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太宰治『人間失格』(No Longer Human by Osamu Dazai), 第二の手記 (4)

第 二 の 手記 (4)

好きだった から な のです。 自分 に は 、その 人 たち が 、気 に いって いた から な のです。 しかし 、それ は 必ずしも 、マルクス に 依って 結ばれた 親愛 感 で は 無かった のです。

非合法。 自分 に は 、それ が 幽 か に 楽しかった のです。 むしろ 、居心地 が よかった のです。 世の中 の 合法 と いう もの の ほう が 、かえって おそろしく 、(それ に は 、底 知れ ず 強い もの が 予感 せられます )その からくり が 不可解で 、とても その 窓 の 無い 、底冷え の する 部屋 に は 坐って おら れ ず 、外 は 非合法の 海 であって も 、それ に 飛び込んで 泳いで 、やがて 死に 到 る ほう が 、自分 に は 、いっそ 気楽 の ようでした。

日 蔭 者 ひかげ も の 、と いう 言葉 が あります。 人間 の 世に 於 いて 、みじめな 、敗者 、悪徳 者 を 指差して いう 言葉 の ようです が 、自分 は 、自分 を 生れた 時 から の 日 蔭 者 の ような 気 が して いて 、世間 から 、あれ は 日 蔭 者 だ と 指差されて いる 程 の ひと と 逢う と 、自分 は 、必ず 、優しい 心 に なる のです。 そうして 、その 自分 の 「優しい 心 」は 、自身 で うっとり する くらい 優しい 心 でした。

また 、犯人 意識 、と いう 言葉 も あります。 自分 は 、この 人間 の 世の中 に 於 いて 、一生 その 意識 に 苦しめられ ながら も 、しかし 、それ は 自分 の 糟糠 そうこう の 妻 の 如き 好 伴侶 はんりょ で 、そい つと 二 人きり で 侘 わびしく 遊び たわむれて いる と いう の も 、自分 の 生きて いる 姿勢 の 一 つ だった かも 知れ ない し 、また 、俗に 、脛 すね に 傷 持つ 身 、と いう 言葉 も ある ようです が 、その 傷 は 、自分 の 赤ん坊 の 時 から 、自然に 片方 の 脛 に あらわれて 、長ずる に 及んで 治癒 する どころ か 、いよいよ 深く なる ばかりで 、骨 に まで 達し 、夜 々 の 痛 苦 は 千変万化 の 地獄 と は 言い ながら 、しかし 、(これ は 、たいへん 奇妙な 言い 方 です けど )その 傷 は 、次第に 自分 の 血肉 より も 親しく なり 、その 傷 の 痛み は 、すなわち 傷 の 生きて いる 感情 、または 愛情 の 囁 ささやき の ように さえ 思わ れる 、そんな 男 に とって 、れいの 地下 運動 の グルウプ の 雰囲気 が 、へんに 安心で 、居心地 が よく 、つまり 、その 運動 の 本来 の 目的 より も 、その 運動 の 肌 が 、自分 に 合った 感じ な のでした。 堀木 の 場合 は 、ただ もう 阿 呆 の ひやかし で 、いち ど 自分 を 紹介 し に その 会合 へ 行った きり で 、マルキシスト は 、生産 面 の 研究 と 同時に 、消費 面 の 視察 も 必要だ など と 下手な 洒落 しゃれ を 言って 、その 会合 に は 寄りつか ず 、とかく 自分 を 、その 消費 面 の 視察 の ほう に ばかり 誘い た がる のでした。 思えば 、当時 は 、さまざまの 型 の マルキシスト が いた もの です。 堀木 の ように 、虚栄 の モダニティ から 、それ を 自称 する 者 も あり 、また 自分 の ように 、ただ 非合法の 匂い が 気 に いって 、そこ に 坐り 込んで いる 者 も あり 、もしも これら の 実体 が 、マルキシズム の 真 の 信奉 者 に 見破ら れたら 、堀木 も 自分 も 、烈 火 の 如く 怒ら れ 、卑劣なる 裏 切 者 と して 、たちどころに 追い払わ れた 事 でしょう。 しかし 、自分 も 、また 、堀木 で さえ も 、なかなか 除名 の 処分 に 遭わ ず 、殊に も 自分 は 、その 非合法の 世界 に 於 いて は 、合法 の 紳士 たち の 世界 に 於 ける より も 、かえって のびのび と 、所 謂 「健康 」に 振舞う 事 が 出来ました ので 、見込み の ある 「同志 」と して 、噴き出し たく なる ほど 過度に 秘密 めかした 、さまざまの 用事 を たのま れる ほど に なった のです。 また 、事実 、自分 は 、そんな 用事 を いち ども 断った こと は 無く 、平気で なんでも 引受け 、へんに ぎくしゃく して 、犬 (同志 は 、ポリス を そう 呼んで いました )に あやしま れ 不審 訊問 じんもん など を 受けて しくじる ような 事 も 無かった し 、笑い ながら 、また 、ひと を 笑わ せ ながら 、その あぶない (その 運動 の 連中 は 、一大事 の 如く 緊張 し 、探偵 小説 の 下手な 真似 みたいな 事 まで して 、極度の 警戒 を 用い 、そうして 自分 に たのむ 仕事 は 、まことに 、あっけにとられる くらい 、つまらない もの でした が 、それ でも 、彼等 は 、その 用事 を 、さかんに 、あぶな がって 力んで いる のでした )と 、彼等 の 称する 仕事 を 、とにかく 正確に やってのけて いました。 自分 の その 当時 の 気持 と して は 、党員 に なって 捕えられ 、た とい 終身 、刑務所 で 暮す ように なった と して も 、平気だった のです。 世の中 の 人間 の 「実 生活 」と いう もの を 恐怖 し ながら 、毎夜 の 不眠 の 地獄 で 呻 うめいて いる より は 、いっそ 牢屋 ろうや の ほう が 、楽 かも 知れ ない と さえ 考えて いました。

