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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第五章 イゼルローン攻略 (3)

第 五 章 イゼルローン 攻略 (3)

難 攻 不 落 の イゼルローン 要塞 を ささえて いる と いう 戦士 の 誇り と 、〝 叛乱 軍 〟 にたいする 闘志 が 、 かろうじて 両者 の あいだ に 橋 を 架けて いた 。 実際 、 彼ら は たがいに 軽蔑 し の の しりあい ながら も 、 同盟 軍 の 攻撃 が ある と 、 功 を 競って 譲ら ず 、 その 結果 、 おびただしい 戦果 を あげて きた のである 。

要塞 司令 官 と 駐留 艦隊 司令 官 と を 同一 人 が かね 、 指揮 系統 を 一体 化 しよう と いう 軍政 当局 の 組織 改革 案 は 、 でる たび に つぶさ れた 。 司令 官職 が ひと つ 減る と いう こと は 、 高級 軍人 に とって は 大きな 問題 であった し 、 両者 の 対立 が 致命 的な 結果 を 招いた と いう 事例 も なかった から である 。

標準 暦 五 月 一四 日 。

シュトックハウゼン と ゼークト の 両 司令 官 は 会見 室 に いた 。 本来 、 高級 士官 用 の サロン の 一角 だった のだ が 、 両者 の 執務 室 から 等 距離 に ある と いう ので 、 完全な 防音 処理 を ほどこされて 改造 さ れた のである 。 たがいに 相手 の 部屋 へ おもむく の を 嫌った の と 、 おなじ 要塞 内 に いて TV 通信 だけ に たよる わけに も いか なかった ため の 処置 であった 。

ここ 二 日 、 要塞 周辺 の 通信 が 攪乱 されて いる 。 叛乱 軍 が 接近 して いる の は 疑問 の 余地 が ない 。 だが いっこうに 攻撃 らしき もの は ない のだ 。 両者 の 会見 は その 事態 に ついて 対処 法 を 相談 する ため であった が 、 話 は かならずしも 建設 的な 方向 に は すすま なかった 。

「 敵 が いる から 出撃 する と 卿 は 言う が 、 その 場所 が わかる まい 。 それでは 戦い よう も なかろう 」

シュトックハウゼン が 言う と 、 ゼークト が 反論 する 。

「 だ から こそ でて みる のだ 。 敵 が ひそんで いる 場所 を 探す ため に も 。 しかし 、 もし 今度 叛乱 軍 が 攻撃 して くる と すれば 、 よほど の 大軍 を 動員 して の こと だろう な 」

ゼークト の 言 に 、 満々たる 自信 を こめて シュトックハウゼン が うなずく 。

「 そして また 撃退 さ れる の が おち だ 。 叛乱 軍 は 六 回 攻めて きた 。 そして 六 回 、 撃退 さ れた 。 今度 来て も 六 回 が 七 回 に なる だけ の こと だ 」

「 この 要塞 は じつに 偉大だ な 」

べつに お前 が 有能だ から で は ない 、 と 暗に 艦隊 司令 官 は 言って いる のだった 。

「 とにかく 敵 が ちかく に いる こと は 事実 な のだ 。 艦隊 を うごかして さぐって みたい 」 「 だが どこ に いる の か わから ん で は 、 探し よう が ある まい 。 もう すこし 待って みて は 」

話 が 堂々めぐり に なり かけた とき 、 通信 室 から 連絡 が あった 。 回線 の ひと つ に 、 奇妙な 通信 が はいって きた と いう のである 。

妨害 が 激しく 、 通信 は とぎれ とぎれ であった が 、 ようやく つぎ の ような 事情 である こと が 判明 した 、 と いう のだった 。

―― 帝国 首都 から 重要な 連絡 事項 を たずさえて 、 ブレーメン 型 軽 巡洋艦 一 隻 が イゼルローン に 派遣 さ れた が 、 回廊 内 に おいて 敵 の 攻撃 を うけ 、 現在 逃走 中 。 イゼルローン より の 救援 を のぞむ ――

二 人 の 司令 官 は 顔 を 見あわせた 。

「 回廊 内 の どこ か 判明 せん が 、 これ で は 出撃 せ ざる を えん 」

ゼークト は 太い 咽 喉 の 奥 から うなり 声 を だした 。

「 しかし 大丈夫 か 」

「 どういう 意味 だ ? おれ の 部下 は 安全 だけ を 願う 宇宙 もぐら ども と わけ が ちがう ぞ 」

「 どういう 意味 だ 、 それ は ? 」 両者 は 不快 げ な 表情 を ならべて 共同 の 作戦 会議 室 に 姿 を あらわした 。 ゼークト が 艦隊 出撃 の 命令 を 自分 の 幕僚 に だし 、 理由 を 説明 する あいだ 、 シュトックハウゼン は あら ぬ かた を ながめて いた 。

ゼークト が 話し 終わった とき 、 彼 の 幕僚 の ひと り が 席 から たちあがった 。

「 お 待ち ください 、 閣下 」

「 オーベルシュタイン 大佐 か ……」

ゼークト 大将 は 言った が 、 その 声 に は 一片 の 好意 も なかった 。 彼 は 新任 の 幕僚 を 嫌って いた のだ 。 半 白 の 頭髪 、 血の気 に 乏しい 顔 、 ときとして 異様な 光 を 放つ 義 眼 、 その すべて が 気 に いら ない 。 陰気 を 絵 に 描いた ような 男 だ と 思う 。

