×

Używamy ciasteczek, aby ulepszyć LingQ. Odwiedzając stronę wyrażasz zgodę na nasze polityka Cookie.


image

銀河英雄伝説 01黎明篇, 第一章 永遠の夜のなかで (2)

第 一 章 永遠の 夜 の なか で (2)

全体 を 合 すれば 敵 が 優勢であって も 、 敵 の 一 軍 にたいした とき に は 、 わが 軍 が 優勢だ 」 「…………」

「 ふた つ 、 戦場 から つぎの 戦場 へ 移動 する に 際して は 、 中央 に 位置 する わ が 軍 の ほう が 近 路 を とる こと が できる 。 敵 が わが 軍 と 闘わ ず して 他の 戦場 へ 赴く に は 、 大きく 迂回 しなければ なら ない 。 これ は 時間 と 距離 の 双方 を 味方 と した こと に なる 」

「…………」

「 つまり 、 わが 軍 は 敵 にたいし 、 兵力 の 集中 と 機動 性 の 両 点 に おいて 優位に たって いる 。 これ を 勝利 の 条件 と 言わ ず して なんと 呼ぶ か ! 」 鋭く 切りこむ ような 語調 で ラインハルト が 言い 終えた とき 、 五 人 の 提督 は 一瞬 、 その場で 結晶 化 した ように キルヒアイス に は 思わ れた 。 ラインハルト は 彼 より 豊富な 戦 歴 を 有する 年長の 軍人 たち に 、 極端な まで の 発想 の 転換 を しいた のだ 。

呆然と 立ちつくす シュターデン 中将 の 顔 に 皮肉な 視線 を 射 こみ ながら 、 ラインハルト は おいうち を かけた 。

「 吾々 は 包囲 の 危機 に ある ので は ない 。 敵 を 各 個 撃破 する の 好機 に ある のだ 。 この 好機 を 生かす こと なく むなしく 撤退 せよ と 卿 は 言う が 、 それ は 、 消極 を すぎて 罪悪 で すら ある 。 なぜなら 吾々 に かせ られた 任務 は 、 叛乱 軍 と 戦って これ を 撃 滅 する こと に ある から だ 。 名誉 ある 撤退 と 卿 は 言った 。 皇帝 陛下 より 命ぜ られた 任務 を はたさ ず して なんの 名誉 か ! 臆病 者 の 自己 弁護 に 類する もの と 卿 は 思わ ぬ の か ? 」 皇帝 の 二 字 が でる と 、 ファーレンハイト を のぞいた 四 提督 の 身体 に 緊張 の 小 波 が はしる 。 それ が ラインハルト に は ばかばかしい 。

「 しかし 、 総 司令 官 閣下 は そう おっしゃる が ……」

あえぐ ように シュターデン は 抗弁 を 試みた 。

「 好機 と 言って も 、 閣下 お ひと り が そう 信じて おら れる だけ の こと 。 用 兵 学 の 常識 から みて も 承服 し かねます 。 実績 を しめして いただか ない こと に は ……」

こいつ は 無能な だけ で なく 低 能 だ 、 と ラインハルト は 断定 した 。 前例 の ない 作戦 に 実績 の ある はず が ない 。 実績 は これ から の 戦闘 で しめさ れる ので は ない か 。

「 翌日 に は 卿 は その 目 で 実績 を 確認 する こと に なる だろう 。 それでは 納得 でき ない か 」

「 成算 が お あり です か ? 」 「 ある 。 ただし 卿 ら が 私 の 作戦 に 忠実に したがって くれれば の 話 だ 」

「 どのような 作戦 です ? 」 猜疑 の 念 も 露骨に シュターデン が 問う 。 ラインハルト は 一瞬 キルヒアイス の 顔 を 見 やる と 、 作戦 の 説明 を はじめた 。

…… 二 分 後 、 遮音 力 場 の 内部 に 、 シュターデン の 叫び が みちた 。

「 机上 の 空論 だ 。 うまく いく はず が ありません ぞ 、 閣下 、 このような ……」 ラインハルト は 掌 を 指揮 卓 に 勢い よく たたきつけた 。

「 もう いい ! このうえ 、 議論 は 不要だ 。 皇帝 陛下 は 私 に 叛乱 軍 征 討 司令 官 たれ と 仰せ られた 。 卿 ら は 私 の 指揮 に したがう こと を 陛下 へ の 忠誠 の 証明 と せ ねば なら ぬ はずだ 。 それ が 帝国 軍人 の 責務 で は ない か 。 忘れる な 、 私 が 卿 ら の 上位 に ある と いう こと を 」

「…………」

「 卿 ら にたいする 生殺 与奪 の 全権 は 、 わが 手中 に ある 。 みずから のぞんで 陛下 の 御 意 に 背き たてまつろう と いう のであれば 、 それ も よし 。 陛下 に たまわった わ が 職権 を もって 、 卿 ら の 任 を 解き 、 抗 命 者 と して 厳罰 に 処する まで の こと 。 そこ まで の 覚悟 が 卿 ら に は ある の か 」

ラインハルト は 目前 の 五 人 を 見すえた 。 返答 は なかった 。

Ⅱ 五 人 の 提督 は 去った 。 納得 も 承服 も し ない が 、 皇帝 の 威 に は 逆らい がたい と いう 態 であった 。 ただ 、 ファーレンハイト ひと り は ラインハルト の 作戦 構想 に 好意 的な 表情 を しめした ように も 思わ れる が 、 ほか の 四 人 の 表情 は 、 程度 の 差 こそ あれ 、〝 皇帝 の 威 を 借 る 孺子 め が 〟 と 語って いた 。

キルヒアイス に とって は 、 いささか 黙視 し がたい 状況 が 生じて いる 。 それ で なくて さえ 、 ラインハルト は 若 すぎる なり あがり 者 と して 評判 が よく ない のだ 。 老練 の 諸 将 から みれば 、 ラインハルト は 姉 アンネローゼ を 介して 皇帝 の 威光 を 借りる だけ で みずから は 光 を 発する こと の ない 貧弱な 小 惑星 である に すぎ なかった 。