父 は 、桜木 町 の 別荘 で は 、来客 やら 外出 やら 、同じ 家 に いて も 、三 日 も 四 日 も 自分 と 顔 を 合せる 事 が 無い ほど でした が 、しかし 、どうにも 、父 が けむった く 、おそろしく 、この 家 を 出て 、どこ か 下宿 でも 、と 考え ながら も それ を 言い 出せ ず に いた 矢先 に 、父 が その 家 を 売払う つもり らしい と いう 事 を 別荘 番 の 老 爺 ろうや から 聞きました。

父 の 議員 の 任期 も そろそろ 満期 に 近づき 、いろいろ 理由 の あった 事 に 違い ありません が 、もう これ きり 選挙 に 出る 意志 も 無い 様子 で 、それ に 、故郷 に 一 棟 、隠居 所 など 建てたり して 、東京 に 未練 も 無い らしく 、たかが 、高等 学校 の 一 生徒 に 過ぎ ない 自分 の ため に 、邸宅 と 召使い を 提供 して 置く の も 、むだな 事 だ と でも 考えた の か 、(父 の 心 も また 、世間 の 人 たち の 気持ち と 同様に 、自分 に は よく わかりません )とにかく 、その 家 は 、間も無く 人手 に わたり 、自分 は 、本郷 森川 町 の 仙遊 館 と いう 古い 下宿 の 、薄暗い 部屋 に 引越 して 、そうして 、たちまち 金 に 困りました。

それ まで 、父 から 月々 、きまった 額 の 小遣い を 手渡さ れ 、それ は もう 、二 、三 日 で 無くなって も 、しかし 、煙草 も 、酒 も 、チイズ も 、くだもの も 、いつでも 家 に あった し 、本 や 文房具 や その他 、服装 に 関する もの など 一切 、いつでも 、近所 の 店 から 所 謂 「ツケ 」で 求められた し 、堀木 に お そば か 天丼 など を ごちそう して も 、父 の ひいき の 町 内 の 店 だったら 、自分 は 黙って その 店 を 出て も かまわ なかった のでした。

それ が 急に 、下宿 の ひと り 住い に なり 、何もかも 、月々 の 定額 の 送金 で 間に合わ せ なければ なら なく なって 、自分 は 、まごつきました。 送金 は 、やはり 、二 、三 日 で 消えて しまい 、自分 は 慄然 りつぜんと し 、心細 さ の ため に 狂う ように なり 、父 、兄 、姉 など へ 交互に お 金 を 頼む 電報 と 、イサイフミ の 手紙 (その 手紙 に 於 いて 訴えて いる 事情 は 、ことごとく 、お 道化 の 虚構 でした。 人 に もの を 頼む のに 、まず 、その 人 を 笑わ せる の が 上 策 と 考えて いた のです )を 連発 する 一方 、また 、堀木 に 教えられ 、せっせと 質屋 が よい を はじめ 、それ でも 、いつも お 金 に 不自由 を して いました。

所詮 、自分 に は 、何の 縁故 も 無い 下宿 に 、ひと り で 「生活 」して 行く 能力 が 無かった のです。 自分 は 、下宿 の その 部屋 に 、ひと り で じっと して いる の が 、おそろしく 、いまにも 誰 か に 襲わ れ 、一撃 せられる ような 気 が して 来て 、街 に 飛び出して は 、れいの 運動 の 手伝い を したり 、或いは 堀木 と 一緒に 安い 酒 を 飲み 廻ったり して 、ほとんど 学業 も 、また 画 の 勉強 も 放棄 し 、高等 学校 へ 入学 して 、二 年 目 の 十一 月 、自分 より 年上 の 有 夫 の 婦人 と 情 死 事件 など を 起し 、自分 の 身の上 は 、一変 しました。

学校 は 欠席 する し 、学科 の 勉強 も 、すこしも し なかった のに 、それ でも 、妙に 試験 の 答案 に 要領 の いい ところ が ある ようで 、どうやら それ まで は 、故郷 の 肉親 を あざむき 通して 来た のです が 、しかし 、もう そろそろ 、出席 日数 の 不足 など 、学校 の ほう から 内密に 故郷 の 父 へ 報告 が 行って いる らしく 、父 の 代理 と して 長兄 が 、いかめしい 文章 の 長い 手紙 を 、自分 に 寄こす ように なって いた のでした。 けれども 、それ より も 、自分 の 直接の 苦痛 は 、金 の 無い 事 と 、それ から 、れいの 運動 の 用事 が 、とても 遊び半分の 気持 で は 出来 ない くらい 、はげしく 、いそがしく なって 来た 事 でした。 中央 地区 と 言った か 、何 地区 と 言った か 、とにかく 本郷 、小石川 、下谷 、神田 、あの 辺 の 学校 全部 の 、マルクス 学生 の 行動 隊 々 長 と いう もの に 、自分 は なって いた のでした。 武装 蜂起 ほうき 、と 聞き 、小さい ナイフ を 買い (いま 思えば 、それ は 鉛筆 を けずる に も 足りない 、きゃしゃな ナイフ でした )それ を 、レンコオト の ポケット に いれ 、あちこち 飛び 廻って 、所 謂 いわゆる 「聯絡 れんらく 」を つける のでした。 お 酒 を 飲んで 、ぐっすり 眠りたい 、しかし 、お 金 が ありません。 しかも 、P (党 の 事 を 、そういう 隠語 で 呼んで いた と 記憶 して います が 、或いは 、違って いる かも 知れません )の ほう から は 、次々 と 息 を つく ひま も 無い くらい 、用事 の 依頼 が まいります。 自分 の 病弱の からだ で は 、とても 勤まり そう も 無くなりました。 もともと 、非合法の 興味 だけ から 、その グルウプ の 手伝い を して いた のです し 、こんなに 、それ こそ 冗談 から 駒 が 出た ように 、いやに いそがしく なって 来る と 、自分 は 、ひそかに P の ひと たち に 、それ は お 門 かど ちがい でしょう 、あなた たち の 直系 の もの たち に やら せたら どう です か 、と いう ような いまいましい 感 を 抱く の を 禁ずる 事 が 出来 ず 、逃げました。 逃げて 、さすが に 、いい 気持 は せ ず 、死ぬ 事 に しました。

