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Readings (6-7mins), 5. 木の祭り - 新美南吉

5. 木 の 祭り - 新美 南 吉

木 の 祭り - 新美 南 吉

木 に 白い 美しい 花 が いっぱい さきました 。 木 は 自分 の すがた が こんなに 美しく なった ので 、 うれしくて たまりません 。 けれど だれひとり 、「 美しい なあ 」 と ほめて くれる もの が ない ので つまらない と 思いました 。 木 は めったに 人 の とおら ない 緑 の 野原 の まんなか に ぽつんと 立って いた のであります 。 ・・

やわらかな 風 が 木 の すぐ そば を とおって 流れて いきました 。 その 風 に 木 の 花 の に おい が ふんわり のって いきました 。 におい は 小川 を わたって 麦畑 を こえて 、 崖っぷち を すべり おりて 流れて いきました 。 そして とうとう ちょうちょう が たくさん いる じゃがいも 畑 まで 、 流れて きました 。 ・・

「 おや 」 と じゃがいも の 葉 の 上 に とまって いた 一 ぴき の ちょう が 鼻 を うごかして い いました 。 「 なんて よい におい でしょう 、 ああ うっとり して しまう 。」 ・・

「 どこ か で 花 が さ いた のです ね 。」 と 、 別の 葉 に とまって いた ちょう が いいました 。 「 きっと 原っぱ の まんなか の あの 木 に 花 が さ いた のです よ 。」 ・・

それ から つぎつぎ と 、 じゃがいも 畑 に いた ちょうちょう は 風 に のって きた こころよい におい に 気 が ついて 、「 おや 」「 おや 」 と いった ので ありました 。 ・・

ちょうちょう は 花 の に おい が とても すきでした ので 、 こんなに よい に おい が して くる のに 、 それ を うっちゃって おく わけに は まいりません 。 そこ で ちょうちょう たち は みんな で そうだん を して 、 木 の ところ へ やっていく こと に きめました 。 そして 木 の ため に みんな で 祭り を して あげよう と いう こと に なりました 。 そこ で はね に もよう の ある いちばん 大きな ちょうちょう を 先 に して 、 白い の や 黄色い の や 、 かれた 木 の 葉 みたいな の や 、 小さな 小さな しじみ みたいな の や 、 いろいろな ちょうちょう が におい の 流れて くる 方 へ ひらひら と 飛んで いきました 。 崖っぷち を のぼって 麦畑 を こえて 、 小川 を わたって 飛んで いきました 。 ・・

ところが 中 で いちばん 小さかった しじみ ちょうは は ね が あまり つよく なかった ので 、 小川 の ふち で 休ま なければ なりません でした 。 しじみ ちょう が 小川 の ふち の 水草 の 葉 に とまって やすんで います と 、 となり の 葉 の うら に みた こと の ない 虫 が 一 ぴき うつらうつら して いる こと に 気 が つきました 。 ・・

「 あなた は だ あれ 。」 と しじみ ちょう が ききました 。 ・・

「 ほたる です 。」 と その 虫 は 眼 を さまして 答えました 。 ・・

「 原っぱ の まんなか の 木 さん の ところ で お祭り が あります よ 。 あなた も いらっしゃい 。」 と しじみ ちょう が さそいました 。 ほたる が 、・・

「 でも 、 私 は 夜 の 虫 だ から 、 みんな が 仲間 に して くれ ない でしょう 。」 と いいました 。 しじみ ちょう は 、・・

「 そんな こと は ありません 。」 と いって 、 いろいろに すすめて 、 とうとう ほたる を つれて いきました 。 ・・

なんて 楽しい お祭り でしょう 。 ちょうちょう たち は 木 の まわり を 大きな ぼたん 雪 の ように とびまわって 、 つかれる と 白い 花 に とまり 、 おいしい 蜜 を お腹 いっぱい ごちそう に なる ので ありました 。 けれど 光 が うすく なって 夕方 に なって しまいました 。 みんな は 、・・

「 もっと 遊んで いたい 。 だけど もう じき まっ暗に なる から 。」 と ためいき を つきました 。 すると ほたる は 小川 の ふち へ とんで いって 、 自分 の 仲間 を どっさり つれて きました 。 一つ一つ の ほたる が 一つ一つ の 花 の 中 に とまりました 。 まるで 小さい ちょうちん が 木 に いっぱい ともさ れた ような ぐあい でした 。 そこ で ちょうちょう たち はたいへん よろこんで 夜 おそく まで 遊びました 。


5. 木 の 祭り - 新美 南 吉 き||まつり|にいみ|みなみ|きち 5. festival of trees - NANKICHI NIIMI

木 の 祭り - 新美 南 吉 き||まつり|にいみ|みなみ|きち

木 に 白い 美しい 花 が いっぱい さきました 。 き||しろい|うつくしい|か|||さき ました 木 は 自分 の すがた が こんなに 美しく なった ので 、 うれしくて たまりません 。 き||じぶん|||||うつくしく||||たまり ませ ん けれど だれひとり 、「 美しい なあ 」 と ほめて くれる もの が ない ので つまらない と 思いました 。 ||うつくしい|||||||||||おもい ました 木 は めったに 人 の とおら ない 緑 の 野原 の まんなか に ぽつんと 立って いた のであります 。 き|||じん||||みどり||のはら|||||たって||のであり ます ・・

