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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 69. 犬のいたずら - 夢野久作

69. 犬 の いたずら - 夢野 久作

犬 の いたずら - 夢野 久作

去年 の 十二 月 の 三十一 日 の 真 夜中 の 事 でした 。 一 匹 の 猪 と 一 匹 の 犬 が ある 都 の 寒い 寒い 風 の 吹く 四 辻 で ヒョッコリ と 出会いました 。 ・・

「 ヤア 犬 さん 、 もう 帰る の か ね 」・・

「 ヤア 猪 さん 、 もう 来た の か ね 」・・

と 二 人 は 握手 しました 。 ・・

「 もう じき 来年 に なる のだ が 、 それ まで に は まだ 時間 が ある から 、 そこら で お 別れ に 御馳走 を 食べ ようじゃ ない か 」・・

「 それ は いい ね 」・・

二 人 は そこら の 御飯 屋 へ 行って 、 御飯 を 食べ 始めました 。 ・・

「 時に 犬 さん 、 お前 の 持って いる その 大きな 荷物 は 何 だ ね 」・・

と 猪 は 小さな 眼 を キョロキョロ さ せて 尋ねました 。 ・・

「 これ は 犬 の 年 の 子供 が した 、 いい 事 と 悪い 事 を 集めた もの さ 」・・

「 ヘー 。 善い 事 悪い 事って どんな 事 だ ね 」・・ 「 それ は いろいろ ある よ 。 他人 の 草履 を 隠したり 、 拾い 食い を したり 、 盗み 食い を したり 、 垣根 を 破って 出入り したり 、 猫 を いじめたり 、 お母さん や 姉さん に 食いついたり 」・・ 「 ヘエ 、 そんな 事 を する か ね 」・・ 「 する と も 。 それ から 良い 方 で は 、 人 の もの を 探して やったり 、 落ちた もの を ひろって やったり 、 小さい 子 を お 守 して やったり 、 人 の 命 を 助けたり 」・・

「 ヘエー 、 それ は えらい ね 。 しかし そんな もの を 集めて 持って行って どう する の か ね 」・・

「 今に 十二 年 目 に なる と 僕 が 帰って 来る 。 その 時 に は 犬 の 年 の 子供 は 最 早 二十五 に なって いる 。 男 の 児 は 最 早 兵隊 に 行って 帰って 来て いる し 、 女 の 児 ならば お 嫁 さん に 行く年 頃 だ から 、 その 時 に 良い 事 を した 児 に は 良い 事 を して やり 、 悪い 事 を した 子 に は 何 か 非道 い 罰 を 当てて やろう と 思う んだ 」・・

「 フーン 」・・

と 猪 は 犬 の 言葉 を 聞いて 腕 を 組んで 考えました 。 ・・

「 オヤ 猪 君 、 何 を 考えて いる のだ い 」・・

「 ウン 。 犬 さん が そう 言う と 、 成る程 一 々 尤 も だ が 、 それ は あまり 感心 し ない ぜ 」・・

「 何故 、 何故 」・・

と 犬 は 眼 を 瞠って 申しました 。 ・・

「 それ は 、 今年 は まだ 小僧 だ から まだ いたずら を する だろう 。 しかし 二十四 に も 五 に も なったら 、 だんだん わけ が わかって 来て 、 そんな いたずら を し なく なる だろう 。 そんなに いい 人 に なった 時 に 罰 を 喰 わ せる の は 可哀そうで は ない か 」・・

このように 言わ れる と 犬 も 考えました 。 ・・

「 成る程 。 君 は 猪 と 言う 位 で 無 暗 に あばれる ばかり と 思ったら 、 中 々 ちえ が 深い 。 そん なら こう しよう で は ない か 。 この いたずら を した 児 が もし 二十五 に なって も 悪い 事 を やめて い なかったら 、 罰 を 喰 わ せる 事 に しよう 。 又 良い 児 が 悪く なって いたら 、 御 褒美 を やら ない 事 に しよう 」・・

「 うん 、 それ が いい 。 僕 も それ じゃ 来年 は 勉強 を して 、 猪 の ように あばれて 悪い 事 を する 児 と 、 猪 の ように 一 所 懸命に 好 い 事 を する 児 の 名前 を 集めよう 。 そうして 猪 の 年 の 児 が どんなに よく なる か 悪く なる か 気 を つけて いよう 」・・

