×

我们使用cookies帮助改善LingQ。通过浏览本网站,表示你同意我们的 cookie 政策.


image

三姉妹探偵団 2 キャンパス篇, 三姉妹探偵団(2) Chapter 16 (1)

三 姉妹 探偵 団 (2) Chapter 16 (1)

16 名 探偵 は 行方 不明

「── どうも ありがとう 」

綾子 は 、 電話 を 切って 、「── やっぱり 、 夕 里子 、 行って ない って 」

と 不安 げ に 言った 。

「 そりゃ そう よ 」

珠美 は 言った 。

「 いくら 何でも 、 幼稚園 の とき の 友だち の うち へ 、 行く わけない じゃ ない の ! 「 じゃ 、 どこ に いる の ?

「 知ら ない よ 、 私 だって 。

綾子 姉ちゃん の ボディガード だった んでしょ ? 「 そりゃ そう だ けど ……」

と 、 綾子 は 言った 。

── もう 、 夕方 に なって いた 。

綾子 たち は マンション に 戻って いる 。

本当 なら 、 綾子 は 大学 で 、 明日 の 用意 が ある のだ が 、 そんな こと も 言って い られ ない 。

「 夕 里子 、 どうした ん だ ろ ?

「 夕 里子 姉ちゃん なら 、 大丈夫だ よ 。

そう 簡単に 死な ない 」

「 あんた 、 そんな こと ばっかり 言って ……」

「 だって 、 他 に 言い よう が ない でしょ 」

と 珠美 は 肩 を すくめた 。

「 心配 して たって 、 お 姉ちゃん が 戻って 来る わけじゃ ない んだ から 」

「 冷たい んだ から 、 あんた は 」

「 冷静な の 。

冷たい の と 冷静な の は 、 違う の よ 」

「 でも ね 、 あんた 、 今日 私 の こと 心配 して 、 駆けつけて くれた んでしょ ?

「 そりゃ ね 。

一応 、 妹 です から 」

「 あり が と 。

嬉しい わ 。 ── タクシー 代 、 払って あげる 。 いくら ? 「 悪い わ ね 」

珠美 は 、 身 を 乗り出した 。

その とき 、 電話 が 鳴った 。

綾子 が 、 珍しく (? ) すぐに 受話器 を 取る 。

「 はい 、 佐々 本 です 。

── あ 、 国友 さん ? どう です か 、 夕 里子 ……」

「 見当ら ない んだ よ 」

と 、 国友 の 不安 げ な 声 。

「 夕 里子 君 は 、 梨 山 教授 の 後 を 追って 行った んだ ね ? 「 そうです 」

「 梨 山 は 知ら ない 、 と 言って る よ 」

「 変だ わ 」

「 もう 一 度 、 よく 捜して みる 。

すぐ 暗く なる から ね 。 また 連絡 する よ 」

── 電話 が 切れる と 、 綾子 は 、 落ちつか ない 様子 で 、 居間 の 中 を 歩き回って いた 。

「 お 姉ちゃん 、 目 が 回る よ 」

と 、 珠美 が 言った 。

「── ね 、 もしかしたら 、 夕 里子 、 パパ に 会い に アメリカ に 行った んじゃ ない かしら 」

と 、 綾子 が 言った 。

あまり ロマンチックな 場所 と は いえ ない 。

もちろん 、 物置 だって 、 恋人 と 二 人 で いれば 、 ロマンチックだろう が 、 残念 ながら 、 夕 里子 は 一 人 で 、 しかも 両手 両足 は 、 固く 、 紐 で 縛ら れて いた 。

ついでに 口 に も 布 を つめ込ま れて 、 息 の 苦しい こと 。

しかも 、 やたら と 暗い 。

物置 だ から 、 シャンデリヤ など 、 下って い ない のである 。

うーん 、 あんまり 気分 いい もの じゃ ない なあ 、 と 夕 里子 は 思った 。

よく 子供 の ころ 、 王子 が 、 捕われた 美女 を 颯爽と 助け出す 場面 を 、 近所 の 子 と 演じた もの だ が 、 その とき は 縛る った って 、 格好 だけ だった 。

それ に 、 夕 里子 は 、 たいてい 、 美女 の 役 で なく 、 王子 の 役 を やった のだ 。

何しろ チャンバラ が 大好きだった から 、 おとなしく 縛ら れて 座って る なんて 、 いやだった 。

しかし 、 ここ に は どうも 、 マント を ひるがえした 王子 様 は 、 やって 来 そうに なかった 。

── 夕 里子 が 、 たかが 大津 和子 一 人 を 相手 に やられちゃ った の は 、 いささか だらしない と 思わ れ そうだ が 、 ソファ の 裏 から 這い 出した とたん 、 スポッ と 布 を 頭から かぶせ られ 、 暴れる 間もなく 、 ナイフ を 押し当て られて しまった のだ 。

これ で は 抵抗 も でき ない 。

暗く なる の を 待って 、 ここ に 連れて 来 られ 、 足 まで 縛ら れて しまった 、 と いう わけな のである 。

しかし 、 驚いた 話 だ 。

── あの 梨 山 と 、 大津 和子 が 親子 で 、 しかも 梨 山 が 、 神山 田 タカシ を 殺そう と する 計画 に 加わって いる と いう のだ から 。

なぜ 、 大学 の 教授 と その 娘 が 、 人気 歌手 ──「 元 」 と つける べき か ── を 殺す 必要 が ある のだろう ?

夕 里子 に は 分 ら なかった 。

ただ 、 話 の 様子 で は 、 梨 山 は あまり 計画 に 深く 関 って い ない 。

しかし 、 神山 田 タカシ を 殺す こと に は 、 賛成 して いる 、 と いう ところ らしい 。

する と 、 黒木 殺し や 、 梨 山 夫 人殺し の 方 は どう なる のだろう 。

夕 里子 は 、 もちろん 、 こういう 状態 が 、 あまり 快適だ と は 思わ ない し 、 身 の 危険 が ある こと も 分 って いた が 、 しかし 、 事件 の 真相 へ の 好奇心 の 方 が 、 ずっと 強かった 。

この 楽天 性 が 、 夕 里子 の いい ところ な のだろう 。

裏を返せば 欠点 だ と して も 。

── 今 、 何 時 くらい だろう ?

