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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 56. おかめどんぐり - 小川未明

56. おかめ どんぐり - 小川 未明

おかめ どんぐり - 小川 未明

ねえ や の 田舎 は 、 山奥 の さびしい 村 です 。 町 が なかなか 遠い ので 、 子供 たち は 本屋 へ いって 雑誌 を 見る と いう こと も 、 めったに ありません 。 三郎 さん は 、 自分 の 見た 雑誌 を ねえ や の 弟 さん に 、 送って やりました 。 「 坊ちゃん 、 ありがとう ございます 。 弟 は 、 どんなに 喜ぶ か しれません 。」 と 、 ねえ や は 、 目 を うるま せて 、 いいました 。 する と 、 ある 日 の こと 、 弟 の 孝二 くん から 、たいそう よろこんで 、 手紙 が まいりました 。 そして 、 山 で 拾った 、 くり や 、 どんぐり を 送る と 書いて ありました 。 「 町 が 遠い のに 、 弟 さん は 、 小包 を 出し に いった んだ ね 。」 と 、 三郎 さん は ききました 。 「 いえ 、 町 へ は 、 毎日 、 村 から 、 だれ か ついで が あります から 。」 と 、 ねえ や は 、 答えました 。 手紙 の あと から 、 小包 が とどきました 。 あける と 、 紫色 の くり や 、 まるい どんぐり や 、 また 、 ぎんなん など が 、 は いって いました 。 そして 山 から 、 いっしょに ついてきた 、 木 の 葉 も まじって いました 。 これ を 見る と 、 ねえ や は 、 子供 の 時分 の こと を 思い出して 、 なつかし そうに ながめて いました 。 「 こんな の が 、 山 に たくさん なって いる の ? 」 「 はい 、 たくさん 、 なって います 。」 「 いって みたい なあ 。」 と 、 三郎 さん は 、 田舎 の 秋 の 景色 を 思いました 。 三郎 さん は 、 さっそく 、 孝二 くん に 、 礼 を いって やりました 。 それ から 、 その うち に 、 また 雑誌 を 送る から と 書きました 。 しばらく たつ と 、 孝二 くん から 手紙 が きた のであります 。 「 なんと いって 、 きたん だろう な 。」

三郎 さん は 、 あけて よんで みる と 、

「 送って いただいた 、 美しい 雑誌 を 友だち に 見せる と 、 みんな が 、 奪い合って 、 たちまち 、 汚く して しまいました 。 残念で なりません 。 また 、 送って いただいて 、 破る と いけない から 、 どう か 、 もう 送ら ないで ください 。」 と 、 書いて ありました 。 「 そんなに 、 あんな 雑誌 が めずらしい の か なあ 。」

三郎 さん は 、 活動 も なければ 、 りっぱな 店 も ない 、 電車 も なければ 、 自動車 も 通ら ない 、 にぎやかな もの は 、 なに一つ も ない 、 田舎 の 景色 を 目 に えがいて 、 そこ に 遊ぶ 子供 の 姿 を 想像 した 。 そのかわり 、 林 が 茂って いれば 、 美しい 小川 も 流れて います 。 「 僕たち だって 、 そのかわり 、 くり や 、 どんぐり を 、 拾う こと が でき ない のだ から 、 おんなじ こった 。」 と 、 三郎 さん は 思いました 。 三郎 さん が 、 孝二 くん の 送って くれた 、 どんぐり を 、 学校 へ 持って ゆく と 、 さあたいへんでした 。 みんな は 、 珍しがって 、

「 見せ ておくれ 。」 と 、 そば へ 寄って きました 。 「 君 、 この おかめ どんぐり を 、 どこ から 拾って き たんだい 。」

「 一 個 、 おくれよ 。」

「 僕 に も ね 。」

みんな は 、 三郎 さん の まわり に たかって 、 はなれ ない のでした 。 その うち 、 奪い合い から 、 けんか を はじめた のであります 。 その 晩 、 三郎 さん は 、 考えました 。 「 田舎 の 子 は 、 雑誌 を 見たい のだ 。 僕たち 街 の 子 は 、 おかめ どんぐり が ほしい のだ 。 かえっこ すれば いい じゃ ない か 。」 あくる 日 、 三郎 さん は 、 学校 へ いって 、