ラインハルト は 今回 が 初陣 と いう わけで は ない 。 軍 籍 に は いって 五 年 、 すでに いく つ か の 軍 功 を たてて いる 。 しかし それ も 諸 将 に 言わ せる と 、 運 が よかった と か 、 敵 が 弱 すぎた と いう こと に なる のだった 。 また ラインハルト が 万事 、 腰 が 低い と は 称し がたい こと から 、 彼 にたいする 悪 感情 は 増幅 し 、 現在 で は 〝 生意気な 金髪 の 孺子 〟 なる 呼称 が 蔭 で 定着 して いる ほど な のである 。 「 よろしい のです か ? 」 青い 目 に 懸念 の 表情 を 浮かべて 、 赤毛 の 若者 は ラインハルト に ただした 。 「 放っておけ 」

上官 の ほう は 平然と して いた 。

「 奴 ら に なに が できる もの か 。 いやみ ひと つ 言う に も 、 ひと り で は なく 幾 人 か で つるんで しか 来 られ ない ような 腰ぬけ ども だ 。 皇帝 の 権威 に 逆らう ような 勇気 など あり は せ ぬ 」

「 ですが 、 それだけに 陰に こもる かも しれません 」 ラインハルト は 副 官 を 見て 、 低い 楽し そうな 笑い声 を たてた 。

「 お前 は あいかわらず 心配 性 だ な 。 気 に する こと は ない 。 いま は 不平 たら たら でも 、 一 日 たてば 様相 が 変わる 。 シュターデン の 低 能 に 、 奴 の 好きな 実績 と やら を 額縁 つき で 見せて やる さ 」

もう その 話 は やめよう 、 と 言って ラインハルト は 席 から たちあがり 、 司令 官 室 で 休息 しよう と 誘った 。

「 一杯 飲ま ない か 、 キルヒアイス 、 いい 葡萄 酒 が ある んだ 。 四一〇 年 もの の 逸品 だ そうだ 」

「 けっこうです ね 」

「 では 行こう か 、 ところで 、 キルヒアイス ……」

「 はい 、 閣下 」

「 その 閣下 だ 。 ほか に 人 が いない とき は 閣下 呼ばわり する 必要 は ない 。 以前 から 言って いる だろう 」

「 わかって は いる のです が ……」

「 わかって いる の なら 実行 しろ 。 この 会戦 が 終わって 帝国 首都 に 帰還 したら 、 お前 自身 が 閣下 に なる のだ から 」

「…………」

「 准将 に 昇進 だ 。 楽しみに して おく んだ な 」

艦長 ロイシュナー 大佐 に あと を まかせて 、 ラインハルト は 個室 へ と 歩き だした 。 その あと に したがい ながら 、 キルヒアイス は 上官 の 発言 を 脳裏 で 反芻 した 。

会戦 が 終わって 帰還 したら 准将 …… 金髪 の 若い 提督 は 、 敗北 する こと など 考えて も いない らしい 。 キルヒアイス 以外 の 者 であれば 、 それ を ど し がたい 高慢 と うけとる に 相違 なかった 。 だが ラインハルト が 、 親友 にたいする 好意 から 言った のだ と いう こと を 、 キルヒアイス は 知っている 。 この 人 に 会って から 、 もう 一〇 年 に なる の か …… キルヒアイス は ふと そう 思った 。 ラインハルト と その 姉 アンネローゼ に 出会って 、 彼 の 運命 は 変わった のだ 。

ジークフリード ・ キルヒアイス の 父親 は 司法 省 に 勤める 下級 官吏 だった 。 四万 帝国 マルク ほど の 年俸 を 稼ぐ ため に 上司 と 書類 と コンピューター に おいまわさ れる 毎日 で 、 広く も ない 庭 で バルドル 星 系 産 の なんとか いう 蘭 の 一種 を 育てる こと と 、 食後 の 黒 ビール だけ を 楽しみ と する 、 平凡で 善良な 男 だった 。 幼い 赤毛 の 息子 の ほう は 、 学校 で は 優等 生 グループ の 端に なんとか ぶらさがり 、 スポーツ は 万能 で 、 両親 の 自慢 だった 。

ある 日 、 廃屋 も 同然の 隣家 に 、 貧し げ な 父子 が うつり 住んで きた 。

無気力 そうな 中年 男 が 貴族 だ と 聞いて 、 キルヒアイス 少年 は 驚いた が 、 金髪 の 姉弟 を 見て 信じる 気 に なった 。 姉弟 と も なんと 綺麗な んだろう と 少年 は 思った のだ 。

弟 の ほう と は 即日 、 知合い に なった 。 ラインハルト なる 少年 は 、 キルヒアイス と 同年 で 、 標準 暦 で 二 カ月 だけ キルヒアイス より 遅く 生まれた と いう こと だった 。 赤毛 の 少年 が 名のる と 、 金髪 の 少年 は かたち の いい 眉 を き ゅっと 吊 り あげて 言った 。 「 ジークフリード なんて 、 俗な 名 だ 」

思い も かけ ない こと を 言われて 、 赤毛 の 少年 は びっくり し 、 返答 に こまった 。 すると ラインハルト は つづけて こう 言った 。

「 でも キルヒアイスって 姓 は いい な 。 とても 詩的だ 。 だから ぼく は きみ の こと 、 姓 で 呼ぶ こと に する 」

いっぽう 、 姉 の アンネローゼ の ほう は 、 彼 の 名 を 短縮 して 〝 ジーク 〟 と 呼んだ 。 顔 の 造作 は 弟 に 酷似 して いた が 、 いちだん と 繊細で 、 け ぶる ような 微笑 が かぎりなく 優しかった 。 ラインハルト に 紹介 されて 対面 した とき 、 彼女 は 木 洩 れ 陽 が さしこむ ような 表情 を 赤毛 の 少年 に むけた 。 「 ジーク 、 弟 と 仲よく して やって ね 」