その頃 、自分 に 特別の 好意 を 寄せて いる 女 が 、三 人 いました。 ひとり は 、自分 の 下宿 して いる 仙遊 館 の 娘 でした。 この 娘 は 、自分 が れいの 運動 の 手伝い で へとへとに なって 帰り 、ごはん も 食べ ず に 寝て しまって から 、必ず 用 箋 ようせ ん と 万年筆 を 持って 自分 の 部屋 に やって 来て、

「ごめんなさい。 下 で は 、妹 や 弟 が うるさくて 、ゆっくり 手紙 も 書け ない のです」

と 言って 、何やら 自分 の 机 に 向って 一 時間 以上 も 書いて いる のです。

自分 も また 、知らん振り を して 寝て おれば いい のに 、いかにも その 娘 が 何 か 自分 に 言って もらい た げ の 様子 な ので 、れい の 受け身の 奉仕 の 精神 を 発揮 して 、実に 一言 も 口 を きき たく ない 気持 な のだ けれども 、くたくたに 疲れ切って いる から だ に 、ウム と 気合い を かけて 腹這 はらばい に なり 、煙草 を 吸い、

「女 から 来た ラヴ ・レター で 、風呂 を わかして は いった 男 が ある そうです よ」

「あら 、いやだ。 あなた でしょう?

「ミルク を わかして 飲んだ 事 は ある んです」

「光栄だ わ 、飲んで よ」

早く この ひと 、帰ら ねえ か なあ 、手紙 だ なんて 、見えすいて いる のに。 へ へ の の も へ じ でも 書いて いる の に 違いない んです。

「見せて よ」

と 死んで も 見 たく ない 思い で そう 言えば 、あら 、いや よ 、あら 、いや よ 、と 言って 、その うれし がる 事 、ひどく みっともなく 、興 が 覚める ばかりな のです。 そこ で 自分 は 、用事 でも 言いつけて やれ 、と 思う んです。

「すまない けど ね 、電車 通り の 薬屋 に 行って 、カルモチン を 買って 来て くれ ない? あんまり 疲れ すぎて 、顔 が ほてって 、かえって 眠れ ない んだ。 すまない ね。 お 金 は、……」

「いい わ よ 、お 金 なんか」

よろこんで 立ちます。 用 を 言いつける と いう の は 、決して 女 を しょげ させる 事 で は なく 、かえって 女 は 、男 に 用事 を たのま れる と 喜ぶ もの だ と いう 事 も 、自分 は ちゃんと 知っている のでした。

もう ひと り は 、女子 高等 師範 の 文科 生 の 所 謂 「同志 」でした。 この ひと と は 、れいの 運動 の 用事 で 、いやで も 毎日 、顔 を 合せ なければ なら なかった のです。 打ち合せ が すんで から も 、その 女 は 、いつまでも 自分 に ついて 歩いて 、そうして 、やたらに 自分 に 、もの を 買って くれる のでした。


第 二 の 手記 (4) だい|ふた||しゅき Second hand notes (4) Cuentas de segunda mano (4) 두 번째 수기 (4) 第二注 (4) 第二注 (4)

好きだった から な のです。 すきだった||| 自分 に は 、その 人 たち が 、気 に いって いた から な のです。 じぶん||||じん|||き|||||| It was because I liked them. しかし 、それ は 必ずしも 、マルクス に 依って 結ばれた 親愛 感 で は 無かった のです。 |||かならずしも|||よって|むすばれた|しんあい|かん|||なかった| However, it was not necessarily a feeling of affection that was tied to Marx.

非合法。 ひごうほう 自分 に は 、それ が 幽 か に 楽しかった のです。 じぶん|||||ゆう|||たのしかった| For me, it was faintly enjoyable. むしろ 、居心地 が よかった のです。 |いごこち||| In fact, I felt right at home. 世の中 の 合法 と いう もの の ほう が 、かえって おそろしく 、(それ に は 、底 知れ ず 強い もの が 予感 せられます )その からくり が 不可解で 、とても その 窓 の 無い 、底冷え の する 部屋 に は 坐って おら れ ず 、外 は 非合法の 海 であって も 、それ に 飛び込んで 泳いで 、やがて 死に 到 る ほう が 、自分 に は 、いっそ 気楽 の ようでした。 よのなか||ごうほう||||||||||||そこ|しれ||つよい|||よかん|せら れ ます||||ふかかいで|||まど||ない|そこびえ|||へや|||すわって||||がい||ひごうほうの|うみ|||||とびこんで|およいで||しに|とう||||じぶん||||きらく|| The things that are legal in the world are rather terrifying (there is something immeasurably strong about them), and their mechanism is so mysterious that I would not be sitting in that windowless, freezing room. Even though it was an illegal sea outside, it seemed more comfortable to jump into it, swim, and eventually die.

