい ッ

《 攘夷 だ !  長 州 が メリケン の 船 を 攻撃 した って よ 》

どうかした んです か ? 恭 太郎 さん

いえ   世 は   どんどん 動いて いく もの だ と

( 咲 ) 先生

まずは   何 から お 始め に ?

そう です ね

まずは …

〈 そして   俺 は   ペニシリン を 〉

〈 より 強い もの に する 実験 を 始めた 〉

≪ ほお ~ ッ

新しい ペニシリン です

効力 は   今 まで の 30 倍 か と 思わ れ ます

どう やって   つくら れた のです か ?

今 まで の ペニシリン を 和紙 を 使って 精製 して みた んです

まず   従来 の ペニシリン を 和紙 に 塗り つけ   乾燥 さ せ

続いて   その 和紙 を   酸 ニ 割

アルカリ   八 割 に 調節 した 触媒 の 水 に つけ ます

酸 ニ 割   アルカリ 八 割 の 触媒 の 水 は

毛 細管 現象 で   和紙 を のぼって いき

その 途中 で   乾燥 した ペニシリン と

ペニシリン 溶液 に 含ま れる 不純 物質 を 分離 し ます

物質 に は   それぞれ Rf 値 と いう もの が あって

それぞれ   固有の 高 さ まで しか のぼれ ませ ん

つまり   不純 物質 「 ア 」 は   ここ まで

不純 物質 「 イ 」 は ここ まで と いう ふうに

高 さ が 決まる わけです

ペニシリン に も   当然 Rf 値 が あり ます から

その 高 さ の 部分 に は ペニシリン だけ が 集まる わけです

その 性質 を 使って   いら ない 物質 を ふるい に かけた ので ございます

あと は   その ペニシリン の 集まった 部分 の 和紙 を 切り取り

その 薬効 を 調べ

薬効 の 強い もの を 蒸留 水 に つける と

以前 より も   純度 の 高い

強い ペニシリン が できる わけです

これ から は   この 方法 で ペニシリン を つくり たい のです が

その …

始める ため に は   四百 両 ほど かかる みたいな んです

以前   医学 所 の 前身 であった 種痘 所 が 焼失 した おり

その 再興 の ため に 最初に 私 が 寄付 した かかり が

三百 両 で ございました

そこ で   何 千 人 も の 人間 が 種痘 を 受け られ ました

つまり   四百 両 と いう の は それ ほど の 金 だ と いう こと は

お 分かり です かな ? は あ …

私 が   ペニシリン へ の 援助 を 決めた の は

緒方 先生 が 援助 を 差し上げる に たる

器 の お方 であった から です

考えぬ わけで は あり ませ ん が …

その ため に は   まず   あなた 様 の 器 が   どれほど の もの か

見せて いただき たい

器 …

≪( 咲 ) まずは   己 で   何とか しろ って こと な んでしょう か

そう と しか   とれ ませ ん よ ね 体よく 断ら れた って いう か

( 佐分利 ) お 帰り なさい ませ ペニシリン は   いかがでした か ?

器 を 見せろ と … ≪( 栄 ) 器 が ございませ ぬ !

ない ?

( 栄 ) 父上 の 形見 の

備前 の 茶わん が 見当たら ぬ のです !

形見 の 茶わん が !?

≪( 咲 ) 母上   それ は 本当です か ?

私 が 売り ました

父上 の 形見 を です か !? 金 が 入り用に なった ので

入り用 と は   何 に … 人助け です

目 の 悪い 者 に   眼鏡 を 与え ました

( 栄 ) は あ !?

≪( 橘 ) 会え ぬ と は   何 ゆえ ?

風邪 で げ す   すぐに 出 られる ように なり ます ので

そう か

え ッ   龍 馬 さん   五千 両 も 借りて きた んです か !?

( 龍 馬 ) こん 国 の 海軍 を 背負う

海軍 塾 を つくろう っ ちゅう が ぜ よ

そん くらい ない と 話 に なら ん の じゃき

私 は   どうも その 手 の こと が ダメで

新しい ペニシリン つくり たい んです けど お 金 が   どうにも …

( 勝 ) 先生 は   金策 なんか でき なくて いい んだ よ

人 に は   それぞれ 天分 って の が あんだ から よ

何とか して 差し上げろ よ

お前 さん の   その 自慢 の 舌 で チョロチョロ っと な

う ~ ん

龍 馬 さん   濱口 様 に 認めて もらう ため に も

自分 で 何とか し なきゃ いけない んです

だから   自分 で 何とか し ます んで … ほ いたら   行く ぜ よ

行く って ? 京 の 島原

長崎 の 丸山   大坂 の 新町

どこ の 女子 も   す ん ば らしい

けん ど   野 風 は 吉原 に しか おら ん が じゃき !

