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江戸小話, 気のきく男

気 の きく 男

ある 殿さま の 家来 に 、 大変 気 の きく 男 が い ました 。 殿さま は その 男 の 事 を 、 客 が 来る たび に 自慢 し ます 。 「 あの 男 の 気 が つく こと 、 気 が つく こと 。 朝 起きる と 、 すでに 洗面 の 用意 が 出来て おる 。 そして 顔 を 洗って いる 間 に 、 茶 を くんで 来て くれる 。 たばこ を 吸い たい と 思えば 、 目の前 に 、 すーっと 、 たばこ が 出て くる 。 手紙 を 書こう と 思えば 、 スズリ と 紙 が 、 すーっと 出る 。 いやはや 、 これほど 気 が きく 男 は な いわい 」

ところが 、 ある 日 の 事 。 殿さま が 朝 起きる と 、 どうも 気分 が すぐれ ませ ん 。 「 ああ 、 頭 が 痛い 。 それ に 寒気 が する 。 ・・・ はて 、 この 様 な 大事な 時 に 、 あの 男 は どこ へ 行った のであろう ? 」 殿さま が そう 思って いる と 、 男 が 帰って き ました 。 「 これ 、 そち は 、 朝 から どこ へ 行って いた のだ 」 「 はい 、 ゆうべ から 殿 の お 顔 の 色 が 悪く 見え ました ので 、 医者 を 呼び に 行って 来 ました 」 「 おう 、 よく 気 が ついた ぞ 。 さすが じゃ 」

それ から 殿さま は 、 四 、 五 日 、 医者 の 薬 を 飲んで おり ました が 、 病気 は いっこうに 良く なり ませ ん 。 「 ああ 、 今日 は 特に 気分 が 悪い 。 あの 男 は 、 どこ へ 行った のだ ? 」 する と 男 が 、 帰って 来 ました 。 「 これ 、 そち は どこ へ 行って いた のだ ? 医者 でも 呼んで きて くれた の か ? 」 する と 男 は 、 こう 答え ました 。 「 はい 、 殿 の お 命 も 残り 少ない と 思い 、 お 寺 に 行って 葬式 の 準備 を して まいり ました 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )


気 の きく 男

ある 殿さま の 家来 に 、 大変 気 の きく 男 が い ました 。 殿さま は その 男 の 事 を 、 客 が 来る たび に 自慢 し ます 。 「 あの 男 の 気 が つく こと 、 気 が つく こと 。 朝 起きる と 、 すでに 洗面 の 用意 が 出来て おる 。 そして 顔 を 洗って いる 間 に 、 茶 を くんで 来て くれる 。 たばこ を 吸い たい と 思えば 、 目の前 に 、 すーっと 、 たばこ が 出て くる 。 手紙 を 書こう と 思えば 、 スズリ と 紙 が 、 すーっと 出る 。 いやはや 、 これほど 気 が きく 男 は な いわい 」

ところが 、 ある 日 の 事 。 殿さま が 朝 起きる と 、 どうも 気分 が すぐれ ませ ん 。 「 ああ 、 頭 が 痛い 。 それ に 寒気 が する 。 ・・・ はて 、 この 様 な 大事な 時 に 、 あの 男 は どこ へ 行った のであろう ? 」   殿さま が そう 思って いる と 、 男 が 帰って き ました 。 「 これ 、 そち は 、 朝 から どこ へ 行って いた のだ 」 「 はい 、 ゆうべ から 殿 の お 顔 の 色 が 悪く 見え ました ので 、 医者 を 呼び に 行って 来 ました 」 「 おう 、 よく 気 が ついた ぞ 。 さすが じゃ 」

それ から 殿さま は 、 四 、 五 日 、 医者 の 薬 を 飲んで おり ました が 、 病気 は いっこうに 良く なり ませ ん 。 「 ああ 、 今日 は 特に 気分 が 悪い 。 あの 男 は 、 どこ へ 行った のだ ? 」   する と 男 が 、 帰って 来 ました 。 「 これ 、 そち は どこ へ 行って いた のだ ? 医者 でも 呼んで きて くれた の か ? 」   する と 男 は 、 こう 答え ました 。 「 はい 、 殿 の お 命 も 残り 少ない と 思い 、 お 寺 に 行って 葬式 の 準備 を して まいり ました 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )