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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 45. 赤い船とつばめ - 小川未明

45. 赤い船とつばめ - 小川未明

赤い 船 と つばめ - 小川 未明

ある 日 の 晩 方 、 赤い 船 が 、 浜辺 に つきました 。 その 船 は 、 南 の 国 から きた ので 、 つばめ を 迎え に 、 王さま が 、 よこさ れた もの です 。

長い 間 、 北 の 青い 海 の 上 を 飛んだり 、 電信柱 の 上 に とまって 、 さえずって いました つばめ たち は 、 秋風 が そよそよ と 吹いて 、 木 の 葉 が 色づく ころ に なる と 、 もはや 、 南 の 方 の お家 へ 帰ら なければ なりません でした 。 寒 さ に 弱い 、 この 小鳥 は 、 あたたかな ところ に 育つ ように 生まれ ついた から です 。

王さま は 、 もう つばめ ら の 帰る 時分 だ と 思う と 、 赤い 船 を 迎え に よこさ れました 。 つばめ たち も 、 船 に 乗りおくれて は なら ぬ と 思って 、 その 時分 に は 、 海岸 の 近く に きて 、 気 を つけて いました 。 そして 、 波間 に 、 赤い 船 が 見える と 、

「 キイ 、 キイ ……。」 と いって 、 喜んで 鳴いた のです 。

早く 見つけた つばめ は 、 それ を まだ 知ら ない 友だち に 告げる ため に 、 空 高く 舞い上がって 、 紺色 の 美しい 翼 を ひるがえし ながら 、

「 赤い 船 が きました よ 。 さあ 、 もう 私 たち は 、 立つ とき です 。 どうか 、 遠方 に いる お 友だち に 知らせて ください 。」 と いいました 。 なか に は 遠い ところ に いて 、 まだ 知ら ず に いる もの も ありました 。 そういう つばめ は 、 村 に 他 の いい お 友だち が できて 、「 まあ 、 まあ 、 そんなに 急いで 、 お 帰り なさる こと は ない 。」 と いわれて 、 引きとめられて いる つばめ たち であった のでした 。 赤い 船 は 、 浜辺 に 四 日 、 五 日 、 と まって いました 。 そして 、 四方 から 、 毎日 の ように 集まって くる つばめ を 待って いました 。 もう 、 たくさん つばめ が 船 に 乗って 、 最後に は 、 ほばしら の 上 まで 止まって 、 まったく 、 は いる 席 が なくなった 時分 、 静かに 海岸 を はなれた のです 。

たいてい は 、 月 の いい 晩 を 見はからって 、 出発 しました 。 なぜなら 、 長い 海 の 上 を ゆく に は 、 景色 が 見え なければ 、 退屈である し 、 また 途中 から 、 船 を たよって 、 飛んで きて 加わる もの が ない と は かぎら なかった から です 。

ある とき 、 一 羽 の つばめ は 、 船 に 乗ろう と 思って 、 遠い ところ から 、 急いで 飛んで きました が 、 すでに 船 の 立って しまった 後 でした 。 その つばめ は 、 ひじょうに がっかり しました 。 しかたなく 、 木 の 葉 を 船 と して 、 これ に 乗って ゆこう と 決心 しました 。 それ より 海 の かなた へ 、 渡る 途 は なかった のです 。

昼間 は 、 木 の 葉 を くわえて 飛んで 、 夜 に なる と 葉 を 船 に して 、 その 上 で 休みました 。 その つばめ は 、 こうして 、 旅 を して いる うち に 、 一夜 、 ひじょうな 暴風 に 出あいました 。 驚いて 、 木 の 葉 を しっかり と くわえて 暗い 空 に 舞い上がり 、 死にもの狂い で 夜 の 間 を 暴風 と 戦い ながら か けりました 。 夜 が 明ける と 、 はるか 目 の 下 の 波間 に 、 赤い 船 が 、 暴風 の ため に 、 くつがえって いる の を 見ました 。 それ は 、 王さま の お迎え に 出さ れた 赤い 船 です 。 つばめ は 、 急いで 帰って 、 この こと を 王さま に 申し上げました 。 ―― 王さま は 、 ここ に はじめて 、 自ら の 力 を たよる こと の いちばん 安心な の を 悟ら れ 、 あくる 年 から 、 赤い 船 を 出す こと を 見合わせられた のであります 。 ―― 一九二六・九 ――

