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JIN-仁-, JIN-仁- #02

( 仁 ) 坂本 …  龍 馬

《( 男 ) 戻る ぜ よ   あん 世界 へ 》

あの 患者 が …

ホントに あの 坂本 龍 馬 さん です か ?

( 龍 馬 )「 あの 」 か どう か は 分から ん けん ど   土佐 の 坂本 じゃ

あの   乙女 さん と いう 男 まさり の お 姉さん いらっしゃい ます か ?

お まん   どう いて   そな いな こと 知 っち ょる が ぜ よ

いや …

ほ いたら   お まん も 土佐 かい !?

いや …

あ ッ   夢 で

夢 で 見た んです

夢 で   あなた の 声 を 聞いて 江戸 に 来た んです

夢 ?

でも …  勘違い だった みたいです

すいません   お 忙しい ところ

先生 !

名 は ?

これ も   何 か の 縁 じゃき   ね ッ

南方 仁 と いい ます

南方 先生

コロリ が   再び ?

洪 庵 殿 の 記さ れた コロリ の 治療 法

「 虎 狼 痢治 準 」 を 増刷 し 江戸 の 蘭 方 医 たち に 配り

各所 で 治療 に あたら せて は いかが かな ?

《( 佐分利 ) その 医者 私 の 経験 でも →》

《 見た こと ない ような こと ばっかり やり よる んです わ 》

龍 馬 って   確か

暗殺 さ れる んだ よ な

もし   あの 男 が 坂本 龍 馬 だった と したら

暗殺 さ れ ず に  2009 年 に タイム スリップ して きて

なぜ か   その 龍 馬 の 代わり に 俺 が   こっち に 来た

じゃあ   俺 が 坂本 龍 馬 ?

でも   坂本 龍 馬 は いた よ なあ

考えて も   戻れ ない んだ よ なあ

≪( 志士 A ) 今 の 幕府 は 腰抜け じゃ !→

夷 てき に   いい ように 振り回さ れ うち はらう こと すら でき ぬ

( 志士 B ) 異国 に こそ 見習う べきだ と

しっぽ を 振る 奴 ら まで 出て きた と いう で は ない か

( 志士 C ) 天 誅 じゃ   天 誅 !

( 志士 A ) 土佐 から 来た 坂本 殿 と やら

先ほど から 難しい 顔 を さ れて おる が

おんし ら   この 国 を 守る 守る っ ちゅうけん ど

一体   どう やって 守る つもりな のじゃ ?

刀 で に 決まって おろう 刀 を 抜く 前 に

船 から 大砲 を 撃た れて しまい じゃ ろ

天 誅 ちゅう た ところ で   奸物 を よ

一人一人   斬って いった ところ で

一体   何 年 かかる と 思う ち ょる が じゃ

どうも   おんし ら の 言う こと は うまく いく ように は 思 えんぜよ

貴 様   我ら を 愚 ろうする か ッ

≪( 志士 D ) 君 の 意見 も 一理 ある →

だが   天 誅 は 有効だ と 私 は 思う

将 を 失った 軍 は なぜ か 壊滅 する もの だ →

我ら が 今回   狙う は 軍艦 奉行 並   勝 麟太郎 だ が

一 人 は   この 稲葉 くん が 行って くれる   もう 一 人 は 誰 か …

私 が … ワシ が 行く ぜ よ

先ほど まで   天 誅 は ムダ だ と … 気 が 変わった

是非   ワシ が 行く ぜ よ

≪( 浪人 A ) 女 を 売り   このうえ 国 まで 売る か   売 国 奴 め !

( 彦三郎 ) 助けて くれ … 覚悟 !

お ーーーーッ ! おい   まずい ぞ   おんし ら

今   そこ に おかっ引き が おった ぜ よ

わしゃ   土佐 脱 藩 の 坂本 ち 言う が

脱 藩 !?  さすれば … 同志 じゃ

ここ で 事 を 起こしたら 成る もん も なら ん

( 浪人 B ) かたじけない   おい !

あ ッ …

今 の は   ホラ じゃ

≪( 彦三郎 ) 恥ずかし ながら   ここ が 私 の 店 で ございまして

お 礼 と 申して は なんで ございます が

ひと つ   憂 さ でも 晴らして いって ください ませ

どんな 女 郎 が   お好み で ? ワシ か ?

( 咲 ) おはよう ございます   先生

おはよう ございます シッ

どうした ん です か ?  咲 さ ん

あの  「 消毒 」 なる もの は 煮る こと や

焼酎 に 浸す こと と 理解 すれば よろしゅう ございます か ?

具体 的に は そう です が   本来 は その 作用 の こと を 言い ます

毒 を 消す こと です で は   布 や 金づち に

毒 が ついて いた と いう こと で ございます か ?

毒 と いう か   物 の 表面 に は 目 に 見え ない 小さな 生き物

細菌 と いう もの が くっついて る んです

さいきん   なる もの が

どうした ん です か ?  急に

先生 の お 手伝い を

先生 の 知識 が   もっと たくさんの 人 に 広まれば

もっと   たくさんの 方 を 治す こと が できる

と いう こと で は ございませ ぬ か

咲 は   少し でも その お 手伝い が し たく

煮たり   焼酎 を かけたり する と

なぜ 細菌 は 死ぬ ので ございます か ?

先生 ?

いや   そこ から 先 忘れちゃ った なあ

( 栄 ) 咲 や   何 を して いる んです ?

何でも ございませ ぬ

すぐ   朝げ の 支度 を

南方 様 は い

咲 を 医術 の 道 に 巻き込む の は ご 容赦 いただき たく 存じます

咲 に は   ごく 普通の 娘 と して

幸せに なって ほしい ので ございます

もちろん です   そんな つもり は まったく あり ませ ん から

さ ようで ございます か で は   もう 一 つ

頭 を   お 剃 り に なって は いかがでしょう ?

は ッ ? お 医者 様 と いえば

坊主 か   総 髪 で ございます

総 髪 に は   御 髪 の 長 さ が 足り ぬ ように   お 見受け いたし ます ので

坊主 が よろしい か と 存じ ます 私 は   これ で …

お 言葉 で は ございます が

そのような 頭 は ゴロツキ に しか 見え ませ ぬ

折よく   恭 太郎 が 髪 を 結って おり ます ゆえ

ああ …  えっ と …

考え とき ます んで   今度   是非

《( 未来 ) なんて った っけ チョウ の 羽ばたき が さ 》

《 地球 の 裏側 で 台風 を 引き起こす って いう 話 》

《 ああ   バタフライ   エフェクト ?》 《 それ だ 》

《 運命 も   そういう もの かも ね 》

《 もし   A さん が 石 を けら なかったら 》

《 B さん は   病気 に は   なら なかった かも しれ ない   みたいな 》

《 どうした の ?  急に 》

《 私さ   脳 に 腫瘍 が できた みたいな んだ 》

〈 俺 が   ここ で 医療 行為 を 続ける こと は 〉

〈 歴史 を 変えて しまう こと に なる かも しれ ない 〉

〈 死ぬ はずだった 誰 か を 生かす と いう こと は 〉

〈 その 人 の 運命 を 変える こと だ 〉

〈 それ は   もし かして 生きる はずだった 〉

〈 どこ か の 誰 か を 〉

〈 殺して いる と いう こと な の かも しれ ない 〉

〈 俺 の 一 歩 さえ   回り 回って 〉

〈 誰 か の 運命 を 変えて しまう の かも しれ ない 〉

〈 俺 は   本当 は   今   この 場 で 〉

〈 消えて しまう べき な の かも しれ ない 〉

〈 それ が   でき ない なら   せめて …〉

おい   大変だ ! どうした ?

