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屍鬼, Shiki Episode 13

( 恭子 ) ハハハハ ! 愉快 愉快 ! あなた の おかげ よ 。

( やす よ ) 安 森 工務 店 … ついに 徳次郎 さん 1 人 に なっちゃ っ た わ ね 。

( 敏夫 ) お前 は 村 が 死に 絶え て も いい の か ! ?

( 夏野 ) や つら ここ を →

起き上がり の 村 に する つもり な の かも しれ ない 。

( 辰巳 ) かおり 君 は 最近 結城 夏野 君 と 仲良し の よう で ね 。

( 恵 ) おじ さま も 気 を 付け て 。

《 このまま … N このまま 走って ゆけ ば … 》

《 だけど … まるで 手足 を なく し た か の よう だ 》

《 どこ も だるく て 力 が 入ら ない 》

朝 の 光 を 手放し た 花

注が れ ない 雨 を 求め

覚め ない 眠り に つく

誰 か を そっと 呼ぶ 声

闇 の 楽園 は

嘘 か 夢 か

失う の は 身体 と

自分 と いう 心

その 対価 を 差し出し

何 を 得 られる の だ ろ う

この 涙 で 奪え る 程 に

命 は 脆く て 儚く て

全て に 訪れる

終わり を

「 恐怖 」 と 嘆く の か

終演 を 歌う 金 盞花

静か に 咲き誇る

憎しみ も

悲しみ も

その 根 で た くり 寄せ て

終焉 を 歌う 金 盞花

寂し さ を 潤す

注が れ ない 雨 を 求め て

覚め ない 眠り に つく

( 静 信 ) 光男 さん 。 おはよう ございます 。

( 光男 ) おはよう ございます 若 御 院 。

( 静 信 ) 千 代 さん 。 おはよう ございます 。 →

いつも 早い です ね 。

( 静 信 ) 《 村 で は 信仰 が 生き て いる 》 →

《 寺 の 檀 家 数 は 多い 》 →

《 だが 田舎 の こと だ お布施 の 相場 は 知れ て いる 》 →

《 笑って 手 を 貸し て くれる 檀 家 衆 の 厚意 が なけ れ ば →

寺 は 本当 に 立ち行か ない 》

( 鶴見 ) おはよう ございます 。

( 池辺 ) おはよう ござい ま ー す 。

( 静 信 ) おはよう ございます 。 ( 光男 ) おはよう 。

( 静 信 ) 《 村 の 人々 は 徐々に 減って いる 》 →

《 けれど みんな は けさ も こう やって … 》 →

《 なのに 僕 は … 》

( ブザー )

( やす よ ) 次 の 人 どうぞ 。

うん ?

( 敏夫 ) やす よ さ ん 。 処置 室 へ ! ( やす よ ) あっ … 。 はい !

( 敏夫 ) 徳次郎 さん 。

あんた の 奥さん の 節子 さん 亡くなる 前 に →

奈緒 さん の 夢 を 見 た と 言って た よ 。

( 徳次郎 ) あぁ … 。 奈緒 ちゃん か ぁ … 。

わし も 見 た なぁ 。

《 やはり また 奈緒 さん か 》

そう か 。 気弱 に なっちゃ 駄目 だ よ 。

厚子 さん 。 ( 厚子 ) はい 。

徳次郎 さん に は 大事 を 取って 入院 し て もらった 方 が →

いい と 思う が ね 。 ( 徳次郎 ) 嫌 だ ! !

( 厚子 ) えっ ? ( 敏夫 ) 徳次郎 さん 。

入院 は ごめん だ 。 どこ に も 行か ん 。 仏壇 を 守ら なきゃ なら ん !

仏壇 だったら わたし が … 。

嫌 だ ! ! 入院 し て も 節子 は 助から なかった し →

仏壇 や 仕事 が ある から 家 を 空ける わけ に は いか ん 。

ほっと い て くれ ! !