日 蔭 者 ひかげ も の 、と いう 言葉 が あります。 ひ|おん|もの||||||ことば||あり ます There is a term for this: a person in the shadows. 人間 の 世に 於 いて 、みじめな 、敗者 、悪徳 者 を 指差して いう 言葉 の ようです が 、自分 は 、自分 を 生れた 時 から の 日 蔭 者 の ような 気 が して いて 、世間 から 、あれ は 日 蔭 者 だ と 指差されて いる 程 の ひと と 逢う と 、自分 は 、必ず 、優しい 心 に なる のです。 にんげん||よに|お|||はいしゃ|あくとく|もの||ゆびさして||ことば||||じぶん||じぶん||うまれた|じ|||ひ|おん|もの|||き||||せけん||||ひ|おん|もの|||ゆびささ れて||ほど||||あう||じぶん||かならず|やさしい|こころ||| In the world of humans, it seems to be a word used to point to miserable, losers, and vices, but I feel like I've been in the shadows since the day I was born, and I've been told by the world that When I meet a person who is pointed out to be a shady person, I am sure to become kind hearted. そうして 、その 自分 の 「優しい 心 」は 、自身 で うっとり する くらい 優しい 心 でした。 ||じぶん||やさしい|こころ||じしん|||||やさしい|こころ| And my own "kind heart" was so kind that I was fascinated by myself.

