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太宰治『人間失格』(No Longer Human by Osamu Dazai), 第三の手記 一 (1)

第 三 の 手記 一 (1)

竹一 の 予言 の 、一 つ は 当り 、一 つ は 、はずれました。 惚 ほれられる と いう 、名誉で 無い 予言 の ほう は 、あたりました が 、きっと 偉い 絵画 き に なる と いう 、祝福 の 予言 は 、はずれました。

自分 は 、わずかに 、粗悪な 雑誌 の 、無名 の 下手な 漫画 家 に なる 事 が 出来た だけ でした。

鎌倉 の 事件 の ため に 、高等 学校 から は 追放 せられ 、自分 は 、ヒラメ の 家 の 二 階 の 、三 畳 の 部屋 で 寝起き して 、故郷 から は 月々 、極めて 小額 の 金 が 、それ も 直接に 自分 宛 で は なく 、ヒラメ の ところ に ひそかに 送られて 来て いる 様子 でした が 、(しかも 、それ は 故郷 の 兄 たち が 、父 に かくして 送って くれて いる と いう 形式 に なって いた ようでした )それっきり 、あと は 故郷 と の つながり を 全然 、断ち切られて しまい 、そうして 、ヒラメ は いつも 不機嫌 、自分 が あいそ 笑い を して も 、笑わ ず 、人間 と いう もの は こんなに も 簡単に 、それ こそ 手のひら を かえす が 如く に 変化 できる もの か と 、あさましく 、いや 、むしろ 滑稽に 思わ れる くらい の 、ひどい 変り 様 で、

「出ちゃ いけません よ。 とにかく 、出 ないで 下さい よ」

それ ばかり 自分 に 言って いる のでした。

ヒラメ は 、自分 に 自殺 の おそれ あり と 、にらんで いる らしく 、つまり 、女 の 後 を 追って また 海 へ 飛び込んだり する 危険 が ある と 見てとって いる らしく 、自分 の 外出 を 固く 禁じて いる のでした。 けれども 、酒 も 飲め ない し 、煙草 も 吸え ないし 、ただ 、朝 から 晩 まで 二 階 の 三 畳 の こたつ に もぐって 、古 雑誌 なんか 読んで 阿 呆 同然の くらし を して いる 自分 に は 、自殺 の 気力 さえ 失われて いました。

ヒラメ の 家 は 、大久保 の 医 専 の 近く に あり 、書画 骨董 商 、青 竜 園 、だ など と 看板 の 文字 だけ は 相当に 気張って いて も 、一 棟 二戸 の 、その 一 戸 で 、店 の 間口 も 狭く 、店 内 は ホコリ だらけ で 、いい加減な ガラクタ ばかり 並べ 、(もっとも 、ヒラメ は その 店 の ガラクタ に たよって 商売 して いる わけで は なく 、こっち の 所 謂 旦那 の 秘蔵 の もの を 、あっち の 所 謂 旦那 に その 所有 権 を ゆずる 場合 など に 活躍 して 、お 金 を もうけて いる らしい のです )店 に 坐って いる 事 は 殆ど 無く 、たいてい 朝 から 、むずかし そうな 顔 を して そそくさ と 出かけ 、留守 は 十七 、八 の 小僧 ひと り 、これ が 自分 の 見張り 番 と いう わけで 、ひま さえ あれば 近所 の 子供 たち と 外 で キャッチボール など して いて も 、二 階 の 居候 を まるで 馬鹿 か 気 違い くらい に 思って いる らしく 、大人 おとな の 説教 くさい 事 まで 自分 に 言い聞かせ 、自分 は 、ひと と 言い争い の 出来 ない 質 たち な ので 、疲れた ような 、また 、感心 した ような 顔 を して それ に 耳 を 傾け 、服従 して いる のでした。 この 小僧 は 渋田 の かくし 子 で 、それ でも へんな 事情 が あって 、渋田 は 所 謂親 子 の 名乗り を せ ず 、また 渋田 が ずっと 独身 な の も 、何やら その辺 に 理由 が あって の 事 らしく 、自分 も 以前 、自分 の 家 の 者 たち から それ に 就いて の 噂 うわさ を 、ちょっと 聞いた ような 気 も する のです が 、自分 は 、どうも 他人 の 身の上 に は 、あまり 興味 を 持て ない ほう な ので 、深い 事 は 何も 知りません。 しかし 、その 小僧 の 眼 つき に も 、妙に 魚 の 眼 を 聯想 れんそう さ せる ところ が ありました から 、或いは 、本当に ヒラメ の かくし 子 、……でも 、それ ならば 、二 人 は 実に 淋しい 親子 でした。 夜 おそく 、二 階 の 自分 に は 内緒 で 、二 人 で お そば など を 取寄せて 無言 で 食べて いる 事 が ありました。

ヒラメ の 家 で は 食事 は いつも その 小僧 が つくり 、二 階 の やっかい 者 の 食事 だけ は 別に お 膳 ぜん に 載せて 小僧 が 三 度 々々 二 階 に 持ち 運んで 来て くれて 、ヒラメ と 小僧 は 、階段 の 下 の じめじめ した 四 畳 半 で 何やら 、カチャカチャ 皿 小 鉢 の 触れ合う 音 を さ せ ながら 、いそがし げ に 食事 して いる のでした。

三 月 末 の 或る 夕方 、ヒラメ は 思わぬ もうけ 口 に でも ありついた の か 、または 何 か 他 に 策略 で も あった の か 、(その 二 つ の 推察 が 、ともに 当って いた と して も 、おそらくは 、さらに また いくつか の 、自分 など に は とても 推察 の とどか ない こまかい 原因 も あった のでしょう が )自分 を 階下 の 珍 らしく お 銚子 ちょうし など 附いてい る 食卓 に 招いて 、ヒラメ なら ぬ マグロ の 刺身 に 、ごちそう の 主人 あるじ みずから 感服 し 、賞 讃 しょうさん し 、ぼんやり して いる 居候 に も 少し く お 酒 を すすめ、