「 なに か 意見 で も ある の か ? 」 上官 の 投げやりな 声 を 、 すくなくとも 表面 的に は オーベルシュタイン は 意 に 介し なかった 。 「 はい 」

「 よかろう 、 言って みろ 」

いやいや ながら ゼークト は うながした 。

「 では 申しあげます 。 これ は 罠 だ と 思わ れます 」 「 罠 ? 」 「 そうです 。 艦隊 を イゼルローン から 引き離す ため の 。 でて は なりません 。 うごか ず 情況 を みる べきです 」

ゼークト は 不快 げ に 鼻 を 鳴らした 。

「 でれば 敵 が 待って いる 、 戦えば 敗れる と 言いたい の か 、 貴 官 は 」 「 そんな つもり は ……」

「 では 、 どんな つもり だ 。 吾々 は 軍人 であり 、 戦う の が 本分 だ 。 一身 の 安全 を もとめる より 、 すすんで 敵 を 撃つ こと を 考える べきだろう 。 まして 、 窮地 に ある 味方 を 救わ んで どう する 」

オーベルシュタイン にたいする 反感 も あり 、 皮肉っぽい 表情 で こと の 推移 を 見まもる シュトックハウゼンヘ の 手前 も ある 。 それ に もともと ゼークト は 敵 を みれば 戦わ ず に は い られ ない と いう 猛 将 タイプ で 、 要塞 に 籠もって 敵 を 待つ など 、 性 に あわ なかった 。 それでは 軍艦 乗り に なった 甲 が ない 、 と 思って いる 。

「 どうか な 、 ゼークト 提督 、 卿 の 幕僚 の 言 に も 一理 ある 。 敵 に せよ 味方 に せよ 、 確実な 位置 が 知れ ん し 、 危険 が 大きい 。 もう すこし 待って みたら どう だ 」

そう 横 から 言った シュトックハウゼン の 意見 が 、 事態 を 決定 した 。

「 いや 、 一 時間 後 に 全 艦隊 を あげて 出撃 する 」

ゼークト は 断言 した 。

やがて 大小 一万五〇〇〇 隻 の 艦艇 から なる イゼルローン 駐留 艦隊 が 出港 を 開始 した 。

要塞 指令 室 の 出入 港 管制 モニター の 画面 に よって 、 シュトックハウゼン は それ を ながめて いる 。 巨大な 塔 を 横 に した ような 戦艦 や 、 流線型 の 駆逐 艦 など が 整然と 宇宙 空間 へ むけて 進 発する 情景 は 、 たしかに 壮観であった 。

「 ふん 、 痛い 目 に 遇って もどって くる が いい 」 口 の なか で シュトックハウゼン は ののしった 。 死んで しまえ 、 と か 、 負けろ 、 と か は 冗談 であって も 言え ない 。 彼 なり の 、 それ が 節度 だった 。

六 時間 ほど たって 、 またしても 通信 が とびこんで きた 。 例の ブレーメン 型 軽 巡 から で 、 ようやく 要塞 の ちかく まで いたり 着いた が 、 なお 叛乱 軍 の 追撃 を うけて いる 、 援護 の 砲撃 を 依頼 する 、 と いう 内容 が 雑音 の なか から 聴取 さ れた 。

砲手 に 援護 の 準備 を さ せ ながら 、 シュトックハウゼン は 苦りきった 。 ゼークト の 低 能 は 、 どこ を うろついて いる の か 。 大言壮語 も いい が 、 せめて 孤独な 味方 を 救う ぐらい の こと が でき ない の か 。

「 スクリーン に 艦 影 ! 」 部下 が 告げた 。 司令 官 は 拡大 投影 を 命じた 。

ブレーメン 型 軽 巡 が 、 酔っぱらい の ような たよりな さ で 要塞 へ 接近 して くる 。 その 背後 に 多数 の 光 点 が 見える の は 、 当然 、 敵 であろう 。

「 砲戦 用意 ! 」 シュトックハウゼン は 命じた 。 だが 、 要塞 主砲 の 射程 寸前 で 、 同盟 軍 の 艦艇 は いっせいに 停止 した 。 臆病 そうに 、 見え ざる 境界 線 の うえ を 漂って いた が 、 ブレーメン 型 軽 巡 が 要塞 管制 室 から の 誘導 波 に のって 港 内 に は いって ゆく の を 認める と 、 あきらめた ように 回 頭 を はじめる 。

「 利口な 奴 ら だ ぜ 、 かなわない こと を 知って や がる 」

帝国 軍 の 兵士 たち は 哄笑 した 。 要塞 の 力 と 自己 の 力 と の 一 体感 が 、 彼ら の 心理 的 余裕 を ささえて いる 。

入港 し 、 磁場 に よって 繫留 さ れた ブレーメン 型 軽 巡 は 、 見る も 無惨な 姿 だった 。

外 から 見た だけ でも 、 十 数 に およぶ 破損 箇 処 が 認められる 。 外 殻 の 裂け目 から 白い 緩衝 材 が 動物 の 腸 の ように とびだし 、 細かい 亀裂 の 数 は 、 兵士 一〇〇 人 の 手足 の 指 を 使って も 計算 でき そうに なかった 。

整備 兵 たち を 満載 した 水素 動力 車 が 走り よる 。 彼ら は 要塞 の 兵 で は なく 、 駐留 艦隊 司令 官 の 統率 下 に ある から 、 この 惨状 を 見て 心から 同情 した 。

軽 巡 の ハッチ が 開く と 、 頭部 に 白い 包帯 を まいた 少 壮 の 士官 が あらわれた 。 美男 子 だ が 、 青ざめた 顔 が 乾いて こびりついた 赤 黒い もの に 汚されて いる 。 「 艦長 の フォン ・ ラーケン 少佐 だ 。 要塞 司令 官 に お目にかかりたい 」 明瞭な 帝国 公用 語 だった 。

「 わかった 。 だが 、 要塞 外 の 状況 は いったい どう なって いる のだ 」

整備 士官 の ひと り が 問う と 、 ラーケン 少佐 は 苦しげに あえいだ 。

「 吾々 も よく は わから ん 。 オーディン から 来た のだ から な 。 だが 、 どうやら 、 きみ たち の 艦隊 は 壊滅 した ようだ 」

唾 を のみこむ 人々 を にらみつける ように して 、 ラーケン 少佐 は 叫んだ 。

「 どうやら 叛乱 軍 は 回廊 を 通過 する 、 とんでもない 方法 を 考えついた ような のだ 。 こと は イゼルローン だけ で なく 、 帝国 の 存亡 に かかわる 。 早く 司令 官 の ところ へ つれて 行って くれ 」

要求 は ただちに 聞きいれ られた 。

指令 室 で 待って いた シュトックハウゼン 大将 は 、 警備 兵 に かこまれて 入室 して きた 五 人 の 軽 巡 士官 の 姿 を 見て 腰 を 浮かした 。 「 シュトックハウゼン だ 。 事情 を 説明 しろ 、 どういう こと だ 」

大股 に 歩みより ながら 、 要塞 司令 官 は 必要 以上 に 高い 声 を だした 。 あらかじめ 連絡 が あった ように 、 叛乱 軍 が 回廊 を 通過 する 方法 を 考案 した と すれば 、 イゼルローン 要塞 の 存在 意義 そのもの が 問わ れる こと と なろう し 、 現実 に 、 叛乱 軍 の 行動 に 対処 する 方策 も 必要に なる 。

イゼルローン そのもの は うごけ ない のだ から 、 このような とき に こそ 駐留 艦隊 が 必要な のだ 。 それ を あの ゼークト の 猪突 家 が ! シュトックハウゼン は 平静で は い られ なかった 。

「 それ は こういう こと です ……」

ラーケン 少佐 なる 人物 の 声 は 、 対照 的に 低く 弱々しかった ので 、 気 が せいた シュトックハウゼン は 上半身 ごと 彼 に 顔 を ちかづけた 。

「…… こういう こと です 。 シュトックハウゼン 閣下 、 貴 官 は 吾々 の 捕虜 だ ! 」 一瞬 の 凍結 が とけ 、 するどい 罵声 と ともに 警備 兵 たち が 拳銃 を 抜き は なった とき 、 シュトックハウゼン の 首 に は ラーケン 少佐 の 腕 が まきつき 、 側 頭部 に は 金属 探知 システム に 反応 し ない セラミック 製 の 拳銃 が 突きつけ られて いた 。 「 き さま ……」

指令 室 警備 主任 の レムラー 中佐 が 、 赭顔 を いちだん と 赤く して うめいた 。

「 叛徒 ども の 仲間 だ な 。 よくも だいそれた ……」

「 お 見 知り おき 願おう 。 薔薇 の 騎士 連隊 の シェーンコップ 大佐 だ 。 両手 が ふさがって いる ので 、 メイクアップ を おとして の 挨拶 は いたし かねる 」

大佐 は 不敵に 笑った 。

「 こう も うまく いく と は 、 正直な ところ 思わ なかった 。 ID カード まで ちゃんと 偽造 して 来た のに 、 調べ も せ ん のだ から な …… どんな 厳重な システム も 、 運用 する 人間 しだい だ と いう 、 いい 教訓 だ 」

「 誰 に とって の 教訓 に なる か な 」

不吉な 声 と ともに 、 レムラー 中佐 の ブラスター は 、 シュトックハウゼン と シェーンコップ を 狙った 。

「 人質 を とった つもりだろう が 、 き さま ら 叛徒 と 帝国 軍人 を 同一 視 する な よ 。 司令 官 閣下 は 死 より も 不名誉 を おそれる 方 だ 。 き さま の 生命 を まもる 盾 など ない のだ ぞ ! 」 「 司令 官 閣下 は 、 過大 評価 さ れる の が 迷惑 そうだ ぜ 」 嘲笑 した シェーンコップ は 、 彼 の 周囲 を 固めた 四 人 の 部下 の ひと り に 目配せ した 。 その 部下 は 、 帝国 軍 の 軍服 の 下 から 、 掌 に のる 大き さ の 円盤 状 の 物体 を 取りだした 。 これ も セラミック 製 である 。