それ から 今日 まで キルヒアイス は 彼女 の 依頼 を 忠実に まもって きた 。

さまざまな こと が あった 。 見た こと も ない 豪 奢 な 地上 車 が 隣家 の 前 に 駐 まり 、 高級な 服 を 着た 中年 の 男 が おりて きた 。 負けず嫌いの ラインハルト が 、 泣き ながら 父親 を 詰る 声 が 一晩 中 、 絶え なかった 。

「 父さん は 姉さん を 売った んだ 」

翌朝 、 ラインハルト を 学校 に 誘う と いう 口実 で 隣家 を 訪れた キルヒアイス に 、 優しく 、 だが 寂し げ に 微笑 して アンネローゼ が 言った 。

「 弟 は もう 、 あなた と おなじ 学校 へ 行け ない の 。 短い 期間 だった けど 、 ありがとう 」

美しい 少女 は 彼 の 額 に 接吻 して 、 手作り の チョコレート ・ ケーキ を くれた 。

その 日 、 赤毛 の 少年 は 学校 へ 行か ず 、 ケーキ を だいじに かかえて 自然 公園 に 行き 、 パトロール ・ ロボット に 発見 さ れ ない よう 用心 し ながら 、 誰 も 知ら ない 理由 で 火星 松 と 呼ば れる 針葉樹 の 蔭 で 、 長い 時間 を かけて ケーキ を 食べた 。 姉弟 に 別れる 哀し さ で 涙 が こぼれ 、 それ を 手 で 拭いた ため 、 幼い 顔 に は 焦 茶色 の 縞 が できた 。

暗く なって 、 叱責 を 覚悟 で 帰宅 した が 、 両親 は なにも 言わ なかった 。 隣家 の 灯 は 消えて いた 。

一 カ月 後 、 帝国 軍 幼年 学校 の 制服 を 着た ラインハルト が 予告 も なく 訪れて きた 。 驚 喜 する キルヒアイス に 、 金髪 の 少年 は おとなびた 口調 で 言った 。

「 軍人 に なる んだ 。 はやく 一人前 に なれる から ね 。 出世 して 姉さん を 解放 して あげ なきゃ 。 ねえ 、 キルヒアイス 、 ぜひ ぼく と おなじ 学校 へ おいで よ 。 幼年 学校 に いる の は いやな 奴 ら ばかり な んだ 」

…… 両親 は 反対 し なかった 。 息子 の 出世 を のぞんだ の かも しれ ない し 、 息子 を 隣家 の 姉弟 に 奪わ れた と 悟った の かも しれ ない 。 ともあれ 、 キルヒアイス は ラインハルト と おなじ 道 を 歩む べく 、 少年 の 日 に 決断 を くだした のだった 。

幼年 学校 の 生徒 は 大半 が 貴族 の 子弟 で 、 ほか は 上流 市民 の 息子 ばかり だった 。 キルヒアイス が 入学 を 許さ れた の は 、 ラインハルト の 熱望 と アンネローゼ の 労 に よる もの だ と いう こと は 明白だった 。

ラインハルト の 成績 は つねに 首席 であり 、 キルヒアイス も 上位 を 確保 して いた 。 自分 自身 の ため に も 姉弟 の ため に も 、 悪い 成績 は とれ なかった 。

ときおり 、 生徒 の 父兄 たち が 学校 を 訪れた 。 身分 の 高い 貴族 。 しかし 彼ら に 敬意 を いだく 気 に は なれ なかった 。 特権 に 驕 る 者 の 腐 臭 だけ が 鼻 に ついた 。

「 あいつ ら を 見ろ よ 、 キルヒアイス 」

そのような 貴族 たち を 見る たび に 、 ラインハルト は 激しい 嫌悪 と 侮 蔑 を こめて ささやく のだった 。

「 あいつ ら は 今日 の 地位 を 自分 自身 の 努力 で 獲得 した のじゃ ない …… 権力 と 財産 を 、 ただ 血 が つながって いる と いう だけ で 親 から 相続 して 、 それ を 恥じらい も し ない 恥知らず ども だ 。


第 一 章 永遠の 夜 の なか で (2) だい|ひと|しょう|えいえんの|よ||| Chapter 1 In the Eternal Night (2)

全体 を 合 すれば 敵 が 優勢であって も 、 敵 の 一 軍 にたいした とき に は 、 わが 軍 が 優勢だ 」 ぜんたい||ごう||てき||ゆうせいであって||てき||ひと|ぐん||||||ぐん||ゆうせいだ All in all, even if the enemy is superior, when it is against one of the enemy's armies, our army is superior.'' 「…………」

「 ふた つ 、 戦場 から つぎの 戦場 へ 移動 する に 際して は 、 中央 に 位置 する わ が 軍 の ほう が 近 路 を とる こと が できる 。 ||せんじょう|||せんじょう||いどう|||さいして||ちゅうおう||いち||||ぐん||||ちか|じ||||| “Two, when moving from one battlefield to the next, our centrally located army can take a closer route. 敵 が わが 軍 と 闘わ ず して 他の 戦場 へ 赴く に は 、 大きく 迂回 しなければ なら ない 。 てき|||ぐん||たたかわ|||たの|せんじょう||おもむく|||おおきく|うかい||| In order for the enemy to go to another battlefield without fighting our army, we must make a major detour. これ は 時間 と 距離 の 双方 を 味方 と した こと に なる 」 ||じかん||きょり||そうほう||みかた||||| This means that both time and distance are on the side. "

「…………」

「 つまり 、 わが 軍 は 敵 にたいし 、 兵力 の 集中 と 機動 性 の 両 点 に おいて 優位に たって いる 。 ||ぐん||てき||へいりょく||しゅうちゅう||きどう|せい||りょう|てん|||ゆういに|| "In other words, our army has an advantage over its enemies in terms of both concentration and mobility. これ を 勝利 の 条件 と 言わ ず して なんと 呼ぶ か ! ||しょうり||じょうけん||いわ||||よぶ| What do you call this without calling it a condition of victory! 」 鋭く 切りこむ ような 語調 で ラインハルト が 言い 終えた とき 、 五 人 の 提督 は 一瞬 、 その場で 結晶 化 した ように キルヒアイス に は 思わ れた 。 するどく|きりこむ||ごちょう||||いい|おえた||いつ|じん||ていとく||いっしゅん|そのばで|けっしょう|か||よう に||||おもわ| ラインハルト は 彼 より 豊富な 戦 歴 を 有する 年長の 軍人 たち に 、 極端な まで の 発想 の 転換 を しいた のだ 。 ||かれ||ほうふな|いくさ|れき||ゆうする|ねんちょうの|ぐんじん|||きょくたんな|||はっそう||てんかん||| Reinhardt made an extreme shift in thinking to older military personnel who had more experience than him.