両 国 で   コロリ が コロリ が   また ?

浅草 でも 出た って 聞いた ぞ

〈 息 を ひそめ 〉

〈 できる だけ 目立た ぬ よう に 生きる べきだ 〉

〈 いつか   戻れる …〉

〈 その 日 まで 〉

〈 そうだ よ な   未来 〉

≪( 男 ) コロリ だ !

♪♪~

緒方   洪 庵 先生

確か   有名な   お 医者 さま

( 山田 ) 緒方 先生 は   大阪 で 適 塾 と いう 蘭学 塾 を 開か れ

その 門弟 は 400 人 を 超え さらに は   全国 に 天然痘 の 予防 策

種痘 を 定着 さ せた お方 で あら れる と 同時に

上 様 を 診 られる 奥 医師 で 西洋 医学 所 の 頭取 で …

やめて ください

江戸 の 蘭 方 医 なる 者 が 先生 の 名 を ご 存じ ない と は

おかしな こと で ございます 真に   信用 できる 者 か どう か

( 橘 ) 南方 先生 は   事故 で   少々 記憶 を 失って おら れる のです

記憶 が ない ?

( 佐分利 ) でも   私 の 見た とこ 医術 は 忘れて はり ませ ん でした よ

見事な 手 さばき で … やめ なさい

お ぬし は   一 見たら 百 言う から のう

やめ なさい と 言う てる の が 聞こえ ませ ん か

お 見苦しい ところ を

当 家 へ は   どのような ご 用向き で ?

コロリ の 治療 法 を   ご 教授 願 いたく   ま かり こし ました

コレラ の !?

いや …  コロリ のです か ?

この 夏 は   麻 疹 が 流行 し

江戸 の 幾 千 の 民 が この 病 に 倒れ ました

それ に 重ねて 今度 は コロリ →

このまま で は   江戸 の 町 は 死 の 町 に なって しまい ます

この 者 より   先生 は 見た こと も ない 医術 を

身 に つけて おら れる と 聞き ました

何とぞ   我々 に   コロリ の 治療 法 を   ご 教授 願 いたく

あの … 私 から も   お 頼み 申し上げ ます

私 は 4 年 前 に コロリ で 父 を 亡くし ました

いう なれば   コロリ は 父 の 敵 で ございます

先生   何とぞ   コロリ 征伐 に 力 を お 貸し いただき たく 存じます

やめて ください   あの …

あの …

私 は   コロリ を 知ら ない んです

( 洪 庵 ) ご 存じ ない

4 年 前 に も はやった や ないで す か

確か   江戸 だけ でも 10万 人 以上 の 死者 が 出て

いや   知ら ない と いう か

そのへん の 記憶 が なくて

≪( 洪 庵 ) 何でも   かまわ ん のです

治療 の 助け に なる ような こと が あれば

思い出して いただけ ませ ん か ?

国 の ため   道 の ため

何とぞ   ご 教授 を

すいません

何 を して いる のです か ?

母上

コロリ が   また はやって いる と いう お 話 で

たとえ   そう であった と して も

間違っても 余計な 手出し は せ ぬ よう

はい

≪( 千葉 ) 人 を 斬る の は 気 が 重い か ?

重う な ん ぞ ある かえ

勝 っ ちゅう が は   日 ノ 本 を 売り渡す   奸物 が じゃ ろう

わしゃ   行く ぜ よ

この 国 の ため じゃき

ねえ なあ   ホルマリン

( 喜市 ) 仁 先生 !

仁 先生 !

喜市

はい   枝豆 おう   ありがとう

今日   往診 来る んじゃ なかった の か よ ?

ああ   お っ 母さん の 傷 どんな 具合 だ ?

めまい と か   ふらつき と か ない よ

じゃあ   もう 大丈夫だ

そんな こと 言わ ないで さ ねえ   ちょっと 来て くれよ →

ね ~ え →

ねえ   来て って ば

( 茜 ) 今 評判 の 黒 米 いなり 黒 米 いなり だ よ

あ ッ   旦那 今日 いら ない の かい ?

出て きて   大丈夫な んです か ?

母 は   コロリ 退散 の お参り に 行き ました ので

そう です か   コロリ の はい

どうかした んです か ? あまり 近寄ら れて は

一緒に 歩いて いる こと に なり ます ので

は あ ?

お 武家 の お姫様 は 男 と 一緒に 歩いたら ダメな んだ よ

あ ッ   そういう こと か

先生 って   変わって る よ なあ 頭 も 変だ し

あれ は ? 棺おけ だ よ

先生   コロリ は どう やって 治す んだ ?

先生 も 知ら ない んだ よ   それ は

( タエ ) すずり箱 です 大した もの じゃ ない んです が

お 父 っつ ぁん の 形見 な んだ 余計な こと 言わ ない の

こんな 大切な もの … 先生 に 使って いただけたら

死んだ 亭主 も   喜ぶ と 思う んです

では   大切に 使わ して いただき ます

( 女 ) タエ さん   水 くん できた よ

ありがとう ございます ちょっと   すみません

先生 さ   お っ 母さん の こと どう 思う ?

うち の お っ 母さん   美人 だ ろ

喜市 !

どうした の !?  喜市 先生   喜市 が …

コロリ   で は ございませ ぬ か

コロリ …

コ   コロリ …  コロリ が 出た ー !

コロリ !  コロリ が

喜市   喜市 !  先生 どう したら いい んです か !?→

先生 !

申し訳 あり ませ ん 治し 方 を 知ら ない んです

この 病 は   私 に は 治せ ない

帰り ましょう

咲 さ ん !

私 の 父 も 4 年 前 コロリ に かかり ました

父 は 亡くなり ました けど 生き残った 方 も ございます

希望 を なくして は なり ませ ぬ

やめて ください   咲 さ ん

そんな やり 方 じゃ   うつり ます

やめ なさい !

うつる …

これ は   うつる 病 な ので ございます ね

どうして   知ら ぬ ふり など なさった のです か ッ

知っていて も   やって は いけない こと が ある んです

越えて は いけない 一線 が ある んです

私 は   誰 か を 助けたり して は …

医者 が 人 を 助けて は なら ぬ 道理 と は

どのような もの で ございます か !?

罪 も ない 子供 を 見殺し に せ ねば なら ぬ 道理 と は

いかなる もの に ございます か !?