《 まるで 暗記 し た せりふ を 棒読み し てる か の よう だ 》 →

《 奈緒 さん に そう 言う よう に 言い含め られ た の か 》

( 敏夫 ) 《 この 前 下 外 場 の 前田 勇 の 所 に 往診 し た とき も … 》

( 前田 ) 《 病院 に は 行か ん 》

( 元子 ) 《 主人 は 絶対 先生 を 呼ぶ なって 言った の です が →

うち は 父 も 似 た よう な 感じ で 亡くなった から 不安 で … 》

( 元子 ) 《 不安 で しかたがない の です 》

( 敏夫 ) 《 連中 は 俺 が 患者 を 入院 さ せ ない よう に →

そう 言わ せ 始め た の だ ろ う 。 どう し たら いい … ? 》

( ノック )

( 孝江 ) 敏夫 。 ( 敏夫 ) 母さん 。

( 孝江 ) 緊急 事態 です 。

恭子 さん が お 部屋 で 倒れ て いる の よ 。

( 美和子 ) 信明 さん ! ( 信明 ) 徳次郎 さん の 見舞い に 行く 。

( 静 信 ) 母さん ! !

お 父さん ! ?

お 見舞い に 行く の は 大変 だ から 電話 なさったら と 言ったら … 。

( 信明 ) 徳次郎 さん の 見舞い に 行く 。

( 美和子 ) は って でも 行く と 。

徳次郎 さん … 見舞い に … 。 ( 美和子 ) 信明 さん … 。 あぁ !

ご … 御 院 ! ( 静 信 ) どう なさった ん です ? 急に 。

( 信明 ) う ぅ … 。 どう と いう わけ じゃ ない 。 →

見舞い に … 行く ん だ ! 見舞い に !

恭子 ! !

《 チアノーゼ 呼吸 困難 … 。 やら れ た ! 》

( 孝江 ) ここ 2 ~ 3 日 呼 ん で も 出 て こ ない から →

外 から 入って み た の よ 。 窓 が 開 い て た から 。 そし たら … 。

母さん ! 武藤 さん たち を 呼べ ! あと 担架 !

な … ! 嫌 です よ わたし は ! ! なぜ そんな 病院 の 使用人 の よう な まね 。

早く しろ ! !

( 孝江 ) 貸し です から ね 恭子 さん !

( 敏夫 ) 《 そう いえ ば 最近 恭子 は 妙に おとなしかった 》 →

《 なぜ 連中 が 自分 たち を →

避け て 通って くれる など と 思った の だ ろ う 》 →

《 尾崎 の 家 も すでに 起き上がり に 開か れ た 家 だった ん だ 》

( やす よ ) 先生 。 若 御 院 から お 電話 です 。

静 信 … 。

《 あれ 以来 会って ない な 》

《 思え ば あの とき から 2 人 の 間 に 奇妙 な 溝 が 出来 た 気 が する 》

( やす よ ) お つなぎ し ます ね 。

( 静 信 ) 敏夫 。 ( 敏夫 ) よう 。

( 静 信 ) 今 やす よ さ ん から 聞い た ん だ けど 恭子 さん が … 。

( 敏夫 ) ああ 。 あれ だ 。 ( 静 信 ) 何という こと だ 。

( 静 信 ) 容体 は ? ( 敏夫 ) よく ない 。

《 敏夫 … 。 また 自分 を 責め て いる ん だ な 》

( 敏夫 ) 俺 たち も 例外 じゃ ない って こと だ 。 →

それ で 何 だ ? 用 が ある ん だ ろ ? ( 静 信 ) それ が … 。

父 が 徳次郎 さん の お 見舞い に 行き たい と 言って いる ん だ 。

( 静 信 ) 具合 が 悪い こと を 母 から 聞い た らしく て 。 →

それ で 見舞い に 伺って いい か と 安 森 家 に 電話 を し たら →

病院 に 行った と 聞い て 。 ( 敏夫 ) なるほど 。

だが 親父 さん と 徳次郎 さん そんなに 仲 良かった か ?

分から ない 。 でも 付き合い は 長い はず だ から ね 。

まあ 安 森 家 は 檀 家 を まとめる 四 家 の 1 つ だ し な 。

( 静 信 ) そうだ ね 。 奥さん の 節子 さん に は →

檀 家 の 女 衆 を まとめ て もらったり し て たから →

1 人 に なった 徳次郎 さん が 心配 な の かも しれ ない 。

( 敏夫 ) そう か 。 そろそろ 家 に 戻って る と 思う 。 →

電話 し て みろ よ 。 ( 静 信 ) ああ 。 →

敏夫 … 。 →

僕 は … 。

何 だ ?