二 人 は 手 を 打って 、・・

「 それ が いい 、 それ が いい 」・・

と 言いました 。 ・・

その うち に 十二 時 の 鐘 が 鳴りました 。 ・・

「 や あ 鐘 が 鳴った 。 君 も 僕 の 大好きの 処 まで 降って 来た ようだ 。 では 出かけよう で は ない か 」・・

二 人 は 表 に 出て 右 と 左 に 別れました 。 その 時 二 人 は 帽子 を ふって 、・・

「 犬 の 年 の 児 万 歳 」・・

「 猪 の 年 の 児 万 歳 」・・

と 叫びました 。 ・・

69. 犬 の いたずら - 夢野 久作 いぬ|||ゆめの|きゅうさく 69. dog's mischief - Hisasaku Yumeno 69. partida de cães - Hisasaku Yumeno

犬 の いたずら - 夢野 久作 いぬ|||ゆめの|きゅうさく Dog mischief-Yumeno Kyusaku

去年 の 十二 月 の 三十一 日 の 真 夜中 の 事 でした 。 きょねん||じゅうに|つき||さんじゅういち|ひ||まこと|よなか||こと| 一 匹 の 猪 と 一 匹 の 犬 が ある 都 の 寒い 寒い 風 の 吹く 四 辻 で ヒョッコリ と 出会いました 。 ひと|ひき||いのしし||ひと|ひき||いぬ|||と||さむい|さむい|かぜ||ふく|よっ|つじ||||であいました ・・

「 ヤア 犬 さん 、 もう 帰る の か ね 」・・ |いぬ|||かえる||| "Ya dog, are you going home?"

「 ヤア 猪 さん 、 もう 来た の か ね 」・・ |いのしし|||きた|||

と 二 人 は 握手 しました 。 |ふた|じん||あくしゅ| ・・

「 もう じき 来年 に なる のだ が 、 それ まで に は まだ 時間 が ある から 、 そこら で お 別れ に 御馳走 を 食べ ようじゃ ない か 」・・ ||らいねん||||||||||じかん|||||||わかれ||ごちそう||たべ|||

「 それ は いい ね 」・・

二 人 は そこら の 御飯 屋 へ 行って 、 御飯 を 食べ 始めました 。 ふた|じん||||ごはん|や||おこなって|ごはん||たべ|はじめました ・・

「 時に 犬 さん 、 お前 の 持って いる その 大きな 荷物 は 何 だ ね 」・・ ときに|いぬ||おまえ||もって|||おおきな|にもつ||なん||

と 猪 は 小さな 眼 を キョロキョロ さ せて 尋ねました 。 |いのしし||ちいさな|がん|||||たずねました ・・

「 これ は 犬 の 年 の 子供 が した 、 いい 事 と 悪い 事 を 集めた もの さ 」・・ ||いぬ||とし||こども||||こと||わるい|こと||あつめた||

「 ヘー 。 善い 事 悪い 事って どんな 事 だ ね 」・・ 「 それ は いろいろ ある よ 。 よい|こと|わるい|ことって||こと||||||| 他人 の 草履 を 隠したり 、 拾い 食い を したり 、 盗み 食い を したり 、 垣根 を 破って 出入り したり 、 猫 を いじめたり 、 お母さん や 姉さん に 食いついたり 」・・ 「 ヘエ 、 そんな 事 を する か ね 」・・ たにん||ぞうり||かくしたり|ひろい|くい|||ぬすみ|くい|||かきね||やぶって|でいり||ねこ|||お かあさん||ねえさん||くいついたり|||こと|||| 「 する と も 。 それ から 良い 方 で は 、 人 の もの を 探して やったり 、 落ちた もの を ひろって やったり 、 小さい 子 を お 守 して やったり 、 人 の 命 を 助けたり 」・・ ||よい|かた|||じん||||さがして||おちた|||||ちいさい|こ|||しゅ|||じん||いのち||たすけたり

「 ヘエー 、 それ は えらい ね 。 しかし そんな もの を 集めて 持って行って どう する の か ね 」・・ ||||あつめて|もっていって|||||