「どう する つもりな んです 、いったい 、これ から」

自分 は それ に 答え ず 、卓上 の 皿 から 畳 鰯 たたみ いわし を つまみ 上げ 、その 小魚 たち の 銀 の 眼 玉 を 眺めて いたら 、酔い が ほのぼの 発して 来て 、遊び 廻って いた 頃 が なつかしく 、堀木 で さえ なつかしく 、つくづく 「自由 」が 欲しく なり 、ふっと 、かぼそく 泣き そうに なりました。

自分 が この 家 へ 来て から は 、道化 を 演ずる 張合い さえ 無く 、ただ もう ヒラメ と 小僧 の 蔑視 の 中 に 身 を 横たえ 、ヒラメ の ほう でも また 、自分 と 打ち解けた 長 噺 を する の を 避けて いる 様子 でした し 、自分 も その ヒラメ を 追いかけて 何 か を 訴える 気 など は 起ら ず 、ほとんど 自分 は 、間抜け づら の 居候 に なり切って いた のです。

「起訴 猶予 と いう の は 、前科 何 犯 と か 、そんな もの に は 、なら ない 模様 です。 だから 、まあ 、あなた の 心掛け 一 つ で 、更生 が 出来る わけです。 あなた が 、もし 、改心 して 、あなた の ほう から 、真面目に 私 に 相談 を 持ちかけて くれたら 、私 も 考えて みます」

ヒラメ の 話 方 に は 、いや 、世の中 の 全部 の 人 の 話 方 に は 、このように ややこしく 、どこ か 朦朧 もうろうと して 、逃腰 と でも いった みたいな 微妙な 複雑 さ が あり 、その ほとんど 無益 と 思わ れる くらい の 厳重な 警戒 と 、無数 と いって いい くらい の 小 うるさい 駈引 と に は 、いつも 自分 は 当惑 し 、どうでも いい や と いう 気分 に なって 、お 道化 で 茶化したり 、または 無言 の 首肯 で 一さい お まかせ と いう 、謂 わ ば 敗北 の 態度 を とって しまう のでした。

この 時 も ヒラメ が 、自分 に 向って 、だいたい 次 の ように 簡単に 報告 すれば 、それ で すむ 事 だった の を 自分 は 後年 に 到って 知り 、ヒラメ の 不必要な 用心 、いや 、世の中 の 人 たち の 不可解な 見栄 、お ていさい に 、何とも 陰 鬱 な 思い を しました。

ヒラメ は 、その 時 、ただ こう 言えば よかった のでした。

「官 立 でも 私立 でも 、とにかく 四 月 から 、どこ か の 学校 へ はいり なさい。 あなた の 生活 費 は 、学校 へ は いる と 、くに から 、もっと 充分に 送って 来る 事 に なって いる のです。」

ずっと 後 に なって わかった のです が 、事実 は 、そのように なって いた のでした。 そうして 、自分 も その 言いつけ に 従った でしょう。 それなのに 、ヒラメ の いやに 用心深く 持って 廻った 言い 方 の ため に 、妙に こじれ 、自分 の 生きて 行く 方向 も まるで 変って しまった のです。

「真面目に 私 に 相談 を 持ちかけて くれる 気持 が 無ければ 、仕様がない です が」

「どんな 相談?

自分 に は 、本当に 何も 見当 が つか なかった のです。

「それ は 、あなた の 胸 に ある 事 でしょう?

「たとえば?

「たとえばって 、あなた 自身 、これ から どう する 気 な んです」

「働いた ほう が 、いい んです か?

「いや 、あなた の 気持 は 、いったい どう な んです」

「だって 、学校 へ は いる と いったって、……」

「そりゃ 、お 金 が 要ります。 しかし 、問題 は 、お 金 で ない。 あなた の 気持 です」

お 金 は 、くに から 来る 事 に なって いる んだ から 、と なぜ 一 こ と 、言わ なかった のでしょう。 その 一言 に 依って 、自分 の 気持 も 、きまった 筈 な のに 、自分 に は 、ただ 五里霧中 でした。

「どう です か? 何 か 、将来 の 希望 、と でも いった もの が 、ある んです か? いったい 、どうも 、ひと を ひとり 世話 して いる と いう の は 、どれ だけ むずかしい もの だ か 、世話 されて いる ひと に は 、わかります まい」

「すみません」

「そりゃ 実に 、心配な もの です。 私 も 、いったん あなた の 世話 を 引受けた 以上 、あなた に も 、生半可 なまはんかな 気持 で いて もらい たく ない のです。 立派に 更生 の 道 を たどる 、と いう 覚悟 の ほど を 見せて もらいたい のです。 たとえば 、あなた の 将来 の 方針 、それ に 就いて あなた の ほう から 私 に 、まじめに 相談 を 持ちかけて 来た なら 、私 も その 相談 に は 応ずる つもり で います。 それ は 、どうせ こんな 、貧乏な ヒラメ の 援助 な のです から 、以前 の ような ぜいたく を 望んだら 、あて が はずれます。 しかし 、あなた の 気持 が しっかり して いて 、将来 の 方針 を はっきり 打ち 樹 たて 、そうして 私 に 相談 を して くれたら 、私 は 、た と いわ ず か ずつ でも 、あなた の 更生 の ため に 、お 手伝い しよう と さえ 思って いる んです。 わかります か? 私 の 気持 が。 いったい 、あなた は 、これ から 、どう する つもりで いる のです」

「ここ の 二 階 に 、置いて もらえ なかったら 、働いて、……」

「本気で 、そんな 事 を 言って いる のです か? いま の この 世の中 に 、た とい 帝国 大学校 を 出たって、……」

「いいえ 、サラリイマン に なる んで は 無い んです」

「それ じゃ 、何 です」

「画家 です」

思い切って 、それ を 言いました。

「へ ええ?

