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(夢十夜) Ten Nights of Dreams by Natsume Sōseki, 1. 第 一夜 (2)

1. 第 一夜 (2)

しばらく して 、 女 が また こう 云った 。 ・・

「 死んだら 、 埋めて 下さい 。 大きな 真珠貝 で 穴 を 掘って 。 そうして 天 から 落ちて 来る 星 の 破片 を 墓標 に 置いて 下さい 。 そうして 墓 の 傍 に 待って いて 下さい 。 また 逢い に 来ます から 」・・

自分 は 、 いつ 逢い に 来る か ね と 聞いた 。 ・・

「 日 が 出る でしょう 。 それ から 日 が 沈む でしょう 。 それ から また 出る でしょう 、 そうして また 沈む でしょう 。 ―― 赤い 日 が 東 から 西 へ 、 東 から 西 へ と 落ちて 行く うち に 、―― あなた 、 待って いられます か 」・・

自分 は 黙って 首肯いた 。 女 は 静かな 調子 を 一 段 張り上げて 、・・

「 百 年 待って いて 下さい 」 と 思い切った 声 で 云った 。 ・・

「 百 年 、 私 の 墓 の 傍 に 坐って 待って いて 下さい 。 きっと 逢い に 来ます から 」・・

自分 は ただ 待って いる と 答えた 。 すると 、 黒い 眸 の なか に 鮮 に 見えた 自分 の 姿 が 、 ぼうっと 崩れて 来た 。 静かな 水 が 動いて 写る 影 を 乱した ように 、 流れ出した と 思ったら 、 女 の 眼 が ぱち り と 閉じた 。 長い 睫 の 間 から 涙 が 頬 へ 垂れた 。 ―― もう 死んで いた 。 ・・

自分 は それ から 庭 へ 下りて 、 真珠貝 で 穴 を 掘った 。 真珠貝 は 大きな 滑 かな 縁 の 鋭 ど い 貝 であった 。 土 を すくう たび に 、 貝 の 裏 に 月 の 光 が 差して きらきら した 。 湿った 土 の 匂 も した 。 穴 は しばらく して 掘 れた 。 女 を その 中 に 入れた 。 そうして 柔らかい 土 を 、 上 から そっと 掛けた 。 掛ける たび に 真珠貝 の 裏 に 月 の 光 が 差した 。 ・・

それ から 星 の 破片 の 落ちた の を 拾って 来て 、 かろく 土 の 上 へ 乗せた 。 星 の 破片 は 丸かった 。 長い 間 大空 を 落ちて いる 間 に 、 角 が 取れて 滑 か に なった んだろう と 思った 。 抱き上げて 土 の 上 へ 置く うち に 、 自分 の 胸 と 手 が 少し 暖 く なった 。


1. 第 一夜 (2) だい|いちや

しばらく して 、 女 が また こう 云った 。 ||おんな||||うん った After a while, the woman said again. ・・

「 死んだら 、 埋めて 下さい 。 しんだら|うずめて|ください "Quando eu morrer, por favor, me enterrem. 大きな 真珠貝 で 穴 を 掘って 。 おおきな|しんじゅがい||あな||ほって Dig a hole with a large pearl oyster. Cavar um buraco com uma grande ostra pérola. そうして 天 から 落ちて 来る 星 の 破片 を 墓標 に 置いて 下さい 。 |てん||おちて|くる|ほし||はへん||はか しるべ||おいて|ください Then place the fragments of the stars falling from the heavens on the grave marker. そうして 墓 の 傍 に 待って いて 下さい 。 |はか||そば||まって||ください Then please wait by the grave. また 逢い に 来ます から 」・・ |あい||き ます| I will come to see you again.”

自分 は 、 いつ 逢い に 来る か ね と 聞いた 。 じぶん|||あい||くる||||きいた I asked him when he would come to see me. ・・

「 日 が 出る でしょう 。 ひ||でる| "The sun will come out. "O sol vai sair. それ から 日 が 沈む でしょう 。 ||ひ||しずむ| Then the sun will set. それ から また 出る でしょう 、 そうして また 沈む でしょう 。 |||でる||||しずむ| Then it will come out again, and then it will sink again. ―― 赤い 日 が 東 から 西 へ 、 東 から 西 へ と 落ちて 行く うち に 、―― あなた 、 待って いられます か 」・・ あかい|ひ||ひがし||にし||ひがし||にし|||おちて|いく||||まって|いら れ ます| --While the red sun falls from east to west, from east to west --can you wait?'