「 君 たち の よんだ 雑誌 を 田舎 の 子供 へ 、 送って やって 、 田舎 の 子供 たち から 、 おかめ どんぐり を 送って もらおう よ 。」 と 、 相談 しました 。 「 賛成 、 賛成 ! 」 その こと を 、 三郎 さん から 、 孝二 くん に いって やる と 、 すぐに 返事 が きて 、 田舎 の 子供 たち も 大喜びだ と いう のでした 。 そして 、 雑誌 や おかめ どんぐり より も 、 まだ 知ら ない 、 遠い 田舎 と 、 街 と で 、 おたがいに 、 交際 する の が 、 とても うれしかった のであります 。

56. おかめ どんぐり - 小川 未明 ||おがわ|みめい 56. okame-donguri - ogawa miaki

おかめ どんぐり - 小川 未明 ||おがわ|みめい

ねえ や の 田舎 は 、 山奥 の さびしい 村 です 。 |||いなか||やまおく|||むら| 町 が なかなか 遠い ので 、 子供 たち は 本屋 へ いって 雑誌 を 見る と いう こと も 、 めったに ありません 。 まち|||とおい||こども|||ほんや|||ざっし||みる|||||| 三郎 さん は 、 自分 の 見た 雑誌 を ねえ や の 弟 さん に 、 送って やりました 。 さぶろう|||じぶん||みた|ざっし|||||おとうと|||おくって| 「 坊ちゃん 、 ありがとう ございます 。 ぼっちゃん|| 弟 は 、 どんなに 喜ぶ か しれません 。」 おとうと|||よろこぶ|| と 、 ねえ や は 、 目 を うるま せて 、 いいました 。 ||||め|||| する と 、 ある 日 の こと 、 弟 の 孝二 くん から 、たいそう よろこんで 、 手紙 が まいりました 。 |||ひ|||おとうと||こうじ|||||てがみ|| そして 、 山 で 拾った 、 くり や 、 どんぐり を 送る と 書いて ありました 。 |やま||ひろった|||||おくる||かいて| 「 町 が 遠い のに 、 弟 さん は 、 小包 を 出し に いった んだ ね 。」 まち||とおい||おとうと|||こづつみ||だし|||| と 、 三郎 さん は ききました 。 |さぶろう||| 「 いえ 、 町 へ は 、 毎日 、 村 から 、 だれ か ついで が あります から 。」 |まち|||まいにち|むら||||||| と 、 ねえ や は 、 答えました 。 ||||こたえました 手紙 の あと から 、 小包 が とどきました 。 てがみ||||こづつみ|| あける と 、 紫色 の くり や 、 まるい どんぐり や 、 また 、 ぎんなん など が 、 は いって いました 。 ||むらさきいろ||||||||||||| そして 山 から 、 いっしょに ついてきた 、 木 の 葉 も まじって いました 。 |やま||||き||は||| これ を 見る と 、 ねえ や は 、 子供 の 時分 の こと を 思い出して 、 なつかし そうに ながめて いました 。 ||みる|||||こども||じぶん||||おもいだして||そう に|| 「 こんな の が 、 山 に たくさん なって いる の ? |||やま||||| 」 「 はい 、 たくさん 、 なって います 。」 「 いって みたい なあ 。」 と 、 三郎 さん は 、 田舎 の 秋 の 景色 を 思いました 。 |さぶろう|||いなか||あき||けしき||おもいました 三郎 さん は 、 さっそく 、 孝二 くん に 、 礼 を いって やりました 。 さぶろう||||こうじ|||れい||| それ から 、 その うち に 、 また 雑誌 を 送る から と 書きました 。 ||||||ざっし||おくる|||かきました しばらく たつ と 、 孝二 くん から 手紙 が きた のであります 。 |||こうじ|||てがみ||| 「 なんと いって 、 きたん だろう な 。」