自分 は 、その 時 の 、頸 くび を ちぢめて 笑った ヒラメ の 顔 の 、いかにも ずる そうな 影 を 忘れる 事 が 出来ません。 軽蔑 の 影 に も 似て 、それとも 違い 、世の中 を 海 に たとえる と 、その 海 の 千尋 ちひろ の 深 さ の 箇所 に 、そんな 奇妙な 影 が たゆ とうてい そう で 、何 か 、おとな の 生活 の 奥底 を チラ と 覗 のぞかせた ような 笑い でした。

そんな 事 で は 話 に も 何も なら ぬ 、ちっとも 気持 が しっかり して いない 、考え なさい 、今夜 一晩 まじめに 考えて み なさい 、と 言わ れ 、自分 は 追わ れる ように 二 階 に 上って 、寝て も 、別に 何の 考え も 浮びません でした。 そうして 、あけがた に なり 、ヒラメ の 家 から 逃げました。

夕方 、間違い なく 帰ります。 左記 の 友人 の 許 もと へ 、将来 の 方針 に 就いて 相談 に 行って 来る のです から 、御 心配 無く。 ほんとうに。

と 、用 箋 に 鉛筆 で 大きく 書き 、それ から 、浅草 の 堀木 正雄 の 住所 姓名 を 記して 、こっそり 、ヒラメ の 家 を 出ました。

ヒラメ に 説教 せられた の が 、くやしくて 逃げた わけ では ありません でした。 まさしく 自分 は 、ヒラメ の 言う とおり 、気持 の しっかり して いない 男 で 、将来 の 方針 も 何も 自分 に は まるで 見当 が つか ず 、この上 、ヒラメ の 家 の やっかいに なって いる の は 、ヒラメ に も 気の毒です し 、その うち に 、もし 万一 、自分 に も 発奮 の 気持 が 起り 、志 を 立てた ところ で 、その 更生 資金 を あの 貧乏な ヒラメ から 月々 援助 せられる の か と 思う と 、とても 心苦しくて 、いた たまらない 気持 に なった から でした。

しかし 、自分 は 、所 謂 「将来 の 方針 」を 、堀木 ごとき に 、相談 に 行こう など と 本気に 思って 、ヒラメ の 家 を 出た ので は 無かった のでした。 それ は 、ただ 、わずか でも 、つかのま でも 、ヒラメ に 安心 さ せて 置き たくて 、(その 間 に 自分 が 、少し でも 遠く へ 逃げのびて いたい と いう 探偵 小説 的な 策略 から 、そんな 置手紙 を 書いた 、と いう より は 、いや 、そんな 気持 も 幽 かすかに あった に 違いない のです が 、それ より も 、やはり 自分 は 、いきなり ヒラメ に ショック を 与え 、彼 を 混乱 当惑 さ せて しまう の が 、おそろしかった ばかりに 、と でも 言った ほう が 、いくらか 正確 かも 知れません。 どうせ 、ばれる に きまって いる のに 、その とおり に 言う の が 、おそろしくて 、必ず 何かしら 飾り を つける の が 、自分 の 哀しい 性癖 の 一 つ で 、それ は 世間 の 人 が 「嘘つき 」と 呼んで 卑しめて いる 性格 に 似て い ながら 、しかし 、自分 は 自分 に 利益 を もたらそう と して その 飾りつけ を 行った 事 は ほとんど 無く 、ただ 雰囲気 ふんいき の 興 覚めた 一変 が 、窒息 する くらい に おそろしくて 、後 で 自分 に 不利益に なる と いう 事 が わかって いて も 、れいの 自分 の 「必死の 奉仕 」それ は た とい ゆがめられ 微弱で 、馬鹿らしい もの であろう と 、その 奉仕 の 気持 から 、つい 一言 の 飾りつけ を して しまう と いう 場合 が 多かった ような 気 も する のです が 、しかし 、この 習性 も また 、世間 の 所 謂 「正直 者 」たち から 、大いに 乗ぜられる ところ と なりました )その 時 、ふっと 、記憶 の 底 から 浮んで 来た まま に 堀木 の 住所 と 姓名 を 、用 箋 の 端に したためた まで の 事 だった のです。

第 三 の 手記 一 (1) だい|みっ||しゅき|ひと Bericht aus dritter Hand I (1) Third Epistle I (1) Relato de tercera mano I (1) 세 번째 수기 (1) 第三注1 (1) 第三註1 (1)

竹一 の 予言 の 、一 つ は 当り 、一 つ は 、はずれました。 たけいち||よげん||ひと|||あたり|ひと|||はずれ ました One of Takeichi's prophecies came true and the other failed. 惚 ほれられる と いう 、名誉で 無い 予言 の ほう は 、あたりました が 、きっと 偉い 絵画 き に なる と いう 、祝福 の 予言 は 、はずれました。 ぼけ|ほれ られる|||めいよで|ない|よげん||||あたり ました|||えらい|かいが||||||しゅくふく||よげん||はずれ ました The unhonorable prophecy that I would fall in love with it came true, but the blessed prophecy that it would surely make a great painting did not come true.