お腹 の 空き 具合 から する と 、 そろそろ 夜 も ふけて 来て いる らしい 。

きっと 、 夕食 を 運んで 来て くれる と か 、 そんな こと まで は して くれ ない だろう な 。

ホテル じゃ ない んだ から 、 ルーム サービス と いう わけに は いか ない 。

── この 物置 は 、 例の 講堂 の 裏手 に 近い 場所 だった 。

今 は 実際 に は 使って い ない ようで 、 入って いる 物 も 、 いつ から 放り込んで ある の か 分 ら ない ような 、 古ぼけた 机 と か 、 足 の 折れた 椅子 と か 、 ゴワゴワ の マット と か ……。

どう 見て も 、「 粗大 ゴミ 」 と いう 感じ の も の ばかりである 。

私 は ゴミ じゃ ない わ よ 、 と 夕 里子 は 、 心 の 中 で 呟いた 。

足音 が した 。

近づいて 来る 。 そして 、 物置 の 戸 が 、 ガタガタ と 音 を 立てて 、 開いた 。

そこ に は 、 愛し の 国友 刑事 が 立って ── は い なかった 。

いくら 何でも 、 そう うまく は いか ない 。

「 どう ?

苦しく ない ? と 、 大津 和子 は 言って 、 ちょっと 笑った 。

「 苦しく ない わけ は ない わ ね 。

── 口 の 中 の 布 だけ は 取って あげる 。 でも 大声 を 出す と ……」

と 、 ナイフ を 夕 里子 の 目の前 に かざす 。

ここ は おとなしく して いる しか ない 。

夕 里子 は 、 分 った 、 と いう ように 、 肯 いて 見せた 。

戸 を ガタガタ いわ せ ながら 閉める と 、 懐中 電灯 を つける 。

それ から 、 夕 里子 の 口 の 中 に 詰めた 布 を 取り出した 。

夕 里子 は 、 息 を ついた 。

「 口 の 中 が 変でしょ 。

これ 飲んで 」

大津 和子 は 、 缶 ジュース の 口 を 開ける と 、 夕 里子 に 飲ま せた 。

乾き 切って いた 口 の 中 が 、 やっと まともな 状態 に 戻った 感じ だ 。

「── おいしい 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 ついでに 縄 も といて くれる と うれしい けど 、 無理でしょう ね 」

大津 和子 は 、 ちょっと 笑って 、

「 あんた って 面白い 子 ね 」

と 言った 。

「 怖く ない の ? 「 怖い けど 、 強 がって る だけ 」

「 そう ?

ともかく 大した 度胸 だ わ 」

夕 里子 は 、 少し 間 を 置いて 、 言った 。

「 今 、 何時ごろ かしら ?

「 九 時 ぐらい じゃ ない ?

悪い けど 、 今夜 は ここ で 夜 明 し して もらう わ よ 」

「 それ は いい けど ── どうして 神 山田 タカシ を 殺す の ?

大津 和子 は 答え なかった 。

夕 里子 は 続けて 、 言った 。

「 梨 山 先生 に は 、 子供 が い ない 、 って 聞いて た けど 」

「 そう よ 。

私 は 戸籍 上 は 別の 家 の 子 な んだ もの 」

「 じゃあ ……」

「 早く 言えば 、 愛人 の 子 、 って わけ ね 」

と 、 大津 和子 は 、 あっさり と 肯 いた 。

「 でも 、 父 は 、 私 の こと は 気 に かけて くれて る わ 。 大学 に 入れた の も 、 もちろん 父 の コネ と お 金 の おかげ だ し ね 」

大津 和子 は 、 ちょっと 笑った 。

「 だ らし のな いとこ は ある けど ── まあ 、 人並の 父親 らしい 気持 は ある みたい 」

夕 里子 は 、 少し 間 を 置いて 、 言った 。

「 何 か あった の ね 」

「 ん ?

「 あなた と 、 神山 田 タカシ と の 間 に 。

そう でしょう ? 大津 和子 は 、 ちょっと 驚いた ように 、 夕 里子 を 眺めて いた 。

「 そう 。

── あんた 、 いい カン して る の ね 」

「 彼 の 所 に 行って ……」

「 押しかけて 行った 、 って 言えば いい かしら 」

大津 和子 は 、 腰 を おろして 、 息 を ついた 。

「── あの ころ は 、 父 の こと やら 何やら が 、 面白く なくて 、 反抗 して 年中 家 を 飛び出して た もん だった わ 。

タカシ の 所 へ 行った の も 、 別に ファン だった と かいうん じゃ なくて 、 ああいう 世界 へ の 好奇心 から だった 」

「 あなた が ──」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 あなた が 『 三 人 目 の 誰 か 』 だった の ね ! 「 三 人 目 ?

「 石原 茂子 さん が タカシ に 乱暴 さ れた とき 、 あなた も そこ に いた んでしょう 」

「 あんた 、 そんな こと まで 知って る の 」

和子 は 感心 した ように 、「 そう 。

三 年 前 だ から 、 十六 だった 。 男 みたいに 、 髪 切って 、 ジーパン は いて た から 、 分 ら なかった かも しれ ない わ ね 、 石原 さん に は 」

「 あなた は タカシ に 付いて 歩いて た の 」

「 そう よ 。

身 の 周り の 世話 から 、 何でも やった わ 。 でも ── タカシ に とって は 、 私 は 女 じゃ なかった 。 飼犬 みたいな もの だった わ 」

「 それ で …… 何 が あった の ?

