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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 64. 朝 - 竹久夢二

64. 朝 - 竹 久 夢 二

朝 - 竹 久 夢 二

ある 春 の 朝 でした 。 . 太陽 は 、 いま 薔薇色 の 雲 を わけて 、 小山 の うえ を 越える 所 でした 。 小さい 子供 は 、 白い 小さい 床 の 中 で 、 まだ 眠って 居りました 。 . 「 お 起き 、 お 起き 」 柱 に 掛った 角 時計 が 言いました 。 「 お 起き 、 お 起き 」 そう 言った けれど 、 よく 眠った 太郎 は 何も 聞きません でした 。 「 私 が 起して 見ましょう 」 窓 に 近い 木 の うえ に 居た 小鳥 が 言いました 。 . 「 坊ちゃん は いつも 私 に 餌 を 下さる から 、 私 が ひと つ 唄 を 歌って 坊ちゃん を 起して あげよう 」. 好 い 子 の 坊ちゃん お 眼 ざ め か ? . 寝た 間 に 鳥 差し が さし に くる . 庭 に いた 小鳥 が みんな 寄って 来て 声 を そろえて 歌いました 。 それ でも 太郎 は なんにも 聞え ない ように 眠って いました 。 . 海 の 方 から 吹いて 来た 南 風 は 、 窓 の 所 へ 来て 言いました 。 . 「 私 は この 坊ちゃん を よく 知ってます よ 。 昨日 野原 で 坊ちゃん の 凧 を 揚げた の は 私 だ もの 。 窓 から 這 入って 坊ちゃん の 頬 ぺた へ キッス を して 起そう 」.

南 風 は 、 窓 から カーテン を あげて 子供 の 寝室 へ そっと 這 入って いった 。 そして 太郎 さん の 紅 い 実 の ような 頬 や 、 若い 草 の ような 髪 の 毛 を そよそよ と 吹いた 。 けれど 子供 は 、 何も 知ら ぬ ほど 深く 眠って いました 。 . 「 坊ちゃん は 私 が 夜 の 明けた の を 知らせる の を 待って らっしゃる んだ 」. 庭 の 隅 の 鳥小屋 から のっそ のっそ 自信 の ある らしい 歩調 で 出て 来た 牝鶏 [#「 牝鶏 」 は 底 本 で は 「 牡鶏 」]《 めんどり 》 が 言いました 。 . 「 誰 も 私 ほど 坊ちゃん を 知って る 者 は ありません よ 。 私 ゃね 、 これ で 坊ちゃん に 大変 御 贔屓 に なって る んで さあ 。 ど りゃ ひと つ 夜 明 の 唄 を 歌おう 」.

こっけ こっけ あ どう 。 . 東 の 山 から 夜 が 明けた . お 眼 が さめたら 何 処 いき やる 。 . 大阪 天満 の 橋 の 下 . 千 石船 に 帆 を あげて 。 . こっけ 、 こっけ 、 あ どう 。 . 牝鶏 の 朝 の 唄 に 驚いて 、 親 鶏 の 翼 の 下 に 寝て いた 黄いろい 雛 も 、 軒 の 下 の 鳩 も 、 赤い 小 牛 も 、 牧場 の 小屋 の 中 へ 眠って いた 小 羊 まで が 眼 を 覚 しました 。 それ でも 太郎 の 眼 は 覚めません でした 。 . この 時 、 太陽 は 小山 を 越えて 、 春 の 空 に 高く 輝きました 。 草 に 結んだ 露 は 夢 から さめ 、 鈴蘭 は いちはやく 朝 の 鐘 を 鳴 しました 。 草 も 木 も 太陽 の 方 へ あたま を あげて 、 歓 びました 。 太陽 は しずしず と 森 を 越え 、 牧場 に 光 を 投げ ながら 、 太郎 の 家 の お 庭 の 方 まで やって 来ました 。 そして 窓 の ガラス を 通して 太郎 の 顔 へ 美しい 光 を 投げました 。 すると 太郎 は 、 可愛い 眼 を ぱっちり と 明けました 。 . 「 かあちゃん 、 かあちゃん ! 」 お 母 様 は すぐに 太郎 を 見 に 来ました 。 . 「 坊や 、 お 眼 が さめた の 。 誰 が 坊や を 起して くれた え ? 」.