自分 は 、わずかに 、粗悪な 雑誌 の 、無名 の 下手な 漫画 家 に なる 事 が 出来た だけ でした。 じぶん|||そあくな|ざっし||むめい||へたな|まんが|いえ|||こと||できた||

鎌倉 の 事件 の ため に 、高等 学校 から は 追放 せられ 、自分 は 、ヒラメ の 家 の 二 階 の 、三 畳 の 部屋 で 寝起き して 、故郷 から は 月々 、極めて 小額 の 金 が 、それ も 直接に 自分 宛 で は なく 、ヒラメ の ところ に ひそかに 送られて 来て いる 様子 でした が 、(しかも 、それ は 故郷 の 兄 たち が 、父 に かくして 送って くれて いる と いう 形式 に なって いた ようでした )それっきり 、あと は 故郷 と の つながり を 全然 、断ち切られて しまい 、そうして 、ヒラメ は いつも 不機嫌 、自分 が あいそ 笑い を して も 、笑わ ず 、人間 と いう もの は こんなに も 簡単に 、それ こそ 手のひら を かえす が 如く に 変化 できる もの か と 、あさましく 、いや 、むしろ 滑稽に 思わ れる くらい の 、ひどい 変り 様 で、 かまくら||じけん||||こうとう|がっこう|||ついほう|せら れ|じぶん||ひらめ||いえ||ふた|かい||みっ|たたみ||へや||ねおき||こきょう|||つきづき|きわめて|しょうがく||きむ||||ちょくせつに|じぶん|あて||||ひらめ|||||おくら れて|きて||ようす||||||こきょう||あに|||ちち|||おくって|||||けいしき||||||||こきょう|||||ぜんぜん|たちきら れて|||ひらめ|||ふきげん|じぶん|||わらい||||わらわ||にんげん|||||||かんたんに|||てのひら||||ごとく||へんか||||||||こっけいに|おもわ|||||かわり|さま| Because of the incident in Kamakura, I was expelled from high school, and I woke up in a three-tatami room on the second floor of a flatfish house, and received a very small amount of money each month, directly from my hometown. It looked like it had been secretly sent to the flounder, not addressed to me, but (moreover, it seemed to be in the format that my brothers in my hometown had sent it to my father in secret. After that, I was completely cut off from the connection with my hometown, and the flounder was always in a bad mood. I wondered if it was possible to change like flipping the palm of the hand.

「出ちゃ いけません よ。 でちゃ|いけ ませ ん| "Don't go out. とにかく 、出 ないで 下さい よ」 |だ||ください|

それ ばかり 自分 に 言って いる のでした。 ||じぶん||いって||

ヒラメ は 、自分 に 自殺 の おそれ あり と 、にらんで いる らしく 、つまり 、女 の 後 を 追って また 海 へ 飛び込んだり する 危険 が ある と 見てとって いる らしく 、自分 の 外出 を 固く 禁じて いる のでした。 ひらめ||じぶん||じさつ|||||||||おんな||あと||おって||うみ||とびこんだり||きけん||||みてとって|||じぶん||がいしゅつ||かたく|きんじて|| けれども 、酒 も 飲め ない し 、煙草 も 吸え ないし 、ただ 、朝 から 晩 まで 二 階 の 三 畳 の こたつ に もぐって 、古 雑誌 なんか 読んで 阿 呆 同然の くらし を して いる 自分 に は 、自殺 の 気力 さえ 失われて いました。 |さけ||のめ|||たばこ||すえ|||あさ||ばん||ふた|かい||みっ|たたみ|||||ふる|ざっし||よんで|おもね|ぼけ|どうぜんの|||||じぶん|||じさつ||きりょく||うしなわ れて|い ました

ヒラメ の 家 は 、大久保 の 医 専 の 近く に あり 、書画 骨董 商 、青 竜 園 、だ など と 看板 の 文字 だけ は 相当に 気張って いて も 、一 棟 二戸 の 、その 一 戸 で 、店 の 間口 も 狭く 、店 内 は ホコリ だらけ で 、いい加減な ガラクタ ばかり 並べ 、(もっとも 、ヒラメ は その 店 の ガラクタ に たよって 商売 して いる わけで は なく 、こっち の 所 謂 旦那 の 秘蔵 の もの を 、あっち の 所 謂 旦那 に その 所有 権 を ゆずる 場合 など に 活躍 して 、お 金 を もうけて いる らしい のです )店 に 坐って いる 事 は 殆ど 無く 、たいてい 朝 から 、むずかし そうな 顔 を して そそくさ と 出かけ 、留守 は 十七 、八 の 小僧 ひと り 、これ が 自分 の 見張り 番 と いう わけで 、ひま さえ あれば 近所 の 子供 たち と 外 で キャッチボール など して いて も 、二 階 の 居候 を まるで 馬鹿 か 気 違い くらい に 思って いる らしく 、大人 おとな の 説教 くさい 事 まで 自分 に 言い聞かせ 、自分 は 、ひと と 言い争い の 出来 ない 質 たち な ので 、疲れた ような 、また 、感心 した ような 顔 を して それ に 耳 を 傾け 、服従 して いる のでした。 ひらめ||いえ||おおくぼ||い|せん||ちかく|||しょが|こっとう|しょう|あお|りゅう|えん||||かんばん||もじ|||そうとうに|きばって|||ひと|むね|にのへ|||ひと|と||てん||まぐち||せまく|てん|うち|||||いいかげんな|||ならべ||ひらめ|||てん|||||しょうばい||||||||しょ|い|だんな||ひぞう||||あっ ち||しょ|い|だんな|||しょゆう|けん|||ばあい|||かつやく|||きむ||||||てん||すわって||こと||ほとんど|なく||あさ|||そう な|かお|||||でかけ|るす||じゅうしち|やっ||こぞう|||||じぶん||みはり|ばん|||||||きんじょ||こども|||がい||きゃっちぼーる|||||ふた|かい||いそうろう|||ばか||き|ちがい|||おもって|||おとな|||せっきょう||こと||じぶん||いいきかせ|じぶん||||いいあらそい||でき||しち||||つかれた|||かんしん|||かお|||||みみ||かたむけ|ふくじゅう||| The flounder house is near a medical school in Okubo. It's small, the store is full of dust, and it's full of irrelevant junk. It seems that he is active in cases such as when he hands over the ownership to his so-called husband, and he seems to be making money. I'm only a boy of seventeen or eight, and he's my guard, so if I have free time, even if I'm outside playing catch with the neighborhood kids, I feel like I'm an idiot living on the second floor. They seem to think it's crazy, and they even tell themselves adult sermons. He listened and obeyed. この 小僧 は 渋田 の かくし 子 で 、それ でも へんな 事情 が あって 、渋田 は 所 謂親 子 の 名乗り を せ ず 、また 渋田 が ずっと 独身 な の も 、何やら その辺 に 理由 が あって の 事 らしく 、自分 も 以前 、自分 の 家 の 者 たち から それ に 就いて の 噂 うわさ を 、ちょっと 聞いた ような 気 も する のです が 、自分 は 、どうも 他人 の 身の上 に は 、あまり 興味 を 持て ない ほう な ので 、深い 事 は 何も 知りません。 |こぞう||しぶた|||こ|||||じじょう|||しぶた||しょ|いおや|こ||なのり|||||しぶた|||どくしん||||なにやら|そのへん||りゆう||||こと||じぶん||いぜん|じぶん||いえ||もの|||||ついて||うわさ||||きいた||き|||||じぶん|||たにん||みのうえ||||きょうみ||もて|||||ふかい|こと||なにも|しり ませ ん しかし 、その 小僧 の 眼 つき に も 、妙に 魚 の 眼 を 聯想 れんそう さ せる ところ が ありました から 、或いは 、本当に ヒラメ の かくし 子 、……でも 、それ ならば 、二 人 は 実に 淋しい 親子 でした。 ||こぞう||がん||||みょうに|ぎょ||がん||れんそう||||||あり ました||あるいは|ほんとうに|ひらめ|||こ||||ふた|じん||じつに|さびしい|おやこ| 夜 おそく 、二 階 の 自分 に は 内緒 で 、二 人 で お そば など を 取寄せて 無言 で 食べて いる 事 が ありました。 よ||ふた|かい||じぶん|||ないしょ||ふた|じん||||||とりよせて|むごん||たべて||こと||あり ました