おい ら を   待 っ ちょき 今 から 行 くき

相変わらず です ね

♪♪~ 高知 の   はり ま や 橋 で

最近   元気 ないで すね 恭 太郎 さん

何 か あった んです か ?

あ ッ   いかん   いかん

ち っく と 待 っと う せ

〈 こんな とき   改めて 失った もの の 大き さ を 思う 〉

〈 緒方 先生 は   いつも 〉

〈 俺 の 進もう と する 道 を 照らし 続けて くれた 〉

〈 だけど   これ から は 〉

〈 俺 が   自分 の 手 で 〉

〈 皆 の 進む 道 を 照らさ なければ なら ない のだ 〉

〈 幕末 と いう 先 の 見え ぬ 時代 の 中 で 〉

待た せた のう   行こう

♪♪~ 土佐 の

器 と は

闇 に 火 を ともす

力 の こと かも しれ ませ ぬ な

《 あなた 様 の 器 が どれほど の もの か 》

《 見せて いただき たい 》

〈 俺 に   そんな 器 が ある のだろう か ?〉

ま っこ と す ん ば らしい のう ~  吉原 は

≪( 野 風 ) お ぶ しゃれ ざん すな !→

実 の ない 男

( 男 ) あん が と よ 最高の 褒め 言葉 さ   花魁

去り なん し !

≪( 龍 馬 ) 相変わらず ええ 女 っぷり じゃ のう

久しぶり や のう   花魁

南方 先生   実は   急ぎ 診て いただき たい 病人 が

このまま で は 命 を 落とし かね ぬ 様子 で …

いい です よ   どなた です か ?

玉屋 の 初音 と いう 女 郎 であり ん す

どうかした んです か ?

いえ   何も

♪♪~

≪( 玉屋 の おやじ ) 客 の 子 を はらんで しまった のです が →

なかなか 流れ ず 中条 流 を 呼んで 流した のです

中条 流 ?

子 を 流す 専門 の 医者 で お ざ りん す

( 初音 ) は あ …

たの   すけ   さん …

たの すけ さん って ? 当代 一 の 人気 女形

三 代 目   澤村 田 之助

さっき の   に やけた 男 であり ん す

でも   さっき の 人 は お 武家 さん じゃ ?

歌舞伎 役者 の 登 楼 は 禁じ られて おり ん す ゆえ

変装 して いた のであり ん しょう →

ご ひいき の 旦那衆 に くっついて →

初音 を もてあそんで いた のであり ん す

田 之助 さん の 子 な んです か ?

≪( 野 風 ) 父親 を 定める こと など で きんせん →

初音 は   そう 思い たい ので あ りんしょう が

( 玉屋 の おやじ ) 先生   初音 は ?

おそらく   子 を 流した 手術 が 原因 で

敗血症 に なった もの と 思わ れ ます

敗血症 ? 細菌 など に 感染 し

全身 が 過剰な 炎症 反応 を 起こして る んです

このまま   ほうっておけば 死 に 至り ます

ペニシリン を 使い ましょう

ペニシリン やに ゃあ ペニシリン   ペニシリン !

恭 太郎 さん ?

あ ッ   はい

咲 さ んに   これ を はい

や っぱ 何 か 変だ よ な   恭 太郎 さん

≪( 野 風 ) お 相手 は 初音 であり ん した か

お 相手 って ?

《 人助け です   目 の 悪い 者 に 眼鏡 を 与え ました 》

( 初音 ) は あ …

たの すけ   さん …

つらい 話 であり ん すな

≪( 咲 ) 静 注 と 点滴   用意 でき ました ありがとう ございます

従来 の ペニシリン 投与 を 続けて いる のです が

熱 が   あまり 引き ませ ん

今 の ペニシリン で は   敗血症 の 菌 に 勝て ない んだ と 思い ます

このまま で は   非常に まずい です

≪( 野 風 ) ほか に 手だて は ?

