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中村Radio, 朗読 原稿 【第 11回 】壊れた とき が スタート

朗読 原稿 【第 11回 】壊れた とき が スタート

【 第 11 回 】 壊れた とき が スタート ラジオ でも 鞄 でも 、 自転車 でも 同じです 。 この世 に 存在 する もの で 、 壊れ ない もの は ありません 。 「 もう さんざん 使った し 、 新しい もの を 買った ほう が 安上がり 」 と いう の が 世 の 流れ かも しれません 。 捨てる こと は 簡単 です し 、 誰 も 文句 を 言いません 。 それ でも 僕 は 、 壊れた もの を 修理 して 使う ほう が 好きです 。 もの は 壊れる と いう 大 前提 が ある から 、 そこ が スタート だ と 思います 。 処分 したり 新品 と 交換 する ので は なく 絶対 に 直そう と 決め 、 手 を かけて 修繕 する こと で 、 ようやく 自分 の もの に なって いく 気 が する のです 。 人 と の つきあい も これ と 同じです 。 ぶつかり合って 摩擦 が おき 、 壊れたり ひび が 入った とき が スタート だ と 思って います 。 なごやかに して いる だけ の かかわり など 、 浅い もの です 。 トラブル が 生じ 、 気持ち を むき出しに して 傷つけ あい 、 これ まで の つきあい が 壊れた とき 、 初めて その 人 と の 関係 が 始まる のです 。 人 の 気持ち は もの より 壊れ やすくて 、 何 回 でも 壊れます 。 その たび に 僕たち は 、 分かれ 道 に 立つ こと に なります 。 いさかい から 逃げ出し 、 この 人 と の 関係 を 捨てて しまおう か 。 それとも 、 ひるむ こと なく 正面 から 向き合い 、 懸命に 丹念に 関係 を 修繕 しよう と する の か ——。 僕 は いつも 後者 を 選びます 。 それ は もの を 直す の と 同じく 、 いや 、 はるかに タフな 試練 で は あります 。 体裁 の よい 顔 を かなぐり捨て 、 言いにくい こと も 恥ずかしい こと も 言葉 に し 、 ときに は 子ども みたいに 泣き ながら その 人 と 向き合う 。 これ は 生半可な 気持ち で は できません 。 それ でも 傷 や ほころび が ていねいに 直さ れた とき 、 きっと 関係 は 一 段 と 深く 、 豊かな もの に なって いる はずです 。 おだやかで 満ちたりた 気分 が 味わえる はずです 。 豊か さ と は 目 に 見える もの で は なく 、 そこ に 隠さ れた 物語 だ と 思います 。 たとえば 十 年 も 修理 を 繰り返して 履いて いる 靴 は 、 僕 に とって ただ の 靴 では ありません 。 最初に かかと が 磨り 減った 旅 の 思い出 、 数 年 後 に つま先 の 縫い目 が ほころびた とき の 出来事 、 その たび ていねいに 縫い 直して くれた 職人 さん の 心 、 そんな あれ や これ や が 詰まった 宝物 です 。 誰 に も 話 は し ない けれど 、 自分 だけ の 物語 が 宿れば 、 どんなに 高価な 新品 より も 価値 が ある ので は ない でしょう か 。 人 と の かかわり も 、「 あんな こと も あった けれど 、 自分 たち は 乗り越えて きた な 」 と 思いだせる 出来事 が あれば ある ほど 、 豊かに なります 。 恋人 時代 から 一 度 も 喧嘩 を せ ず 連れ添って いる 夫婦 が いたら 、 なんだか さびしい し 、 不思議な 気 が する の は 僕 だけ でしょう か 。 もの は 経 年 劣化 で 磨 り 減る こと も あります が 、 人 と の つきあい の 場合 、 馴れ合い に なって 摩擦 が 起き ない こと の ほう が 危険 です 。 壊れる こと が 大 前提 だ と 思えば 、 真 正面 から 相手 に ぶつかって いく こと も できます 。 大勢 で は なくて も 、 そんな 相手 が 何 人 か いれば 、 豊かな 人生 と なる はずです 。 松浦 弥太郎 『 今日 も ていねいに 。


朗読 原稿 【第 11回 】壊れた とき が スタート ろうどく|げんこう|だい|かい|こぼれた|||すたーと Manuskript lesen [Bd. 11] Wenn es kaputt ist, ist der Anfang Read aloud manuscript [11th] When it breaks, it starts 阅读手稿 [第 11 卷] 当它破碎时就是开始

