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三姉妹探偵団 1, 三姉妹探偵団01 chapter 08 (1)

三 姉妹 探偵 団 01 chapter 08 (1)

8 「 王様 」 と の ご 対面

「 妙だ ねえ 」

ガードマン は 首 を ひねった 。

夕 里子 は 、 警備 員 の 詰所 に なって いる 小 部屋 で 、 椅子 に 座って いた 。

「 何 が 、 です か ? 「 いや 、 あの 連中 は 、 めったに 、 そんな 事件 は 起こさ ない んだ よ 」

と ガードマン は 言った 。 「 まあ 、 ああいう 風 だ から 、 みんな 気味 悪 が って 、 よけて 通る けど ね 、 中 に は 凄い インテリ も いる し 、 哲学 者 タイプ も いる 。 もちろん 、 柄 の いい 連中 じゃ ない が 、 いわゆる 暴力 的な こと は 、 まず やら ない んだ 。 バッグ を かっぱ ら ったり 、 女性 に 乱暴 したり する なんて ねえ 」

「 じゃ 、 私 が 噓 を ついて る と でも 言う んです か ? と 夕 里子 が 叫んだ 。

「 いや 、 そう じゃ ない よ 」

ガードマン は あわてて 言った 。 「 現場 は ちゃんと 僕 が 目撃 して る から ね 。 確かに 君 の 言う 通り だった 。 ただ 、 何 か 理由 が ある はずだ 、 と いう 気 が する の さ 」

「 すみません ……」

夕 里子 は 息 を 吐き出して 、 顔 を 伏せた 。 「 つい ……。 まだ 怖い の が 抜け なくて 」

「 いや 、 当然だ よ ね 。 それにしても 、 刑事 さん は 遅い ね 」

夕 里子 は 、 ここ から ガードマン に 頼んで 、 国友 刑事 へ 電話 して もらった のだった 。 自分 で 電話 する だけ の 力 は なかった 。

襲わ れて いる とき は 無我夢中 だった のだ が 、 今に なって 、 恐怖 が 足 の 先 から 這い上って 来る 。 そして 、 ブラウス の 下 や 、 スカート の 中 を 探ら れた 感触 の 記憶 が 、 夕 里子 を 身震い さ せる のだった 。

ドア が ノック も なし で 開いた 。

「 国友 さん ……」

「 大丈夫 か ? 国友 は 息 を 弾ま せて いた 。 「 車 が ラッシュ に 巻き込ま れて ね 。 途中 で 降りて 走って 来た んだ 。 悪かった ね 。 ── もう 安心だ よ 。 元気 を 出して ──」

夕 里子 は 急に 堪え 切れ なく なって 、 国友 の 胸 に 身 を 投げ出す ように ぶつかって 行った 。 そして 、 しばらく 、 国友 の 腕 に 抱か れて 、 じっと 動か なかった 。

涙 は 出て 来 ない 。 夕 里子 自身 、 これ に は 寂しい 思い を した 。 少し は 泣きじゃくれば 、 国友 も もっと 同情 して 、 抱きしめて くれる かも しれ ない のに ……。

好きな とき に 涙 を 流す と いう 特技 は 、 夕 里子 に は なかった 。

「 やった 連中 は どう し ました ? 国友 が 、 ガードマン に 訊 いた 。

「 今 、 調べ させて い ます 。 三 人 でした が 、 いつも この 辺 に いる 顔 でした から 、 たぶん 分 る と 思い ます 」

「 ひどい 奴 ら だ 、 こんな 女の子 を ! 国友 は そっと 夕 里子 の 髪 を 撫でた 。 夕 里子 は 国友 から 離れて 微笑んだ 。

「 笑った ね 。 もう 大丈夫 か ? 「 ええ 。 私 、 めげ ない の 」

「 よし 。 それ で こそ 君 だ な 」

「 国友 さん 、 すみません けど 、 お 金 、 貸して もらえ ない ? 全部 バッグ ごと 取ら れちゃ った から ……」

「 いい よ 。 今 、 いる の ? 「 買って 来 たい 物 が ある の 」

「 じゃ 、 言って ごらん 。 僕 が 買って 来て あげよう 」

「 だめな の 、 それ が ……」

夕 里子 は 、 ちょっと 頰 を 染めて 、「 下着 を …… かえ たい の 。 気持 悪くて 」

「 そう か 。 よし 分 った 。 ── これ で いい ? 「 すみません 。 トイレ で 着替えて 来 ます 」

「 ああ 、 それ なら ──」

と 、 ガードマン が 言った 。 「 この 奥 が 宿直 室 で 、 中 に シャワー の 設備 が ある 。 そこ で さっぱり したら どうか な ? 「 嬉しい ! そう し ます 」

夕 里子 は お 金 を 手 に 、 詰所 を 飛び出して 行った 。

下着 と ブラウス を 買って 戻り 、 詰所 の 奥 の 六 畳 ほど の 畳 の 部屋 へ 通して もらって 、 シャワー 室 で 熱い シャワー を 浴び 、 着替える と 、 夕 里子 は 、 すっかり ショック から 立ち直って いた 。

冷静に なって 考えて みる と 、 ガードマン の 言葉 に は 夕 里子 も 同感 だった 。 なぜ あの 三 人 が 急に 夕 里子 を 襲って 来た のだろう か ?

もちろん 偶然 と も 考え られ ない こと は ない わけだ が 。 もし 偶然で ない と する と ……?

少し 濡れた 髪 を 手 で 直して 、 詰所 へ 戻る と 、 夕 里子 は 、 ちょっと 驚いて 足 を 止めた 。

椅子 に 、 異様な 男 が 座って いた 。 年齢 は いく つ ぐらい だろう ? 六十 歳 と も 、 四十 代 と も 見える 。 のび 切った 髪 は 半ば 白く なって 肩 に かかり 、 顔 の 下 半分 を 覆った ひげ は 、 胸元 に まで 垂れて いる 。 まとって いる の は 、 背広 ── いや 、 かつて 背広 だった 、 と いう べき 古着 で 、 毛 が すれて 、 テカテカ と 光って いる 。 その 上 に 、 毛布 を 一 枚 、 肩 から マント の ように 下げて いた 。 靴 も 、 もと が 何 色 だった の か 、 判然と し ない 古 靴 で 、 よく 見る と 、 右 と 左 が 別の 靴 だ と 分 る 。

つまり 、 どう 見て も 浮 浪 者 な のだ が 、 それでいて 、 目 を そむけ たく なる ような 不潔 感 は ない 。 ボロ は 着て いる が 、 そう 汚 なく は な さ そうだった 。