また 、犯人 意識 、と いう 言葉 も あります。 |はんにん|いしき|||ことば||あり ます There is also the word criminal consciousness. 自分 は 、この 人間 の 世の中 に 於 いて 、一生 その 意識 に 苦しめられ ながら も 、しかし 、それ は 自分 の 糟糠 そうこう の 妻 の 如き 好 伴侶 はんりょ で 、そい つと 二 人きり で 侘 わびしく 遊び たわむれて いる と いう の も 、自分 の 生きて いる 姿勢 の 一 つ だった かも 知れ ない し 、また 、俗に 、脛 すね に 傷 持つ 身 、と いう 言葉 も ある ようです が 、その 傷 は 、自分 の 赤ん坊 の 時 から 、自然に 片方 の 脛 に あらわれて 、長ずる に 及んで 治癒 する どころ か 、いよいよ 深く なる ばかりで 、骨 に まで 達し 、夜 々 の 痛 苦 は 千変万化 の 地獄 と は 言い ながら 、しかし 、(これ は 、たいへん 奇妙な 言い 方 です けど )その 傷 は 、次第に 自分 の 血肉 より も 親しく なり 、その 傷 の 痛み は 、すなわち 傷 の 生きて いる 感情 、または 愛情 の 囁 ささやき の ように さえ 思わ れる 、そんな 男 に とって 、れいの 地下 運動 の グルウプ の 雰囲気 が 、へんに 安心で 、居心地 が よく 、つまり 、その 運動 の 本来 の 目的 より も 、その 運動 の 肌 が 、自分 に 合った 感じ な のでした。 じぶん|||にんげん||よのなか||お||いっしょう||いしき||くるしめ られ||||||じぶん||かすぬか|そう こう||つま||ごとき|よしみ|はんりょ|||||ふた|ひときり||た||あそび|||||||じぶん||いきて||しせい||ひと||||しれ||||ぞくに|すね|||きず|もつ|み|||ことば||||||きず||じぶん||あかんぼう||じ||しぜんに|かたほう||すね|||ちょうずる||およんで|ちゆ|||||ふかく|||こつ|||たっし|よ|||つう|く||せんぺんばんか||じごく|||いい||||||きみょうな|いい|かた||||きず||しだいに|じぶん||けつにく|||したしく|||きず||いたみ|||きず||いきて||かんじょう||あいじょう||ささや|||||おもわ|||おとこ||||ちか|うんどう||||ふんいき|||あんしんで|いごこち|||||うんどう||ほんらい||もくてき||||うんどう||はだ||じぶん||あった|かんじ|| 堀木 の 場合 は 、ただ もう 阿 呆 の ひやかし で 、いち ど 自分 を 紹介 し に その 会合 へ 行った きり で 、マルキシスト は 、生産 面 の 研究 と 同時に 、消費 面 の 視察 も 必要だ など と 下手な 洒落 しゃれ を 言って 、その 会合 に は 寄りつか ず 、とかく 自分 を 、その 消費 面 の 視察 の ほう に ばかり 誘い た がる のでした。 ほりき||ばあい||||おもね|ぼけ||||||じぶん||しょうかい||||かいごう||おこなった|||||せいさん|おもて||けんきゅう||どうじに|しょうひ|おもて||しさつ||ひつようだ|||へたな|しゃれ|||いって||かいごう|||よりつか|||じぶん|||しょうひ|おもて||しさつ|||||さそい||| 思えば 、当時 は 、さまざまの 型 の マルキシスト が いた もの です。 おもえば|とうじ|||かた|||||| 堀木 の ように 、虚栄 の モダニティ から 、それ を 自称 する 者 も あり 、また 自分 の ように 、ただ 非合法の 匂い が 気 に いって 、そこ に 坐り 込んで いる 者 も あり 、もしも これら の 実体 が 、マルキシズム の 真 の 信奉 者 に 見破ら れたら 、堀木 も 自分 も 、烈 火 の 如く 怒ら れ 、卑劣なる 裏 切 者 と して 、たちどころに 追い払わ れた 事 でしょう。 ほりき|||きょえい||||||じしょう||もの||||じぶん||||ひごうほうの|におい||き|||||すわり|こんで||もの||||これ ら||じったい||||まこと||しんぽう|もの||みやぶら||ほりき||じぶん||れつ|ひ||ごとく|いから||ひれつなる|うら|せつ|もの||||おいはらわ||こと| しかし 、自分 も 、また 、堀木 で さえ も 、なかなか 除名 の 処分 に 遭わ ず 、殊に も 自分 は 、その 非合法の 世界 に 於 いて は 、合法 の 紳士 たち の 世界 に 於 ける より も 、かえって のびのび と 、所 謂 「健康 」に 振舞う 事 が 出来ました ので 、見込み の ある 「同志 」と して 、噴き出し たく なる ほど 過度に 秘密 めかした 、さまざまの 用事 を たのま れる ほど に なった のです。 |じぶん|||ほりき|||||じょめい||しょぶん||あわ||ことに||じぶん|||ひごうほうの|せかい||お|||ごうほう||しんし|||せかい||お|||||||しょ|い|けんこう||ふるまう|こと||でき ました||みこみ|||どうし|||ふきだし||||かどに|ひみつ|||ようじ||||||| However, I, and even Horiki, were not easily expelled, and in particular, I was more comfortable in that illegal world than in the world of legal gentlemen. And since I was able to behave in a so-called "healthy" way, as a promising "comrade", I was asked to do various errands that were overly secretive to the point of bursting out. . また 、事実 、自分 は 、そんな 用事 を いち ども 断った こと は 無く 、平気で なんでも 引受け 、へんに ぎくしゃく して 、犬 (同志 は 、ポリス を そう 呼んで いました )に あやしま れ 不審 訊問 じんもん など を 受けて しくじる ような 事 も 無かった し 、笑い ながら 、また 、ひと を 笑わ せ ながら 、その あぶない (その 運動 の 連中 は 、一大事 の 如く 緊張 し 、探偵 小説 の 下手な 真似 みたいな 事 まで して 、極度の 警戒 を 用い 、そうして 自分 に たのむ 仕事 は 、まことに 、あっけにとられる くらい 、つまらない もの でした が 、それ でも 、彼等 は 、その 用事 を 、さかんに 、あぶな がって 力んで いる のでした )と 、彼等 の 称する 仕事 を 、とにかく 正確に やってのけて いました。 |じじつ|じぶん|||ようじ||||たった|||なく|へいきで||ひきうけ||||いぬ|どうし|||||よんで|い ました||||ふしん|じんもん||||うけて|||こと||なかった||わらい|||||わらわ||||||うんどう||れんちゅう||いちだいじ||ごとく|きんちょう||たんてい|しょうせつ||へたな|まね||こと|||きょくどの|けいかい||もちい||じぶん|||しごと|||||||||||かれら|||ようじ|||||りきんで||||かれら||しょうする|しごと|||せいかくに||い ました Also, in fact, I have never turned down such an errand, and I am unconcerned about taking on anything, being awkward, and questioned suspiciously by a dog (that's what my comrades called the police). There was no such thing as a failure, and while laughing and making people laugh, the people in that dangerous movement were nervous as if it was a big deal, and even did things like clumsy imitation of detective novels. They used extreme caution, and the work they asked of them was, indeed, dumbfoundingly trivial; They were doing exactly what they said they were doing. 自分 の その 当時 の 気持 と して は 、党員 に なって 捕えられ 、た とい 終身 、刑務所 で 暮す ように なった と して も 、平気だった のです。 じぶん|||とうじ||きもち||||とういん|||とらえ られ|||しゅうしん|けいむしょ||くらす||||||へいきだった| 世の中 の 人間 の 「実 生活 」と いう もの を 恐怖 し ながら 、毎夜 の 不眠 の 地獄 で 呻 うめいて いる より は 、いっそ 牢屋 ろうや の ほう が 、楽 かも 知れ ない と さえ 考えて いました。 よのなか||にんげん||み|せいかつ|||||きょうふ|||まいよ||ふみん||じごく||うめ||||||ろうや|||||がく||しれ||||かんがえて|い ました

父 は 、桜木 町 の 別荘 で は 、来客 やら 外出 やら 、同じ 家 に いて も 、三 日 も 四 日 も 自分 と 顔 を 合せる 事 が 無い ほど でした が 、しかし 、どうにも 、父 が けむった く 、おそろしく 、この 家 を 出て 、どこ か 下宿 でも 、と 考え ながら も それ を 言い 出せ ず に いた 矢先 に 、父 が その 家 を 売払う つもり らしい と いう 事 を 別荘 番 の 老 爺 ろうや から 聞きました。 ちち||さくらぎ|まち||べっそう|||らいきゃく||がいしゅつ||おなじ|いえ||||みっ|ひ||よっ|ひ||じぶん||かお||あわせる|こと||ない||||||ちち||||||いえ||でて|||げしゅく|||かんがえ|||||いい|だせ||||やさき||ちち|||いえ||うりはらう|||||こと||べっそう|ばん||ろう|じい|||きき ました My father was so busy with guests and outings at the villa in Sakuragicho that he did not see me for three or four days at a time, even though we stayed in the same house. I heard from the old man in charge of the villa that my father was planning to sell the house.

