×

We gebruiken cookies om LingQ beter te maken. Als u de website bezoekt, gaat u akkoord met onze cookiebeleid.

image

コンビニ人間, 7.2

7.2

三 人 の 声 が 重なる 。 店長 が いる と やっぱり 朝礼 が 締まる な 、と 思っている と 、ぼそり と 白羽さん が 言った 。 ・・

「……なんか 、宗教 みたいっす ね 」・・

そう です よ 、と 反射的に 心 の 中 で 答える 。 ・・

これ から 、私たち は 「店員 」と いう 、コンビニ の ため の 存在 に なる のだ 。 白羽 さん は その こと に まだ 慣れない 様子 で 、口 を ぱくぱく させる だけ で 、ほとんど 声 を 出して いなかった 。 ・・

「朝礼 終わり ! 今日 も 一 日 がんばろう ! 」・・

店長 の 言葉 に 、「はい ! 」と 私 と 菅原 さん が 応えた 。 ・・

「それじゃあ 、何か わからない こと あったら 気軽に 聞いて ください ね 。 よろしく お願いします ! 」・・

私が 声を かけると 、白羽さんが 薄く 笑った 。 ・・

「は あ 、わからない こと ? コンビニ の バイト で 、です か ? 」・・

白羽 さん は 鼻 で 笑い 、笑った 拍子 に 鼻 が プー と いう 音 を 出し 、鼻水 が 鼻 の 穴 に 膜 を 作って いる の が 見えた 。 ・・

白羽 さん の 紙 で 作った ような 乾燥 しきった 皮膚 の 裏側 に も 、膜 を はる ような 水分 が ある のだ な と 、私 が その 膜 が 割れる のに 気 を とられて いる と 、・・

「特にない です よ 。 僕 は 大体 わかって る んで 」・・

と 白羽 さん が 小声 の 早口 で 言った 。 ・・

「あ 、ひょっとして 経験者 です かっ ? 」・・

菅原 さん の 言葉 に 、「え ? いえ 、違います けど 」と 小声 で 答える 。 ・・

「まあまあ 、まだ 習う こと は いっぱい ある よ ー ! じゃあ 古倉 さん 、フェイスアップ から よろしく ! 俺 も あがって 今日 は 寝る わ ー 」・・

「はい ! 」・・

菅原 さん は 、「じゃあ 私 は レジ 行きます ! 」 と 走って 行った 。 ・・

私 は 白羽 さん を パック 飲料 の ところ へ 連れて行き 、菅原 さん から トレースした 喋り方 で 、白羽 さん に 話しかけた 。 ・・

「じゃあ 、まずは フェイスアップ お願いしますっ ! パック の 飲み物 は 、朝 、特に 売れる ので 、売り場 を 綺麗に して あげて ください 。 フェイスアップ しながら 、プライスカード が ちゃんと ついて いる こと も 確認 して ください ね ! あと 、作業 して いる とき も 、声 かけ と 挨拶 を 忘れ ないで ください 。 お客様 が 買い に いらしたら 、すぐに 身体 を どけて 、お買いもの の 邪魔に ならない ように して ください ねっ ! 」・・

「はい 、はい 」・・

白羽 さん は だるそうに 返事 を して パック 飲料 の フェイスアップ を 始める 。 ・・

「それ が 終わったら 掃除 を 教える んで 、声 を かけて ください ね ! 」・・

彼 は 返事 を せず 、無言 で 作業 を 続ける だけ だった 。 ・・

しばらく レジ を 打って 、朝 ピーク の 行列 が 終わった 後 に 様子 を 見 に 行く と 、白羽 さん の 姿 が なかった 。 パック 飲料 は 並び が ぐちゃぐちゃに なって いて 、オレンジジュース が あるべき ところ に 牛乳 が 並んで いる 。 ・・

白羽 さん を 探し に いく と 、だるそうな 仕草 で バックルーム の マニュアル を 読んで いる ところ だった 。 ・・

「どう しました ? 何か わからない ことが ありましたか ? 」・・

白羽 さんは マニュアル の ページ を 捲りながら もったいぶった 口調で 言った 。 ・・

「いや 、こういう チェーン の マニュアルって 、的を射てない って いうか 、よく できてない です よ ね 。 僕 、こういう の を ちゃんと する こと から 、会社 って 改善 されていく と 思う んです よ 」・・