コロリ と は

コレラ 菌 と いう 細菌 に よって 引き起こさ れる 病気 です

体 の 中 に 入った コレラ 菌 が 下痢 や   おう吐 を 引き起こし

必要な 水分 を 失わ せ

人 を 死に 至ら しめ ます

コレラ が 出 ました !

コレラ 菌 は   生 の 水 や   生 の 食物

患者 の 便 や   吐いた もの の 中 に いて

口 を 通じて 体 の 中 に 入り込み ます

ですから   大切な こと は 菌 が 広がら ない ように

患者 を 囲い 込む こと

それ から   生水 や   生 の 食べ物 を 絶対 に 口 に せ ず

必ず   火 を 通して から 食べる こと

それ から   汚染 さ れた もの は 徹底 的に 消毒 する こと です

コレラ 菌 って の が 悪 さ して ん の か ?

そい つ を   やっつければ いい の か ? そうです

それ さえ 守れば   いたずらに 恐れる こと は あり ませ ん

皆さん   それぞれ が   予防 …

コレラ を   コレラ を 倒す 方法 を 心がける こと で

コレラ を 早く やっつける こと が できる んです

みんな で 力 を あわせる って こと だ

ご 協力 の ほど   お 願い し ます

では   まず   喜市 ちゃん を 囲い込み この 部屋 と 私 達 を

消毒 し なければ なら ない と いう こと です ね ?

どなた か   焼酎 あり ませ ん か ? ある よ   うち に   持って くん ね

お 願い し ます   できる だけ 濃度 の 濃い   キツイ やつで

それ から   皆さん   石灰   お 持ち の 方 いらっしゃい ませ ん か ?

いし ばいか ?  持ってくる よ お 願い し ます

消毒 と やら が 終わり ました

では   ここ から 出て 行って ください

出た ところ で 着物 を   もう 一 度   着替えて

今   着替えた 着物 と 一緒に すぐに 焼いて

灰 は 土 の 中 に 埋めて ください は い

咲 さん も 出て 行って ください 私 は   ここ で

火 は …

火打ち石 が   ここ に ありがとう ございます

私 が

先生   皆さん が   塩 と 砂糖 持ってきて ください ました

これ で   何 を なさる んです か ?

塩 と 砂糖 を 水 に 溶かして ORS と いう 液体 を 作り ます

オーアルエス ?

それ が   喜市 くん を 救う 薬 と なる はずです

塩 と 砂糖 で 治る んです か ? 下痢 や   おう吐 に よって 失わ れた

水分 や ミネラル を 補う んです

塩 と 砂糖 は どの くらい の 塩 梅 で …

咲 さ ん   出て 行って ください と 言った はずです が

先 に 火 を お つけ した ほう が …

お 父さん だけ で なく あなた まで   コレラ で 失ったら …

お 母さん の 気持ち も 少し は 考えて みて ください

火 を お 願い し ます ≪( タエ ) はい   火種 もらって き ます

スポーツドリンク って こんな もんか

( 荒い 息遣い )

《( 夫 ) 恭 太郎 と 咲 を   頼んだ ぞ 》

《 父上 !  父上 !》

南方 先生 と 一緒だった ので は ない の か ?

母上 に は 言わ ぬ 隠さ ず と も よい

戻れ と 言わ れた ので ございます

コロリ が   うつる から と

コロリ ?

先生 は   今   本所 の 長屋 で

コロリ の 治療 に

しかし   先生 は   知ら ぬ と

事情 が お あり だった ようで ございます

では   せめて 皆 の ため に 祈ろう

祈って も

届か なかった で は ないで す か

父上 は   骨 と 皮 に なり

死んで しまった で は ないで す か !

どこ へ 行く のです か ?

コロリ と 闘い に 行く ので ございます

咲 は   悔しい のです !

コロリ と 闘って いる 方 たち が いる のに

ただ   ここ で 祈る だけ な の が

私 に も できる こと が … 勘当 し ます よ

父上 は   ケガ を して いる 子 が あれば 我が 子 の ように 抱き上げ

送って やる ような 方 だった で は ございませ ぬ か !

もし   父上 が 生きて いらっしゃれば

やはり   こう さ れた ので は ない でしょう か ?

行ったら   最後 !  この 家 の 敷居 は またが せ ませ ん よ

咲 は   亡き 父上 の 代わり に 闘い に 行く ので ございます !

我が身 のみ の 安全 を はかり

固く 引きこもる こと が 家 を 守る こと で は ございませ ぬ

コロリ に 打ち勝つ 技 を 身 に つける こと こそ

真に   家 を 守る こと で は ございませ ぬ か

ずるい 言い 方 で ございます ね

母上   羽織 と 袴 を

妹 が 女 の 身 で 闘い に 行く と いう のに

兄 である 私 が   黙って 見て いる わけに は いきま せ ぬ

取り替え ます

塩 と 砂糖   どん ぐらい だ っけ ?

水 1 升 に 対して 塩 が 2 匁 に   砂糖 が 10 匁 だって

先生   でき ました !

ありがとう ございます そこ に 置 い と いて ください

喜市 の 様子 は どう な んでしょう か ?  中 に …

ORS を 作る こと が 助ける こと に なり ます

そういうふうに 考えて いただけ ませ ん か

分かり ました

あの   どなた か !  どなた か いらっしゃい ませ ぬ か !?

どうか なさ い ました か ? 緒方 先生 !

もう 一 度   南方 先生 の お 話 を お 聞き いただけ ませ ぬ か ?

先生 は   今   コロリ の 治療 に 一 人 で あたって おいで です

なんとか   お 力添え を お 頼み 申し上げ ます !

南方 と か いう 医者 は   今朝 ほど

コロリ は 知ら ぬ と 申して いた で は ない か

それ は …  事情 が

駕籠 を 呼んで ください 緒方 先生

一 分 の 可能 性 が ある の なら

医術 を 志す 者 は 行く べきです

ありがとう ございます !

そう だ   えらい ぞ   喜市

≪ おい !

勝 は   ここ を 通る が じゃき

登 城 した 日 に は 必ず   ここ を 通って 戻る

勝 を 斬ったら   ざん 首 じゃ ろ に ゃあ

来た !

勝 先生 !

勝 麟太郎   天 誅 !

貴 様 …

すま ん   わしゃ   どうも 目 が 悪う て のう

大丈夫 か え ? さっさと 斬り かかれ !

おう   勝 !  か   か   か …

すま ん   ワシ は 緊張 したら 屁 が 出る が じゃ

お ぬし   さては   わざと やって おる ので は ない か

ご   誤解 じゃき 裏切り者 め   覚悟 !

ああ …

ど いた が ぜ ?

なん じゃ   お ぬし も 屁 こき …

あら ッ   屁 どころ か   汁 が 出 ちる

( 勝 ) おそらく   コロリ だ よ エーッ !

そりゃ   えらい こと じゃ しっかり せんかい

夷臭 の しみついた 男 が

南蛮 渡来 の コロリ に 救わ れる た あ   できた 話さ

なあ   橘 くん

はい

おい   どこ か ええ 医者 は おら ん かい ?

今 は   ただ の 病人 じゃ !