ヒラメ の 家 で は 食事 は いつも その 小僧 が つくり 、二 階 の やっかい 者 の 食事 だけ は 別に お 膳 ぜん に 載せて 小僧 が 三 度 々々 二 階 に 持ち 運んで 来て くれて 、ヒラメ と 小僧 は 、階段 の 下 の じめじめ した 四 畳 半 で 何やら 、カチャカチャ 皿 小 鉢 の 触れ合う 音 を さ せ ながら 、いそがし げ に 食事 して いる のでした。 ひらめ||いえ|||しょくじ||||こぞう|||ふた|かい|||もの||しょくじ|||べつに||ぜん|||のせて|こぞう||みっ|たび||ふた|かい||もち|はこんで|きて||ひらめ||こぞう||かいだん||した||||よっ|たたみ|はん||なにやら||さら|しょう|はち||ふれあう|おと||||||||しょくじ|||

三 月 末 の 或る 夕方 、ヒラメ は 思わぬ もうけ 口 に でも ありついた の か 、または 何 か 他 に 策略 で も あった の か 、(その 二 つ の 推察 が 、ともに 当って いた と して も 、おそらくは 、さらに また いくつか の 、自分 など に は とても 推察 の とどか ない こまかい 原因 も あった のでしょう が )自分 を 階下 の 珍 らしく お 銚子 ちょうし など 附いてい る 食卓 に 招いて 、ヒラメ なら ぬ マグロ の 刺身 に 、ごちそう の 主人 あるじ みずから 感服 し 、賞 讃 しょうさん し 、ぼんやり して いる 居候 に も 少し く お 酒 を すすめ、 みっ|つき|すえ||ある|ゆうがた|ひらめ||おもわぬ||くち|||||||なん||た||さくりゃく|||||||ふた|||すいさつ|||あたって||||||||いく つ か||じぶん|||||すいさつ|||||げんいん|||||じぶん||かいか||ちん|||ちょうし|||ついてい||しょくたく||まねいて|ひらめ|||まぐろ||さしみ||||あるじ|||かんぷく||しょう|さん||||||いそうろう|||すこし|||さけ|| One evening at the end of March, the flounder wondered whether it had stumbled upon an unexpected profit, or whether it was some other ruse (even if both guesses were correct). (There were probably a number of intricate reasons that I couldn't even guess.) I invited myself downstairs to the dining table, which was unusually equipped with chopsticks, and ate tuna, not flounder. The host of the feast admired and praised the sashimi, and offered a drink to the absent-minded roommate.

「どう する つもりな んです 、いったい 、これ から」 "What are you going to do, from now on?"

自分 は それ に 答え ず 、卓上 の 皿 から 畳 鰯 たたみ いわし を つまみ 上げ 、その 小魚 たち の 銀 の 眼 玉 を 眺めて いたら 、酔い が ほのぼの 発して 来て 、遊び 廻って いた 頃 が なつかしく 、堀木 で さえ なつかしく 、つくづく 「自由 」が 欲しく なり 、ふっと 、かぼそく 泣き そうに なりました。 じぶん||||こたえ||たくじょう||さら||たたみ|いわし|||||あげ||こざかな|||ぎん||がん|たま||ながめて||よい|||はっして|きて|あそび|まわって||ころ|||ほりき|||||じゆう||ほしく||||なき|そう に|なり ました

自分 が この 家 へ 来て から は 、道化 を 演ずる 張合い さえ 無く 、ただ もう ヒラメ と 小僧 の 蔑視 の 中 に 身 を 横たえ 、ヒラメ の ほう でも また 、自分 と 打ち解けた 長 噺 を する の を 避けて いる 様子 でした し 、自分 も その ヒラメ を 追いかけて 何 か を 訴える 気 など は 起ら ず 、ほとんど 自分 は 、間抜け づら の 居候 に なり切って いた のです。 じぶん|||いえ||きて|||どうけ||えんずる|はりあい||なく|||ひらめ||こぞう||べっし||なか||み||よこたえ|ひらめ|||||じぶん||うちとけた|ちょう|はなし|||||さけて||ようす|||じぶん|||ひらめ||おいかけて|なん|||うったえる|き|||おこら|||じぶん||まぬけ|||いそうろう||なりきって||

