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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 47. 声 と 人柄 - 宮城 道雄

47. 声 と 人柄 - 宮城 道雄

声 と 人柄 - 宮城 道雄

或時 、 横須賀 から 東京 に 向 う 省線 に 逗子 駅 から 乗った こと が あった 。 ところが その 電車 が 非常に 混 んで いて 、 空いた 座席 が 殆ど なかった 。 丁度 その 時 、 どこ か の 地方 の 青年 団 の 人々 が 乗って いた が 、 その 中 の 一 人 が 、 私 の 乗り込んだ の を 見て か 「 おい 、 起て 起て 」 と 言ったら 、 腰かけて いた 人 たち が みな 起ち あがって 、 私 たち に 席 を 与えて くれた 。

もし その 場合 に 、 私 が 目 が 見えて いたら 辞退 する のである が 、 私 は 盲人 な ので 折角 の 親切 を 無にして は 悪い と 思った ので 、 腰かけ させて もらった 。

私 は 初め その 青年 団 の 人 たち が 、 つい 近く へ でも 行く の か と 思って いたら 、 やはり 私 たち と 同様に 東京 へ 行く らしい のである 。 そして 、 独り言 の ように 「 なあ に 、 我々 は 起って いた って いい のだ 」 と 言って いた 。 それ から また 、 自分 たち が 起って いる 苦痛 を まぎらわす ため か 、 元 気 よく お 互に 話し合って いた 。 そう か と 思う と 、 何 か 手 を まるめて 、 喇叭 の 真似 を 始め だした 。

そして 、 色々の 節 を 吹いて いた が 、 それ が なかなか 上手に やって いた 。 一節 吹いて は 興じ 合って 、 みんな が 元気に 笑って いた 。 私 は それ を 面白く 感じた 。

私 は 人 の 言葉 つきで 、 その 人 が 今日 自分 に 、 どういう 用向き で 来た か と いう こと が 、 あらかじめ わかる 。

その 人 が どういう 態度 を して いる か と いう こと も 、 自然に 感じられる のである 。 ある 夏 の 暑い 時 であった が 、 或る 人 が 尺八 を 合せ に 、 私 の ところ に 来た こと が ある 。 その 人 と は 心 易い 間柄 だった し 、 丁度 その 時 は 誰 も 居合わせ なかった ので 、 その 人 が 上 著 を 脱ぎ 、 はだか に なって 尺八 を 吹き出した 。 私 は それ を 感じて いた けれども 黙って 合奏 を した のであった 。 そして いよいよ 済んだ あと で 、 私 が 今日 の ような 暑い 日 に は 、 はだか で やる と 大変 涼しい でしょう なあ 、 と 言ったら その 人 は 驚いて 、 這 ほう 這 ほう の 体 で 帰って しまった 。 その 人 は 別に 私 を 誤 魔 化 そう と 思って やった ので は なく 、 心 易 さ から の こと だったろう が 、 私 の 言った こと が 当たった のであった 。

とりわけ 、 声 で 、 一 番 私 の 感ずる こと は 、 バス や 円 タク に 乗った 場合 である 。

声 を 聞いた だけ で 、 今日 は 運転手 が 、 疲れて いる な と 思ったり 、 また 賃銀 でも 値ぎら れた の か 、 非常に 憤慨 した 気持 の まま だ と か 、 ちゃんと 知る こと が できる 。

電車 や バス など の 車掌 が 、 わざわざ 発車 する の を 遅らせて も 、 私 たち 不自由な 者 の 手 を 引いて 、 乗せて くれたり する こと が ある 。 こういう 風 に 、 道 の 途中 を 歩いて いて も 、 その 人 の 声 を 聞いて 、 その 人 の 人柄 が 知ら れる のである が 、 私 は 心 の 持ち ようで 、 声 まで 変わって 来る もの だ と いう こと を 信じて いる 。

そして 、 非常に 感謝 の 気持 で 仕事 を して いる 人 と 、 疲れ の 工 合 か 何 か 、 非常に 不愉快 らしく して いる 人 が ある ように 思う が 、 その 差 は 少し の 心 の 持ち ようで 、 どちら に も なる のである と 私 は 思う 。

47. 声 と 人柄 - 宮城 道雄 こえ||ひとがら|みやぎ|みちお 47. voice and personality - Michio Miyagi 47. 목소리와 성격 - 미야기 미치오 47. голос и личность - Мичио Мияги

