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三姉妹探偵団 1, 三姉妹探偵団01 chapter 05 (1)

三 姉妹 探偵 団 01 chapter 05 (1)

5 三 姉妹 の 受難

珠美 は 、 教室 に 一 人 で 残って いた 。

別に 残さ れた わけで は ない 。 自主 的に 残って いた のである 。 その 点 は 強調 して おく 必要 が ある だろう 。 珠美 は その 要領 の 良 さ で 、 大して 勉強 は し ない が 、 そう 成績 は 悪く なかった から である 。

「── おい 、 佐々 本 、 まだ やって る の か 」

と 、 教室 の 戸 が 開いた 。

「 あ 、 先生 」

安東 が 覗き に 来た のだった 。

「 帰ら ん か 、 一緒に ? 「 もう 少し 計算 して 行き ます 」

「 何 を やって いる んだ ? 「 いい んです 、 別に 」

と 、 珠美 は 笑って ごまかした 。

「 分 った 。 あんまり 遅く なる な よ 」

安東 は 、 それ 以上 何も 言わ ず に 出て 行った 。

珠美 は 、 ノート を 眺めて 、

「 しめて …… 二万四千八十 円 か ……」

と 呟いた 。 家計 簿 を つけて いる のである 。

いつまでも 安東 の 家 に 厄介に はなれ ない 。 それ は 珠美 に も 分 って いた 。 だから 、 安東 の 家 が 、 綾子 と 珠美 の 二 人 に いくら ぐらい 使って いる の か 、 大体 の ところ を つけて いる のである 。

食費 の 他 に 、 風呂 の ガス 代 、 水道 代 、 下着 の 替え を 買って くれた 分 など を 計算 する と 、 二万四千 円 余りに なる 。

これ じゃ 、 いくら 夫婦 共 稼ぎ った って 、 楽じゃ ない 。 やはり 居候 は それなり の 貢献 を し なくて は なら ない 。

綾子 は 働き 始めて いる が 、 バイト で は 大した 金 に なら ない し 、 いつまで 続く かも 心もとない 。 あまり あて に し ない 方 が いい だろう 。

と いって 、 夕 里子 は 高校 、 自分 は 中学 。 アルバイト った って 、 たかが 知れて いる 。

「 売春 で も やる か なあ ……」

と 、 珠美 は 机 の 上 を 片付け ながら 呟いた 。

教室 の 明り を 消して 、 珠美 は 廊下 へ 出た 。

ロッカールーム へ 入る と 、 靴 を はき かえる 。 ── どこ か で タバコ の 匂い が して いる 。

隠れて 誰 か が 喫 った の か な 。 もったいない 。 今 は タバコ も 高い のに 。

鞄 を 手 に ロッカールーム を 出よう と する と 、 いきなり ドア が 開いて 、 珠美 は 中 へ 押し戻さ れた 。

「 な 、 何 よ ……」

二 年生 だ 。 それ も 年中 問題 を 起こして いる 三 人 組 だった 。 一 人 は くわえ タバコ で 、 髪 も 染めて いる 。

珠美 は 、 まずい 、 と 思った 。

「 ねえ 、 あんた 」

一 人 が ドア を 閉めて 、 より かかる 。 二 人 が ジリジリ と 近付いて 来た 。

「 何 です か ? 「 ちょっと 小遣い が いる の 。 貸して よ 」

「 お 金 なんて ……」

「 持って ん の 、 知って んだ よ 。 いつも 金 勘定 して る って いう じゃ ない 」

「 私 、 別に ……」

「 なめ ん じゃ ない よ ! つき飛ばさ れて 、 珠美 は ひっくり返った 。 小柄だ から 、 体力 で は とても 敵 わ ない 。

「 おとなしく 金 出し な よ 」

珠美 も 決して 勇敢で は ない 。 人並みに 、 殴ら れる の は 好きで ない し 、 こういう 手 合 を 相手 に 喧嘩 する 度胸 も ない 。

しかし 、 珠美 は 無類の ケチ である 。 鞄 の 中 に は 、 確かに 一万五千 円 ほど の 現金 が ある 。 しかし 、 これ は 夕 里子 から 預かった 〈 資金 〉 な のだ 。

「 どう な の さ ? 「 渡す もん です か ! お 金 欲しきゃ 、 働き なさい よ ! 珠美 は 、 両手 に しっかり と 鞄 を かかえ込んだ 。 ── 相手 は ちょっと 呆 気 に 取ら れた 。

脅して やれば すぐ 渡す だろう と 思って いた のだ 。

「 この 野郎 ……」

珠美 は 、 お腹 を けら れて 、 体 を 縮めた 。 頭 を 踏ま れる 。 髪 の 毛 を 引 張ら れる 。 顔 を 殴ら れる 。 痛 さ で 気 が 遠く なった 。

「 よこせ ! と 鞄 を もぎ取ら れ そうに なる と 、 ハッと して 、

「 や だ ! と 鞄 を 必死で 抱きしめた 。

「 こいつ ……」

不良 グループ が 、 刃物 や チェーン を 持って い なかった の は 幸いであった 。 珠美 に こう も 手 こ ずる と は 思って い なかった のだろう 。

殴る 、 ける 、 が 続いて 、 珠美 は 目 の 前 が 真っ暗に なった 。 口 の 端 が 切れて 血 が 流れる の が 分 った 。

死んじゃ う かも しれ ない 、 と 思った 。 しかし 、 絶対 に 鞄 は やら ない 、 と 決心 して いた 。 お 金 の ため に 死ぬ なら 、 本望 であった 。

「 おい 、 何 して る ! 男 の 声 が した 。 ありがたい !

「 逃げろ ! ドタドタッ と 足音 が 入り乱れて 、 それ から 静かに なった 。

「── 大丈夫 かい ? 事務 室 に いる 男性 の 声 らしかった 。 らしかった 、 と いう の は 、 珠美 は 目 が かすんで 、 よく 見え なかった のである 。

しかし 、 鞄 だけ は しっかり と 抱きかかえて いた 。

死んじゃ おう 。

綾子 は 、 電車 の 中 で 、 ホーム で 、 帰り道 で 、 そう 考え つづけて いた 。

昨日 の 好調 と は 打って変って 、 今日 は 最低の 一 日 であった 。 五 時 の チャイム まで が 、 まるで 一 年間 も ある ようだった 。

コピー の 機械 に やっと 慣れて 、 自信 満々 で 出社 した のに 、 今日 は 書類 の 整理 と 荷造り を やらさ れた 。

書類 と いって も 、 勤めた こと も なく 、 商業 高校 に も 行って い ない 綾子 に は 、 伝票 と メモ の 違い だって 見分け が つか ない のである 。