「起訴 猶予 と いう の は 、前科 何 犯 と か 、そんな もの に は 、なら ない 模様 です。 きそ|ゆうよ|||||ぜんか|なん|はん|||||||||もよう| “It seems that the postponement of prosecution does not apply to criminals with criminal records or anything like that. だから 、まあ 、あなた の 心掛け 一 つ で 、更生 が 出来る わけです。 ||||こころがけ|ひと|||こうせい||できる| So, well, you can rehabilitate with just one of your efforts. あなた が 、もし 、改心 して 、あなた の ほう から 、真面目に 私 に 相談 を 持ちかけて くれたら 、私 も 考えて みます」 |||かいしん||||||まじめに|わたくし||そうだん||もちかけて||わたくし||かんがえて|み ます

ヒラメ の 話 方 に は 、いや 、世の中 の 全部 の 人 の 話 方 に は 、このように ややこしく 、どこ か 朦朧 もうろうと して 、逃腰 と でも いった みたいな 微妙な 複雑 さ が あり 、その ほとんど 無益 と 思わ れる くらい の 厳重な 警戒 と 、無数 と いって いい くらい の 小 うるさい 駈引 と に は 、いつも 自分 は 当惑 し 、どうでも いい や と いう 気分 に なって 、お 道化 で 茶化したり 、または 無言 の 首肯 で 一さい お まかせ と いう 、謂 わ ば 敗北 の 態度 を とって しまう のでした。 ひらめ||はなし|かた||||よのなか||ぜんぶ||じん||はなし|かた|||||||もうろう|||にげごし|||||びみょうな|ふくざつ||||||むえき||おもわ||||げんじゅうな|けいかい||むすう||||||しょう||くひき|||||じぶん||とうわく|||||||きぶん||||どうけ||ちゃかしたり||むごん||しゅこう||いっさい|||||い|||はいぼく||たいど||||

この 時 も ヒラメ が 、自分 に 向って 、だいたい 次 の ように 簡単に 報告 すれば 、それ で すむ 事 だった の を 自分 は 後年 に 到って 知り 、ヒラメ の 不必要な 用心 、いや 、世の中 の 人 たち の 不可解な 見栄 、お ていさい に 、何とも 陰 鬱 な 思い を しました。 |じ||ひらめ||じぶん||むかい って||つぎ|||かんたんに|ほうこく|||||こと||||じぶん||こうねん||とう って|しり|ひらめ||ふひつような|ようじん||よのなか||じん|||ふかかいな|みえ||||なんとも|かげ|うつ||おもい||し ました At this time as well, I knew in later years that the flounder would have been able to do so by simply reporting to me as follows, and the unnecessary precautions of the flounder, no, the world. The mysterious appearance of these people, and the fact that they had a very gloomy feeling.

ヒラメ は 、その 時 、ただ こう 言えば よかった のでした。 ひらめ|||じ|||いえば||

「官 立 でも 私立 でも 、とにかく 四 月 から 、どこ か の 学校 へ はいり なさい。 かん|た||しりつ|||よっ|つき|||||がっこう||| あなた の 生活 費 は 、学校 へ は いる と 、くに から 、もっと 充分に 送って 来る 事 に なって いる のです。」 ||せいかつ|ひ||がっこう||||||||じゅうぶんに|おくって|くる|こと||||

ずっと 後 に なって わかった のです が 、事実 は 、そのように なって いた のでした。 |あと||||||じじつ||||| I found out much later that in fact that was the way it was supposed to be. そうして 、自分 も その 言いつけ に 従った でしょう。 |じぶん|||いいつけ||したがった| それなのに 、ヒラメ の いやに 用心深く 持って 廻った 言い 方 の ため に 、妙に こじれ 、自分 の 生きて 行く 方向 も まるで 変って しまった のです。 |ひらめ|||ようじんぶかく|もって|まわった|いい|かた||||みょうに||じぶん||いきて|いく|ほうこう|||かわって|| And yet, because of the flounder's reluctantly cautious way of speaking, things got strangely complicated, and the direction of my life completely changed.

「真面目に 私 に 相談 を 持ちかけて くれる 気持 が 無ければ 、仕様がない です が」 まじめに|わたくし||そうだん||もちかけて||きもち||なければ|しようがない|| "If you don't have a serious intention to consult with me, there is no specification."

「どんな 相談? |そうだん

自分 に は 、本当に 何も 見当 が つか なかった のです。 じぶん|||ほんとうに|なにも|けんとう|||| I really had no clue.

「それ は 、あなた の 胸 に ある 事 でしょう? ||||むね|||こと|

「たとえば?

「たとえばって 、あなた 自身 、これ から どう する 気 な んです」 たとえば って||じしん|||||き|| "For example, what are you going to do about yourself?"

「働いた ほう が 、いい んです か? はたらいた|||||

「いや 、あなた の 気持 は 、いったい どう な んです」 |||きもち||||| "No, how are you feeling?"

「だって 、学校 へ は いる と いったって、……」 |がっこう|||||いった って

「そりゃ 、お 金 が 要ります。 ||きむ||いり ます しかし 、問題 は 、お 金 で ない。 |もんだい|||きむ|| あなた の 気持 です」 ||きもち| It's your feelings."

