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火星の記憶 (The Memory of Mars) by Raymond F. Jones, パート26

パート26

「 しかし 本当の 問題 は こんな こと じゃ ない 。 ただ 単に 愚 劣 な 種族 は めったに 宇宙 に 飛び出したり し ない から な 。 だが 、 われわれ に は 彼ら が 怖 れる 別の 特徴 が ある 。 それ は 破壊 性 だ よ 。 彼ら は われわれ の 歴史 の 趨勢 を 計算 し 、 未来 を 推測 した 。 もしも われわれ を 宇宙 に 飛び出さ せたり したら 、 戦争 と 対立 が 引き起こさ れる だろう 」

「 そんな こと 、 わかる もの か ! 「 彼ら は わかる と 言って いる 。 われわれ は 抗議 できる 立場 に ない 」

「 それ で われわれ を 滅亡 さ せよう と して いる んだ な ――」

「 いい や 。 以前 、 ほんの 数 回 行わ れた 実験 を 試して みよう と して いる のだ 。 彼ら は 、 彼ら が 『 臨界 質量 』 と 呼ぶ われわれ の 状態 を 縮減 しよう と して いる 」

「 臨界 質量 ? 原子 力 に 関して 使わ れる 言葉 だ な 」

「 そうだ 。 爆発 寸前 と いう 意味 だ 。 それ が われわれ の 状態 な のだ よ 。 半 世紀 の あいだ に 小規模 と は いえ ない 核 戦争 が 二 回 起きた 。 彼ら は われわれ が 宇宙 に 破壊 性 を 持ち込み 、 宇宙 で 争い 合い 、 敵意 を ほか の 種族 に も 広げる だろう と 考えて いる 。 しかし われわれ を 小さな 集団 に 分割 し 、 戦争 の 道具 を 取り上げ 、 別の 発達 の 道 を たどら せれば ―― まあ 、 われわれ を 救う 可能 性 も ある と いう わけだ 」

「 むちゃくちゃ だ ! 連中 は なに を 企んで いる んだ ? 地球 人 を グループ に わけて 、 ほか の 世界 に 強制 輸送 し ―― 永久 に ばらばら に しよう と いう の か ――? メル は 胸 に 冷たい もの を 感じた 。 彼 は ジェイムズ ・ コネモーラ を 見つめ 、 ゆっくり と 宇宙 船 の 部屋 の 壁 を 見まわし 、 外 の 星 へ と 視線 を 移した 。 黒い 船 。

「 この 船 は ――! あんた は 乗客 を この 宇宙 船 に 移して 、 ほか の 世界 に 強制 輸送 して いる んだ な ! いや 、 しかし 、 乗客 は 戻って きて いる が ――」

「 彼ら は 地球 に 似た 世界 の コロニー に 送ら れる ―― 似て いる と 言って も 重要な ちがい は ある んだ が ね 。 この コロニー は どれ も 小さい 。 いちばん 大きな もの でも たった 数 千 人 だ 。 そこ に は 地球 に は ない ような 問題 が ある ―― しかも やっかいな 問題 だ 。 天然 資源 も 同じじゃ ない 。 そこ から 生まれる 文化 は 地球 の もの と は 大いに 異なる だろう 。 銀河 系 評議 会 は 結果 に 大きな 関心 を 抱いて いる ―― はっきり した 結果 が 出る まで 千 年 か そこら は かかる だろう が 」

「 しかし 乗客 は 戻って きて いる 」 と メル は くり返した 。 「 あんた が 連れ戻して いる じゃ ない か 」

「 送り出さ れた 地球 人 ひとりひとり にたいして 、 身代わり が 送り 返さ れる のだ 。 評議 会 が 提供 する アンドロイド だ よ 」

「 アンドロイド ! 」 メル は しだいに 理性 的で いられ なく なった 。 自分 が 怒鳴り 声 を 出して いる こと が わかった 。 「 それ じゃ 、 アリス は ―― 死んだ アリス は アンドロイド で 、 妻 じゃ なかった んだ な ! ぼく の アリス は まだ 生きて いる んだ な ! 彼女 の いる ところ へ 連れて いって くれ ――」

