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I Am a Cat by Soseki Natsume, Chapter I - 02

Chapter I - 02

ようやく の 思い で 笹原 を 這い 出す と 向 う に 大きな 池 が ある 。 吾輩 は 池 の 前 に 坐って どう したら よかろう と 考えて 見た 。 別に これという 分別 も 出 な い 。 しばらく して 泣いたら 書生 が また 迎 に 来て くれる か と 考え付いた 。 ニャー 、 ニャー と 試みに やって 見た が 誰 も 来 ない 。 その うち 池 の 上 を さらさら と 風 が 渡って 日 が 暮れかかる 。 腹 が 非常に 減って 来た 。 泣き たくて も 声 が 出 ない 。 仕方 が ない 、 何でもよい から 食物 の ある 所 まで あるこう と 決心 を して そろりそろり と 池 を 左り に 廻り 始めた 。 どうも 非常に 苦しい 。 そこ を 我慢 して 無理やり に 這って 行く と ようやく の 事 で 何となく 人間 臭い 所 へ 出た 。 ここ へ 這入ったら 、 どうにかなる と 思って 竹 垣 の 崩れた 穴 から 、 とある 邸内 に もぐり込んだ 。 縁 は 不思議な もの で 、 もし この 竹 垣 が 破れて い なか っ た なら 、 吾輩 は ついに 路傍 に 餓死 した かも 知れ ん のである 。 一樹 の 蔭 と は よく 云った もの だ 。 この 垣根 の 穴 は 今日 に 至る まで 吾輩 が 隣家 の 三毛 を 訪問 する 時 の 通路 に なって いる 。 さて 邸 へ は 忍び込んだ もの の これ から 先どう して 善い か 分 ら ない 。 そのうちに 暗く なる 、 腹 は 減る 、 寒 さ は 寒し 、 雨 が 降って 来る と いう 始末 で もう 一刻 の 猶予 が 出来 なく なった 。 仕方 が ない から とにかく 明るくて 暖か そうな 方へ 方へ と あるいて 行く 。 今 から 考える と その 時 は すでに 家 の 内 に 這 入って おった のだ 。 ここ で 吾輩 は 彼 の 書生 以外 の 人間 を 再び 見る べき 機会 に 遭遇 した のである 。 第 一 に 逢った の が おさん である 。 これ は 前 の 書生 より 一層 乱暴な 方 で 吾輩 を 見る や 否 や いきなり 頸筋 を つかんで 表 へ 抛り 出した 。 いや これ は 駄目だ と 思った から 眼 を ねぶって 運 を 天 に 任せて いた 。 しかし ひもじい の と 寒い の に は どうしても 我慢 が 出来 ん 。 吾輩 は 再び おさん の 隙 を 見て 台所 へ 這い上った 。 すると 間もなく また 投げ出さ れた 。 吾輩 は 投げ出さ れて は 這い上り 、 這い上って は 投げ出さ れ 、 何でも 同じ 事 を 四五 遍 繰り返した の を 記憶 して いる 。 その 時 に おさん と 云 う 者 は つくづく いやになった 。 この 間 おさん の 三馬 を 偸んで この 返報 を して やって から 、 やっと 胸 の 痞 が 下りた 。 吾輩 が 最後に つまみ出され よう と した ときに 、 この 家 の 主人 が 騒々しい 何 だ と いい ながら 出て 来た 。 下女 は 吾輩 を ぶら下げて 主人 の 方 へ 向けて この 宿なし の 小 猫 が いくら 出して も 出して も 御 台所 へ 上って 来て 困り ます という 。 主 人 は 鼻 の 下 の 黒い 毛 を 撚り ながら 吾輩 の 顔 を しばらく 眺めて おった が 、 やがて そんなら 内 へ 置いて やれ と いった まま 奥 へ 這入って し まった 。 主人 は あまり 口を聞かぬ 人 と 見えた 。 下 女 は 口惜し そうに 吾輩 を 台所 へ 抛り出した 。 かくして 吾輩 は ついに この 家 を 自分 の 住家 と 極める 事 に した のである 。


Chapter I - 02 chapter|i Kapitel I - 02 Chapter I - 02

ようやく の 思い で 笹原 を 這い 出す と 向 う に 大きな 池 が ある 。 ||おもい||ささはら||はい|だす||むかい|||おおきな|いけ|| When I finally crawl out Sasahara, there is a big pond. Quando eu finalmente rastejo para fora de Sasahara, há um grande lago. 当我终于爬出笹原时,对面有一个大池塘。 吾輩 は 池 の 前 に 坐って どう したら よかろう と 考えて 見た 。 わがはい||いけ||ぜん||すわって|||||かんがえて|みた I sat in front of the pond and thought what to do. 別に これという 分別 も 出 な い 。 べつに||ぶんべつ||だ|| There is no such separation. しばらく して 泣いたら 書生 が また 迎 に 来て くれる か と 考え付いた 。 ||ないたら|しょせい|||むかい||きて||||かんがえついた After a while after crying, I thought that the calligrapher would come to meet me again. ニャー 、 ニャー と 試みに やって 見た が 誰 も 来 ない 。 |||こころみに||みた||だれ||らい| Meow, I tried it with meow, but nobody came. その うち 池 の 上 を さらさら と 風 が 渡って 日 が 暮れかかる 。 ||いけ||うえ||||かぜ||わたって|ひ||くれかかる The wind blows over the pond and the sun sets. 腹 が 非常に 減って 来た 。 はら||ひじょうに|へって|きた I'm very hungry. 泣き たくて も 声 が 出 ない 。 なき|||こえ||だ| Even if I want to cry, I can't speak. 仕方 が ない 、 何でもよい から 食物 の ある 所 まで あるこう と 決心 を して そろりそろり と 池 を 左り に 廻り 始めた 。 しかた|||なんでも よい||しょくもつ|||しょ||||けっしん|||||いけ||ひだり り||まわり|はじめた There was no choice, I decided to go from anything to food, and I started to go around the pond to the left. どうも 非常に 苦しい 。 |ひじょうに|くるしい It ’s very painful. É muito doloroso. そこ を 我慢 して 無理やり に 這って 行く と ようやく の 事 で 何となく 人間 臭い 所 へ 出た 。 ||がまん||むりやり||はって|いく||||こと||なんとなく|にんげん|くさい|しょ||でた When I put up there and forced to crawl, I finally managed to get to a human-like place. ここ へ 這入ったら 、 どうにかなる と 思って 竹 垣 の 崩れた 穴 から 、 とある 邸内 に もぐり込んだ 。 ||は はいったら|どうにか なる||おもって|たけ|かき||くずれた|あな|||てい ない||もぐりこんだ I thought that something would happen if I crawl here, and I rushed into a certain house through the collapsed hole in the bamboo fence. 縁 は 不思議な もの で 、 もし この 竹 垣 が 破れて い なか っ た なら 、 吾輩 は ついに 路傍 に 餓死 した かも 知れ ん のである 。 えん||ふしぎな|||||たけ|かき||やぶれて||||||わがはい|||ろぼう||がし|||しれ|| The edges are strange, and if this bamboo fence wasn't torn, I might have starved to death by the side of the road. 一樹 の 蔭 と は よく 云った もの だ 。 かずき||おん||||うんった|| Kazuki's shade was often said. この 垣根 の 穴 は 今日 に 至る まで 吾輩 が 隣家 の 三毛 を 訪問 する 時 の 通路 に なって いる 。 |かきね||あな||きょう||いたる||わがはい||りんか||みっけ||ほうもん||じ||つうろ||| Until now, this hole in the fence has been a passage for me to visit my neighbor, Sanke. さて 邸 へ は 忍び込んだ もの の これ から 先どう して 善い か 分 ら ない 。 |てい|||しのびこんだ|||||せんどう||よい||ぶん|| Although I sneaked into the mansion, I don't know how good it is from now on. そのうちに 暗く なる 、 腹 は 減る 、 寒 さ は 寒し 、 雨 が 降って 来る と いう 始末 で もう 一刻 の 猶予 が 出来 なく なった 。 その うち に|くらく||はら||へる|さむ|||さむし|あめ||ふって|くる|||しまつ|||いっこく||ゆうよ||でき|| However, it became darker, hungry, cold, and it was raining, and I could not afford another grace. 仕方 が ない から とにかく 明るくて 暖か そうな 方へ 方へ と あるいて 行く 。 しかた|||||あかるくて|あたたか|そう な|かた へ|かた へ|||いく Because there is no help for it, there will be people who seem bright and warm. 今 から 考える と その 時 は すでに 家 の 内 に 這 入って おった のだ 。 いま||かんがえる|||じ|||いえ||うち||は|はいって|| From now on, at that time, I was already in the house. ここ で 吾輩 は 彼 の 書生 以外 の 人間 を 再び 見る べき 機会 に 遭遇 した のである 。 ||わがはい||かれ||しょせい|いがい||にんげん||ふたたび|みる||きかい||そうぐう|| Here, I encountered the opportunity to look at humans other than his calligraphy again. 第 一 に 逢った の が おさん である 。 だい|ひと||あった|||| The first person I met was the old man. これ は 前 の 書生 より 一層 乱暴な 方 で 吾輩 を 見る や 否 や いきなり 頸筋 を つかんで 表 へ 抛り 出した 。 ||ぜん||しょせい||いっそう|らんぼうな|かた||わがはい||みる||いな|||けいすじ|||ひょう||なげう り|だした This was more violent than the previous student, and as soon as I saw him, I suddenly grasped my neck and went out to the table. いや これ は 駄目だ と 思った から 眼 を ねぶって 運 を 天 に 任せて いた 。 |||だめだ||おもった||がん||ね ぶって|うん||てん||まかせて| No, I thought this was no good, so I gazed at my eyes and left my luck to heaven. しかし ひもじい の と 寒い の に は どうしても 我慢 が 出来 ん 。 ||||さむい|||||がまん||でき| However, I can't stand it even if it is cold or cold. 吾輩 は 再び おさん の 隙 を 見て 台所 へ 這い上った 。 わがはい||ふたたび|||すき||みて|だいどころ||はいあがった I saw the opportunity of Mr. Osan again and went up to the kitchen. すると 間もなく また 投げ出さ れた 。 |まもなく||なげださ| Soon after that, it was thrown out again. 吾輩 は 投げ出さ れて は 這い上り 、 這い上って は 投げ出さ れ 、 何でも 同じ 事 を 四五 遍 繰り返した の を 記憶 して いる 。 わがはい||なげださ|||はいあがり|はいあがって||なげださ||なんでも|おなじ|こと||しご|へん|くりかえした|||きおく|| I remember being thrown up and crawling up, crawling up and thrown out, repeating the same thing over and over again. その 時 に おさん と 云 う 者 は つくづく いやになった 。 |じ||||うん||もの|||いやに なった At that time, the person called "Osan" became tired. この 間 おさん の 三馬 を 偸んで この 返報 を して やって から 、 やっと 胸 の 痞 が 下りた 。 |あいだ|||みっうま||とう ん で||かえ ほう||||||むね||ひ||おりた In the meantime I dropped the three horses and made this reply, finally my chest rose. 吾輩 が 最後に つまみ出され よう と した ときに 、 この 家 の 主人 が 騒々しい 何 だ と いい ながら 出て 来た 。 わがはい||さいごに|つまみださ れ||||||いえ||あるじ||そうぞうしい|なん|||||でて|きた When I was trying to be picked up at the end, I came out despite saying this husband was noisy. 下女 は 吾輩 を ぶら下げて 主人 の 方 へ 向けて この 宿なし の 小 猫 が いくら 出して も 出して も 御 台所 へ 上って 来て 困り ます という 。 した おんな||わがはい||ぶらさげて|あるじ||かた||むけて||やどなし||しょう|ねこ|||だして||だして||ご|だいどころ||のぼって|きて|こまり||と いう The younger woman hangs me and heads for her husband, no matter how much or less this small cat without lodging stays, she says that she is troubled to come up to the kitchen. 主 人 は 鼻 の 下 の 黒い 毛 を 撚り ながら 吾輩 の 顔 を しばらく 眺めて おった が 、 やがて そんなら 内 へ 置いて やれ と いった まま 奥 へ 這入って し まった 。 おも|じん||はな||した||くろい|け||ひねり||わがはい||かお|||ながめて||||そんな ら|うち||おいて|||||おく||は はいって|| The master looked at my face for a while while twisting the black hair under his nose, but eventually he left it inside and crawled into it. Mi esposo me miró a la cara un rato, retorciéndose el cabello negro debajo de la nariz, pero luego se arrastra hacia la espalda, dejándolo adentro. 主人 は あまり 口を聞かぬ 人 と 見えた 。 あるじ|||くち を きか ぬ|じん||みえた The master looked like a person who didn't hear much. 下 女 は 口惜し そうに 吾輩 を 台所 へ 抛り出した 。 した|おんな||くちおし|そう に|わがはい||だいどころ||なげう り だした The young woman humorously sent me out into the kitchen. かくして 吾輩 は ついに この 家 を 自分 の 住家 と 極める 事 に した のである 。 |わがはい||||いえ||じぶん||じゅう か||きわめる|こと||| Thus, I finally decided to make this house my home.