お 金 は 、くに から 来る 事 に なって いる んだ から 、と なぜ 一 こ と 、言わ なかった のでしょう。 |きむ||||くる|こと||||||||ひと|||いわ|| Why didn't you tell me that the money was supposed to come from somewhere else? その 一言 に 依って 、自分 の 気持 も 、きまった 筈 な のに 、自分 に は 、ただ 五里霧中 でした。 |いちげん||よって|じぶん||きもち|||はず|||じぶん||||ごりむちゅう|

「どう です か? 何 か 、将来 の 希望 、と でも いった もの が 、ある んです か? なん||しょうらい||きぼう|||||||| Do you have any kind of hope for the future? いったい 、どうも 、ひと を ひとり 世話 して いる と いう の は 、どれ だけ むずかしい もの だ か 、世話 されて いる ひと に は 、わかります まい」 |||||せわ|||||||||||||せわ|さ れて|||||わかり ます| I don't know how difficult it is to take care of someone by myself, but the person being cared for doesn't understand."

「すみません」

「そりゃ 実に 、心配な もの です。 |じつに|しんぱいな|| 私 も 、いったん あなた の 世話 を 引受けた 以上 、あなた に も 、生半可 なまはんかな 気持 で いて もらい たく ない のです。 わたくし|||||せわ||ひきうけた|いじょう||||なまはんか||きもち|||||| 立派に 更生 の 道 を たどる 、と いう 覚悟 の ほど を 見せて もらいたい のです。 りっぱに|こうせい||どう|||||かくご||||みせて|もらい たい| I would like you to show your determination to follow the path of rebirth in a respectable way. たとえば 、あなた の 将来 の 方針 、それ に 就いて あなた の ほう から 私 に 、まじめに 相談 を 持ちかけて 来た なら 、私 も その 相談 に は 応ずる つもり で います。 |||しょうらい||ほうしん|||ついて|||||わたくし|||そうだん||もちかけて|きた||わたくし|||そうだん|||おうずる|||い ます For example, if you seriously approach me for advice on your future policy, I will also respond to that consultation. それ は 、どうせ こんな 、貧乏な ヒラメ の 援助 な のです から 、以前 の ような ぜいたく を 望んだら 、あて が はずれます。 ||||びんぼうな|ひらめ||えんじょ||||いぜん|||||のぞんだら|||はずれ ます After all, it's the help of such a poor flounder, so if you want the same luxury as before, you won't be able to get it. しかし 、あなた の 気持 が しっかり して いて 、将来 の 方針 を はっきり 打ち 樹 たて 、そうして 私 に 相談 を して くれたら 、私 は 、た と いわ ず か ずつ でも 、あなた の 更生 の ため に 、お 手伝い しよう と さえ 思って いる んです。 |||きもち|||||しょうらい||ほうしん|||うち|き|||わたくし||そうだん||||わたくし|||||||||||こうせい|||||てつだい||||おもって|| However, if you are firm in your heart, have a clear plan for your future, and consult with me, I will do whatever it takes to help you rehabilitate. I'm even thinking of helping out. わかります か? わかり ます| 私 の 気持 が。 わたくし||きもち| いったい 、あなた は 、これ から 、どう する つもりで いる のです」

「ここ の 二 階 に 、置いて もらえ なかったら 、働いて、……」 ||ふた|かい||おいて|||はたらいて "If you don't put me on the second floor here, I'll work..."

「本気で 、そんな 事 を 言って いる のです か? ほんきで||こと||いって||| いま の この 世の中 に 、た とい 帝国 大学校 を 出たって、……」 |||よのなか||||ていこく|だいがっこう||でた って

「いいえ 、サラリイマン に なる んで は 無い んです」 ||||||ない|

「それ じゃ 、何 です」 ||なん|

「画家 です」 がか|

思い切って 、それ を 言いました。 おもいきって|||いい ました

「へ ええ?

自分 は 、その 時 の 、頸 くび を ちぢめて 笑った ヒラメ の 顔 の 、いかにも ずる そうな 影 を 忘れる 事 が 出来ません。 じぶん|||じ||けい||||わらった|ひらめ||かお||||そう な|かげ||わすれる|こと||でき ませ ん I can't forget the cunning shadow on the flounder's face at that time, with its neck hunched and laughing. 軽蔑 の 影 に も 似て 、それとも 違い 、世の中 を 海 に たとえる と 、その 海 の 千尋 ちひろ の 深 さ の 箇所 に 、そんな 奇妙な 影 が たゆ とうてい そう で 、何 か 、おとな の 生活 の 奥底 を チラ と 覗 のぞかせた ような 笑い でした。 けいべつ||かげ|||にて||ちがい|よのなか||うみ|||||うみ||ちひろ|||ふか|||かしょ|||きみょうな|かげ||||||なん||||せいかつ||おくそこ||||のぞ|||わらい| It's like a shadow of contempt, or maybe it's different. If we compare the world to the sea, there's a strange shadow that seems to linger in the depths of the sea, and somehow it's the depths of adult life. It was a laughter that seemed to peep out.

そんな 事 で は 話 に も 何も なら ぬ 、ちっとも 気持 が しっかり して いない 、考え なさい 、今夜 一晩 まじめに 考えて み なさい 、と 言わ れ 、自分 は 追わ れる ように 二 階 に 上って 、寝て も 、別に 何の 考え も 浮びません でした。 |こと|||はなし|||なにも||||きもち|||||かんがえ||こんや|ひとばん||かんがえて||||いわ||じぶん||おわ|||ふた|かい||のぼって|ねて||べつに|なんの|かんがえ||うかび ませ ん| そうして 、あけがた に なり 、ヒラメ の 家 から 逃げました。 ||||ひらめ||いえ||にげ ました

夕方 、間違い なく 帰ります。 ゆうがた|まちがい||かえり ます 左記 の 友人 の 許 もと へ 、将来 の 方針 に 就いて 相談 に 行って 来る のです から 、御 心配 無く。 さき||ゆうじん||ゆる|||しょうらい||ほうしん||ついて|そうだん||おこなって|くる|||ご|しんぱい|なく ほんとうに。

と 、用 箋 に 鉛筆 で 大きく 書き 、それ から 、浅草 の 堀木 正雄 の 住所 姓名 を 記して 、こっそり 、ヒラメ の 家 を 出ました。 |よう|せん||えんぴつ||おおきく|かき|||あさくさ||ほりき|まさお||じゅうしょ|せいめい||しるして||ひらめ||いえ||で ました