お 母 様 が ききました 。 けれど 誰 も 答える もの は ありません でした 。 それ は 太郎 も 知りません でした から 。

64. 朝 - 竹 久 夢 二 あさ|たけ|ひさ|ゆめ|ふた 64. morning Takehisa Yumeji 64. утро - Такехиса Юмэдзи

朝 - 竹 久 夢 二 あさ|たけ|ひさ|ゆめ|ふた

ある 春 の 朝 でした 。 |はる||あさ| . 太陽 は 、 いま 薔薇色 の 雲 を わけて 、 小山 の うえ を 越える 所 でした 。 たいよう|||ばらいろ||くも|||こやま||||こえる|しょ| 小さい 子供 は 、 白い 小さい 床 の 中 で 、 まだ 眠って 居りました 。 ちいさい|こども||しろい|ちいさい|とこ||なか|||ねむって|おりました . 「 お 起き 、 お 起き 」 柱 に 掛った 角 時計 が 言いました 。 |おき||おき|ちゅう||かかった|かど|とけい||いいました 「 お 起き 、 お 起き 」 そう 言った けれど 、 よく 眠った 太郎 は 何も 聞きません でした 。 |おき||おき||いった|||ねむった|たろう||なにも|ききません| 「 私 が 起して 見ましょう 」 窓 に 近い 木 の うえ に 居た 小鳥 が 言いました 。 わたくし||おこして|みましょう|まど||ちかい|き||||いた|ことり||いいました . 「 坊ちゃん は いつも 私 に 餌 を 下さる から 、 私 が ひと つ 唄 を 歌って 坊ちゃん を 起して あげよう 」. ぼっちゃん|||わたくし||えさ||くださる||わたくし||||うた||うたって|ぼっちゃん||おこして| 好 い 子 の 坊ちゃん お 眼 ざ め か ? よしみ||こ||ぼっちゃん||がん||| . 寝た 間 に 鳥 差し が さし に くる . ねた|あいだ||ちょう|さし|||| 庭 に いた 小鳥 が みんな 寄って 来て 声 を そろえて 歌いました 。 にわ|||ことり|||よって|きて|こえ|||うたいました それ でも 太郎 は なんにも 聞え ない ように 眠って いました 。 ||たろう|||きこえ||よう に|ねむって| . 海 の 方 から 吹いて 来た 南 風 は 、 窓 の 所 へ 来て 言いました 。 うみ||かた||ふいて|きた|みなみ|かぜ||まど||しょ||きて|いいました . 「 私 は この 坊ちゃん を よく 知ってます よ 。 わたくし|||ぼっちゃん|||しってます| 昨日 野原 で 坊ちゃん の 凧 を 揚げた の は 私 だ もの 。 きのう|のはら||ぼっちゃん||たこ||あげた|||わたくし|| 窓 から 這 入って 坊ちゃん の 頬 ぺた へ キッス を して 起そう 」. まど||は|はいって|ぼっちゃん||ほお||||||おこそう

