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コンビニ人間, 5. – Text to read

コンビニ人間, 5.

Semi-gevorderd 2 Japans lesson to practice reading

Begin nu met het leren van deze les

5 .

朝 の 8 時 、私 は スマイル マート 日色町 駅前 店 の ドア を 開ける 。 ・・

仕事 は 9 時 から だが 、早く 来て バックルーム で 朝食 を 食べる こと に している 。 店 に つく と 、2 リットル の ペットボトル の ミネラルウォーター を 一 本 と 、廃棄 に なってしまいそうな パン や サンドイッチ を 選んで 買い 、バックルーム で 食事 を する 。 ・・

バックルーム に は 大きな 画面 が あり 、そこ に は 防犯 カメラ の 映像 が 映し出されている 。 夜勤 に 入った ばかりの 、新人 の ベトナム人 の ダットくん が 必死に レジ を 打っている 様子 や 、慣れない 彼 を フォローしながら 店長 が 走り回っている 様子 を 眺めながら 、何か あったら 制服 を 着て バックルーム の 外 へ 走っていき レジ を 手伝おう と 構えつつ 、パン を 飲み込む 。 ・・

朝 、こうして コンビニ の パン を 食べて 、昼 ごはん は 休憩 中 に コンビニ の おにぎり と ファーストフード を 食べ 、夜 も 、疲れている とき は そのまま 店 の もの を 買って 帰る こと が 多い 。 2 リットル の ペットボトル の 水 は 、働いて いる 間 に 半分 ほど 飲み 終え 、そのまま エコ バッグ に 入れて 持ち帰り 、夜 まで それ を 飲んで 過ごす 。 私 の 身体 の 殆ど が 、この コンビニ の 食料 で できている のだ と 思う と 、自分 が 、雑貨 の 棚 や コーヒー マシーン と 同じ 、この 店 の 一部 である かのように 感じられる 。 ・・

食事 を 終える と 、天気 予報 を 確認 したり 、店 の データ を 見たり する 。 天気 予報 は 、コンビニ に とって とても 大切な 情報 源 だ 。 昨日 の 気温 と の 差 も 重要だ 。 今日 は 最高 気温 21 度 、最低 気温 14 度 。 曇り のち 、夕方 から は 雨 の 予定 だ 。 気温 より も 寒く 感じられる だろう 。 ・・

暑い 日 は サンドイッチ が 売れ 、寒い 日 は おにぎり や 中華 まん 、パン が よく 売れる 。 カウンターフーズ も 気温 に よって 売れる もの が 違う 。 日色町 駅前 店 で は 寒い 日 は コロッケ が よく 売れる 。 ちょうど セール で も ある ので 、今日 は コロッケ を たくさん 作ろう と 、頭 に 叩きこむ 。 ・・

そんな こと を して いる 間に 時間 は 過ぎ 、店 に は 少しずつ 、私 と 同じ 9時 から アルバイト を する 昼勤 の 人たち が 集まって くる 。 ・・

8 時 半 を 過ぎた ころ 「おはようございます ー 」という ハスキーな 声 が して 、ドア が 開いた 。 バイト リーダー として 信頼 が おかれている 泉 さん だ 。 私 より 一 つ 年 上 の 37 歳 の 主婦 で 、少し 性格 は きつい が 、きびきび と よく 働く 女性 だ 。 少し 派手な 服装 で 現れ 、ロッカー の 前 で ヒール の 靴 を スニーカー に 履き かえて いる 。 ・・

「 古倉 さん 、 今日 も 早い ね ー 。 あ 、新 商品 の パン だ 。 それ 、どう ? 」 ・・

私 が 手 に している マンゴーチョコレート の パン を 目 に した 泉さん が 言う 。 ・・

「少し クリーム に 癖 が あって 、匂い が 強くて 食べ にくい です 。 あんまり 美味しくない です ね ー ! 」 ・・

「え 、ほんと ? 店長 100個発注しちゃってるよ、やばいなー。 とりあえず 今日 来た ぶん だけ でも 売らないと ね ー 」・・

「 はい ! 」 ・・

アルバイト は 圧倒的に 学生 か フリーター が 多い ので 、自分 と 同世代 の 女性 と 働く こと は 珍しい 。 ・・

泉 さん は 茶髪 を 纏め 、紺色 の カットソー の 上 から 白い シャツ を 着て 、水色 の ネクタイ を 締めた 。 日色町 駅前 店 が オープン した とき に は こんな ルール は なかった が 、今 の オーナー に なって から は 、必ず 制服 の 下 は シャツ と ネクタイ と 決まっている 。 ・・