いや 。 恭子 さん を 守る の を 手伝わ なく て 平気 かい ?

ああ 。 俺 が 何とか する 。

( 足音 )

急 い だ 方 が いい よ 。

父さん が 様子 を 見 に 来る かも しれ ない から 。

そこ まで 行って やり たい けど … N 起き られ ない ん だ 。

《 この 期 に 及んで も 俺 は 徹 ちゃん が 心変わり し て →

一緒 に 逃げ て くれる と 期待 し て いる 》

( 徹 ) ごめん な 。

いい ん だ 。

何となく 俺 →

この 村 から 出 られ ない そんな 気 が し て い た … 。

《 水 ? 》

《 いや 涙 だ 》

《 体温 の ない 吸 血 鬼 の 冷たい 涙 》

( 結城 ) 梓 ! おい 梓 ! ! こ に 行った ん だ ? ど

うん ?

( 梓 ) 「 夏野 くん が 死 ん で いる の を 見 まし た 」 →

「 もう こんな 村 に は い られ ない 」 →

「 あなた に も 村 に も 我慢 が でき ませ ん 」 →

「 さようなら 。 梓 」

梓 ! ! い ない の か ! ?

悪い 冗談 だ ぞ … 。

( 結城 ) あ … 。

( 結城 ) 何 だ … 。

何 だ これ は ああ ああ あ ! !

( 池辺 ) あっ 。 お は よ … 。

( 池辺 ) 鶴見 さん … ?

( 光男 ) 鶴見 君 顔色 が 悪かった から 帰ら せ た ん だ 。

昨日 は 元気 で し た のに 。

まさか 妙 な 病気 じゃ ねえ だ ろ う な 。

ちょ っ … 。 やめ て ください よ 光男 さん !

正直 言う と 俺 も 怖い ん です 。

何だか 大 変な こと が 起こって る 気 が し て … 。

でも 逃げよ う った って 村 で 生まれ育った から →

逃げる 場所 の 当て も ない し 。

おいおい 。 寺 が 逃げ たら 誰 が 村人 を 弔う ん だ ?

( 池辺 ) です よ ねぇ 。

あっ 。 そう いえ ば 新しい 葬儀 社 が 出来 た らしい です よ 。

葬儀 社 ! ?

( 池辺 ) ほら 上 外 場 の 広 兼 の 木工 所 。 →

最近 引っ越し て 空き家 だった でしょ ? →

あそこ に 出来 た って 。 やっぱり 死人 が 多い から です か ね 。 →

クリニック も 出来 た って いう し 。

は ぁ … 。 本気 で 逃げ たく なった 。 ( 光男 ) まったく 何て こった ! →

いくら 死人 が 多い から って 葬儀 社 が 出来る なんて ! ! →

村 に は 弔 組 が ある って の に ! これ だ から 外 の やつ ら は !

( 静 信 ) 厚子 さん 。 淳子 さん 。 すみません 突然 で 。

( 厚子 ) いえいえ こちら こそ わざわざ 御 院 に 来 て いた だい て 。

徳次郎 さん 。 お 見舞い に 伺い まし た 。 →

父 が どうして も と 言い まし て 。

そう … 。

( 信明 ) もう いい 。

《 2 人 と も 取り立てて 何 を 言う でも なかった 》

《 まるで 決別 の ため の よう な 面会 》

( 信明 ) 静 信 。 ( 静 信 ) はい 。

節子 さん や 幹 康 君 も あんな 様子 だった の か ?

( 静 信 ) はい 。

あれ が 村 に まん延 し て いる ?

( 静 信 ) な の だ と 思い ます 。 ( 信明 ) そう か 。

《 ひょっとして 父 は 何 か を 知って いる の か ? 》

《 いや まさか … 》

( 昭 ) チクショー 。 何で … 何で だ よ !

( ドア を たたく 音 )

( 昭 ) すい ませ ー ん ! お 父 さ ー ん ! 兄ちゃん の 具合 どう す か ー ?

( 昭 ) どうして 出 て こ ない ん だ よ ー !