新しい ペニシリン なら   何とか なる かも しれ ない んです が   その …

何 か 使え ぬ わけ でも ?

つくる が に   四百 両 も かかる が じゃ   のう   先生

四百 …

どう じゃ   もう いっぺん 濱口 様 に かけあって

四百 両 と いう の は 何 千 人 も の 人 の 命 を

救える 金額 だ と 言わ れ ました

見ず知らず の 一 人 の ため に 出して くださる と は …

《( 野 風 ) 去り なん し !》

田 之助 に   かけあって みる と いう の は   いかがでしょう ?

文字どおり の 千 両 役者 です し

初音 を 憎から ず 思って も いる だろう し

でも   それ は … そりゃ   えい !

こう なった の も   田 之助 の せい かも しれん が じゃ きのう

先生   行く ぜ よ ちょ   ちょ   龍 馬 さん …

あなた の 子 か どう か 分から ない の は 承知 の うえ です が

なんとか ! 頼む ぜ よ ッ

( 田 之助 ) 四百 両 ねえ ~  そんな 大金 ここ い ら に 転がって る と でも ?

おや   あった

お 願い し ます 四百 両   貸して ください !

こういう が は   どう じゃ ? 新しき 薬 に は

お まん の 名 を つける が じゃ 名付けて  「 妙薬 ・ 田 之助 」

薬 は   田 之助   助かる   田 之助 …

ほ いたら   田 之助 の 名 は ますます 上がる が じゃき

どうぜよ ?  悪い 話 で は ない ろう

名前 ねえ

そんな こと せ ず と も   私 は 芸 だけ で 名 を あげて みせる さ

悪い けど ね   この 小判 は この 田 之助 の 汗さ

血 さ   肉 さ

一 両 たり と も   やる こと など で きや し ない よ

何 が 血 だ   肉 じゃ

しょせん は   己 を 体よく 見せ物 に した だけ の

あぶく 銭 で は ない か ッ 恭 太郎 さん !

お 侍 さん   初音 を 買った だろう

役者 の 身分 に も かかわら ず 禁 を 破って の 登 楼

斬ら れた とて 文句 は 言え ぬ はずじゃ !

初音 は   うわごと でも お ぬし の 名 を 呼んで おる ッ

身 を 売る 女 が 本気で 慕って おる のじゃ

あわれ と は 思わ ぬ の か !

私 だって 身 を 売って やってきた んだ よ

小さい ころ は   坊主 相手 に

年 を 取りゃ   暇 と 金 を 持て余した ご 婦人 相手 に

女 郎 と 同じ こと を し ながら

血 を 吐く ような 思い で 芸 を 磨き やっと 手 に した

これ は   そういう 金 な んだ よ

どうしても   初音 を 助け たい なら

て め え が   まず 身 を 切る の が 筋 だろう さ

旗本 株 でも 売って から 出直して きや がれ !

悪寒 が ひか ぬ の で 温めて は いる んです が

ペニシリン の 注射 を 追加 して ください は い

≪( 野 風 ) 先生 よろしゅう お ざん す か ?

先生   これ を

五十 両 と 少し ばかり あり ん す

初音 の 身 に 起こった の は 吉原 の 女 郎 なら

誰 に でも 起こり うる こと

どうか   お 役立て くださ ん し

お 気持ち だけ 受け取って おき ます え ッ …

この お 金 は   野 風 さん に とって 血 や 肉 と 同じ はずです

野 風 さん 自身 の 身の上 の ため に 使う べきです

あ ちき の 身の上 など … このような   お 金 を 使った あと で

濱口 様 に 認めて いただく わけに は 濱口 様 ?

あー ッ   もう ちゃちゃ ちゃちゃ !

よし   先生 は   もう ペニシリン を つくり 始める が じゃ

金 は   わし が 何とか する これ は 私 の 問題 です

頭 を 冷やせ   先生 ! こう し とる うち に

初音 が 死んで し もう て は 元 も 子 も な いわい

胸 くそ 悪い 田 之助 の 鼻 も あか せ ん

そう なって し もう て は 橘 の 顔 も つぶれた ま まぜよ

そう です ね

行って き ます

野 風 さん   ありがとう ございます !

は よう   行け !

お まん の 仕事 は 先生 の 護衛 じゃ ろう が ッ

はい !