「 あの 事 が 、 きっかけ だった わ 。

石原 さん が 頰 を 赤く して 、 おずおず と 部屋 へ 入って 来た の を 、 今 でも 憶 えて る 。 ── 私 が 見て も 可愛かった もん 」

と 、 和子 は 微笑んだ 。

「 タカシ も 、 最初 は 愛想 が 良かった 。 でも ── アルコール が 入って た の よ 。 危 い 、 と 思った わ 。 気 が 小さい くせ に ── いえ 、 だからこそ かも しれ ない けど 、 酔う と 、 自分 を 抑え られ なく なる 人 な の 」

「 あなた は 黙って 見て た の ?

「 他 に どう しよう も ない じゃ ない 。

私 は あの 人 の 言う こと を 聞く の が 仕事 だった んだ から 。 ── 怯えて 、 暴れる 石原 さん を 押えつけたり して ……。 今 思い出して も ゾッと する わ 」

和子 は 、 身震い を した 。

「 あの とき 、 私 も 目 が 覚めた の 。 もう いやだ 、 と 思った わ 。 そりゃ あ 、 それなり の 女 を 相手 に 遊んで る の は 構わ ない けど 、 あんな 、 純真な ファン を ……。 もちろん 、 ファン に だって 、 いくら でも ひどい の は いる けど ね 」

「 あなた 、 それ から タカシ の 所 を やめた の ?

「 間もなく ね 。

でも 、 きっぱり って わけじゃ なかった 。 ── 私 だって 、 適当に だ らし が なかった し ね 。 この 前 の ホテル で の こと を 見て も 分 る でしょ 」

と 笑った 。

「 まあ ね 」

夕 里子 は 肯 いた 。

「 でも ── それ だったら 、 どうして 、 タカシ を 殺そう なんて ? 和子 は 、 しばらく 黙って いた が 、 やがて 、 軽く 肩 を すくめた 。

「 いい わ 。

話して あげる 。 ── と いって も 、 大して 珍しい 話 で も ない の よ 。 よく TV ドラマ なんか で やって る ような メロドラマ ……」

「 メロドラマ ?

「 タカシ の 所 を やめて 一 年 ぐらい して 、 私 、 父 の 紹介 で お 見 合した の 。

── ふざけ 半分 で 、 気 の 進ま ない お 見合 だった んだ けど 、 それ が とって も いい 人 で ね 。 私 、 本気で 好きに なった んだ 。 高校 出たら 、 結婚 しよう って 話 まで 進んで 、 結構 しおらしく 、 お 料理 の 勉強 したり して ね 。 それ を ──」

と 、 和子 は 言葉 を 切った 。

「 神 山田 タカシ が ……」

「 そう 。

後 から 出た 新人 に 、 どんどん 追い抜か れて 、 クサ って た の ね 。 焦り も あった んでしょ 。 ── 私 、 アパート で 一 人 住い だった の 。 見合 の 相手 の 彼 を 待って いて …… 玄関 の チャイム が 鳴った んで 、 出て みる と 、 タカシ だった 。 ひどく 酔って 、 上れ と も 言わ ない のに 、 上り 込んで 来た わ 」

「 それ で ?

「 グズグズ 言って る の 。

泣き言 を ね 。 会社 も 冷たく なった と か 言って 。 ── 私 、 腹 が 立って 、 出て って くれ と 言った わ 。 甘く 見て た の かも しれ ない 。 いきなり 殴ら れて 気 が 遠く なり …… 気 が 付いたら 、 タカシ に 組み 敷か れて 、 玄関 に は 、 婚約 者 が 呆然と して 立って た ……」

夕 里子 は 、 何とも 言え なかった 。

「 私 、 その とき は タカシ を 殺して やろう と 思った わ 。

でも ── 時間 が たって 、 そんな 情熱 も なくなって 来た 。 どう なって も いい 、 って 気分 で 。 コネ で 大学 へ 入り 、 適当に 遊んで た わ 。 でも 、 ある 日 ── 学生 食堂 で ね 、 お 金 を 忘れて 困って た とき 、 二 年生 の 人 が 、 払って くれた の よ 。 どこ か で 見た 人 だ と 思った 。 後 で 、 ガードマン と 二 人 で 話して いる ところ を 見て 、 分 った わ 。 あの とき の 子 だった 」

「 石原 茂子 さん ね 」

「 そこ へ 、 文化 祭 に タカシ が 来る って こと を 聞いた の 。

── 私 、 あの とき の 悔し さ を 思い出した わ 。 あんな 男 、 のさばら せて おけ ない って 思った 」

「 だから ……」

「 明日 は 本番 でしょ 。

きっと 講堂 は 凄い 人 でしょう ね 。 アンプ も ボリューム 上って 、 耳 を つんざく ような 音 に なる だろう し 。 ── 頭 の 上 から 、 ライト の 一 つ ぐらい 落ちた って 、 誰 も 不思議に は 思わ ない わ 」

「 あなた ──」

「 本格 的な ホール じゃ ない んだ もの 、 多少 、 設備 の 不備 が あって も 、 そう 責め られ ない でしょう し ね 」

「 やめた 方 が いい わ 。

あんな 男 殺して 、 どう なる の ? 「 あら 、 刑務所 に 入る 気 なんて 、 ない わ 、 私 」

と 、 和子 は 笑って 、「 事故 。

あくまで 事故 よ 。 ── 事故 で ない 、 と 立証 でき なくちゃ 、 犯罪 に は なら ない でしょ 」

「 でも 、 マネージャー を 殺した の は ?

それ に 、 うち に 爆弾 を しかけた の は ? 「 そんな こと 、 私 、 知ら ない わ よ 」

と 、 和子 は 首 を 振った 。

「 そりゃ あ 、 マネージャー だって 憎らしかった けど 、 でも 、 あんな こと して 、 タカシ が 来 なく なったら 、 どうにも なら ない じゃ ない の 」

「 じゃ 、 爆弾 も ?