コネモーラ は うなずいた 。 「 アリス は まだ 生きて いる 。 元気だ よ 。 なんの 危害 も 加えられて いない 」 「 彼女 の ところ へ 連れて いって くれ ! 」 自分 が 懇願 して いる こと は わかって いた が 、 胸 の 張り裂け そうな 想い に 、 自尊心 など かまって いられ なかった 。 コネモーラ は 彼 の 懇願 を 無視 して いる ようだった 。 「 地球 の 人口 は 上流 階級 の 人々 を 取り除く こと で ゆっくり と 減り つつ ある 。 アンドロイド は なり かわった 人々 と そっくりに 行動 する が 、 地球 人 に 内在 する 破壊 性 に は 反応 し ない よう あらかじめ 調整 されて いる 」 猛烈な 怒り が メル の 中 に 湧いて きた ようだった 。 「 ぼく と アリス を 分かれ 分かれ に する 権利 は あんた に は ない ぞ 。 彼女 の ところ へ 案内 しろ ! 怒り が 燃え上がり 、 彼 は 前 に 飛び出した 。

コネモーラ の 手中 に あった 小型 拳銃 が 二 度 火 を 噴いた 。 メル は 驚愕 の その 瞬間 、 身体 に 二 回 、 衝撃 を 感じた 。 こんなふうに 終わる はずじゃ なかった 、 と 彼 は 思った 。 アリス に 再会 でき ない まま 死んで いく なんて 。 せめて 一 度 だけ でも ――


パート26 ぱーと Part 26.

「 しかし 本当の 問題 は こんな こと じゃ ない 。 |ほんとうの|もんだい||||| But this is not the real problem. ただ 単に 愚 劣 な 種族 は めったに 宇宙 に 飛び出したり し ない から な 。 |たんに|ぐ|おと||しゅぞく|||うちゅう||とびだしたり|||| It's just because stupid races rarely fly into space. Просто потому, что глупые расы редко летают в космос. だが 、 われわれ に は 彼ら が 怖 れる 別の 特徴 が ある 。 ||||かれら||こわ||べつの|とくちょう|| But we have another feature that scares them. Но у нас есть еще одна особенность, которая их пугает. それ は 破壊 性 だ よ 。 ||はかい|せい|| It's destructive. 彼ら は われわれ の 歴史 の 趨勢 を 計算 し 、 未来 を 推測 した 。 かれら||||れきし||すうせい||けいさん||みらい||すいそく| They calculated trends in our history and speculated on the future. Они рассчитали тенденции в нашей истории и размышляли о будущем. もしも われわれ を 宇宙 に 飛び出さ せたり したら 、 戦争 と 対立 が 引き起こさ れる だろう 」 |||うちゅう||とびで さ|||せんそう||たいりつ||ひきおこさ|| If we let us jump into space, it would cause war and confrontation. "

「 そんな こと 、 わかる もの か ! I don't know how you can know that! 「 彼ら は わかる と 言って いる 。 かれら||||いって| They say they understand. われわれ は 抗議 できる 立場 に ない 」 ||こうぎ||たちば|| We are in no position to protest." Мы не можем протестовать ".

「 それ で われわれ を 滅亡 さ せよう と して いる んだ な ――」 ||||めつぼう||||||| "That is why you are trying to destroy us..." «Вот почему мы пытаемся уничтожить нас».

「 いい や 。 No, thanks. 以前 、 ほんの 数 回 行わ れた 実験 を 試して みよう と して いる のだ 。 いぜん||すう|かい|おこなわ||じっけん||ためして||||| I'm trying to experiment with just a few experiments before. Я пытаюсь поэкспериментировать с несколькими экспериментами раньше. 彼ら は 、 彼ら が 『 臨界 質量 』 と 呼ぶ われわれ の 状態 を 縮減 しよう と して いる 」 かれら||かれら||りんかい|しつりょう||よぶ|||じょうたい||しゅくげん|||| They are trying to reduce our condition, which they call the "critical mass." " Они пытаются уменьшить наше состояние, которое они называют «критической массой» ».

「 臨界 質量 ? りんかい|しつりょう Critical mass? "Критическая масса? 原子 力 に 関して 使わ れる 言葉 だ な 」 げんし|ちから||かんして|つかわ||ことば|| It's a word used for atomic power. "