そして 何より も 、 その 目 が 、 他の 浮 浪 者 たち と は 違って いた 。 生気 の ない 、 トロン と した 目 で は なく 、 決して ギラ ついて は い ない が 、 物静かな 、 知性 すら 感じ させる 光 を 、 中 に 持って いる のである 。

その 目 が 優しく 夕 里子 を 見た 。

「 や あ 、 さっぱり した かい ? と 、 ガードマン が 訊 いた 。

「 ええ 、 ありがとう ございました 」

「 顔色 も 戻った ね 。 良かった 」

と 、 傍 に 立って いる 国友 が 言った 。

「 あ 、 この 人 を 紹介 しよう 」

ガードマン が 、 椅子 に 座った 男 を 手 で 示して 言った 。

「 これ が 〈 王様 〉 だ よ 」

夕 里子 は 、 ごく 自然に 会釈 した 。

「 佐々 本 夕 里子 です 」

「 この 人 は 、 この 地下 街 の 浮 浪 者 たち の 中 で 、〈 王様 〉 と 呼ば れて る んだ 。 どの 連中 も この 人 の 言う こと は よく きく し 、 何 か 面倒 が 起る と この 人 の ところ へ 持ち込む 。 今 、 この 地下 街 に 何 人 の 浮 浪 者 が いる か 、 それ を 全部 この 人 は 知っている 。 他 所 から 新しい 浮 浪 者 が 来れば 、 入れて いい か どう かも この 人 が 決める 。 ──〈 王様 〉 と いう 名 で 、 いつの間にか 呼ば れる ように なった んだ 。 もう 地下 街 が できて 以来 だ から ね 。 十 年 近く ここ に 生活 して る んだ よ 」

夕 里子 は 、 好奇心 を 刺激 さ れて 、 まじまじ と 、 その 〈 王様 〉 を 見た 。

確かに 、 体 も 大きく ない し 、 別に 凄み も ない のだ が 、 どことなく 、 逆らい がたい 、 指導 者 らしい 「 大き さ 」 を 感じ させる 人物 である 。

「 あなた が ここ の 連中 に 襲わ れた 娘 さん です か 」

と 、〈 王様 〉 が 言った 。 その 柔らかで 、 しかし 、 はっきり と した 言葉づかい に 、 夕 里子 は びっくり した 。

「 は 、 はい 、 そう です 」

と 、 肯 く 。

「 大変 申し訳ない こと を し ました 」

ゆっくり と 、 かんで 含める ような 言い 方 だ が 、 言葉 に は 感情 が こもって いた 。 「 私 の 監督 が 行き届か なかった 。 全く 、 お 詫び のし よう も あり ませ ん 」

「 い 、 いえ …… どうも 」

夕 里子 は 困って しまった 。

「 総 て は 私 の 責任 です 。 私 を 逮捕 さ れて も 、 獄 に 投じ られて も 、 構い ませ ん が 、 しかし どうせ 私 ども は 監獄 へ 入れば 、 ねぐら が 出来た と 喜ぶ 人種 。 それでは そちら の 気 が 済み ます まい 」

「 いい んです 、 もう 」

と 、 夕 里子 は 言った 。 「 済んだ こと です し 、 バッグ を 返して いただけば 、 それ で いい んです 。 ただ ── 私 を 襲った の が 、 急の 思い付き な の か 、 それとも 誰 か に 頼ま れて の こと な の か 。 それ を 聞き たい んです 」

「 頼ま れて ? と 、 国友 が 言った 。 「 じゃ 、 君 は ……」

「 国友 さん に 電話 した の は その 用 だった の 」

夕 里子 は 、 植松 に 伝票 を 書か せて 、 それ を 鑑定 して もらう つもりで いた こと を 話した 。

「 だから もしかしたら 、 と 思って ……」

「 なるほど 。 その 伝票 も 、 バッグ ごと 持って行か れた わけだ ね ? 「 何 か 複雑な 事情 が お あり の ようです ね 」

と 、〈 王様 〉 は 言った 。 「 ともかく 、 その 三 人 を 捜し出して 、 問い 糺して やり ましょう 」

「 見付かる か ね 、 王様 」

と 、 ガードマン が 訊 いた 。

「 例の 三 人 、 いつも あの 休憩 所 に いた けど 、 寝る の も あそこ かい ? 「 あの 三 人 を 入れた の は 失敗 だった 」

と 、 王様 は 首 を 振った 。 「 今度 問題 を 起こしたら 、 この 地下 街 を 追い出す と 言って おいた のだ が 、 それ を 承知 で こんな こと を した 以上 、 もう この 地下 街 から 逃げ出す つもりで は いる でしょう 」

「 する と 、 もう ここ に は ──」

「 いや 」

と 、 遮って 、「 あの がめつい 連中 の こと だ 、 おそらく 手ぶらで 出て 行く まい 。 いつも あいつ ら が たかって いる 店 は 十二 時 に なら ない と 開か ない 。 一 時 まで は 店 が 忙しい 。 何 か もらえる と すれば 、 その後 だ 」

「 する と ── 今 、 一 時 十分だ 」

「 すぐに 手配 すれば ──」

と 国友 が 言った 。

「 いや 、 大丈夫です 」

と 、 王様 は 言った 。 「 話 を 聞く と 同時に 、 地下 街 の 方々 へ 、 人 を やって ある 。 どこ から 出よう と して も 、 すぐに ここ へ 知らせ が 来る はずです 」

そこ へ 、 バタバタ と 足音 が して 、 ドア が 開く と 、 まだ 若い 感じ の 浮 浪 者 が 一 人 顔 を 出した 。

「 王様 ! 見つけ ました ! 「 どこ だ ? M ビル の 裏 の 出口 か ? 「 そうです 。 どうして それ を ? 「 あいつ ら の 頭 の 考える こと ぐらい すぐに 分 る 。 で 、 出て 行った か ? 「〈 ドクター 〉 が 酒 を やって 引き止めて い ます 」

「 よし 。 すぐに 行き ましょう 」

と 王様 は 立ち上る と 、 夕 里子 たち に 言った 。 「 急げば 捕まえ られる 」

「 よし 。 お嬢さん 、 あなた は ここ に ──」

「 むだだ よ 」

と 国友 が 微笑んで 言った 。 「 一緒に 来る に 決 って る 」

地下 街 は 昼 休み 過ぎ だった が 、 まだ 人 の 姿 は かなり あった 。 その 中 を 、 浮 浪 者 に 率い られて 、 ガードマン や 国友 たち が ついて 歩く のだ から 、 通りすぎる 人々 が 、 みんな 物珍し げ に 振り返った 。