本所 相生 町 の 長屋 で 南方 と いう 先生 が

コロリ の 治療 に あたって いる そうだ

南方 先生 が ? 知って おる の か ?

誰 か 知ら ん けん ど 恩 に 着る ぜ よ

さて   そっち の 用件 は 何 だい ?

効か ねえ んだ よ   こんな 薬 よ ! 下痢 は 止ま ん ねえ しよ お

つらい の は 分かり ます が 段々   よく なり ます から

あ ッ   ああ …

きった ねえ な おい   さっさと 掃除 しろ よ

少し 待って て ください !

( 喜市 が   おう吐 して いる )

喜市   大丈夫 か ?

うまく 吐けた …

おい ら の 手

じいちゃん の 手 みたい

体 の 中 の 水 が 外 に 出ちゃ って る んだ

だから   これ 飲む んだ よ な

ここ で   おい ら が 死んだら

先生   損する ね

え ッ ?

お っ 母さん の 手術 の 枝豆

一生   届ける って 言った のに

おい ら   数えた んだ よ

枝豆 は  1 房 5 文 だ ろ

お 礼 は  2 両 くらい かなって

勘定 得意な   八百屋 の 玄 さん に 教えて もらって

毎日  5 房   届けた と して

520 日   届け なきゃ いけない んだ

枝豆 は  1 年 に   ふた 月 ぐらい しか とれ ない から

きっと   おい ら が 20 くらい まで 生き ない と

先生 は   損する んだ よ

そう だ よ   喜市

だから   頑張れ !

喜市 !

〈 不思議な もん だ な   未来 〉

〈 今日 の 朝 まで   誰 の 運命 も 変え たく ない と 願った 俺 が 〉

〈 今 は   この 子 の 運命 を   なんとか 変えて やり たい と 思って る 〉

今   ヘタ だった ね …

《 仁 先生 !》

〈 いつ 以来 だろう 〉

〈 こんなに も   誰 か を 〉

〈 誰 か を 〉

〈 心 の 底 から 助け たい と 思った の は 〉

喜市   神様 は な

乗り越え られる 試練 しか 与え ない んだ よ

だから   一緒に 頑張ろう

≪( 咲 ) 南方 先生 !

咲 さ ん

先生   お 一 人 で は 限界 が ある か と

患者 さん の ため に も   その ほう が よかれ と 思った ので ございます

余計な こと かも しれ ませ ん が … ありがとう

ありがとう ございます

緒方 先生 お 願い が ある のです が …

まず   コロリ の 治療 法 に ついて 聞か して もらえ ます か ?

話 は   それ から に して いただけ ます か

コロリ は   コレラ 菌 と いう 微 生物 に よって

引き起こさ れる 伝染 病 です

急速に 脱水 した 患者 は   虚 脱 状態

全身 に 力 が 入ら ない ように なり 皮膚 は 弾力 を 失い

目 は おち くぼみ   ほお は こけ

脈拍 は 微弱 と なり やがて は   死 に 至り ます

して   その 治療 法 は ? 水 を 失う の が 原因 です から

その 水分 を 補給 すれば いい んです ≪( 山田 ) 水 を 飲ま せる の か ?

た わけた こと を !

ただ の 水 で は あり ませ ん 一定 の 割合 で

塩 と 砂糖 を 加えた 経口 輸液 ORS と いう もの です

オーアールエス ?

我々 の 体 の 中 に ある 水 と ちかい 状態 に した 水 です

それ に よって 水 が 吸収 さ れ やすく なり ます

これ を   根 気強く 患者 に 与え 続ける んです

それ だけ か ? 今 は できる の は   それ だけ です

それ で   コレラ 菌 っ ちゅう の 殺す こと が できる んで っか ?

殺す こと は でき ませ ん   です が そう やって 持ちこたえる こと で

コレラ 菌 が 自然に 排出 さ れる まで 乗り切る こと が できる んです

≪( 山田 ) そんな こと で   コロリ が 治る わけ が なかろう →

モスト に よる と   アヘン や キニイネ を 飲ま せたり

患者 の 皮膚 を 摩擦 したり 風呂 に 入れ   発汗 さ せたり

手 を かけ ねば なら ぬ と さ れて いる 「 虎 狼 痢治 準 」 に も 書か れて ある

その 治療 は   おそらく 有効で は ない と 思い ます

お ぬし !  この 「 虎 狼 痢治 準 」 は 緒方 先生 が   西洋 の 書物 を →

翻訳 し まとめ られた もの である ぞ !

すいません

でも … 承知 して ます

「 虎 狼 痢治 準 」 で は   治り ませ ん

しかし   私 は   また

あなた を 信じる こと も でき ませ ん なぜなら   あなた は

助けて ください と いう 申し出 に 対し   私 に 嘘 を つかれ ました

それ は   つまり   病 で 苦しむ 人 を 見放した ゆう こと です

たとえ   あなた に どんな 事情 が ある に せよ

でも   あなた の 論旨 は   明かいです

私 は   あなた を 信じ たい

では …

信じる ため に   一 つ だけ 教えて もらえ ます か ?

あなた は   その 知識 を

どこ で 学ば れ ました ?

それ は …

思い出せ ませ ん か ?

≪( 患者 ) おい   じいさん 死んだ んじゃ ない か !?

おい   死んだ の か ?

はい

見ろ !  やはり でまかせで は ない か ッ

残念です

待って ください !

私 の 力 不足 で 患者 を 死な せて しまい ました

これ 以上   犠牲 者 を 出し たく ない んです

その ため に も 私 に 力 を 貸して ください !

お 願い し ます   先生 !

先生 が 追いかけて こ ない の は

コロリ 菌 を 外 へ 出す の を 少し でも 防ぐ ため です

これ こそ   先生 の 言葉 が   真実だ と いう 証拠 で は ございませ ぬ か ?

行き ましょう   せ ん …

ぶ え ~ ッ !

コロリ だ !

( 悲鳴 )

( 八木 ) 大丈夫 か !?  山田 殿

( 横 松 ) 何 を やって おる のだ

( 八木 ) お ぬし こそ 手 を 離した で は ない か

なん じゃ   お まん ら ひ っど い 友人 じゃ のう

肩 くらい 貸して や ったら よかろう が

≪( 横 松 ) 吐いた もの から うつる こと も ある と …

ちゅうこ と は よ あの 先生 の 言う こと を

まんざら 嘘 で も ない と 思う ち ょる ゆうこ とかい ?

≪( 横 松 ) だ から って 信じて る わけで は ない

どっち に しろ 患者 を 触れ へん 医者 が

どう いて コロリ を 治す が か わしゃ   まったく 分から ん きのう

やっ ちょ れ   やっ ちょ れ

頼む ぜ よ   南方 先生

はい

龍 馬 さん ここ で 消毒 して って ください

大丈夫じゃ ダメです

焼酎 で 手 や 首 を 洗って その 着物 も 脱いで って ください

南方 先生

南方 先生

山田 を   お 願い し ます

どうか   助けて やって ください

国 の ため   道 の ため

はい !