声 と 人柄 - 宮城 道雄 こえ||ひとがら|みやぎ|みちお Voice and personality-Michio Miyagi

或時 、 横須賀 から 東京 に 向 う 省線 に 逗子 駅 から 乗った こと が あった 。 あるとき|よこすか||とうきょう||むかい||しょう せん||ずし|えき||のった||| One time, I boarded a local train bound for Tokyo from Yokosuka at Zushi Station. ところが その 電車 が 非常に 混 んで いて 、 空いた 座席 が 殆ど なかった 。 ||でんしゃ||ひじょうに|こん|||あいた|ざせき||ほとんど| However, the train was very crowded and there were few vacant seats. 丁度 その 時 、 どこ か の 地方 の 青年 団 の 人々 が 乗って いた が 、 その 中 の 一 人 が 、 私 の 乗り込んだ の を 見て か 「 おい 、 起て 起て 」 と 言ったら 、 腰かけて いた 人 たち が みな 起ち あがって 、 私 たち に 席 を 与えて くれた 。 ちょうど||じ||||ちほう||せいねん|だん||ひとびと||のって||||なか||ひと|じん||わたくし||のりこんだ|||みて|||おこ て|おこ て||いったら|こしかけて||じん||||おこ ち||わたくし|||せき||あたえて| At that time, people from a seinendan in some region were on board, but one of them was sitting down when he saw me boarded or said, "Hey, get up." All the people got up and gave us a seat.

もし その 場合 に 、 私 が 目 が 見えて いたら 辞退 する のである が 、 私 は 盲人 な ので 折角 の 親切 を 無にして は 悪い と 思った ので 、 腰かけ させて もらった 。 ||ばあい||わたくし||め||みえて||じたい||||わたくし||もうじん|||せっかく||しんせつ||むにして||わるい||おもった||こしかけ|さ せて| In that case, if I had been able to see, I would have declined, but since I am blind, I thought it would be a bad idea to let my kindness go to waste, so I was allowed to sit down.

私 は 初め その 青年 団 の 人 たち が 、 つい 近く へ でも 行く の か と 思って いたら 、 やはり 私 たち と 同様に 東京 へ 行く らしい のである 。 わたくし||はじめ||せいねん|だん||じん||||ちかく|||いく||||おもって|||わたくし|||どうように|とうきょう||いく|| At first, I thought that the Seinendan people were going to the nearby area, but it seems that they are going to Tokyo just like us. そして 、 独り言 の ように 「 なあ に 、 我々 は 起って いた って いい のだ 」 と 言って いた 。 |ひとりごと|||||われわれ||おこって||||||いって| Then, as if talking to himself, he said, "Well, it's okay for us to be awake." それ から また 、 自分 たち が 起って いる 苦痛 を まぎらわす ため か 、 元 気 よく お 互に 話し合って いた 。 |||じぶん|||おこって||くつう|||||もと|き|||ご に|はなしあって| Afterwards, they chatted cheerfully to each other, perhaps to distract themselves from the pain they were experiencing. そう か と 思う と 、 何 か 手 を まるめて 、 喇叭 の 真似 を 始め だした 。 |||おもう||なん||て|||らっぱ||まね||はじめ| When I thought about it, I put my hands together and began to imitate a trumpet.

そして 、 色々の 節 を 吹いて いた が 、 それ が なかなか 上手に やって いた 。 |いろいろの|せつ||ふいて||||||じょうずに|| And he was blowing various tunes, and he was doing it quite well. 一節 吹いて は 興じ 合って 、 みんな が 元気に 笑って いた 。 いっせつ|ふいて||きょうじ|あって|||げんきに|わらって| Everyone was cheerfully laughing as they played each verse. 私 は それ を 面白く 感じた 。 わたくし||||おもしろく|かんじた I found it amusing.

私 は 人 の 言葉 つきで 、 その 人 が 今日 自分 に 、 どういう 用向き で 来た か と いう こと が 、 あらかじめ わかる 。 わたくし||じん||ことば|||じん||きょう|じぶん|||ようむき||きた||||||| From the way people speak, I know in advance what purpose they have come to me today.