泉 さん が 鏡 の 前 で 服装 を 整えている と 、「おはようございます ! 」と 菅原 さん が 飛び込んできた 。 ・・

菅原 さん は 24 歳 の アルバイト で 、声 が 大きい 明るい 女の子 だ 。 バンド の ボーカル を やっている らしく 、ベリーショート の 髪 を 本当 は 赤く したい のだ と ぼやいていた 。 少し ぽっちゃり と していて 愛嬌 が ある が 、泉 さん が 来る 前 は 遅刻 も 多かった し 、ピアス を つけた まま 働いて 店長 に よく 叱られて いた 。 泉 さん が さばさば と した 調子 で 上手に 叱って 教育した おかげで 、今 では 菅原 さん も 、すっかり 真面目で 仕事 に 熱い 店員 だ 。 ・・

昼勤 は 他 に 、ひょろり と 背 が 高い 大学生 の 岩木 くん と 、就職 先 が 決まって もう すぐ 辞めて しまう フリーター の 雪下 くん が いる 。 岩木 くん も 就活 で 来られない 日 が 増える と いう ので 、店長 が 夜勤 から 戻ってくる か 、新しい 人 を 昼勤 で とる か しない と 、店 が まわらなく なってしまう 。 ・・

今 の 「私 」を 形成している の は ほとんど 私 の そば に いる 人たち だ 。 三 割 は 泉 さん 、三 割 は 菅原 さん 、二 割 は 店長 、残り は 半年 前 に 辞めた 佐々木 さん や 一年 前 まで リーダー だった 岡崎 くん の ような 、過去 の ほか の 人たち から 吸収 した もの で 構成 されている 。 ・・

特に 喋り方 に 関しては 身近な 人 の もの が 伝染していて 、今 は 泉 さん と 菅原 さん を ミックスさせた もの が 私 の 喋り方 に なっている 。 ・・

大抵 の ひと は そう な の で は ない か と 、私 は 思っている 。 前 に 菅原 さん の バンド 仲間 が お店 に 顔 を 出した とき は 、女の子 たち は 菅原 さん と 同じ ような 服装 と 喋り方 だった し 、佐々木 さん は 泉 さん が 入って きて から 、「お疲れ さま です ! 」の 言い方 が 泉 さん と そっくり に なって いた 。 泉 さん と 前 の 店 で 仲 が 良かった と いう 主婦 の 女性 が ヘルプ に 来た とき は 、服装 が あまりに 泉 さん と 似ている ので 間違えそうに なった くらいだ 。 私 の 喋り方 も 、誰か に 伝染している の かも しれない 。 こうして 伝染し合いながら 、私たち は 人間 である こと を 保ち続けている のだ と 思う 。 ・・

働く 前 の 泉 さん は 少し 派手 だが 三十代 女性 らしい 服装 を している ので 、履いている 靴 の 名前 や ロッカー の 中 の コート の タグ を 見て 参考 に している 。 一度 だけ 、バックルーム に 置きっぱなしになっていた ポーチ の 中 を 覗き 、化粧品 の 名前 と ブランド も メモした 。 それ を そのまま 真似しては すぐに バレてしまう ので 、ブランド 名 で 検索し 、そこ の 服 を 着ている 人 が ブログ で 紹介したり 、どちら の ストール を 買おうかな 、と 名前 を あげている 他 の ブランド を 着る こと に している 。 泉 さん の 服装 や 持っている 小物 、髪形 など を 見ている と 、それ が 正しい 三十代 女性 の 見本 の ように 思えて くる 。 ・・

泉 さん が 、ふと 、私 の 履いている バレエ シューズ に 目 を 止める 。 ・・

「あ 、それ 、表参道 の お店 の 靴 だ よね 。 私 も そこ の 靴 、好きな の ー 。 ブーツ 持ってる よ ー 」・・

泉 さん は 、バックルーム で は 少し 語尾 を 伸ばして だる そうに 喋る 。 ・・

ここ の 靴 は 泉 さん が トイレ に 入って いる 隙 に 靴底 の ブランド名 を メモして 、お店 に 出向いて 買った もの だ 。 ・ ・

「えーっ 、ほんと です か ! ひょっとして 紺色 の やつ です よ ね 。 前 に お店 に 履いて きてました よね 、あれ 可愛かった です ! 」 ・ ・

菅原 さん の 喋り 方 を トレース し 、少し 語尾 を 大人 向き に 変えた 口調 で 泉 さん に 答える 。 菅原 さん は スタッカート の ついた ような 、少し 弾んだ 喋り 方 を する 。 泉 さん と は 対照的 な 喋り方 だが 、二つ を 織り交ぜながら 喋る と 不思議 と ちょうど いい 。 ・ ・

「 古倉 さんって 私 と 趣味 が 合う 気 が する ー 。 その バッグ も かわいい よ ねえ 」・・

泉 さん が 微笑む 。 泉 さん を 見本 に して いる のだ から 趣味 が 合う のは 当然 で も ある 。 周り から は 私 が 年相応 の バッグ を 持ち 、失礼で も 他人行儀で も ない ちょうど いい 距離感 の 喋り方 を する 「人間 」に 見えている のだろう 。 ・・