父 の 議員 の 任期 も そろそろ 満期 に 近づき 、いろいろ 理由 の あった 事 に 違い ありません が 、もう これ きり 選挙 に 出る 意志 も 無い 様子 で 、それ に 、故郷 に 一 棟 、隠居 所 など 建てたり して 、東京 に 未練 も 無い らしく 、たかが 、高等 学校 の 一 生徒 に 過ぎ ない 自分 の ため に 、邸宅 と 召使い を 提供 して 置く の も 、むだな 事 だ と でも 考えた の か 、(父 の 心 も また 、世間 の 人 たち の 気持ち と 同様に 、自分 に は よく わかりません )とにかく 、その 家 は 、間も無く 人手 に わたり 、自分 は 、本郷 森川 町 の 仙遊 館 と いう 古い 下宿 の 、薄暗い 部屋 に 引越 して 、そうして 、たちまち 金 に 困りました。 ちち||ぎいん||にんき|||まんき||ちかづき||りゆう|||こと||ちがい|あり ませ ん|||||せんきょ||でる|いし||ない|ようす||||こきょう||ひと|むね|いんきょ|しょ||たてたり||とうきょう||みれん||ない|||こうとう|がっこう||ひと|せいと||すぎ||じぶん||||ていたく||めしつかい||ていきょう||おく||||こと||||かんがえた|||ちち||こころ|||せけん||じん|||きもち||どうように|じぶん||||わかり ませ ん|||いえ||まもなく|ひとで|||じぶん||ほんごう|もりかわ|まち||せんゆう|かん|||ふるい|げしゅく||うすぐらい|へや||ひっこし||||きむ||こまり ました

それ まで 、父 から 月々 、きまった 額 の 小遣い を 手渡さ れ 、それ は もう 、二 、三 日 で 無くなって も 、しかし 、煙草 も 、酒 も 、チイズ も 、くだもの も 、いつでも 家 に あった し 、本 や 文房具 や その他 、服装 に 関する もの など 一切 、いつでも 、近所 の 店 から 所 謂 「ツケ 」で 求められた し 、堀木 に お そば か 天丼 など を ごちそう して も 、父 の ひいき の 町 内 の 店 だったら 、自分 は 黙って その 店 を 出て も かまわ なかった のでした。 ||ちち||つきづき||がく||こづかい||てわたさ|||||ふた|みっ|ひ||なくなって|||たばこ||さけ|||||||いえ||||ほん||ぶんぼうぐ||そのほか|ふくそう||かんする|||いっさい||きんじょ||てん||しょ|い|つけ||もとめ られた||ほりき|||||てんどん||||||ちち||||まち|うち||てん||じぶん||だまって||てん||でて||||

それ が 急に 、下宿 の ひと り 住い に なり 、何もかも 、月々 の 定額 の 送金 で 間に合わ せ なければ なら なく なって 、自分 は 、まごつきました。 ||きゅうに|げしゅく||||すまい|||なにもかも|つきづき||ていがく||そうきん||まにあわ||||||じぶん||まごつき ました 送金 は 、やはり 、二 、三 日 で 消えて しまい 、自分 は 慄然 りつぜんと し 、心細 さ の ため に 狂う ように なり 、父 、兄 、姉 など へ 交互に お 金 を 頼む 電報 と 、イサイフミ の 手紙 (その 手紙 に 於 いて 訴えて いる 事情 は 、ことごとく 、お 道化 の 虚構 でした。 そうきん|||ふた|みっ|ひ||きえて||じぶん||りつぜん|||こころぼそ|||||くるう|||ちち|あに|あね|||こうごに||きむ||たのむ|でんぽう||||てがみ||てがみ||お||うったえて||じじょう||||どうけ||きょこう| 人 に もの を 頼む のに 、まず 、その 人 を 笑わ せる の が 上 策 と 考えて いた のです )を 連発 する 一方 、また 、堀木 に 教えられ 、せっせと 質屋 が よい を はじめ 、それ でも 、いつも お 金 に 不自由 を して いました。 じん||||たのむ||||じん||わらわ||||うえ|さく||かんがえて||||れんぱつ||いっぽう||ほりき||おしえ られ||しちや|||||||||きむ||ふじゆう|||い ました

所詮 、自分 に は 、何の 縁故 も 無い 下宿 に 、ひと り で 「生活 」して 行く 能力 が 無かった のです。 しょせん|じぶん|||なんの|えんこ||ない|げしゅく|||||せいかつ||いく|のうりょく||なかった| 自分 は 、下宿 の その 部屋 に 、ひと り で じっと して いる の が 、おそろしく 、いまにも 誰 か に 襲わ れ 、一撃 せられる ような 気 が して 来て 、街 に 飛び出して は 、れいの 運動 の 手伝い を したり 、或いは 堀木 と 一緒に 安い 酒 を 飲み 廻ったり して 、ほとんど 学業 も 、また 画 の 勉強 も 放棄 し 、高等 学校 へ 入学 して 、二 年 目 の 十一 月 、自分 より 年上 の 有 夫 の 婦人 と 情 死 事件 など を 起し 、自分 の 身の上 は 、一変 しました。 じぶん||げしゅく|||へや||||||||||||だれ|||おそわ||いちげき|せら れる||き|||きて|がい||とびだして|||うんどう||てつだい|||あるいは|ほりき||いっしょに|やすい|さけ||のみ|まわったり|||がくぎょう|||が||べんきょう||ほうき||こうとう|がっこう||にゅうがく||ふた|とし|め||じゅういち|つき|じぶん||としうえ||ゆう|おっと||ふじん||じょう|し|じけん|||おこし|じぶん||みのうえ||いっぺん|し ました Sitting alone in that room in the boarding house was terrifying. I helped out with the sports, or went out drinking cheap sake with Horiki, gave up most of my studies and the study of painting, entered high school, and in November of my second year, I had a love affair with an older married woman, and my life completely changed.