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Apprendre les langues en ligne @LingQ

( 仁 ) 坂本 …  龍 馬

《( 男 ) 戻る ぜ よ   あん 世界 へ 》

あの 患者 が …

ホントに あの 坂本 龍 馬 さん です か ?

( 龍 馬 )「 あの 」 か どう か は 分から ん けん ど   土佐 の 坂本 じゃ

あの   乙女 さん と いう 男 まさり の お 姉さん いらっしゃい ます か ?

お まん   どう いて   そな いな こと 知 っち ょる が ぜ よ

いや …

ほ いたら   お まん も 土佐 かい !?

いや …

あ ッ   夢 で

夢 で 見た んです

夢 で   あなた の 声 を 聞いて 江戸 に 来た んです

夢 ?

でも …  勘違い だった みたいです

すいません   お 忙しい ところ

先生 !

名 は ?

これ も   何 か の 縁 じゃき   ね ッ

南方 仁 と いい ます

南方 先生

コロリ が   再び ?

洪 庵 殿 の 記さ れた コロリ の 治療 法

「 虎 狼 痢治 準 」 を 増刷 し 江戸 の 蘭 方 医 たち に 配り

各所 で 治療 に あたら せて は いかが かな ?

《( 佐分利 ) その 医者 私 の 経験 でも →》

《 見た こと ない ような こと ばっかり やり よる んです わ 》

龍 馬 って   確か

暗殺 さ れる んだ よ な

もし   あの 男 が 坂本 龍 馬 だった と したら

暗殺 さ れ ず に  2009 年 に タイム スリップ して きて

なぜ か   その 龍 馬 の 代わり に 俺 が   こっち に 来た

じゃあ   俺 が 坂本 龍 馬 ?

でも   坂本 龍 馬 は いた よ なあ

考えて も   戻れ ない んだ よ なあ

≪( 志士 A ) 今 の 幕府 は 腰抜け じゃ !→

夷 てき に   いい ように 振り回さ れ うち はらう こと すら でき ぬ

( 志士 B ) 異国 に こそ 見習う べきだ と

しっぽ を 振る 奴 ら まで 出て きた と いう で は ない か

( 志士 C ) 天 誅 じゃ   天 誅 !

( 志士 A ) 土佐 から 来た 坂本 殿 と やら

先ほど から 難しい 顔 を さ れて おる が

おんし ら   この 国 を 守る 守る っ ちゅうけん ど

一体   どう やって 守る つもりな のじゃ ?

刀 で に 決まって おろう 刀 を 抜く 前 に

船 から 大砲 を 撃た れて しまい じゃ ろ

天 誅 ちゅう た ところ で   奸物 を よ

一人一人   斬って いった ところ で

一体   何 年 かかる と 思う ち ょる が じゃ

どうも   おんし ら の 言う こと は うまく いく ように は 思 えんぜよ

貴 様   我ら を 愚 ろうする か ッ

≪( 志士 D ) 君 の 意見 も 一理 ある →

だが   天 誅 は 有効だ と 私 は 思う

将 を 失った 軍 は なぜ か 壊滅 する もの だ →

我ら が 今回   狙う は 軍艦 奉行 並   勝 麟太郎 だ が

一 人 は   この 稲葉 くん が 行って くれる   もう 一 人 は 誰 か …

私 が … ワシ が 行く ぜ よ

先ほど まで   天 誅 は ムダ だ と … 気 が 変わった

是非   ワシ が 行く ぜ よ

≪( 浪人 A ) 女 を 売り   このうえ 国 まで 売る か   売 国 奴 め !

( 彦三郎 ) 助けて くれ … 覚悟 !

お ーーーーッ ! おい   まずい ぞ   おんし ら

今   そこ に おかっ引き が おった ぜ よ

わしゃ   土佐 脱 藩 の 坂本 ち 言う が

脱 藩 !?  さすれば … 同志 じゃ

ここ で 事 を 起こしたら 成る もん も なら ん

( 浪人 B ) かたじけない   おい !

あ ッ …

今 の は   ホラ じゃ

≪( 彦三郎 ) 恥ずかし ながら   ここ が 私 の 店 で ございまして

お 礼 と 申して は なんで ございます が

ひと つ   憂 さ でも 晴らして いって ください ませ

どんな 女 郎 が   お好み で ? ワシ か ?

( 咲 ) おはよう ございます   先生

おはよう ございます シッ

どうした ん です か ?  咲 さ ん

あの  「 消毒 」 なる もの は 煮る こと や

焼酎 に 浸す こと と 理解 すれば よろしゅう ございます か ?

具体 的に は そう です が   本来 は その 作用 の こと を 言い ます

毒 を 消す こと です で は   布 や 金づち に

毒 が ついて いた と いう こと で ございます か ?

毒 と いう か   物 の 表面 に は 目 に 見え ない 小さな 生き物

細菌 と いう もの が くっついて る んです

さいきん   なる もの が

どうした ん です か ?  急に

先生 の お 手伝い を

先生 の 知識 が   もっと たくさんの 人 に 広まれば

もっと   たくさんの 方 を 治す こと が できる

と いう こと で は ございませ ぬ か

咲 は   少し でも その お 手伝い が し たく

煮たり   焼酎 を かけたり する と

なぜ 細菌 は 死ぬ ので ございます か ?

先生 ?

いや   そこ から 先 忘れちゃ った なあ

( 栄 ) 咲 や   何 を して いる んです ?

何でも ございませ ぬ

すぐ   朝げ の 支度 を

南方 様 は い

咲 を 医術 の 道 に 巻き込む の は ご 容赦 いただき たく 存じます

咲 に は   ごく 普通の 娘 と して

幸せに なって ほしい ので ございます

もちろん です   そんな つもり は まったく あり ませ ん から

さ ようで ございます か で は   もう 一 つ

頭 を   お 剃 り に なって は いかがでしょう ?

は ッ ? お 医者 様 と いえば

坊主 か   総 髪 で ございます

総 髪 に は   御 髪 の 長 さ が 足り ぬ ように   お 見受け いたし ます ので

坊主 が よろしい か と 存じ ます 私 は   これ で …

お 言葉 で は ございます が

そのような 頭 は ゴロツキ に しか 見え ませ ぬ

折よく   恭 太郎 が 髪 を 結って おり ます ゆえ

ああ …  えっ と …

考え とき ます んで   今度   是非

《( 未来 ) なんて った っけ チョウ の 羽ばたき が さ 》

《 地球 の 裏側 で 台風 を 引き起こす って いう 話 》

《 ああ   バタフライ   エフェクト ?》 《 それ だ 》

《 運命 も   そういう もの かも ね 》

《 もし   A さん が 石 を けら なかったら 》

《 B さん は   病気 に は   なら なかった かも しれ ない   みたいな 》

《 どうした の ?  急に 》

《 私さ   脳 に 腫瘍 が できた みたいな んだ 》

〈 俺 が   ここ で 医療 行為 を 続ける こと は 〉

〈 歴史 を 変えて しまう こと に なる かも しれ ない 〉

〈 死ぬ はずだった 誰 か を 生かす と いう こと は 〉

〈 その 人 の 運命 を 変える こと だ 〉

〈 それ は   もし かして 生きる はずだった 〉

〈 どこ か の 誰 か を 〉

〈 殺して いる と いう こと な の かも しれ ない 〉

〈 俺 の 一 歩 さえ   回り 回って 〉

〈 誰 か の 運命 を 変えて しまう の かも しれ ない 〉

〈 俺 は   本当 は   今   この 場 で 〉

〈 消えて しまう べき な の かも しれ ない 〉

〈 それ が   でき ない なら   せめて …〉

おい   大変だ ! どうした ?