( かおり ) 昭 。 そんなに たた い たら 迷惑 だ よ 。

しょうがない じゃ ん 。 出 て こ ない ん だ し 。

( ドア の 開く 音 )

( 昭 ) お 父さん … ! ?

今日 は 骨 なし テーブル で 小出 工房 は 大忙し だ 。

( 昭 ) えっ … ?

子供 用 は ない から 帰り なさい 。

あの … 。 夏野 さん は ! ? ( 村人 ) おいおい ! →

そっと し とい て あげ な よ 。

けさ その 家 の 前 に 霊きゅう車 が 止まって 棺 を 運 ん で い た よ 。 →

誰 か が 亡くなった ん だ ろ う 。

う ぅ … 。 やっぱり →

無理 に でも 外 で 見張って 兄ちゃん を 守れ ば よかった 。 →

そう すれ ば … 。

結城 さん の お 父さん 協力 し て くれる って … 。 →

やっと 分かって もらえ た のに … 。

( 昭 ) これ から どう なる ん だ ?

( かおり ) とにかく 戸締まり は きちんと しよ う よ 。 →

結城 さん も 言って た じゃ ない 。 →

決して 起き上がり を 家 の 中 に 入れ ちゃ いけない って 。

《 フッ 。 戸締まり なんか 無駄 な の に 》

( 戸 の 開閉 音 )

( かおり ) お 父さん か な 。

( 佐知子 ) まったく 休日 に 仕事 だ なんて 。

こんな 時間 に 食事 の 準備 なんか させ ない で よ 。

それ に 毎日 残業 だ 何 だって 言って 夜中 まで 帰って こ ない 。

役場 で 何 の 残業 な の よ ?

( 佐知子 ) どうせ 職場 の 人 と 飲み 歩 い てる ん でしょ !

お 母さん 。 わたし たち 寝る けど 窓 の 鍵 ちゃん と 締め た ?

( 佐知子 ) うるさい !

人 を 何と 思って る の ! ? 家政 婦 じゃ ない の よ ! !

ご … ごめんなさい 。

謝って くれ なく て 結構 ! もう 勝手 に すれ ば いい ん だ わ !

まったく 飲み 歩 い た 揚げ句 に 医者 通い なんて やめ て よ ね 。 →

冗談 じゃ ない わ ! →

あんた は 早く 寝 なさい ! ( かおり ) は ー い !

( 恵 の 鼻歌 )

( 恵 ) ウフフフ 。 気分 が いい わ ー 。

大 っ 嫌い な やつ を 苦しめる って 最高 !

( 心 電 計 の 心 停止 音 )

( 清美 ) ねえ 若 奥さん どう な の ? やす よ さ ん 見 た ん でしょ う ?

( やす よ ) うーん … 。 昨日 処置 に 立ち会った けど →

あれ は もう 後半 に 入って る わ ね 。 →

呼吸 不全 に 黄 疸 に →

DIC 播種 性 血管 内 凝固 症候 群 。 →

ああ なる と もう どうにも なら ない ん じゃ ない かしら 。 →

でも 何とか 自分 で 最期 を 引き延ばし て やり たい ん でしょ う 。

《 あと は 全部 俺 が やる 。 食事 も 着替え も 全部 》

《 みんな の 手 は 煩わ せ ない 》

… って 言って た わ よ 。

あの 人 も 人 の 子 だった の ねぇ 。 意外に 情 が ある じゃ ない の 。

そう いえ ば 律 ちゃん 。

工房 の 息子 と 仲良し な ん じゃ なかった っけ ?

( 律子 ) あぁ 何 度 か 話し た けど 。

( やす よ ) 工房 で 誰 か 亡くなった らしい の よ 。

亡くなった の が 奥さん か 息子 さん か は 分から ない けど →

葬儀 社 の 車 が 来 て た らし いわ よ 。

あっ 先生 。

あっ あの … 先生 。 誰 か 手伝い を 。

( 敏夫 ) いや 構わ なく て いい 。

気 に し ない で くれ 。

闇 に 紛れ て

息 を 殺す

闇 を まとって

ふっと 微笑む

気のせい さ

お前 など 誰 も 知る はず ない

月 だけ が

見つめ て いる

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て


( 恭子 ) ハハハハ ! 愉快 愉快 ! あなた の おかげ よ 。

( やす よ ) 安 森 工務 店 … ついに 徳次郎 さん 1 人 に なっちゃ っ た わ ね 。

( 敏夫 ) お前 は 村 が 死に 絶え て も いい の か ! ?