学校 は 欠席 する し 、学科 の 勉強 も 、すこしも し なかった のに 、それ でも 、妙に 試験 の 答案 に 要領 の いい ところ が ある ようで 、どうやら それ まで は 、故郷 の 肉親 を あざむき 通して 来た のです が 、しかし 、もう そろそろ 、出席 日数 の 不足 など 、学校 の ほう から 内密に 故郷 の 父 へ 報告 が 行って いる らしく 、父 の 代理 と して 長兄 が 、いかめしい 文章 の 長い 手紙 を 、自分 に 寄こす ように なって いた のでした。 がっこう||けっせき|||がっか||べんきょう||||||||みょうに|しけん||とうあん||ようりょう|||||||||||こきょう||にくしん|||とおして|きた||||||しゅっせき|にっすう||ふそく||がっこう||||ないみつに|こきょう||ちち||ほうこく||おこなって|||ちち||だいり|||ちょうけい|||ぶんしょう||ながい|てがみ||じぶん||よこす|||| He didn't go to school and didn't study hard at all, but even so, he seemed to be very good at answering exams, and until then, he had deceived his relatives back home. However, it seems that the school is about to send a secret report to his father in his hometown about the lack of attendance and other issues, and on behalf of his father, the eldest brother writes a long, stern letter to himself. I was supposed to drop by. けれども 、それ より も 、自分 の 直接の 苦痛 は 、金 の 無い 事 と 、それ から 、れいの 運動 の 用事 が 、とても 遊び半分の 気持 で は 出来 ない くらい 、はげしく 、いそがしく なって 来た 事 でした。 ||||じぶん||ちょくせつの|くつう||きむ||ない|こと|||||うんどう||ようじ|||あそびはんぶんの|きもち|||でき||||||きた|こと| 中央 地区 と 言った か 、何 地区 と 言った か 、とにかく 本郷 、小石川 、下谷 、神田 、あの 辺 の 学校 全部 の 、マルクス 学生 の 行動 隊 々 長 と いう もの に 、自分 は なって いた のでした。 ちゅうおう|ちく||いった||なん|ちく||いった|||ほんごう|こいしかわ|したや|しんでん||ほとり||がっこう|ぜんぶ|||がくせい||こうどう|たい||ちょう|||||じぶん|||| Whether it was the Chuo district or what district, I had become the commanding officer of the Marx students in Hongo, Koishikawa, Shitaya, Kanda, and all the other schools in that area. 武装 蜂起 ほうき 、と 聞き 、小さい ナイフ を 買い (いま 思えば 、それ は 鉛筆 を けずる に も 足りない 、きゃしゃな ナイフ でした )それ を 、レンコオト の ポケット に いれ 、あちこち 飛び 廻って 、所 謂 いわゆる 「聯絡 れんらく 」を つける のでした。 ぶそう|ほうき|||きき|ちいさい|ないふ||かい||おもえば|||えんぴつ|||||たりない||ないふ||||||ぽけっと||||とび|まわって|しょ|い||れんらく|||| お 酒 を 飲んで 、ぐっすり 眠りたい 、しかし 、お 金 が ありません。 |さけ||のんで||ねむり たい|||きむ||あり ませ ん しかも 、P (党 の 事 を 、そういう 隠語 で 呼んで いた と 記憶 して います が 、或いは 、違って いる かも 知れません )の ほう から は 、次々 と 息 を つく ひま も 無い くらい 、用事 の 依頼 が まいります。 |p|とう||こと|||いんご||よんで|||きおく||い ます||あるいは|ちがって|||しれ ませ ん|||||つぎつぎ||いき|||||ない||ようじ||いらい||まいり ます What's more, P (I remember that he used to call the party something of a slang term, but I may be wrong) was so busy with business that he didn't even have time to catch his breath. I have a request. 自分 の 病弱の からだ で は 、とても 勤まり そう も 無くなりました。 じぶん||びょうじゃくの|||||つとまり|||なくなり ました With my weak body, I could hardly work. もともと 、非合法の 興味 だけ から 、その グルウプ の 手伝い を して いた のです し 、こんなに 、それ こそ 冗談 から 駒 が 出た ように 、いやに いそがしく なって 来る と 、自分 は 、ひそかに P の ひと たち に 、それ は お 門 かど ちがい でしょう 、あなた たち の 直系 の もの たち に やら せたら どう です か 、と いう ような いまいましい 感 を 抱く の を 禁ずる 事 が 出来 ず 、逃げました。 |ひごうほうの|きょうみ||||||てつだい|||||||||じょうだん||こま||でた|||||くる||じぶん|||p||||||||もん|||||||ちょっけい||||||||||||||かん||いだく|||きんずる|こと||でき||にげ ました Originally, I was just helping out at the group out of an illegal interest, and when I started to get so busy that it seemed like a pawn came out of a joke, I secretly became a member of P. I couldn't help myself from harboring a vexing feeling like, "That's wrong, why don't you let your direct descendants do it?", so I ran away. 逃げて 、さすが に 、いい 気持 は せ ず 、死ぬ 事 に しました。 にげて||||きもち||||しぬ|こと||し ました I ran away, and as expected, I didn't feel good and decided to die.

