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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 100. 片田舎にあった話 - 小川未明

100. 片田舎にあった話 - 小川未明

片田舎 に あった 話 - 小川 未明

さびしい 片田舎 に 、 お じいさん と おばあ さん が 住んで いました 。 ・・

ある 日 、 都 に いる せがれ の ところ から 、 小包 が とどいた のです 。 ・・

「 まあ 、 まあ 、 なに を 送って くれた か 。」 と いって 、 二 人 は 、 開けて みました 。 ・・

中 から 、 肉 の かん詰め と 果物 と 、 もう 一 つ なに か の かん詰め が はいって いました 。 ・・

「 これ は 、 おいし そうな もの ばかり だ 。」 と いって 、 二 人 は 喜びました 。 ・・

夕飯 の とき に 、 お じいさん は 、・・

「 どれ 、 せがれ が 送って よこした 、 かん詰め を 開け ようじゃ ない か 。」 と 、 おばあ さん に いいました 。 ・・

おばあ さん は 、 三 つ の かん詰め を 膳 の ところ へ 持ってきて 、・・

「 どれ に しましょう か 。」 と 、 お じいさん に たずねました 。 ・・

「 そちら の 小形の 赤 いかん は 、 なんだろう な 。」 と 、 お じいさん は 、 いいました 。 ・・

おばあ さん に も 、 よく 、 それ が わかりません でした 。 ・・

「 なに か 、 外国 の 文字 が 書いて あります が ……。」 と いって 、 お じいさん に 手渡しました 。 ・・

お じいさん も 、 手 に 取って みた が 、 やはり わかりません でした 。 ・・

「 どんな もの か 、 これ を ひと つ 開けて みよう ……」 と いいました 。 ・・

たとえ 、 年 を 取って も 、 やはり 、 珍しい もの に は いちばん 興味 を 覚える もの です 。 ・・

お じいさん は 、 その かん の ふた を 開けました 。 すると 香ばしい かおり が した のです 。 ・・

「 粉 じゃ 、 なんの 粉 だろう ……。」 と 、 頭 を かしげました 。 ・・

こんど は 、 お ばあさん が 、 その 赤 いかん を 取って 、 香 い を 嗅いだ のであります 。 ・・

「 お じいさん 、 これ は 、 やはり 麦 を 挽 いた 粉 です よ 。 うち の せがれ は 、 子供 の 時分 から 、 不思議な 子 で 、 こうせん が 大好きだった から 、 こんな もの を 送って よこした のです よ 。」 と 、 おばあ さん は いいました 。 ・・

「 飯 に でも かけて 食べる の か な 。」 ・・

「 きっと 、 そう する ので ございます よ 。」 ・・

お じいさん と 、 おばあ さん は 、 その 赤 黒い 粉 を 飯 に かけて 食べました 。 しかし 、 その 香 い ほど 、 あまり 、 うまく は ありません 。 ・・

「 砂糖 を まぜ なければ なら ぬだろう 。」 と 、 お じいさん が いいました 。 ・・

「 これ は 、 子供 の 食べる もの です ね 。」 と 、 おばあ さん は いい ながら 、 立って 、 砂糖 を 持ってきました 。 そして 、 二 人 は 、 飯 に かけて 食べました 。 ・・

夜 に なって 、 二 人 は 、 いつも の ごとく 床 に つきました 。 けれど 、 どうした こと か 、 目 が さえて 眠れません でした 。 ・・

「 ああ 、 こうせん を 食べた ので 、 胸 が やけた と みえて 眠れ ない 。」 と 、 お じいさん が いいます と 、・・

「 外国 の もの は 、 体 に 合わ ない から 、 食べる もの で ありません ね 」 と 、 おばあ さん は 、 答えました 。 ・・

二 人 は 、 やっと 眠り つきました が 、 いろいろの 夢 を 見ました 。 ・・

お じいさん は 、 まだ 元気で 、 河 へ 釣り に いった 夢 を 見たり 、 おばあ さん は 、 まだ 若くて 、 みんな と 花見 に いった こと など を 夢 に 見ました 。 ・・

翌日 、 二 人 は 、 あの 赤 いかん の 中 の 粉 を 捨てて しまおう か と 話 を して いました 。 そこ へ 、 小包 より おくれて 、 せがれ から 、 手紙 が とどきました 。 ・・