おまけに 、

「 歳入 、 歳出 別 に ね 」

なんて 言わ れた って 、 そもそも 「 サイニュウ 」「 サイシュツ 」 が 、 どういう 字 を 当てる の か 、 定かで ない 。

「 入 」 と 「 出 」 か な 、 と 見当 は ついた のだ が 、 そこ を 、

「 どう やって 見分ける んです か 」

と 一言 訊 け ば いい の を 、 そう でき ない の が 気 の 弱 さ である 。

「 じゃ 、 やっと いて ね 、 僕 は 忙しい から 」

と 、 その 男性 、 さっさと 綾子 を 置いて 行って しまう 。

困って しまった もの の 、 遊んで いる わけに も いか ず 、 ともかく 、「 出 」「 入 」 の 字 を 頼り に 、 書類 、 伝票 を 全部 分けて しまった 。

怒鳴ら れた 。

「 めちゃくちゃじゃ ない か ! もう いい ! 却って 何も やら ないで いて くれた 方 が ありがたい よ 、 全く ! 教えて くれ ない んだ もの 、 と 口 の 中 で 呟いて 、 すみません 、 と 頭 を 下げる 。

もう これ で 十二分に 落ち込んだ のだ が 、 午後 から は 、 発送 業務 で 、 小包 に 紐 を かけ させ られた 。

これ が また 苦手である 。 大体 、 綾子 は 不器用な のだ 。 靴 の 紐 を 結ぶ の だって 、 いい加減 何度 も くり返さ ない と でき ない 。 だから 、 靴 も 絶対 に 紐 の ない もの を 選んで いた 。

その 綾子 に 、 荷造り しろ と いう のだ から 無理だ 。 担当 の 女性 が 、

「 ここ を こう 通して ね 、 ここ で キュッ と しめて 、 これ で いい の よ 」

と やって 見せて くれた とき は 、 あ 、 割と やさしい 、 と 思った のだ が 、 とんでもない 。 やって みる と 、 紐 は もつれる 、 結び目 は 妙な 所 に できる 、 指 を 一緒に 縛っちゃ う 、 と いう 有様 。

それ でも 二 時間 近く かかって 、 やっと 結び 方 を 憶 え 、 後 は 順調に 行った 。

四 時 半 に なって 席 へ 戻る と 、 さすが に ぐったり した が 、 まあ 午前 中 より は ましな 気分 であった 。

「 ご苦労さま 」

と 、 お茶 も くれた し 、「 後 は 五 時 まで のんびり して なさい よ 」

と 言わ れて 、 やっと 笑顔 も 出た のだ が ……。

「 誰 だ おい ! こんな 小包 を 造った 奴 は ! と 、 怒鳴り 声 が 、 事務 所 中 に 響き渡った 。 口やかましい 、 と 聞いて いた 課長 さん である 。

「 ゆるゆる じゃ ない か 。 見ろ ! 紐 を 持って 下げる と 、 確かに ゆる すぎて 外れ そうな のだ 。 「 こんなんで 、 向 う へ 着く と 思って る の か ! 誰 だ 、 やった 奴 は ! 綾子 は 、 顔 から 血の気 が ひく の が 分 った 。

そろそろ と 立ち上る と 、

「 私 です 」

と 、 消え 入り そうな 声 で 言った 。

「 何 だ 、 バイト か ? 「 はい 」

「 今 の 学生 は 何 を 習って る んだ ? 紐 一 つ 満足 に 結べ ん の か 」

「 すみません ……」

「 男 の 引っかけ 方 ばっかり 勉強 し とる んだろう 」

事務 所 中 が 一斉に 笑った 。 ── 綾子 は 、 自分 が 世界 一 惨めな 人間 に 思えた 。

帰り道 、 ずっと 綾子 は そう 考えて いた 。

世の中 は 、 自分 に 合う ように できて い ない 。 ── そうだ 。 みんな が 私 を からかって 、 馬鹿に して 面白がって る んだ 。

もう 、 会社 に 顔 を 出せ や し ない 。

あんな 恥ずかしい 思い を して 。 ── もう 何もかも 終り なんだ 。

安東 の 家 へ 帰りつく と 、 張りつめて いた もの が 一挙に 崩れて 、 綾子 は 奥 の 六 畳 間 に 駆け込む と 、 ワーッ と 泣き出して しまった 。

綾子 に 得意な こと が ある と する と 、 それ は 泣く こと である 。 何しろ 泣き虫 な のだ 。

一旦 泣き出したら 、 一 時間 は 止まら ない 。 夕 里子 など 、 からかって 、

「 お 姉さん 、 砂漠 で さまよって も 、 助かる よ 、 水分 の 貯 え が 多い から 」

など と 言って いる 。

薄暗く なった 部屋 で 、 一 人 泣き 続けて いる と 、 襖 が 開いた 。

「── おい 、 どうした ? 安東 だった 。

「 先生 ……」

綾子 は 泣く の を やめよう と 思った が 、 水道 の 蛇口 と 違って 、 止め られ ない のである 。

「 どうした ? 何 か あった の か ? 安東 は わき に 座る と 、 綾子 の 肩 を 抱いて やった 。

その 優し さ が 、 また 涙腺 を 刺激 した 。

「 私 …… 私 ……」

もう 言葉 に なら ない 。 綾子 は 安東 の 胸 に 身 を 投げかけて 、 また ひとしきり 泣き出した 。

「 元気 出せ 。 ── おい 、 しっかり しろ よ 」

安東 が 綾子 の 頭 を 撫で ながら 言った 。

「 すみません ……」

たっぷり 十 分 以上 、 泣いて から 、 綾子 は 顔 を 上げた 。

「 悲しく って …… 私 …… だめな んです 。 何 やって も …… 笑われる んです 」

「 そんな こと が ある もん か 。 気 に する んじゃ ない 」

「 本当な んです ……。 私 の こと 、 みんな が 馬鹿に して 、 笑いもの に する んです ……」

「 俺 は し ない ぞ 」

と 安東 は 言った 。

綾子 は 顔 を 上げた 。

次の 瞬間 、 安東 の 力強い 腕 が 綾子 を 抱き 寄せて 、 綾子 は 唇 に 安東 の 唇 を 受け止めて いた 。 全身 が 燃える ように 熱く なった 。 ── 綾子 は 夢中で 安東 の 背 に 腕 を 回して いた 。