その頃 、自分 に 特別の 好意 を 寄せて いる 女 が 、三 人 いました。 そのころ|じぶん||とくべつの|こうい||よせて||おんな||みっ|じん|い ました At that time, there were three women who had a special crush on him. ひとり は 、自分 の 下宿 して いる 仙遊 館 の 娘 でした。 ||じぶん||げしゅく|||せんゆう|かん||むすめ| この 娘 は 、自分 が れいの 運動 の 手伝い で へとへとに なって 帰り 、ごはん も 食べ ず に 寝て しまって から 、必ず 用 箋 ようせ ん と 万年筆 を 持って 自分 の 部屋 に やって 来て、 |むすめ||じぶん|||うんどう||てつだい||||かえり|||たべ|||ねて|||かならず|よう|せん||||まんねんひつ||もって|じぶん||へや|||きて After she came home exhausted from helping Rei with her exercise and fell asleep without eating, she always came to her room with a writing pad and a fountain pen.

「ごめんなさい。 下 で は 、妹 や 弟 が うるさくて 、ゆっくり 手紙 も 書け ない のです」 した|||いもうと||おとうと||||てがみ||かけ|| Downstairs, my younger sister and brother are so noisy that I can't even write a letter slowly."

と 言って 、何やら 自分 の 机 に 向って 一 時間 以上 も 書いて いる のです。 |いって|なにやら|じぶん||つくえ||むかい って|ひと|じかん|いじょう||かいて|| Saying that, he sat at his desk and wrote for over an hour.

自分 も また 、知らん振り を して 寝て おれば いい のに 、いかにも その 娘 が 何 か 自分 に 言って もらい た げ の 様子 な ので 、れい の 受け身の 奉仕 の 精神 を 発揮 して 、実に 一言 も 口 を きき たく ない 気持 な のだ けれども 、くたくたに 疲れ切って いる から だ に 、ウム と 気合い を かけて 腹這 はらばい に なり 、煙草 を 吸い、 じぶん|||しらんふり|||ねて||||||むすめ||なん||じぶん||いって|||||ようす|||||うけみの|ほうし||せいしん||はっき||じつに|いちげん||くち|||||きもち|||||つかれきって|||||||きあい|||はらばい||||たばこ||すい I, too, should have just pretended not to notice and slept, but it seemed as if the girl was trying to tell me something, so I displayed my passive spirit of service and didn't even say a word. I didn't want to talk to him, but I was exhausted and exhausted.

「女 から 来た ラヴ ・レター で 、風呂 を わかして は いった 男 が ある そうです よ」 おんな||きた||れたー||ふろ|||||おとこ|||そう です| "I heard that there is a man who boiled a bath with a love letter from a woman."

「あら 、いやだ。 あなた でしょう?

「ミルク を わかして 飲んだ 事 は ある んです」 みるく|||のんだ|こと||| "I have boiled milk and drank it."

「光栄だ わ 、飲んで よ」 こうえいだ||のんで|

早く この ひと 、帰ら ねえ か なあ 、手紙 だ なんて 、見えすいて いる のに。 はやく|||かえら||||てがみ|||みえすいて|| I wonder if this person will come home soon, even though I can see the letter. へ へ の の も へ じ でも 書いて いる の に 違いない んです。 ||||||||かいて||||ちがいない| I'm sure it's written in both hehe and hehe.

「見せて よ」 みせて| "show me"

と 死んで も 見 たく ない 思い で そう 言えば 、あら 、いや よ 、あら 、いや よ 、と 言って 、その うれし がる 事 、ひどく みっともなく 、興 が 覚める ばかりな のです。 |しんで||み|||おもい|||いえば||||||||いって||||こと|||きょう||さめる|| I say that with a feeling that I don't want to see it even if I die. そこ で 自分 は 、用事 でも 言いつけて やれ 、と 思う んです。 ||じぶん||ようじ||いいつけて|||おもう| So, I thought, I should ask him to do some business for me.

「すまない けど ね 、電車 通り の 薬屋 に 行って 、カルモチン を 買って 来て くれ ない? |||でんしゃ|とおり||くすりや||おこなって|||かって|きて|| "I'm sorry, but could you go to the pharmacy on Densha-dori and buy me Carmotine? あんまり 疲れ すぎて 、顔 が ほてって 、かえって 眠れ ない んだ。 |つかれ||かお||||ねむれ|| すまない ね。 お 金 は、……」 |きむ|

「いい わ よ 、お 金 なんか」 ||||きむ| No, I don't need the money.

よろこんで 立ちます。 |たち ます 用 を 言いつける と いう の は 、決して 女 を しょげ させる 事 で は なく 、かえって 女 は 、男 に 用事 を たのま れる と 喜ぶ もの だ と いう 事 も 、自分 は ちゃんと 知っている のでした。 よう||いいつける|||||けっして|おんな|||さ せる|こと|||||おんな||おとこ||ようじ|||||よろこぶ|||||こと||じぶん|||しっている| I knew very well that asking a man to do something wasn't meant to discourage a woman, but that a woman would be happy if a man asked her to do something for her.

もう ひと り は 、女子 高等 師範 の 文科 生 の 所 謂 「同志 」でした。 ||||じょし|こうとう|しはん||もんか|せい||しょ|い|どうし| The other was a so-called "comrade" in arms from the Women's Higher Normal School. この ひと と は 、れいの 運動 の 用事 で 、いやで も 毎日 、顔 を 合せ なければ なら なかった のです。 |||||うんどう||ようじ||||まいにち|かお||あわせ|||| I had to see this person every day because of my athletic errands. 打ち合せ が すんで から も 、その 女 は 、いつまでも 自分 に ついて 歩いて 、そうして 、やたらに 自分 に 、もの を 買って くれる のでした。 うちあわせ||||||おんな|||じぶん|||あるいて|||じぶん||||かって|| Even after the meeting was over, the woman continued to follow me around and buy things for me.