両 国 で   コロリ が コロリ が   また ?

浅草 でも 出た って 聞いた ぞ

〈 息 を ひそめ 〉

〈 できる だけ 目立た ぬ よう に 生きる べきだ 〉

〈 いつか   戻れる …〉

〈 その 日 まで 〉

〈 そうだ よ な   未来 〉

≪( 男 ) コロリ だ !

♪♪~

緒方   洪 庵 先生

確か   有名な   お 医者 さま

( 山田 ) 緒方 先生 は   大阪 で 適 塾 と いう 蘭学 塾 を 開か れ

その 門弟 は 400 人 を 超え さらに は   全国 に 天然痘 の 予防 策

種痘 を 定着 さ せた お方 で あら れる と 同時に

上 様 を 診 られる 奥 医師 で 西洋 医学 所 の 頭取 で …

やめて ください

江戸 の 蘭 方 医 なる 者 が 先生 の 名 を ご 存じ ない と は

おかしな こと で ございます 真に   信用 できる 者 か どう か

( 橘 ) 南方 先生 は   事故 で   少々 記憶 を 失って おら れる のです

記憶 が ない ?

( 佐分利 ) でも   私 の 見た とこ 医術 は 忘れて はり ませ ん でした よ

見事な 手 さばき で … やめ なさい

お ぬし は   一 見たら 百 言う から のう

やめ なさい と 言う てる の が 聞こえ ませ ん か

お 見苦しい ところ を

当 家 へ は   どのような ご 用向き で ?

コロリ の 治療 法 を   ご 教授 願 いたく   ま かり こし ました

コレラ の !?

いや …  コロリ のです か ?

この 夏 は   麻 疹 が 流行 し

江戸 の 幾 千 の 民 が この 病 に 倒れ ました

それ に 重ねて 今度 は コロリ →

このまま で は   江戸 の 町 は 死 の 町 に なって しまい ます

この 者 より   先生 は 見た こと も ない 医術 を

身 に つけて おら れる と 聞き ました

何とぞ   我々 に   コロリ の 治療 法 を   ご 教授 願 いたく

あの … 私 から も   お 頼み 申し上げ ます

私 は 4 年 前 に コロリ で 父 を 亡くし ました

いう なれば   コロリ は 父 の 敵 で ございます

先生   何とぞ   コロリ 征伐 に 力 を お 貸し いただき たく 存じます

やめて ください   あの …

あの …

私 は   コロリ を 知ら ない んです

( 洪 庵 ) ご 存じ ない

4 年 前 に も はやった や ないで す か

確か   江戸 だけ でも 10万 人 以上 の 死者 が 出て

いや   知ら ない と いう か

そのへん の 記憶 が なくて

≪( 洪 庵 ) 何でも   かまわ ん のです

治療 の 助け に なる ような こと が あれば

思い出して いただけ ませ ん か ?

国 の ため   道 の ため

何とぞ   ご 教授 を

すいません

何 を して いる のです か ?

母上

コロリ が   また はやって いる と いう お 話 で

たとえ   そう であった と して も

間違っても 余計な 手出し は せ ぬ よう

はい

≪( 千葉 ) 人 を 斬る の は 気 が 重い か ?

重う な ん ぞ ある かえ

勝 っ ちゅう が は   日 ノ 本 を 売り渡す   奸物 が じゃ ろう

わしゃ   行く ぜ よ

この 国 の ため じゃき

ねえ なあ   ホルマリン

( 喜市 ) 仁 先生 !

仁 先生 !

喜市

はい   枝豆 おう   ありがとう

今日   往診 来る んじゃ なかった の か よ ?

ああ   お っ 母さん の 傷 どんな 具合 だ ?

めまい と か   ふらつき と か ない よ

じゃあ   もう 大丈夫だ

そんな こと 言わ ないで さ ねえ   ちょっと 来て くれよ →

ね ~ え →

ねえ   来て って ば

( 茜 ) 今 評判 の 黒 米 いなり 黒 米 いなり だ よ

あ ッ   旦那 今日 いら ない の かい ?

出て きて   大丈夫な んです か ?

母 は   コロリ 退散 の お参り に 行き ました ので

そう です か   コロリ の はい

どうかした んです か ? あまり 近寄ら れて は

一緒に 歩いて いる こと に なり ます ので

は あ ?

お 武家 の お姫様 は 男 と 一緒に 歩いたら ダメな んだ よ

あ ッ   そういう こと か

先生 って   変わって る よ なあ 頭 も 変だ し

あれ は ? 棺おけ だ よ

先生   コロリ は どう やって 治す んだ ?

先生 も 知ら ない んだ よ   それ は

( タエ ) すずり箱 です 大した もの じゃ ない んです が

お 父 っつ ぁん の 形見 な んだ 余計な こと 言わ ない の

こんな 大切な もの … 先生 に 使って いただけたら

死んだ 亭主 も   喜ぶ と 思う んです

では   大切に 使わ して いただき ます

( 女 ) タエ さん   水 くん できた よ

ありがとう ございます ちょっと   すみません

先生 さ   お っ 母さん の こと どう 思う ?

うち の お っ 母さん   美人 だ ろ

喜市 !

どうした の !?  喜市 先生   喜市 が …

コロリ   で は ございませ ぬ か

コロリ …

コ   コロリ …  コロリ が 出た ー !

コロリ !  コロリ が

喜市   喜市 !  先生 どう したら いい んです か !?→

先生 !

申し訳 あり ませ ん 治し 方 を 知ら ない んです

この 病 は   私 に は 治せ ない

帰り ましょう

咲 さ ん !

私 の 父 も 4 年 前 コロリ に かかり ました

父 は 亡くなり ました けど 生き残った 方 も ございます

希望 を なくして は なり ませ ぬ

やめて ください   咲 さ ん

そんな やり 方 じゃ   うつり ます

やめ なさい !

うつる …

これ は   うつる 病 な ので ございます ね

どうして   知ら ぬ ふり など なさった のです か ッ

知っていて も   やって は いけない こと が ある んです

越えて は いけない 一線 が ある んです

私 は   誰 か を 助けたり して は …

医者 が 人 を 助けて は なら ぬ 道理 と は

どのような もの で ございます か !?

罪 も ない 子供 を 見殺し に せ ねば なら ぬ 道理 と は

いかなる もの に ございます か !?