やわらかな 風 が 木 の すぐ そば を とおって 流れて いきました 。 |かぜ||き||||||ながれて|いき ました その 風 に 木 の 花 の に おい が ふんわり のって いきました 。 |かぜ||き||か|||||||いき ました におい は 小川 を わたって 麦畑 を こえて 、 崖っぷち を すべり おりて 流れて いきました 。 ||おがわ|||むぎばたけ|||がけっぷち||||ながれて|いき ました そして とうとう ちょうちょう が たくさん いる じゃがいも 畑 まで 、 流れて きました 。 |||||||はたけ||ながれて|き ました ・・

「 おや 」 と じゃがいも の 葉 の 上 に とまって いた 一 ぴき の ちょう が 鼻 を うごかして い いました 。 ||||は||うえ||||ひと|||||はな||||い ました 「 なんて よい におい でしょう 、 ああ うっとり して しまう 。」 ・・

「 どこ か で 花 が さ いた のです ね 。」 |||か||||| と 、 別の 葉 に とまって いた ちょう が いいました 。 |べつの|は||||||いい ました 「 きっと 原っぱ の まんなか の あの 木 に 花 が さ いた のです よ 。」 |はらっぱ|||||き||か||||| ・・

それ から つぎつぎ と 、 じゃがいも 畑 に いた ちょうちょう は 風 に のって きた こころよい におい に 気 が ついて 、「 おや 」「 おや 」 と いった ので ありました 。 |||||はたけ|||||かぜ|||||||き||||||||あり ました ・・

ちょうちょう は 花 の に おい が とても すきでした ので 、 こんなに よい に おい が して くる のに 、 それ を うっちゃって おく わけに は まいりません 。 ||か||||||||||||||||||||||まいり ませ ん そこ で ちょうちょう たち は みんな で そうだん を して 、 木 の ところ へ やっていく こと に きめました 。 ||||||||||き|||||||きめ ました そして 木 の ため に みんな で 祭り を して あげよう と いう こと に なりました 。 |き||||||まつり||||||||なり ました そこ で はね に もよう の ある いちばん 大きな ちょうちょう を 先 に して 、 白い の や 黄色い の や 、 かれた 木 の 葉 みたいな の や 、 小さな 小さな しじみ みたいな の や 、 いろいろな ちょうちょう が におい の 流れて くる 方 へ ひらひら と 飛んで いきました 。 ||||||||おおきな|||さき|||しろい|||きいろい||||き||は||||ちいさな|ちいさな||||||||||ながれて||かた||||とんで|いき ました 崖っぷち を のぼって 麦畑 を こえて 、 小川 を わたって 飛んで いきました 。 がけっぷち|||むぎばたけ|||おがわ|||とんで|いき ました ・・

ところが 中 で いちばん 小さかった しじみ ちょうは は ね が あまり つよく なかった ので 、 小川 の ふち で 休ま なければ なりません でした 。 |なか|||ちいさかった||ちょう は||||||||おがわ||||やすま||なり ませ ん| しじみ ちょう が 小川 の ふち の 水草 の 葉 に とまって やすんで います と 、 となり の 葉 の うら に みた こと の ない 虫 が 一 ぴき うつらうつら して いる こと に 気 が つきました 。 |||おがわ||||みずくさ||は||||い ます||||は||||||||ちゅう||ひと|||||||き||つき ました ・・

「 あなた は だ あれ 。」 と しじみ ちょう が ききました 。 ||||きき ました ・・

「 ほたる です 。」 と その 虫 は 眼 を さまして 答えました 。 ||ちゅう||がん|||こたえ ました ・・

「 原っぱ の まんなか の 木 さん の ところ で お祭り が あります よ 。 はらっぱ||||き|||||おまつり||あり ます| あなた も いらっしゃい 。」 と しじみ ちょう が さそいました 。 ||||さそい ました ほたる が 、・・

「 でも 、 私 は 夜 の 虫 だ から 、 みんな が 仲間 に して くれ ない でしょう 。」 |わたくし||よ||ちゅう|||||なかま||||| と いいました 。 |いい ました しじみ ちょう は 、・・

「 そんな こと は ありません 。」 |||あり ませ ん と いって 、 いろいろに すすめて 、 とうとう ほたる を つれて いきました 。 ||||||||いき ました ・・

なんて 楽しい お祭り でしょう 。 |たのしい|おまつり| ちょうちょう たち は 木 の まわり を 大きな ぼたん 雪 の ように とびまわって 、 つかれる と 白い 花 に とまり 、 おいしい 蜜 を お腹 いっぱい ごちそう に なる ので ありました 。 |||き||||おおきな||ゆき||||||しろい|か||||みつ||おなか||||||あり ました けれど 光 が うすく なって 夕方 に なって しまいました 。 |ひかり||||ゆうがた|||しまい ました みんな は 、・・

「 もっと 遊んで いたい 。 |あそんで|い たい だけど もう じき まっ暗に なる から 。」 |||まっ あんに|| と ためいき を つきました 。 |||つき ました すると ほたる は 小川 の ふち へ とんで いって 、 自分 の 仲間 を どっさり つれて きました 。 |||おがわ||||||じぶん||なかま||||き ました 一つ一つ の ほたる が 一つ一つ の 花 の 中 に とまりました 。 ひとつひとつ||||ひとつひとつ||か||なか||とまり ました まるで 小さい ちょうちん が 木 に いっぱい ともさ れた ような ぐあい でした 。 |ちいさい|||き||||||| そこ で ちょうちょう たち はたいへん よろこんで 夜 おそく まで 遊びました 。 ||||は たいへん||よ|||あそび ました