( 夏野 ) や つら ここ を →

起き上がり の 村 に する つもり な の かも しれ ない 。

( 辰巳 ) かおり 君 は 最近 結城 夏野 君 と 仲良し の よう で ね 。

( 恵 ) おじ さま も 気 を 付け て 。

《 このまま …\ N このまま 走って ゆけ ば … 》

《 だけど … まるで 手足 を なく し た か の よう だ 》

《 どこ も だるく て 力 が 入ら ない 》

朝 の 光 を 手放し た 花

注が れ ない 雨 を 求め

覚め ない 眠り に つく

誰 か を そっと 呼ぶ 声

闇 の 楽園 は

嘘 か 夢 か

失う の は 身体 と

自分 と いう 心

その 対価 を 差し出し

何 を 得 られる の だ ろ う

この 涙 で 奪え る 程 に

命 は 脆く て 儚く て

全て に 訪れる

終わり を

「 恐怖 」 と 嘆く の か

終演 を 歌う 金 盞花

静か に 咲き誇る

憎しみ も

悲しみ も

その 根 で た くり 寄せ て

終焉 を 歌う 金 盞花

寂し さ を 潤す

注が れ ない 雨 を 求め て

覚め ない 眠り に つく

( 静 信 ) 光男 さん 。 おはよう ございます 。

( 光男 ) おはよう ございます 若 御 院 。

( 静 信 ) 千 代 さん 。 おはよう ございます 。 →

いつも 早い です ね 。

( 静 信 ) 《 村 で は 信仰 が 生き て いる 》 →

《 寺 の 檀 家 数 は 多い 》 →

《 だが 田舎 の こと だ お布施 の 相場 は 知れ て いる 》 →

《 笑って 手 を 貸し て くれる 檀 家 衆 の 厚意 が なけ れ ば →

寺 は 本当 に 立ち行か ない 》

( 鶴見 ) おはよう ございます 。

( 池辺 ) おはよう ござい ま ー す 。

( 静 信 ) おはよう ございます 。 ( 光男 ) おはよう 。

( 静 信 ) 《 村 の 人々 は 徐々に 減って いる 》 →

《 けれど みんな は けさ も こう やって … 》 →

《 なのに 僕 は … 》

( ブザー )

( やす よ ) 次 の 人 どうぞ 。

うん ?

( 敏夫 ) やす よ さ ん 。 処置 室 へ ! ( やす よ ) あっ … 。 はい !

( 敏夫 ) 徳次郎 さん 。

あんた の 奥さん の 節子 さん 亡くなる 前 に →

奈緒 さん の 夢 を 見 た と 言って た よ 。

( 徳次郎 ) あぁ … 。 奈緒 ちゃん か ぁ … 。

わし も 見 た なぁ 。

《 やはり また 奈緒 さん か 》

そう か 。 気弱 に なっちゃ 駄目 だ よ 。

厚子 さん 。 ( 厚子 ) はい 。

徳次郎 さん に は 大事 を 取って 入院 し て もらった 方 が →

いい と 思う が ね 。 ( 徳次郎 ) 嫌 だ ! !

( 厚子 ) えっ ? ( 敏夫 ) 徳次郎 さん 。

入院 は ごめん だ 。 どこ に も 行か ん 。 仏壇 を 守ら なきゃ なら ん !

仏壇 だったら わたし が … 。

嫌 だ ! ! 入院 し て も 節子 は 助から なかった し →

仏壇 や 仕事 が ある から 家 を 空ける わけ に は いか ん 。

ほっと い て くれ ! !

