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Fairy Tales, 跡隠しの雪

跡 隠し の 雪

跡 隠し の 雪

むかし むかし 、 ある 寒い 年 の 事 、 小さな 村 に 旅 の お 坊さん が やって 来て 、 ひと 晩 泊めて くれる 家 を 探して い ました 。 けれど 、 どの 家 に 行って も 、 「 悪い が 、 他 を 探して ください 」 と 、 断ら れ ます 。 断ら れ 続けた お 坊さん は 、 最後に 村 で 一 番 貧しい 一 人 暮らし の おばあ さん に 頼み ました 。 する と 、 おばあ さん は 、 「 食べ物 どころ か 、 うち に は いろり の 火 も あり ませ ん 。 それ でも よければ 、 どうぞ お 泊まり ください 」 と 、 お 坊さん を 家 に 入れて くれ ました 。 家 に 入った お 坊さん は 、 火 の 消えた いろり の そば に 座る と 、 念仏 を 唱え 始め ました 。 その 姿 を 見た おばあ さん は 、 ( ああ 、 せっかく お 坊 さま が 来て くださった のに 。 何の お もてなし も 出来 ぬ と は ) と 、 目 に 涙 を 浮かべる と 、 そっと 戸 を 開けて 外 に 出 ました 。 「 せめて 、 菜っ葉 の 一 枚 でも 残って いれば 」 おばあ さん は 寒 さ に 震え ながら 自分 の 小さな 畑 へ 行き ました が 、 やはり 菜っ葉 一 枚 、 残って い ませ ん 。 そこ で おばあ さん は 、 地主 の 畑 へ 行く と 、 「 すみません 。 いつか 必ず お返し を し ます ので 、 どうぞ 今日 だけ は 許して くださ れ 」 と 、 手 を 合わせる と 、 干して ある 稲 を ほんの 少し 抜き取り ました 。 それ から 、 隣 の 大根 畑 へ 行き 、 「 今日 だけ は 、 許して くださ れ 」 と 、 手 を 合わせる と 、 小さな 大根 を 一 本 抜き取り ました 。 こうして 稲 と 大根 を 手 に 入れた おばあ さん が 家 に 戻る と 、 お 坊さん は まだ 念仏 を 唱えて い ます 。 おばあ さん は 稲 と 大根 を 置く と 、 今度 は 山 へ 枯れ 枝 を 探し に 行き ました 。 寒い 冬山 を さんざん 歩き 回って 、 ようやく 枯れ 枝 を 見つけて 家 に 帰る と 、 おばあ さん は 稲 を 臼 ( うす ) で ひいて 団子 を 作り ました 。 そして 大根 は 小さく きざんで 、 なべ に 入れ ました 。 それ から いろり に 枯れ 枝 を くべて 火 を つける と 、 大根 と 団子 を 煮て 団子 汁 を 作り ました 。 こうして おばあ さん は 、 出来 上がった 団子 汁 を 全て おわん に 入れる と 、 「 お 坊 さま 。 わたし は お腹 が 空いて い ない ので 、 どうぞ 全部 召しあがって ください 」 と 、 団子 汁 の 入った おわん を お 坊さん に 差し出した のです 。 おばあ さん が 、 ふと 戸 の すき間 から 外 を 見る と 、 地主 の 畑 から 隣 の 畑 、 そして おばあ さん の 家 まで 続く 足跡 が 、 雪 の 上 に はっきり と 残って い ました 。 明日 に なれば 、 稲 や 大根 を 盗んだ 事 が 見つかる でしょう 。 きっと 、 ひどく しから れる に 違い あり ませ ん 。 もしかすると 、 村 を 追い出さ れる かも しれ ませ ん 。 しかし おばあ さん は 、 おいし そうに 団子 汁 を 食べる お 坊さん を 見て 、 ( ああ 、 よかった 。 よかった ) と 、 心 の 底 から 思い ました 。

次の 日 の 朝 、 目 を 覚ました おばあ さん が 外 に 出て みる と 、 あたり 一面に 新しい 雪 が 積もって いて 、 おばあ さん の 足跡 は すっかり 無くなって いた のです 。 そして 今 まで の 事 を 全て 知って いた の か 、 お 坊さん は おばあ さん に 微笑む と 、 やさしく 言い ました 。 「 あなた は 、 とても 良い 行い を し ました 。 仏さま は 、 あなた の した 事 を お 許し に なる ばかり か 、 これ から は 幸運 を 授けて 下さる でしょう 。 では 、 どうぞ 長生き を して ください 」 そして お 坊さん は 、 再び 旅 へ と 出かけ ました 。 この お 坊さん が 言った 通り 、 それ から おばあ さん に は 良い 事 ばかり が 続き 、 とても 幸せに 暮らす 事 が 出来 ました 。