「 おい 王様 」

途中 で 、 ガードマン が 言った 。 「 M ビル の 裏 に 出口 なんか あった か ? 「 地下鉄 の 通 気孔 だ 。 あそこ の 蓋 は 簡単に 外れる から ね 」

「 そう か ! 気 が 付か なかった な 」

夕 里子 は 、 何だか 自分 が 小説 か 漫画 の 主人公 に でも なった ような 気 が して いた 。 浮 浪 者 の 王様 を 先頭 に 犯人 を 捕まえ に 行く なんて 。 ── 何 か の CM じゃ ない けど 、

「 ファンタスティック ! である 。

「〈 ドクター 〉 って 、 元 、 お 医者 さん だった んです か ? と 、 夕 里子 は 訊 いて みた 。

「 いや 、 そんな こと は どう で も いい のです よ 、 お嬢さん 」

と 王様 は 静かに 答えた 。 「 ここ へ 来て いる 人間 は 、 そんな 過去 と 訣別 したい 者 ばかり な のです 。 だから 、 我々 は 互いに 名前 も 訊 か ないし 、 前身 も 知ろう と し ない 。 ただ 、 一緒に いる 内 に 、 その 印象 や 、 風貌 から 、 何となく 名前 が ついて 来る のです 」

夕 里子 は 肯 いた 。

「 その 奥 だ 。 ── ちょっと 狭い が 」

トイレ の わき の 通路 を 抜けて 、 掃除 用具 など を 置いた 場所 へ 出る 。

「 おい 、 ドクター ! 王様 が 声 を 上げた 。 誰 か が 、 床 に 倒れて いる 。 白衣 ── と いって も 、 もちろん 今 は 〈 黒衣 〉 に 近く なって いる ── を 着込んで 、 確かに 、 一見 医者 の ような 体つき の 男 が 、 ぐったり と 床 に のびて いる のだ 。

「 頭から 血 が 出て いる ぞ 」

国友 が 駆け寄って か が み込んだ 。 「── 殴ら れて いる 。 息 は ある 。 大丈夫だ 」

「 畜生 、 逃げた な ! ガードマン が 、 通 気孔 を 見上げて 言った 。

「 早く 、 救急 車 を 呼んだ 方 が いい 」

と 国友 は 言った 。

「 分 り ました 」

ガードマン が 走って 行く 。

「 とんでもない こと に なった 」

王様 は 呟く ように 言った 。

「 でも 、 あなた の せい じゃ あり ませ ん わ 」

と 、 夕 里子 は 言った 。 「 どんな 立派な 国 でも 、 泥棒 は い ます もの 」

王様 は 、 夕 里子 を 見て 微笑む と 、 静かに 、 頭 を 下げた 。 つい つられて 、 夕 里子 も 頭 を 下げて いた 。

「── お 姉ちゃん 、 遅い じゃ ない の ! 珠美 が 、 病院 の ベッド で むくれて いた 。

「 ごめん 。 ちょっと ね 」

「 妹 が 瀕死 の 重体 だって いう のに 、 どうせ あの 刑事 さん と デート でも して た んでしょう 」

「 そんな 元気な 重体 が ある ? と 、 夕 里子 は 笑った 。

「 おかげ で 、 私 は 一 人 で 恐ろしい 検査 の 数々 に 堪え なければ なら なかった のであった 」

「 何 を 気取って ん の 。 で 、 どう だって ? 「 異常 なし 」

と 言う と 、 珠美 は ヒョイ と 毛布 を はね上げて 、 ベッド から 降りた 。 もう ちゃんと 服 を 着て いる 。

「 何 だ 、 人 を からかって ! 「 ねえ 、 お腹 空いちゃ った の よ 。 お 昼 食べて ない んだ もん 」

「 もう 出て いい の ね ? じゃ 、 外 で 食べよう 」

「 お 姉ちゃん の おごり 」

「 だめ よ 」

「 全快 祝い 」

「 だめ 。 一 文なし 。 お 金 貸して 」

「 何で ? 「 三 人 の 男 に 襲わ れて ね 、 バッグ 盗 られた の 」

廊下 を 歩き ながら 、 珠美 は 目 を パチクリ さ せて から 、

「 噓 だ あ ! と 声 を 上げた 。

病院 の 支払い を 、 珠美 の 持って いた お 金 で 済ませる と 、 二 人 は 、 病院 の 向 い の レストラン に 入った 。


三 姉妹 探偵 団 01 chapter 08 (1) みっ|しまい|たんてい|だん| Three Sisters Detective Agency 01 chapter 08 (1)

8 「 王様 」 と の ご 対面 おうさま||||たいめん 8 Meeting with the “King”

「 妙だ ねえ 」 みょうだ| "It's strange,"

ガードマン は 首 を ひねった 。 がーどまん||くび|| The guardman twisted his neck.

夕 里子 は 、 警備 員 の 詰所 に なって いる 小 部屋 で 、 椅子 に 座って いた 。 ゆう|さとご||けいび|いん||つめしょ||||しょう|へや||いす||すわって| Yuuriko was sitting in a chair in a small room that is a guard room.

「 何 が 、 です か ? なん||| "What is that? 「 いや 、 あの 連中 は 、 めったに 、 そんな 事件 は 起こさ ない んだ よ 」 ||れんちゅう||||じけん||おこさ||| "No, those guys rarely do such a thing."

と ガードマン は 言った 。 |がーどまん||いった 「 まあ 、 ああいう 風 だ から 、 みんな 気味 悪 が って 、 よけて 通る けど ね 、 中 に は 凄い インテリ も いる し 、 哲学 者 タイプ も いる 。 ||かぜ||||きみ|あく||||とおる|||なか|||すごい|いんてり||||てつがく|もの|たいぷ|| "Well, that's the way it is, so everyone is weird, but it goes away, but there's an ugly intelligence inside, and there's also a philosopher type. もちろん 、 柄 の いい 連中 じゃ ない が 、 いわゆる 暴力 的な こと は 、 まず やら ない んだ 。 |え|||れんちゅう|||||ぼうりょく|てきな|||||| Of course, it's not a good group of people, but it's hard to do what is called violent. バッグ を かっぱ ら ったり 、 女性 に 乱暴 したり する なんて ねえ 」 ばっぐ|||||じょせい||らんぼう|||| Don't hold on to the bag or smash the woman. "