「 ただいま 」

夕 里子 は 、 片瀬 家 の 玄関 を 上った 。

家 の 中 は 、 いやに 静かである 。 ── 誰 も い ない の か な 。

それ に して は 玄関 の 鍵 が 開いて いた が 。

「 ただいま 」

居間 の ドア を 開けて 、 夕 里子 は 立ちすくんだ 。

まるで 、 静止 した 画像 の ように 、 敦子 と 、 父親 、 母親 が 離れ離れに 座って 、 黙り 込んで いた 。

和やかな ムード で は ない 。 重苦しくて 、 その 場 へ 入った とたん に 息苦しく なる 感じ だった 。 ── いて は いけない 、 と 思って 、 夕 里子 は 居間 を 出た 。

すぐに 、 敦子 が 追いかけて 出て 来た 。

「 夕 里子 、 外 に 行こう 」

敦子 が 、 涙ぐんで いる 。

「 うん 」

二 人 は 玄関 から 表 へ 出て 、 暗く なり かけた 道 を しばらく 歩いた 。

「 靴 、 どうした の ? と 、 敦子 が 訊 いた 。

「 え ? ああ 、 あの 編 上 靴 、 かかと が こわれちゃ った の 。 ごめん ね 」

「 いい の よ 。 それ 、 買った の ? 「 うん 、 知って る 人 に 買って もらった 」

また 、 二 人 は 黙り 込んだ 。

国友 と 二 人 で 水口 淳子 の 家 へ 行って みた のだ が 、 留守 で 、 会う こと は でき なかった 。 また 明日 、 出直そう と いう こと に なった のだ が ……。

「 ママ が ね 、 浮気 して た んだ 」

と 、 敦子 が 言った 。 「 それ が ばれた の 」

夕 里子 は 息 を 呑 んだ 。 ── 忘れて いた ! あの 電話 だ ! 二 時 に 。 この前 の ホテル 。 来 なければ 旦那 に ばらす ……。

「 相手 が 誰 な の か 、 って パパ が 訊 いて も ね 、 ママ 、 言わ ない の 。 で 、 あんな 風 な の よ 。 もう 一 時間 も 」

「 どうして …… 分 った の ? 「 パパ の 会社 に 電話 が かかった らしい わ 。 そして 、 あんた の 奥さん と 浮気 して いた 、 って ……。

ママ の 体 の こと 、 あれこれ 細かく しゃべった んだ って 。 だから ママ も 言い逃れ でき なくて 」

夕 里子 は 、 言葉 が なかった 。 ── 自分 の せい だ 。 あの とき 、 ちゃんと 敦子 の 母 に 伝えて おけば ……。

「 ママ だって 、 うまく やりゃ 良かった の よ 。 ねえ ? 敦子 は 捨て鉢 な 調子 で 言った 。

「 そんな 言い 方 、 気の毒 よ 」

「 もう いやだ わ 、 家 へ 帰り たく ない ! 敦子 は 、 唇 を かみしめた 。 涙 が 頰 に 伝い 落ちた 。 夕 里子 は 、 自分 を 呪って やり たかった 。

「 でも ── どうして お 母さん 、 男 の 名前 を 言わ ない の ? 「 分 ら ない って 言う の 。 何だか 、 怪しい 電話 の 誘い に 乗って ホテル へ 行ったら 、 部屋 は 真っ暗で 、 いきなり 抱きしめ られて ……。 気 が 付いたら 、 男 の 方 は もう い なく なって たって 」

「 そんな こと って ある の かしら ? 「 分 んな いわ よ ! 敦子 は 叫ぶ ように 言って 、 それ から 、 息 を 吐き出した 。 「── ごめん ね 、 夕 里子 の せい じゃ ない のに 」

私 の せい よ 、 と 夕 里子 は 心 の 中 で 言った 。 しかし 、 口 に 出して は 、 とても 言え ない 。

「 戻ろう よ 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 うん 」

敦子 は 夕 里子 の 腕 に 腕 を からめた 。


三 姉妹 探偵 団 01 chapter 05 (1) みっ|しまい|たんてい|だん| Three Sisters Detective Agency 01 chapter 05 (1)

5  三 姉妹 の 受難 みっ|しまい||じゅなん 5 Sisters' Passion

珠美 は 、 教室 に 一 人 で 残って いた 。 たまみ||きょうしつ||ひと|じん||のこって| Shumi was left alone in the classroom.

別に 残さ れた わけで は ない 。 べつに|のこさ|||| It was not left separately. 自主 的に 残って いた のである 。 じしゅ|てきに|のこって|| It remained voluntarily. その 点 は 強調 して おく 必要 が ある だろう 。 |てん||きょうちょう|||ひつよう||| That point needs to be emphasized. 珠美 は その 要領 の 良 さ で 、 大して 勉強 は し ない が 、 そう 成績 は 悪く なかった から である 。 たまみ|||ようりょう||よ|||たいして|べんきょう||||||せいせき||わるく||| Shumi was good at the point, and although he did not study much, his grades were not so bad.

「── おい 、 佐々 本 、 まだ やって る の か 」 |ささ|ほん||||| "Hey, Sasamoto, are you still doing it?"

と 、 教室 の 戸 が 開いた 。 |きょうしつ||と||あいた And, the door of the classroom was opened.

「 あ 、 先生 」 |せんせい

安東 が 覗き に 来た のだった 。 あんどう||のぞき||きた| Andong came to the plow.

「 帰ら ん か 、 一緒に ? かえら|||いっしょに "Will you go home, together? 「 もう 少し 計算 して 行き ます 」 |すこし|けいさん||いき| "I will calculate a little more"

「 何 を やって いる んだ ? なん|||| "What are you doing? 「 いい んです 、 別に 」 ||べつに "Good, separate"

と 、 珠美 は 笑って ごまかした 。 |たまみ||わらって| And, Tamami laughed and cheated.

「 分 った 。 ぶん| あんまり 遅く なる な よ 」 |おそく||| Don't be so late.

安東 は 、 それ 以上 何も 言わ ず に 出て 行った 。 あんどう|||いじょう|なにも|いわ|||でて|おこなった Andong went out without saying anything more.

珠美 は 、 ノート を 眺めて 、 たまみ||のーと||ながめて Tamami looks at the notebook,

「 しめて …… 二万四千八十 円 か ……」 |にまんしせんはちじゅう|えん| "Tell me ... twenty-four thousand eighty yen ... ..."

と 呟いた 。 |つぶやいた 家計 簿 を つけて いる のである 。 かけい|ぼ|||| It keeps a household account book.

いつまでも 安東 の 家 に 厄介に はなれ ない 。 |あんどう||いえ||やっかいに|| You won't be bothered with Andong's house forever. それ は 珠美 に も 分 って いた 。 ||たまみ|||ぶん|| It was also known to Tamami. だから 、 安東 の 家 が 、 綾子 と 珠美 の 二 人 に いくら ぐらい 使って いる の か 、 大体 の ところ を つけて いる のである 。 |あんどう||いえ||あやこ||たまみ||ふた|じん||||つかって||||だいたい|||||| So, Ando's house is putting in place a lot about how much they use for both Reiko and Tamami.