「 今に 十二 年 目 に なる と 僕 が 帰って 来る 。 いまに|じゅうに|とし|め||||ぼく||かえって|くる その 時 に は 犬 の 年 の 子供 は 最 早 二十五 に なって いる 。 |じ|||いぬ||とし||こども||さい|はや|にじゅうご||| 男 の 児 は 最 早 兵隊 に 行って 帰って 来て いる し 、 女 の 児 ならば お 嫁 さん に 行く年 頃 だ から 、 その 時 に 良い 事 を した 児 に は 良い 事 を して やり 、 悪い 事 を した 子 に は 何 か 非道 い 罰 を 当てて やろう と 思う んだ 」・・ おとこ||じ||さい|はや|へいたい||おこなって|かえって|きて|||おんな||じ|||よめ|||ゆくとし|ころ||||じ||よい|こと|||じ|||よい|こと||||わるい|こと|||こ|||なん||ひどう||ばち||あてて|||おもう|

「 フーン 」・・

と 猪 は 犬 の 言葉 を 聞いて 腕 を 組んで 考えました 。 |いのしし||いぬ||ことば||きいて|うで||くんで|かんがえました ・・

「 オヤ 猪 君 、 何 を 考えて いる のだ い 」・・ |いのしし|きみ|なん||かんがえて|||

「 ウン 。 犬 さん が そう 言う と 、 成る程 一 々 尤 も だ が 、 それ は あまり 感心 し ない ぜ 」・・ いぬ||||いう||なるほど|ひと||ゆう|||||||かんしん|||

「 何故 、 何故 」・・ なぜ|なぜ

と 犬 は 眼 を 瞠って 申しました 。 |いぬ||がん||どうって|もうしました ・・

「 それ は 、 今年 は まだ 小僧 だ から まだ いたずら を する だろう 。 ||ことし|||こぞう||||||| しかし 二十四 に も 五 に も なったら 、 だんだん わけ が わかって 来て 、 そんな いたずら を し なく なる だろう 。 |にじゅうし|||いつ||||||||きて||||||| そんなに いい 人 に なった 時 に 罰 を 喰 わ せる の は 可哀そうで は ない か 」・・ ||じん|||じ||ばち||しょく|||||かわいそうで|||

このように 言わ れる と 犬 も 考えました 。 このよう に|いわ|||いぬ||かんがえました ・・

「 成る程 。 なるほど 君 は 猪 と 言う 位 で 無 暗 に あばれる ばかり と 思ったら 、 中 々 ちえ が 深い 。 きみ||いのしし||いう|くらい||む|あん|||||おもったら|なか||||ふかい そん なら こう しよう で は ない か 。 この いたずら を した 児 が もし 二十五 に なって も 悪い 事 を やめて い なかったら 、 罰 を 喰 わ せる 事 に しよう 。 ||||じ|||にじゅうご||||わるい|こと|||||ばち||しょく|||こと|| 又 良い 児 が 悪く なって いたら 、 御 褒美 を やら ない 事 に しよう 」・・ また|よい|じ||わるく|||ご|ほうび||||こと||

「 うん 、 それ が いい 。 僕 も それ じゃ 来年 は 勉強 を して 、 猪 の ように あばれて 悪い 事 を する 児 と 、 猪 の ように 一 所 懸命に 好 い 事 を する 児 の 名前 を 集めよう 。 ぼく||||らいねん||べんきょう|||いのしし||よう に||わるい|こと|||じ||いのしし||よう に|ひと|しょ|けんめいに|よしみ||こと|||じ||なまえ||あつめよう そうして 猪 の 年 の 児 が どんなに よく なる か 悪く なる か 気 を つけて いよう 」・・ |いのしし||とし||じ||||||わるく|||き|||

二 人 は 手 を 打って 、・・ ふた|じん||て||うって

「 それ が いい 、 それ が いい 」・・

と 言いました 。 |いいました ・・

その うち に 十二 時 の 鐘 が 鳴りました 。 |||じゅうに|じ||かね||なりました ・・

「 や あ 鐘 が 鳴った 。 ||かね||なった 君 も 僕 の 大好きの 処 まで 降って 来た ようだ 。 きみ||ぼく||だいすきの|しょ||ふって|きた| では 出かけよう で は ない か 」・・ |でかけよう||||

二 人 は 表 に 出て 右 と 左 に 別れました 。 ふた|じん||ひょう||でて|みぎ||ひだり||わかれました その 時 二 人 は 帽子 を ふって 、・・ |じ|ふた|じん||ぼうし||

「 犬 の 年 の 児 万 歳 」・・ いぬ||とし||じ|よろず|さい

「 猪 の 年 の 児 万 歳 」・・ いのしし||とし||じ|よろず|さい

と 叫びました 。 |さけびました ・・