南 風 は 、 窓 から カーテン を あげて 子供 の 寝室 へ そっと 這 入って いった 。 みなみ|かぜ||まど||かーてん|||こども||しんしつ|||は|はいって| そして 太郎 さん の 紅 い 実 の ような 頬 や 、 若い 草 の ような 髪 の 毛 を そよそよ と 吹いた 。 |たろう|||くれない||み|||ほお||わかい|くさ|||かみ||け||||ふいた けれど 子供 は 、 何も 知ら ぬ ほど 深く 眠って いました 。 |こども||なにも|しら|||ふかく|ねむって| . 「 坊ちゃん は 私 が 夜 の 明けた の を 知らせる の を 待って らっしゃる んだ 」. ぼっちゃん||わたくし||よ||あけた|||しらせる|||まって|| 庭 の 隅 の 鳥小屋 から のっそ のっそ 自信 の ある らしい 歩調 で 出て 来た 牝鶏 [#「 牝鶏 」 は 底 本 で は 「 牡鶏 」]《 めんどり 》 が 言いました 。 にわ||すみ||とりごや||||じしん||||ほちょう||でて|きた|めすにわとり|めすにわとり||そこ|ほん|||おすにわとり|||いいました . 「 誰 も 私 ほど 坊ちゃん を 知って る 者 は ありません よ 。 だれ||わたくし||ぼっちゃん||しって||もの||| 私 ゃね 、 これ で 坊ちゃん に 大変 御 贔屓 に なって る んで さあ 。 わたくし||||ぼっちゃん||たいへん|ご|ひいき||||| ど りゃ ひと つ 夜 明 の 唄 を 歌おう 」. ||||よ|あき||うた||うたおう

こっけ こっけ あ どう 。 . 東 の 山 から 夜 が 明けた . ひがし||やま||よ||あけた お 眼 が さめたら 何 処 いき やる 。 |がん|||なん|しょ|| . 大阪 天満 の 橋 の 下 . おおさか|てんま||きょう||した 千 石船 に 帆 を あげて 。 せん|いしふね||ほ|| . こっけ 、 こっけ 、 あ どう 。 . 牝鶏 の 朝 の 唄 に 驚いて 、 親 鶏 の 翼 の 下 に 寝て いた 黄いろい 雛 も 、 軒 の 下 の 鳩 も 、 赤い 小 牛 も 、 牧場 の 小屋 の 中 へ 眠って いた 小 羊 まで が 眼 を 覚 しました 。 めすにわとり||あさ||うた||おどろいて|おや|にわとり||つばさ||した||ねて||きいろい|ひな||のき||した||はと||あかい|しょう|うし||ぼくじょう||こや||なか||ねむって||しょう|ひつじ|||がん||あきら| それ でも 太郎 の 眼 は 覚めません でした 。 ||たろう||がん||さめません| . この 時 、 太陽 は 小山 を 越えて 、 春 の 空 に 高く 輝きました 。 |じ|たいよう||こやま||こえて|はる||から||たかく|かがやきました 草 に 結んだ 露 は 夢 から さめ 、 鈴蘭 は いちはやく 朝 の 鐘 を 鳴 しました 。 くさ||むすんだ|ろ||ゆめ|||すずらん|||あさ||かね||な| 草 も 木 も 太陽 の 方 へ あたま を あげて 、 歓 びました 。 くさ||き||たいよう||かた|||||かん| 太陽 は しずしず と 森 を 越え 、 牧場 に 光 を 投げ ながら 、 太郎 の 家 の お 庭 の 方 まで やって 来ました 。 たいよう||||しげる||こえ|ぼくじょう||ひかり||なげ||たろう||いえ|||にわ||かた|||きました そして 窓 の ガラス を 通して 太郎 の 顔 へ 美しい 光 を 投げました 。 |まど||がらす||とおして|たろう||かお||うつくしい|ひかり||なげました すると 太郎 は 、 可愛い 眼 を ぱっちり と 明けました 。 |たろう||かわいい|がん||||あけました . 「 かあちゃん 、 かあちゃん ! 」 お 母 様 は すぐに 太郎 を 見 に 来ました 。 |はは|さま|||たろう||み||きました . 「 坊や 、 お 眼 が さめた の 。 ぼうや||がん||| 誰 が 坊や を 起して くれた え ? だれ||ぼうや||おこして|| 」.

お 母 様 が ききました 。 |はは|さま|| けれど 誰 も 答える もの は ありません でした 。 |だれ||こたえる|||| それ は 太郎 も 知りません でした から 。 ||たろう||しりません||