コロリ と は

コレラ 菌 と いう 細菌 に よって 引き起こさ れる 病気 です

体 の 中 に 入った コレラ 菌 が 下痢 や   おう吐 を 引き起こし

必要な 水分 を 失わ せ

人 を 死に 至ら しめ ます

コレラ が 出 ました !

コレラ 菌 は   生 の 水 や   生 の 食物

患者 の 便 や   吐いた もの の 中 に いて

口 を 通じて 体 の 中 に 入り込み ます

ですから   大切な こと は 菌 が 広がら ない ように

患者 を 囲い 込む こと

それ から   生水 や   生 の 食べ物 を 絶対 に 口 に せ ず

必ず   火 を 通して から 食べる こと

それ から   汚染 さ れた もの は 徹底 的に 消毒 する こと です

コレラ 菌 って の が 悪 さ して ん の か ?

そい つ を   やっつければ いい の か ? そうです

それ さえ 守れば   いたずらに 恐れる こと は あり ませ ん

皆さん   それぞれ が   予防 …

コレラ を   コレラ を 倒す 方法 を 心がける こと で

コレラ を 早く やっつける こと が できる んです

みんな で 力 を あわせる って こと だ

ご 協力 の ほど   お 願い し ます

では   まず   喜市 ちゃん を 囲い込み この 部屋 と 私 達 を

消毒 し なければ なら ない と いう こと です ね ?

どなた か   焼酎 あり ませ ん か ? ある よ   うち に   持って くん ね

お 願い し ます   できる だけ 濃度 の 濃い   キツイ やつで

それ から   皆さん   石灰   お 持ち の 方 いらっしゃい ませ ん か ?

いし ばいか ?  持ってくる よ お 願い し ます

消毒 と やら が 終わり ました

では   ここ から 出て 行って ください

出た ところ で 着物 を   もう 一 度   着替えて

今   着替えた 着物 と 一緒に すぐに 焼いて

灰 は 土 の 中 に 埋めて ください は い

咲 さん も 出て 行って ください 私 は   ここ で

火 は …

火打ち石 が   ここ に ありがとう ございます

私 が

先生   皆さん が   塩 と 砂糖 持ってきて ください ました

これ で   何 を なさる んです か ?

塩 と 砂糖 を 水 に 溶かして ORS と いう 液体 を 作り ます

オーアルエス ?

それ が   喜市 くん を 救う 薬 と なる はずです

塩 と 砂糖 で 治る んです か ? 下痢 や   おう吐 に よって 失わ れた

水分 や ミネラル を 補う んです

塩 と 砂糖 は どの くらい の 塩 梅 で …

咲 さ ん   出て 行って ください と 言った はずです が

先 に 火 を お つけ した ほう が …

お 父さん だけ で なく あなた まで   コレラ で 失ったら …

お 母さん の 気持ち も 少し は 考えて みて ください

火 を お 願い し ます ≪( タエ ) はい   火種 もらって き ます

スポーツドリンク って こんな もんか

( 荒い 息遣い )

《( 夫 ) 恭 太郎 と 咲 を   頼んだ ぞ 》

《 父上 !  父上 !》

南方 先生 と 一緒だった ので は ない の か ?

母上 に は 言わ ぬ 隠さ ず と も よい

戻れ と 言わ れた ので ございます

コロリ が   うつる から と

コロリ ?

先生 は   今   本所 の 長屋 で

コロリ の 治療 に

しかし   先生 は   知ら ぬ と

事情 が お あり だった ようで ございます

では   せめて 皆 の ため に 祈ろう

祈って も

届か なかった で は ないで す か

父上 は   骨 と 皮 に なり

死んで しまった で は ないで す か !

どこ へ 行く のです か ?

コロリ と 闘い に 行く ので ございます

咲 は   悔しい のです !

コロリ と 闘って いる 方 たち が いる のに

ただ   ここ で 祈る だけ な の が

私 に も できる こと が … 勘当 し ます よ

父上 は   ケガ を して いる 子 が あれば 我が 子 の ように 抱き上げ

送って やる ような 方 だった で は ございませ ぬ か !

もし   父上 が 生きて いらっしゃれば

やはり   こう さ れた ので は ない でしょう か ?

行ったら   最後 !  この 家 の 敷居 は またが せ ませ ん よ

咲 は   亡き 父上 の 代わり に 闘い に 行く ので ございます !

我が身 のみ の 安全 を はかり

固く 引きこもる こと が 家 を 守る こと で は ございませ ぬ

コロリ に 打ち勝つ 技 を 身 に つける こと こそ

真に   家 を 守る こと で は ございませ ぬ か

ずるい 言い 方 で ございます ね

母上   羽織 と 袴 を

妹 が 女 の 身 で 闘い に 行く と いう のに

兄 である 私 が   黙って 見て いる わけに は いきま せ ぬ

取り替え ます

塩 と 砂糖   どん ぐらい だ っけ ?

水 1 升 に 対して 塩 が 2 匁 に   砂糖 が 10 匁 だって

先生   でき ました !

ありがとう ございます そこ に 置 い と いて ください

喜市 の 様子 は どう な んでしょう か ?  中 に …

ORS を 作る こと が 助ける こと に なり ます

そういうふうに 考えて いただけ ませ ん か

分かり ました

あの   どなた か !  どなた か いらっしゃい ませ ぬ か !?

どうか なさ い ました か ? 緒方 先生 !

もう 一 度   南方 先生 の お 話 を お 聞き いただけ ませ ぬ か ?

先生 は   今   コロリ の 治療 に 一 人 で あたって おいで です

なんとか   お 力添え を お 頼み 申し上げ ます !

南方 と か いう 医者 は   今朝 ほど

コロリ は 知ら ぬ と 申して いた で は ない か

それ は …  事情 が

駕籠 を 呼んで ください 緒方 先生

一 分 の 可能 性 が ある の なら

医術 を 志す 者 は 行く べきです

ありがとう ございます !

そう だ   えらい ぞ   喜市

≪ おい !

勝 は   ここ を 通る が じゃき

登 城 した 日 に は 必ず   ここ を 通って 戻る

勝 を 斬ったら   ざん 首 じゃ ろ に ゃあ

来た !

勝 先生 !

勝 麟太郎   天 誅 !

貴 様 …

すま ん   わしゃ   どうも 目 が 悪う て のう

大丈夫 か え ? さっさと 斬り かかれ !

おう   勝 !  か   か   か …

すま ん   ワシ は 緊張 したら 屁 が 出る が じゃ

お ぬし   さては   わざと やって おる ので は ない か

ご   誤解 じゃき 裏切り者 め   覚悟 !

ああ …

ど いた が ぜ ?

なん じゃ   お ぬし も 屁 こき …

あら ッ   屁 どころ か   汁 が 出 ちる

( 勝 ) おそらく   コロリ だ よ エーッ !

そりゃ   えらい こと じゃ しっかり せんかい

夷臭 の しみついた 男 が

南蛮 渡来 の コロリ に 救わ れる た あ   できた 話さ

なあ   橘 くん

はい

おい   どこ か ええ 医者 は おら ん かい ?

今 は   ただ の 病人 じゃ !