食費 の 他 に 、 風呂 の ガス 代 、 水道 代 、 下着 の 替え を 買って くれた 分 など を 計算 する と 、 二万四千 円 余りに なる 。 しょくひ||た||ふろ||がす|だい|すいどう|だい|したぎ||かえ||かって||ぶん|||けいさん|||にまんしせん|えん|あまりに| If you calculate the gas cost of the bath, the water supply cost, and the amount you bought for changing underwear, besides the cost of food, it will cost more than ¥ 24,000.

これ じゃ 、 いくら 夫婦 共 稼ぎ った って 、 楽じゃ ない 。 |||ふうふ|とも|かせぎ|||らくじゃ| With this, it is not easy how much the couple earns a share. やはり 居候 は それなり の 貢献 を し なくて は なら ない 。 |いそうろう||||こうけん|||||| Again the occupation must make moderate contributions.

綾子 は 働き 始めて いる が 、 バイト で は 大した 金 に なら ない し 、 いつまで 続く かも 心もとない 。 あやこ||はたらき|はじめて|||ばいと|||たいした|きむ||||||つづく||こころもとない Reiko has begun to work, but with a byte it doesn't make much money, and I'm not sure how long it will last. あまり あて に し ない 方 が いい だろう 。 |||||かた||| It would be better not to rely too much.

と いって 、 夕 里子 は 高校 、 自分 は 中学 。 ||ゆう|さとご||こうこう|じぶん||ちゅうがく Yuuriko is a high school and I am a junior high school. アルバイト った って 、 たかが 知れて いる 。 あるばいと||||しれて| I know that I have a part-time job.

「 売春 で も やる か なあ ……」 ばいしゅん||||| "Can I do prostitution ..."

と 、 珠美 は 机 の 上 を 片付け ながら 呟いた 。 |たまみ||つくえ||うえ||かたづけ||つぶやいた And, Tamami went up while cleaning up on the desk.

教室 の 明り を 消して 、 珠美 は 廊下 へ 出た 。 きょうしつ||あかり||けして|たまみ||ろうか||でた After turning off the light of the classroom, Tamami went out to the corridor.

ロッカールーム へ 入る と 、 靴 を はき かえる 。 ||はいる||くつ||| When I enter the locker room, I change my shoes. ── どこ か で タバコ の 匂い が して いる 。 |||たばこ||におい||| -Somewhere there is a smell of tobacco.

隠れて 誰 か が 喫 った の か な 。 かくれて|だれ|||きっ|||| I wondered if someone hid and caught him. もったいない 。 I'm sorry. 今 は タバコ も 高い のに 。 いま||たばこ||たかい| Even though the cigarettes are expensive now.

鞄 を 手 に ロッカールーム を 出よう と する と 、 いきなり ドア が 開いて 、 珠美 は 中 へ 押し戻さ れた 。 かばん||て||||でよう|||||どあ||あいて|たまみ||なか||おしもどさ| When I tried to leave the locker room with my bag in hand, suddenly the door opened and Palm pushed back inside.

「 な 、 何 よ ……」 |なん| "What's that ..."

二 年生 だ 。 ふた|ねんせい| I am a second grader. それ も 年中 問題 を 起こして いる 三 人 組 だった 。 ||ねんじゅう|もんだい||おこして||みっ|じん|くみ| It was a trio who is causing trouble all the year round. 一 人 は くわえ タバコ で 、 髪 も 染めて いる 。 ひと|じん|||たばこ||かみ||そめて| One is a cigarette and the hair is dyed.

珠美 は 、 まずい 、 と 思った 。 たまみ||||おもった Tamami thought that it was bad.

「 ねえ 、 あんた 」 "Hey, you"

一 人 が ドア を 閉めて 、 より かかる 。 ひと|じん||どあ||しめて|| One person closes the door and takes more. 二 人 が ジリジリ と 近付いて 来た 。 ふた|じん||じりじり||ちかづいて|きた

「 何 です か ? なん|| 「 ちょっと 小遣い が いる の 。 |こづかい||| "I have a little money. 貸して よ 」 かして| Lend me "

「 お 金 なんて ……」 |きむ| "What money is ..."

「 持って ん の 、 知って んだ よ 。 もって|||しって|| "I know you have it. いつも 金 勘定 して る って いう じゃ ない 」 |きむ|かんじょう|||||| I do not mean that I always count money. "

「 私 、 別に ……」 わたくし|べつに "I, separately ..."

「 なめ ん じゃ ない よ ! な め|||| "I'm not licking! つき飛ばさ れて 、 珠美 は ひっくり返った 。 つきとばさ||たまみ||ひっくりかえった Tsukumi turned over and Tamami turned over. 小柄だ から 、 体力 で は とても 敵 わ ない 。 こがらだ||たいりょく||||てき|| Because he is small, he is not very good at physical strength.

「 おとなしく 金 出し な よ 」 |きむ|だし|| "Don't give me some money"

珠美 も 決して 勇敢で は ない 。 たまみ||けっして|ゆうかんで|| Tamami isn't brave either. 人並みに 、 殴ら れる の は 好きで ない し 、 こういう 手 合 を 相手 に 喧嘩 する 度胸 も ない 。 ひとなみに|なぐら||||すきで||||て|ごう||あいて||けんか||どきょう|| People do not like being scolded, and they do not have the courage to scold them for doing something like this.

しかし 、 珠美 は 無類の ケチ である 。 |たまみ||むるいの|| However, Tamami is an incomparable match. 鞄 の 中 に は 、 確かに 一万五千 円 ほど の 現金 が ある 。 かばん||なか|||たしかに|いちまんごせん|えん|||げんきん|| Certainly, there is about 15,000 yen of cash in the coffin. しかし 、 これ は 夕 里子 から 預かった 〈 資金 〉 な のだ 。 |||ゆう|さとご||あずかった|しきん|| However, this is the <fund> that I got from Yuuriko.

「 どう な の さ ? "What is it? 「 渡す もん です か ! わたす||| "Do you pass it! お 金 欲しきゃ 、 働き なさい よ ! |きむ|ほしきゃ|はたらき|| If you want the money, work! 珠美 は 、 両手 に しっかり と 鞄 を かかえ込んだ 。 たまみ||りょうて||||かばん||かかえこんだ Tamami firmly put a bag in his hands. ── 相手 は ちょっと 呆 気 に 取ら れた 。 あいて|||ぼけ|き||とら| -The other party was taken a little bit disgusting.

脅して やれば すぐ 渡す だろう と 思って いた のだ 。 おどして|||わたす|||おもって|| I thought that I would deliver immediately if I threatened.