はて   どういった もん かのう …

わ しか ?  今度 は

中条 は   ためこんで る かも しれ ん のう

触媒 の 水 は   酸 ニ 割 アルカリ 八 割 で お 願い し ます

( 職人 ) おり ゃあ   帰る よ   もう ッ

どうした ん です か ?

給金 だって ろくに 払わ ねえ くせ に よ

おりゃ   臨時 の 日雇い な んだ けど よ とっぱ らい じゃ ねえ の かよ ッ

( 抗議 して いる )

あと で   必ず   お 支払い し ます から 今 は 皆さん の 力 が 必要な んです

お 願い し ます   お 願い し ます !

≪( 龍 馬 ) 先生 !

龍 馬 さん   これ   どう やって …

初音 の 子 を 流した 中条 流 の 医者 から

新しい ペニシリン を 質 に 借りて きた ぜ よ

《 私 とて   医者 の はしくれ 》

《 ペニシリン が   いかに   すばらしい 薬 で ある か は 聞き 及んで は おり ます 》

《 四百 両 を   七 年 の 返済 》

《 無 利息 で   いかがでしょう ?》 《 七 年 で 無 利息 かえ !?》

《 早速   証文 を したため ます ゆえ 》 《 おう   すま ん のう 》

勝手に   薬 を 質 に 入れた 形 に なって し もう たけん ど

七 年間 で 四百 両 やったら わし が 何とか する が じゃき

龍 馬 さん   ありがたく 使わ せて いただき ます

金 は 支払う こっち から 順に 並び !

すごい で すね →

坂本 龍 馬 と いう 人 は

器 が 違う

はい

下 から 九 寸 って いう の は 下端 から 九 寸 です

ちょっと 待って ください 床 と 平行 に お 願い し ます

この 両端 を 二 人 で 持って いただいて

なるべく   ていねいに お 願い し ます

( 男 ) 和紙 の 乾き ぐあい は ? 大丈夫だ と 思い ます

( 山田 ) どう か なさ い ました か ?

こう やって つくら れて いた のです ね →

皆 が   汗水 を たらし …

≪( 山田 ) この 薬 は 南方 先生 が つくり出し

緒方 先生 が 命がけ で お守り に なった

この世 の 宝 で ございます から

敗血症 に 勝って くれよ   お前 ら

恭 太郎 さん の ため に も

出来 次第   順に   お 願い し ます 山田 先生 !  行き ましょう

気 を つけて ! はい !

ペニシリン   注射 でき ます

眼鏡 …  喜んで いた そうで あり ん すよ

こんな 心遣い を して くださる 客 は

初めて であった と

( 咲 ) 先生

効いて くれよ

私 も   初めて で あり ました

《 小さな 杯 も よき もの であり ん すよ 》

あのように 心 を 軽う して くれた 女子 は

夜 が 明ける ぜ よ

初音 さん !?

無事に 意識 が 戻り ました もう 大丈夫です

もう 会える が かい ? 少し なら   大丈夫です

どうぞ   中 へ ほうか   ほうか

恭 太郎 さん やめて おき ます

( 龍 馬 ) 何 を 言う が ぜ よ !

初音 が 困る 顔 は 見 たく あり ませ ぬ ゆえ

今 の 声 は ?

橘   恭 太郎

私 の 兄 で ございます が ?

あの …  わ ちき は 正体 なき とき

何 か 申して おり ん した か ?

田 之助 さん の 名 を ずっと   お呼び で

申し訳 ござ りんせん …

わ ちき は   人でなし であり ん す

あんなに   お 優しい 方 を 傷つけ …

女 郎 の くせ に   嘘 さえ つきとおす こと も でき ず

己 の 気持ち に   嘘 は つけ ませ ぬ

詮 ない もの か と 存じ ます よ

( 男 ) 南方 って いう お 医者 さん は いらっしゃって ます か ?

おう   おう   先生 !→

何 ぜ よ   見舞い に 来て くれた が かい ?

先生   こちら が 金 を 貸して くれた 中条 の …

ああ   その 節 は   ホントに

あれ から   今日 で   ちょうど 七 日

お 約束 の もの を 受け取り に まいった

約束 の もの ?

また   おと ぼけ を   ここ に はっきり と 書いて ございます

「 七 日 後 に 返済 でき ぬ 場合 は 新薬 の すべて を 譲り渡す 」 と

七 日 って   七 年 じゃ ?

七 日 で ございます よ →

ほら   ここ に   坂本 様 の 署名 も ある

謀った がか !