呆然と 立ちつくす シュターデン 中将 の 顔 に 皮肉な 視線 を 射 こみ ながら 、 ラインハルト は おいうち を かけた 。 ぼうぜんと|たちつくす||ちゅうじょう||かお||ひにくな|しせん||い||||||| Reinhardt struck a sword, with a sarcastic gaze on the face of Vice Admiral Staden, who stood stunned.

「 吾々 は 包囲 の 危機 に ある ので は ない 。 われ々||ほうい||きき||||| "We are not in danger of siege. 敵 を 各 個 撃破 する の 好機 に ある のだ 。 てき||かく|こ|げきは|||こうき||| It's an opportunity to destroy each enemy individually. この 好機 を 生かす こと なく むなしく 撤退 せよ と 卿 は 言う が 、 それ は 、 消極 を すぎて 罪悪 で すら ある 。 |こうき||いかす||||てったい|||きょう||いう||||しょうきょく|||ざいあく||| Sir says to withdraw vainly without taking advantage of this opportunity, but it is too reluctant and even guilty. なぜなら 吾々 に かせ られた 任務 は 、 叛乱 軍 と 戦って これ を 撃 滅 する こと に ある から だ 。 |われ々||||にんむ||はんらん|ぐん||たたかって|||う|めつ|||||| Because our mission is to fight the rebel army and destroy it. 名誉 ある 撤退 と 卿 は 言った 。 めいよ||てったい||きょう||いった The Sir said with an honorable withdrawal. 皇帝 陛下 より 命ぜ られた 任務 を はたさ ず して なんの 名誉 か ! こうてい|へいか||めいぜ||にんむ||||||めいよ| What an honor without fulfilling the mission ordered by His Majesty the Emperor! 臆病 者 の 自己 弁護 に 類する もの と 卿 は 思わ ぬ の か ? おくびょう|もの||じこ|べんご||るいする|||きょう||おもわ||| Don't you think the Lord is like a coward's self-defense? 」 皇帝 の 二 字 が でる と 、 ファーレンハイト を のぞいた 四 提督 の 身体 に 緊張 の 小 波 が はしる 。 こうてい||ふた|あざ|||||||よっ|ていとく||からだ||きんちょう||しょう|なみ|| When the two letters of the emperor appear, a wave of tension spills over the bodies of the four Admirals, except for Fahrenheit. それ が ラインハルト に は ばかばかしい 。 That is ridiculous for Reinhardt.

「 しかし 、 総 司令 官 閣下 は そう おっしゃる が ……」 |そう|しれい|かん|かっか|||| "But your Excellency, Commander-in-Chief, says so ..."

あえぐ ように シュターデン は 抗弁 を 試みた 。 |よう に|||こうべん||こころみた As if gasping, Staden tried to defend himself.

「 好機 と 言って も 、 閣下 お ひと り が そう 信じて おら れる だけ の こと 。 こうき||いって||かっか||||||しんじて||||| "Even if it's an opportunity, it's just that your Excellency believes so. 用 兵 学 の 常識 から みて も 承服 し かねます 。 よう|つわもの|まな||じょうしき||||しょうふく|| Even from the common sense of logistics, we cannot accept it. 実績 を しめして いただか ない こと に は ……」 じっせき||||||| I haven't been able to show the achievements ... "

こいつ は 無能な だけ で なく 低 能 だ 、 と ラインハルト は 断定 した 。 ||むのうな||||てい|のう|||||だんてい| Reinhardt asserted that he was not only incompetent, but also incompetent. 前例 の ない 作戦 に 実績 の ある はず が ない 。 ぜんれい|||さくせん||じっせき||||| An unprecedented operation cannot have a proven track record. 実績 は これ から の 戦闘 で しめさ れる ので は ない か 。 じっせき|||||せんとう||しめ さ||||| Achievements may be shown in future battles.

「 翌日 に は 卿 は その 目 で 実績 を 確認 する こと に なる だろう 。 よくじつ|||きょう|||め||じっせき||かくにん||||| それでは 納得 でき ない か 」 |なっとく|||

「 成算 が お あり です か ? せいさん||||| 」 「 ある 。 ただし 卿 ら が 私 の 作戦 に 忠実に したがって くれれば の 話 だ 」 |きょう|||わたくし||さくせん||ちゅうじつに||||はなし| However, I wish the Lords would follow my strategy faithfully. "

「 どのような 作戦 です ? |さくせん| 」 猜疑 の 念 も 露骨に シュターデン が 問う 。 さいぎ||ねん||ろこつに|||とう ラインハルト は 一瞬 キルヒアイス の 顔 を 見 やる と 、 作戦 の 説明 を はじめた 。 ||いっしゅん|||かお||み|||さくせん||せつめい||

…… 二 分 後 、 遮音 力 場 の 内部 に 、 シュターデン の 叫び が みちた 。 ふた|ぶん|あと|しゃおん|ちから|じょう||ないぶ||||さけび||

「 机上 の 空論 だ 。 きじょう||くうろん| "It's a desk theory. うまく いく はず が ありません ぞ 、 閣下 、 このような ……」 ||||||かっか| It can't work, Your Excellency, like this ... " ラインハルト は 掌 を 指揮 卓 に 勢い よく たたきつけた 。 ||てのひら||しき|すぐる||いきおい|| Reinhardt slammed his palm against the command table.