ヒラメ に 説教 せられた の が 、くやしくて 逃げた わけ では ありません でした。 ひらめ||せっきょう|せら れた||||にげた|||あり ませ ん| まさしく 自分 は 、ヒラメ の 言う とおり 、気持 の しっかり して いない 男 で 、将来 の 方針 も 何も 自分 に は まるで 見当 が つか ず 、この上 、ヒラメ の 家 の やっかいに なって いる の は 、ヒラメ に も 気の毒です し 、その うち に 、もし 万一 、自分 に も 発奮 の 気持 が 起り 、志 を 立てた ところ で 、その 更生 資金 を あの 貧乏な ヒラメ から 月々 援助 せられる の か と 思う と 、とても 心苦しくて 、いた たまらない 気持 に なった から でした。 |じぶん||ひらめ||いう||きもち|||||おとこ||しょうらい||ほうしん||なにも|じぶん||||けんとう||||このうえ|ひらめ||いえ|||||||ひらめ|||きのどくです||||||まんいち|じぶん|||はっぷん||きもち||おこり|こころざし||たてた||||こうせい|しきん|||びんぼうな|ひらめ||つきづき|えんじょ|せら れる||||おもう|||こころぐるしくて|||きもち||||

しかし 、自分 は 、所 謂 「将来 の 方針 」を 、堀木 ごとき に 、相談 に 行こう など と 本気に 思って 、ヒラメ の 家 を 出た ので は 無かった のでした。 |じぶん||しょ|い|しょうらい||ほうしん||ほりき|||そうだん||いこう|||ほんきに|おもって|ひらめ||いえ||でた|||なかった| それ は 、ただ 、わずか でも 、つかのま でも 、ヒラメ に 安心 さ せて 置き たくて 、(その 間 に 自分 が 、少し でも 遠く へ 逃げのびて いたい と いう 探偵 小説 的な 策略 から 、そんな 置手紙 を 書いた 、と いう より は 、いや 、そんな 気持 も 幽 かすかに あった に 違いない のです が 、それ より も 、やはり 自分 は 、いきなり ヒラメ に ショック を 与え 、彼 を 混乱 当惑 さ せて しまう の が 、おそろしかった ばかりに 、と でも 言った ほう が 、いくらか 正確 かも 知れません。 |||||||ひらめ||あんしん|||おき|||あいだ||じぶん||すこし||とおく||にげのびて|い たい|||たんてい|しょうせつ|てきな|さくりゃく|||おきてがみ||かいた|||||||きもち||ゆう||||ちがいない|||||||じぶん|||ひらめ||しょっく||あたえ|かれ||こんらん|とうわく||||||||||いった||||せいかく||しれ ませ ん I just wanted to put the flounder at ease, even if only for a short time, and (during that time, I wanted to escape as far away as possible, even if only for a short time). Or rather, I must have had a faint feeling of that sort, but more than that, I was the one who suddenly shocked the flounder and left him confused and bewildered. However, it might be somewhat more accurate to say that it was just terrifying. どうせ 、ばれる に きまって いる のに 、その とおり に 言う の が 、おそろしくて 、必ず 何かしら 飾り を つける の が 、自分 の 哀しい 性癖 の 一 つ で 、それ は 世間 の 人 が 「嘘つき 」と 呼んで 卑しめて いる 性格 に 似て い ながら 、しかし 、自分 は 自分 に 利益 を もたらそう と して その 飾りつけ を 行った 事 は ほとんど 無く 、ただ 雰囲気 ふんいき の 興 覚めた 一変 が 、窒息 する くらい に おそろしくて 、後 で 自分 に 不利益に なる と いう 事 が わかって いて も 、れいの 自分 の 「必死の 奉仕 」それ は た とい ゆがめられ 微弱で 、馬鹿らしい もの であろう と 、その 奉仕 の 気持 から 、つい 一言 の 飾りつけ を して しまう と いう 場合 が 多かった ような 気 も する のです が 、しかし 、この 習性 も また 、世間 の 所 謂 「正直 者 」たち から 、大いに 乗ぜられる ところ と なりました )その 時 、ふっと 、記憶 の 底 から 浮んで 来た まま に 堀木 の 住所 と 姓名 を 、用 箋 の 端に したためた まで の 事 だった のです。 |||||||||いう||||かならず|なにかしら|かざり|||||じぶん||かなしい|せいへき||ひと|||||せけん||じん||うそつき||よんで|いやしめて||せいかく||にて||||じぶん||じぶん||りえき||||||かざりつけ||おこなった|こと|||なく||ふんいき|||きょう|さめた|いっぺん||ちっそく|||||あと||じぶん||ふりえきに||||こと||||||じぶん||ひっしの|ほうし|||||ゆがめ られ|びじゃくで|ばからしい|||||ほうし||きもち|||いちげん||かざりつけ||||||ばあい||おおかった||き|||||||しゅうせい|||せけん||しょ|い|しょうじき|もの|||おおいに|じょうぜ られる|||なり ました||じ||きおく||そこ||うかんで|きた|||ほりき||じゅうしょ||せいめい||よう|せん||はしたに||||こと|| It's one of my sad tendencies to always put some kind of embellishment on myself, because it's one of my sad tendencies that people call me a "liar" and humiliate me. Although he has a similar personality, he has seldom done the decorations to benefit himself, only that the sudden change in the atmosphere is suffocatingly frightening. Even if I knew that it would be to my detriment later, my own "desperate service", even if it was distorted, feeble, and ridiculous, I could not help but feel a sense of service. I get the feeling that there were many cases of embellishing one's words, but this habit also came to be greatly multiplied by the so-called "honest people" of the world.) At one point, I had just written down Horiki's name and address on a piece of writing paper, just as they came to me from the depths of my memory.