【 第 11 回 】 壊れた とき が スタート ラジオ でも 鞄 でも 、 自転車 でも 同じです 。 だい|かい|こぼれた|||すたーと|らじお||かばん||じてんしゃ||おなじです [11th] When it breaks, it's the same whether it's a radio, a bag, or a bicycle. この世 に 存在 する もの で 、 壊れ ない もの は ありません 。 このよ||そんざい||||こぼれ||||あり ませ ん There is nothing in the world that does not break. 「 もう さんざん 使った し 、 新しい もの を 買った ほう が 安上がり 」 と いう の が 世 の 流れ かも しれません 。 ||つかった||あたらしい|||かった|||やすあがり|||||よ||ながれ||しれ ませ ん It may be the trend of the world to say, "I've used it a lot and it's cheaper to buy a new one." 捨てる こと は 簡単 です し 、 誰 も 文句 を 言いません 。 すてる|||かんたん|||だれ||もんく||いい ませ ん It's easy to throw away and no one complains. それ でも 僕 は 、 壊れた もの を 修理 して 使う ほう が 好きです 。 ||ぼく||こぼれた|||しゅうり||つかう|||すきです Still, I prefer to repair and use broken ones. もの は 壊れる と いう 大 前提 が ある から 、 そこ が スタート だ と 思います 。 ||こぼれる|||だい|ぜんてい||||||すたーと|||おもい ます Since there is a major premise that things will break, I think that is the start. 処分 したり 新品 と 交換 する ので は なく 絶対 に 直そう と 決め 、 手 を かけて 修繕 する こと で 、 ようやく 自分 の もの に なって いく 気 が する のです 。 しょぶん||しんぴん||こうかん|||||ぜったい||なおそう||きめ|て|||しゅうぜん|||||じぶん||||||き||| Instead of disposing of it or replacing it with a new one, I decided to fix it absolutely, and by repairing it by hand, I feel that it will finally become my own. 人 と の つきあい も これ と 同じです 。 じん|||||||おなじです Relationships with people are the same. ぶつかり合って 摩擦 が おき 、 壊れたり ひび が 入った とき が スタート だ と 思って います 。 ぶつかりあって|まさつ|||こぼれたり|||はいった|||すたーと|||おもって|い ます なごやかに して いる だけ の かかわり など 、 浅い もの です 。 |||||||あさい|| トラブル が 生じ 、 気持ち を むき出しに して 傷つけ あい 、 これ まで の つきあい が 壊れた とき 、 初めて その 人 と の 関係 が 始まる のです 。 とらぶる||しょうじ|きもち||むきだしに||きずつけ|||||||こぼれた||はじめて||じん|||かんけい||はじまる| It is only when problems arise, when feelings are exposed and hurt each other, when the relationship is broken, that a relationship can begin. 人 の 気持ち は もの より 壊れ やすくて 、 何 回 でも 壊れます 。 じん||きもち||||こぼれ||なん|かい||こぼれ ます People's feelings are more fragile than things, and they break many times. その たび に 僕たち は 、 分かれ 道 に 立つ こと に なります 。 |||ぼくたち||わかれ|どう||たつ|||なり ます Each time we are at a fork. いさかい から 逃げ出し 、 この 人 と の 関係 を 捨てて しまおう か 。 ||にげだし||じん|||かんけい||すてて|| それとも 、 ひるむ こと なく 正面 から 向き合い 、 懸命に 丹念に 関係 を 修繕 しよう と する の か ——。 ||||しょうめん||むきあい|けんめいに|たんねんに|かんけい||しゅうぜん||||| 僕 は いつも 後者 を 選びます 。 ぼく|||こうしゃ||えらび ます I always choose the latter. それ は もの を 直す の と 同じく 、 いや 、 はるかに タフな 試練 で は あります 。 ||||なおす|||おなじく|||たふな|しれん|||あり ます It is just as, if not tougher, an ordeal than fixing things. 体裁 の よい 顔 を かなぐり捨て 、 言いにくい こと も 恥ずかしい こと も 言葉 に し 、 ときに は 子ども みたいに 泣き ながら その 人 と 向き合う 。 ていさい|||かお||かなぐりすて|いいにくい|||はずかしい|||ことば|||||こども||なき|||じん||むきあう Throw away a good-looking face, put words that are difficult to say and embarrassing, and sometimes face the person while crying like a child. これ は 生半可な 気持ち で は できません 。 ||なまはんかな|きもち|||でき ませ ん This cannot be done half-heartedly. それ でも 傷 や ほころび が ていねいに 直さ れた とき 、 きっと 関係 は 一 段 と 深く 、 豊かな もの に なって いる はずです 。 ||きず|||||なおさ||||かんけい||ひと|だん||ふかく|ゆたかな||||| Nevertheless, when the scratches and cracks are carefully repaired, the relationship must be deeper and richer. おだやかで 満ちたりた 気分 が 味わえる はずです 。 |みちたりた|きぶん||あじわえる| You should feel calm and full. 豊か さ と は 目 に 見える もの で は なく 、 そこ に 隠さ れた 物語 だ と 思います 。 ゆたか||||め||みえる|||||||かくさ||ものがたり|||おもい ます たとえば 十 年 も 修理 を 繰り返して 履いて いる 靴 は 、 僕 に とって ただ の 靴 では ありません 。 |じゅう|とし||しゅうり||くりかえして|はいて||くつ||ぼく|||||くつ||あり ませ ん For example, shoes that have been repaired for ten years are not just shoes for me. 最初に かかと が 磨り 減った 旅 の 思い出 、 数 年 後 に つま先 の 縫い目 が ほころびた とき の 出来事 、 その たび ていねいに 縫い 直して くれた 職人 さん の 心 、 そんな あれ や これ や が 詰まった 宝物 です 。 さいしょに|||みがく り|へった|たび||おもいで|すう|とし|あと||つまさき||ぬいめ|||||できごと||||ぬい|なおして||しょくにん|||こころ|||||||つまった|たからもの| The memories of the first trip when the heel was worn down, the incidents when the stitching on the toe came undone several years later, the heart of the craftsman who sewed it back on every time with great care, these are the treasures that are filled with such things. 誰 に も 話 は し ない けれど 、 自分 だけ の 物語 が 宿れば 、 どんなに 高価な 新品 より も 価値 が ある ので は ない でしょう か 。 だれ|||はなし|||||じぶん|||ものがたり||やどれば||こうかな|しんぴん|||かち||||||| If it has a story of its own that you never tell anyone, it may be worth more than any expensive new item. 人 と の かかわり も 、「 あんな こと も あった けれど 、 自分 たち は 乗り越えて きた な 」 と 思いだせる 出来事 が あれば ある ほど 、 豊かに なります 。 じん||||||||||じぶん|||のりこえて||||おもいだせる|できごと|||||ゆたかに|なり ます 恋人 時代 から 一 度 も 喧嘩 を せ ず 連れ添って いる 夫婦 が いたら 、 なんだか さびしい し 、 不思議な 気 が する の は 僕 だけ でしょう か 。 こいびと|じだい||ひと|たび||けんか||||つれそって||ふうふ||||||ふしぎな|き|||||ぼく||| Am I the only one who would miss a couple who have been together without a single quarrel since they were lovers? もの は 経 年 劣化 で 磨 り 減る こと も あります が 、 人 と の つきあい の 場合 、 馴れ合い に なって 摩擦 が 起き ない こと の ほう が 危険 です 。 ||へ|とし|れっか||みがく||へる|||あり ます||じん|||||ばあい|なれあい|||まさつ||おき||||||きけん| Things can wear out over time, but the danger in human relationships is that we become accustomed to each other and there is no friction. 壊れる こと が 大 前提 だ と 思えば 、 真 正面 から 相手 に ぶつかって いく こと も できます 。 こぼれる|||だい|ぜんてい|||おもえば|まこと|しょうめん||あいて||||||でき ます If you think breaking is a prerequisite, you can go at your opponent head-on. 大勢 で は なくて も 、 そんな 相手 が 何 人 か いれば 、 豊かな 人生 と なる はずです 。 おおぜい||||||あいて||なん|じん|||ゆたかな|じんせい||| Even if there aren't many, having a few such people should lead to a prosperous life. 松浦 弥太郎 『 今日 も ていねいに 。 まつうら|やたろう|きょう||