「 わかる な ? ゼッフル 粒子 の 発生 装置 だ 」

シェーンコップ が 言う と 、 広い 室 内 に 電流 が はしった ようだった 。

ゼッフル 粒子 は 、 発明 者 である カール ・ ゼッフル の 名 を とって 命名 さ れた 化学 物質 の 一種 である 。


第 五 章 イゼルローン 攻略 (3) だい|いつ|しょう||こうりゃく

難 攻 不 落 の イゼルローン 要塞 を ささえて いる と いう 戦士 の 誇り と 、〝 叛乱 軍 〟 にたいする 闘志 が 、 かろうじて 両者 の あいだ に 橋 を 架けて いた 。 なん|おさむ|ふ|おと|||ようさい||||||せんし||ほこり||はんらん|ぐん||とうし|||りょうしゃ||||きょう||かけて| 実際 、 彼ら は たがいに 軽蔑 し の の しりあい ながら も 、 同盟 軍 の 攻撃 が ある と 、 功 を 競って 譲ら ず 、 その 結果 、 おびただしい 戦果 を あげて きた のである 。 じっさい|かれら|||けいべつ|||||||どうめい|ぐん||こうげき||||いさお||きそって|ゆずら|||けっか||せんか||||

要塞 司令 官 と 駐留 艦隊 司令 官 と を 同一 人 が かね 、 指揮 系統 を 一体 化 しよう と いう 軍政 当局 の 組織 改革 案 は 、 でる たび に つぶさ れた 。 ようさい|しれい|かん||ちゅうりゅう|かんたい|しれい|かん|||どういつ|じん|||しき|けいとう||いったい|か||||ぐんせい|とうきょく||そしき|かいかく|あん|||||| 司令 官職 が ひと つ 減る と いう こと は 、 高級 軍人 に とって は 大きな 問題 であった し 、 両者 の 対立 が 致命 的な 結果 を 招いた と いう 事例 も なかった から である 。 しれい|かんしょく||||へる|||||こうきゅう|ぐんじん||||おおきな|もんだい|||りょうしゃ||たいりつ||ちめい|てきな|けっか||まねいた|||じれい||||

標準 暦 五 月 一四 日 。 ひょうじゅん|こよみ|いつ|つき|いちし|ひ

シュトックハウゼン と ゼークト の 両 司令 官 は 会見 室 に いた 。 ||||りょう|しれい|かん||かいけん|しつ|| 本来 、 高級 士官 用 の サロン の 一角 だった のだ が 、 両者 の 執務 室 から 等 距離 に ある と いう ので 、 完全な 防音 処理 を ほどこされて 改造 さ れた のである 。 ほんらい|こうきゅう|しかん|よう||さろん||いっかく||||りょうしゃ||しつむ|しつ||とう|きょり||||||かんぜんな|ぼうおん|しょり|||かいぞう||| たがいに 相手 の 部屋 へ おもむく の を 嫌った の と 、 おなじ 要塞 内 に いて TV 通信 だけ に たよる わけに も いか なかった ため の 処置 であった 。 |あいて||へや|||||きらった||||ようさい|うち||||つうしん||||||||||しょち|

ここ 二 日 、 要塞 周辺 の 通信 が 攪乱 されて いる 。 |ふた|ひ|ようさい|しゅうへん||つうしん||かくらん|| 叛乱 軍 が 接近 して いる の は 疑問 の 余地 が ない 。 はんらん|ぐん||せっきん|||||ぎもん||よち|| だが いっこうに 攻撃 らしき もの は ない のだ 。 ||こうげき||||| 両者 の 会見 は その 事態 に ついて 対処 法 を 相談 する ため であった が 、 話 は かならずしも 建設 的な 方向 に は すすま なかった 。 りょうしゃ||かいけん|||じたい|||たいしょ|ほう||そうだん|||||はなし|||けんせつ|てきな|ほうこう||||

「 敵 が いる から 出撃 する と 卿 は 言う が 、 その 場所 が わかる まい 。 てき||||しゅつげき|||きょう||いう|||ばしょ||| それでは 戦い よう も なかろう 」 |たたかい|||

シュトックハウゼン が 言う と 、 ゼークト が 反論 する 。 ||いう||||はんろん|

「 だ から こそ でて みる のだ 。 敵 が ひそんで いる 場所 を 探す ため に も 。 てき||||ばしょ||さがす||| しかし 、 もし 今度 叛乱 軍 が 攻撃 して くる と すれば 、 よほど の 大軍 を 動員 して の こと だろう な 」 ||こんど|はんらん|ぐん||こうげき|||||||たいぐん||どういん|||||

ゼークト の 言 に 、 満々たる 自信 を こめて シュトックハウゼン が うなずく 。 ||げん||まんまんたる|じしん|||||

「 そして また 撃退 さ れる の が おち だ 。 ||げきたい|||||| 叛乱 軍 は 六 回 攻めて きた 。 はんらん|ぐん||むっ|かい|せめて| そして 六 回 、 撃退 さ れた 。 |むっ|かい|げきたい|| 今度 来て も 六 回 が 七 回 に なる だけ の こと だ 」 こんど|きて||むっ|かい||なな|かい||||||

「 この 要塞 は じつに 偉大だ な 」 |ようさい|||いだいだ|

べつに お前 が 有能だ から で は ない 、 と 暗に 艦隊 司令 官 は 言って いる のだった 。 |おまえ||ゆうのうだ||||||あんに|かんたい|しれい|かん||いって||