「 この 野郎 ……」 |やろう "This guy ......"

珠美 は 、 お腹 を けら れて 、 体 を 縮めた 。 たまみ||おなか||||からだ||ちぢめた Suzumi was hungry and shrunk. 頭 を 踏ま れる 。 あたま||ふま| I will step on my head. 髪 の 毛 を 引 張ら れる 。 かみ||け||ひ|はら| Her hair is stretched. 顔 を 殴ら れる 。 かお||なぐら| I was scolded by my face. 痛 さ で 気 が 遠く なった 。 つう|||き||とおく| The pain made me feel far.

「 よこせ ! "Yokose! と 鞄 を もぎ取ら れ そうに なる と 、 ハッと して 、 |かばん||もぎとら||そう に|||はっと| When I was about to get rid of my spear,

「 や だ ! " no ! と 鞄 を 必死で 抱きしめた 。 |かばん||ひっしで|だきしめた I hugged and hugged my niece.

「 こいつ ……」

不良 グループ が 、 刃物 や チェーン を 持って い なかった の は 幸いであった 。 ふりょう|ぐるーぷ||はもの||ちぇーん||もって|||||さいわいであった It was fortunate that the bad group did not have a knife or chain. 珠美 に こう も 手 こ ずる と は 思って い なかった のだろう 。 たまみ||||て|||||おもって||| I probably didn't think that it was a trick to Shumi.

殴る 、 ける 、 が 続いて 、 珠美 は 目 の 前 が 真っ暗に なった 。 なぐる|||つづいて|たまみ||め||ぜん||まっくらに| Singing, falling, followed by, Tamami turned dark in front of her eyes. 口 の 端 が 切れて 血 が 流れる の が 分 った 。 くち||はし||きれて|ち||ながれる|||ぶん| I found that the end of my mouth was cut and blood was flowing.

死んじゃ う かも しれ ない 、 と 思った 。 しんじゃ||||||おもった I thought it might be dead. しかし 、 絶対 に 鞄 は やら ない 、 と 決心 して いた 。 |ぜったい||かばん|||||けっしん|| However, I was determined to never do bribes. お 金 の ため に 死ぬ なら 、 本望 であった 。 |きむ||||しぬ||ほんもう| It was a longing for you to die for your money.

「 おい 、 何 して る ! |なん|| "Hey, what are you doing! 男 の 声 が した 。 おとこ||こえ|| There was a man's voice. ありがたい !

「 逃げろ ! にげろ ドタドタッ と 足音 が 入り乱れて 、 それ から 静かに なった 。 ||あしおと||いりみだれて|||しずかに| My footsteps were mixed up and then I became quiet.

「── 大丈夫 かい ? だいじょうぶ| "か い Are you okay? 事務 室 に いる 男性 の 声 らしかった 。 じむ|しつ|||だんせい||こえ| There was a voice of a man in the office. らしかった 、 と いう の は 、 珠美 は 目 が かすんで 、 よく 見え なかった のである 。 |||||たまみ||め||||みえ|| It was easy to see, but the beauty of the ball was faint and did not look well.

しかし 、 鞄 だけ は しっかり と 抱きかかえて いた 。 |かばん|||||だきかかえて| However, only Shiori was holding it firmly.

死んじゃ おう 。 しんじゃ| I will die.

綾子 は 、 電車 の 中 で 、 ホーム で 、 帰り道 で 、 そう 考え つづけて いた 。 あやこ||でんしゃ||なか||ほーむ||かえりみち|||かんがえ|| Reiko had been thinking so on the way home, on the way home on the train.

昨日 の 好調 と は 打って変って 、 今日 は 最低の 一 日 であった 。 きのう||こうちょう|||うってかわって|きょう||さいていの|ひと|ひ| Yesterday's good news was different and today was the lowest day. 五 時 の チャイム まで が 、 まるで 一 年間 も ある ようだった 。 いつ|じ||ちゃいむ||||ひと|ねんかん||| It seemed that there were up to 5 o'clock chime for a year.

コピー の 機械 に やっと 慣れて 、 自信 満々 で 出社 した のに 、 今日 は 書類 の 整理 と 荷造り を やらさ れた 。 こぴー||きかい|||なれて|じしん|まんまん||しゅっしゃ|||きょう||しょるい||せいり||にづくり||| I finally got used to the copy machine and came to work with confidence, but today I was able to organize and pack the documents.

書類 と いって も 、 勤めた こと も なく 、 商業 高校 に も 行って い ない 綾子 に は 、 伝票 と メモ の 違い だって 見分け が つか ない のである 。 しょるい||||つとめた||||しょうぎょう|こうこう|||おこなって|||あやこ|||でんぴょう||めも||ちがい||みわけ|||| Even if it's a document, I've never been to work, and I'm not going to a commercial high school, but the difference between a slip and a memo is indistinguishable.

おまけに 、 As a bonus ,

「 歳入 、 歳出 別 に ね 」 さいにゅう|さいしゅつ|べつ|| "I'm looking forward to your income and expenditure."

なんて 言わ れた って 、 そもそも 「 サイニュウ 」「 サイシュツ 」 が 、 どういう 字 を 当てる の か 、 定かで ない 。 |いわ||||||||あざ||あてる|||さだかで| I wasn't sure what kind of character "Sinew" and "Saisutsu" would say in the first place.

「 入 」 と 「 出 」 か な 、 と 見当 は ついた のだ が 、 そこ を 、 はい||だ||||けんとう|||||| I thought that it was "entering" and "outing", but there,

「 どう やって 見分ける んです か 」 ||みわける|| "How do you distinguish?"

と 一言 訊 け ば いい の を 、 そう でき ない の が 気 の 弱 さ である 。 |いちげん|じん|||||||||||き||じゃく|| In short, the weak point of mind is that you can not do that.

「 じゃ 、 やっと いて ね 、 僕 は 忙しい から 」 ||||ぼく||いそがしい| "Well then, I'm busy, I'm busy."

と 、 その 男性 、 さっさと 綾子 を 置いて 行って しまう 。 ||だんせい||あやこ||おいて|おこなって| And, that man, I will put Ayako quickly.

困って しまった もの の 、 遊んで いる わけに も いか ず 、 ともかく 、「 出 」「 入 」 の 字 を 頼り に 、 書類 、 伝票 を 全部 分けて しまった 。 こまって||||あそんで|||||||だ|はい||あざ||たより||しょるい|でんぴょう||ぜんぶ|わけて| Although I was in trouble, I was not playing, and I divided all the documents and slips, relying on the letters “out” and “on”.

怒鳴ら れた 。 どなら| I yelled.