本所 相生 町 の 長屋 で 南方 と いう 先生 が

コロリ の 治療 に あたって いる そうだ

南方 先生 が ? 知って おる の か ?

誰 か 知ら ん けん ど 恩 に 着る ぜ よ

さて   そっち の 用件 は 何 だい ?

効か ねえ んだ よ   こんな 薬 よ ! 下痢 は 止ま ん ねえ しよ お

つらい の は 分かり ます が 段々   よく なり ます から

あ ッ   ああ …

きった ねえ な おい   さっさと 掃除 しろ よ

少し 待って て ください !

( 喜市 が   おう吐 して いる )

喜市   大丈夫 か ?

うまく 吐けた …

おい ら の 手

じいちゃん の 手 みたい

体 の 中 の 水 が 外 に 出ちゃ って る んだ

だから   これ 飲む んだ よ な

ここ で   おい ら が 死んだら

先生   損する ね

え ッ ?

お っ 母さん の 手術 の 枝豆

一生   届ける って 言った のに

おい ら   数えた んだ よ

枝豆 は  1 房 5 文 だ ろ

お 礼 は  2 両 くらい かなって

勘定 得意な   八百屋 の 玄 さん に 教えて もらって

毎日  5 房   届けた と して

520 日   届け なきゃ いけない んだ

枝豆 は  1 年 に   ふた 月 ぐらい しか とれ ない から

きっと   おい ら が 20 くらい まで 生き ない と

先生 は   損する んだ よ

そう だ よ   喜市

だから   頑張れ !

喜市 !

〈 不思議な もん だ な   未来 〉

〈 今日 の 朝 まで   誰 の 運命 も 変え たく ない と 願った 俺 が 〉

〈 今 は   この 子 の 運命 を   なんとか 変えて やり たい と 思って る 〉

今   ヘタ だった ね …

《 仁 先生 !》

〈 いつ 以来 だろう 〉

〈 こんなに も   誰 か を 〉

〈 誰 か を 〉

〈 心 の 底 から 助け たい と 思った の は 〉

喜市   神様 は な

乗り越え られる 試練 しか 与え ない んだ よ

だから   一緒に 頑張ろう

≪( 咲 ) 南方 先生 !

咲 さ ん

先生   お 一 人 で は 限界 が ある か と

患者 さん の ため に も   その ほう が よかれ と 思った ので ございます

余計な こと かも しれ ませ ん が … ありがとう

ありがとう ございます

緒方 先生 お 願い が ある のです が …

まず   コロリ の 治療 法 に ついて 聞か して もらえ ます か ?

話 は   それ から に して いただけ ます か

コロリ は   コレラ 菌 と いう 微 生物 に よって

引き起こさ れる 伝染 病 です

急速に 脱水 した 患者 は   虚 脱 状態

全身 に 力 が 入ら ない ように なり 皮膚 は 弾力 を 失い

目 は おち くぼみ   ほお は こけ

脈拍 は 微弱 と なり やがて は   死 に 至り ます

して   その 治療 法 は ? 水 を 失う の が 原因 です から

その 水分 を 補給 すれば いい んです ≪( 山田 ) 水 を 飲ま せる の か ?

た わけた こと を !

ただ の 水 で は あり ませ ん 一定 の 割合 で

塩 と 砂糖 を 加えた 経口 輸液 ORS と いう もの です

オーアールエス ?

我々 の 体 の 中 に ある 水 と ちかい 状態 に した 水 です

それ に よって 水 が 吸収 さ れ やすく なり ます

これ を   根 気強く 患者 に 与え 続ける んです

それ だけ か ? 今 は できる の は   それ だけ です

それ で   コレラ 菌 っ ちゅう の 殺す こと が できる んで っか ?

殺す こと は でき ませ ん   です が そう やって 持ちこたえる こと で

コレラ 菌 が 自然に 排出 さ れる まで 乗り切る こと が できる んです

≪( 山田 ) そんな こと で   コロリ が 治る わけ が なかろう →

モスト に よる と   アヘン や キニイネ を 飲ま せたり

患者 の 皮膚 を 摩擦 したり 風呂 に 入れ   発汗 さ せたり

手 を かけ ねば なら ぬ と さ れて いる 「 虎 狼 痢治 準 」 に も 書か れて ある

その 治療 は   おそらく 有効で は ない と 思い ます

お ぬし !  この 「 虎 狼 痢治 準 」 は 緒方 先生 が   西洋 の 書物 を →

翻訳 し まとめ られた もの である ぞ !

すいません

でも … 承知 して ます

「 虎 狼 痢治 準 」 で は   治り ませ ん

しかし   私 は   また

あなた を 信じる こと も でき ませ ん なぜなら   あなた は

助けて ください と いう 申し出 に 対し   私 に 嘘 を つかれ ました

それ は   つまり   病 で 苦しむ 人 を 見放した ゆう こと です

たとえ   あなた に どんな 事情 が ある に せよ

でも   あなた の 論旨 は   明かいです

私 は   あなた を 信じ たい

では …

信じる ため に   一 つ だけ 教えて もらえ ます か ?

あなた は   その 知識 を

どこ で 学ば れ ました ?

それ は …

思い出せ ませ ん か ?

≪( 患者 ) おい   じいさん 死んだ んじゃ ない か !?

おい   死んだ の か ?

はい

見ろ !  やはり でまかせで は ない か ッ

残念です

待って ください !

私 の 力 不足 で 患者 を 死な せて しまい ました

これ 以上   犠牲 者 を 出し たく ない んです

その ため に も 私 に 力 を 貸して ください !

お 願い し ます   先生 !

先生 が 追いかけて こ ない の は

コロリ 菌 を 外 へ 出す の を 少し でも 防ぐ ため です

これ こそ   先生 の 言葉 が   真実だ と いう 証拠 で は ございませ ぬ か ?

行き ましょう   せ ん …

ぶ え ~ ッ !

コロリ だ !

( 悲鳴 )

( 八木 ) 大丈夫 か !?  山田 殿

( 横 松 ) 何 を やって おる のだ

( 八木 ) お ぬし こそ 手 を 離した で は ない か

なん じゃ   お まん ら ひ っど い 友人 じゃ のう

肩 くらい 貸して や ったら よかろう が

≪( 横 松 ) 吐いた もの から うつる こと も ある と …

ちゅうこ と は よ あの 先生 の 言う こと を

まんざら 嘘 で も ない と 思う ち ょる ゆうこ とかい ?

≪( 横 松 ) だ から って 信じて る わけで は ない

どっち に しろ 患者 を 触れ へん 医者 が

どう いて コロリ を 治す が か わしゃ   まったく 分から ん きのう

やっ ちょ れ   やっ ちょ れ

頼む ぜ よ   南方 先生

はい

龍 馬 さん ここ で 消毒 して って ください

大丈夫じゃ ダメです

焼酎 で 手 や 首 を 洗って その 着物 も 脱いで って ください

南方 先生

南方 先生

山田 を   お 願い し ます

どうか   助けて やって ください

国 の ため   道 の ため

はい !


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