45. 赤い船とつばめ - 小川未明 あかい せん と つばめ|おがわ みめい 45. red boat and swallow - ogawa miaki 45. Красная лодка и ласточка - Мимэй Огава 45. 紅船與燕子 - 小川未明

赤い 船 と つばめ - 小川 未明 あかい|せん|||おがわ|みめい Red Ship and Swallow-Mimei Ogawa

ある 日 の 晩 方 、 赤い 船 が 、 浜辺 に つきました 。 |ひ||ばん|かた|あかい|せん||はまべ||つき ました One evening, a red boat arrived on the beach. その 船 は 、 南 の 国 から きた ので 、 つばめ を 迎え に 、 王さま が 、 よこさ れた もの です 。 |せん||みなみ||くに||||||むかえ||おうさま||||| The ship came from a southern country, so the king had sent it to pick up the swallow.

長い 間 、 北 の 青い 海 の 上 を 飛んだり 、 電信柱 の 上 に とまって 、 さえずって いました つばめ たち は 、 秋風 が そよそよ と 吹いて 、 木 の 葉 が 色づく ころ に なる と 、 もはや 、 南 の 方 の お家 へ 帰ら なければ なりません でした 。 ながい|あいだ|きた||あおい|うみ||うえ||とんだり|でんしんばしら||うえ||||い ました||||あきかぜ||||ふいて|き||は||いろづく||||||みなみ||かた||おいえ||かえら||なり ませ ん| 寒 さ に 弱い 、 この 小鳥 は 、 あたたかな ところ に 育つ ように 生まれ ついた から です 。 さむ|||よわい||ことり|||||そだつ||うまれ||| Sensitive to the cold, this little bird was born to grow up in a warm place.

王さま は 、 もう つばめ ら の 帰る 時分 だ と 思う と 、 赤い 船 を 迎え に よこさ れました 。 おうさま||||||かえる|じぶん|||おもう||あかい|せん||むかえ|||れ ました The King sent me to pick up the red ship, thinking that it was time for the swallows to return. つばめ たち も 、 船 に 乗りおくれて は なら ぬ と 思って 、 その 時分 に は 、 海岸 の 近く に きて 、 気 を つけて いました 。 |||せん||のりおくれて|||||おもって||じぶん|||かいがん||ちかく|||き|||い ました The swallows were also careful not to miss the boat, so by that time they were near the shore. そして 、 波間 に 、 赤い 船 が 見える と 、 |なみま||あかい|せん||みえる|

「 キイ 、 キイ ……。」 きい|きい と いって 、 喜んで 鳴いた のです 。 ||よろこんで|ないた|

早く 見つけた つばめ は 、 それ を まだ 知ら ない 友だち に 告げる ため に 、 空 高く 舞い上がって 、 紺色 の 美しい 翼 を ひるがえし ながら 、 はやく|みつけた||||||しら||ともだち||つげる|||から|たかく|まいあがって|こんいろ||うつくしい|つばさ||| The swallow, which I found early, soared high in the sky to tell a friend who didn't know it yet, while turning over its beautiful dark blue wings.

「 赤い 船 が きました よ 。 あかい|せん||き ました| さあ 、 もう 私 たち は 、 立つ とき です 。 ||わたくし|||たつ|| どうか 、 遠方 に いる お 友だち に 知らせて ください 。」 |えんぽう||||ともだち||しらせて| と いいました 。 |いい ました なか に は 遠い ところ に いて 、 まだ 知ら ず に いる もの も ありました 。 |||とおい|||||しら||||||あり ました Some of them were far away and I didn't know yet. そういう つばめ は 、 村 に 他 の いい お 友だち が できて 、「 まあ 、 まあ 、 そんなに 急いで 、 お 帰り なさる こと は ない 。」 |||むら||た||||ともだち||||||いそいで||かえり|||| と いわれて 、 引きとめられて いる つばめ たち であった のでした 。 |いわ れて|ひきとめ られて||||| 赤い 船 は 、 浜辺 に 四 日 、 五 日 、 と まって いました 。 あかい|せん||はまべ||よっ|ひ|いつ|ひ|||い ました そして 、 四方 から 、 毎日 の ように 集まって くる つばめ を 待って いました 。 |しほう||まいにち|||あつまって||||まって|い ました And, from all sides, I was waiting for the swallows that gathered almost every day. もう 、 たくさん つばめ が 船 に 乗って 、 最後に は 、 ほばしら の 上 まで 止まって 、 まったく 、 は いる 席 が なくなった 時分 、 静かに 海岸 を はなれた のです 。 ||||せん||のって|さいごに||||うえ||とまって||||せき|||じぶん|しずかに|かいがん||| A lot of swallows were already on board the ship, and finally, they stopped above the mast, and when there were no seats at all, they quietly left the shore.