「 めちゃくちゃじゃ ない か ! "Aren't you crazy! もう いい ! enough ! 却って 何も やら ないで いて くれた 方 が ありがたい よ 、 全く ! かえって|なにも|||||かた||||まったく On the contrary it would be appreciated if you did not do anything, totally! 教えて くれ ない んだ もの 、 と 口 の 中 で 呟いて 、 すみません 、 と 頭 を 下げる 。 おしえて||||||くち||なか||つぶやいて|||あたま||さげる Peep in my mouth with something I can't tell, Excuse me, I lower my head.

もう これ で 十二分に 落ち込んだ のだ が 、 午後 から は 、 発送 業務 で 、 小包 に 紐 を かけ させ られた 。 |||じゅうにぶんに|おちこんだ|||ごご|||はっそう|ぎょうむ||こづつみ||ひも|||さ せ| It has fallen far enough now, but in the afternoon, I was forced to put a string on the package in the shipping business.

これ が また 苦手である 。 |||にがてである I am not good at this again. 大体 、 綾子 は 不器用な のだ 。 だいたい|あやこ||ぶきような| Generally, Reiko is clumsy. 靴 の 紐 を 結ぶ の だって 、 いい加減 何度 も くり返さ ない と でき ない 。 くつ||ひも||むすぶ|||いいかげん|なんど||くりかえさ|||| Even tying shoelaces can only be done repeatedly over and over again. だから 、 靴 も 絶対 に 紐 の ない もの を 選んで いた 。 |くつ||ぜったい||ひも|||||えらんで| So I chose shoes that had absolutely no strings.

その 綾子 に 、 荷造り しろ と いう のだ から 無理だ 。 |あやこ||にづくり||||||むりだ It is impossible for the dumplings to do packing. 担当 の 女性 が 、 たんとう||じょせい| The woman in charge is

「 ここ を こう 通して ね 、 ここ で キュッ と しめて 、 これ で いい の よ 」 |||とおして||||||||||| "Pass through here, close it here, and it 's fine."

と やって 見せて くれた とき は 、 あ 、 割と やさしい 、 と 思った のだ が 、 とんでもない 。 ||みせて|||||わりと|||おもった||| When I showed it, I thought it was kind, kind, but not terribly. やって みる と 、 紐 は もつれる 、 結び目 は 妙な 所 に できる 、 指 を 一緒に 縛っちゃ う 、 と いう 有様 。 |||ひも|||むすびめ||みょうな|しょ|||ゆび||いっしょに|しばっちゃ||||ありさま When you try it, the strings are tangled, the knots can be in strange places, the fingers should be tied together, and so on.

それ でも 二 時間 近く かかって 、 やっと 結び 方 を 憶 え 、 後 は 順調に 行った 。 ||ふた|じかん|ちかく|||むすび|かた||おく||あと||じゅんちょうに|おこなった But it took me almost two hours, and I finally remembered how to tie it, and then it went well.

四 時 半 に なって 席 へ 戻る と 、 さすが に ぐったり した が 、 まあ 午前 中 より は ましな 気分 であった 。 よっ|じ|はん|||せき||もどる||||||||ごぜん|なか||||きぶん| When I returned to my seat at 4:30 pm, I was really surprised, but I felt better than in the morning.

「 ご苦労さま 」 ごくろうさま "Your hardship"

と 、 お茶 も くれた し 、「 後 は 五 時 まで のんびり して なさい よ 」 |おちゃ||||あと||いつ|じ||||| And he gave me some tea, "Please relax until 5 o'clock"

と 言わ れて 、 やっと 笑顔 も 出た のだ が ……。 |いわ|||えがお||でた|| It was said that a smile finally came out ...

「 誰 だ おい ! だれ|| "Who are you! こんな 小包 を 造った 奴 は ! |こづつみ||つくった|やつ| Who made such a package! と 、 怒鳴り 声 が 、 事務 所 中 に 響き渡った 。 |どなり|こえ||じむ|しょ|なか||ひびきわたった And yelling resounded throughout the office. 口やかましい 、 と 聞いて いた 課長 さん である 。 くちやかましい||きいて||かちょう|| It was a section manager who heard that it was sensible.

「 ゆるゆる じゃ ない か 。 "Isn't it loose? 見ろ ! みろ 紐 を 持って 下げる と 、 確かに ゆる すぎて 外れ そうな のだ 。 ひも||もって|さげる||たしかに|||はずれ|そう な| If you pull it with a string, it's certainly too loose and it's likely to come off. 「 こんなんで 、 向 う へ 着く と 思って る の か ! |むかい|||つく||おもって||| "Do you think that it will arrive at this? 誰 だ 、 やった 奴 は ! だれ|||やつ| Who are you guys! 綾子 は 、 顔 から 血の気 が ひく の が 分 った 。 あやこ||かお||ちのけ|||||ぶん| Reiko found that her face was bloody.

そろそろ と 立ち上る と 、 ||たちのぼる|

「 私 です 」 わたくし|

と 、 消え 入り そうな 声 で 言った 。 |きえ|はいり|そう な|こえ||いった Said in a voice that seemed to disappear.

「 何 だ 、 バイト か ? なん||ばいと| "What, a byte? 「 はい 」

「 今 の 学生 は 何 を 習って る んだ ? いま||がくせい||なん||ならって|| "What do current students learn? 紐 一 つ 満足 に 結べ ん の か 」 ひも|ひと||まんぞく||むすべ||| Can I get one string satisfied?

「 すみません ……」

「 男 の 引っかけ 方 ばっかり 勉強 し とる んだろう 」 おとこ||ひっかけ|かた||べんきょう||| "How will a man get hooked on studying?"

事務 所 中 が 一斉に 笑った 。 じむ|しょ|なか||いっせいに|わらった The entire office smiled at once. ── 綾子 は 、 自分 が 世界 一 惨めな 人間 に 思えた 。 あやこ||じぶん||せかい|ひと|みじめな|にんげん||おもえた 綾 Reiko seemed to be the miserable person in the world.

帰り道 、 ずっと 綾子 は そう 考えて いた 。 かえりみち||あやこ|||かんがえて| On the way back, Yuko had always been thinking so.

世の中 は 、 自分 に 合う ように できて い ない 。 よのなか||じぶん||あう|||| The world is not made to suit me. ── そうだ 。 そう だ みんな が 私 を からかって 、 馬鹿に して 面白がって る んだ 。 ||わたくし|||ばかに||おもしろがって|| Everybody is fun and funny for making fun of me.

もう 、 会社 に 顔 を 出せ や し ない 。 |かいしゃ||かお||だせ||| I will no longer show off at the company.

あんな 恥ずかしい 思い を して 。 |はずかしい|おもい|| I feel so embarrassing. ── もう 何もかも 終り なんだ 。 |なにもかも|おわり| も う Everything is over.