自分 は 黙って 首肯いた 。 じぶん||だまって|うなずいた I silently agreed. 女 は 静かな 調子 を 一 段 張り上げて 、・・ おんな||しずかな|ちょうし||ひと|だん|はりあげて The woman took her quiet tone to the next level and...

「 百 年 待って いて 下さい 」 と 思い切った 声 で 云った 。 ひゃく|とし|まって||ください||おもいきった|こえ||うん った "Please wait a hundred years," he said boldly. ・・

「 百 年 、 私 の 墓 の 傍 に 坐って 待って いて 下さい 。 ひゃく|とし|わたくし||はか||そば||すわって|まって||ください "For a hundred years, please sit by my grave and wait. きっと 逢い に 来ます から 」・・ |あい||き ます| I'm sure you'll come to see me."

自分 は ただ 待って いる と 答えた 。 じぶん|||まって|||こたえた I replied that I was just waiting. すると 、 黒い 眸 の なか に 鮮 に 見えた 自分 の 姿 が 、 ぼうっと 崩れて 来た 。 |くろい|ひとみ||||せん||みえた|じぶん||すがた|||くずれて|きた Then, the image of myself, which had been vividly visible in the black eyes, suddenly collapsed. 静かな 水 が 動いて 写る 影 を 乱した ように 、 流れ出した と 思ったら 、 女 の 眼 が ぱち り と 閉じた 。 しずかな|すい||うごいて|うつる|かげ||みだした||ながれだした||おもったら|おんな||がん|||||とじた The woman's eyes snapped shut just when she thought it started to flow, like quiet water disturbing the moving shadows. 長い 睫 の 間 から 涙 が 頬 へ 垂れた 。 ながい|まつげ||あいだ||なみだ||ほお||しだれた Tears streamed down her cheeks from between her long eyelashes. ―― もう 死んで いた 。 |しんで| --He was already dead. ・・

自分 は それ から 庭 へ 下りて 、 真珠貝 で 穴 を 掘った 。 じぶん||||にわ||おりて|しんじゅがい||あな||ほった I then went down into the garden and dug a hole with a pearl oyster. 真珠貝 は 大きな 滑 かな 縁 の 鋭 ど い 貝 であった 。 しんじゅがい||おおきな|すべ||えん||するど|||かい| Pearl oysters were large, smooth-edged, sharp-edged oysters. 土 を すくう たび に 、 貝 の 裏 に 月 の 光 が 差して きらきら した 。 つち|||||かい||うら||つき||ひかり||さして|| Every time I scooped up the soil, the back of the shell shone with the moonlight. Cada vez que eu recolhia o solo, a parte de trás da concha brilhava com o luar. 湿った 土 の 匂 も した 。 しめった|つち||にお|| It also smelled of damp earth. 穴 は しばらく して 掘 れた 。 あな||||ほ| The hole was dug after a while. 女 を その 中 に 入れた 。 おんな|||なか||いれた put a woman in it. そうして 柔らかい 土 を 、 上 から そっと 掛けた 。 |やわらかい|つち||うえ|||かけた Then I gently covered the top with soft soil. Em seguida, cobri delicadamente o topo com terra macia. 掛ける たび に 真珠貝 の 裏 に 月 の 光 が 差した 。 かける|||しんじゅがい||うら||つき||ひかり||さした Every time I hung it, the moonlight shined through the back of the pearl oyster. Toda vez que eu pendurava, o luar brilhava na parte de trás da ostra pérola. ・・

それ から 星 の 破片 の 落ちた の を 拾って 来て 、 かろく 土 の 上 へ 乗せた 。 ||ほし||はへん||おちた|||ひろって|きて|か ろく|つち||うえ||のせた Then I picked up the fallen star fragments and put them on the ground. Então peguei os fragmentos de estrelas caídas e os coloquei no chão. 星 の 破片 は 丸かった 。 ほし||はへん||まるかった 長い 間 大空 を 落ちて いる 間 に 、 角 が 取れて 滑 か に なった んだろう と 思った 。 ながい|あいだ|おおぞら||おちて||あいだ||かど||とれて|すべ||||||おもった I thought it had become smoother after falling in the sky for a long time. 抱き上げて 土 の 上 へ 置く うち に 、 自分 の 胸 と 手 が 少し 暖 く なった 。 だきあげて|つち||うえ||おく|||じぶん||むね||て||すこし|だん|| As I picked it up and put it on the ground, my chest and hands felt a little warmer.