おばあ さん は 後 から 知った のです が 、 おばあ さん の 家 に 来た お 坊さん は 、 あの 有名な 弘 法大 師 だった と いう 事 です 。

おしまい


跡 隠し の 雪 あと|かくし||ゆき traces hidden in the snow

跡 隠し の 雪 あと|かくし||ゆき

むかし むかし 、 ある 寒い 年 の 事 、 小さな 村 に 旅 の お 坊さん が やって 来て 、 ひと 晩 泊めて くれる 家 を 探して い ました 。 |||さむい|とし||こと|ちいさな|むら||たび|||ぼうさん|||きて||ばん|とめて||いえ||さがして|| けれど 、 どの 家 に 行って も 、 「 悪い が 、 他 を 探して ください 」 と 、 断ら れ ます 。 ||いえ||おこなって||わるい||た||さがして|||ことわら|| However, no matter which house I went to, I was refused, saying, "I'm sorry, but please look for someone else." 断ら れ 続けた お 坊さん は 、 最後に 村 で 一 番 貧しい 一 人 暮らし の おばあ さん に 頼み ました 。 ことわら||つづけた||ぼうさん||さいごに|むら||ひと|ばん|まずしい|ひと|じん|くらし|||||たのみ| する と 、 おばあ さん は 、 「 食べ物 どころ か 、 うち に は いろり の 火 も あり ませ ん 。 |||||たべもの||||||||ひ|||| Then the old woman said, "Let alone food, we don't even have a fire. それ でも よければ 、 どうぞ お 泊まり ください 」 と 、 お 坊さん を 家 に 入れて くれ ました 。 |||||とまり||||ぼうさん||いえ||いれて|| If you don't mind, please stay the night," and let the monk into the house. 家 に 入った お 坊さん は 、 火 の 消えた いろり の そば に 座る と 、 念仏 を 唱え 始め ました 。 いえ||はいった||ぼうさん||ひ||きえた|||||すわる||ねんぶつ||となえ|はじめ| When the monk entered the house, he sat down by the burnt-out fireplace and began chanting the Nembutsu. その 姿 を 見た おばあ さん は 、 ( ああ 、 せっかく お 坊 さま が 来て くださった のに 。 |すがた||みた|||||||ぼう|||きて|| When the old woman saw him, she said, "Oh, the monk came all the way. 何の お もてなし も 出来 ぬ と は ) と 、 目 に 涙 を 浮かべる と 、 そっと 戸 を 開けて 外 に 出 ました 。 なんの||||でき|||||め||なみだ||うかべる|||と||あけて|がい||だ| Tears welled up in my eyes, and I quietly opened the door and went outside. 「 せめて 、 菜っ葉 の 一 枚 でも 残って いれば 」   おばあ さん は 寒 さ に 震え ながら 自分 の 小さな 畑 へ 行き ました が 、 やはり 菜っ葉 一 枚 、 残って い ませ ん 。 |なっぱ||ひと|まい||のこって|||||さむ|||ふるえ||じぶん||ちいさな|はたけ||いき||||なっぱ|ひと|まい|のこって||| "If only there was at least one leaf left," the old woman shivered in the cold as she went to her small field, but there wasn't even one leaf left. そこ で おばあ さん は 、 地主 の 畑 へ 行く と 、 「 すみません 。 |||||じぬし||はたけ||いく|| いつか 必ず お返し を し ます ので 、 どうぞ 今日 だけ は 許して くださ れ 」 と 、 手 を 合わせる と 、 干して ある 稲 を ほんの 少し 抜き取り ました 。 |かならず|おかえし||||||きょう|||ゆるして||||て||あわせる||ほして||いね|||すこし|ぬきとり| I will definitely repay you someday, so please forgive me for today." He put his hands together and pulled out a little bit of the dried rice. それ から 、 隣 の 大根 畑 へ 行き 、 「 今日 だけ は 、 許して くださ れ 」 と 、 手 を 合わせる と 、 小さな 大根 を 一 本 抜き取り ました 。 ||となり||だいこん|はたけ||いき|きょう|||ゆるして||||て||あわせる||ちいさな|だいこん||ひと|ほん|ぬきとり| こうして 稲 と 大根 を 手 に 入れた おばあ さん が 家 に 戻る と 、 お 坊さん は まだ 念仏 を 唱えて い ます 。 |いね||だいこん||て||いれた||||いえ||もどる|||ぼうさん|||ねんぶつ||となえて|| おばあ さん は 稲 と 大根 を 置く と 、 今度 は 山 へ 枯れ 枝 を 探し に 行き ました 。 |||いね||だいこん||おく||こんど||やま||かれ|えだ||さがし||いき| After putting down the rice and radishes, the old woman went to the mountains to look for dead branches. 寒い 冬山 を さんざん 歩き 回って 、 ようやく 枯れ 枝 を 見つけて 家 に 帰る と 、 おばあ さん は 稲 を 臼 ( うす ) で ひいて 団子 を 作り ました 。 さむい|ふゆやま|||あるき|まわって||かれ|えだ||みつけて|いえ||かえる|||||いね||うす||||だんご||つくり| After a long walk in the cold winter mountains, she finally found a dead branch and returned home. そして 大根 は 小さく きざんで 、 なべ に 入れ ました 。 |だいこん||ちいさく||||いれ| それ から いろり に 枯れ 枝 を くべて 火 を つける と 、 大根 と 団子 を 煮て 団子 汁 を 作り ました 。 ||||かれ|えだ|||ひ||||だいこん||だんご||にて|だんご|しる||つくり| こうして おばあ さん は 、 出来 上がった 団子 汁 を 全て おわん に 入れる と 、 「 お 坊 さま 。 ||||でき|あがった|だんご|しる||すべて|おわ ん||いれる|||ぼう| When the old woman put all the finished dango soup into a bowl, she said, ``Obosama. わたし は お腹 が 空いて い ない ので 、 どうぞ 全部 召しあがって ください 」 と 、 団子 汁 の 入った おわん を お 坊さん に 差し出した のです 。 ||おなか||あいて|||||ぜんぶ|めしあがって|||だんご|しる||はいった|おわ ん|||ぼうさん||さしだした| おばあ さん が 、 ふと 戸 の すき間 から 外 を 見る と 、 地主 の 畑 から 隣 の 畑 、 そして おばあ さん の 家 まで 続く 足跡 が 、 雪 の 上 に はっきり と 残って い ました 。 ||||と||すきま||がい||みる||じぬし||はたけ||となり||はたけ|||||いえ||つづく|あしあと||ゆき||うえ||||のこって|| 明日 に なれば 、 稲 や 大根 を 盗んだ 事 が 見つかる でしょう 。 あした|||いね||だいこん||ぬすんだ|こと||みつかる| きっと 、 ひどく しから れる に 違い あり ませ ん 。 ||し から|||ちがい||| もしかすると 、 村 を 追い出さ れる かも しれ ませ ん 。 |むら||おいださ||||| しかし おばあ さん は 、 おいし そうに 団子 汁 を 食べる お 坊さん を 見て 、 ( ああ 、 よかった 。 |||||そう に|だんご|しる||たべる||ぼうさん||みて|| However, the old woman saw the monk eating the dumpling soup with great relish and said, (Oh, I'm glad. よかった ) と 、 心 の 底 から 思い ました 。 ||こころ||そこ||おもい| I'm glad), I thought from the bottom of my heart.