「 じゃ 、 私 が 噓 を ついて る と でも 言う んです か ? |わたくし||||||||いう|| "Well then, do you say that I will wear a spit? と 夕 里子 が 叫んだ 。 |ゆう|さとご||さけんだ

「 いや 、 そう じゃ ない よ 」

ガードマン は あわてて 言った 。 がーどまん|||いった 「 現場 は ちゃんと 僕 が 目撃 して る から ね 。 げんば|||ぼく||もくげき|||| "Because I have witnessed the scene properly. 確かに 君 の 言う 通り だった 。 たしかに|きみ||いう|とおり| Certainly it was as you said. ただ 、 何 か 理由 が ある はずだ 、 と いう 気 が する の さ 」 |なん||りゆう||||||き|||| However, I feel that there should be some reason, "

「 すみません ……」

夕 里子 は 息 を 吐き出して 、 顔 を 伏せた 。 ゆう|さとご||いき||はきだして|かお||ふせた Yuriko exhaled and put her face down. 「 つい ……。 まだ 怖い の が 抜け なくて 」 |こわい|||ぬけ| I still can not get scared

「 いや 、 当然だ よ ね 。 |とうぜんだ|| それにしても 、 刑事 さん は 遅い ね 」 |けいじ|||おそい|

夕 里子 は 、 ここ から ガードマン に 頼んで 、 国友 刑事 へ 電話 して もらった のだった 。 ゆう|さとご||||がーどまん||たのんで|くにとも|けいじ||でんわ||| Yuriko asked a guard man from here and had him call the detective of a friend. 自分 で 電話 する だけ の 力 は なかった 。 じぶん||でんわ||||ちから|| I did not have the power to call myself.

襲わ れて いる とき は 無我夢中 だった のだ が 、 今に なって 、 恐怖 が 足 の 先 から 這い上って 来る 。 おそわ|||||むがむちゅう||||いまに||きょうふ||あし||さき||はいあがって|くる When I was attacked, I was involuntarily, but now, fear is crawling up from the end of my feet. そして 、 ブラウス の 下 や 、 スカート の 中 を 探ら れた 感触 の 記憶 が 、 夕 里子 を 身震い さ せる のだった 。 |ぶらうす||した||すかーと||なか||さぐら||かんしょく||きおく||ゆう|さとご||みぶるい||| And the memory of the feel under the blouse and in the inside of the skirt made Yuriko shivering.

ドア が ノック も なし で 開いた 。 どあ||||||あいた The door opened without knocking.

「 国友 さん ……」 くにとも|

「 大丈夫 か ? だいじょうぶ| 国友 は 息 を 弾ま せて いた 。 くにとも||いき||はずま|| 「 車 が ラッシュ に 巻き込ま れて ね 。 くるま||らっしゅ||まきこま|| "The car got caught in a rush. 途中 で 降りて 走って 来た んだ 。 とちゅう||おりて|はしって|きた| I got off on the way and ran. 悪かった ね 。 わるかった| ── もう 安心だ よ 。 |あんしんだ| 元気 を 出して ──」 げんき||だして

夕 里子 は 急に 堪え 切れ なく なって 、 国友 の 胸 に 身 を 投げ出す ように ぶつかって 行った 。 ゆう|さとご||きゅうに|こらえ|きれ|||くにとも||むね||み||なげだす|||おこなった Yuuriko suddenly became unbearable and rushed to throw out herself to the chest of Kotoumi. そして 、 しばらく 、 国友 の 腕 に 抱か れて 、 じっと 動か なかった 。 ||くにとも||うで||いだか|||うごか| And for a while, I was held in the arms of my national friend and kept still.

涙 は 出て 来 ない 。 なみだ||でて|らい| The tears don't come out. 夕 里子 自身 、 これ に は 寂しい 思い を した 。 ゆう|さとご|じしん||||さびしい|おもい|| Riko Yuri himself, I felt lonely. 少し は 泣きじゃくれば 、 国友 も もっと 同情 して 、 抱きしめて くれる かも しれ ない のに ……。 すこし||なきじゃくれば|くにとも|||どうじょう||だきしめて||||| If I cried a little, my friend might be more sympathetic and might hug me ...

好きな とき に 涙 を 流す と いう 特技 は 、 夕 里子 に は なかった 。 すきな|||なみだ||ながす|||とくぎ||ゆう|さとご||| Yuuriko had no special ability to shed tears when she liked it.

「 やった 連中 は どう し ました ? |れんちゅう|||| "What did you do? 国友 が 、 ガードマン に 訊 いた 。 くにとも||がーどまん||じん| A national friend came to the guardman.

「 今 、 調べ させて い ます 。 いま|しらべ|さ せて|| "I'm looking into it now. 三 人 でした が 、 いつも この 辺 に いる 顔 でした から 、 たぶん 分 る と 思い ます 」 みっ|じん|||||ほとり|||かお||||ぶん|||おもい| It was three people, but because I was always a face in this area, I think that maybe I will understand.

「 ひどい 奴 ら だ 、 こんな 女の子 を ! |やつ||||おんなのこ| 国友 は そっと 夕 里子 の 髪 を 撫でた 。 くにとも|||ゆう|さとご||かみ||なでた 夕 里子 は 国友 から 離れて 微笑んだ 。 ゆう|さとご||くにとも||はなれて|ほおえんだ Yuko Yuko smiled away from his friend.

「 笑った ね 。 わらった| "I laughed. もう 大丈夫 か ? |だいじょうぶ| 「 ええ 。 私 、 めげ ない の 」 わたくし||| I can not do it

「 よし 。 それ で こそ 君 だ な 」 |||きみ|| That's it for you. "

「 国友 さん 、 すみません けど 、 お 金 、 貸して もらえ ない ? くにとも|||||きむ|かして|| "I'm sorry, but you can't lend me some money? 全部 バッグ ごと 取ら れちゃ った から ……」 ぜんぶ|ばっぐ||とら|||

「 いい よ 。 今 、 いる の ? いま|| 「 買って 来 たい 物 が ある の 」 かって|らい||ぶつ||| "I have something I want to buy and come with me"

「 じゃ 、 言って ごらん 。 |いって| "Well then, say. 僕 が 買って 来て あげよう 」 ぼく||かって|きて|

「 だめな の 、 それ が ……」

夕 里子 は 、 ちょっと 頰 を 染めて 、「 下着 を …… かえ たい の 。 ゆう|さとご|||||そめて|したぎ|||| 気持 悪くて 」 きもち|わるくて

「 そう か 。 よし 分 った 。 |ぶん| ── これ で いい ? 「 すみません 。 トイレ で 着替えて 来 ます 」 といれ||きがえて|らい|

「 ああ 、 それ なら ──」

と 、 ガードマン が 言った 。 |がーどまん||いった 「 この 奥 が 宿直 室 で 、 中 に シャワー の 設備 が ある 。 |おく||しゅくちょく|しつ||なか||しゃわー||せつび|| そこ で さっぱり したら どうか な ? How about having a rest there? 「 嬉しい ! うれしい そう し ます 」

夕 里子 は お 金 を 手 に 、 詰所 を 飛び出して 行った 。 ゆう|さとご|||きむ||て||つめしょ||とびだして|おこなった Yuuriko rushed out of the corner with her money.