安東 の 家 へ 帰りつく と 、 張りつめて いた もの が 一挙に 崩れて 、 綾子 は 奥 の 六 畳 間 に 駆け込む と 、 ワーッ と 泣き出して しまった 。 あんどう||いえ||かえりつく||はりつめて||||いっきょに|くずれて|あやこ||おく||むっ|たたみ|あいだ||かけこむ||||なきだして| When I returned to the Andong's house, the things that were tense collapsed at once, and when I ran into the back of the six tatami mats, I burst into tears.

綾子 に 得意な こと が ある と する と 、 それ は 泣く こと である 。 あやこ||とくいな|||||||||なく|| If you have something good at Keiko, it is to cry. 何しろ 泣き虫 な のだ 。 なにしろ|なきむし|| What a crybaby?

一旦 泣き出したら 、 一 時間 は 止まら ない 。 いったん|なきだしたら|ひと|じかん||とまら| Once we start crying, we can not stop for an hour. 夕 里子 など 、 からかって 、 ゆう|さとご|| Yu Riko and others, Teasing,

「 お 姉さん 、 砂漠 で さまよって も 、 助かる よ 、 水分 の 貯 え が 多い から 」 |ねえさん|さばく||||たすかる||すいぶん||ちょ|||おおい| "My sister, wandering in the desert will save me a lot of water storage"

など と 言って いる 。 ||いって| It is said that.

薄暗く なった 部屋 で 、 一 人 泣き 続けて いる と 、 襖 が 開いた 。 うすぐらく||へや||ひと|じん|なき|つづけて|||ふすま||あいた In the dimmed room, as I kept crying alone, the rose opened.

「── おい 、 どうした ? "-Hey, what happened? 安東 だった 。 あんどう| It was Andong.

「 先生 ……」 せんせい

綾子 は 泣く の を やめよう と 思った が 、 水道 の 蛇口 と 違って 、 止め られ ない のである 。 あやこ||なく|||||おもった||すいどう||じゃぐち||ちがって|とどめ||| Reiko wanted to stop crying, but unlike the tap of the water supply, he could not stop it.

「 どうした ? 何 か あった の か ? なん|||| Did something happen ? 安東 は わき に 座る と 、 綾子 の 肩 を 抱いて やった 。 あんどう||||すわる||あやこ||かた||いだいて| When Ando sat aside, he held the palm of his hand.

その 優し さ が 、 また 涙腺 を 刺激 した 。 |やさし||||るいせん||しげき| The kindness also stimulated the lacrimal gland.

「 私 …… 私 ……」 わたくし|わたくし

もう 言葉 に なら ない 。 |ことば||| It is not a word anymore. 綾子 は 安東 の 胸 に 身 を 投げかけて 、 また ひとしきり 泣き出した 。 あやこ||あんどう||むね||み||なげかけて|||なきだした Reiko threw herself against Ando's chest and she burst into tears again.

「 元気 出せ 。 げんき|だせ "Get well. ── おい 、 しっかり しろ よ 」 お い Hey, stay strong. "

安東 が 綾子 の 頭 を 撫で ながら 言った 。 あんどう||あやこ||あたま||なで||いった Andong said, bashing Yuko's head.

「 すみません ……」

たっぷり 十 分 以上 、 泣いて から 、 綾子 は 顔 を 上げた 。 |じゅう|ぶん|いじょう|ないて||あやこ||かお||あげた After crying for more than enough, Reiko raised his face.

「 悲しく って …… 私 …… だめな んです 。 かなしく||わたくし|| "It's sad ...... I ...... I'm sorry. 何 やって も …… 笑われる んです 」 なん|||えみわれる| No matter what you do ... you can laugh.

「 そんな こと が ある もん か 。 "There is such a thing. 気 に する んじゃ ない 」 き|||| I don't care.

「 本当な んです ……。 ほんとうな| 私 の こと 、 みんな が 馬鹿に して 、 笑いもの に する んです ……」 わたくし|||||ばかに||わらいもの||| Everyone makes me a fool and makes me laugh ...... "

「 俺 は し ない ぞ 」 おれ|||| "I will not do it"

と 安東 は 言った 。 |あんどう||いった

綾子 は 顔 を 上げた 。 あやこ||かお||あげた Reiko raised her face.

次の 瞬間 、 安東 の 力強い 腕 が 綾子 を 抱き 寄せて 、 綾子 は 唇 に 安東 の 唇 を 受け止めて いた 。 つぎの|しゅんかん|あんどう||ちからづよい|うで||あやこ||いだき|よせて|あやこ||くちびる||あんどう||くちびる||うけとめて| The next moment, Ando's powerful arm held her in, and Reiko received Ando's lip on her lip. 全身 が 燃える ように 熱く なった 。 ぜんしん||もえる||あつく| My whole body got hot to burn. ── 綾子 は 夢中で 安東 の 背 に 腕 を 回して いた 。 あやこ||むちゅうで|あんどう||せ||うで||まわして| 綾 Yuko was crazy and turned his arms to Ando's back.

「 ただいま 」 " I'm home "

夕 里子 は 、 片瀬 家 の 玄関 を 上った 。 ゆう|さとご||かたせ|いえ||げんかん||のぼった Yuuriko climbed the front door of the Katase family.

家 の 中 は 、 いやに 静かである 。 いえ||なか|||しずかである The inside of the house is so quiet. ── 誰 も い ない の か な 。 だれ|||||| 誰 Is there no one?

それ に して は 玄関 の 鍵 が 開いて いた が 。 ||||げんかん||かぎ||あいて|| For that, the front door key was open.

「 ただいま 」 " I'm home "

居間 の ドア を 開けて 、 夕 里子 は 立ちすくんだ 。 いま||どあ||あけて|ゆう|さとご||たちすくんだ Yuuriko stood up, opening the door of her living room.

まるで 、 静止 した 画像 の ように 、 敦子 と 、 父親 、 母親 が 離れ離れに 座って 、 黙り 込んで いた 。 |せいし||がぞう|||あつこ||ちちおや|ははおや||はなればなれに|すわって|だまり|こんで| As if it were a still image, Reiko, her father, and her mother sat away and shut up.

和やかな ムード で は ない 。 なごやかな|むーど||| It is not a peaceful mood. 重苦しくて 、 その 場 へ 入った とたん に 息苦しく なる 感じ だった 。 おもくるしくて||じょう||はいった|||いきぐるしく||かんじ| It was heavy and I felt as if I was in my place, I felt as if I was stuffy. ── いて は いけない 、 と 思って 、 夕 里子 は 居間 を 出た 。 ||||おもって|ゆう|さとご||いま||でた 夕 Yuko Riko left the living room, thinking it should not be.

