SamuraiGourmetS1:E1Mid-DayBeerataRestaurant
(ナレーション )戦乱 の 時代 ―
おの が 腕 ひと つ で 世 を 渡り歩く 漢 ( おとこ ) が いた ―
野 武士 である ―
この 男 は 現代 の 野武士 …―
では ない
では ない
( 香住 ( かすみ )) ん … ん ~
( 香住 ( かすみ )) ん … ん ~
大変 だ !―
う っ ハァハァ …
ああ っ う う …なんで …ハァハァ …
なんで 起こして くん ない んだ よっ
( 静子 ( し ず こ )) えー ? 何 ー ?
( 足音 )
だから …なんで 起こして くれ なかった んだ よ
(静子 )アハッ 何 言って る の ~ ―
やっと 朝 寝坊 できる って 喜んで たの あなた じゃ ない
それ じゃ っ 私 は 出かけて きます
えっ ?
行って き まー す !(ドア が 閉まる 音 )
何 やって んだ 俺 は …
(ナレーション )定年 退職 し ―
サラリーマン という 肩書き も ―
会社 の 後ろ盾 も なくなった 1 人 の 男 ―
香住 武 ( たけし ) 60 歳 ―
この 物語 は どこ に でも いる 還暦 男 が ―
野 武士 の 力 を 借りて ―
自由 に 食事 を おう歌 する グルメファンタジー である
♪~
( 静子 )〝 ヨガ 教室 に 行く ので ―〞
〝 帰る の は 夕方 に なります ―〞
〝 お 昼 は なに か 適当に 食べて 下さい ―〞
“庭 の 花 の 水やり お 願いします 静子 ”
“庭 の 花 の 水やり お 願いします 静子 ”
( 鼻歌 )
( 鼻歌 )
出かける か
あれ ?
出かける っ つったって どこ 出かけ んだ …
♪ ~
(香住 )この 土地 に 越して きて 15 年 ―
駅 に 通じる この 公園 を 毎日 歩いて いた ―
でも ―
こんなに ゆっくり 歩く の は 初めて だ ―
つい 癖 で 駅 に 来て しまった …―
もう 会社 に 行く 必要 ない のに …
ハッハッハッ …
あれ ?
(香住 )通勤 の とき は 全然 意識 して なかった けど ―
ここ 定食 屋 だった んだ な ―
そう いや ここ 何 年 ずっと 昼 は 社 食 の A 定食 だった ―
もう 社 食 も ない んだ ―
よし やっと 行く 所 が 決まった ―
ここ に 入ろう
(おかみ )いらっしゃい ませ
(香住 )昭和 っぽい 定食 屋 って 感じ ―
なんだか 懐かしい
( おかみ ) お 好きな 席 どうぞ ー !
(おかみ )お 冷や どうぞ
(香住 )勤め人 ばっかり だ な
♪ ~
(主人 )あい よ (おかみ )はい
はい どうぞ ー ! ハンバーグ もう 少し 待って ね
(男性 1 )お 先 いただきます っ
♪~
(主人 )はい ハンバーグ あがった よ
( おかみ ) は ー い ―
はい すみません どうぞ
ふ ー ん
ん ー よしっ( 男性 2) ごちそう さん
ありがとう ございました
はい すいません (男性 2 )おう
(香住 )すいません 注文 いい です か ?
は ー い 何 に いたしましょう ? ( 香住 ) あの
なす ピーマン 豚肉 辛 みそ 炒め 定食
(おかみ )かしこまり ました
(香住 )それ で ごはん 少なめ で
(おかみ )はい !フフ (香住 )あ それ と ―
きゅうり の ぬか 漬け も
は ー い ! は いはい ( 香住 ) お 願い します
( おかみ ) ありがとう ござ いま ー す
(男性 3 )アジフライ
(おかみ )はい 730 円 です ―
ありがとう ござ いま ー す ( 男性 4) マーボー なす
(おかみ )はい すいません ちょうど 頂きます
(男性 5 )から 揚げ (おかみ )あ すいません ―
(男性 5 )から 揚げ (おかみ )あ すいません ―
( 香住 ) あっ
( 香住 ) あっ
( 香住 ) あっ
ありがとう ございました ー ( 男性 5) ごちそうさま ー
ありがとう ございました ー ( 男性 5) ごちそうさま ー
ありがとう ございました ー ( 男性 5) ごちそうさま ー
(香住 )ビール …―
(香住 )ビール …―
飲み たい !―
飲み たい ぞ 冷えた ビール !―
いや でも …
(おかみ )はい すいません ―
ありがとう ございました ー ( 男性 5) ごちそうさま ー
(香住 )さすが に 平日 の 昼間 っ から 酒 って の は な …―
ん ?待てよ ―
平日 も 休日 も 関係ない じゃ ない か ―
俺 は もう サラリーマン じゃ ない んだ ぞ ―
好き に 飲んで いい んだ ―
何 を 気にする こと が ある
あの すいません
(香住 )どうしても 後ろめたさ が …―
水 で いっか …―
38 年 染みついた 勤め人 根性 って の は ―
38 年 染みついた 勤め人 根性 って の は ―
(香住 )は ー っ
なかなか 抜け ん な …―
もし 俺 が 野武士 だったら ―
昼間 っ から 酒 を 飲んで も ―
堂々と して い られる だろう に
♪~
(香住 )あれ は 紛れ も なく 野武士 !―
一体 どういう こと だ ?