下着 と ブラウス を 買って 戻り 、 詰所 の 奥 の 六 畳 ほど の 畳 の 部屋 へ 通して もらって 、 シャワー 室 で 熱い シャワー を 浴び 、 着替える と 、 夕 里子 は 、 すっかり ショック から 立ち直って いた 。 したぎ||ぶらうす||かって|もどり|つめしょ||おく||むっ|たたみ|||たたみ||へや||とおして||しゃわー|しつ||あつい|しゃわー||あび|きがえる||ゆう|さとご|||しょっく||たちなおって| I bought underwear and a blouse back, got it through a room of about 6 mats in the back of the room, took a hot shower in the shower room and changed my clothes.

冷静に なって 考えて みる と 、 ガードマン の 言葉 に は 夕 里子 も 同感 だった 。 れいせいに||かんがえて|||がーどまん||ことば|||ゆう|さとご||どうかん| When I calmly thought, Yuuriko agrees with the guardman's words. なぜ あの 三 人 が 急に 夕 里子 を 襲って 来た のだろう か ? ||みっ|じん||きゅうに|ゆう|さとご||おそって|きた|| Why did those three people suddenly attack Yuuriko?

もちろん 偶然 と も 考え られ ない こと は ない わけだ が 。 |ぐうぜん|||かんがえ||||||| Of course there is nothing accidentally thought possible. もし 偶然で ない と する と ……? |ぐうぜんで|||| If it were not coincidence ... ....?

少し 濡れた 髪 を 手 で 直して 、 詰所 へ 戻る と 、 夕 里子 は 、 ちょっと 驚いて 足 を 止めた 。 すこし|ぬれた|かみ||て||なおして|つめしょ||もどる||ゆう|さとご|||おどろいて|あし||とどめた After fixing a little wet hair with her hand and returning to the post office, Yuuriko was a little surprised and stopped her leg.

椅子 に 、 異様な 男 が 座って いた 。 いす||いような|おとこ||すわって| 年齢 は いく つ ぐらい だろう ? ねんれい||||| How old are you? 六十 歳 と も 、 四十 代 と も 見える 。 ろくじゅう|さい|||しじゅう|だい|||みえる Sixty years old and even forty years old. のび 切った 髪 は 半ば 白く なって 肩 に かかり 、 顔 の 下 半分 を 覆った ひげ は 、 胸元 に まで 垂れて いる 。 |きった|かみ||なかば|しろく||かた|||かお||した|はんぶん||おおった|||むなもと|||しだれて| The broken hair is half white and covers the shoulders, and the whiskers covering the lower half of the face hang down to the chest. まとって いる の は 、 背広 ── いや 、 かつて 背広 だった 、 と いう べき 古着 で 、 毛 が すれて 、 テカテカ と 光って いる 。 ||||せびろ|||せびろ|||||ふるぎ||け|||てかてか||ひかって| They are wearing clothes that should not have been dressed in suit--that they used to be dressed in. They are worn, shriveled and shiny. その 上 に 、 毛布 を 一 枚 、 肩 から マント の ように 下げて いた 。 |うえ||もうふ||ひと|まい|かた||まんと|||さげて| On top of that, I lowered a blanket from my shoulder like a cloak. 靴 も 、 もと が 何 色 だった の か 、 判然と し ない 古 靴 で 、 よく 見る と 、 右 と 左 が 別の 靴 だ と 分 る 。 くつ||||なん|いろ||||はんぜんと|||ふる|くつ|||みる||みぎ||ひだり||べつの|くつ|||ぶん| The shoes are also old color shoes with unclear colors, and if you look closely, you will find that the right and left are different shoes.

つまり 、 どう 見て も 浮 浪 者 な のだ が 、 それでいて 、 目 を そむけ たく なる ような 不潔 感 は ない 。 ||みて||うか|ろう|もの|||||め||||||ふけつ|かん|| In other words, it is a vagrant by any means, but there is no filthy feeling that makes you look away. ボロ は 着て いる が 、 そう 汚 なく は な さ そうだった 。 ||きて||||きたな|||||そう だった Boro is wearing it, but it seems not to be so dirty.

そして 何より も 、 その 目 が 、 他の 浮 浪 者 たち と は 違って いた 。 |なにより|||め||たの|うか|ろう|もの||||ちがって| And above all, his eyes were different from the other vagrants. 生気 の ない 、 トロン と した 目 で は なく 、 決して ギラ ついて は い ない が 、 物静かな 、 知性 すら 感じ させる 光 を 、 中 に 持って いる のである 。 せいき||||||め||||けっして|||||||ものしずかな|ちせい||かんじ|さ せる|ひかり||なか||もって|| It is not a lifeless, tron-less eye, it has no light, but has a quiet, even intellective light inside.

その 目 が 優しく 夕 里子 を 見た 。 |め||やさしく|ゆう|さとご||みた His eyes were kind and I saw Yuuriko.

「 や あ 、 さっぱり した かい ? "Hey, did you refresh? と 、 ガードマン が 訊 いた 。 |がーどまん||じん|

「 ええ 、 ありがとう ございました 」

「 顔色 も 戻った ね 。 かおいろ||もどった| 良かった 」 よかった

と 、 傍 に 立って いる 国友 が 言った 。 |そば||たって||くにとも||いった Said a friend of his side standing by.

「 あ 、 この 人 を 紹介 しよう 」 ||じん||しょうかい|

ガードマン が 、 椅子 に 座った 男 を 手 で 示して 言った 。 がーどまん||いす||すわった|おとこ||て||しめして|いった The guardman said by hand the man sitting in the chair.

「 これ が 〈 王様 〉 だ よ 」 ||おうさま||

夕 里子 は 、 ごく 自然に 会釈 した 。 ゆう|さとご|||しぜんに|えしゃく| Yuriko met very naturally.

