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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 55. 手紙一 - 宮沢賢治

55. 手紙 一 - 宮沢 賢治

手紙 一 - 宮沢 賢治.

むかし 、 ある ところ に 一 疋 の 竜 が すんで いました 。 力 が 非常に 強く 、 かたち も 大層 恐ろしく 、 それ に はげしい 毒 を もって いました ので 、 あらゆる いきもの が この 竜 に 遭えば 、 弱い もの は 目 に 見た だけ で 気 を 失って 倒れ 、 強い もの でも その 毒気 に あたって まもなく 死んで しまう ほど でした 。 この 竜 は ある とき 、 よい こころ を 起して 、 これ から は もう 悪い こと を し ない 、 すべて の もの を なやま さ ない と 誓いました 。 そして 静かな ところ を 、 求めて 林 の 中 に 入って じっと 道理 を 考えて いました が とうとう つかれて ねむりました 。 全体 、 竜 と いう もの は ねむる あいだ は 形 が 蛇 の ように なる のです 。

この 竜 も 睡って 蛇 の 形 に なり 、 から だに は きれいな るり 色 や 金色 の 紋 が あらわれて いました 。 そこ へ 猟師 共 が 来 まして 、 この 蛇 を 見て びっくり する ほど よろこんで 云 いました 。 「 こんな きれいな 珍 らしい 皮 を 、 王様 に 差しあげて かざり に して もらったら どんなに 立派だろう 。」

そこ で 杖 で その 頭 を ぐっと おさえ 刀 で その 皮 を はぎ はじめました 。 竜 は 目 を さまして 考えました 。 「 おれ の 力 は この 国 さえ も こわして しまえる 。 この 猟師 な ん ぞ は なんでもない 。 いま おれ が いき を ひと つ すれば 毒 に あたって すぐ 死んで しまう 。 けれども 私 は さっき 、 もう わるい こと を し ない と 誓った し この 猟師 を ころした ところ で 本当に か あい そうだ 。 もはや この からだ は なげすてて 、 こらえて こらえて やろう 。」

すっかり 覚悟 が きまりました ので 目 を つぶって 痛い の を じっと こらえ 、 また その 人 を 毒 に あて ない ように いき を こらして 一心に 皮 を はがれ ながら くやしい と いう こころ さえ 起しません でした 。 猟師 は まもなく 皮 を はいで 行って しまいました 。 竜 は いま は 皮 の ない 赤い 肉 ばかり で 地 に よこたわりました 。 この 時 は 日 が かんかん と 照って 土 は 非常に あつく 、 竜 は くるし さ に ば たば たし ながら 水 の ある ところ へ 行こう と しました 。 この とき 沢山 の 小さな 虫 が 、 その からだ を 食おう と して 出て きました ので 蛇 は また 、 「 いま この からだ を たくさんの 虫 に やる の は まこと の 道 の ため だ 。 いま 肉 を この 虫 ら に くれて おけば やがて は まこと の 道 を も この 虫 ら に 教える こと が できる 。」 と 考えて 、 だまって うごか ず に 虫 に からだ を 食わせ とうとう 乾いて 死んで しまいました 。 死んで この 竜 は 天上 に うまれ 、 後 に は 世界 で いちばん えらい 人 、 お 釈迦 様 に なって みんな に 一 番 の しあわせ を 与えました 。 この とき の 虫 も みな さき に 竜 の 考えた ように 後 に お 釈迦 さま から 教 を 受けて まこと の 道 に 入りました 。 このように して お 釈迦 さま が まこと の ため に 身 を すてた 場所 は いま は 世界中 の あらゆる ところ を みたしました 。 この はなし は おとぎばなし では ありません 。

55. 手紙 一 - 宮沢 賢治 てがみ|ひと|みやさわ|けんじ 55. letter 1 - miyazawa kenji 55. carta 1 - Kenji Miyazawa

手紙 一 - 宮沢 賢治. てがみ|ひと|みやさわ|けんじ

むかし 、 ある ところ に 一 疋 の 竜 が すんで いました 。 ||||ひと|ひき||りゅう||| Once upon a time, there was a dragon living in one place. 力 が 非常に 強く 、 かたち も 大層 恐ろしく 、 それ に はげしい 毒 を もって いました ので 、 あらゆる いきもの が この 竜 に 遭えば 、 弱い もの は 目 に 見た だけ で 気 を 失って 倒れ 、 強い もの でも その 毒気 に あたって まもなく 死んで しまう ほど でした 。 ちから||ひじょうに|つよく|||たいそう|おそろしく||||どく|||||||||りゅう||あえば|よわい|||め||みた|||き||うしなって|たおれ|つよい||||どっけ||||しんで||| It was so powerful, it was very terrifying in shape, and it had a terrible poison, so if any creature encountered this dragon, the weak would be fainted and collapsed just by looking at it, and even the strong one would be poisonous. He died shortly after hitting him. この 竜 は ある とき 、 よい こころ を 起して 、 これ から は もう 悪い こと を し ない 、 すべて の もの を なやま さ ない と 誓いました 。 |りゅう|||||||おこして|||||わるい|||||||||||||ちかいました そして 静かな ところ を 、 求めて 林 の 中 に 入って じっと 道理 を 考えて いました が とうとう つかれて ねむりました 。 |しずかな|||もとめて|りん||なか||はいって||どうり||かんがえて||||| Then, in search of a quiet place, I went into the forest and thought about the reason, but at last I was tired of it and slept. 全体 、 竜 と いう もの は ねむる あいだ は 形 が 蛇 の ように なる のです 。 ぜんたい|りゅう||||||||かた||へび||よう に|| All in all, a dragon is shaped like a snake while it sleeps.