「 もう いい ! " enough ! このうえ 、 議論 は 不要だ 。 |ぎろん||ふようだ 皇帝 陛下 は 私 に 叛乱 軍 征 討 司令 官 たれ と 仰せ られた 。 こうてい|へいか||わたくし||はんらん|ぐん|すすむ|う|しれい|かん|||おおせ| His Majesty the Emperor told me that he was the commander of the rebellion conquest. 卿 ら は 私 の 指揮 に したがう こと を 陛下 へ の 忠誠 の 証明 と せ ねば なら ぬ はずだ 。 きょう|||わたくし||しき|||||へいか|||ちゅうせい||しょうめい|||||| The Lords must prove their loyalty to His Majesty by following my command. それ が 帝国 軍人 の 責務 で は ない か 。 ||ていこく|ぐんじん||せきむ|||| 忘れる な 、 私 が 卿 ら の 上位 に ある と いう こと を 」 わすれる||わたくし||きょう|||じょうい|||||| Don't forget that I'm on top of the Lords. "

「…………」

「 卿 ら にたいする 生殺 与奪 の 全権 は 、 わが 手中 に ある 。 きょう|||せいさつ|よだつ||ぜんけん|||しゅちゅう|| "I have the full power to kill and kill the Lords. みずから のぞんで 陛下 の 御 意 に 背き たてまつろう と いう のであれば 、 それ も よし 。 ||へいか||ご|い||そむき||||||| If you want to turn your back on your Majesty's will, that's fine. 陛下 に たまわった わ が 職権 を もって 、 卿 ら の 任 を 解き 、 抗 命 者 と して 厳罰 に 処する まで の こと 。 へいか|||||しょっけん|||きょう|||にん||とき|こう|いのち|もの|||げんばつ||しょする||| Until my Majesty's ex officio dismissed the duties of the Lords and punished them as protesters. そこ まで の 覚悟 が 卿 ら に は ある の か 」 |||かくご||きょう|||||| Are the Lords prepared to do so? "

ラインハルト は 目前 の 五 人 を 見すえた 。 ||もくぜん||いつ|じん||みすえた Reinhardt looked at the five people in front of him. 返答 は なかった 。 へんとう|| There was no reply.

Ⅱ 五 人 の 提督 は 去った 。 いつ|じん||ていとく||さった Ⅱ The five admirals have left. 納得 も 承服 も し ない が 、 皇帝 の 威 に は 逆らい がたい と いう 態 であった 。 なっとく||しょうふく|||||こうてい||たけし|||さからい||||なり| I was not convinced or accepted, but I could not resist the emperor's power. ただ 、 ファーレンハイト ひと り は ラインハルト の 作戦 構想 に 好意 的な 表情 を しめした ように も 思わ れる が 、 ほか の 四 人 の 表情 は 、 程度 の 差 こそ あれ 、〝 皇帝 の 威 を 借 る 孺子 め が 〟 と 語って いた 。 |||||||さくせん|こうそう||こうい|てきな|ひょうじょう|||よう に||おもわ|||||よっ|じん||ひょうじょう||ていど||さ|||こうてい||たけし||かり||じゅし||||かたって| However, it seems that Fahrenheit had a favorable expression on Reinhardt's operational conception, but the other four's expressions were, to a lesser extent, the Emperor's power. I was talking about it.

キルヒアイス に とって は 、 いささか 黙視 し がたい 状況 が 生じて いる 。 |||||もくし|||じょうきょう||しょうじて| For Kircheis, there are some situations that are difficult to ignore. それ で なくて さえ 、 ラインハルト は 若 すぎる なり あがり 者 と して 評判 が よく ない のだ 。 ||||||わか||||もの|||ひょうばん|||| Even so, Reinhardt has a bad reputation as an upstarter who is too young. 老練 の 諸 将 から みれば 、 ラインハルト は 姉 アンネローゼ を 介して 皇帝 の 威光 を 借りる だけ で みずから は 光 を 発する こと の ない 貧弱な 小 惑星 である に すぎ なかった 。 ろうれん||しょ|すすむ|||||あね|||かいして|こうてい||いこう||かりる|||||ひかり||はっする||||ひんじゃくな|しょう|わくせい|||| From the perspective of the venerable generals, Reinhardt was merely a poor asteroid that could not only emit light by borrowing the Emperor's majesty through his sister Annerose.

ラインハルト は 今回 が 初陣 と いう わけで は ない 。 ||こんかい||ういじん||||| Reinhardt is not the first team this time. 軍 籍 に は いって 五 年 、 すでに いく つ か の 軍 功 を たてて いる 。 ぐん|せき||||いつ|とし||||||ぐん|いさお||| He has been in the military for five years and has already achieved some military service. しかし それ も 諸 将 に 言わ せる と 、 運 が よかった と か 、 敵 が 弱 すぎた と いう こと に なる のだった 。 |||しょ|すすむ||いわ|||うん|||||てき||じゃく||||||| また ラインハルト が 万事 、 腰 が 低い と は 称し がたい こと から 、 彼 にたいする 悪 感情 は 増幅 し 、 現在 で は 〝 生意気な 金髪 の 孺子 〟 なる 呼称 が 蔭 で 定着 して いる ほど な のである 。 |||ばんじ|こし||ひくい|||そやし||||かれ||あく|かんじょう||ぞうふく||げんざい|||なまいきな|きんぱつ||じゅし||こしょう||おん||ていちゃく||||| Also, since Reinhardt is hard to say that he is low-backed, his bad feelings toward him have been amplified, and nowadays, the name "cheeky blonde 孺 子" has become established. 「 よろしい のです か ? |の です| 」 青い 目 に 懸念 の 表情 を 浮かべて 、 赤毛 の 若者 は ラインハルト に ただした 。 あおい|め||けねん||ひょうじょう||うかべて|あかげ||わかもの|||| The red-haired young man turned to Reinhardt, with a concerned expression in his blue eyes. 「 放っておけ 」 ほうっておけ

上官 の ほう は 平然と して いた 。 じょうかん||||へいぜんと|| The superior was calm.