すぐに 、 敦子 が 追いかけて 出て 来た 。 |あつこ||おいかけて|でて|きた Soon, Reiko came out and chased.

「 夕 里子 、 外 に 行こう 」 ゆう|さとご|がい||いこう "Yuuriko, let 's go outside"

敦子 が 、 涙ぐんで いる 。 あつこ||なみだぐんで| Reiko has tears.

「 うん 」

二 人 は 玄関 から 表 へ 出て 、 暗く なり かけた 道 を しばらく 歩いた 。 ふた|じん||げんかん||ひょう||でて|くらく|||どう|||あるいた The two went out from the front door and walked for a while on the darkened road.

「 靴 、 どうした の ? くつ|| "What about your shoes? と 、 敦子 が 訊 いた 。 |あつこ||じん|

「 え ? ああ 、 あの 編 上 靴 、 かかと が こわれちゃ った の 。 ||へん|うえ|くつ||||| Oh, that knitted shoes, heel broke down. ごめん ね 」

「 いい の よ 。 それ 、 買った の ? |かった| Did you buy it? 「 うん 、 知って る 人 に 買って もらった 」 |しって||じん||かって| "Yeah, I got it from someone I knew."

また 、 二 人 は 黙り 込んだ 。 |ふた|じん||だまり|こんだ Also, they shut up.

国友 と 二 人 で 水口 淳子 の 家 へ 行って みた のだ が 、 留守 で 、 会う こと は でき なかった 。 くにとも||ふた|じん||みずぐち|あつこ||いえ||おこなって||||るす||あう|||| I tried to go to Mizuguchi Reiko's house with my friend, but when I was away I couldn't meet. また 明日 、 出直そう と いう こと に なった のだ が ……。 |あした|でなおそう||||||| I was told that I would go out again tomorrow ...

「 ママ が ね 、 浮気 して た んだ 」 まま|||うわき||| "My mom was cheating on me,"

と 、 敦子 が 言った 。 |あつこ||いった 「 それ が ばれた の 」 "It has been broken"

夕 里子 は 息 を 呑 んだ 。 ゆう|さとご||いき||どん| Yuuriko breathed her breath. ── 忘れて いた ! わすれて| 忘 れ I forgot! あの 電話 だ ! |でんわ| 二 時 に 。 ふた|じ| この前 の ホテル 。 この まえ||ほてる 来 なければ 旦那 に ばらす ……。 らい||だんな|| If it does not come, I will give it to my husband ....

「 相手 が 誰 な の か 、 って パパ が 訊 いて も ね 、 ママ 、 言わ ない の 。 あいて||だれ|||||ぱぱ||じん||||まま|いわ|| "Even if Dad asks" who 's the other party, Mom, don't say that. で 、 あんな 風 な の よ 。 ||かぜ||| Well, that's the wind. もう 一 時間 も 」 |ひと|じかん| One more hour

「 どうして …… 分 った の ? |ぶん|| "Why ... did you understand? 「 パパ の 会社 に 電話 が かかった らしい わ 。 ぱぱ||かいしゃ||でんわ|||| "I heard that the dad's company was called. そして 、 あんた の 奥さん と 浮気 して いた 、 って ……。 |||おくさん||うわき||| And I was flinging with your wife ... ....

ママ の 体 の こと 、 あれこれ 細かく しゃべった んだ って 。 まま||からだ||||こまかく||| I talked about my mother's body in detail. だから ママ も 言い逃れ でき なくて 」 |まま||いいのがれ|| So I can't even let my mom say that

夕 里子 は 、 言葉 が なかった 。 ゆう|さとご||ことば|| Yuuriko had no words. ── 自分 の せい だ 。 じぶん||| -It is your fault. あの とき 、 ちゃんと 敦子 の 母 に 伝えて おけば ……。 |||あつこ||はは||つたえて| At that time, if you tell the mother of Junko properly ....

「 ママ だって 、 うまく やりゃ 良かった の よ 。 まま||||よかった|| "Even my mom would have been good. ねえ ? 敦子 は 捨て鉢 な 調子 で 言った 。 あつこ||すてばち||ちょうし||いった Reiko said at a pitching pace.

「 そんな 言い 方 、 気の毒 よ 」 |いい|かた|きのどく| "Such a way, sorry!"

「 もう いやだ わ 、 家 へ 帰り たく ない ! |||いえ||かえり|| "I don't want to go home anymore! 敦子 は 、 唇 を かみしめた 。 あつこ||くちびる|| Reiko bites her lips. 涙 が 頰 に 伝い 落ちた 。 なみだ||||つたい|おちた The tears fell to my eyelid. 夕 里子 は 、 自分 を 呪って やり たかった 。 ゆう|さとご||じぶん||のろって|| Yuriko wanted to curse herself.

「 でも ── どうして お 母さん 、 男 の 名前 を 言わ ない の ? |||かあさん|おとこ||なまえ||いわ|| "But ど う why are you not saying my mother 's name? 「 分 ら ない って 言う の 。 ぶん||||いう| "I don't know. 何だか 、 怪しい 電話 の 誘い に 乗って ホテル へ 行ったら 、 部屋 は 真っ暗で 、 いきなり 抱きしめ られて ……。 なんだか|あやしい|でんわ||さそい||のって|ほてる||おこなったら|へや||まっくらで||だきしめ| Anyway, when I went to the hotel with a suspicious telephone invitation, the room was dark and I was suddenly embraced .... 気 が 付いたら 、 男 の 方 は もう い なく なって たって 」 き||ついたら|おとこ||かた|||||| If you notice it, the man is gone already. "

「 そんな こと って ある の かしら ? "Do you think there is such a thing? 「 分 んな いわ よ ! ぶん||| "I know it! 敦子 は 叫ぶ ように 言って 、 それ から 、 息 を 吐き出した 。 あつこ||さけぶ||いって|||いき||はきだした Reiko told him to shout and then exhaled. 「── ごめん ね 、 夕 里子 の せい じゃ ない のに 」 ||ゆう|さとご||||| "-I'm sorry, it's not because of Yuuriko."

私 の せい よ 、 と 夕 里子 は 心 の 中 で 言った 。 わたくし|||||ゆう|さとご||こころ||なか||いった My fault, Yuuriko said in her mind. しかし 、 口 に 出して は 、 とても 言え ない 。 |くち||だして|||いえ| However, it can not be said very much in the mouth.

「 戻ろう よ 」 もどろう| "Let's go back"

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった Said Yuuriko.

「 うん 」

敦子 は 夕 里子 の 腕 に 腕 を からめた 。 あつこ||ゆう|さとご||うで||うで|| Reiko entangled his arms in Yuuriko's arms.