この 竜 も 睡って 蛇 の 形 に なり 、 から だに は きれいな るり 色 や 金色 の 紋 が あらわれて いました 。 |りゅう||すいって|へび||かた||||||||いろ||きんいろ||もん||| そこ へ 猟師 共 が 来 まして 、 この 蛇 を 見て びっくり する ほど よろこんで 云 いました 。 ||りょうし|とも||らい|||へび||みて|||||うん| The hunters came there and were so happy to see this snake. 「 こんな きれいな 珍 らしい 皮 を 、 王様 に 差しあげて かざり に して もらったら どんなに 立派だろう 。」 ||ちん||かわ||おうさま||さしあげて||||||りっぱだろう

そこ で 杖 で その 頭 を ぐっと おさえ 刀 で その 皮 を はぎ はじめました 。 ||つえ|||あたま||||かたな|||かわ||| There he held his head tight with a cane and began to peel it off with a sword. 竜 は 目 を さまして 考えました 。 りゅう||め|||かんがえました 「 おれ の 力 は この 国 さえ も こわして しまえる 。 ||ちから|||くに|||| "My power can destroy even this country. この 猟師 な ん ぞ は なんでもない 。 |りょうし||||| This hunter is nothing. いま おれ が いき を ひと つ すれば 毒 に あたって すぐ 死んで しまう 。 ||||||||どく||||しんで| けれども 私 は さっき 、 もう わるい こと を し ない と 誓った し この 猟師 を ころした ところ で 本当に か あい そうだ 。 |わたくし||||||||||ちかった|||りょうし|||||ほんとうに|||そう だ But I just vowed that I wouldn't do anything wrong, and it seems like it's true when I killed this hunter. もはや この からだ は なげすてて 、 こらえて こらえて やろう 。」

すっかり 覚悟 が きまりました ので 目 を つぶって 痛い の を じっと こらえ 、 また その 人 を 毒 に あて ない ように いき を こらして 一心に 皮 を はがれ ながら くやしい と いう こころ さえ 起しません でした 。 |かくご||||め|||いたい|||||||じん||どく||||よう に||||いっしんに|かわ|||||||||おこしません| 猟師 は まもなく 皮 を はいで 行って しまいました 。 りょうし|||かわ|||おこなって| The hunter soon went off the skin. 竜 は いま は 皮 の ない 赤い 肉 ばかり で 地 に よこたわりました 。 りゅう||||かわ|||あかい|にく|||ち|| この 時 は 日 が かんかん と 照って 土 は 非常に あつく 、 竜 は くるし さ に ば たば たし ながら 水 の ある ところ へ 行こう と しました 。 |じ||ひ||||てって|つち||ひじょうに||りゅう|||||||||すい|||||いこう|| At this time, the sun was shining brightly and the soil was very hot, and the dragon tried to go to a place with water while fluttering in the rush. この とき 沢山 の 小さな 虫 が 、 その からだ を 食おう と して 出て きました ので 蛇 は また 、 ||たくさん||ちいさな|ちゅう|||||くおう|||でて|||へび|| At this time, many small insects came out trying to eat their bodies, so the snake also came out. 「 いま この からだ を たくさんの 虫 に やる の は まこと の 道 の ため だ 。 |||||ちゅう|||||||どう||| いま 肉 を この 虫 ら に くれて おけば やがて は まこと の 道 を も この 虫 ら に 教える こと が できる 。」 |にく|||ちゅう|||||||||どう||||ちゅう|||おしえる||| If you give the meat to these insects now, you will soon be able to teach them the true way. " と 考えて 、 だまって うごか ず に 虫 に からだ を 食わせ とうとう 乾いて 死んで しまいました 。 |かんがえて|||||ちゅう||||くわせ||かわいて|しんで| Thinking about it, I finally let the insects eat my body without moving, and finally it dried up and died. 死んで この 竜 は 天上 に うまれ 、 後 に は 世界 で いちばん えらい 人 、 お 釈迦 様 に なって みんな に 一 番 の しあわせ を 与えました 。 しんで||りゅう||てんじょう|||あと|||せかい||||じん||しゃか|さま|||||ひと|ばん||||あたえました Dead, this dragon was born in heaven, and later became the greatest man in the world, Buddha, and gave everyone the best happiness. この とき の 虫 も みな さき に 竜 の 考えた ように 後 に お 釈迦 さま から 教 を 受けて まこと の 道 に 入りました 。 |||ちゅう|||||りゅう||かんがえた|よう に|あと|||しゃか|||きょう||うけて|||どう||はいりました このように して お 釈迦 さま が まこと の ため に 身 を すてた 場所 は いま は 世界中 の あらゆる ところ を みたしました 。 このよう に|||しゃか|||||||み|||ばしょ||||せかいじゅう||||| この はなし は おとぎばなし では ありません 。