《 まるで 暗記 し た せりふ を 棒読み し てる か の よう だ 》 →

《 奈緒 さん に そう 言う よう に 言い含め られ た の か 》

( 敏夫 ) 《 この 前 下 外 場 の 前田 勇 の 所 に 往診 し た とき も … 》

( 前田 ) 《 病院 に は 行か ん 》

( 元子 ) 《 主人 は 絶対 先生 を 呼ぶ なって 言った の です が →

うち は 父 も 似 た よう な 感じ で 亡くなった から 不安 で … 》

( 元子 ) 《 不安 で しかたがない の です 》

( 敏夫 ) 《 連中 は 俺 が 患者 を 入院 さ せ ない よう に →

そう 言わ せ 始め た の だ ろ う 。 どう し たら いい … ? 》

( ノック )

( 孝江 ) 敏夫 。 ( 敏夫 ) 母さん 。

( 孝江 ) 緊急 事態 です 。

恭子 さん が お 部屋 で 倒れ て いる の よ 。

( 美和子 ) 信明 さん ! ( 信明 ) 徳次郎 さん の 見舞い に 行く 。

( 静 信 ) 母さん ! !

お 父さん ! ?

お 見舞い に 行く の は 大変 だ から 電話 なさったら と 言ったら … 。

( 信明 ) 徳次郎 さん の 見舞い に 行く 。

( 美和子 ) は って でも 行く と 。

徳次郎 さん … 見舞い に … 。 ( 美和子 ) 信明 さん … 。 あぁ !

ご … 御 院 ! ( 静 信 ) どう なさった ん です ? 急に 。

( 信明 ) う ぅ … 。 どう と いう わけ じゃ ない 。 →

見舞い に … 行く ん だ ! 見舞い に !

恭子 ! !

《 チアノーゼ 呼吸 困難 … 。 やら れ た ! 》

( 孝江 ) ここ 2 ~ 3 日 呼 ん で も 出 て こ ない から →

外 から 入って み た の よ 。 窓 が 開 い て た から 。 そし たら … 。

母さん ! 武藤 さん たち を 呼べ ! あと 担架 !

な … ! 嫌 です よ わたし は ! ! なぜ そんな 病院 の 使用人 の よう な まね 。

早く しろ ! !

( 孝江 ) 貸し です から ね 恭子 さん !

( 敏夫 ) 《 そう いえ ば 最近 恭子 は 妙に おとなしかった 》 →

《 なぜ 連中 が 自分 たち を →

避け て 通って くれる など と 思った の だ ろ う 》 →

《 尾崎 の 家 も すでに 起き上がり に 開か れ た 家 だった ん だ 》

( やす よ ) 先生 。 若 御 院 から お 電話 です 。

静 信 … 。

《 あれ 以来 会って ない な 》

《 思え ば あの とき から 2 人 の 間 に 奇妙 な 溝 が 出来 た 気 が する 》

( やす よ ) お つなぎ し ます ね 。

( 静 信 ) 敏夫 。 ( 敏夫 ) よう 。

( 静 信 ) 今 やす よ さ ん から 聞い た ん だ けど 恭子 さん が … 。

( 敏夫 ) ああ 。 あれ だ 。 ( 静 信 ) 何という こと だ 。

( 静 信 ) 容体 は ? ( 敏夫 ) よく ない 。

《 敏夫 … 。 また 自分 を 責め て いる ん だ な 》

( 敏夫 ) 俺 たち も 例外 じゃ ない って こと だ 。 →

それ で 何 だ ? 用 が ある ん だ ろ ? ( 静 信 ) それ が … 。

父 が 徳次郎 さん の お 見舞い に 行き たい と 言って いる ん だ 。

( 静 信 ) 具合 が 悪い こと を 母 から 聞い た らしく て 。 →

それ で 見舞い に 伺って いい か と 安 森 家 に 電話 を し たら →

病院 に 行った と 聞い て 。 ( 敏夫 ) なるほど 。

だが 親父 さん と 徳次郎 さん そんなに 仲 良かった か ?

分から ない 。 でも 付き合い は 長い はず だ から ね 。

まあ 安 森 家 は 檀 家 を まとめる 四 家 の 1 つ だ し な 。

( 静 信 ) そうだ ね 。 奥さん の 節子 さん に は →

檀 家 の 女 衆 を まとめ て もらったり し て たから →

1 人 に なった 徳次郎 さん が 心配 な の かも しれ ない 。

( 敏夫 ) そう か 。 そろそろ 家 に 戻って る と 思う 。 →

電話 し て みろ よ 。 ( 静 信 ) ああ 。 →

敏夫 … 。 →

僕 は … 。

何 だ ?