「 奴 ら に なに が できる もの か 。 やつ||||||| いやみ ひと つ 言う に も 、 ひと り で は なく 幾 人 か で つるんで しか 来 られ ない ような 腰ぬけ ども だ 。 |||いう||||||||いく|じん|||||らい||||こしぬけ|| No, it's not just one person, but a person who can only come by hanging with a few people. 皇帝 の 権威 に 逆らう ような 勇気 など あり は せ ぬ 」 こうてい||けんい||さからう||ゆうき||||| There is no courage to go against the emperor's authority. "

「 ですが 、 それだけに 陰に こもる かも しれません 」 ||いんに||| "But it may be hidden behind it." ラインハルト は 副 官 を 見て 、 低い 楽し そうな 笑い声 を たてた 。 ||ふく|かん||みて|ひくい|たのし|そう な|わらいごえ|| Reinhardt looked at his deputy and made a low, fun-filled laugh.

「 お前 は あいかわらず 心配 性 だ な 。 おまえ|||しんぱい|せい|| 気 に する こと は ない 。 き||||| いま は 不平 たら たら でも 、 一 日 たてば 様相 が 変わる 。 ||ふへい||||ひと|ひ||ようそう||かわる シュターデン の 低 能 に 、 奴 の 好きな 実績 と やら を 額縁 つき で 見せて やる さ 」 ||てい|のう||やつ||すきな|じっせき||||がくぶち|||みせて|| I'll show you his favorite achievements and stuff with a picture frame to Staden's low performance. "

もう その 話 は やめよう 、 と 言って ラインハルト は 席 から たちあがり 、 司令 官 室 で 休息 しよう と 誘った 。 ||はなし||||いって|||せき|||しれい|かん|しつ||きゅうそく|||さそった Reinhardt got up from his seat and invited him to rest in the commander's office, saying that he should stop talking about it.

「 一杯 飲ま ない か 、 キルヒアイス 、 いい 葡萄 酒 が ある んだ 。 いっぱい|のま|||||ぶどう|さけ||| 四一〇 年 もの の 逸品 だ そうだ 」 よいち|とし|||いっぴん||そう だ

「 けっこうです ね 」 けっこう です|

「 では 行こう か 、 ところで 、 キルヒアイス ……」 |いこう|||

「 はい 、 閣下 」 |かっか

「 その 閣下 だ 。 |かっか| ほか に 人 が いない とき は 閣下 呼ばわり する 必要 は ない 。 ||じん|||||かっか|よばわり||ひつよう|| You don't have to call your Excellency when there are no other people. 以前 から 言って いる だろう 」 いぜん||いって||

「 わかって は いる のです が ……」 |||の です|

「 わかって いる の なら 実行 しろ 。 ||||じっこう| この 会戦 が 終わって 帝国 首都 に 帰還 したら 、 お前 自身 が 閣下 に なる のだ から 」 |かいせん||おわって|ていこく|しゅと||きかん||おまえ|じしん||かっか||||

「…………」

「 准将 に 昇進 だ 。 じゅんしょう||しょうしん| "I'm promoted to Brigadier General. 楽しみに して おく んだ な 」 たのしみに|||| I'm looking forward to it. "

艦長 ロイシュナー 大佐 に あと を まかせて 、 ラインハルト は 個室 へ と 歩き だした 。 かんちょう||たいさ|||||||こしつ|||あるき| その あと に したがい ながら 、 キルヒアイス は 上官 の 発言 を 脳裏 で 反芻 した 。 |||||||じょうかん||はつげん||のうり||はんすう| Following that, Kircheis ruminated his superior's remarks in his mind.

会戦 が 終わって 帰還 したら 准将 …… 金髪 の 若い 提督 は 、 敗北 する こと など 考えて も いない らしい 。 かいせん||おわって|きかん||じゅんしょう|きんぱつ||わかい|ていとく||はいぼく||||かんがえて||| Brigadier General when he returned after the battle ... It seems that the young blonde Admiral had no idea that he would be defeated. キルヒアイス 以外 の 者 であれば 、 それ を ど し がたい 高慢 と うけとる に 相違 なかった 。 |いがい||もの|||||||こうまん||||そうい| Anyone other than Kircheis must have taken it as arrogant pride. だが ラインハルト が 、 親友 にたいする 好意 から 言った のだ と いう こと を 、 キルヒアイス は 知っている 。 |||しんゆう||こうい||いった||||||||しっている But Kircheis knows that Reinhardt said it in favor of his best friend. この 人 に 会って から 、 もう 一〇 年 に なる の か …… キルヒアイス は ふと そう 思った 。 |じん||あって|||ひと|とし|||||||||おもった ラインハルト と その 姉 アンネローゼ に 出会って 、 彼 の 運命 は 変わった のだ 。 |||あね|||であって|かれ||うんめい||かわった|

ジークフリード ・ キルヒアイス の 父親 は 司法 省 に 勤める 下級 官吏 だった 。 |||ちちおや||しほう|しょう||つとめる|かきゅう|かんり| 四万 帝国 マルク ほど の 年俸 を 稼ぐ ため に 上司 と 書類 と コンピューター に おいまわさ れる 毎日 で 、 広く も ない 庭 で バルドル 星 系 産 の なんとか いう 蘭 の 一種 を 育てる こと と 、 食後 の 黒 ビール だけ を 楽しみ と する 、 平凡で 善良な 男 だった 。 しまん|ていこく|まるく|||ねんぽう||かせぐ|||じょうし||しょるい||こんぴゅーたー||||まいにち||ひろく|||にわ|||ほし|けい|さん||||らん||いっしゅ||そだてる|||しょくご||くろ|びーる|||たのしみ|||へいぼんで|ぜんりょうな|おとこ| 幼い 赤毛 の 息子 の ほう は 、 学校 で は 優等 生 グループ の 端に なんとか ぶらさがり 、 スポーツ は 万能 で 、 両親 の 自慢 だった 。 おさない|あかげ||むすこ||||がっこう|||ゆうとう|せい|ぐるーぷ||はしたに|||すぽーつ||ばんのう||りょうしん||じまん| The young red-haired son managed to hang at the end of the honor student group at school, was versatile in sports, and was proud of his parents.