その 手紙 に よる と 、 赤い かん に は いって いる の は 、 ココア と いう もの である こと が わかりました 。 田舎 に 住んで いる お じいさん や 、 おばあ さん に は 、 まだ そうした 飲み物 の ある こと すら 知ら なかった のです 。 ・・

「 こんな もの を 、 なんで 私 たち が 知ろう か 。」 と いって 、 お じいさん と 、 おばあ さん は 、 顔 を 見合わせて 笑いました 。 ・・

―― 一九二六・一一 ――

100. 片田舎にあった話 - 小川未明 かたいなか に あった はなし|おがわ みめい 100. a story from a rural area - Mimei Ogawa 100. una historia de una zona rural - Mimei Ogawa 100. История из сельской местности - Мимэй Огава

片田舎 に あった 話 - 小川 未明 かたいなか|||はなし|おがわ|みめい Eine Geschichte auf dem Land - Mimei Ogawa A story in a countryside-Mimei Ogawa

さびしい 片田舎 に 、 お じいさん と おばあ さん が 住んで いました 。 |かたいなか||||||||すんで|い ました An old man and an old woman lived in a lonely countryside. ・・

ある 日 、 都 に いる せがれ の ところ から 、 小包 が とどいた のです 。 |ひ|と|||||||こづつみ||| Eines Tages kam ein Paket von einem Ort in der Stadt an. One day, a parcel arrived from a place in the city. ・・

「 まあ 、 まあ 、 なに を 送って くれた か 。」 ||||おくって|| "Well, well, what did you send?" と いって 、 二 人 は 、 開けて みました 。 ||ふた|じん||あけて|み ました However, they tried to open it. ・・

中 から 、 肉 の かん詰め と 果物 と 、 もう 一 つ なに か の かん詰め が はいって いました 。 なか||にく||かんづめ||くだもの|||ひと|||||かんづめ|||い ました ・・

「 これ は 、 おいし そうな もの ばかり だ 。」 |||そう な||| "Das ist alles was lecker aussieht." と いって 、 二 人 は 喜びました 。 ||ふた|じん||よろこび ました ・・

夕飯 の とき に 、 お じいさん は 、・・ ゆうはん||||||

「 どれ 、 せがれ が 送って よこした 、 かん詰め を 開け ようじゃ ない か 。」 |||おくって||かんづめ||あけ||| "Welches hast du mir geschickt, lass uns den Kanister öffnen?" と 、 おばあ さん に いいました 。 ||||いい ました ・・

おばあ さん は 、 三 つ の かん詰め を 膳 の ところ へ 持ってきて 、・・ |||みっ|||かんづめ||ぜん||||もってきて

「 どれ に しましょう か 。」 ||し ましょう| と 、 お じいさん に たずねました 。 ||||たずね ました ・・

「 そちら の 小形の 赤 いかん は 、 なんだろう な 。」 ||こがたの|あか|||| と 、 お じいさん は 、 いいました 。 ||||いい ました ・・

おばあ さん に も 、 よく 、 それ が わかりません でした 。 |||||||わかり ませ ん| ・・

「 なに か 、 外国 の 文字 が 書いて あります が ……。」 ||がいこく||もじ||かいて|あり ます| と いって 、 お じいさん に 手渡しました 。 |||||てわたし ました ・・

お じいさん も 、 手 に 取って みた が 、 やはり わかりません でした 。 |||て||とって||||わかり ませ ん| ・・

「 どんな もの か 、 これ を ひと つ 開けて みよう ……」 と いいました 。 |||||||あけて|||いい ました ・・

たとえ 、 年 を 取って も 、 やはり 、 珍しい もの に は いちばん 興味 を 覚える もの です 。 |とし||とって|||めずらしい|||||きょうみ||おぼえる|| ・・

お じいさん は 、 その かん の ふた を 開けました 。 ||||||||あけ ました Der Großvater öffnete den Deckel der Dose. すると 香ばしい かおり が した のです 。 |こうばしい|||| ・・

「 粉 じゃ 、 なんの 粉 だろう ……。」 こな|||こな| と 、 頭 を かしげました 。 |あたま||かしげ ました ・・

こんど は 、 お ばあさん が 、 その 赤 いかん を 取って 、 香 い を 嗅いだ のであります 。 ||||||あか|||とって|かおり|||かいだ|のであり ます ・・