「白羽 さん 、さっき 頼んだ フェイスアップ なんです けど 、まだ 終わってない んですか ? 」・・

「 いや 、あれ で 終わり です けど ? 」・・

白羽 さん が マニュアル から 目 を 離さない ので 、私 は 近づいて 元気な 声 を 出した 。 ・・

「白羽 さん 、まずは マニュアル より フェイスアップ です ! フェイスアップ と 声 かけ は 、基本 中 の 基本 です よ ー ! わから なかったら 一緒に やりましょう ! 」・・

私 は 億劫 そうな 白羽 さん を 再び パック 飲料 の 売り場 まで 連れて 行き 、よく わかる ように 、説明 し ながら 手 を 動かして 商品 を 綺麗に 並べ 直して 見せた 。 ・・

「こう やって 、お客様 に 商品 の 顔 が 向く ように 並べて あげて ください ね ! あと 、場所は 勝手に 動かさないで 、ここが 野菜ジュース 、ここが 豆乳 と 決まってる んで ……」・・

「こういう のって 、男の 本能に 向いている 仕事 じゃないですよね 」・・

白羽さんが ぼそりと 言った 。 ・・

「だって 、縄文 時代 から そう じゃない ですか 。 男 は 狩り に 行って 、女 は 家 を 守り ながら 木 の 実 や 野草 を 集めて 帰り を 待つ 。 こういう 作業 って 、脳 の 仕組み 的に 、女 が 向いている 仕事 です よね 」・・

「白羽 さん ! 今は 現代 です よ ! コンビニ 店員 は みんな 男 でも 女 でも なく 店員 です ! あ 、バックルーム に 在庫 が ある んで 、それ を 並べる 仕事 も 一緒に 覚えちゃ いましょう ! 」 ・・

ウォークイン から 在庫 を 出して 白羽 さん に 在庫 を 並べる 説明 を する と 、私 は 急いで 自分 の 仕事 に 戻った 。 ・・

フランク の 在庫 を 持って レジ に 行く と 、コーヒー マシーン の 豆 の 補充 を して いた 菅原 さん が 、眉間 に 皺 を よせて こちら を 見た 。 ・・

「あの 人 、なんか 変 じゃ ない ですか あ ? 研修 終わって 、今日 、ほとんど 初日 です よね ? まだ ろくに レジ も 打て ない くせに 、私 に 発注 やらせろ って 言って きた んです よ ! 」・・

「へえ ー 」・・

方向性 は どうあれ 、やる気 が ある の は いい こと だ と 思っている と 、菅原 さん が もっちり とした 頬 を 持ち上げて 微笑んだ 。 ・・

「古倉 さんって 、怒らない で すよ ね 」・・

「え ? 」・・

「いえ 、古倉 さんって 、偉い です よ ね 。 私 ああいう人 だめな ん です ー 、イライラ しちゃって 。 でも 古倉 さん って 、ほら 、私 や 泉 さん に 合わせて 怒って くれる ことは ある けど 、基本的に あんまり 自分 から 文句 言ったり しない じゃないですか 。 嫌な 新人 に 怒ってる ところ 、見た こと ない ですよね 」・・

ぎくりと した 。 ・・

お前 は 偽物 だ と 言い当てられた 気 が して 、私 は 慌てて 表情 を 取り繕った 。 ・・

「……そんな こと ない よ 、顔 に 出 ない だけ ! 」 ・・

「えー 、そう なんですか ? 古 倉 さん に 怒られたら 、 ま じ で ショック 受け そ ー ! 」・・

菅原 さん が 高い 声 で 笑う 。 リラックス した 菅原 さん の 前 で 、私 は 細心の 注意 を 払って 言葉 を 紡ぎ 、顔 の 筋肉 を 動かし続けている 。 ・・

かご を レジ に 置く 音 が 聞こえ 、素早く 振り向く と 、つえ を ついた 常連 の 女性 客 が 立っていた 。 ・・

「いらっしゃいませ ! 」・・

元気よく 商品の バーコードを スキャンし 始めると 、女性は 目を 細めて 言った 。 ・・

「ここは 変わらない わねえ 」・・

私は 少しの 間の あと 、・・

「そうですね ! 」・・

と 返した 。 ・・

店長 も 、店員 も 、割り箸 も 、スプーン も 、制服 も 、小銭 も 、バーコード を 通した 牛乳 も 卵 も 、それを 入れる ビニール 袋 も 、オープン した 当初 の もの は もう ほとんど 店に ない 。 ずっと ある けれど 、少しずつ 入れ替わって いる 。 ・・

それ が 「変わらない 」と いう こと な の かも しれない 。 私 は そんな こと を 考え ながら 、・・

「390 円 です ! 」・・

と 、張り上げた 声で 女性客に 告げた 。 ・・

Learn languages from TV shows, movies, news, articles and more! Try LingQ for FREE