「 佐々 本 夕 里子 です 」 ささ|ほん|ゆう|さとご|

「 この 人 は 、 この 地下 街 の 浮 浪 者 たち の 中 で 、〈 王様 〉 と 呼ば れて る んだ 。 |じん|||ちか|がい||うか|ろう|もの|||なか||おうさま||よば||| "This man is called" the king "among the vagrants in this underground town. どの 連中 も この 人 の 言う こと は よく きく し 、 何 か 面倒 が 起る と この 人 の ところ へ 持ち込む 。 |れんちゅう|||じん||いう||||||なん||めんどう||おこる|||じん||||もちこむ Every one of them makes sense of what this person says, and brings something to this person when something goes wrong. 今 、 この 地下 街 に 何 人 の 浮 浪 者 が いる か 、 それ を 全部 この 人 は 知っている 。 いま||ちか|がい||なん|じん||うか|ろう|もの||||||ぜんぶ||じん||しっている Now, this person knows how many people are in this underground town. 他 所 から 新しい 浮 浪 者 が 来れば 、 入れて いい か どう かも この 人 が 決める 。 た|しょ||あたらしい|うか|ろう|もの||くれば|いれて||||||じん||きめる If new vagrants from other places come in, this person also decides whether it is OK to insert them. ──〈 王様 〉 と いう 名 で 、 いつの間にか 呼ば れる ように なった んだ 。 おうさま|||な||いつのまにか|よば|||| ── In the name of “King”, it has been called for a while. もう 地下 街 が できて 以来 だ から ね 。 |ちか|がい|||いらい||| It's been since the underground mall was already built. 十 年 近く ここ に 生活 して る んだ よ 」 じゅう|とし|ちかく|||せいかつ|||| I'm living here for nearly a decade now. "

夕 里子 は 、 好奇心 を 刺激 さ れて 、 まじまじ と 、 その 〈 王様 〉 を 見た 。 ゆう|さとご||こうきしん||しげき||||||おうさま||みた

確かに 、 体 も 大きく ない し 、 別に 凄み も ない のだ が 、 どことなく 、 逆らい がたい 、 指導 者 らしい 「 大き さ 」 を 感じ させる 人物 である 。 たしかに|からだ||おおきく|||べつに|すごみ||||||さからい||しどう|もの||おおき|||かんじ|さ せる|じんぶつ| It is true that the body is not big, nor is it a grudge, but it is a person who feels "size" like a leader, who can not stand up against it somehow.

「 あなた が ここ の 連中 に 襲わ れた 娘 さん です か 」 ||||れんちゅう||おそわ||むすめ||| "Are you the girl attacked by the guys here?"

と 、〈 王様 〉 が 言った 。 |おうさま||いった その 柔らかで 、 しかし 、 はっきり と した 言葉づかい に 、 夕 里子 は びっくり した 。 |やわらかで|||||ことばづかい||ゆう|さとご||| Yuuriko was surprised at the soft but clear language.

「 は 、 はい 、 そう です 」

と 、 肯 く 。 |こう|

「 大変 申し訳ない こと を し ました 」 たいへん|もうしわけない|||| "I am sorry very much"

ゆっくり と 、 かんで 含める ような 言い 方 だ が 、 言葉 に は 感情 が こもって いた 。 |||ふくめる||いい|かた|||ことば|||かんじょう||| Although it is said that it includes slowly and slowly, words have feelings. 「 私 の 監督 が 行き届か なかった 。 わたくし||かんとく||ゆきとどか| "My director was out of reach. 全く 、 お 詫び のし よう も あり ませ ん 」 まったく||わび|||||| There is no apology at all. "

「 い 、 いえ …… どうも 」

夕 里子 は 困って しまった 。 ゆう|さとご||こまって| Yuriko was in trouble.

「 総 て は 私 の 責任 です 。 そう|||わたくし||せきにん| "All is my responsibility. 私 を 逮捕 さ れて も 、 獄 に 投じ られて も 、 構い ませ ん が 、 しかし どうせ 私 ども は 監獄 へ 入れば 、 ねぐら が 出来た と 喜ぶ 人種 。 わたくし||たいほ||||ごく||とうじ|||かまい||||||わたくし|||かんごく||はいれば|||できた||よろこぶ|じんしゅ It doesn't matter if I'm arrested or thrown into prison, but if we go into jail, we'll rejoice that we've made a roost. それでは そちら の 気 が 済み ます まい 」 |||き||すみ|| Then I won't feel like that "

「 いい んです 、 もう 」

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった 「 済んだ こと です し 、 バッグ を 返して いただけば 、 それ で いい んです 。 すんだ||||ばっぐ||かえして||||| "It's done, and it's good if you return the bag. ただ ── 私 を 襲った の が 、 急の 思い付き な の か 、 それとも 誰 か に 頼ま れて の こと な の か 。 |わたくし||おそった|||きゅうの|おもいつき|||||だれ|||たのま|||||| Only ── Do you think of a sudden idea or someone that has hit me? それ を 聞き たい んです 」 ||きき|| I want to hear that. "

「 頼ま れて ? たのま| と 、 国友 が 言った 。 |くにとも||いった 「 じゃ 、 君 は ……」 |きみ|

「 国友 さん に 電話 した の は その 用 だった の 」 くにとも|||でんわ|||||よう|| "I used to call Kunitomo for that purpose"

夕 里子 は 、 植松 に 伝票 を 書か せて 、 それ を 鑑定 して もらう つもりで いた こと を 話した 。 ゆう|さとご||うえまつ||でんぴょう||かか||||かんてい|||||||はなした Yuuriko had Uematsu write a slip and told her that she was going to have it appraised.

「 だから もしかしたら 、 と 思って ……」 |||おもって "So maybe I think ..."

「 なるほど 。 その 伝票 も 、 バッグ ごと 持って行か れた わけだ ね ? |でんぴょう||ばっぐ||もっていか||| 「 何 か 複雑な 事情 が お あり の ようです ね 」 なん||ふくざつな|じじょう|||||| "There seems to be something complicated about it,"

と 、〈 王様 〉 は 言った 。 |おうさま||いった 「 ともかく 、 その 三 人 を 捜し出して 、 問い 糺して やり ましょう 」 ||みっ|じん||さがしだして|とい|ただして|| "Anyway, let's find out the three and ask questions."

「 見付かる か ね 、 王様 」 みつかる|||おうさま "Can you find it, King?"