その 人 が どういう 態度 を して いる か と いう こと も 、 自然に 感じられる のである 。 |じん|||たいど|||||||||しぜんに|かんじ られる| I can naturally sense what kind of attitude the person has. ある 夏 の 暑い 時 であった が 、 或る 人 が 尺八 を 合せ に 、 私 の ところ に 来た こと が ある 。 |なつ||あつい|じ|||ある|じん||しゃくはち||あわせ||わたくし||||きた||| One hot summer day, a man came to me to tune his shakuhachi. その 人 と は 心 易い 間柄 だった し 、 丁度 その 時 は 誰 も 居合わせ なかった ので 、 その 人 が 上 著 を 脱ぎ 、 はだか に なって 尺八 を 吹き出した 。 |じん|||こころ|やすい|あいだがら|||ちょうど||じ||だれ||いあわせ||||じん||うえ|ちょ||ぬぎ||||しゃくはち||ふきだした I had a very comfortable relationship with him, and since no one else was present at the time, he took off his jacket, got naked, and blew out his shakuhachi. 私 は それ を 感じて いた けれども 黙って 合奏 を した のであった 。 わたくし||||かんじて|||だまって|がっそう||| I could feel it, but I played in silence. そして いよいよ 済んだ あと で 、 私 が 今日 の ような 暑い 日 に は 、 はだか で やる と 大変 涼しい でしょう なあ 、 と 言ったら その 人 は 驚いて 、 這 ほう 這 ほう の 体 で 帰って しまった 。 ||すんだ|||わたくし||きょう|||あつい|ひ|||||||たいへん|すずしい||||いったら||じん||おどろいて|は||は|||からだ||かえって| And when it was finally over, I said that on a hot day like today, it would be very cool to do it naked. その 人 は 別に 私 を 誤 魔 化 そう と 思って やった ので は なく 、 心 易 さ から の こと だったろう が 、 私 の 言った こと が 当たった のであった 。 |じん||べつに|わたくし||ご|ま|か|||おもって|||||こころ|やす|||||||わたくし||いった|||あたった| That person probably didn't really want to deceive me.

とりわけ 、 声 で 、 一 番 私 の 感ずる こと は 、 バス や 円 タク に 乗った 場合 である 。 |こえ||ひと|ばん|わたくし||かんずる|||ばす||えん|||のった|ばあい| In particular, the voice that I feel the most is when I get on a bus or yen taxi.

声 を 聞いた だけ で 、 今日 は 運転手 が 、 疲れて いる な と 思ったり 、 また 賃銀 でも 値ぎら れた の か 、 非常に 憤慨 した 気持 の まま だ と か 、 ちゃんと 知る こと が できる 。 こえ||きいた|||きょう||うんてんしゅ||つかれて||||おもったり||ちんぎん||ねぎら||||ひじょうに|ふんがい||きもち|||||||しる||| Just by hearing his voice, I can tell if the driver is tired today, or if he's been bargained for wages, or if he's still very angry.

電車 や バス など の 車掌 が 、 わざわざ 発車 する の を 遅らせて も 、 私 たち 不自由な 者 の 手 を 引いて 、 乗せて くれたり する こと が ある 。 でんしゃ||ばす|||しゃしょう|||はっしゃ||||おくらせて||わたくし||ふじゆうな|もの||て||ひいて|のせて||||| Even if the conductors of trains and buses go out of their way to delay the departure, they sometimes take us handicapped people by the hand and give us a ride. こういう 風 に 、 道 の 途中 を 歩いて いて も 、 その 人 の 声 を 聞いて 、 その 人 の 人柄 が 知ら れる のである が 、 私 は 心 の 持ち ようで 、 声 まで 変わって 来る もの だ と いう こと を 信じて いる 。 |かぜ||どう||とちゅう||あるいて||||じん||こえ||きいて||じん||ひとがら||しら||||わたくし||こころ||もち||こえ||かわって|くる|||||||しんじて| I believe that the voice of a person can be changed by the way he or she speaks.

そして 、 非常に 感謝 の 気持 で 仕事 を して いる 人 と 、 疲れ の 工 合 か 何 か 、 非常に 不愉快 らしく して いる 人 が ある ように 思う が 、 その 差 は 少し の 心 の 持ち ようで 、 どちら に も なる のである と 私 は 思う 。 |ひじょうに|かんしゃ||きもち||しごと||||じん||つかれ||こう|ごう||なん||ひじょうに|ふゆかい||||じん||||おもう|||さ||すこし||こころ||もち||||||||わたくし||おもう And I think there are people who are very grateful to work, and people who are tired or something and are very unhappy, but the difference seems to be a little bit of mentality, I think it will go either way.