この   強 欲 じ じい !

欲 に 目 が くらんで よくよく 確かめ なかった の は →

そちら の 落ち度

さあ   四百 両 か   新薬 か →

どちら か を   お 渡し 願え ます か ?

《≪( 山田 ) この 薬 は 南方 先生 が つくりだし →》

《 緒方 先生 が 命がけ で お守り に なった 》

《 この世 の 宝 で ございます から 》

分かり ました

まだ じゃ

こん 取り決め を 交わした が は 暮れ 六 つ じゃ

まだ   七 日 は たっ ちょ らん

フッ …  小僧 が

お 待ち ください ! ダメで ございます

田 之助 !  田 之助   頼み が ある

金 は 借り られた と 聞き ました が 貸し手 に 裏 を かかれ

南方 先生 は   薬 の すべて を 手放せ と 迫ら れて おる のじゃ

それ は   一大事 で ござい

あの 薬 は 皆 の 血 と 肉 で できて おる !

あの 薬 の ため に   皆 が   すべて を なげうって 闘って きた

あれ は   そう やって できた 宝 な のだ

頼む   四百 両   貸して くれ !

こない だ も 言った と 思う けど … 私 が   お ぬし に 身 を 売る !

身 を 切った 金 を 借りる のだ こちら も 身 を 切ろう

煮る なり   焼く なり どう と でも する が よい !

じゃあ   一 つ

見せ物 でも して もらおう か

( 鐘 が 鳴る )

そろそろ で ございます な

考え 直せ !  頼む !

さっき から それ ばかりです な

では   先生   お 返事 を

分かり ました 玉屋 の おやじ 様 !

私 が   ここ で   ご 奉公 し ます ので 四百 両   お 貸し 願え ませ ぬ か ?

おお …

少々   とう が 立って おり ます が

旗本 の 娘 と いう もの珍し さ は ございましょう し

何 を 言って る んです か   咲 さ ん

咲 様 …

私 に できる こと は これ しか ございませ ぬ !

おっと   そんな 大切な もん を 売り渡しちゃ いけ ねえ よ

田 之助 さん

先生   あの 薬 は あんた ら の 血肉 を 刻んだ

命 だって 話 じゃ ねえ か

そう と なりゃ   話 は 別だ

この 田 之助   命 に は 命 で 応える さ

おととい 来 や がれ !

役者 風情 が

先生

あの 金 は 返さ なくて いい から な え ッ ?

貸す なんて   せ こい マネ きれ え なんだ よ

ありがとう ございます

けん ど   どう いて こ ん こと を 知った が じゃ ?

私 に 身売り を した 男 が いた の さ

≪( 龍 馬 ) 男 ?

≪( 男 ) よ ッ   田 之助 !

《 田 之助 殿   金 を 貸して ください !》

《 お 頼み 申す !》

《 田 之助 殿   金 を 貸して ください 》

《 お 頼み 申す !》

《 田 之助 殿   お 頼み 申す !》

《 金 を …》

《 お 侍 さん が 土下座 して る ぜ 》

《 お 頼み 申す !》

≪( 咲 ) 兄 上

では   ご ゆる り と

お 話 と は ?

ありがとう ございました 恭 太郎 さん

お 侍 さん が   役者 に 頭 を 下げる と いう の は

ものすごく 勇気 の いる こと です よ ね

それ しか   でき なかった だけ で ございます

ぼん くら の 旗本 に は それ ぐらい しか …

お まん の   どこ が   ぼん くら じゃ

ええ かい ?

お まん は   ペニシリン を 守った が じゃ

こん 薬 を 守る ちゅうこ と は

吉原 の 女 郎 たち を 守った ちゅうこ と じゃ →

こん 国 の 医術 を 守った のじゃ

お まん は   こん 国 を 守った ような もん じゃ

お まん は   どだい   すごい こと を やった が ぜ よ !

私 は   あなた が 嫌いでした

嫌い ?

勝 先生 は   私 に は 護衛 を

あなた に は   海軍 を つくる 手伝い を さ せる

どちら も 大切な 役目 だ と は 分かって は いて も

世 を 動かす ような 仕事 を して いる   あなた を

ねたま ず に は   い られ なかった

けれど   こうして   そば に いる と

器 の 違い が   嫌というほど 分かる

今 も   まだ そう 感じ ず に は い られ ず   私 は …

何で   そんな こと 言う んです か ?