「 とにかく 敵 が ちかく に いる こと は 事実 な のだ 。 |てき|||||||じじつ|| 艦隊 を うごかして さぐって みたい 」 かんたい|||| 「 だが どこ に いる の か わから ん で は 、 探し よう が ある まい 。 ||||||||||さがし|||| もう すこし 待って みて は 」 ||まって||

話 が 堂々めぐり に なり かけた とき 、 通信 室 から 連絡 が あった 。 はなし||どうどうめぐり|||||つうしん|しつ||れんらく|| 回線 の ひと つ に 、 奇妙な 通信 が はいって きた と いう のである 。 かいせん|||||きみょうな|つうしん||||||

妨害 が 激しく 、 通信 は とぎれ とぎれ であった が 、 ようやく つぎ の ような 事情 である こと が 判明 した 、 と いう のだった 。 ぼうがい||はげしく|つうしん||||||||||じじょう||||はんめい||||

―― 帝国 首都 から 重要な 連絡 事項 を たずさえて 、 ブレーメン 型 軽 巡洋艦 一 隻 が イゼルローン に 派遣 さ れた が 、 回廊 内 に おいて 敵 の 攻撃 を うけ 、 現在 逃走 中 。 ていこく|しゅと||じゅうような|れんらく|じこう||||かた|けい|じゅんようかん|ひと|せき||||はけん||||かいろう|うち|||てき||こうげき|||げんざい|とうそう|なか イゼルローン より の 救援 を のぞむ ―― |||きゅうえん||

二 人 の 司令 官 は 顔 を 見あわせた 。 ふた|じん||しれい|かん||かお||みあわせた

「 回廊 内 の どこ か 判明 せん が 、 これ で は 出撃 せ ざる を えん 」 かいろう|うち||||はんめい|せ ん|||||しゅつげき||||

ゼークト は 太い 咽 喉 の 奥 から うなり 声 を だした 。 ||ふとい|むせ|のど||おく|||こえ||

「 しかし 大丈夫 か 」 |だいじょうぶ|

「 どういう 意味 だ ? |いみ| おれ の 部下 は 安全 だけ を 願う 宇宙 もぐら ども と わけ が ちがう ぞ 」 ||ぶか||あんぜん|||ねがう|うちゅう|||||||

「 どういう 意味 だ 、 それ は ? |いみ||| 」 両者 は 不快 げ な 表情 を ならべて 共同 の 作戦 会議 室 に 姿 を あらわした 。 りょうしゃ||ふかい|||ひょうじょう|||きょうどう||さくせん|かいぎ|しつ||すがた|| ゼークト が 艦隊 出撃 の 命令 を 自分 の 幕僚 に だし 、 理由 を 説明 する あいだ 、 シュトックハウゼン は あら ぬ かた を ながめて いた 。 ||かんたい|しゅつげき||めいれい||じぶん||ばくりょう|||りゆう||せつめい||||||||||

ゼークト が 話し 終わった とき 、 彼 の 幕僚 の ひと り が 席 から たちあがった 。 ||はなし|おわった||かれ||ばくりょう|||||せき||

「 お 待ち ください 、 閣下 」 |まち||かっか

「 オーベルシュタイン 大佐 か ……」 |たいさ|

ゼークト 大将 は 言った が 、 その 声 に は 一片 の 好意 も なかった 。 |たいしょう||いった|||こえ|||いっぺん||こうい|| 彼 は 新任 の 幕僚 を 嫌って いた のだ 。 かれ||しんにん||ばくりょう||きらって|| 半 白 の 頭髪 、 血の気 に 乏しい 顔 、 ときとして 異様な 光 を 放つ 義 眼 、 その すべて が 気 に いら ない 。 はん|しろ||とうはつ|ちのけ||とぼしい|かお||いような|ひかり||はなつ|ただし|がん||||き||| 陰気 を 絵 に 描いた ような 男 だ と 思う 。 いんき||え||えがいた||おとこ|||おもう

「 なに か 意見 で も ある の か ? ||いけん||||| 」 上官 の 投げやりな 声 を 、 すくなくとも 表面 的に は オーベルシュタイン は 意 に 介し なかった 。 じょうかん||なげやりな|こえ|||ひょうめん|てきに||||い||かいし| 「 はい 」

「 よかろう 、 言って みろ 」 |いって|

いやいや ながら ゼークト は うながした 。

「 では 申しあげます 。 |もうしあげます これ は 罠 だ と 思わ れます 」 ||わな|||おもわ| 「 罠 ? わな 」 「 そうです 。 そう です 艦隊 を イゼルローン から 引き離す ため の 。 かんたい||||ひきはなす|| でて は なりません 。 うごか ず 情況 を みる べきです 」 ||じょうきょう|||べき です

ゼークト は 不快 げ に 鼻 を 鳴らした 。 ||ふかい|||はな||ならした

「 でれば 敵 が 待って いる 、 戦えば 敗れる と 言いたい の か 、 貴 官 は 」 |てき||まって||たたかえば|やぶれる||いいたい|||とうと|かん| 「 そんな つもり は ……」

「 では 、 どんな つもり だ 。 吾々 は 軍人 であり 、 戦う の が 本分 だ 。 われ々||ぐんじん||たたかう|||ほんぶん| 一身 の 安全 を もとめる より 、 すすんで 敵 を 撃つ こと を 考える べきだろう 。 いっしん||あんぜん|||||てき||うつ|||かんがえる| まして 、 窮地 に ある 味方 を 救わ んで どう する 」 |きゅうち|||みかた||すくわ|||