いや 。 恭子 さん を 守る の を 手伝わ なく て 平気 かい ?

ああ 。 俺 が 何とか する 。

( 足音 )

急 い だ 方 が いい よ 。

父さん が 様子 を 見 に 来る かも しれ ない から 。

そこ まで 行って やり たい けど …\ N 起き られ ない ん だ 。

《 この 期 に 及んで も 俺 は 徹 ちゃん が 心変わり し て →

一緒 に 逃げ て くれる と 期待 し て いる 》

( 徹 ) ごめん な 。

いい ん だ 。

何となく 俺 →

この 村 から 出 られ ない そんな 気 が し て い た … 。

《 水 ? 》

《 いや 涙 だ 》

《 体温 の ない 吸 血 鬼 の 冷たい 涙 》

( 結城 ) 梓 ! おい 梓 ! ! こ に 行った ん だ ? ど

うん ?

( 梓 ) 「 夏野 くん が 死 ん で いる の を 見 まし た 」 →

「 もう こんな 村 に は い られ ない 」 →

「 あなた に も 村 に も 我慢 が でき ませ ん 」 →

「 さようなら 。 梓 」

梓 ! ! い ない の か ! ?

悪い 冗談 だ ぞ … 。

( 結城 ) あ … 。

( 結城 ) 何 だ … 。

何 だ これ は ああ ああ あ ! !

( 池辺 ) あっ 。 お は よ … 。

( 池辺 ) 鶴見 さん … ?

( 光男 ) 鶴見 君 顔色 が 悪かった から 帰ら せ た ん だ 。

昨日 は 元気 で し た のに 。

まさか 妙 な 病気 じゃ ねえ だ ろ う な 。

ちょ っ … 。 やめ て ください よ 光男 さん !

正直 言う と 俺 も 怖い ん です 。

何だか 大 変な こと が 起こって る 気 が し て … 。

でも 逃げよ う った って 村 で 生まれ育った から →

逃げる 場所 の 当て も ない し 。

おいおい 。 寺 が 逃げ たら 誰 が 村人 を 弔う ん だ ?

( 池辺 ) です よ ねぇ 。

あっ 。 そう いえ ば 新しい 葬儀 社 が 出来 た らしい です よ 。

葬儀 社 ! ?

( 池辺 ) ほら 上 外 場 の 広 兼 の 木工 所 。 →

最近 引っ越し て 空き家 だった でしょ ? →

あそこ に 出来 た って 。 やっぱり 死人 が 多い から です か ね 。 →

クリニック も 出来 た って いう し 。

は ぁ … 。 本気 で 逃げ たく なった 。 ( 光男 ) まったく 何て こった ! →

いくら 死人 が 多い から って 葬儀 社 が 出来る なんて ! ! →

村 に は 弔 組 が ある って の に ! これ だ から 外 の やつ ら は !

( 静 信 ) 厚子 さん 。 淳子 さん 。 すみません 突然 で 。

( 厚子 ) いえいえ こちら こそ わざわざ 御 院 に 来 て いた だい て 。

徳次郎 さん 。 お 見舞い に 伺い まし た 。 →

父 が どうして も と 言い まし て 。

そう … 。

( 信明 ) もう いい 。

《 2 人 と も 取り立てて 何 を 言う でも なかった 》

《 まるで 決別 の ため の よう な 面会 》

( 信明 ) 静 信 。 ( 静 信 ) はい 。

節子 さん や 幹 康 君 も あんな 様子 だった の か ?

( 静 信 ) はい 。

あれ が 村 に まん延 し て いる ?

( 静 信 ) な の だ と 思い ます 。 ( 信明 ) そう か 。

《 ひょっとして 父 は 何 か を 知って いる の か ? 》

《 いや まさか … 》

( 昭 ) チクショー 。 何で … 何で だ よ !

( ドア を たたく 音 )

( 昭 ) すい ませ ー ん ! お 父 さ ー ん ! 兄ちゃん の 具合 どう す か ー ?

( 昭 ) どうして 出 て こ ない ん だ よ ー !