「 私 、 そんなに 器用じゃ ない もん 」

と 、 和子 は 笑った 。

「 お っか なく って 、 爆弾 なんて 作れ ない わ よ 」

夕 里子 に も 、 和子 の 話 は 納得 できた 。

しかし 、 そう なる と 、 他 に 犯人 が いる こと に なる のだ が 。

「 梨 山 先生 の 奥さん を 殺した の は ……」

「 ああ 、 あれ ね 。


三 姉妹 探偵 団 (2) Chapter 16 (1) みっ|しまい|たんてい|だん|chapter Three Sisters Detectives (2) Chapter 16 (1)

16  名 探偵 は 行方 不明 な|たんてい||ゆくえ|ふめい 16 detectives are missing

「── どうも ありがとう 」 "── Thank you very much"

綾子 は 、 電話 を 切って 、「── やっぱり 、 夕 里子 、 行って ない って 」 あやこ||でんわ||きって||ゆう|さとご|おこなって|| Ayako hung up the phone and said, "── After all, Yuriko, I didn't go."

と 不安 げ に 言った 。 |ふあん|||いった Said with anxiety.

「 そりゃ そう よ 」 "That's right."

珠美 は 言った 。 たまみ||いった Tamami said.

「 いくら 何でも 、 幼稚園 の とき の 友だち の うち へ 、 行く わけない じゃ ない の ! |なんでも|ようちえん||||ともだち||||いく|||| "No matter what, you can't go to your friends in kindergarten! 「 じゃ 、 どこ に いる の ?

「 知ら ない よ 、 私 だって 。 しら|||わたくし|

綾子 姉ちゃん の ボディガード だった んでしょ ? あやこ|ねえちゃん|||| 「 そりゃ そう だ けど ……」

と 、 綾子 は 言った 。 |あやこ||いった

── もう 、 夕方 に なって いた 。 |ゆうがた|||

綾子 たち は マンション に 戻って いる 。 あやこ|||まんしょん||もどって|

本当 なら 、 綾子 は 大学 で 、 明日 の 用意 が ある のだ が 、 そんな こと も 言って い られ ない 。 ほんとう||あやこ||だいがく||あした||ようい||||||||いって||| If it is true, Ayako is a university, there is preparation for tomorrow, but I can not say such a thing.

「 夕 里子 、 どうした ん だ ろ ? ゆう|さとご||||

「 夕 里子 姉ちゃん なら 、 大丈夫だ よ 。 ゆう|さとご|ねえちゃん||だいじょうぶだ|

そう 簡単に 死な ない 」 |かんたんに|しな|

「 あんた 、 そんな こと ばっかり 言って ……」 ||||いって

「 だって 、 他 に 言い よう が ない でしょ 」 |た||いい||||

と 珠美 は 肩 を すくめた 。 |たまみ||かた||

「 心配 して たって 、 お 姉ちゃん が 戻って 来る わけじゃ ない んだ から 」 しんぱい||||ねえちゃん||もどって|くる|||| "Because my sister does not come back because I worry about you"

「 冷たい んだ から 、 あんた は 」 つめたい||||

「 冷静な の 。 れいせいな|

冷たい の と 冷静な の は 、 違う の よ 」 つめたい|||れいせいな|||ちがう||

「 でも ね 、 あんた 、 今日 私 の こと 心配 して 、 駆けつけて くれた んでしょ ? |||きょう|わたくし|||しんぱい||かけつけて||

「 そりゃ ね 。

一応 、 妹 です から 」 いちおう|いもうと||

「 あり が と 。

嬉しい わ 。 うれしい| ── タクシー 代 、 払って あげる 。 たくしー|だい|はらって| いくら ? 「 悪い わ ね 」 わるい||

珠美 は 、 身 を 乗り出した 。 たまみ||み||のりだした

その とき 、 電話 が 鳴った 。 ||でんわ||なった

綾子 が 、 珍しく (? あやこ||めずらしく ) すぐに 受話器 を 取る 。 |じゅわき||とる

「 はい 、 佐々 本 です 。 |ささ|ほん|

── あ 、 国友 さん ? |くにとも| どう です か 、 夕 里子 ……」 |||ゆう|さとご

「 見当ら ない んだ よ 」 みあたら|||

と 、 国友 の 不安 げ な 声 。 |くにとも||ふあん|||こえ

「 夕 里子 君 は 、 梨 山 教授 の 後 を 追って 行った んだ ね ? ゆう|さとご|きみ||なし|やま|きょうじゅ||あと||おって|おこなった|| 「 そうです 」 そう です

「 梨 山 は 知ら ない 、 と 言って る よ 」 なし|やま||しら|||いって||

「 変だ わ 」 へんだ|

「 もう 一 度 、 よく 捜して みる 。 |ひと|たび||さがして|

すぐ 暗く なる から ね 。 |くらく||| また 連絡 する よ 」 |れんらく||

── 電話 が 切れる と 、 綾子 は 、 落ちつか ない 様子 で 、 居間 の 中 を 歩き回って いた 。 でんわ||きれる||あやこ||おちつか||ようす||いま||なか||あるきまわって|

「 お 姉ちゃん 、 目 が 回る よ 」 |ねえちゃん|め||まわる|

と 、 珠美 が 言った 。 |たまみ||いった

「── ね 、 もしかしたら 、 夕 里子 、 パパ に 会い に アメリカ に 行った んじゃ ない かしら 」 ||ゆう|さとご|ぱぱ||あい||あめりか||おこなった|||

と 、 綾子 が 言った 。 |あやこ||いった

あまり ロマンチックな 場所 と は いえ ない 。 |ろまんちっくな|ばしょ||||

もちろん 、 物置 だって 、 恋人 と 二 人 で いれば 、 ロマンチックだろう が 、 残念 ながら 、 夕 里子 は 一 人 で 、 しかも 両手 両足 は 、 固く 、 紐 で 縛ら れて いた 。 |ものおき||こいびと||ふた|じん|||ろまんちっくだろう||ざんねん||ゆう|さとご||ひと|じん|||りょうて|りょうあし||かたく|ひも||しばら||