恭 太郎 さん ほど の 護衛 は どこ に も い ない のに

恭 太郎 さん   初めて 会った とき

私 を 守って 斬ら れて くれた じゃ ないで す か

身元 も 知れ ない 私 を 居候 さ して くれて

今日 は   もう   私 の すべて を

身 を 切って 守って くれた じゃ ないで す か

恭 太郎 さん が い なければ

私 は   ここ で 生きて いく こと は でき ませ ん でした よ

恭 太郎 さん が い なければ

私 は   ここ で 薬 を つくる こと が でき ませ ん でした よ

だから …

恭 太郎 さん は   私 に とって 最高の 護衛 な んです !

男子 たる もの

人前 で は   決して 泣いて は なら ぬ と …

しかし

今日 は   少し だけ …

咲 様 は   ゆくゆくは 先生 と   ご 一緒に ?

え ッ ?

お 慕い して いる ので あ りんしょう

先生 に は   心 に 決めた 方 が おら れる ようです

けん ど   ご 記憶 が あり ん せんと

その方 の こと だけ は 覚えて おら れる ようです

お つらく は あり ん せんか ?  咲 様 は

私 に は

先生 の 医術 が あり ます から

( 龍 馬 ) この アホ が ッ

〈 ようやく 分かった 気 が した 〉

〈 江戸 の 夜道 は 暗くて 〉

〈 助け合わ ねば   とても 歩いて は いけない 〉

〈 誰 も が   誰 か を 支え 〉

〈 誰 か に 支え られ ながら 生きて いる 〉

〈 少なくとも   俺 は 〉

〈 きっと   一 人 で は 何も でき ない 〉

〈 それ でも   進んで いき たい と 願う の なら …〉

私 は   本当に 器 の 小さな 人間 である と 痛感 し ました

みんな に 支え られて ここ まで   やってこ れた のだ と

改めて 分かり ました

濱口 様   だ から こそ

私 を   ご 援助 願え ませ ん でしょう か ?

ちっぽけな 私 が 受けた 恩 を 返す に は

医術 より ほか は あり ませ ん

お 願い し ます !

正直で   己 を 大きく 見せる こと は し ない

けれど   自分 の なす べき こと に 対して は

あらんかぎり の 努力 を する

あなた の 器 は きっと   そう 大きく は ない

しかし   とても 美しい んでしょう なあ

それ が ゆえ に   周り の 人間 は

助け たい   守り たい と 思う

それ が   南方 仁 と いう 器 な のでしょう

はい !

〈 こうして   また 一 つ 〉

〈 恩 が たまって いく 〉

〈 俺 と いう   小さな 器 の 中 に 〉

〈 大切に   こぼさ ぬ ように 歩いて いこう と 思う 〉

〈 医学 の 時計 の 針 を 前 へ と 進ま せる ため に も 〉

おりゃ ~!

お まん ら も   武士 じゃ ったら

こそこそ せ ん と 名乗り を あげ ん かや !

また   先生 に 刺客 が ?

いや   あれ は わし に ついた もん の ようじゃ

龍 馬 さん に   どうして ?

分から ん けん ど   わしゃ コロコロ 考え を 変える きね

お もろ ない やつ も こ じゃ ん と お るろう

〈 嫌な 予感 が した 〉

〈 俺 が 医学 の 時計 の 針 を 進める こと で 〉

〈 維新 へ の 歴史 も 早く 進む こと は ない のだろう か 〉

〈 龍 馬   暗殺 の 瞬間 は 〉

〈 俺 が 知る より   もっと 早く に …〉

龍 馬 さん

気 を つけて ください   ホントに

お ッ   前 と は   あべこべじゃ

笑いごと じゃ ない んです

けん ど   先生 が おる が じゃ ろう

わしゃ 斬ら れて も 助かる が じゃ ろう

南方 仁 が おれば

坂本 龍 馬 は 死な ん !

そう じゃ ろう ?

〈 たとえ   歴史 の 時計 の 針 が 早く 進んだ と して も …〉

助け ます よ

俺 が   この 手 で

〈 そして   時 は 〉

〈 その 流れ を 変え 始めた のだ 〉

《 私 に は   先生 の 医術 が あり ます から 》

あ ちき に は   何も あり ん せ ん よ

先生

〈 極めて   残酷な 未来 へ と …〉


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