「 そうだ 。 そう だ 爆発 寸前 と いう 意味 だ 。 ばくはつ|すんぜん|||いみ| It means on the verge of exploding. それ が われわれ の 状態 な のだ よ 。 ||||じょうたい||| That is our state of being. 半 世紀 の あいだ に 小規模 と は いえ ない 核 戦争 が 二 回 起きた 。 はん|せいき||||しょうきぼ|||||かく|せんそう||ふた|かい|おきた Two non-small-scale nuclear wars broke out in half a century. За полвека разразились две немалые ядерные войны. 彼ら は われわれ が 宇宙 に 破壊 性 を 持ち込み 、 宇宙 で 争い 合い 、 敵意 を ほか の 種族 に も 広げる だろう と 考えて いる 。 かれら||||うちゅう||はかい|せい||もちこみ|うちゅう||あらそい|あい|てきい||||しゅぞく|||ひろげる|||かんがえて| They believe that we will bring destructiveness into space, compete in space, and extend hostility to other races. しかし われわれ を 小さな 集団 に 分割 し 、 戦争 の 道具 を 取り上げ 、 別の 発達 の 道 を たどら せれば ―― まあ 、 われわれ を 救う 可能 性 も ある と いう わけだ 」 |||ちいさな|しゅうだん||ぶんかつ||せんそう||どうぐ||とりあげ|べつの|はったつ||どう|||||||すくう|かのう|せい||||| But if we divide us into smaller groups, pick up the tools of war, and follow another path of development--well, it could save us. "

「 むちゃくちゃ だ ! It's a mess! 連中 は なに を 企んで いる んだ ? れんちゅう||||たくらんで|| What are they up to? Что они планируют? 地球 人 を グループ に わけて 、 ほか の 世界 に 強制 輸送 し ―― 永久 に ばらばら に しよう と いう の か ――? ちきゅう|じん||ぐるーぷ|||||せかい||きょうせい|ゆそう||えいきゅう|||||||| Divide the earthlings into groups and forcibly transport them to other worlds ――Are you trying to separate them forever ――? メル は 胸 に 冷たい もの を 感じた 。 ||むね||つめたい|||かんじた 彼 は ジェイムズ ・ コネモーラ を 見つめ 、 ゆっくり と 宇宙 船 の 部屋 の 壁 を 見まわし 、 外 の 星 へ と 視線 を 移した 。 かれ|||||みつめ|||うちゅう|せん||へや||かべ||みまわし|がい||ほし|||しせん||うつした He stared at James Conemora, slowly looking at the walls of the spacecraft's room, and turned his gaze to the stars outside. 黒い 船 。 くろい|せん

「 この 船 は ――! |せん| This ship is--" あんた は 乗客 を この 宇宙 船 に 移して 、 ほか の 世界 に 強制 輸送 して いる んだ な ! ||じょうきゃく|||うちゅう|せん||うつして|||せかい||きょうせい|ゆそう|||| You are transferring passengers to this space ship and forcing them to other worlds, aren't you? いや 、 しかし 、 乗客 は 戻って きて いる が ――」 ||じょうきゃく||もどって||| No, but the passengers are coming back.

「 彼ら は 地球 に 似た 世界 の コロニー に 送ら れる ―― 似て いる と 言って も 重要な ちがい は ある んだ が ね 。 かれら||ちきゅう||にた|せかい||ころにー||おくら||にて|||いって||じゅうような|||||| "They are sent to a colony in a world that resembles the Earth--although there are important differences to say that they are similar. この コロニー は どれ も 小さい 。 |ころにー||||ちいさい All of these colonies are small. いちばん 大きな もの でも たった 数 千 人 だ 。 |おおきな||||すう|せん|じん| Even the biggest ones have only a few thousand people. Даже самых крупных - всего несколько тысяч. そこ に は 地球 に は ない ような 問題 が ある ―― しかも やっかいな 問題 だ 。 |||ちきゅう|||||もんだい|||||もんだい| There is a problem there that does not exist on Earth-and it is a troublesome problem. Там есть проблема, которой нет на Земле, и это серьезная проблема. 天然 資源 も 同じじゃ ない 。 てんねん|しげん||おなじじゃ| Natural resources are not the same. そこ から 生まれる 文化 は 地球 の もの と は 大いに 異なる だろう 。 ||うまれる|ぶんか||ちきゅう|||||おおいに|ことなる| The culture that emerges from it will be very different from that of the earth. 銀河 系 評議 会 は 結果 に 大きな 関心 を 抱いて いる ―― はっきり した 結果 が 出る まで 千 年 か そこら は かかる だろう が 」 ぎんが|けい|ひょうぎ|かい||けっか||おおきな|かんしん||いだいて||||けっか||でる||せん|とし|||||| The Galactic Council is very interested in the results-although it will take a thousand years or so to get clear results. "

「 しかし 乗客 は 戻って きて いる 」 と メル は くり返した 。 |じょうきゃく||もどって||||||くりかえした But the passengers are coming back," Mel reiterated. 「 あんた が 連れ戻して いる じゃ ない か 」 ||つれもどして|||| "You're bringing him back."