ついでに 口 に も 布 を つめ込ま れて 、 息 の 苦しい こと 。 |くち|||ぬの||つめこま||いき||くるしい|

しかも 、 やたら と 暗い 。 |||くらい

物置 だ から 、 シャンデリヤ など 、 下って い ない のである 。 ものおき|||||くだって|||

うーん 、 あんまり 気分 いい もの じゃ ない なあ 、 と 夕 里子 は 思った 。 ||きぶん|||||||ゆう|さとご||おもった

よく 子供 の ころ 、 王子 が 、 捕われた 美女 を 颯爽と 助け出す 場面 を 、 近所 の 子 と 演じた もの だ が 、 その とき は 縛る った って 、 格好 だけ だった 。 |こども|||おうじ||とらわれた|びじょ||さっそうと|たすけだす|ばめん||きんじょ||こ||えんじた|||||||しばる|||かっこう||

それ に 、 夕 里子 は 、 たいてい 、 美女 の 役 で なく 、 王子 の 役 を やった のだ 。 ||ゆう|さとご|||びじょ||やく|||おうじ||やく|||

何しろ チャンバラ が 大好きだった から 、 おとなしく 縛ら れて 座って る なんて 、 いやだった 。 なにしろ|ちゃんばら||だいすきだった|||しばら||すわって|||

しかし 、 ここ に は どうも 、 マント を ひるがえした 王子 様 は 、 やって 来 そうに なかった 。 |||||まんと|||おうじ|さま|||らい|そう に|

── 夕 里子 が 、 たかが 大津 和子 一 人 を 相手 に やられちゃ った の は 、 いささか だらしない と 思わ れ そうだ が 、 ソファ の 裏 から 這い 出した とたん 、 スポッ と 布 を 頭から かぶせ られ 、 暴れる 間もなく 、 ナイフ を 押し当て られて しまった のだ 。 ゆう|さとご|||おおつ|かずこ|ひと|じん||あいて|||||||||おもわ||そう だ||||うら||はい|だした||||ぬの||あたまから|||あばれる|まもなく|ないふ||おしあて|||

これ で は 抵抗 も でき ない 。 |||ていこう|||

暗く なる の を 待って 、 ここ に 連れて 来 られ 、 足 まで 縛ら れて しまった 、 と いう わけな のである 。 くらく||||まって|||つれて|らい||あし||しばら||||||

しかし 、 驚いた 話 だ 。 |おどろいた|はなし|

── あの 梨 山 と 、 大津 和子 が 親子 で 、 しかも 梨 山 が 、 神山 田 タカシ を 殺そう と する 計画 に 加わって いる と いう のだ から 。 |なし|やま||おおつ|かずこ||おやこ|||なし|やま||かみやま|た|たかし||ころそう|||けいかく||くわわって|||||

なぜ 、 大学 の 教授 と その 娘 が 、 人気 歌手 ──「 元 」 と つける べき か ── を 殺す 必要 が ある のだろう ? |だいがく||きょうじゅ|||むすめ||にんき|かしゅ|もと||||||ころす|ひつよう||| Why does a college professor and his daughter need to kill a popular singer-should we call it "former"?

夕 里子 に は 分 ら なかった 。 ゆう|さとご|||ぶん||

ただ 、 話 の 様子 で は 、 梨 山 は あまり 計画 に 深く 関 って い ない 。 |はなし||ようす|||なし|やま|||けいかく||ふかく|かん|||

しかし 、 神山 田 タカシ を 殺す こと に は 、 賛成 して いる 、 と いう ところ らしい 。 |かみやま|た|たかし||ころす||||さんせい||||||

する と 、 黒木 殺し や 、 梨 山 夫 人殺し の 方 は どう なる のだろう 。 ||くろき|ころし||なし|やま|おっと|ひとごろし||かた||||

夕 里子 は 、 もちろん 、 こういう 状態 が 、 あまり 快適だ と は 思わ ない し 、 身 の 危険 が ある こと も 分 って いた が 、 しかし 、 事件 の 真相 へ の 好奇心 の 方 が 、 ずっと 強かった 。 ゆう|さとご||||じょうたい|||かいてきだ|||おもわ|||み||きけん|||||ぶん|||||じけん||しんそう|||こうきしん||かた|||つよかった

この 楽天 性 が 、 夕 里子 の いい ところ な のだろう 。 |らくてん|せい||ゆう|さとご|||||

裏を返せば 欠点 だ と して も 。 うらをかえせば|けってん||||

── 今 、 何 時 くらい だろう ? いま|なん|じ||

お腹 の 空き 具合 から する と 、 そろそろ 夜 も ふけて 来て いる らしい 。 おなか||あき|ぐあい|||||よ|||きて||

きっと 、 夕食 を 運んで 来て くれる と か 、 そんな こと まで は して くれ ない だろう な 。 |ゆうしょく||はこんで|きて||||||||||||

ホテル じゃ ない んだ から 、 ルーム サービス と いう わけに は いか ない 。 ほてる|||||るーむ|さーびす||||||

── この 物置 は 、 例の 講堂 の 裏手 に 近い 場所 だった 。 |ものおき||れいの|こうどう||うらて||ちかい|ばしょ|

今 は 実際 に は 使って い ない ようで 、 入って いる 物 も 、 いつ から 放り込んで ある の か 分 ら ない ような 、 古ぼけた 机 と か 、 足 の 折れた 椅子 と か 、 ゴワゴワ の マット と か ……。 いま||じっさい|||つかって||||はいって||ぶつ||||ほうりこんで||||ぶん||||ふるぼけた|つくえ|||あし||おれた|いす|||||まっと||

どう 見て も 、「 粗大 ゴミ 」 と いう 感じ の も の ばかりである 。 |みて||そだい|ごみ|||かんじ||||

私 は ゴミ じゃ ない わ よ 、 と 夕 里子 は 、 心 の 中 で 呟いた 。 わたくし||ごみ||||||ゆう|さとご||こころ||なか||つぶやいた

足音 が した 。 あしおと||

近づいて 来る 。 ちかづいて|くる そして 、 物置 の 戸 が 、 ガタガタ と 音 を 立てて 、 開いた 。 |ものおき||と||がたがた||おと||たてて|あいた

そこ に は 、 愛し の 国友 刑事 が 立って ── は い なかった 。 |||あいし||くにとも|けいじ||たって|||

いくら 何でも 、 そう うまく は いか ない 。 |なんでも|||||

「 どう ?