次の 日 の 朝 、 目 を 覚ました おばあ さん が 外 に 出て みる と 、 あたり 一面に 新しい 雪 が 積もって いて 、 おばあ さん の 足跡 は すっかり 無くなって いた のです 。 つぎの|ひ||あさ|め||さました||||がい||でて||||いちめんに|あたらしい|ゆき||つもって|||||あしあと|||なくなって|| そして 今 まで の 事 を 全て 知って いた の か 、 お 坊さん は おばあ さん に 微笑む と 、 やさしく 言い ました 。 |いま|||こと||すべて|しって|||||ぼうさん|||||ほおえむ|||いい| And, perhaps knowing everything up until now, the monk smiled at the old woman and said kindly. 「 あなた は 、 とても 良い 行い を し ました 。 |||よい|おこない||| 仏さま は 、 あなた の した 事 を お 許し に なる ばかり か 、 これ から は 幸運 を 授けて 下さる でしょう 。 ふつ さま|||||こと|||ゆるし||||||||こううん||さずけて|くださる| では 、 どうぞ 長生き を して ください 」   そして お 坊さん は 、 再び 旅 へ と 出かけ ました 。 ||ながいき||||||ぼうさん||ふたたび|たび|||でかけ| この お 坊さん が 言った 通り 、 それ から おばあ さん に は 良い 事 ばかり が 続き 、 とても 幸せに 暮らす 事 が 出来 ました 。 ||ぼうさん||いった|とおり|||||||よい|こと|||つづき||しあわせに|くらす|こと||でき|

おばあ さん は 後 から 知った のです が 、 おばあ さん の 家 に 来た お 坊さん は 、 あの 有名な 弘 法大 師 だった と いう 事 です 。 |||あと||しった||||||いえ||きた||ぼうさん|||ゆうめいな|ひろ|ほうだい|し||||こと| The grandmother later found out that the monk who came to her house was the famous Kobo Daishi.

おしまい