ある 日 、 廃屋 も 同然の 隣家 に 、 貧し げ な 父子 が うつり 住んで きた 。 |ひ|はいおく||どうぜんの|りんか||まずし|||ふし|||すんで| One day, a poor father and son lived in a neighboring house that was almost an abandoned house.

無気力 そうな 中年 男 が 貴族 だ と 聞いて 、 キルヒアイス 少年 は 驚いた が 、 金髪 の 姉弟 を 見て 信じる 気 に なった 。 むきりょく|そう な|ちゅうねん|おとこ||きぞく|||きいて||しょうねん||おどろいた||きんぱつ||してい||みて|しんじる|き|| Kircheis was surprised to hear that the seemingly lethargic middle-aged man was an aristocrat, but when he saw his blonde sister and brother, he felt like believing. 姉弟 と も なんと 綺麗な んだろう と 少年 は 思った のだ 。 してい||||きれいな|||しょうねん||おもった| The boy wondered how beautiful his sister and brother were.

弟 の ほう と は 即日 、 知合い に なった 。 おとうと|||||そくじつ|しりあい|| ラインハルト なる 少年 は 、 キルヒアイス と 同年 で 、 標準 暦 で 二 カ月 だけ キルヒアイス より 遅く 生まれた と いう こと だった 。 ||しょうねん||||どうねん||ひょうじゅん|こよみ||ふた|かげつ||||おそく|うまれた|||| The boy, Reinhardt, was born in the same year as Kircheis, only two months later than Kircheis in the standard calendar. 赤毛 の 少年 が 名のる と 、 金髪 の 少年 は かたち の いい 眉 を き ゅっと 吊 り あげて 言った 。 あかげ||しょうねん||なのる||きんぱつ||しょうねん|||||まゆ||||つり|||いった When the red-haired boy became famous, the blond-haired boy lifted up his shapely eyebrows and said, 「 ジークフリード なんて 、 俗な 名 だ 」 ||ぞくな|な| "Siegfried is a popular name."

思い も かけ ない こと を 言われて 、 赤毛 の 少年 は びっくり し 、 返答 に こまった 。 おもい||||||いわれて|あかげ||しょうねん||||へんとう|| The red-haired boy was surprised and confused when he was told something unexpected. すると ラインハルト は つづけて こう 言った 。 |||||いった

「 でも キルヒアイスって 姓 は いい な 。 ||せい||| とても 詩的だ 。 |してきだ だから ぼく は きみ の こと 、 姓 で 呼ぶ こと に する 」 ||||||せい||よぶ||| That's why I call you by your surname. "

いっぽう 、 姉 の アンネローゼ の ほう は 、 彼 の 名 を 短縮 して 〝 ジーク 〟 と 呼んだ 。 |あね||||||かれ||な||たんしゅく||||よんだ On the other hand, her sister Annerose abbreviated his name to "Sieg". 顔 の 造作 は 弟 に 酷似 して いた が 、 いちだん と 繊細で 、 け ぶる ような 微笑 が かぎりなく 優しかった 。 かお||ぞうさく||おとうと||こくじ||||||せんさいで||||びしょう|||やさしかった His facial features were very similar to his younger brother, but he was more delicate and had an infinitely gentle smile. ラインハルト に 紹介 されて 対面 した とき 、 彼女 は 木 洩 れ 陽 が さしこむ ような 表情 を 赤毛 の 少年 に むけた 。 ||しょうかい||たいめん|||かのじょ||き|えい||よう||||ひょうじょう||あかげ||しょうねん|| When she was introduced to Reinhardt and met her, she gave the red-haired boy a look like a leaking sun. 「 ジーク 、 弟 と 仲よく して やって ね 」 |おとうと||なかよく||| "Sieg, get along with your brother."

それ から 今日 まで キルヒアイス は 彼女 の 依頼 を 忠実に まもって きた 。 ||きょう||||かのじょ||いらい||ちゅうじつに|| Since then, Kircheis has faithfully kept her request to this day.

さまざまな こと が あった 。 見た こと も ない 豪 奢 な 地上 車 が 隣家 の 前 に 駐 まり 、 高級な 服 を 着た 中年 の 男 が おりて きた 。 みた||||たけし|しゃ||ちじょう|くるま||りんか||ぜん||ちゅう||こうきゅうな|ふく||きた|ちゅうねん||おとこ||| A luxurious ground vehicle that I had never seen was parked in front of my neighbor's house, and a middle-aged man in high-class clothes came. 負けず嫌いの ラインハルト が 、 泣き ながら 父親 を 詰る 声 が 一晩 中 、 絶え なかった 。 まけずぎらいの|||なき||ちちおや||なじる|こえ||ひとばん|なか|たえ| Reinhardt, who hates to lose, crying and squeezing his father all night long.

「 父さん は 姉さん を 売った んだ 」 とうさん||ねえさん||うった| "Dad sold her sister."

翌朝 、 ラインハルト を 学校 に 誘う と いう 口実 で 隣家 を 訪れた キルヒアイス に 、 優しく 、 だが 寂し げ に 微笑 して アンネローゼ が 言った 。 よくあさ|||がっこう||さそう|||こうじつ||りんか||おとずれた|||やさしく||さびし|||びしょう||||いった The next morning, Annerose said to Kircheis, who visited his neighbor with the excuse to invite Reinhardt to school, with a gentle but lonely smile.

「 弟 は もう 、 あなた と おなじ 学校 へ 行け ない の 。 おとうと||||||がっこう||いけ|| "My brother can't go to the same school as you anymore. 短い 期間 だった けど 、 ありがとう 」 みじかい|きかん|||

美しい 少女 は 彼 の 額 に 接吻 して 、 手作り の チョコレート ・ ケーキ を くれた 。 うつくしい|しょうじょ||かれ||がく||せっぷん||てづくり||ちょこれーと|けーき|| The beautiful girl kissed his forehead and squeezed a homemade chocolate cake.