「 送り出さ れた 地球 人 ひとりひとり にたいして 、 身代わり が 送り 返さ れる のだ 。 おくりださ||ちきゅう|じん||に たいして|みがわり||おくり|かえさ|| For each person sent out, a substitute is sent back. 評議 会 が 提供 する アンドロイド だ よ 」 ひょうぎ|かい||ていきょう|||| It's an android provided by the council."

「 アンドロイド ! Android ! 」 メル は しだいに 理性 的で いられ なく なった 。 |||りせい|てきで|いら れ|| Mel was becoming less and less rational. Постепенно Мэл утратил способность рассуждать. 自分 が 怒鳴り 声 を 出して いる こと が わかった 。 じぶん||どなり|こえ||だして|||| I knew I was yelling. Я кричал. 「 それ じゃ 、 アリス は ―― 死んだ アリス は アンドロイド で 、 妻 じゃ なかった んだ な ! ||||しんだ|||||つま|||| So Alice - the dead Alice - was an android, not his wife! ぼく の アリス は まだ 生きて いる んだ な ! |||||いきて||| My Alice is still alive, isn't she? 彼女 の いる ところ へ 連れて いって くれ ――」 かのじょ|||||つれて|| Take me to her.

コネモーラ は うなずいた 。 Cone Mora nodded. 「 アリス は まだ 生きて いる 。 |||いきて| Alice is still alive. 元気だ よ 。 げんきだ| I'm fine. なんの 危害 も 加えられて いない 」 |きがい||くわえ られて| No harm has been done." 「 彼女 の ところ へ 連れて いって くれ ! かのじょ||||つれて|| "Take me to her! 」 自分 が 懇願 して いる こと は わかって いた が 、 胸 の 張り裂け そうな 想い に 、 自尊心 など かまって いられ なかった 。 じぶん||こんがん||||||||むね||はりさけ|そう な|おもい||じそんしん|||いら れ| I knew I was begging, but I couldn't let my pride get in the way of my heartbreaking feelings. コネモーラ は 彼 の 懇願 を 無視 して いる ようだった 。 ||かれ||こんがん||むし||| Cone Mora seemed to ignore his pleas. 「 地球 の 人口 は 上流 階級 の 人々 を 取り除く こと で ゆっくり と 減り つつ ある 。 ちきゅう||じんこう||じょうりゅう|かいきゅう||ひとびと||とりのぞく|||||へり|| "The Earth's population is slowly declining by removing upper class people. アンドロイド は なり かわった 人々 と そっくりに 行動 する が 、 地球 人 に 内在 する 破壊 性 に は 反応 し ない よう あらかじめ 調整 されて いる 」 ||||ひとびと|||こうどう|||ちきゅう|じん||ないざい||はかい|せい|||はんのう|||||ちょうせい|さ れて| Androids behave exactly like the people they impersonate, but are pre-tuned to not react to the destructive nature of the Earth. " Андроиды ведут себя точно так же, как люди, которых они олицетворяют, но предварительно настроены так, чтобы не реагировать на деструктивную природу людей на Земле ». 猛烈な 怒り が メル の 中 に 湧いて きた ようだった 。 もうれつな|いかり||||なか||わいて|| It was as if a fierce anger had welled up inside Mel. 「 ぼく と アリス を 分かれ 分かれ に する 権利 は あんた に は ない ぞ 。 ||||わかれ|わかれ|||けんり|||||| You have no right to separate me from Alice. 彼女 の ところ へ 案内 しろ ! かのじょ||||あんない| Take me to her! 怒り が 燃え上がり 、 彼 は 前 に 飛び出した 。 いかり||もえあがり|かれ||ぜん||とびだした His anger flared and he leaped forward.

コネモーラ の 手中 に あった 小型 拳銃 が 二 度 火 を 噴いた 。 ||しゅちゅう|||こがた|けんじゅう||ふた|たび|ひ||ふいた A small pistol in the hands of Conemora blew fire twice. メル は 驚愕 の その 瞬間 、 身体 に 二 回 、 衝撃 を 感じた 。 ||きょうがく|||しゅんかん|からだ||ふた|かい|しょうげき||かんじた At that moment of astonishment, Mel felt two shocks to his body. こんなふうに 終わる はずじゃ なかった 、 と 彼 は 思った 。 |おわる||||かれ||おもった It wasn't supposed to end this way, he thought. アリス に 再会 でき ない まま 死んで いく なんて 。 ||さいかい||||しんで|| I can't believe I'm going to die without seeing Alice again. せめて 一 度 だけ でも ―― |ひと|たび|| Just this once...