と 、 ガードマン が 訊 いた 。 |がーどまん||じん|

「 例の 三 人 、 いつも あの 休憩 所 に いた けど 、 寝る の も あそこ かい ? れいの|みっ|じん|||きゅうけい|しょ||||ねる|||| "Three people in the example were always in that rest area, but are you going to sleep there too? 「 あの 三 人 を 入れた の は 失敗 だった 」 |みっ|じん||いれた|||しっぱい| "It was a failure to include those three people."

と 、 王様 は 首 を 振った 。 |おうさま||くび||ふった 「 今度 問題 を 起こしたら 、 この 地下 街 を 追い出す と 言って おいた のだ が 、 それ を 承知 で こんな こと を した 以上 、 もう この 地下 街 から 逃げ出す つもりで は いる でしょう 」 こんど|もんだい||おこしたら||ちか|がい||おいだす||いって||||||しょうち||||||いじょう|||ちか|がい||にげだす|||| "I said that if I had a problem this time, I was going to kick this underground town, but I knew that I would do something like this and I'm already planning to run away from this underground town"

「 する と 、 もう ここ に は ──」 "If you do it already here」 "

「 いや 」

と 、 遮って 、「 あの がめつい 連中 の こと だ 、 おそらく 手ぶらで 出て 行く まい 。 |さえぎって|||れんちゅう|||||てぶらで|でて|いく| "I'm talking about those guys, probably don't go out with me." いつも あいつ ら が たかって いる 店 は 十二 時 に なら ない と 開か ない 。 ||||||てん||じゅうに|じ|||||あか| A store that always wants them will not open unless it is twelve o'clock. 一 時 まで は 店 が 忙しい 。 ひと|じ|||てん||いそがしい The store is busy until one time. 何 か もらえる と すれば 、 その後 だ 」 なん|||||そのご| If you get something, it 's after. "

「 する と ── 今 、 一 時 十分だ 」 ||いま|ひと|じ|じゅうぶんだ "If you do-now it is enough for a while"

「 すぐに 手配 すれば ──」 |てはい| "If you arrange immediately す ぐ"

と 国友 が 言った 。 |くにとも||いった

「 いや 、 大丈夫です 」 |だいじょうぶです

と 、 王様 は 言った 。 |おうさま||いった 「 話 を 聞く と 同時に 、 地下 街 の 方々 へ 、 人 を やって ある 。 はなし||きく||どうじに|ちか|がい||ほうぼう||じん||| "At the same time I listen to the story, I'm doing people to people in the underground mall. どこ から 出よう と して も 、 すぐに ここ へ 知らせ が 来る はずです 」 ||でよう|||||||しらせ||くる| Wherever you are going to leave, you should be informed here soon. "

そこ へ 、 バタバタ と 足音 が して 、 ドア が 開く と 、 まだ 若い 感じ の 浮 浪 者 が 一 人 顔 を 出した 。 ||||あしおと|||どあ||あく|||わかい|かんじ||うか|ろう|もの||ひと|じん|かお||だした There was a slap and a footsteps, and when the door opened, one of the young, vagrants came out.

「 王様 ! おうさま 見つけ ました ! みつけ| I found ! 「 どこ だ ? M ビル の 裏 の 出口 か ? m|びる||うら||でぐち| 「 そうです 。 そう です どうして それ を ? 「 あいつ ら の 頭 の 考える こと ぐらい すぐに 分 る 。 |||あたま||かんがえる||||ぶん| "We will soon know what their heads are thinking about. で 、 出て 行った か ? |でて|おこなった| So, did you go out? 「〈 ドクター 〉 が 酒 を やって 引き止めて い ます 」 どくたー||さけ|||ひきとめて|| "<Doctor> is holding alcohol and holding it down."

「 よし 。 すぐに 行き ましょう 」 |いき|

と 王様 は 立ち上る と 、 夕 里子 たち に 言った 。 |おうさま||たちのぼる||ゆう|さとご|||いった 「 急げば 捕まえ られる 」 いそげば|つかまえ|

「 よし 。 お嬢さん 、 あなた は ここ に ──」 おじょうさん||||

「 むだだ よ 」

と 国友 が 微笑んで 言った 。 |くにとも||ほおえんで|いった 「 一緒に 来る に 決 って る 」 いっしょに|くる||けっ||

地下 街 は 昼 休み 過ぎ だった が 、 まだ 人 の 姿 は かなり あった 。 ちか|がい||ひる|やすみ|すぎ||||じん||すがた||| その 中 を 、 浮 浪 者 に 率い られて 、 ガードマン や 国友 たち が ついて 歩く のだ から 、 通りすぎる 人々 が 、 みんな 物珍し げ に 振り返った 。 |なか||うか|ろう|もの||ひきい||がーどまん||くにとも||||あるく|||とおりすぎる|ひとびと|||ものめずらし|||ふりかえった Among them, guardmen and national friends walked around, led by vagrants, and those who passed by looked back at a rare occurrence.

「 おい 王様 」 |おうさま

途中 で 、 ガードマン が 言った 。 とちゅう||がーどまん||いった 「 M ビル の 裏 に 出口 なんか あった か ? m|びる||うら||でぐち||| "Was there an exit behind M Bill? 「 地下鉄 の 通 気孔 だ 。 ちかてつ||つう|きこう| あそこ の 蓋 は 簡単に 外れる から ね 」 ||ふた||かんたんに|はずれる|| The lid over there will come off easily "

「 そう か ! 気 が 付か なかった な 」 き||つか||

夕 里子 は 、 何だか 自分 が 小説 か 漫画 の 主人公 に でも なった ような 気 が して いた 。 ゆう|さとご||なんだか|じぶん||しょうせつ||まんが||しゅじんこう|||||き||| Yuriko felt like she somehow became a novel or manga protagonist. 浮 浪 者 の 王様 を 先頭 に 犯人 を 捕まえ に 行く なんて 。 うか|ろう|もの||おうさま||せんとう||はんにん||つかまえ||いく| Going to catch the culprit with the king of the fugitive at the top. ── 何 か の CM じゃ ない けど 、 なん|||cm||| CM It is not a commercial of anything but

「 ファンタスティック ! である 。

「〈 ドクター 〉 って 、 元 、 お 医者 さん だった んです か ? どくたー||もと||いしゃ|||| "Did you say that you were a doctor before? と 、 夕 里子 は 訊 いて みた 。 |ゆう|さとご||じん||

「 いや 、 そんな こと は どう で も いい のです よ 、 お嬢さん 」 ||||||||||おじょうさん "No, it doesn't matter how you do, grandmother."