苦しく ない ? くるしく| と 、 大津 和子 は 言って 、 ちょっと 笑った 。 |おおつ|かずこ||いって||わらった

「 苦しく ない わけ は ない わ ね 。 くるしく||||||

── 口 の 中 の 布 だけ は 取って あげる 。 くち||なか||ぬの|||とって| でも 大声 を 出す と ……」 |おおごえ||だす|

と 、 ナイフ を 夕 里子 の 目の前 に かざす 。 |ないふ||ゆう|さとご||めのまえ||

ここ は おとなしく して いる しか ない 。

夕 里子 は 、 分 った 、 と いう ように 、 肯 いて 見せた 。 ゆう|さとご||ぶん|||||こう||みせた

戸 を ガタガタ いわ せ ながら 閉める と 、 懐中 電灯 を つける 。 と||がたがた||||しめる||かいちゅう|でんとう||

それ から 、 夕 里子 の 口 の 中 に 詰めた 布 を 取り出した 。 ||ゆう|さとご||くち||なか||つめた|ぬの||とりだした

夕 里子 は 、 息 を ついた 。 ゆう|さとご||いき||

「 口 の 中 が 変でしょ 。 くち||なか||へんでしょ

これ 飲んで 」 |のんで

大津 和子 は 、 缶 ジュース の 口 を 開ける と 、 夕 里子 に 飲ま せた 。 おおつ|かずこ||かん|じゅーす||くち||あける||ゆう|さとご||のま|

乾き 切って いた 口 の 中 が 、 やっと まともな 状態 に 戻った 感じ だ 。 かわき|きって||くち||なか||||じょうたい||もどった|かんじ|

「── おいしい 」

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 ついでに 縄 も といて くれる と うれしい けど 、 無理でしょう ね 」 |なわ|||||||むりでしょう|

大津 和子 は 、 ちょっと 笑って 、 おおつ|かずこ|||わらって

「 あんた って 面白い 子 ね 」 ||おもしろい|こ|

と 言った 。 |いった

「 怖く ない の ? こわく|| 「 怖い けど 、 強 がって る だけ 」 こわい||つよ|||

「 そう ?

ともかく 大した 度胸 だ わ 」 |たいした|どきょう||

夕 里子 は 、 少し 間 を 置いて 、 言った 。 ゆう|さとご||すこし|あいだ||おいて|いった

「 今 、 何時ごろ かしら ? いま|いつごろ|

「 九 時 ぐらい じゃ ない ? ここの|じ|||

悪い けど 、 今夜 は ここ で 夜 明 し して もらう わ よ 」 わるい||こんや||||よ|あき|||||

「 それ は いい けど ── どうして 神 山田 タカシ を 殺す の ? |||||かみ|やまだ|たかし||ころす|

大津 和子 は 答え なかった 。 おおつ|かずこ||こたえ|

夕 里子 は 続けて 、 言った 。 ゆう|さとご||つづけて|いった

「 梨 山 先生 に は 、 子供 が い ない 、 って 聞いて た けど 」 なし|やま|せんせい|||こども|||||きいて||

「 そう よ 。

私 は 戸籍 上 は 別の 家 の 子 な んだ もの 」 わたくし||こせき|うえ||べつの|いえ||こ|||

「 じゃあ ……」

「 早く 言えば 、 愛人 の 子 、 って わけ ね 」 はやく|いえば|あいじん||こ|||

と 、 大津 和子 は 、 あっさり と 肯 いた 。 |おおつ|かずこ||||こう|

「 でも 、 父 は 、 私 の こと は 気 に かけて くれて る わ 。 |ちち||わたくし||||き||||| 大学 に 入れた の も 、 もちろん 父 の コネ と お 金 の おかげ だ し ね 」 だいがく||いれた||||ちち||こね|||きむ|||||

大津 和子 は 、 ちょっと 笑った 。 おおつ|かずこ|||わらった

「 だ らし のな いとこ は ある けど ── まあ 、 人並の 父親 らしい 気持 は ある みたい 」 ||||||||ひとなみの|ちちおや||きもち||| "There are celestial cousins, but it seems that they feel like people's fathers,"

夕 里子 は 、 少し 間 を 置いて 、 言った 。 ゆう|さとご||すこし|あいだ||おいて|いった

「 何 か あった の ね 」 なん||||

「 ん ?

「 あなた と 、 神山 田 タカシ と の 間 に 。 ||かみやま|た|たかし|||あいだ|

そう でしょう ? 大津 和子 は 、 ちょっと 驚いた ように 、 夕 里子 を 眺めて いた 。 おおつ|かずこ|||おどろいた||ゆう|さとご||ながめて|

「 そう 。

── あんた 、 いい カン して る の ね 」 ||かん||||

「 彼 の 所 に 行って ……」 かれ||しょ||おこなって

「 押しかけて 行った 、 って 言えば いい かしら 」 おしかけて|おこなった||いえば||

大津 和子 は 、 腰 を おろして 、 息 を ついた 。 おおつ|かずこ||こし|||いき||

「── あの ころ は 、 父 の こと やら 何やら が 、 面白く なくて 、 反抗 して 年中 家 を 飛び出して た もん だった わ 。 |||ちち||||なにやら||おもしろく||はんこう||ねんじゅう|いえ||とびだして||||