「 お じいさん 、 これ は 、 やはり 麦 を 挽 いた 粉 です よ 。 |||||むぎ||ばん||こな|| うち の せがれ は 、 子供 の 時分 から 、 不思議な 子 で 、 こうせん が 大好きだった から 、 こんな もの を 送って よこした のです よ 。」 ||||こども||じぶん||ふしぎな|こ||||だいすきだった|||||おくって||| Seit ich ein Kind war, war meine Seele ein mysteriöses Kind, und ich liebte Kosen, also schickte ich ihm so etwas. "" と 、 おばあ さん は いいました 。 ||||いい ました ・・

「 飯 に でも かけて 食べる の か な 。」 めし||||たべる||| ・・

「 きっと 、 そう する ので ございます よ 。」 ・・

お じいさん と 、 おばあ さん は 、 その 赤 黒い 粉 を 飯 に かけて 食べました 。 |||||||あか|くろい|こな||めし|||たべ ました しかし 、 その 香 い ほど 、 あまり 、 うまく は ありません 。 ||かおり||||||あり ませ ん ・・

「 砂糖 を まぜ なければ なら ぬだろう 。」 さとう||||| "I would have to mix the sugar." と 、 お じいさん が いいました 。 ||||いい ました ・・

「 これ は 、 子供 の 食べる もの です ね 。」 ||こども||たべる||| と 、 おばあ さん は いい ながら 、 立って 、 砂糖 を 持ってきました 。 ||||||たって|さとう||もってき ました そして 、 二 人 は 、 飯 に かけて 食べました 。 |ふた|じん||めし|||たべ ました ・・

夜 に なって 、 二 人 は 、 いつも の ごとく 床 に つきました 。 よ|||ふた|じん|||||とこ||つき ました けれど 、 どうした こと か 、 目 が さえて 眠れません でした 。 ||||め|||ねむれ ませ ん| ・・

「 ああ 、 こうせん を 食べた ので 、 胸 が やけた と みえて 眠れ ない 。」 |||たべた||むね|||||ねむれ| と 、 お じいさん が いいます と 、・・ ||||いい ます|

「 外国 の もの は 、 体 に 合わ ない から 、 食べる もの で ありません ね 」 と 、 おばあ さん は 、 答えました 。 がいこく||||からだ||あわ|||たべる|||あり ませ ん||||||こたえ ました ・・

二 人 は 、 やっと 眠り つきました が 、 いろいろの 夢 を 見ました 。 ふた|じん|||ねむり|つき ました|||ゆめ||み ました ・・

お じいさん は 、 まだ 元気で 、 河 へ 釣り に いった 夢 を 見たり 、 おばあ さん は 、 まだ 若くて 、 みんな と 花見 に いった こと など を 夢 に 見ました 。 ||||げんきで|かわ||つり|||ゆめ||みたり|||||わかくて|||はなみ||||||ゆめ||み ました ・・

翌日 、 二 人 は 、 あの 赤 いかん の 中 の 粉 を 捨てて しまおう か と 話 を して いました 。 よくじつ|ふた|じん|||あか|||なか||こな||すてて||||はなし|||い ました そこ へ 、 小包 より おくれて 、 せがれ から 、 手紙 が とどきました 。 ||こづつみ|||||てがみ||とどき ました ・・

その 手紙 に よる と 、 赤い かん に は いって いる の は 、 ココア と いう もの である こと が わかりました 。 |てがみ||||あかい||||||||ここあ|||||||わかり ました Según la carta, se encontró que lo que había en la lata roja era cacao. 田舎 に 住んで いる お じいさん や 、 おばあ さん に は 、 まだ そうした 飲み物 の ある こと すら 知ら なかった のです 。 いなか||すんで|||||||||||のみもの|||||しら|| The old man and the old woman who lived in the country didn't even know that they had such drinks yet. ・・

「 こんな もの を 、 なんで 私 たち が 知ろう か 。」 ||||わたくし|||しろう| "Warum wissen wir so etwas?" と いって 、 お じいさん と 、 おばあ さん は 、 顔 を 見合わせて 笑いました 。 ||||||||かお||みあわせて|わらい ました ・・

―― 一九二六・一一 ―― いちきゅうにろく|いちいち