と 王様 は 静かに 答えた 。 |おうさま||しずかに|こたえた 「 ここ へ 来て いる 人間 は 、 そんな 過去 と 訣別 したい 者 ばかり な のです 。 ||きて||にんげん|||かこ||けつべつ|し たい|もの||| "The people who are here are only those who want to break up with such a past. だから 、 我々 は 互いに 名前 も 訊 か ないし 、 前身 も 知ろう と し ない 。 |われわれ||たがいに|なまえ||じん|||ぜんしん||しろう||| So, we do not share names with each other, nor do we try to know their predecessors. ただ 、 一緒に いる 内 に 、 その 印象 や 、 風貌 から 、 何となく 名前 が ついて 来る のです 」 |いっしょに||うち|||いんしょう||ふうぼう||なんとなく|なまえ|||くる| However, while I am together, my name and impression somehow come from me.

夕 里子 は 肯 いた 。 ゆう|さとご||こう| Yuriko asked.

「 その 奥 だ 。 |おく| "That's the back. ── ちょっと 狭い が 」 |せまい|

トイレ の わき の 通路 を 抜けて 、 掃除 用具 など を 置いた 場所 へ 出る 。 といれ||||つうろ||ぬけて|そうじ|ようぐ|||おいた|ばしょ||でる

「 おい 、 ドクター ! |どくたー 王様 が 声 を 上げた 。 おうさま||こえ||あげた 誰 か が 、 床 に 倒れて いる 。 だれ|||とこ||たおれて| 白衣 ── と いって も 、 もちろん 今 は 〈 黒衣 〉 に 近く なって いる ── を 着込んで 、 確かに 、 一見 医者 の ような 体つき の 男 が 、 ぐったり と 床 に のびて いる のだ 。 はくい|||||いま||こくい||ちかく||||きこんで|たしかに|いっけん|いしゃ|||からだつき||おとこ||||とこ|||| Wearing a white coat-but of course now close to a black coat-indeed, a seemingly doctor-like man stretches out on the floor with a glimpse.

「 頭から 血 が 出て いる ぞ 」 あたまから|ち||でて|| "I have blood coming out of my head"

国友 が 駆け寄って か が み込んだ 。 くにとも||かけよって|||みこんだ Kunitomo rushed in and wondered. 「── 殴ら れて いる 。 なぐら|| "I'm being scolded. 息 は ある 。 いき|| 大丈夫だ 」 だいじょうぶだ

「 畜生 、 逃げた な ! ちくしょう|にげた| ガードマン が 、 通 気孔 を 見上げて 言った 。 がーどまん||つう|きこう||みあげて|いった Guardman said, looking up at the vent.

「 早く 、 救急 車 を 呼んだ 方 が いい 」 はやく|きゅうきゅう|くるま||よんだ|かた|| "It is better to call an ambulance as soon as possible."

と 国友 は 言った 。 |くにとも||いった

「 分 り ました 」 ぶん||

ガードマン が 走って 行く 。 がーどまん||はしって|いく

「 とんでもない こと に なった 」 "It's going to be ridiculous"

王様 は 呟く ように 言った 。 おうさま||つぶやく||いった

「 でも 、 あなた の せい じゃ あり ませ ん わ 」

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった 「 どんな 立派な 国 でも 、 泥棒 は い ます もの 」 |りっぱな|くに||どろぼう|||| "There are thieves in any good country"

王様 は 、 夕 里子 を 見て 微笑む と 、 静かに 、 頭 を 下げた 。 おうさま||ゆう|さとご||みて|ほおえむ||しずかに|あたま||さげた The king smiled at Yuuriko, and quietly lowered her head. つい つられて 、 夕 里子 も 頭 を 下げて いた 。 ||ゆう|さとご||あたま||さげて| Yuriko was bowing down, too.

「── お 姉ちゃん 、 遅い じゃ ない の ! |ねえちゃん|おそい||| 珠美 が 、 病院 の ベッド で むくれて いた 。 たまみ||びょういん||べっど|||

「 ごめん 。 ちょっと ね 」

「 妹 が 瀕死 の 重体 だって いう のに 、 どうせ あの 刑事 さん と デート でも して た んでしょう 」 いもうと||ひんし||じゅうたい||||||けいじ|||でーと|||| "Even though my sister was heavy on death, she would have even dated that detective."

「 そんな 元気な 重体 が ある ? |げんきな|じゅうたい|| "Is there such a vital heavy body? と 、 夕 里子 は 笑った 。 |ゆう|さとご||わらった

「 おかげ で 、 私 は 一 人 で 恐ろしい 検査 の 数々 に 堪え なければ なら なかった のであった 」 ||わたくし||ひと|じん||おそろしい|けんさ||かずかず||こらえ|||| "Thanks to that I had to endure a number of horrible tests alone."

「 何 を 気取って ん の 。 なん||きどって|| "What are you worried about? で 、 どう だって ? So how are you? 「 異常 なし 」 いじょう|

と 言う と 、 珠美 は ヒョイ と 毛布 を はね上げて 、 ベッド から 降りた 。 |いう||たまみ||||もうふ||はねあげて|べっど||おりた Speaking of which, Tamami put on a blanket with Hyoi and got off the bed. もう ちゃんと 服 を 着て いる 。 ||ふく||きて| I'm wearing my clothes already.

「 何 だ 、 人 を からかって ! なん||じん|| 「 ねえ 、 お腹 空いちゃ った の よ 。 |おなか|あいちゃ||| お 昼 食べて ない んだ もん 」 |ひる|たべて||| I have not eaten at lunchtime "

「 もう 出て いい の ね ? |でて||| じゃ 、 外 で 食べよう 」 |がい||たべよう

「 お 姉ちゃん の おごり 」 |ねえちゃん||

「 だめ よ 」

「 全快 祝い 」 ぜんかい|いわい

「 だめ 。 一 文なし 。 ひと|もんなし お 金 貸して 」 |きむ|かして Lending money "

「 何で ? なんで 「 三 人 の 男 に 襲わ れて ね 、 バッグ 盗 られた の 」 みっ|じん||おとこ||おそわ|||ばっぐ|ぬす||

廊下 を 歩き ながら 、 珠美 は 目 を パチクリ さ せて から 、 ろうか||あるき||たまみ||め|||||

「 噓 だ あ ! と 声 を 上げた 。 |こえ||あげた Said aloud.

病院 の 支払い を 、 珠美 の 持って いた お 金 で 済ませる と 、 二 人 は 、 病院 の 向 い の レストラン に 入った 。 びょういん||しはらい||たまみ||もって|||きむ||すませる||ふた|じん||びょういん||むかい|||れすとらん||はいった When they paid for the hospital with the money that they had, they went to a restaurant for the hospital.