オーベルシュタイン にたいする 反感 も あり 、 皮肉っぽい 表情 で こと の 推移 を 見まもる シュトックハウゼンヘ の 手前 も ある 。 ||はんかん|||ひにくっぽい|ひょうじょう||||すいい||みまもる|||てまえ|| それ に もともと ゼークト は 敵 を みれば 戦わ ず に は い られ ない と いう 猛 将 タイプ で 、 要塞 に 籠もって 敵 を 待つ など 、 性 に あわ なかった 。 |||||てき|||たたかわ|||||||||もう|すすむ|たいぷ||ようさい||こもって|てき||まつ||せい||| それでは 軍艦 乗り に なった 甲 が ない 、 と 思って いる 。 |ぐんかん|のり|||こう||||おもって|

「 どうか な 、 ゼークト 提督 、 卿 の 幕僚 の 言 に も 一理 ある 。 |||ていとく|きょう||ばくりょう||げん|||いちり| 敵 に せよ 味方 に せよ 、 確実な 位置 が 知れ ん し 、 危険 が 大きい 。 てき|||みかた|||かくじつな|いち||しれ|||きけん||おおきい もう すこし 待って みたら どう だ 」 ||まって|||

そう 横 から 言った シュトックハウゼン の 意見 が 、 事態 を 決定 した 。 |よこ||いった|||いけん||じたい||けってい|

「 いや 、 一 時間 後 に 全 艦隊 を あげて 出撃 する 」 |ひと|じかん|あと||ぜん|かんたい|||しゅつげき|

ゼークト は 断言 した 。 ||だんげん|

やがて 大小 一万五〇〇〇 隻 の 艦艇 から なる イゼルローン 駐留 艦隊 が 出港 を 開始 した 。 |だいしょう|いちまんご|せき||かんてい||||ちゅうりゅう|かんたい||しゅっこう||かいし|

要塞 指令 室 の 出入 港 管制 モニター の 画面 に よって 、 シュトックハウゼン は それ を ながめて いる 。 ようさい|しれい|しつ||しゅつにゅう|こう|かんせい|もにたー||がめん|||||||| 巨大な 塔 を 横 に した ような 戦艦 や 、 流線型 の 駆逐 艦 など が 整然と 宇宙 空間 へ むけて 進 発する 情景 は 、 たしかに 壮観であった 。 きょだいな|とう||よこ||||せんかん||りゅうせんけい||くちく|かん|||せいぜんと|うちゅう|くうかん|||すすむ|はっする|じょうけい|||そうかんであった

「 ふん 、 痛い 目 に 遇って もどって くる が いい 」 |いたい|め||ぐうって|||| 口 の なか で シュトックハウゼン は ののしった 。 くち|||||| 死んで しまえ 、 と か 、 負けろ 、 と か は 冗談 であって も 言え ない 。 しんで||||まけろ||||じょうだん|||いえ| 彼 なり の 、 それ が 節度 だった 。 かれ|||||せつど|

六 時間 ほど たって 、 またしても 通信 が とびこんで きた 。 むっ|じかん||||つうしん||| 例の ブレーメン 型 軽 巡 から で 、 ようやく 要塞 の ちかく まで いたり 着いた が 、 なお 叛乱 軍 の 追撃 を うけて いる 、 援護 の 砲撃 を 依頼 する 、 と いう 内容 が 雑音 の なか から 聴取 さ れた 。 れいの||かた|けい|めぐり||||ようさい|||||ついた|||はんらん|ぐん||ついげき||||えんご||ほうげき||いらい||||ないよう||ざつおん||||ちょうしゅ||

砲手 に 援護 の 準備 を さ せ ながら 、 シュトックハウゼン は 苦りきった 。 ほうて||えんご||じゅんび|||||||にがりきった ゼークト の 低 能 は 、 どこ を うろついて いる の か 。 ||てい|のう||||||| 大言壮語 も いい が 、 せめて 孤独な 味方 を 救う ぐらい の こと が でき ない の か 。 たいげんそうご|||||こどくな|みかた||すくう||||||||

「 スクリーン に 艦 影 ! すくりーん||かん|かげ 」 部下 が 告げた 。 ぶか||つげた 司令 官 は 拡大 投影 を 命じた 。 しれい|かん||かくだい|とうえい||めいじた

ブレーメン 型 軽 巡 が 、 酔っぱらい の ような たよりな さ で 要塞 へ 接近 して くる 。 |かた|けい|めぐり||よっぱらい||||||ようさい||せっきん|| その 背後 に 多数 の 光 点 が 見える の は 、 当然 、 敵 であろう 。 |はいご||たすう||ひかり|てん||みえる|||とうぜん|てき|

「 砲戦 用意 ! ほうせん|ようい 」 シュトックハウゼン は 命じた 。 ||めいじた だが 、 要塞 主砲 の 射程 寸前 で 、 同盟 軍 の 艦艇 は いっせいに 停止 した 。 |ようさい|しゅほう||しゃてい|すんぜん||どうめい|ぐん||かんてい|||ていし| 臆病 そうに 、 見え ざる 境界 線 の うえ を 漂って いた が 、 ブレーメン 型 軽 巡 が 要塞 管制 室 から の 誘導 波 に のって 港 内 に は いって ゆく の を 認める と 、 あきらめた ように 回 頭 を はじめる 。 おくびょう|そう に|みえ||きょうかい|せん||||ただよって||||かた|けい|めぐり||ようさい|かんせい|しつ|||ゆうどう|なみ|||こう|うち|||||||みとめる|||よう に|かい|あたま||