タカシ の 所 へ 行った の も 、 別に ファン だった と かいうん じゃ なくて 、 ああいう 世界 へ の 好奇心 から だった 」 たかし||しょ||おこなった|||べつに|ふぁん|||||||せかい|||こうきしん||

「 あなた が ──」

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 あなた が 『 三 人 目 の 誰 か 』 だった の ね ! ||みっ|じん|め||だれ|||| 「 三 人 目 ? みっ|じん|め

「 石原 茂子 さん が タカシ に 乱暴 さ れた とき 、 あなた も そこ に いた んでしょう 」 いしはら|しげこ|||たかし||らんぼう|||||||||

「 あんた 、 そんな こと まで 知って る の 」 ||||しって||

和子 は 感心 した ように 、「 そう 。 かずこ||かんしん|||

三 年 前 だ から 、 十六 だった 。 みっ|とし|ぜん|||じゅうろく| 男 みたいに 、 髪 切って 、 ジーパン は いて た から 、 分 ら なかった かも しれ ない わ ね 、 石原 さん に は 」 おとこ||かみ|きって|じーぱん|||||ぶん||||||||いしはら|||

「 あなた は タカシ に 付いて 歩いて た の 」 ||たかし||ついて|あるいて||

「 そう よ 。

身 の 周り の 世話 から 、 何でも やった わ 。 み||まわり||せわ||なんでも|| でも ── タカシ に とって は 、 私 は 女 じゃ なかった 。 |たかし||||わたくし||おんな|| 飼犬 みたいな もの だった わ 」 かいいぬ||||

「 それ で …… 何 が あった の ? ||なん|||

「 あの 事 が 、 きっかけ だった わ 。 |こと||||

石原 さん が 頰 を 赤く して 、 おずおず と 部屋 へ 入って 来た の を 、 今 でも 憶 えて る 。 いしはら|||||あかく||||へや||はいって|きた|||いま||おく|| ── 私 が 見て も 可愛かった もん 」 わたくし||みて||かわいかった|

と 、 和子 は 微笑んだ 。 |かずこ||ほおえんだ

「 タカシ も 、 最初 は 愛想 が 良かった 。 たかし||さいしょ||あいそ||よかった でも ── アルコール が 入って た の よ 。 |あるこーる||はいって||| 危 い 、 と 思った わ 。 き|||おもった| 気 が 小さい くせ に ── いえ 、 だからこそ かも しれ ない けど 、 酔う と 、 自分 を 抑え られ なく なる 人 な の 」 き||ちいさい|||||||||よう||じぶん||おさえ||||じん||

「 あなた は 黙って 見て た の ? ||だまって|みて||

「 他 に どう しよう も ない じゃ ない 。 た|||||||

私 は あの 人 の 言う こと を 聞く の が 仕事 だった んだ から 。 わたくし|||じん||いう|||きく|||しごと||| ── 怯えて 、 暴れる 石原 さん を 押えつけたり して ……。 おびえて|あばれる|いしはら|||おさえつけたり| ── Frightened, holding down Ishihara-san who rampage ... .... 今 思い出して も ゾッと する わ 」 いま|おもいだして||ぞっと||

和子 は 、 身震い を した 。 かずこ||みぶるい||

「 あの とき 、 私 も 目 が 覚めた の 。 ||わたくし||め||さめた| もう いやだ 、 と 思った わ 。 |||おもった| そりゃ あ 、 それなり の 女 を 相手 に 遊んで る の は 構わ ない けど 、 あんな 、 純真な ファン を ……。 ||||おんな||あいて||あそんで||||かまわ||||じゅんしんな|ふぁん| もちろん 、 ファン に だって 、 いくら でも ひどい の は いる けど ね 」 |ふぁん||||||||||

「 あなた 、 それ から タカシ の 所 を やめた の ? |||たかし||しょ|||

「 間もなく ね 。 まもなく|

でも 、 きっぱり って わけじゃ なかった 。 ── 私 だって 、 適当に だ らし が なかった し ね 。 わたくし||てきとうに|||||| この 前 の ホテル で の こと を 見て も 分 る でしょ 」 |ぜん||ほてる|||||みて||ぶん||

と 笑った 。 |わらった

「 まあ ね 」

夕 里子 は 肯 いた 。 ゆう|さとご||こう|

「 でも ── それ だったら 、 どうして 、 タカシ を 殺そう なんて ? ||||たかし||ころそう| 和子 は 、 しばらく 黙って いた が 、 やがて 、 軽く 肩 を すくめた 。 かずこ|||だまって||||かるく|かた||

「 いい わ 。

話して あげる 。 はなして| ── と いって も 、 大して 珍しい 話 で も ない の よ 。 |||たいして|めずらしい|はなし||||| よく TV ドラマ なんか で やって る ような メロドラマ ……」 |tv|どらま||||||めろどらま

「 メロドラマ ? めろどらま

「 タカシ の 所 を やめて 一 年 ぐらい して 、 私 、 父 の 紹介 で お 見 合した の 。 たかし||しょ|||ひと|とし|||わたくし|ちち||しょうかい|||み|あわした|

── ふざけ 半分 で 、 気 の 進ま ない お 見合 だった んだ けど 、 それ が とって も いい 人 で ね 。 |はんぶん||き||すすま|||みあ|||||||||じん|| 私 、 本気で 好きに なった んだ 。 わたくし|ほんきで|すきに|| 高校 出たら 、 結婚 しよう って 話 まで 進んで 、 結構 しおらしく 、 お 料理 の 勉強 したり して ね 。 こうこう|でたら|けっこん|||はなし||すすんで|けっこう|||りょうり||べんきょう||| それ を ──」

と 、 和子 は 言葉 を 切った 。 |かずこ||ことば||きった

「 神 山田 タカシ が ……」 かみ|やまだ|たかし|

「 そう 。

後 から 出た 新人 に 、 どんどん 追い抜か れて 、 クサ って た の ね 。 あと||でた|しんじん|||おいぬか|||||| 焦り も あった んでしょ 。 あせり||| ── 私 、 アパート で 一 人 住い だった の 。 わたくし|あぱーと||ひと|じん|すまい|| 見合 の 相手 の 彼 を 待って いて …… 玄関 の チャイム が 鳴った んで 、 出て みる と 、 タカシ だった 。 みあ||あいて||かれ||まって||げんかん||ちゃいむ||なった||でて|||たかし| ひどく 酔って 、 上れ と も 言わ ない のに 、 上り 込んで 来た わ 」 |よって|のぼれ|||いわ|||のぼり|こんで|きた|

「 それ で ?