その 日 、 赤毛 の 少年 は 学校 へ 行か ず 、 ケーキ を だいじに かかえて 自然 公園 に 行き 、 パトロール ・ ロボット に 発見 さ れ ない よう 用心 し ながら 、 誰 も 知ら ない 理由 で 火星 松 と 呼ば れる 針葉樹 の 蔭 で 、 長い 時間 を かけて ケーキ を 食べた 。 |ひ|あかげ||しょうねん||がっこう||いか||けーき||||しぜん|こうえん||いき|ぱとろーる|ろぼっと||はっけん|||||ようじん|||だれ||しら||りゆう||かせい|まつ||よば||しんようじゅ||おん||ながい|じかん|||けーき||たべた 姉弟 に 別れる 哀し さ で 涙 が こぼれ 、 それ を 手 で 拭いた ため 、 幼い 顔 に は 焦 茶色 の 縞 が できた 。 してい||わかれる|かなし|||なみだ|||||て||ふいた||おさない|かお|||あせ|ちゃいろ||しま|| The sadness of breaking up with my sister and brother caused tears to spill, and I wiped them with my hands, resulting in dark brown stripes on my young face.

暗く なって 、 叱責 を 覚悟 で 帰宅 した が 、 両親 は なにも 言わ なかった 。 くらく||しっせき||かくご||きたく|||りょうしん|||いわ| When it got dark, I went home with the intention of reprimanding, but my parents didn't say anything. 隣家 の 灯 は 消えて いた 。 りんか||とう||きえて| The light in the next house was off.

一 カ月 後 、 帝国 軍 幼年 学校 の 制服 を 着た ラインハルト が 予告 も なく 訪れて きた 。 ひと|かげつ|あと|ていこく|ぐん|ようねん|がっこう||せいふく||きた|||よこく|||おとずれて| A month later, Reinhardt in the Imperial Army Childhood School uniform came in without notice. 驚 喜 する キルヒアイス に 、 金髪 の 少年 は おとなびた 口調 で 言った 。 おどろ|よろこ||||きんぱつ||しょうねん|||くちょう||いった

「 軍人 に なる んだ 。 ぐんじん||| "Become a soldier. はやく 一人前 に なれる から ね 。 |いちにんまえ|||| You can quickly become a full-fledged person. 出世 して 姉さん を 解放 して あげ なきゃ 。 しゅっせ||ねえさん||かいほう||| ねえ 、 キルヒアイス 、 ぜひ ぼく と おなじ 学校 へ おいで よ 。 ||||||がっこう||| 幼年 学校 に いる の は いやな 奴 ら ばかり な んだ 」 ようねん|がっこう||||||やつ||||

…… 両親 は 反対 し なかった 。 りょうしん||はんたい|| 息子 の 出世 を のぞんだ の かも しれ ない し 、 息子 を 隣家 の 姉弟 に 奪わ れた と 悟った の かも しれ ない 。 むすこ||しゅっせ||||||||むすこ||りんか||してい||うばわ|||さとった|||| He may have hoped for his son's career advancement, or he may have realized that he had been robbed by his neighbor's siblings. ともあれ 、 キルヒアイス は ラインハルト と おなじ 道 を 歩む べく 、 少年 の 日 に 決断 を くだした のだった 。 ||||||どう||あゆむ||しょうねん||ひ||けつだん||| In any case, Kircheis made the decision on Boys' Day to follow the same path as Reinhardt.

幼年 学校 の 生徒 は 大半 が 貴族 の 子弟 で 、 ほか は 上流 市民 の 息子 ばかり だった 。 ようねん|がっこう||せいと||たいはん||きぞく||してい||||じょうりゅう|しみん||むすこ|| Most of the students in the childhood school were children of aristocrats, and the others were sons of upstream citizens. キルヒアイス が 入学 を 許さ れた の は 、 ラインハルト の 熱望 と アンネローゼ の 労 に よる もの だ と いう こと は 明白だった 。 ||にゅうがく||ゆるさ||||||ねつぼう||||ろう|||||||||めいはくだった It was clear that Kircheis was admitted because of Reinhardt's aspirations and Annerose's efforts.

ラインハルト の 成績 は つねに 首席 であり 、 キルヒアイス も 上位 を 確保 して いた 。 ||せいせき|||しゅせき||||じょうい||かくほ|| Reinhardt's performance was always chief, and Kircheis also secured the top spot. 自分 自身 の ため に も 姉弟 の ため に も 、 悪い 成績 は とれ なかった 。 じぶん|じしん|||||してい|||||わるい|せいせき||| I didn't get bad grades either for myself or for my sister and brother.

ときおり 、 生徒 の 父兄 たち が 学校 を 訪れた 。 |せいと||ふけい|||がっこう||おとずれた Occasionally, the students' parents visited the school. 身分 の 高い 貴族 。 みぶん||たかい|きぞく しかし 彼ら に 敬意 を いだく 気 に は なれ なかった 。 |かれら||けいい|||き|||| But I couldn't help but respect them. 特権 に 驕 る 者 の 腐 臭 だけ が 鼻 に ついた 。 とっけん||きょう||もの||くさ|くさ|||はな|| Only the rotten odor of the privileged one stuck to his nose.

「 あいつ ら を 見ろ よ 、 キルヒアイス 」 |||みろ||

そのような 貴族 たち を 見る たび に 、 ラインハルト は 激しい 嫌悪 と 侮 蔑 を こめて ささやく のだった 。 |きぞく|||みる|||||はげしい|けんお||あなど|さげす|||| Every time he saw such aristocrats, Reinhard whispered with intense disgust and contempt.

「 あいつ ら は 今日 の 地位 を 自分 自身 の 努力 で 獲得 した のじゃ ない …… 権力 と 財産 を 、 ただ 血 が つながって いる と いう だけ で 親 から 相続 して 、 それ を 恥じらい も し ない 恥知らず ども だ 。 |||きょう||ちい||じぶん|じしん||どりょく||かくとく||||けんりょく||ざいさん|||ち||||||||おや||そうぞく||||はじらい||||はじしらず|| "They didn't get their position today through their own efforts ... they inherited power and property from their parents just because they had blood, and they weren't ashamed of it. ..