「 利口な 奴 ら だ ぜ 、 かなわない こと を 知って や がる 」 りこうな|やつ|||||||しって||

帝国 軍 の 兵士 たち は 哄笑 した 。 ていこく|ぐん||へいし|||こうしょう| 要塞 の 力 と 自己 の 力 と の 一 体感 が 、 彼ら の 心理 的 余裕 を ささえて いる 。 ようさい||ちから||じこ||ちから|||ひと|たいかん||かれら||しんり|てき|よゆう|||

入港 し 、 磁場 に よって 繫留 さ れた ブレーメン 型 軽 巡 は 、 見る も 無惨な 姿 だった 。 にゅうこう||じば|||繫りゅう||||かた|けい|めぐり||みる||むざんな|すがた|

外 から 見た だけ でも 、 十 数 に およぶ 破損 箇 処 が 認められる 。 がい||みた|||じゅう|すう|||はそん|か|しょ||みとめられる 外 殻 の 裂け目 から 白い 緩衝 材 が 動物 の 腸 の ように とびだし 、 細かい 亀裂 の 数 は 、 兵士 一〇〇 人 の 手足 の 指 を 使って も 計算 でき そうに なかった 。 がい|から||さけめ||しろい|かんしょう|ざい||どうぶつ||ちょう||よう に||こまかい|きれつ||すう||へいし|ひと|じん||てあし||ゆび||つかって||けいさん||そう に|

整備 兵 たち を 満載 した 水素 動力 車 が 走り よる 。 せいび|つわもの|||まんさい||すいそ|どうりょく|くるま||はしり| 彼ら は 要塞 の 兵 で は なく 、 駐留 艦隊 司令 官 の 統率 下 に ある から 、 この 惨状 を 見て 心から 同情 した 。 かれら||ようさい||つわもの||||ちゅうりゅう|かんたい|しれい|かん||とうそつ|した|||||さんじょう||みて|こころから|どうじょう|

軽 巡 の ハッチ が 開く と 、 頭部 に 白い 包帯 を まいた 少 壮 の 士官 が あらわれた 。 けい|めぐり||||あく||とうぶ||しろい|ほうたい|||しょう|そう||しかん|| 美男 子 だ が 、 青ざめた 顔 が 乾いて こびりついた 赤 黒い もの に 汚されて いる 。 びなん|こ|||あおざめた|かお||かわいて||あか|くろい|||けがされて| 「 艦長 の フォン ・ ラーケン 少佐 だ 。 かんちょう||||しょうさ| 要塞 司令 官 に お目にかかりたい 」 ようさい|しれい|かん||おめにかかりたい 明瞭な 帝国 公用 語 だった 。 めいりょうな|ていこく|こうよう|ご|

「 わかった 。 だが 、 要塞 外 の 状況 は いったい どう なって いる のだ 」 |ようさい|がい||じょうきょう||||||

整備 士官 の ひと り が 問う と 、 ラーケン 少佐 は 苦しげに あえいだ 。 せいび|しかん|||||とう|||しょうさ||くるしげに|

「 吾々 も よく は わから ん 。 われ々||||| オーディン から 来た のだ から な 。 ||きた||| だが 、 どうやら 、 きみ たち の 艦隊 は 壊滅 した ようだ 」 |||||かんたい||かいめつ||

唾 を のみこむ 人々 を にらみつける ように して 、 ラーケン 少佐 は 叫んだ 。 つば|||ひとびと|||よう に|||しょうさ||さけんだ

「 どうやら 叛乱 軍 は 回廊 を 通過 する 、 とんでもない 方法 を 考えついた ような のだ 。 |はんらん|ぐん||かいろう||つうか|||ほうほう||かんがえついた|| こと は イゼルローン だけ で なく 、 帝国 の 存亡 に かかわる 。 ||||||ていこく||そんぼう|| 早く 司令 官 の ところ へ つれて 行って くれ 」 はやく|しれい|かん|||||おこなって|

要求 は ただちに 聞きいれ られた 。 ようきゅう|||ききいれ|

指令 室 で 待って いた シュトックハウゼン 大将 は 、 警備 兵 に かこまれて 入室 して きた 五 人 の 軽 巡 士官 の 姿 を 見て 腰 を 浮かした 。 しれい|しつ||まって|||たいしょう||けいび|つわもの|||にゅうしつ|||いつ|じん||けい|めぐり|しかん||すがた||みて|こし||うかした 「 シュトックハウゼン だ 。 事情 を 説明 しろ 、 どういう こと だ 」 じじょう||せつめい||||

大股 に 歩みより ながら 、 要塞 司令 官 は 必要 以上 に 高い 声 を だした 。 おおまた||あゆみより||ようさい|しれい|かん||ひつよう|いじょう||たかい|こえ|| あらかじめ 連絡 が あった ように 、 叛乱 軍 が 回廊 を 通過 する 方法 を 考案 した と すれば 、 イゼルローン 要塞 の 存在 意義 そのもの が 問わ れる こと と なろう し 、 現実 に 、 叛乱 軍 の 行動 に 対処 する 方策 も 必要に なる 。 |れんらく|||よう に|はんらん|ぐん||かいろう||つうか||ほうほう||こうあん|||||ようさい||そんざい|いぎ|その もの||とわ||||||げんじつ||はんらん|ぐん||こうどう||たいしょ||ほうさく||ひつよう に|