三郎 さん は 、 あけて よんで みる と 、 さぶろう||||||

「 送って いただいた 、 美しい 雑誌 を 友だち に 見せる と 、 みんな が 、 奪い合って 、 たちまち 、 汚く して しまいました 。 おくって||うつくしい|ざっし||ともだち||みせる||||うばいあって||きたなく|| 残念で なりません 。 ざんねんで| また 、 送って いただいて 、 破る と いけない から 、 どう か 、 もう 送ら ないで ください 。」 |おくって||やぶる|||||||おくら|| と 、 書いて ありました 。 |かいて| 「 そんなに 、 あんな 雑誌 が めずらしい の か なあ 。」 ||ざっし|||||

三郎 さん は 、 活動 も なければ 、 りっぱな 店 も ない 、 電車 も なければ 、 自動車 も 通ら ない 、 にぎやかな もの は 、 なに一つ も ない 、 田舎 の 景色 を 目 に えがいて 、 そこ に 遊ぶ 子供 の 姿 を 想像 した 。 さぶろう|||かつどう||||てん|||でんしゃ|||じどうしゃ||とおら|||||なにひとつ|||いなか||けしき||め|||||あそぶ|こども||すがた||そうぞう| そのかわり 、 林 が 茂って いれば 、 美しい 小川 も 流れて います 。 |りん||しげって||うつくしい|おがわ||ながれて| 「 僕たち だって 、 そのかわり 、 くり や 、 どんぐり を 、 拾う こと が でき ない のだ から 、 おんなじ こった 。」 ぼくたち|||||||ひろう|||||||| と 、 三郎 さん は 思いました 。 |さぶろう|||おもいました 三郎 さん が 、 孝二 くん の 送って くれた 、 どんぐり を 、 学校 へ 持って ゆく と 、 さあたいへんでした 。 さぶろう|||こうじ|||おくって||||がっこう||もって||| みんな は 、 珍しがって 、 ||めずらしがって

「 見せ ておくれ 。」 みせ| と 、 そば へ 寄って きました 。 |||よって| 「 君 、 この おかめ どんぐり を 、 どこ から 拾って き たんだい 。」 きみ|||||||ひろって||

「 一 個 、 おくれよ 。」 ひと|こ|

「 僕 に も ね 。」 ぼく|||

みんな は 、 三郎 さん の まわり に たかって 、 はなれ ない のでした 。 ||さぶろう|||||||| その うち 、 奪い合い から 、 けんか を はじめた のであります 。 ||うばいあい||||| その 晩 、 三郎 さん は 、 考えました 。 |ばん|さぶろう|||かんがえました 「 田舎 の 子 は 、 雑誌 を 見たい のだ 。 いなか||こ||ざっし||みたい| 僕たち 街 の 子 は 、 おかめ どんぐり が ほしい のだ 。 ぼくたち|がい||こ|||||| かえっこ すれば いい じゃ ない か 。」 あくる 日 、 三郎 さん は 、 学校 へ いって 、 |ひ|さぶろう|||がっこう||

「 君 たち の よんだ 雑誌 を 田舎 の 子供 へ 、 送って やって 、 田舎 の 子供 たち から 、 おかめ どんぐり を 送って もらおう よ 。」 きみ||||ざっし||いなか||こども||おくって||いなか||こども||||||おくって|| と 、 相談 しました 。 |そうだん| 「 賛成 、 賛成 ! さんせい|さんせい 」 その こと を 、 三郎 さん から 、 孝二 くん に いって やる と 、 すぐに 返事 が きて 、 田舎 の 子供 たち も 大喜びだ と いう のでした 。 |||さぶろう|||こうじ|||||||へんじ|||いなか||こども|||おおよろこびだ||| そして 、 雑誌 や おかめ どんぐり より も 、 まだ 知ら ない 、 遠い 田舎 と 、 街 と で 、 おたがいに 、 交際 する の が 、 とても うれしかった のであります 。 |ざっし|||||||しら||とおい|いなか||がい||||こうさい||||||