たいてい は 、 月 の いい 晩 を 見はからって 、 出発 しました 。 ||つき|||ばん||みはからって|しゅっぱつ|し ました Most of the time, I left after seeing a good evening on the moon. なぜなら 、 長い 海 の 上 を ゆく に は 、 景色 が 見え なければ 、 退屈である し 、 また 途中 から 、 船 を たよって 、 飛んで きて 加わる もの が ない と は かぎら なかった から です 。 |ながい|うみ||うえ|||||けしき||みえ||たいくつである|||とちゅう||せん|||とんで||くわわる||||||||| Because it was boring to go over the long sea if you couldn't see the scenery, and it wasn't always the case that there was nothing to fly and join by the ship along the way.

ある とき 、 一 羽 の つばめ は 、 船 に 乗ろう と 思って 、 遠い ところ から 、 急いで 飛んで きました が 、 すでに 船 の 立って しまった 後 でした 。 ||ひと|はね||||せん||のろう||おもって|とおい|||いそいで|とんで|き ました|||せん||たって||あと| その つばめ は 、 ひじょうに がっかり しました 。 |||||し ました The swallow was very disappointing. しかたなく 、 木 の 葉 を 船 と して 、 これ に 乗って ゆこう と 決心 しました 。 |き||は||せん|||||のって|||けっしん|し ました I had no choice but to use the leaves of the tree as a ship and decided to ride on it. それ より 海 の かなた へ 、 渡る 途 は なかった のです 。 ||うみ||||わたる|と||| There was no way to cross beyond the sea.

昼間 は 、 木 の 葉 を くわえて 飛んで 、 夜 に なる と 葉 を 船 に して 、 その 上 で 休みました 。 ひるま||き||は|||とんで|よ||||は||せん||||うえ||やすみ ました その つばめ は 、 こうして 、 旅 を して いる うち に 、 一夜 、 ひじょうな 暴風 に 出あいました 。 ||||たび||||||いちや||ぼうふう||であい ました 驚いて 、 木 の 葉 を しっかり と くわえて 暗い 空 に 舞い上がり 、 死にもの狂い で 夜 の 間 を 暴風 と 戦い ながら か けりました 。 おどろいて|き||は|||||くらい|から||まいあがり|しにものぐるい||よ||あいだ||ぼうふう||たたかい|||けり ました Astonished, he clung to the leaves of the tree and soared into the dark sky, dying madly during the night fighting the storm. 夜 が 明ける と 、 はるか 目 の 下 の 波間 に 、 赤い 船 が 、 暴風 の ため に 、 くつがえって いる の を 見ました 。 よ||あける|||め||した||なみま||あかい|せん||ぼうふう||||||||み ました At dawn, I saw a red ship overturned in the waves far below, due to a storm. それ は 、 王さま の お迎え に 出さ れた 赤い 船 です 。 ||おうさま||おむかえ||ださ||あかい|せん| つばめ は 、 急いで 帰って 、 この こと を 王さま に 申し上げました 。 ||いそいで|かえって||||おうさま||もうしあげ ました ―― 王さま は 、 ここ に はじめて 、 自ら の 力 を たよる こと の いちばん 安心な の を 悟ら れ 、 あくる 年 から 、 赤い 船 を 出す こと を 見合わせられた のであります 。 おうさま|||||おのずから||ちから||||||あんしんな|||さとら|||とし||あかい|せん||だす|||みあわせ られた|のであり ます ――For the first time, the King realized that he was most relieved to rely on his own power, and from the coming year he was not allowed to launch a red ship. ―― 一九二六・九 ―― いちきゅうにろく|ここの