(野武士 )おかみ 酒 じゃ !(おかみ )あい よ
( おかみ ) は ー い ー
おう すま ん のう
ああ ーっ
(武士 1)昼間 っ から 酒 と は いい 気な もん よ
(武士 2 )ああ は 落ちぶれ たく ない
( 武士 1) なあ ( 武士 2) フッ
ああ ーっ
フフフフフッ ハッハッハッハッ …
(武士 1)何 が おかしい ?
昼 に 飲む 酒 ほど うまい もん は ない わ
それ が でき ん と は …
雇わ れ 武士 と いう の は つらい の ぉ
(酒 を すする 音 )(武士 1 )この 無礼 者 !―
われら を 愚弄する と は 許せん !
♪ ~
(武士 たち )おお おお …
すま ん すま ん
(武士 1)お っ … ―
おい !行け !―
来い !
うん
おかみ ( おかみ ) は い
よう 漬かっと る (おかみ )は ~い ~
ああ っ
ああ ~ うまい !! ああ うまい の ~
(おかみ )はい ヒレ カツ ね !
(男性 )はい (おかみ )はい どうぞ
(男性 )はい ありがとう
(香住 )俺 は …幻 を 見ていた の か ?―
いや 違う ―
あれ こそ が 俺 の あるべき 姿 だ
おかみ さん
ビール !(おかみ )は ~い
(香住 )周り に 何 と 思わ れよう が 気 に せず ―
流さ れ ず ―
自分 の 思う まま に 生きる ―
これ から の 俺 が 目指す べき は …―
野 武士 の ような 男
(おかみ )ご ゆっくり どうぞ (香住 )へ へ
は ー 来た ー
(香住 )平日 の 昼 に “一人 ビール ”…―
これ が して み たかった んだ ~
♪ ~
あ ~っ
ん ~まっ
(香住 )定年 して 初めて ―
視界 が 開けた ような 気 が する ―
こりゃ ー クセ に なり そうだ
♪~
( 主人 ) あい よっ( おかみ ) は ー い ―
お 待た せ しました ー
なす ピーマン 豚肉 から し みそ 炒め 定食 ―
ごはん 少なめ と ぬか漬け きゅうり です
はい (おかみ )フフ
♪ ~
( 深呼吸 )
いただき ます
く ーっ
♪~
(香住 )うまい …
あ ~
(香住 )意外に ちょうど いい かも ―
これ ぐらい 濃い 味 の ほう が ビール に は 合う な ―
昼 ビール って グイグイ いける ―
体 が 元気 だ から か
は ぁ ー
(香住 )いい あん ばい に 漬かってる
あー っ !
あー っ !
あー っ !
(香住 )冒険 して みる もん だ な
(香住 )冒険 して みる もん だ な
は ぁっ …
は ぁっ …
(香住 )これ が 自由 って もの な の か な
(香住 )これ が 自由 って もの な の か な
すいません もう 1 本 ください !
( おかみ ) は ー い
(香住 )俺 は やった ぞ !やったんだ ―
人生 初 の 昼 ビール
( 香住 ) ハッ
ビックリ した ~ ( 静 子 ) ど ー こ 行って た の ?
ん あ いや …ちょっと そこら辺 を
(静子 )ふ ~ん
なんか 顔 赤く ない ~?
え ?( 静子 ) あー やっぱり 赤い
ん …そう か
いや …実は きょう 俺 ―
初めて …(静子 )私 赤く ない ?
え ?(静子 )ウフッ
ランチ ワイン 飲み すぎちゃった フフフッ ―
あー っ
あいつ に 先 を 越された …は ~ …
ん ?どうした の ?
あ いや 何でもない
( 香住 ) 香住 武 60 歳 ―
肩書き は なく なった が ―
俺 の 人生 まだまだ これ から だ
♪ ~
♪君 が 壁 を 白く 塗って いる
♪ぼく は 外 を 見ている
♪陽 が 沈み かけてる よ
♪ウィスキー が 飲み たい な …
♪ぼく は 何も 何も 出来 ない よ
♪ただ 君 を 見つめて いる だけ
♪ぼく は 何も 何も 出来 ない な
♪ただ 君 を 見つめて いる だけ
♪ぼく は 何も 何も 出来 ない よ
♪ただ 君 を 噛み たい だけ なんだ
♪ぼく は 何も 何も 出来 ない な
♪ただ 君 を 見つめて いる だけ