( かおり ) 昭 。 そんなに たた い たら 迷惑 だ よ 。

しょうがない じゃ ん 。 出 て こ ない ん だ し 。

( ドア の 開く 音 )

( 昭 ) お 父さん … ! ?

今日 は 骨 なし テーブル で 小出 工房 は 大忙し だ 。

( 昭 ) えっ … ?

子供 用 は ない から 帰り なさい 。

あの … 。 夏野 さん は ! ? ( 村人 ) おいおい ! →

そっと し とい て あげ な よ 。

けさ その 家 の 前 に 霊きゅう車 が 止まって 棺 を 運 ん で い た よ 。 →

誰 か が 亡くなった ん だ ろ う 。

う ぅ … 。 やっぱり →

無理 に でも 外 で 見張って 兄ちゃん を 守れ ば よかった 。 →

そう すれ ば … 。

結城 さん の お 父さん 協力 し て くれる って … 。 →

やっと 分かって もらえ た のに … 。

( 昭 ) これ から どう なる ん だ ?

( かおり ) とにかく 戸締まり は きちんと しよ う よ 。 →

結城 さん も 言って た じゃ ない 。 →

決して 起き上がり を 家 の 中 に 入れ ちゃ いけない って 。

《 フッ 。 戸締まり なんか 無駄 な の に 》

( 戸 の 開閉 音 )

( かおり ) お 父さん か な 。

( 佐知子 ) まったく 休日 に 仕事 だ なんて 。

こんな 時間 に 食事 の 準備 なんか させ ない で よ 。

それ に 毎日 残業 だ 何 だって 言って 夜中 まで 帰って こ ない 。

役場 で 何 の 残業 な の よ ?

( 佐知子 ) どうせ 職場 の 人 と 飲み 歩 い てる ん でしょ !

お 母さん 。 わたし たち 寝る けど 窓 の 鍵 ちゃん と 締め た ?

( 佐知子 ) うるさい !

人 を 何と 思って る の ! ? 家政 婦 じゃ ない の よ ! !

ご … ごめんなさい 。

謝って くれ なく て 結構 ! もう 勝手 に すれ ば いい ん だ わ !

まったく 飲み 歩 い た 揚げ句 に 医者 通い なんて やめ て よ ね 。 →

冗談 じゃ ない わ ! →

あんた は 早く 寝 なさい ! ( かおり ) は ー い !

( 恵 の 鼻歌 )

( 恵 ) ウフフフ 。 気分 が いい わ ー 。

大 っ 嫌い な やつ を 苦しめる って 最高 !

( 心 電 計 の 心 停止 音 )

( 清美 ) ねえ 若 奥さん どう な の ? やす よ さ ん 見 た ん でしょ う ?

( やす よ ) うーん … 。 昨日 処置 に 立ち会った けど →

あれ は もう 後半 に 入って る わ ね 。 →

呼吸 不全 に 黄 疸 に →

DIC 播種 性 血管 内 凝固 症候 群 。 →

ああ なる と もう どうにも なら ない ん じゃ ない かしら 。 →

でも 何とか 自分 で 最期 を 引き延ばし て やり たい ん でしょ う 。

《 あと は 全部 俺 が やる 。 食事 も 着替え も 全部 》

《 みんな の 手 は 煩わ せ ない 》

… って 言って た わ よ 。

あの 人 も 人 の 子 だった の ねぇ 。 意外に 情 が ある じゃ ない の 。

そう いえ ば 律 ちゃん 。

工房 の 息子 と 仲良し な ん じゃ なかった っけ ?

( 律子 ) あぁ 何 度 か 話し た けど 。

( やす よ ) 工房 で 誰 か 亡くなった らしい の よ 。

亡くなった の が 奥さん か 息子 さん か は 分から ない けど →

葬儀 社 の 車 が 来 て た らし いわ よ 。

あっ 先生 。

あっ あの … 先生 。 誰 か 手伝い を 。

( 敏夫 ) いや 構わ なく て いい 。

気 に し ない で くれ 。

闇 に 紛れ て

息 を 殺す

闇 を まとって

ふっと 微笑む

気のせい さ

お前 など 誰 も 知る はず ない

月 だけ が

見つめ て いる

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て