「 グズグズ 言って る の 。 ぐずぐず|いって||

泣き言 を ね 。 なきごと|| 会社 も 冷たく なった と か 言って 。 かいしゃ||つめたく||||いって ── 私 、 腹 が 立って 、 出て って くれ と 言った わ 。 わたくし|はら||たって|でて||||いった| ── I said, I got angry and told you to get out. 甘く 見て た の かも しれ ない 。 あまく|みて||||| Maybe I was looking sweet. いきなり 殴ら れて 気 が 遠く なり …… 気 が 付いたら 、 タカシ に 組み 敷か れて 、 玄関 に は 、 婚約 者 が 呆然と して 立って た ……」 |なぐら||き||とおく||き||ついたら|たかし||くみ|しか||げんかん|||こんやく|もの||ぼうぜんと||たって| Suddenly beaten and distracted ... ... When I noticed it, Takashi was covered with a braid, and the fiancee was stunned by the entrance ... .... "

夕 里子 は 、 何とも 言え なかった 。 ゆう|さとご||なんとも|いえ|

「 私 、 その とき は タカシ を 殺して やろう と 思った わ 。 わたくし||||たかし||ころして|||おもった|

でも ── 時間 が たって 、 そんな 情熱 も なくなって 来た 。 |じかん||||じょうねつ|||きた どう なって も いい 、 って 気分 で 。 |||||きぶん| コネ で 大学 へ 入り 、 適当に 遊んで た わ 。 こね||だいがく||はいり|てきとうに|あそんで|| でも 、 ある 日 ── 学生 食堂 で ね 、 お 金 を 忘れて 困って た とき 、 二 年生 の 人 が 、 払って くれた の よ 。 ||ひ|がくせい|しょくどう||||きむ||わすれて|こまって|||ふた|ねんせい||じん||はらって||| どこ か で 見た 人 だ と 思った 。 |||みた|じん|||おもった 後 で 、 ガードマン と 二 人 で 話して いる ところ を 見て 、 分 った わ 。 あと||がーどまん||ふた|じん||はなして||||みて|ぶん|| あの とき の 子 だった 」 |||こ|

「 石原 茂子 さん ね 」 いしはら|しげこ||

「 そこ へ 、 文化 祭 に タカシ が 来る って こと を 聞いた の 。 ||ぶんか|さい||たかし||くる||||きいた|

── 私 、 あの とき の 悔し さ を 思い出した わ 。 わたくし||||くやし|||おもいだした| あんな 男 、 のさばら せて おけ ない って 思った 」 |おとこ||||||おもった

「 だから ……」

「 明日 は 本番 でしょ 。 あした||ほんばん|

きっと 講堂 は 凄い 人 でしょう ね 。 |こうどう||すごい|じん|| アンプ も ボリューム 上って 、 耳 を つんざく ような 音 に なる だろう し 。 ||ぼりゅーむ|のぼって|みみ||||おと|||| ── 頭 の 上 から 、 ライト の 一 つ ぐらい 落ちた って 、 誰 も 不思議に は 思わ ない わ 」 あたま||うえ||らいと||ひと|||おちた||だれ||ふしぎに||おもわ||

「 あなた ──」

「 本格 的な ホール じゃ ない んだ もの 、 多少 、 設備 の 不備 が あって も 、 そう 責め られ ない でしょう し ね 」 ほんかく|てきな|ほーる|||||たしょう|せつび||ふび|||||せめ|||||

「 やめた 方 が いい わ 。 |かた|||

あんな 男 殺して 、 どう なる の ? |おとこ|ころして||| 「 あら 、 刑務所 に 入る 気 なんて 、 ない わ 、 私 」 |けいむしょ||はいる|き||||わたくし

と 、 和子 は 笑って 、「 事故 。 |かずこ||わらって|じこ

あくまで 事故 よ 。 |じこ| ── 事故 で ない 、 と 立証 でき なくちゃ 、 犯罪 に は なら ない でしょ 」 じこ||||りっしょう|||はんざい|||||

「 でも 、 マネージャー を 殺した の は ? |まねーじゃー||ころした||

それ に 、 うち に 爆弾 を しかけた の は ? ||||ばくだん|||| 「 そんな こと 、 私 、 知ら ない わ よ 」 ||わたくし|しら|||

と 、 和子 は 首 を 振った 。 |かずこ||くび||ふった

「 そりゃ あ 、 マネージャー だって 憎らしかった けど 、 でも 、 あんな こと して 、 タカシ が 来 なく なったら 、 どうにも なら ない じゃ ない の 」 ||まねーじゃー||にくらしかった||||||たかし||らい||||||||

「 じゃ 、 爆弾 も ? |ばくだん|

「 私 、 そんなに 器用じゃ ない もん 」 わたくし||きようじゃ||

と 、 和子 は 笑った 。 |かずこ||わらった

「 お っか なく って 、 爆弾 なんて 作れ ない わ よ 」 ||||ばくだん||つくれ|||

夕 里子 に も 、 和子 の 話 は 納得 できた 。 ゆう|さとご|||かずこ||はなし||なっとく|

しかし 、 そう なる と 、 他 に 犯人 が いる こと に なる のだ が 。 ||||た||はんにん|||||||

「 梨 山 先生 の 奥さん を 殺した の は ……」 なし|やま|せんせい||おくさん||ころした||

「 ああ 、 あれ ね 。