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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 014. 女仙 - 芥川 龍之介

014. 女仙 - 芥川 龍之介

昔 、 支那 の 或 ある 田舎 に 書生 が 一人 住んで いました 。 何しろ 支那 の こと です から 、桃 の 花 の 咲いた 窓 の 下 に 本 ばかり 読んで いた のでしょう 。 すると 、この 書生 の 家 の 隣 に 年 の 若い 女 が 一人 、――それ も 美しい 女 が 一人 、誰 も 使わず に 住んで いました 。 書生 は この 若い 女 を 不思議に 思って いた の は もちろん です 。 実際 また 彼女 の 身の上 を はじめ 、彼女 が 何 を して 暮らしている か は 誰一人 知る もの も なかった の です から 。

或風 の ない 春 の 日 の 暮 、書生 は ふと 外 へ 出て 見る と 、何か この 若い 女 の 罵っている 声 が 聞えました 。 それ は また どこ か の 庭 鳥 が のんびり と 鬨 を 作っている 中 に 、如何にも 物 も のしく 聞える のです 。 書生 は どうした の か と 思い ながら 、彼女 の 家 の 前 へ 行って 見ました 。 すると 眉 を 吊り上げた 彼女 は 、年 を とった 木樵り の 爺さん を 引き据え 、ぽかぽか 白髪 頭 を 擲っている のです 。 しかも 木 樵り の 爺さん は 顔 中 に 涙 を 流した まま 、平あやまり に あやまっている ではありませんか !

「これ は 一体 どうした の です ? 何も こういう 年より を 、擲らない でも 善い じゃありませんか ! ――」

書生 は 彼女 の 手 を 抑え 、熱心に たしなめ に かかりました 。

「第 一 年 上 の もの を 擲る と いう こと は 、修身 の 道 に も はずれている 訣 です 。」

「年上 の もの を ? この 木 樵り は わたし より も 年下 です 。」

「冗談 を 言って は いけません 。」

「いえ 、冗談 では ありません 。 わたし は この 木 樵り の 母親 です から 。」

書生 は 呆気 に とられた なり 、思わず 彼女 の 顔 を 見つめました 。 やっと 木 樵り を 突き離した 彼女 は 美しい 、―― という よりも 凜々しい 顔 に 血 の 色 を 通わせ 、目じろぎ も せずに こう 言う の です 。

「わたし は この 倅 の ため に 、どの 位 苦労 を した か わかりません 。 けれども 倅 は わたし の 言葉 を 聞か ず に 、我儘 ばかり して いました から 、とうとう 年 を とって しまった の です 。」

「では 、……この 木 樵り は もう 七十 位 でしょう 。 その また 木 樵 り の 母親 だ と いう あなた は 、一体 いくつ に なって いる の です ?

「わたし です か ? わたし は 三千六百 歳 です 。」

書生 は こういう 言葉 と 一しょに 、この 美しい 隣 の 女 が 仙人 だった こと に 気づきました 。 しかし もう その 時 に は 、何か 神々しい 彼女 の 姿 は 忽ち どこか へ 消えて しまいました 。 うらうら と 春 の 日 の 照り 渡った 中 に 木 樵り の 爺さん を 残した まま 。 ……

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