「 泉 さん 、 昨日 店 に いました ー ? ラーメン の 在庫 、ぐっちゃぐちゃ な んです けどっ ! 」 ・・

ロッカー の ほう で 着替えて いた 菅原 さん が 大声 を 出した 。 泉 さん が そちら を 振り向いて 声 を かける 。 ・・

「 いた よ ー 。 昼間 は 大丈夫 だった んだ けど 、夜勤 の 子 が 、また 無断 欠勤 だった の 。 だから 新人 の ダット 君 が 入ってる でしょ 」・・

制服 の チャック を あげ ながら こちら へ 来た 菅原 さん が 顔 を しかめる 。 ・・

「えー 、また バックレ です か あ 。 今 人手 不足 な のに 、信じられない ! だ から 店 、ガタガタ な んです ねっ 。 パック 飲料 ぜんぜん 出てない じゃないですか 、朝 ピーク なのに ! 」 ・・

「 そうそう 。 最悪 だ よね ー 。 店長 、やっぱり 今週 から 夜勤 に まわる って 。 今 、新人 さん しか いない もん ね 」・・

「昼勤 だって 就活 で 岩木 くん 抜ける のに ! ほんと 、困ります よ ね ! 辞める なら 辞める で 、 前もって 言って くれない と 、 結局 しわ寄せ が 他の バイト に 来る だけ じゃ ないで す か ー ! 」 ・・

二 人 が 感情 豊かに 会話 を している の を 聞いてる と 、少し 焦り が 生まれる 。 私 の 身体 の 中 に 、怒り と いう 感情 は ほとんど ない 。 人 が 減って 困った なあ と 思う だけ だ 。 私 は 菅原 さん の 表情 を 盗み 見て 、トレーニング の とき に そうした ように 、顔 の 同じ 場所 の 筋肉 を 動かして 喋って みた 。 ・・

「えー 、また バックレ です か あ 。 今 人手 不足 な のに 、信じられない です ! 」 ・・

菅原 さん の 言葉 を 繰り返す 私 に 、泉 さん が 時計 と 指輪 を 外し ながら 笑った 。 ・・

「 は は 、古倉 さん めっちゃ 怒ってる ! そう だ よね ー 、ほんと あり 得ない よ ー 」 ・・

同じ こと で 怒る と 、店員 の 皆 が うれしそうな 顔 を する と 気が付いた のは 、アルバイト を 始めて すぐ の こと だった 。 店長 が ムカつく とか 、夜勤 の 誰 それ が サボってる とか 、怒り が 持ち上がった とき に 協調する と 、不思議な 連帯感 が 生まれて 、皆 が 私 の 怒り を 喜んでくれる 。 ・・

泉 さん と 菅原 さん の 表情 を 見て 、ああ 、私 は 今 、上手に 「人間 」が できて いる んだ 、と 安堵 する 。 この 安堵 を 、コンビニエンスストア と いう 場所 で 、何度 繰り返した だろう か 。 ・・

泉 さん が 時計 を 見て 、私たち に 声 を かけた 。 ・・

「じゃ 、朝礼 しよう か 」・・

「はーい 」・・

三人 で ならんで 整列し 、朝礼 が 始まる 。 連絡 ノート を 泉 さん が 開き 、今日 の 目標 と 注意 事項 を 伝えた 。 ・・

「今日 は 新 商品 の マンゴー チョコレートパン が お すすめ 商品 です 。 皆 で 声かけ して いきましょ ー 。 それ と 、クレンリネス 強化 期間 です 。 昼 の 時間 は 忙しい です が 、それ でも 床 、窓 、ドア 付近 は こまめに 掃除 する ように しましょう 。 時間 が ない から 誓い の 言葉 は いい や 、それでは 、接客 用語 を 唱和 します 。 『いらっしゃい ませ ! 』」・・

「 いらっしゃい ませ ー ! 」・・

「『 かしこまりました ー ! 』」・・

「 かしこまりました ー ! 」・・

「『 ありがとう ございます ー ! 』」・・

「 ありがとう ございます ー ! 」・・

接客 用語 を 唱和 し 、身だしなみ の チェック を して 、「いらっしゃいませ ! 」と 言い ながら 、一人 ずつ ドア の 外 へ 出て いく 。 二人 に 続いて 、私 も 事務所 の ドア から 飛び出した 。 ・・

「いらっしゃい ませ 、おはよう ご さいます ! 」・・

この 瞬間 が とても 好きだ 。 自分 の 中 に 、「朝 」という 時間 が 運ばれてくる 感じ が する 。 ・・

外 から 人 が 入って くる チャイム 音 が 、教会 の 鐘 の 音 に 聞こえる 。 ドア を あければ 、光 の 箱 が 私 を 待って いる 。 いつも 回転し続ける 、ゆるぎない 正常な 世界 。 私 は 、この 光 に 満ちた 箱 の 中 の 世界 を 信じて いる 。 ・・

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