イゼルローン そのもの は うごけ ない のだ から 、 このような とき に こそ 駐留 艦隊 が 必要な のだ 。 |その もの||||||||||ちゅうりゅう|かんたい||ひつような| それ を あの ゼークト の 猪突 家 が ! |||||ちょとつ|いえ| シュトックハウゼン は 平静で は い られ なかった 。 ||へいせいで||||

「 それ は こういう こと です ……」

ラーケン 少佐 なる 人物 の 声 は 、 対照 的に 低く 弱々しかった ので 、 気 が せいた シュトックハウゼン は 上半身 ごと 彼 に 顔 を ちかづけた 。 |しょうさ||じんぶつ||こえ||たいしょう|てきに|ひくく|よわよわしかった||き|||||じょうはんしん||かれ||かお||

「…… こういう こと です 。 シュトックハウゼン 閣下 、 貴 官 は 吾々 の 捕虜 だ ! |かっか|とうと|かん||われ々||ほりょ| 」 一瞬 の 凍結 が とけ 、 するどい 罵声 と ともに 警備 兵 たち が 拳銃 を 抜き は なった とき 、 シュトックハウゼン の 首 に は ラーケン 少佐 の 腕 が まきつき 、 側 頭部 に は 金属 探知 システム に 反応 し ない セラミック 製 の 拳銃 が 突きつけ られて いた 。 いっしゅん||とうけつ||||ばせい|||けいび|つわもの|||けんじゅう||ぬき||||||くび||||しょうさ||うで|||がわ|とうぶ|||きんぞく|たんち|しすてむ||はんのう|||せらみっく|せい||けんじゅう||つきつけ|| 「 き さま ……」

指令 室 警備 主任 の レムラー 中佐 が 、 赭顔 を いちだん と 赤く して うめいた 。 しれい|しつ|けいび|しゅにん|||ちゅうさ||しゃかお||||あかく||

「 叛徒 ども の 仲間 だ な 。 はんと|||なかま|| よくも だいそれた ……」

「 お 見 知り おき 願おう 。 |み|しり||ねがおう 薔薇 の 騎士 連隊 の シェーンコップ 大佐 だ 。 ばら||きし|れんたい|||たいさ| 両手 が ふさがって いる ので 、 メイクアップ を おとして の 挨拶 は いたし かねる 」 りょうて|||||||||あいさつ|||

大佐 は 不敵に 笑った 。 たいさ||ふてきに|わらった

「 こう も うまく いく と は 、 正直な ところ 思わ なかった 。 ||||||しょうじきな||おもわ| ID カード まで ちゃんと 偽造 して 来た のに 、 調べ も せ ん のだ から な …… どんな 厳重な システム も 、 運用 する 人間 しだい だ と いう 、 いい 教訓 だ 」 |かーど|||ぎぞう||きた||しらべ||||||||げんじゅうな|しすてむ||うんよう||にんげん||||||きょうくん|

「 誰 に とって の 教訓 に なる か な 」 だれ||||きょうくん||||

不吉な 声 と ともに 、 レムラー 中佐 の ブラスター は 、 シュトックハウゼン と シェーンコップ を 狙った 。 ふきつな|こえ||||ちゅうさ||||||||ねらった

「 人質 を とった つもりだろう が 、 き さま ら 叛徒 と 帝国 軍人 を 同一 視 する な よ 。 ひとじち||||||||はんと||ていこく|ぐんじん||どういつ|し||| 司令 官 閣下 は 死 より も 不名誉 を おそれる 方 だ 。 しれい|かん|かっか||し|||ふめいよ|||かた| き さま の 生命 を まもる 盾 など ない のだ ぞ ! |||せいめい|||たて|||| 」 「 司令 官 閣下 は 、 過大 評価 さ れる の が 迷惑 そうだ ぜ 」 しれい|かん|かっか||かだい|ひょうか|||||めいわく|そう だ| 嘲笑 した シェーンコップ は 、 彼 の 周囲 を 固めた 四 人 の 部下 の ひと り に 目配せ した 。 ちょうしょう||||かれ||しゅうい||かためた|よっ|じん||ぶか|||||めくばせ| その 部下 は 、 帝国 軍 の 軍服 の 下 から 、 掌 に のる 大き さ の 円盤 状 の 物体 を 取りだした 。 |ぶか||ていこく|ぐん||ぐんぷく||した||てのひら|||おおき|||えんばん|じょう||ぶったい||とりだした これ も セラミック 製 である 。 ||せらみっく|せい|

「 わかる な ? ゼッフル 粒子 の 発生 装置 だ 」 |りゅうし||はっせい|そうち|

シェーンコップ が 言う と 、 広い 室 内 に 電流 が はしった ようだった 。 ||いう||ひろい|しつ|うち||でんりゅう|||

ゼッフル 粒子 は 、 発明 者 である カール ・ ゼッフル の 名 を とって 命名 さ れた 化学 物質 の 一種 である 。 |りゅうし||はつめい|もの|||||な|||めいめい|||かがく|ぶっしつ||いっしゅ|